ホグワーツに汽車が着いた。
いやあ便利だよねえ、荷物は置いてって良いってさ。
まあこれだけの子どもたちが荷物を持って押し合いへしあいをするとなると怪我することもありそうだしねえ。
まあ助かる。
という事で正装用のローブと帽子、後は杖持ってと。
「ちょっと待て」
ドラコ君の呼びとめが。
「何?」
「それは何だ?」
なんかおかしい…、あ、これね。
「私の魔法の杖」
「嘘付け!」
「おかしい!」
「ぜってえ違う!」
…うん、分かるよ、分かる。
でもね、事実なんだこれ。
だからね、突っ込まれても返せないんよ。
私がみょーな顔をしたからか、彼ら3人組は本当だってわかったらしい。
暫く4人してびみょーな顔をしていた。
さて、そんな風にしていると、やがて人の流れが緩やかになって来た。
そろそろ出ようかな。
ってことで、4人で個室を出て廊下に、そこから外に出ようとして。
ん?
この匂いは…。
「どうかしたのか」
クラッブ君がそう聞いてくる。
「うん、さっきさ、ペットのヒキガエルが見当たんないって子がねえ、探しに来たんだけどさ…」
そう言いながら、鼻をふんふんと。
そうすると、隣の隣のコンパートメントからのっそりとなかなかに立派なヒキガエルが歩いてきた。
これかな?
「君はトレバー君かな?」
ダメもとでそう言うと、「ゲコッ」と答えが返って来た。
私はひょいとヒキガエルを抱えあげると肩に乗せた。
「そんなのほっとけよ、時代遅れだぜ」
とゴイル君は言うけれど、
「まあ、ご主人さんに置いてかれちゃかわいそうだし」
ってことで連れて行くことにした。
さて、さっきの子達は、と。
お、ハグリッドさんだ。
「イッチ年生! イッチ年生はこっちだ!」
あれかな、今日の誘導係とかかな。
手を振って合図を送ると、
「おお! マリーも元気じゃったか! Jr.も元気でやっとるぞぉ」
だって。
声がでっかくてよく響く。
「ハグリッドさん! ネビル君ってその辺りにいない? 彼のペットめっけて来たんだけどぉ!」
そうこっちからも返す。
そうすると、
「トレバー見つけてくれたの?」
さっきの女の子、ハーマイオニー・グレンジャーさんが、トレバーの飼い主のネビル・ロングボトム君の手を引っ張りながらやって来た。
幼馴染かなんかか知らん、あ、違うのね。
グレンジャーさん、姉御肌のようだねえ。
で、ロングボトム君は、
「あ、あの、トレバー見つけれくれて、その、ありがとう…」
ちょっと内気な子なのかな?
まあ特に気にする必要はないし、トレバー君を返し、手を振って別れた。
うおおぉっ!?
凄い! これは凄い!!
ホグワーツ魔法魔術学校には小舟に乗りこんで行くんだけど、その向こうに見えてるのがさあ、もうテンションあがるね。
うっすらと雲のかかった月明かりに照らされ、黒い湖の向こうにうっそうと
あれが、あれがホグワーツ!
お城のあちこちに火が灯され、すっごい神秘的!
ああ語彙が足んないぃっ!!
「落ち着け」
「鼻息荒いぞ」
「突進すんなよ」
おいこらマルフォイ君はともかく残りの二人、私を何だと思ってる?
「いやそのまま湖に飛び込みそうな顔してた」
「うん」
そんなやつ
「いるんだと、たまに」
マジすかマルフォイ君!?
魔法界ハンパねえ!
…ふう、頭冷えた。
魔法族ってかなりエキセントリックな面があると思ってたけど、感情が盛り上がるとおかしなことを始める人達が一定層いるってことか。
まあ私も魔法族だし、そう言う面があっても仕方ない、という事にしておこう、うん。
なんてやってると、
ばさばさっ
鳥とは違う感じの羽ばたきが私の頭上をくるりと舞う。
あの羽音は!
「Jr.!」
ばさりと言う音と共に、私の肩にのしっと重さが。
普通は聞こえないんだけど、甲高いきゅうきゅうという声が私には聞こえる。
周囲の人たちはびっくりしている様子。
だが私は気にしない!
久し振りのJr.のかんしょくぅ!
撫でくり撫でくり。
何ぞとやってると、
「ほぉれ、イッチ年生は四人ずつボートに乗って!」
とハグリッドさんに言われて、マルフォイ君+私で小舟に乗りこんだ。
ゆらり、ゆらりと小舟はホグワーツに近づいていく。
この迫力は、ため息すら出ない。
暫くすると蔦がかかっていて見えにくくなっていたトンネルの入り口を通り、そしてそこを抜けるとそこは船着き場、という感じの所だった。
全員が下りると、
ばたんっ!
