ホグワーツの凶犬~ハリー・ポッター×男塾~   作:黒羆屋

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第5話 9と3/4線

 で、それからしばらくして。

 ついに入学の時期が来た。

 教科書も一通り目を通したものの、理解できない所がてんこ盛り。

 これも私が「魔法族の常識を知らない」ってとこから来てる。

 なもんで、分かんない所を変な兄ちゃん、本人は「ジョン・スミス」って名乗ってる、にちょくちょく聞いて覚える。

 面倒なのはやはり呪文系かな?

 もとが全くマグルには関わりのない代物なんで見当が付かないことが多いんだよねえ。

 歴史系もかなりしんどい。

 頭に「悪の」「善き」とかの二つ名が付くこともあるし、魔法使いとしてマグル界の偉人が出てくることもある。

 その辺りを混同しないように覚える必要があった。

 同じく覚えるのに気を付けなければいけないのが魔法薬学。

 こっちでも手に入る薬草や鉱物なんかが魔法界では意外な効能に使われてたりして、ちょっと混乱する。

 そういう時はスネイプ先生に手紙を送って確認。

 やっぱりあの人、かなり優秀だなあ、と思う。

 逆に向こうからの質問もあったり、量が多くなければ現物を連絡用のフクロウに持っていってもらったり。

 まあこの辺りの齟齬って向こうにしかない触媒とかもあるんで、そこいらの影響だと思うんだけど。

 それと、大蝙蝠、名前はオズボーンJr.とした、のしつけと飼育ですね。

 これはハグリッドさんからいろいろ聞いて、飼育用の本も買いましたが、一番役に立ったのはここでも男塾の知識。

 いや、蝙蝠飼ってる人がいたもんで。

 蝙翔鬼ってんですけどね。

 この人の使う南朝寺教体拳って蝙蝠を操ってやるのが多く、おかげでうちの子も不満なく育てることができそうです。

 まあこの拳法自体、習得そのものは大変だったけど、ある程度は使えるようになってまして、私の徒手格闘の基本の一個になってたり。

 まあ、Jr.に関してはホグワーツ行く前に向こうに預けないといかんのですがね。

 なにせイギリスって蝙蝠の生息地とか結構厳密に調査保護されてるんだよね。

 だからあんまり人目につくのは都合が悪いのよ。

 いろいろとやることがあって忙しいこと忙しい事。

 でもまあ、かなりやりがいのある時間だったのは間違いないよ、うん。

 

 

 

 

「じゃあ行って来るよ、とうちゃん」

「おう、行って来いバカむすめ」

 お互いに、にぃっと笑うと駅の方へ。

 がらごろと中古の旅行カート(これもジャンクから直した、田沢すげえ)を引っ張り、背中に登山用のリュック、杖(どう見ても変則木刀)とその先に空の(・・)鳥かごを引っかけて持って歩いている私はけっこう変だと思う。

 とは言え、町の人たちからはもう「そういう人」扱いだし、ここしばらくでとうちゃんも町の名士の1人、一応そこのお嬢さんってことでみんな良くしてくれる。

「行ってらっしゃい、マリー!」

「強くなって帰ってくんだぜえ」

「ばっか、あれ以上強くなってどうすんだ、嫁の来手なくなっぞ」

「いや婿の間違いだべ」

 …てめえらアトデブットバス。

 怒りに震えながらロンドンへ。

 

