彼らにくっついて9と3/4ホームへと来てみると、目の前にはド派手な「汽車」が!
これが「ホグワーツ特急」かあ!?
うわ、ずいぶんと高級感…。
中はなじみ深い座席の作りではなく、4~6人用の個室、コンパートメントに区切られている。
男の子3人組に私で一部屋使わせてもらう事に。
マルフォイ君が言うにはこの列車は毎日という訳でなく、年に6回程度しか走らない特別なものなんだそうだ。
なんか路線がもったいないなあ、と感じるのは私がケチくさいからかもしれない。
なんといってもこの辺りの魔法族はほぼ全員がホグワーツに入学するらしいから。
ヨーロッパには後いくつかの魔法学校があるんだそうだけど、イギリスの辺りにはホグワーツ、後は小さな私塾みたいのがあるだけらしい。
そうなると、しっかり学べて就職先も当てになりそうなホグワーツはまあ鉄板だろうね。
やっぱり魔法界の事は魔法界に暮らす人に聞くのが一番だなあ。
まあ情報が偏ることもあるだろうから、いろんな人に話を聴くのが良いと思うんだよね。
その方が私も楽しいし。
とか話していると。
「!?」
おや、マルフォイ君だけじゃなく、クラッブ君まで窓の外を気にしている。
因みにゴイル君はなんかけったいなチョコレートに夢中だ。
蛙みたいな見てくれの、しかも蛙みたいに動くやつ。
なかなかに面白い。
それはさておき。
どうやらマルフォイ君は魔法界の有名人をめっけたようだった。
なんか「ポッター」だったかな?
私は魔法界の事はまるで分かんないから何とも言えないんだけど。
興味なさそうな顔をしていた私を見て、マルフォイ君は意外そうな顔をした。
ふむ、「ハリー・ポッター」君ねえ。
いわゆる魔法界における勇者みたいな子らしい。
生まれたばかりで大魔王みたいな強力な魔法使いをやっつけたとか。
よう分からん。
そう言うと、3人は口々に「どんな生活をして来たんだ!」と。
なんで、自分は孤児であること、親がどんな存在だったかもわからない事、魔法界に関わらずに生きてきたことを伝えると、彼らは唖然としていた。
まあそうだよね、自分たちの常識外で生きて来たんだし。
ついでに言うと、一般的なマグルとも違う生き方だしなあ。
そこそこバイオレンス。
なんかお通夜みたいになっちゃったが、私が気にしていないことを告げると若干空気は緩んだかな?
それよか、有名人に会いに行かんで良いのかい?
私は興味ないけどね。
ポッター君とやらは私と同じくマグル界で育った子らしく、そうなると常識を知らんのだろう。
色々教えてやらねば、って感じで3人は盛り上がってる?(ゴイル君は未だチョコに夢中っぽくて気もそぞろ、って感じだけど)
で、汽車が動き始めて暫くして、ポッター君に会いに行くことにしたようだ。
私? 流石に興味のない事に首突っ込む気になれなかったんで手を振っていってらっしゃい、と。
まあ荷物番する人も必要だろうしね。
マルフォイ君達は揃ってコンパートメントを出て行った。
そうしていると、個室のドアがノックされた。
「はいよぉ」
声を掛けるとがらりとドアが開いて、
「あの…」
気の強そうな栗色の髪の女の子、丸っこい顔の男の子がそこにいて。
「あの、ネビルのヒキガエルを見ませんでしたか?」
女の子がそう尋ねてきた。
確かヒキガエルって一年生で持ちこめるペットの種類の中にいたっけ。
少なくともこの近辺にはいないかなあ。
そういう「匂い」がしないしね。
私は犬とか程じゃないけどまあ人間としては鼻が良い方だ。
神さまからもらった「頑健な肉体」は感覚器も優れているようなんだよね。
で、まあヒキガエルの匂いは独特だから、近くにいると分かるんだけどね、それは感じない。
そもそもヒキガエルってハグリッドさん曰く、流行遅れだそうで、今回の列車に乗っている数が少ないと思われる。
周囲の個室からはそれらしい匂いがしないしね。
だからこの近所にいればかなり見つけやすいと思うんだけど。
ってことを男の子と女の子に話した。
女の子は、
「そういう事が分かる人もいるのね、魔法界って凄いわ」
と言っていた。
いや、魔法界云々は関係ないんだけどね。
私、マグルの出だし。
ってことはこの子もマグルの世界で生きてきた子なのかなあ。
まあともかく、ヒキガエル、トレバーを見つけたら教える、ってことで彼らとは別れたのでした。
これがこの数年に渡って成績上位者に名前を連ね、トップ争いを繰り広げることになる集団の1人、「ハーマイオニー・グレンジャー」との出会いだったのです。
さて、暫くするとマルフォイ君達が帰って来た。
ずいぶんとぷりぷりしている。
で、ゴイル君が指をおさえている。
なに? 怪我したん?
