また、話を切り替えしやすいように仕立て直した結果、話数が増えたので、サプライズ的に本日二話目となります。
あとこの作品ですが、次の章で吸血鬼の本拠地でバトルことになりますが、限りなくオリジナル展開です。
そのあともオリジナルでいろいろと動くことになりますので、自分の作品としては異例な展開になりそうですね。新しい挑戦というのも面白いものだ。
イッセーSide
危ねぇ。本っ当に危なかった!
あの一瞬で躊躇なく女の子狙うか、普通。しかも相手が庇いに行くことを前提に、どっちも殺せるような遠慮ない打ち方で。
畜生、俺達いっつも真っ直ぐだし、禍の団のえげつない戦術ももっとこう……分かり易いから完全に出し抜かれた。
しかも衛宮が真っ先に駆け出して庇うし。あとちょっとアーチャーが遅れてたら、間違いなく死んでたぞあいつ。
「大丈夫かよ衛宮」
「ああ。イリヤは大丈夫だ」
へへっ。自分もヤバかったのに、まずイリヤスフィールの方が大事だってか?
子供を優先して守りに行くところは嫌いじゃないな。まあ、めちゃくちゃ無謀だったけど。
でもなんでだろうな。俺も結構そういうところがあったけど、何故か共感湧かないんだよなぁ。
俺がちょっと首を傾げていると、魔力の粒子がなんだ周囲に漂っていた。
見ると、バーサーカーの姿が薄くなって……ぇええええええ!?
「え、ちょ、これどういうこと!?」
「見ての通りだ。バーサーカーはここまでだ、じきに消滅する」
アーチャーがそんなことを言ってくるけど、え、どういうこと!?
「十二回命があるとか言ってなかったっけ!?」
「ああ。そして全部をアルターエゴに奪い取られたのさ。戦闘続行スキルと強靭な意志でイリヤの安全だけは確保したが、それでも限界はある」
そ、そうなのか……。
あ、でも根性なら俺も負けてない。サマエルの毒は喰らったけど、シャルバはしっかりぶちのめしたしな。
「……すげえなあんた。尊敬するぜ」
俺はなんていうか、尊敬して手を伸ばしかけたけど、でもどうしたもんかな。
なんか伸ばしかけてからそれでいいのかとも思ったけど、だけどその手にこつんとバーサーカーの手がぶつかった。
軽くぶつけ合うバーサーカーの目が、まず俺を真っ直ぐに見た。
そしてアーチャーを見て、衛宮も見る。
「うそでしょ、バーサーカー。……これで、終わりだなんて……?」
涙を浮かべて俯いたイリヤの頭を、バーサーカーの手が優しく撫でる。
なんだろうな。その目は自分の子供を労わる親みたいな目だった。
バーサーカーって、狂戦士のクラスだって聞いたけど……何だろう、良い奴なんだってよく分かる。
俺は何か言いたかったけど、でも何も言えない。
俺はイリヤのことをちょっとともいえないぐらいしか知らない。だけど、イリヤとバーサーカーにはどこか絆があったんだって、それがよく分かったから。
そんなイリヤをもう一度撫でてから、バーサーカーは俺達を見た。
「……後は、任せる」
その言葉を最後に、バーサーカーは消滅した。
「……覚悟を決めておけ、衛宮士郎」
アーチャーは、何とも言えない表情を浮かべていた衛宮にそう言った。
「どんな形であれ助けようとしたのだ。ならば最後まで面倒を見ることだ。なにより、我らに託したのは一つの神話を代表する英雄なのだからな」
「……ああ、分かってる」
衛宮はそう返して、静かに頷いた。
「俺は正義の味方になるんだ。女の子一人救えないで、どうやってなるっていうんだ」
………正義の味方、か。
そういえば、リゼヴィムは俺達のことを正義と言っていた。
俺自身はそんな風に見えるのかとも、ちょっと今更思うけど。
……俯いて、涙をまだ目じりに残しているイリヤを見た。
うん。俺はおっぱいドラゴンっていう子供のヒーローをやっているからな。
「ああ、任せとけ」
安心しろよ、バーサーカー。
子供達の笑顔を守るのも俺のやることだからさ。この子の笑顔も守って見せる。
俺は、空に握り拳を突き出した。
―そこに、何かが当たったような感触がしたのは、たぶん気の所為なんだろうけどさ。
『……相棒、何があったのだ? 見慣れぬ者が多いし世界全体が何かおかしい。……何よりとても心安らぐんだが』
そして聞き慣れた声が響いた。
これの宝玉が輝いて、懐かしの相棒、赤龍帝ドライグの声が響く。
ああ、何て言うかほっとする。
ほっとするけど……。
「もうちょっと、早く起きてほしかった……っ!」
本当にもうちょっと早く起きてほしかった。早く起きてほしかったよ。
もう戦闘終わってるじゃん!