 大体列車で4時間。

 ロンドンにつくと、それほど時間はない。

 前世の記憶よりもイギリスの電車はかなり時間がアバウトだ。

 これでもかなり余裕をもって出て来たんだけどなあ。

 ま、それはさておき、と。

 ロンドンのキング・クロス駅、そこからまずは9番線と10番線のあるホームへ。

 そこから、と。

「じゃあ行ってきます」

 なんて周囲から声がする。

 私をおんなじような服装をした少年少女達、青年達が目の前の柵の所から消えて行く。

 これを疑問に思わないような認識阻害の魔法が掛けてあるらしい。

 しかし、私のような巨大な荷物を持ってるやつはいない。

 やっぱり漢方の本とか道具とか、余計なもんを持ってるからだろうか。

 でも人によってはクマのぬいぐるみとか持ってるし、そんなにおかしなもんは持ってないはずなんだけどなあ。

 この時私は気が付いていなかった。

 事前に荷物をホグワーツに送っている人が多いとか、最近隣の村であるホグズミード村で購入するとか、そう言った方法もあったという事を。

 それに、参考書の類は図書館で借りても良い、という事を。は

 まあ知らないんだから仕方ないか。

 さて、9番ホームと10番ホームのあいだにある柵、そこに近づくと周囲の人たちの流れがふっと途切れる。

 なるほど、ここに人避けの結界が張られてるってことね。

 ここが9と3/4ホームへの入り口かぁ。

 ほんとにこっからホームに行けんのかしらねえ。

 と、考えていると、なんかでこぼこした背丈の少年達がこっちに近づいてきた。

 どうやら小柄な金髪の少年がリーダー格で、後のごっつめの子たち2人が従者か何かのようだ。

 なるほど、魔法界はマグル界より貴族制が強く残ってるって話だったからそう言う事なんだろうな。

 それは良いんだけど、後の2人、かなり荷物が重くてよたよたしてる。

 本人達の分に、主人の子の荷物まで持ってるせいだ。

 ちょっとこれは危ないかも、そう見てると片方の子、坊っちゃん刈りの男の子が何かにけつまづいたようでよろよろし始めた。

 まずいな、と思って、手を貸したんだけど、それが縁で彼ら、ドラコ・マルフォイ、ビンセント・クラッブ、グレゴリー・ゴイルとの悪友関係が長々と続く事になるとは思ってもみなかった。

 

 

 

「狂犬」との邂逅:ホグワーツ入学生ビンセント・クラッブの言

 

 ビンセント・クラッブはグレゴリー・ゴイルと共にマルフォイ家の嫡男であるドラコとの遊び相手として彼の父親であるルシウス・マルフォイによって彼の派閥の子どもから選ばれた。

 マルフォイ家は純潔を標榜する魔法使いの派閥において重視される聖二十八家の一つである。

 また、現当主であるルシウスは先の魔法使い同士の大戦において歴代最大の悪の魔法使いであるヴォルデモート卿についた。

 そして彼の私兵である「死喰い人(デスイーター)」を統括する地位についたのだ。

 ヴォルデモートが死ぬとルシウスは上手く立ち回り、自身がヴォルデモートに「服従の呪文」で支配されていたと主張し、その際に、ヴォルデモートに従ったことで罪に問われるはずだった多くの死喰い人を救いあげた。

 それをそのまま自身の派閥に組み込んだのだから非常に政治力の強い人物といえる。

 クラッブ家、ゴイル家は共にルシウスに救われた家柄だ。

 だからこそ、ドラコとの縁故はしっかりしておきたい、そう言う親の意向でビンセントはドラコの遊び相手権付き人のような役割をすることになったのである。

 ドラコは要所さえ押さえておけば悪い主ではないし、少なくともグレゴリーよりは上手くやっていられる。

 そう言う訳でビンセントはそれほどドラコに関して悪感情を持つことが少なかった。

 とは言え、

「重い…」

「言うなって…」

 ホグワーツに移動するための特急、それが到着している9と3/4ホームに向かって歩いているドラコと違い、ビンセントとグレゴリーの足は重かった。

 単純に荷物が重いためだ。

 彼らはこれからホグワーツ魔法魔術学校へ入学する。

 ホグワーツは全寮制で、その為に様々な私物を持っていく必要がある。

 無論、ホグワーツの近隣にはホグズミード村があるし、そう言ったところで買い増しても良い訳だ。

 とは言え、基本的には年に6回だけ運行されるホグワーツ特急に乗る以外でホグワーツへ行く事は出来ない。

 そうなると新入生の荷物は基本的に手に持っていく必要があり、必然的にドラコの荷物はビンセントとグレゴリーが持つことになる。

 ドラコはその生まれと立ち位置の関係でどうしても荷物が多くなる。

 それを2人で割ったとして、やはり自分達の荷物の分も含めると2人分くらいの量にはなるのだ。

 今のビンセントにとって、流石にそれは重かった。

 とは言え、ドラコにそれを言う訳にもいかない。

 実際、ビンセントが泣きごとを言えばドラコは不満げな顔をしつつ荷物をある程度受け取るだろう。

 しかし、それを父親であるルシウスに報告されるのはまずい。

 クラッブ家とマルフォイ家の関係を少しでも悪化させるわけにはいかないのだ。

 というよりは、まあこれは家への義務とドラコ本人への好意がちょっとと、後はほぼ惰性でやっている事なのだが。

 

