混界魔龍大戦駒王町―銀の風が呼ぶ運命   作:グレン×グレン

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 と、いうわけでシリアスにいったん戻ります。


十三話 黒幕が最後まで裏で待ってくれると思ってはいけない

イッセーSide

 

 

 

 

 

 

 

 

「気が付いたらいきなり敵襲とかどういうことなんですかもぉ!」

 

「分かる分かる! 俺はまだショックが抜けてないのに敵襲とか、ちょっと勘弁してくれよ!」

 

 気付け薬で無理やり起こされた者同士、俺は志村と愚痴を言い合いながら階段を駆け上がる!

 

 そして玄関の扉を開けると、その目の前で信じられない光景を目にしてしまった。

 

「あ、兵藤!? ここは兵藤の家なの!?」

 

「……ちょっと離して! 痛いってば!」

 

 うちの高校の制服を着た女子達が、なんかメカメカしい鎧に身を包んだ連中に捕まっている。

 

 っていうかなんだアレ。肉襦袢化ってぐらい膨らんでいるロボっぽい鎧は、頭の部分がなんか無駄にでかくて丸い。

 

 全体のカラーリングは青っぽいけど、顔の部分には丸いカメラがいくつもくっついているし……なんだアレ?

 

「……あれは学園都市型の駆動鎧(パワードスーツ)か。となれば装着しているのは洗脳もされてない只の犯罪組織とかチンピラってところだろうな」

 

 宮白がそう呟くけど、え、あれパワードスーツなの?

 

「ちょっとゴツすぎないか? もうちょっとスマートな方が動きやすいだろ?」

 

「装着者の肉離れといった負傷を防ぐ安全装置の所為らしい。あと学園都市製の駆動鎧(パワードスーツ)は、着た状態での動かし方をスーツ側が装着者に植え付けるから、あの程度なら問題はないだろうな」

 

 そ、そうなのか。凄いな学園都市。

 

「……となると、理論上は人型ではなく獣型、それどころかMA(モビルアーマー)じみた生物としてありえない形状も可能と見えるな」

 

「正解だ二世。最も、そういうのを長時間着ていると脱いだ時に体を動かすのが困難になるらしいからあまり使われないそうだ」

 

 二世と宮白がそう話し合う中、木場達もすぐに追いついた。

 

「そんな、彼女達は僕のクラスメイトだ……っ。今日は都心に行くと言っていたはずなのに……っ」

 

「卑劣な手段をやってくれますわね……っ」

 

 木場と朱乃さんも戦闘態勢に入るけど、人質がとられている状況だと動くに動けない。

 

「無関係な人達まで巻き込むなんて……ふざけんなよ、てめえら!」

 

「全くだ。こういうことをしてくる連中が相手ってことか。反吐が出るぜっ」

 

 衛宮と左さんも嫌悪感を顕わにするけど、駆動鎧ってのは無言のままだ。

 

 な、なんか怖いんだけど?

 

「……なのはさん! あの外見ってまさか―ッ」

 

「―うん、ちょっと気になるから、準備だけはしておいて」

 

 スバルさんと高町さんも、何かに気づいたのか訝しんでる。

 

「……ごきげんよう。あなた方がクリフォトとかいう組織の者達でいいのかしら?」

 

 そして、リアス部長は、真っ直ぐにそいつらを睨みつける。

 

「いくら同じ学び舎に通う者とは言え、ただの一般人を巻き込むなんて、万事に値する行為だと知りなさい……っ」

 

 盛大に睨み付け魔力も迸らせる部長だけど、駆動鎧は何の反応もしてこない。

 

「……兵藤! この女達、どいつもこいつもあんたを殺すとか言ってるの!」

 

「お願い助けて! こいつら、見せしめに何人も殺してる!」

 

 女子達の言ってることが本当なら、本当に許せねえ連中だ!