目の前にあった結構大きめの扉が開き、そこには「ザ・教育係」といった雰囲気の女性が。
ちょいと骨ばった妙齢の、エメラルド色のローブが似合うきりりとした方だ。
学長とか副学長とかその辺り後位の方かしら。
なんにせよ出来るだけ逆らわんとこ。
そう思わせるくらいには堅物そうだった。
その人(マクゴナガル先生というそうだ)に引率をバトンタッチ、それと同時にJr.もハグリッドさんが引き取っていった。
ああ、マイスイートが行っちゃう…、って、君らなんでそんな珍奇なもん見る目でこっちを見るかね。
「いや」
「実際」
「珍奇だろ」
…後で覚えておれよサンニングミ。
マクゴナガル先生に先導されて進む私達。
なかなかに重厚な雰囲気のある通路を進んでいく。
で、あまりに巨大な石畳のホールを通り過ぎて、その脇の部屋へと私たちは入っていった。
今から新入生の歓迎会をするんだそうだけど、その前に私らが入る寮を決めるんだとか。
全寮制とは聞いていたけど、寮が4つかあ。
あれかね、ホグワーツ創設の4人にちなんでるんだろうね、と思ったらやっぱり。
勇猛果敢な騎士のようなグリフィンドール、優しく公平であり忍耐強いハッフルパフ、知識を求め守護する賢者レイブンクロー、狡猾であり目的のためには手段を選ばないが友の為に戦う事の出来るスリザリン、って感じ。
なんかあれだね、前世のRPGとかで出てくる騎士、僧侶、賢者、でスリザリンは盗賊または暗黒騎士とかそんなとこのイメージかな。
資料の中だとグリフィンドールとスリザリンは魔法族のあり方で意見が対立して仲たがいをしたそうで、それが今のグリフィンドール寮とスリザリン寮の仲の悪さにも繋がってるって話だけどどうなんだろうね、実際。
さて、それで早速その組みわけが始まった訳なんだけど。
判定するのはボロっボロの三角帽子。
どうやら自我があるようで、いきなり朗々と歌いだした。
なかなかに美声ではなかろうか、なんて。
実際に始まってみると、マルフォイ君、クラッブ君、ゴイル君の三人組はそろってスリザリン。
ポッター君とウィーズリー君はグリフィンドール。
グレンジャーさんとロングボトム君もグリフィンドールだった。
妙にポッター君とこだけ長かったけど、なんかあったのかね。
で、大分後になって、というかほとんど人がいない、私の他には黒い肌の美少年だけだ。
「ウェリントン・マリー!」
お、呼ばれた。
ドンけつではなかった様子。
立ちあがって組みわけ帽子の所まで行く。
「じゃ、よろしくね」
そう挨拶をして帽子をかぶる。
『ふむ、組みわけ帽子に挨拶をする新入生は久し振り。
さて…』
帽子はなんか長考に入ってる様子。
なんか周りがざわついてるぞ。
『ふむ、難しい。非常に難しい。勇気はなかなか。頭は冴えて。才能もある。友を思う気持ちは強い。ほほう、己の好きに生きたいというストレートな欲望も持ち合わせる。何とも面白い。今年の新入生は豊作よ』
そっすか。
んで、どこが良いんでしょうかね。
『君ならばグリフィンドールに入ればこの国すら動かす英雄となれるであろう』
…英雄、かあ。
それは魅力だけど、
腕を広げて取りこぼすのはごめんなんだよね。
『…それもまた英雄の資質。 しかしそれならば、』
帽子はその後こう高らかに宣言した。
「ならば、スリザリン!」
ふむ、「狡猾であるが真の友を得る」スリザリン、ね。
私は帽子を脱いで丁寧に置くと、スリザリンの寮生の集まる一角に足を運んだ。
あまり歓迎はされてない様子。
まあそうだろうね、向こうの学生のほとんど全部は純血主義の魔法使いのうちの子らしいから。
まばらな拍手の響く中、喜んでくれているのが分かるのはマルフォイ君、クラッブ君、ゴイル君くらいか。
「おんなじ寮だねえ、今後ともよろしく」
ひょいと手を挙げて挨拶すると、
「こちらこそよろしく」
「だな」
「おう」
と返してくれた。
お、なんか周りの同級生や上級生の雰囲気が変わったね。
これはマルフォイ君、というかマルフォイ家の力かね。
どうやらマルフォイ家はマルフォイ君が言う以上に力のある一族のようだ。
お、最後の子が終わったようだ。
彼もスリザリンか。
こっちは万雷の拍手。
どうやら彼は名家の生まれらしいね。
私もしっかり拍手する。
今後暫くは同じ寮で暮らすんだ、少しでも良い関係を築きたいものです。
さて、全員の配置が決まった所で、上座の方を見てみると、ずらりと教員の方がいらっしゃるようで。
こっち側とはかなり遠い所にハグリッドさんの顔が見える。
軽く手を振ってみると、なんかみょーな顔をしてるなあ。
まあ、
中央のこっち寄りにはスネイプ先生が据わっていた。
ふっと眼があったので黙礼。
そうすると、スネイプ先生はすっと薄く頷いた。
むう、こう言った気障な仕草がかっこいいのです。
真ん中にいるのが校長先生かな?
