まあ不幸中の幸いは、この作品はVSクリフォトの規模がすごいことになるだけの作品だから、どうあがいてもそこまで長くならないことなんだ。
あとどうしてもこのカオスを制御するためのつなぎ役が必要だと考えた結果、自作品で唯一完結したが続編がデータの焼失でポシャったケイオスワールドの、出したくでも出せなかった小ネタの供養もかねて何人か出ているんだ。
ちゃんと必要な情報はこちらで出すので、別にケイオスワールドを見なくても致命傷にならないようにしているからそこは安心してね!
日本にある駒王町という地方都市。そこのあるマンションの一室に、ある人物が拳を震わせながら目を見開いていた。
男の名はアザゼル。聖書の教えに由来する三大勢力が一角、堕天使の組織である
今現在、この世界は空前の和平ムードが漂っていた。
いがみ合っていた堕天使、天界、悪魔の三大勢力が和平を結び、同時に世界最強ともいえる
大きなとっかかりと警戒するべき難敵の相乗効果もあってか、主要な神々は三大勢力の和平に繋がる形で和議を結んでいる。
とはいえかつていがみ合い信徒となる人間を奪い合い、当然殺し合いも何度も行った間柄。主要勢力の頂点はともかく、小規模勢力や末端は表向き歓迎しているだけで内心では不満を隠しているだろう。
しかし、それもこの数か月で落ち着きが見えてくるとアザゼルは考えていた。
禍の団の主要派閥、悪魔が戦争をとった結果追放した、戦争に拘った初代魔王の遺児達が率いる旧魔王派と、英雄の末裔や強大な神器保有者で構成される人間達の勢力である英雄派は、今現在主要幹部が戦士もしくは捕縛にあい、壊滅的打撃を受けている。
彼らは何を考えているか分からないオーフィスを切り捨て力を奪い、都合のいい神輿を作ろうとして活動した。
しかし力を奪う為に利用したと思った、ギリシャ神話体系オリュンポスの和平反対派ハーデスの策にはまり、内ゲバによって隙ができた結果、連鎖反応のように壊滅的打撃を受けた。
そして双方の首魁を打倒した教え子の兵藤一誠により、オーフィスその物とは一種の和解に近い状態となっている。
オーフィスは力を奪われたが、結果として禍の団にとって力の源泉ともいえる蛇を作り出すことは不可能になった。権力を握って運営できるだけの人物を失い、制御を失いかけている今の禍の団なら脅威度は低い。
加えて和平も進んだことで、主要派閥の主要メンバーは酒飲み友達となっているレベルだ。これではよほどのことが重ならない限りは和平反対派も動けないだろう。
ハーデスは油断できない相手だが、同時に自分の立場を上手く利用してギリギリの塩梅を見極めている神だ。少なくとも、こちらにとってもあちらにとっても準備期間になると踏まえている。
そしてそんな兵藤一誠が所属する、上級悪魔リアス・グレモリーの眷属を主体とした、駒王学園高等部オカルト研究部。
その顧問としての仕事を無理を言って休んで、アザゼルはメールの内容を見て奥歯を噛み締めた。
「……冗談きついぜ、この野郎………っ」
そのメールは、真っ先に題名でインパクトがあり、最初の文面でまず最大の要点を伝えていた。
題名:乳神という異世界実在の物証から派遣する、新たな禍の団の首謀者とその後について。
本分:閃光と暗黒の龍絶剣総督殿。貴方の隠し研究所第3号にて、数十の異世界を束ねる組織の者と貴方に伝えるべきことがある。
「よりにもよって、神の子を見張る者でもごく一部しか知らない秘匿回線で、なんつーもんを送ってきてるんだよこの野郎は」
そうぼやきたくなるのも無理はない。
神の子を見張る者の秘匿回線を経由して送られてきたこのメールは、この最初の文面からして驚愕の連続だった。
寄りにもよってかつての黒歴史で出来た仇名を使って意識を向けさせたところに、組織のメンバーにすら教えていない隠し研究所とその番号を指定して、更に数十の異世界を束ねる組織と同列に語って伝えるべきことがあるなどといったのだ。
そもそも、異形達にとって異世界の存在は「可能性はまずあるだろう」程度のものだった。
神話体系クラスの勢力なら固有の異世界は持っている。悪魔や堕天使は聖書の教えにおける地獄である冥界に住んでいる者が殆どだ。
だがしかし、乳神という存在はそのどれでもない存在、そういう正しい意味での異世界から接触してきた存在なのだ。
割と頭がどうかしている神ではあるが、異世界の研究を行う者達からすれば青天の霹靂と言ってもいい。そしてその異世界がどういうもので、他にあるかどうかすら分かっていないのが現状なのだ。
……それが、数十の異世界を束ねる組織と書かれている以上、異例の事態と言ってもいい。
そして更に文面は続いている。