 

 これ以上好きにさせるかよ! こうなれば―

 

「……部長、騎士にプロモーションします! 速攻で洋服崩壊であいつら全裸に向くから、女子達をお願いします!!」

 

「そうね。私達が全力を出せば、数秒は拘束できるはず。その一瞬に全てを懸けるわ」

 

 ああ、まずは人質の解放が先決だ。

 

 俺は駆動鎧を睨み付けて腰を落として―

 

「その必要はない」

 

 ―なんか太いビームが真っ直ぐぶっ飛んで、駆動鎧ごと女子達が飲み込まれた。

 

 ………いや、ちょっと。

 

「何をやらかしてるんだぁああああ!?」

 

「躊躇なく人質ごと殺すなぁああああ!!」

 

 俺と志村が絶叫すると、砲撃をぶっ放した奴がため息をついた。

 

「落ち着け、二重の意味で勘違いをしているから落ち着け」

 

 宮白だよ。

 

 なんかグレネードランチャーっぽいを折りたたんで、薬莢というより弾丸っぽいのを取り出しながら宮白はそれを見せつけた。

 

「これは時空監理局の魔導士が魔法を行使する際に使用する装備類の中でも基本のストレージデバイス。その中でもカートリッジシステムというのを組み込んだ、独自開発品だ。カートリッジシステムは意外と使いにくいそうだが、魔術師(メイガス)の世界には宝石魔術という似たようなものがあったから意外と簡単だった」

 

「そういう問題じゃねえよ! あんた思いっきり民間人の人質事ぶっ放してますよね!? 確実に死にましたよね!?」

 

「その心配はないぞ新八君。時空監理局が使用する魔法には魔力ダメージ機能というのがあってな。……よほどのことがない限り*1後遺症すら残らない不殺攻撃ができる

 

 志村のツッコミに宮白はそう言うけど、そういう問題!?

 

「いやいや、俺達の学友なんだけど!? お前だって並行世界のとはいえ学友に対してなんてことを―」

 

「落ち着けイッセー。あれは敵だ」

 

 はい?

 

 俺達がきょとんとしていると、宮白は肩をすくめながらリアスや木場を見る。

 

「学園二大お姉さまの姫様や朱乃さんに、女子人気を一身に浴びる駒王学園のプリンスたる木場に、更に一年のマスコットである小猫ちゃんが此処にいるわけだ。しかもギャスパーの女子から可愛がられてるし、教会三人娘は言うまでもなく、アザゼルやロスヴァイセさんも生徒からの人気は高い」

 

 そこまで言ってから、宮白はすっごい可哀想なものを見る目で俺を見てきた。

 

「そんな中、後輩に対する面倒見で再評価されつつも女の敵でい続けるお前ばかりに助けを求めるようなことを言うなんて怪しいだろう? 英雄派が正式構成員以外に誘拐と洗脳のダブルコンボをした奴らに俺達を殺す気で襲撃させたのを思い出せ。状況次第では殺す気で行くことになるから、精神攻撃をかけれる」

 

 そう言いながら宮白はカートリッジってのを交換すると―

 

「ましてフィフスが絡んでいるなら、気絶を通り越して痙攣も不可能になるまでやって初めて第一段階のクリアだ。失神と同時に発動する無差別呪詛、神経電流をコントロールしての安全を顧みない強制戦闘モード、最悪天然痘超小型核爆弾も警戒しないといけないんだ。巻いていかなければ」

 

「「そこまで警戒ぃいいいいいいい!?」」

 

 俺と志村のツッコミが共鳴した。

 

 しかも宮白は冗談とかでなく目がマジだ。心の底から本気で言ってやがる。あともう一発撃った。

 

「まあいいだろ新八。俺達だって柳生家とやり合ったときに武器捨てろとか言われたから沖田(人質)に向かって投げ捨てたじゃねえか」

 

「銀ちゃん、あのチンピラ警察に人質の価値は無いネ。隙をついてもろともぶちのめすのが最適解アル」

 

「比較対象が最悪すぎでしょうが! それにしたって武器にして叩きのめす神楽ちゃんはやりすぎだからね!?」

 

 ……あれ? 宮白と万事屋って相性よさそうだぞ?

 

「確かに、そう言ったケースがありえるなら警戒するべきだね。特にドーパントの中には遠隔操作とかそういったこともできるから、警戒するべきではあるか」

 

「……ま、まぁ、次元犯罪者にもそういうことできる奴……いるし……」

 

 フィリップさんとかノーヴェさんが納得してるけど、いいのか?

