ちょっと筆が乗って掛けたので、今日はこっちを投稿します!!
イッセーSIDE
そんなこんなで俺達は、襲撃作戦の為にちょっち忙しいことになってる。
アザゼル先生を指揮官とする形で大規模部隊が編成されていて、なのはさん達が武装局員を上手く配置する為に動いている中、俺達も戦闘の為に軽く体を温めている感じだ。
裏取りどころの話じゃなくなったし、よく見ると映像にはタイムリミットっぽいカウントが出てた。
強襲作戦開始時刻はあと三時間後だけど、そこからヴァレリーの聖杯が抜き取られると思われる時間まで二時間しかない。
スピード勝負。速攻でヴァレリーを見つけて誘拐させるぐらいじゃないと、ヴァレリーが死ぬ可能性はとても高い。
ギャスパーもかなり気がせいてたけど、深呼吸をしながらなんとか気を落ち着けている。
俺も正直気がせいてるけど、それでもウォーミングアップをして落ち着けていた。
……そろそろ少し食べておいた方がいいかな。
今から軽く食べて置けば、戦闘中には大分消化されてるだろ。何も食べておかないってのは返ってあれだしな。
ゴルドルフさんが色々軽食を作ってくれてるらしいし、何とかなると思うけど……何にしようか?
そう思いながら軽食が置かれてる部屋に入ると―
「あ、イッセーくん」
「お、イッセーか」
……スバルさんと銀さんが、なんかめっちゃ食ってるんだけど。
「……三時間後にめちゃくちゃ動きますよ?」
思わずツッコミを入れたけど、二人とも結構そのまま食べてるし。
「あ、大丈夫大丈夫。本気で食べる時は五倍くらい食べるし」
「いやこれマジで美味いからよ。それに食える時に豪華なもん食いだめしとかねえと、何時食えるか分からねえしな」
どっちも凄いな別の意味で。
俺もとりあえず少し食べながら、ちょっと考える。
ギャスパーの恩人でもあるヴァレリーを助けることに反対は無い。むしろここで俺達が動かなくてどうすんだよって本気で思ってる。
だけどまあ、銀さん達には本当なら関係ないからなぁ。
「あの、よかったんですか? 一緒に参加することになって」
俺はちょっとその辺聞いてみるけど、二人ともしっかり食べながらすぐ頷いた。
「こっちにいる時空管理局は、三大勢力との協力を決めてるしね。なのはさんの故郷だしお父さんの先祖も
「俺達もしっかり前金込みで貰ってるからな。蓮蓬に関しちゃ俺もまあ縁もあるし、貰えるもん貰ってるならちゃんとやるって」
そっか、ちょっとありがたいかな。
あ、でも―
「他の人達はどうなんですかね?」
「あ、カルデアの人達は協力するらしいよ? 魔神柱案件はカルデアの仕事だからって」
「左達も乗り気だとよ。ガイアメモリは自分達が専門らしいしな。……報酬はきっちり宮白達が払っているみたいだしよ」
……宮白、抜け目がないなぁ。
俺が感心してると、銀さんはなんか宮白っぽい表情をしてきた。
え、なに? 声真似でもするの?