――我々の動きはまず間違いなく敵の想定範囲内に収まっている。その為できれば魔王クラスを打倒可能で、かつ種族の違うものを何種類か含めた部隊編成で来てもらいたい。
なお、神器保有者は最少人数にすることを求む
この時点で、このメールを送った者はかなりの警戒をしていることが想定される。
少なくとも魔王クラスや神クラスが複数いるような敵がいると言外に告げているのだ。更に
聖書の神が作り上げ、今もシステムによってある程度の管理がされる異能、
その持ち主を控えめにする必要性がある相手で、かつ魔王クラスを複数用意してほしいだけの脅威。
この時点で、アザゼルは警戒必須と判断している。
そして何より、最後が問題だ。
―つきましては、秘匿回線の無断使用の詫びを兼ねた要請の前金として、このデータを送る。神喰いの神魔。
神喰いの神魔という名前も気になるが、最も衝撃を受けたのはその添付ファイルの内容だった。
それを再び確認して、アザゼルはため息をつくと決意する。
「……行くしか、ねえわなぁ」
そして後日、学園が休日の時のとある山間部。
「……で、三大勢力から一人ずつってのは分かりますけど、なんで俺とこの人なんすか?」
「その通りです。神器無しで異種族の魔王クラスとなれば限られますが、何故私にお声掛けを」
連れてきたのは二人、それぞれ天界の代表である天使長ミカエルと、悪魔側の代表格である現魔王サーゼクス・ルシファーに頼んで送って貰った人材だ。
天界側からは、人間から天使となった存在である
悪魔側からは、サーゼクスの妻であり、眷属悪魔の筆頭である
間違いなく魔王クラスとも渡り合える戦力を揃えてきてみたのは、アザゼルの隠し研究所である山中にあるあばら家だ。
ちなみにこれはダミーであり、地下にちょっとした豪邸レベルの施設が存在している。
「しっかしなんていうか男のロマンっすねー。地下にある秘密基地的なやつって♪」
「しかし組織にも内緒でいくつも保有しすぎでしょう。これまでの経験から見ても組織の金を着服して使っていた可能性がありますし」
「うっせぇ。これが終わったら説教と捜索が始まること確定なんだから、今から説教はよしてくれ。デュリオの感想を見習えってんだよ」
そうグレイフィアに返すと、アザゼルは呼吸を整えると周囲を軽く警戒する。
「気を抜くなよ。いいか、最悪のパターンが的中したらデュリオが露払いをしている間に俺とグレイフィアで最悪を叩き潰す。……いいな、最悪のパターンはあり得るという前提で準備しろ」
「うっへぇ。話には聞いてますけど、ホントに出てくるんですかぁ?」
アザゼルの言葉にデュリオはそう言うが、しかしそれはいい加減な態度だからではない。
来る可能性も危険性も理解している。だが同時に、伝え聞いた話からは動く可能性が考えにくいのだ。
それはこの場で最も真面目で自他ともに厳しい態度をとるグレイフィアも同感のようだ。むしろ、彼女だからこそそう思えるともいえるだろう。
「……あの男は確かに脅威ですが、それはあくまで能力の話。今更彼がそれだけの動きを見せるとは、正直可能性は低いと思えます」
「……いえ、残念ながら彼は十中八九動きます」
その言葉は、あばら家の方から聞こえてきた。
三人が静かに戦闘の体制をとるなか、しかしあばら家からは戦意は見えない。
「申し訳ありません。まずは彼女達にある程度の説明をする必要がありましたので、証拠代わりにこの施設を利用させてもらいました」
その言葉と共に現れたのは、一人の少女。
まだ十代前半と取れる姿を持った少女は、後ろに一人の女性を連れていた。
緑色の髪をした、一見すると三十代ぐらいに見える女性。
だが同時に、アザゼルとグレイフィアはすぐに悟っていた。
目の前の女性は、相当の修羅場を経験していると。
「……えっと、そこの君がメールの送り主かな? で、そちらの女性が異世界を束ねる組織の人?」
その言葉に対して、少女は静かに首を振る。
「申し訳ありません。メールの送り主は別なのですが、彼は懸念材料が新たに出たので私が代わりに。そして彼女は確かにその通りです」
そして少女に合わせるように、女性は微笑を浮かべながら頷いた。
「……初めまして。彼女のメールでどう書かれていたかは知りませんが、私は時空管理局総務統括官の一人、リンディ・ハラオウンといいます」
「三大勢力の代表で来た、
リンディと名乗る女性が手を伸ばしてきたので、アザゼルはそれを握ることで応じる。
警戒を捨てきるべきではないが、向こうが友好的な態度をとっているのなら、警戒は連れてきた二人が重視するべきだろう。
「時空管理局……か。宇宙物のSF見たく、「表立って会うべき対象」は本来選んでるってことでいいのかねぇ?」