 

 俺がやっぱり止めようかと思ったその時―

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほど。この程度じゃふいもつけないってことね。よく分かったわ」

 

「修羅場くぐってるのね兵藤って、雰囲気変わったと思ったけどそりゃなるかー」

 

 そんな声と共に、煙の向こうから攻撃が放たれた。

 

 とっさに籠手ではじき、宮白も右足の義足で蹴り墜とす。

 

 そして突き立ったナイフの周囲が、ヤバそうな音と共に毒々しい色の変色した。

 

 おいおい、マジで敵だったのかよ……っ。

 

 俺達が構える頃には煙が晴れ、そして全員の姿が現れてた。

 

 どうやらとっさに盾になっていたらしい、駆動鎧ってのは見事に壊れていて、中の人が外に出ていた。

 

「やっぱり一型が五機程度じゃむりかー。これ、ご主人様に怒られちゃうんじゃない?」

 

「いいじゃんいいじゃん。ご褒美よりは楽しめないけど、それでも得じゃない?」

 

「慣れたら駄目よ。そうなれば絶対にご主人様はこちらが嫌だと思うことをするわ」

 

 そう次々に言う、駆動鎧を着ていた連中は……間違いない。

 

「……嘘だろ、全員駒王学園の生徒じゃねえか……っ」

 

「冗談だろ!? マジかよ兵藤!?」

 

「見間違いって可能性はないの?」

 

 左さんとスバルさんにそう言われるけど、間違いないって断言できる。

 

 だって、だって……っ!

 

二十回は覗きがばれてフルボッコにされてますから! いやでも覚えてます!」

 

「そこまでされたのならいい加減やめたらどうかね!?」

 

 ゴルドルフさんがそういうことを言ってくるけど、今はそこじゃない。

 

 なんでだ? なんでこんなことになっている?

 

 俺は、駒王学園は日常だと、平和の象徴だと思っていた。

 

 どれだけ大変な戦いをすることになっても、駒王学園での日常は変わらないって思っていた。

 

 オカルト研究部でリアス達と楽しく部活をする。毎日勉強して少しずつ成績を上げる。そして悪友達とバカやって。

 

 そんな毎日が、続くとばかり思っていた。

 

 ………ふざけんな。

 

「フィフスって奴かリゼヴィムって奴か、それともそれ以外の連中が指図してんのか知らねえが。……いい度胸してるんだな、オイ」

 

 自分でも寒気がするぐらい、俺が言ったとは思えない声色だった。

 

 それでも、どうせ聞こえてないだろうけど、それでも言ってやる。

 

「そんなに俺に迷惑かけたいなら、今すぐ出てきて自分でやりやがれ、クソ野郎がぁっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「安心しろ、来てるさこれが」

 

 

 

 

 

 

 

 その声は、やけにはっきりと聞こえた。

 

 女子生徒達が着ていたのと少し違う駆動鎧を軽く百体は引き連れながら、そいつはこっちに悠然と歩いてきていた。

 

「ご苦労さん。あいつには俺から頑張ってたと言っておくから、とりあえず先に帰ってろ」

 

「了解でーす! じゃ、ご主人様のところに戻ってますんで!」

 

 そう女子生徒達を言葉を交わしながら、そして駆動鎧達を前に出しながら、そいつは俺を真っ直ぐに見つめる。

 

「……なるほどな。そういや今は幼児退行状態になってたんだったな。なら、今のお前はそこまで脅威じゃない」

 

 そうこっちを観察するように見る目は、どこかが異常だった。

 

 余裕があるように見えているのに、どこまでも余裕がない風に見える。

 

 まるで確実に勝てると理解していて、確実に負けに繋がる何かをしでかしてくると確信してる。そんな矛盾の塊のような目で俺を見ていた。

 

「……久しぶりだな。態々俺やスパロを疑似サーヴァントとして召喚して、自分が下手人だと告げるのはどういう了見だ?」

 

「そうでもないさ。お前以外にも何かしでかしそうな連中はこっちで召喚できるように手はずを整えてたとも」

 

「つつつつまり、彼らの転送もあなたが意図的にやったものだということですね?」

 

 宮白にそう答えて、スパロにそう言われる。

 

 そんな奴は、どこまでも自然体に見えて、どこまでも臨戦態勢で俺達と向き合った。

 

 全身の力が一瞬で攻撃や防御に向けられるような力具合を維持した、痩せているようで鍛えられている肉体。

 

 小猫ちゃんと違って不健康そうに見える白髪は、あいつがそういったものをあまり気にしてないからなんだろう。

 

 手に持っているのは金属製の棒。六角形の断面を見せる棒は、間違いなく頑丈だって分かる。

 

 それを軽く持った男は、俺の後ろにいる左さん達を見て、静かに頷いた。

 

「ああ。どうせ何かしらの余波で来るだろうと思ったからな。最初から呼んで対応した方がましだと判断したんだよこれが」

 