なんかねずみに噛まれたとのこと、ってそれはダメだろ!?
ほれ指出して!
感染症が怖いので荷物から出した消毒用アルコールを染み込ませたガーゼで傷を洗い、自作の傷薬(漢方の奴ね)をつけてその上からキズバンで保護して終わり、と。
多分使ってるのは上薬だけだから大丈夫だと思うけど、万一傷口が痛むようならホグワーツついた後にちゃんと保健室行ってね、と。
これで一安心かね。
で、どうしてそんなに怒ってるん? そう尋ねると。
ふむふむ。
…あーなるほどね。
マルフォイ君もやっちゃったと思うけど、ポッター君もなかなか。
マグル生まれの私としてはどっちにも全面賛成は出来ないかなあ。
まあそんなに不満げな顔しないで。
まず、マルフォイ君達はどれくらいマグルの事を知ってる?
ってか知らなくても困んないでしょ?
それと同じなんだよ。
私もさっきからみんなの話を聞く時、なんでもない所で驚いてるでしょ?
そう、マグル育ちって君たちとの常識が違うんだよ。
そうだねえ、聖二十八家って私なんかにはピンとこないの。
でも、魔法族にとって「血を残す」って大事でしょ?
そこから聖二十八家が特に誇りになるのは理解できるし、その一つだって言うマルフォイ君が自分ちを誇りに思う気持ちもわかるんだよ。
で、ポッター君だけど、まあ多分そこいら全く触ってないんじゃないかな?
本人、魔法使いだって言う実感ないだろうし。
だからさ、魔法使いの世界に十分に馴染んでから改めて話せばいいんじゃないかなあ、なんて思う。
と彼らに言ってみたんだけど、結構ポカンとされた。
むう、ちょっと難しかったかね。
まあそれでもマルフォイ君はある程度理解してくれたらしい。
クラッブ君とゴイル君は頭の上に?マークが飛んでる状態w
しょうがないんだけどね。
まあ簡単に言うと、
「相手は常識がないから常識が付いてからお話ししよう」
ということ。
と言ったら二人は理解した様子。
なんかドヤ顔してたから、なあんか勘違いしてそうだけど。
なんてやってたら、そろそろ着くみたい。
こっから私の学生生活が始まる、ものすごい楽しみだ。
変な女に懐かれた:マルフォイ家の嫡男ドラコの言
ドラコ・マルフォイは非常に怒っていた。
ハリー・ポッターがドラコを拒絶したのだ。
ホグワーツ特急に乗り、魔法学校への入学の旅の途中、ドラコはぜひともハリーに会っておくべきだと思っていた。
彼は魔法界においてヒーローのような扱いを受けている。
彼がまだ赤ん坊の頃、
そのような人こそ自分の友人にはふさわしい、マルフォイ家の嫡男である自身には、ドラコはそう考えている。
にもかかわらず、
「あいつはウィーズリーの手を取ったんだ…」
ハリーと同じコンパートメントにいた少年、ロン・ウィーズリー。
ウィーズリー家はマルフォイ家と同じく聖二十八家に選別される純血の魔法族、混じりけのない魔法使いの家系、とされる名家だ。
十年ほど前の起きた魔法使い同士の大戦において大魔法使いヴォルデモート卿についたマルフォイ家に対し、ウィーズリー家は魔法界の英雄であり現在のホグワーツ魔法魔術学校の校長であるアルバス・ダンブルドア率いる不死鳥の騎士団の一員として敵対した。
無論、マルフォイ家はヴォルデモート卿の「服従の呪文」に囚われており、それは本意ではなかった(はず)。
とは言え、やはり名家同士の確執というものは存在するのだ。
ハリーがとるべき手はロンではなくドラコだということは明白なのに。
そんな訳で自分達のコンパートメントに戻る間、ドラコはとても不機嫌だった。
自分達の個室に戻って来ると。
「お、おかえりー」
特急に乗る少し前に出会った少女、マリー・ウェリントンに出迎えられた。