「ええ。時空監理局に正式に属する世界は六十を超えますが、次元世界を認識し航行技術を持った上で正式に管理局の管理と保護を受けている世界で構成されています。地球に関しては認識されていないことから、監理局では第97管理外世界として、監理局外の魔導犯罪が起きないかの監視にとどめておりました……が」
アザゼルの会話に丁寧に応じつつ、しかし表情を切り替えると頭を下げる。
「十三年ほど前、二度ほど我々が捜索や封印といった管理を行っている古代遺物-この世界流に言うならば魔導技術を使ったオーパーツと言えるロストロギアの悪用や暴走による事件に巻き込んでしまいました。その影響でいくつもの自然災害が発生しており、その不手際、お詫びいたします」
その言葉に、アザゼルは思い当たるものがある。
ちょうどその時、大規模な魔力反応が日本で発生したのだ。
あれには色々な勢力が大慌てであり、あわや悪魔の侵略活動かと暴発しそうになった者もいた。
そういう意味では文句の一つも言うべきだろうが、しかし彼らのことを悪く言う資格はこちらにはない。
「いや、こっちも暗部的な仕事はいくらでもしてるし、人間達に秘密にしているのはお互い様だ。少なくとも俺達から突っかかることは無えよ」
「そっすよ! ミカエル様達は不幸な行き違いで怒ったりしませんから!」
「サーゼクス様達もその通り。大王派の方々もこれぐらいなら口うるさく動かないでしょう」
「ま、俺達の組織もダメな奴は何処までも駄目っていうか、やらかす輩は出てくるからな。そっちの方がよっぽどクリーンじゃねえか?」
「いえ、規模が大きい組織はどうしても齟齬や腐敗が生まれる物です。恥ずかしながら、監理局も規模が莫大すぎるので犯罪者やテロリストとの癒着がまれにありますから」
お互いにダメなところも告げるが、おそらくここまでは予定調和。
そして何より、警戒するべきことは一点特化だ。
「……で、そっちの嬢ちゃんの話を聞きたいんだが、どこまで聞いてる?」
「本題はあなた方来てからと。三大勢力を中心とした異形勢力についての説明を受けております」
そう言葉を交わしながら、ちらりと少女に視線を送る。
「一応聞くが、まさか一人だけってことは無いだろ?」
「はい、こちら側の都合で人数はさほど用意できませんが、実働の魔導士として派遣された者の内、二十名は下のシアタールームで異形の戦闘方面の説明ビデオを見ております」
「……内装や機能まで完璧に把握されてるのかよ」
思わずげんなりした。
「いえ、私はあの人からある程度の説明を受けただけです。それ以外に関してはそこまでは」
そう理を入れた少女は、まず優雅に一礼する。
和、それも武家社会の雰囲気を見せる礼と共に、少女は本題の準備に入る。
「……私はアンナ・マリア・シュヴェーゲリンの疑似サーヴァント、スパロ・ヴァプアル。またの名を、
洋の外見と和の雰囲気。その相反する要素と同じ、複数の名を名乗る少女。
そして最初の部分が特に気になる。
「……疑似サーヴァントってなんスか? あと、アンナ・マリア・シュヴェーゲリンっていうと
デュリオがそう言うが、彼が悪いわけでは断じてない。
だが同時に、教会としては少しは腹が痛む名前だった。
そして、白鷺と名乗った少女は頷いた。
「はい。ドイツにおける魔女裁判最後の被害者。アンナ・マリア・シュヴェーゲリンより力を借り、私はこの世界に現界している者です。そして―」
「異界より生前の記憶と力を宿したまま、この世界とは並行し先行する世界より意図せず来た、この世界に襲い掛かりかねない危機を知る者」
そう、これは大いなる異常事態。
「本来我々がいた世界の主、サイラオーグ・バアル様とリアス・グレモリー様に万が一がないよう、そして乳神が住まう異世界
異世界、次元世界、並行世界、そしてあろうことか宇宙の彼方の星々に住まう者達。
「リゼヴィム・リヴァン・ルシファー率いる
いまだ彼女すら全容を把握できてない、大いなる戦いの始まりの一幕。
「……どうかこの世界に無用の苦しみを生まぬ為、お話を聞いていただきたく思います」
ちょうどその時、全く別の形でもう一つの幕開けが起きていることに、彼らが気付くまでもう少し。
「いやいやいやいや! 情報量が多すぎるっての!! ちょっと受け止めるのに時間かかるからな!?」
その前に、つるべ打ちされたド級の情報に、その意味を理解した三大勢力側は落ち着くまで五分ほどかけることになる。
とまあこんな感じで、最初の掴みは書き終えました。
次の話は近いうちに。つるべ打ちでクロスオーバー要素を全部叩き込む話になりますので、そこはご了承を。