 そう言いながら、同時に少し苦笑しながら、ゴルドルフさん達の方を見て肩をすくめた。

 

「最もそっちは手違いで呼んだんだが。マスターを呼ばないと対応が困難なんだがな」

 

「酷い間違いだね!?」

 

 ゴルドルフさんがそう文句を言うけど、二世もアーチャーさんも警戒しながらしゃべらない。

 

 ああ、俺もよく分かる。

 

 あいつは強い。強くてヤバイ……っ。

 

 そんな奴は、俺達を見て静かに一礼する。

 

 油断も隙も無い。それどころか、その一瞬ですぐに攻撃を叩き込んでくると思っているぐらい、警戒が消えてない。

 

「では初めまして。俺こそがこの事態を引き起こした男。フィフス・エリクシル・エコーだ」

 

 こいつが、俺達の宿敵……いや―

 

「絶乳楽土を築き上げる、絶乳帝だと知るがいい」

 

 ―俺の、不倶戴天の怨敵との初邂逅だった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 フィフス・エリクシルが卓越した使い手であることを、卓越した使い手は誰もが理解した。

 

 彼と戦ったことがある者はごく僅かだが、しかし強敵であることを強く理解していた。

 

「……まあ色々と聞きたいことはあるだろうが、それを答えてやる義理は無い。強いて言うなら、此処に来た目的は肌で今のお前達を感じたかったってところだ」

 

 そう告げるフィフスは、軽く肩をすくめていた。

 

「ああ。お前達は間違いなく今後の脅威になる存在だ。だが関与させないってのも返って危険なんだよ。生きたデータが手に入らないからな」

 

 そんな、一見するとおかしなことを彼ははっきりと言い切った。

 

 常識的に考えれば、明らかに強敵だと分かっている者をあえて引き込んで戦闘態勢にとる理由は無い。必要がないどころかデメリットが大きいというほかないだろう。

 

 だが、フィフスはそれを逆効果だと心から思っていた。

 

「簡単なことさ。……俺は正論や正解を踏みにじる不条理を何度も見てきた。そういう連中は絶対に、肝心なところで奇跡を起こしてこっちの邪魔をすると分かっているさ。……だからこそ、まずするべきはあえてそいつらを巻き込むことだ。想定外の乱入者を入れるぐらいなら最初から入れてデータを取ることで、準備を整える方が確実だからなこれが」

 

 そうはっきりと言うフィフスには実感が籠っている。

 

 入念に下準備をしても想定外の事態は起こる。まして世界の命運をかけるような出来事には、主役がいるなら必ず介入する事態でもある。

 

 ことフィフス・エリクシルは魔術師(メイガス)だ。ゆえに世界が滅亡を阻止する為に振う力である、抑止力の概念を知っている。

 

 そんな彼からすれば、想定外のカウンターが出てくることなど想定内。それを踏まえた立ち回りをするのは当然だろう。

 

魔術師(メイガス)なら抑止力ぐらいは知ってるだろう? この世界にあるかどうかはともかく、それを踏まえて準備をしなけりゃできる物もできやしない」

 

 そう告げるフィフス、宮白兵夜は何かを言おうとした。

 

 だがそれよりも先に、一歩前に出る少女がいる。

 

 誰もが一瞬気付かないぐらい、空気がその場にあるレベルの辺り前の行動のように、彼女は前に出た。

 

「ふーん。とりあえず遺言はそれでいいのかしら、フィフス」

 

 イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは、そう言ってフィフス・エリクシルと対峙する。

 

 そして彼女を見て、フィフス・エリクシルは笑みを深くした。

 

「やあ、我らがアインツベルンの奇跡すら組み込んだ最高傑作。第五次聖杯戦争の小聖杯、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン」

 

「ええ、貴方がアインツベルンに由来する転生者ってことは聞いているわ。だからこそ、言うべきことはたった一つよ―」

 

 笑みに対して笑みで応え―

 

「―そのアインツベルンの満を持した最後の聖杯戦争を、邪魔するとはどういうつもりなのかしら?」

 

 ―絶対零度の如き冷たい目で、イリヤスフィールはそう詰問した。

 

「貴方がどこまで知っているか知らないけれど、アインツベルンはこの聖杯戦争を最後の聖杯戦争にしているわ。アインツベルンの最高傑作とあなたが言ったように、私で挑んで第三魔法を成せないようでは、アインツベルンに第三魔法を成すことは不可能だもの」