「『魔術の基本は等価交換だし、何より過剰な無償奉仕なんて誰にも得しない。馬鹿が文句言ったり便乗して余計なことすることを防ぐ意味でも、お前達には報酬を受け取ってもらう。受け取らないなら白目向いてリンボーダンスするのがお前達の仕事になるがどうする?』とか言ってきやがった。怖いねー、あいつ」
「「ああ~」」
俺とスバルさんは思わず納得。
性格悪いけどお人好しっていうか、仕事はハードだけど報酬はしっかり払うっていうか。対価を用意する為にまず苦労する男っていうか。
人はいいんだよなぁ、容赦はないけど。
俺はふと思うと、ちょっと思い出した。
「……そういえば、衛宮はどうするんだろうな?」
「……あ、そういえばそうかも」
スバルさんはすぐに気づいたけど、本当にちょっと心配だ。
「え、なに? あいつもしかして参加する気満々なの?」
「多分ですけど。どうも衛宮ってそういうのに過剰に反応するっていうかなんて言うか」
銀さんにそう返すけど、本当にそこが心配だ。
俺だって誰かを助ける為に一生懸命頑張る奴は嫌いじゃない。俺だってそういう奴は応援したい。できる範囲内で頑張るってのは、むしろ良い事だと思う。
ただ衛宮の奴、自分のこと全然考えてない節があるんだよなぁ。
「……ま、星だの人類の危機だのってなれば、力がなくても頑張りたくなるもんではあるわな。そういう奴はたくさんいるし、結構助けられることもある」
銀さんがそんな風に言うけど、経験あるんだろうか。
「故郷にしろダチにしろ家族にしろ、そういう時に動く奴ってのはたくさんいるもんさ。……ま、あいつはちょっと違うっぽいけどよ」
あ、銀さんもその辺は気づいてたか。
「自分の大事な
………自分の命が大事じゃない、か。
「でも、仲間や守るべきものの為に命を懸けることってのは、俺もあるからちょっと気持ちが分かる気もするけど―」
「アイツの場合はそうじゃねえだろ」
俺が呟いた言葉を、銀さんは結構バッサリ切ってきた。
え、そういうのでもないの?
「……じゃあ、衛宮くんはどういった感じなんですか?」
スバルさんもその辺が気になったのか、ちょっと踏み込んできた。
俺も正直気になるから、銀さんをじっと見る。
「……おいおい、俺ぁ教師なんてガラじゃねえんだが……ったく」
面倒くさそうに頭をぼりぼりかくけど、一応銀さんも言ってくれる気になったみたいだ。
「
………そ、そういうレベル?
「……やっぱり、そういうことなのかな?」
スバルさんがちょっと、暗い顔になった。
「イッセー君は覚えてるよね? ちょっと前に宮白くんと話した時の話」
「えっと……宮白が
確か、災害とかで救助された人の中に云々って奴だったっけ。
なんていうか、トラウマって色々な種類があるんだなぁって思ったりする。
でもまあ、俺も頑張って人を助けようとして、それでも全然助けられなかったらかなり気にするかもな。
衛宮もそんな感じの経験をしたってことなんだろうか。
俺とスバルさんがしんみりしていると、銀さんはぺろりとクリームがついてた唇を舐めてから、お腹をさすりつつ平然とした感じだった。
「ま、宮白の野郎はその辺厳しいから当面出てこれねえだろ。二世の奴が色々教導したりあってそうな人工神器だのをアザゼルの野郎が渡したりしてるみたいだが、形にはなってねえって話だし―」
「……ぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええ!?」
って、なんか木場の絶叫が聞こえてきたぁあああああああ!?
祐斗Side
「木場ぁ!? だ、大丈夫かぁ!?」
「オイィイイイイイイ!! 一仕事の前に何が起きたぁああああ!? フィフスの奴がカウンターでも入れてきたのかぁああああ!!」
思わず絶叫してしまった所為で、イッセーくんや銀時さんに気づかれてしまったようだ。
このタイミングで心配させてしまったのは申し訳ない。
「い、いえ。問題は無いんですけど……別の意味で問題ができたっていうか、思わぬ形でクリアされたっていうか……」
僕がどう説明した物か困っていると、目の前の少年が憮然とした表情を浮かべている。
「そんなに言うことないだろ? こういうのは元々得意だし、それにこれはそういう道具なんだろ?」
衛宮君はそう憮然としながら、手に持ったそれを見せる。
そんな、当人が明らかにおかしいことに気づいていないその成果を見て、後から追いついてきたスバルさんが感心する。