確か、アルバス・ダンブルドア先生。
なるほど、今のホグワーツは英雄ダンブルドアが仕切ってるんだねえ。
で、まあここから校長先生の祝辞とか、有力者からの電報とかそういう奴が続いて、目の前の美味そうな食事が冷えてしまう、と。
非常に残念。
「新入生おめでとう! 歓迎会を始める前に、二言三言言わせて頂きたい」
ほれ来たぞ。
何ぞと考えていたのだけど。
「そーれ! わっしょい! こらしょい! どっこいしょい! 以上!」
へ?
校長先生それだけ言って席に座っちゃった。
…すげえ。
なんつうか、どっかの塾長を思わせる大物感だね。
「ね、今のありなの?」
拍手をしつつ隣のゴイル君に聞いてみるんだけど。
「え、分わかんね。 それより食おうぜ」
…うん、たしかに!
先生が訓示wをサクッと済ませてくれたんだから次は食わねば!!
うまい! うまい!! う~ま~い~ぞ~っ!!
肉がうまい! 魚もうまい! フライ系もさいっこう! サラダも新鮮だし、ドレッシングもおいし~!!
ゴイル君も食べなよ、ってすっごい勢いで食べてるよね、負けてられん!
クラッブ君、呆れてないで食べないとなくなっちゃくよ! ってか私が食べちゃうよ!
あ、ニンジン残してんのね、別にいんじゃない? 今日は歓迎会、お祭りよ? ニンジン一つで楽しめないようじゃさみしいってば。
という訳で私にそれ頂戴(笑) かわりにこっちから取った鶏腿のローストあげよう。
マルフォイ君、なんか食進んでないよ、しっかり食べないと!
ああ、ちょっとそこだと取りづらいよね、私ん席と代わろうか。
あ、どうもこんにちは、マリー・ウェリントンです、お名前うかがっても?
『血まみれ男爵』と仰る? へぇ、スリザリン寮の「寮憑き幽霊」?
ははあ、ホグワーツでは幽霊が各寮の門番をしてるんですね!
あ、私「マグル生まれ」なもんですから、その辺りの常識が疎くてですね、ご教授いただけると嬉しいです。
はい、今後ともよろしくお願いしますね。
ええ、食べっぱぐれないようにしっかり頂きます。
まだまだたべるぞぉ~っ!!
あいつは絶対おかしい:新入生グレゴリー・ゴイルの言
食べるのに夢中になり、ある程度胃袋が満たされ、一息ついたグレゴリー・ゴイル。
隣にいるはずのやかましい女、マリー・ウェリントンの方をふっと振り返った。
マリーはドラコ・マルフォイの隣にいるビンセント・クラッブの反対側、グレゴリーとの間に座っていた。
彼女はビンセントとグレゴリーに料理を上手く取り分けてくれていた。
グレゴリーもビンセントも、食に関しては好き嫌いが「若干」はある。
年頃の子どもであるし、肉は好きで野菜は嫌い。
そんな二人に「今日はお祭りなんだから」と野菜を上手く避けてマリーは給仕してくれた。
おかげでグレゴリーは食べることに専念し、やっと人心地ついた所でマリーに礼を言おうとしたわけだ。
が、
そこに座っていたのは上品にローストビーフをつまむドラコであった。
あれ? マリーの奴どこ行った?
見回すと、ドラコの座っていた所にマリーが座っており、隣にいる「幽霊」と
見間違いかと思って目を瞑り、もういっぺん目を開けるとそこには、幽霊と会話を楽しむマリーの姿。
あいつ、確かマグル生まれだよな。
マグルってろくに幽霊とか見た事ないんじゃなかったっけ?
なんでそんな普通に「血まみれ男爵」とお話ししてんの?
わからん。
こういうときは隣に座っているドラコに話を聞くに限る。
大体において、ドラコ、ビンセント、グレゴリーの三人でいるときは、ドラコがその意思決定をする。
そう言う事になっている、というよりはグレゴリーにとってはその方が楽だから。
考えるのはあまり得意ではないグレゴリーにとって、ドラコは仕える相手というよりはいてくれると楽、な存在であった。
で、どことなく幸せそうに鳥のローストをつまむドラコに聞いてみると、マリーがドラコに席を替わるよう提案してくれたのだとか。
で、
「あれは僕を助けよう、というよりは、『血まみれ男爵』と話をしてみたかったんだと思うぞ、見てみろよ、わくわくしてる」
そう言う。
グレゴリーにはあまり人の機微を読むような器用さはない。
だが、明らかにマリーは血まみれ男爵との会話を楽しんでいた。
…やっぱりあいつは、さっき止めなかったら「黒い湖」にダイブしてたに違いない。
奴は絶対変人だ。
グレゴリーはそう確信した。
残念なことに、それは間違いではなかったのである。
この話において、ドラコ・マルフォイ達三人組の会話が並ぶ場合、
「ドラコ」
「クラッブ」
「ゴイル」
の順番に並ぶものと考えてください。
クラッブとゴイルの会話が並ぶ場合は
「クラッブ」
「ゴイル」
の順番。
もしくはより「バカっぽい、脳筋ッぽい」セリフがゴイルのものと考えてもらうと多分正解です。