 

「ああ、負けたらアインツベルンは文字通り自ら滅びるつもりだって知ってるさ。そしてアインツベルンは勝てないから、俺が貰っておこうと思ったんだよ」

 

 そう気負うことなく返したフィフスに、イリヤスフィールは再び笑みを浮かべる。

 

 否、それは笑みという名の殺意でしかない。

 

 十代前半にも届かないかもしれない少女。そんな少女が浮かべるにはあまりに不釣り合いな、養豚場の豚を見るような、これから死ぬ存在に対するあまりにも非情な表情。子供の無邪気さとは全く異なる、大人が持つような殺意の発露。

 

 それを悟り、誰もが魔術師(メイガス)というものの業の深さの一部を悟る。

 

「……そう。なら一応、身内の恥だから責任を取って殺さないとね」

 

「できないことをするとか言うなよ。小物に見えるぞ?」

 

 そのフィフスの返答に、イリヤスフィールは言葉ではなく行動で反映する。

 

 突如として、彼女の体に文様が浮かび上がる。

 

 全身に浮かび上がる赤い文様に多くの者が目を見開く。

 

 殆どの者はその内容が分からないこともあって。文様を理解できる者もその規格外の形に。

 

 そんな中、フィフス・エリクシルだけは得に驚愕してなかった。

 

「流石はアインツベルン。令呪そのものは発案者でもないのに、よくもまあそんなレベルの特別製を用意したもんだなこれが!」

 

「遺言はそれでいいわね。じゃあ、命で償いなさい」

 

 フィフスにそう告げ、イリヤスフィールは髪をかき上げる。

 

 その勢いで何本も散らばらせる中―

 

「狂いながら来なさい、バーサーカー」

 

 ―最後の死刑宣告を放った。

 

 その瞬間、文様の三割ほどが色を失い、そして同時に絶大な力の本流が、イリヤスフィールの目の前に君臨した。

 

「■■■■■■■■―――――ッ!!!」

 

 二メートルを超える巌のような巨躯。

 

 その手に握られる、石器時代から持ち出したとしか思えず、しかしそれ以上にあまりに大きな石の剣。

 

 そして鬼のような顔つきと、狂気を感じさせる瞳を持った、猛威という言葉の擬人化と思える存在が、寸時に出現する。

 

 同時にその存在が放つのは、狂気だけでなく強大な戦意。

 

 真正面のフィフス・エリクシルにのみ向けられていながらも、余波だけで鍛えられた兵士すら逃げ出しかねない威圧感を放つその存在に、誰もが一瞬息を呑んだ。

 

「な、いきなりどこから!?」

 

「……流石に驚いた。ヘラクレスをバーサーカーで召喚したのか、アインツベルンは」

 

 一誠と兵夜は共に驚愕するが、その驚愕の方向性は違う。

 

 それに気づいたなのはは、思わずそちらに向けて構えていた相棒にして武装たるレイジングハートを構え直しつつ、兵夜に視線を向ける。

 

「宮白君? 君はあれが何なのか知ってるの? っていうかヘラクレスって言った!?」

 

「そういえば! でもヘラクレスってあんなのだったっけ?」

 

「あれもアーチャーや二世と同じサーヴァントですよ高町さん。そしてイリナ、ヘラクレスはヘラクレスでもあやかっている英雄派の奴じゃなく、二世達の世界の本人といえる。……ギリシャ神話において神々の試練を幾度となく乗り越えた、世界的に見ても指折りの英雄、ヘラの栄光(ヘラクレス)サーヴァント(分霊)だとも」

 

 そう告げる兵夜に合わせる様に、しかしスパロは怪訝な表情すら浮かべてヘラクレスを見やる。

 

「ですが、このヘラクレスは狂戦士のクラスであるバーサーカーで召喚されています。バーサーカークラスは大抵のサーヴァントに意図的にクラス指定がでますが、ステータス向上と引き換えに魔力消費の爆発的増大と理性の消失が付属する、弱い英霊しか呼び出せない時の苦肉の策のはずですが……」

 

 その懸念に、イリヤスフィールは逆に胸を張る。

 

「いいえ。ヘラクレスは間違いなく世界でも最強の英雄で、そして私はアインツベルンの最高傑作。潤沢な魔力量を賄えるのなら最強の英霊を更に強化するバーサーカーこそが最強の選択。それがアインツベルンの結論よ」