「おいおい、なんかマダオの声がするぞ。戦闘始まってからしたことが幼児退行ってだけでもあれだってのに、終わってから復活とか役立たずですかー。マダオですかー!」
「銀ちゃんそこまでネ。話を聞いてると迷惑極まりないまるでダメなドラゴンある。マダドとかの方がいい在るよ」
『なんだそのごろの悪い蔑称は!? 相棒、俺はなんで見ず知らずの連中にいきなり馬鹿にされないといけないんだ!?』
ごめんねドライグ。そこの人達は共食いが大好きな人たちだから、平然とこっちを巻き込むんだ。
あと、気分的にちょっと言いたくなる気持ちも分かる。終わってから復活されても困るっていうか、俺結局何もできなかったというか。
俺がどう反応したらいいか困っていると、宮白が何かを取り出しながら俺に近づいてきた。
「イッセー、籠手をこの中につけておけ。たぶんここからがドライグにとって、本当の地獄だ」
といって渡してきたのは、液体がたんまり入った桶だった。
いや、ちょっと待ってくれ。
どっかで見たことあるんだけど、この中の液体。
『……相棒。これは俺の精神安定用の薬液ではないか?』
ドライグの恐怖に震える声をきいて、俺はこれがなんで見たことあるのかについて漸く分かった。
あ、そういうことか。ドライグの心を癒す為に、お医者さんが処方してくれた精神安定用の薬だこれ。
いや、ちょっと多すぎないか、コレ。
俺がちょっと視線を宮白に戻すと、宮白は凄く神妙な顔つきで目を伏せた。
「……これから伝えることになる情報は、ドライグにはあまりに過酷すぎるからな。常に薬液に浸しておくべきだろう。……浸した布を巻いた方がイッセーが楽か」
お前は一体何を伝えるつもりなんだ。
あとその気遣いはありがたいけど、どうあがいても薬を常時摂取しなけりゃいけないんだな……。
「おいおいあのおっぱい大乱舞よりもやばいってか? 何を言う気なんだよお前」
「……文字通り世界規模の話にスケールアップするからな。最低限の備えは必要だろう」
銀さんにそう返しているけど、これで最低限!?
『相棒、聞きたくない! 俺は心底聞きたくない!?』
ドライグがめっちゃくちゃ狼狽している。
まあ確かに。さっきまで幼児退行してたのに、それがこれってめちゃくちゃ嫌だよなぁ。
しかもこのあと、パンツを対価に幼児退行を治してもらっていたとか言われるんだぜ? 俺だって流石にショックだよ。
なんか一気に空気が緩んだ気がするけど、俺はなんとなく上を見上げて―
「……あれ、なんだ?」
何か、光ってるものが少しずつ大きくなってる。
俺の反応に気が付いた皆が、ふとその方向を見上げる。
その間にも、光っているのはだんだん大きく……いや、近づいてないかアレ。
俺達が困惑していると、アザゼル先生が慌てだした。
「え、衛星軌道上で戦闘していた船の一つが、こっちに落下してるだとぉ!? もっと早く言えよそういうことは!?」
……え゛
俺達が絶句していると、宮白が慌てて結界を展開する。
「全員集まって防御態勢! あんな勢いであんなものが落ちてきたら、この辺一帯吹っ飛ぶぞ!?」
冗談だろ!?
いや、ちょっと待ってちょっと待って!
完全に終わった雰囲気だったから、ちょっとまじで防御とか追いつかな―
その時、空に影が差した。
……次回、シリアスな引きですがギャグです