彼女もまたマグル生まれだという。
本来ならばドラコ・マルフォイが相手にしないマグル生まれ。
しかも親に捨てられた、という事は血脈も分からないという事だ。
だが、マリーはドラコ、ビンセント、グレゴリーの話を興味深く聞いてくれた。
それに彼女は聞き上手でもあり、話し上手でもあった。
クィディッチをマグルのスポーツに置き換えて逆にこちらの興味をかきたててくれた。
マグルが好きではないドラコ達も、少しくらいはマグルの世界に興味を持ちそうな、そんな話をしてくれたのだ。
ハリーに最初会った時、クィディッチの話を振っても全く反応してくれなかったのとは対照的だった。
だからだろうか、ドラコのマリーへの評価は高くなっていた。
ハリーとロンとの邂逅をドラコは「無意識に」盛ってマリーへと話した。
どれだけ彼らが野蛮であるか、失礼であるか、こちらがどれだけ紳士的に会話したか、など。
マリーはロンの鼠に噛まれたゴイルの指の治療をしながらドラコの話を聞いていた。
そしてふむ、と呟くと少しの間考え込んでいた。
若干の時がたち、ドラコがじれて話しかけようとした時だ。
「う~ん、マグル生まれの私としては、どっちにも全面賛成は出来ないかなぁ…」
それはドラコの欲しい言葉ではなかった。
むっとして言い返そうとしたドラコ。
そこに、
「そんな顔しないでよ、まず話聞いて欲しいな」
彼女はそう言ってきた。
つまりはなんでそう思ったか、それを話してくれるという事だ。
彼女の説明は「2つの文化の違い」という事だった。
マグルにおいては聖二十八家のような「高貴なる血」は(イギリス王家のような)よほどの例外でない限り考慮されないのだと。
ドラコの常識においてはありえないことだ。
だが、
「純血の血族って魔法族にとっては重要なものだと思うよ。
なんてったって魔法が使えてこそ魔法族、ってのあるだろうし。
だからこそ、魔法が使える人たちがたくさんいる聖二十八家は魔法界において重要なの」
一定以上の魔法使いがいなければ魔法界は衰退する。
だからこそ、「血を繋ぐ」義務を持った一族は敬意を払われるべきだ、と。
一方そういった義務のないマグル界。
そこで育ったマリーにはそれが分からなかった。
「だからさ、君達が話してくれた事は、私が魔法界を分かるために大事だったんだよ」
彼女はそう言う。
そして、
「その、ポッター君だっけ、彼はそう言う事知らないんだよ。
知らないとどう考えていいかも分からない。
だからさ、もうちょっと時間あっても良いじゃない?
ポッター君が魔法界の事をよく知って、それで改めてお話すればいいんじゃないかなあ、と思うんだけど」
ドラコにしても、彼の常識はあくまで魔法界のもの、マグルの常識はマリーから聞きかじったほんの少しのものにすぎない。
ドラコ・マルフォイは決して愚かではない。
確かにその世界は狭いかもしれないが、自分の「外」にも自分の知らない世界が広がっている事、それは漠然とであるが知ってはいた。
それが実感できたのはマリー・ウェリントンとハリー・ポッター、この二人との関わりからなのかもしれない。
この時から、ドラコはマリーをクラッブ、ゴイルと共に近くにおいてつるむことになる。
その結果、「猛犬使い」「マリーが暴れたぞ!?マルフォイを呼んで来い!」といった微妙な二つ名で呼ばれることになるのだが、それはまた別の話。
…一方、クラッブとゴイルはまるで理解していないようだった。
というよりも、マリーの言葉を間違って解釈しているようで、「魔法界の事を知ってる俺たちエライ!」と変換されたようだ。
彼ら二人は入学してしばらく、ハリーにマウントを取りに行ってはハーマイオニーにへこまされる日々が続く事になる。