「あ、それ祐斗くんが使ってた武器だよね? それがどうかしたの?」
そう、これそのものはスバルさん達も見ている物だ。
フィフス・エリクシルの襲撃において、敵の軍勢相手に使用した聖魔剣。
よく見ているとは思うけど、だからここにあることが不思議じゃないと思うのも無理はない。
だけど、これは異常なことなんだ。
それを理解してもらう為、僕は一度深呼吸をしてからその説明を告げる。
「……まず説明すると、基本的に聖魔剣は二種類の方向性が存在します」
まずは此処を説明するべきだろう。
「イリナさんも持っている類のは、量産型の聖魔剣です。これは三大勢力の技術研究班が、僕が提供した聖魔剣を参考にして開発したものです」
そう前置きしてから、僕は即座に別の聖魔剣を作り出して皆の前で見せる。
「そしてその原点は僕が
そう。聖魔剣の源流は僕が禁手で作り出した物だ。
そしてこれは、かなり奇跡的な代物でもある。
「僕が至った禁手、
そう、ここからが本番だ。
「これは僕が聖剣を使う為に必要な因子を取り込むなど、非常に特殊な条件が重なったことで生まれたイレギュラーな発現です。それこそそれを見たある研究者は、相反する属性の融合はあり得ないと最高傑作が打倒されたことよりも驚愕し、そこから教えられてなかった聖書の神の死による世界のバランスが崩壊したことに悟るレベルのイレギュラーです」
そう、だからこそ、そこからが問題なんだ。
「……その為自由な製造は相応に時間が掛かるか僕が作るしかありません。少なくとも、魔剣創造や聖剣創造が通常の禁手に至った程度では無理ですし、未だ完全下位互換しか作れない人工神器では、相応の手間暇をかけて聖魔剣そのものを作り出すでもしない限り不可能なんですが………」
僕はそこまで言うと、衛宮君に振り替える。
衛宮君はよく分からない表情で首を傾げてるから、少し実感させないといけないね。
「衛宮君、これもやってみてくれないかい?」
「ああ、それぐらいなら簡単だぞ?」
そう、なんてことないようにはっきりと言い切った。
「「「……え?」」」
イッセー君達が首を傾げる中、衛宮君は少しだけ目を閉じると呼吸を整え。
「
そして一瞬の時間の後、彼の手には僕が作った別の聖魔剣が、そっくりそのまま出来ていた。
正直僕は凄く動揺しているけど、衛宮君はきょとんとすらしている。
「いや、投影なんてただの基礎魔術のはずだろ? それに、今俺が持ってるのはそういったことをする為の人工神器なんだし、問題ないだろ?」
そう言うけど、そういう問題じゃない。
そう、これはそういう問題じゃない。
僕はそれを衛宮君に伝える為に、深呼吸をしてから言い切った。
「……衛宮君。その人工神器は魔剣創造と聖剣創造の完全下位互換だ。ましてそれには人工的な禁手発現技術は組み込まれてないから、禁手である双覇の聖魔剣と同様の効果を発現することは、絶対にありえない」
僕がそうはっきり言うと、後ろのイッセー君が肩をぶるぶると震わせているのが分かった。
ああうん。気持ちは分かるよ、っていうか僕の方が叫びたいし叫んだし。
いや、これは―
「嘘だろぉおおおおおおおおおおお!?」
―そう言いたくなるよね、うん!
Other Side
「そういえばアーチャー。投影について止めなくてよかったのかね?」
「言ってもあの阿呆は聞かんだろう、孔明。なにより、私が言うまでもなく封印指定について説明してくれる奴がいるのなら任せていい。……余計なストレスが溜まるだけだし、伏せ札はあるに越したことは無いからな」
「……清姫が呼び出されないことを心から祈ろうか」
衛宮士郎の問題性については、何かしらの形で折り合いをつけたいところ。今回はそんな衛宮回です。
人生の先達とか修羅場をくぐり慣れている手合いが多いので、士郎の問題面にある程度悟っているものは多いので、何かしらの形で彼には成長と結論を出したいとは思っています。そういう意味ではこの作品、衛宮士郎は準主人公といえるでしょう。
そしていい機会なのでこのタイミングで士郎の魔術的な異常性も示しました。
この作品では聖剣や魔剣の運用にはいろいろと癖があるので、そこを補正するアイテムを擁してバイパスとすることでこんな感じになりました。
……個人的には兵夜と士郎で「俺とお前でダブル偽聖剣」とかめっちゃやりたい。
まさか題名がこんな意味だと思ってたか?
-
吸血鬼やらカーミラやらでなんとなくは
-
わかるわけがないだろうが、ぼけぇ!
-
……呼んでみれば納得できましたわぁ