 

 そう、それこそがアインツベルンの選択。

 

 アインツベルンが現在過去未来全て踏まえても最高傑作として断言できるだろう、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

 

 そのアインツベルンが神秘の粋を集めて作り上げた、特別製の三画の令呪。

 

 そしてヘラクレスという、サーヴァントとして呼ぶに値して間違いなく最高峰の大英雄。

 

 それら全ての要素を踏まえてアインツベルンが出した結論こそが、ヘラクレスを更に狂わせることで絶大な性能差を発揮させるという結論。

 

「ヘラクレスはどんなクラスで召喚されても、マスターが一流なら最高峰の力を発揮できる、知名度と性能を持ち合わせてるの。それを私が狂わせれば、どんな英霊も太刀打ちできない圧倒的な性能(ステータス)を発揮できるわ。その最強戦力の確保こそが、アインツベルンが辿り着いた聖杯戦争に勝つ結論」

 

 そう告げると共に、イリヤスフィールはフィフスではなく周囲に対して、殺意にも近い警告の意思を見せる。

 

「下がってなさい。アインツベルンの者が起こした愚行はアインツベルンが灌ぐ。当たり前のことでしょう?」

 

 そう告げながら、イリヤスフィールは髪をかき上げる。

 

 魔術によるものか、その動きと共に幾重にも散らばったいくつかの髪の毛は、そのまま鳥や剣を形作る。

 

 臨戦態勢。誰が見ても分かるその対応に、フィフス・エリクシルもまた動きを見せる。

 

 何処からともなく針金が取り出され、そしてイリヤスフィールの紙のように動き出す。背中に組み合わさるように絡みついて腕を形作ると、更にどこからともなくSFを思わせるようなマシンガンが現れ、針金の腕がそれを保持した。

 

 同時に前面に駆動鎧が壁になるように立ち並び、バーサーカーを迎え撃つ体制を取り始めた。

 

 その光景にイリヤスフィールは、呆れたような表情を浮かべる。

 

「ふーん、おバカさんなんだ。私のバーサーカー相手に、そんなガラクタが役に立つと思ってるの?」

 

「いやいや、破壊されると予測するのと実際に破壊させるのとではデータが違う。学園都市出身のエデンって科学者に教わったんだよ。一切のブレーキをかけずに限界を無視する形でぶち壊すのが研究の第一歩ってな」

 

 そう言葉を投げかけ合い、双方の戦闘態勢は完了する。

 

 フィフス・エリクスもイリヤスフィール・フォン・アインツベルンも、自然体で殺意を互いに向け、いつでも殺し合いができる状態となっていた。

 

「……待ってくれイリヤ! 事情はまだよく分かってないけど、君みたいな小さな子が殺し合いなんて―」

 

「シロウ」

 

 止めようとした士郎をぴしゃりと叩くように、イリヤの言葉が彼を止める。

 

 静かな、しかし明確な強い意志を感じさせるその言葉に、士郎は一瞬だが確実に動きを止めた。

 

「冬木に住んでいて、キリツグの子供なのに、シロウは何も知らなかったんでしょ? だったら、そこから先に踏み込んだら駄目だよ」

 

 そう、小さな子供が年上の目線で語る言葉が、士郎に踏み込ませることを拒絶する。

 

 そしてその言葉を最後のスイッチとして、イリヤスフィールは殺意を本格的にフィフスに向けて放つ。

 

「―やっちゃえ、バーサーカー」

 

「■■■■■■―――ッ!!」

 

 そして、アインツベルン同士の世界を超えた高いが始まった。

 

*1
当たり所や喰らった者の身体面の影響による




 ついに登場フィフス・エリクシル。のっけから飛ばしていきます。

 ちなみに敵に従っている駒王学園女子ですが、これに関しては該当作品に詳しければ勘づける方法で従っております。

 ついでに言うとイッセー対策がこちらも万全でもあるため、フィフスはかなりお気に入りの手段として運用するといっておきます。





 そしてまあ、勘違いしている人も多いと思いますが、バーサーカーのヘラクレスは此処で登場。そもそもストーリーの段階的に、入谷のサーヴァント召喚を止めることは不可能でしたからこの辺はまあ当たり前です。

 そして次回ですが、リリなのとFateとD×Dをクロスオーバーするにあたって、ちょっと書いておきたいことを書くことになりますです、はい。
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