 暫く歩いていると、周囲に「マグル」が増えてきた。

 ロンドンのキング・クロス駅、ここは魔法族だけが使う駅ではない。

 というか、マグルが使う駅にホグワーツ特急に乗りこむホームが隠されて(・・・・)いるといって良い。

 

 持っている荷物が少ないドラコはともかく、後ろを歩くビンセントとグレゴリーは時折荷物に人が当たり、ふらつくこともある。

「…くっそ、このマグルどもが」

 悪態をつきつつビンセントは歩いていく。

 と、

 

 どんっ

 

 また誰かが荷物にぶつかったようだ。

 その拍子にビンセントはよろけ、転びそうになる。

 そこに、 

「大丈夫!?」

 転倒しかけていた体が止まり、そう声が掛かった。

 声の主を見て、ビンセントは一瞬息がとまった。

 そこには「かっこいい」と表現できるような男の子(・・・)がいた。

 と思った。

 どうやら()が自分を支えてくれたらしい。

「お、おう、大丈夫だ」

 そう言ってそいつの姿を見る。

 女のようなふわりとした茶色の髪の毛、顔立ちはきりっとしてなんかむかつく。

 なんか独特に跳ね上がった眉毛と我の強そうな目が特徴だ。

 上背(うわぜい)はビンセントよりもほんの少し高い気がする(実際は頭半分ほどマリーの方が高い)。

 肩はかなりしっかりしており、腹周りはかなり細い気がする。

 そしてビンセントが下の方に目をやって、

「え、お前、女?」

「女で悪いか、あぁん!?」

 そいつに睨みつけられた。

 男前の彼女(・・)は、スカートをはいていた。

 ものすごい、怖かった。

 

「私、マリー・ウェリントン、よろしく」

 そう言いながらマリーはビンセントたちのさらに後ろを歩いてくる。

 周囲からのぎょっとした目を全く気にしていない。

 なんといっても、彼女はビンセントとグレゴリーの持っていたドラコの荷物のほとんどを持っているからだ。

 もともと彼女の持っている荷物は通常の2倍以上あった。

 話によると薬学用の調剤道具やらマグルの薬学書やら、指定以外の参考書やら大量に持ってきたとのこと。

 巨大なリュック、そして通常の2倍以上は入りそうなどでかい旅行鞄。

 それらの上にドラコの荷物を器用に載せ、彼女は歩いている。

 ほとんど大道芸の世界だ。

 このキング・クロス駅にはごく軽い認識阻害のまじないが掛けられている。

 そうでなければ、魔女帽子をかぶった老女、フクロウを連れた子どもなどがたむろしている状況だ、絶対に問題が起きる。

 その認識阻害のまじないのおかげで今のマリーも周囲から異様と思われない様子だ。

 ビンセントとグレゴリーがどう反応しようか悩む所で、ドラコが声を掛けた。

「お前、重くないのか?」

 それは思った。

 多分グレゴリーもそう思ってる。

 彼女はその言葉に、

「慣れてるし、ものを持ち上げるのにはコツがあるからね、後から教えたげる。

 それよかさ、私、ホームへの行き方とかよく分かんないんだよね、付いてって良い?」

 と、気楽な感じでそう返した。

 これがその後「ホグワーツの狂犬」「スリザリンの闘犬」「噛まれるぞ!マリーが来る!?」等の異名を持つことになるマリー・ウェリントンとビンセント・クラッブとの邂逅だった。




蝙蝠の名前はオジー・オズボーンから頂いております。
オズボーンさんのお家の改装の際、屋根裏に蝙蝠の巣があって、それで改装ができなかった、というお話から着想を得ております。
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