リアルでごちゃごちゃしてて創作意欲が消し飛んでいました。
そして満を持してやって来た第二部6章をやってから創作意欲が刺激されて唐突に思いついたネタを我慢出来ずに書いてしまいました。
一発ネタのつもりが思ったより長くなったので前後編と分けるつもりです。
とりあえず今は出来た分を投稿します。
ベリル・ガットはクリプターであり悪党である。
真性の外道でありロクデナシだ。
そんな彼もユーザーからはある意味では期待されていた。
クリプターのリーダーであるキリシュタリア・ヴォーダイムを刺し「俺は屑でいたいんだ」と言った悪党がどんな行動をするのか。
誰もが彼が悪党としてどこまで活躍するのかを期待していた。
だが実際は違った。
詰まる所、彼は
クズではあるが、人としての感性をある程度は有しており
要はただの外道で終わったのだ。
芯を持たず、信念も無く、ただの悪党だった男。
マシュ・キリエライトに対して歪んだ愛情を抱いただけのただの悪党。
それがベリル・ガットという男だった。
リンボやコヤンスカヤの様に悪としての魅力がある訳でもなく
沙条愛歌の様に絶大な力を持っている訳でもなく
キリシュタリアや天草四郎の様に、強固な信念を持っている訳でもない。
ただの中途半端な悪党だった彼がもし『普通』だったら、物語はどう変わっていただろうか?
ある日、気がつくと俺は魔女に縛られていた。
魔女と人間の間に生まれ、魔女の母に育てられた。
俺は“母"を名乗る婆さんに魔術を教わった。
『命に関わる』ことの魔術や呪術の類いをよく教えられた。
そういった魔術とは相性も良かったのか、それとも魔女の血筋故なのか、俺はそういった物騒な魔術を次々と修得し、腕前だけならば一流の魔術師と並べるくらいには成長出来ていた。
特に呪術とは相性が良くて愛用していた。
一通りの魔術を教えてもらった後、俺は兼ねてから考えていた作戦を実行した。
それが“母"の殺害だった
別に技術を粗方教えてもらって用済みになった訳でも無い。
殺す理由は単純だ。
“母"がいる限り
普通に考えれば当然の結果だ。
俺は物心つく頃から魔女の住む森に住んでいて、周りの人達との交流なんかある訳ない。
これが“束縛"と言わずなんという。
だが、後になってから考えるとこの束縛は“母"なりの
魔女の息子など迫害されるのが目に見えてる。
一度、人間社会に出れば奇異の目に晒され、奇跡の隠匿を漏らしかねないので、魔術協会に追い回され徹底的に追い詰められてしまうだろう。
それを危惧したからこそ“母"は俺を束縛したのだろう。
だが、だからといって
ずっと“母"以外の他人と関わる事なく、ずっと森に閉じ込まれるなんて御免だ
俺は成人するまで結局一度も学校に行く事も店で何かを買う事も体験する事もなかった。
人間社会という仕組みを遠見の魔術で見て理解するしかなかった。
森から何キロも離れた村や町を眺めて、学ぶしかなかった。
遠くから“人間"を見た俺の感想は特に無い。“普通"だ。言葉に出しても「フーン」としか思えない。
でもだからこそ“こう在りたい"と思った
俺はいつも1人だからこそ、周りと歩調を合わせて進む“普通の人間"に俺はなりたかった。
だから殺した。
“母"の眼を潰し首を斬り、森を後にした。
俺は遂に自由を手に入れた。
───その筈だったのに───
“気味が悪りぃ、とっとと出てけ!"
“気持ち悪い、なんで人を殺して笑っているの?"
“罪悪感とか無いのかよ⁉︎"
“屑め、近寄るな!"
結局、俺は
当然だ。
自由になった所で、俺にあるのは“殺し"の技術だけ。
他人に役に立つ技術は俺には持ち合わせていない。
出来る事は“殺し"だけ。
誰かを殺す事に抵抗は無い。親しい奴だろうと知らない奴だろうと誰であろう殺せる。
誰かを“殺す“事しか学んでこなかった俺は異質だったんだろう。
その事に当時まだ若かった俺は気づいていなかった。
森から出たばかりでまだ若かった俺は初めて人の役に立つ存在になれるかもしれないという淡い期待をしていたのを覚えている。
だから俺は街や村で困っている人を助ける為に“殺し"を行った。
殺した奴等は、街で盗みや詐欺などの犯罪を平気で犯す“屑"と呼ぶべき存在達。
そんな期待を込めて、
───納得の結果だ───
他人を殺す事に全く抵抗の無い奴など、迫害されて然るべきだ。
人殺しなんて嫌われて当然だ。
だから俺は嫌われて当然だった。
誰かの為に殺すなんて考えは、初めから間違っていた事に俺はこの時初めて気づいたんだ。
──俺は“普通"になる事を諦めた──
俺は普通の人間から“屑"と呼ばれた。
だから俺は“屑"でいる事が思っていたより気が楽だと気づいた。
──俺は『
普通になんてなれない。
正義の味方にもなれない。
ただの何処にでもいる
普通の人間の様に、就職なんて出来ない。
真面目に働こうとしても、馴染めない。
長く続かない。
正義の味方の様に、誰かを助ける事なんて出来ない。
殺す事しか出来ないから。
話し合いで解決なんて反吐が出る。
反吐が
殺し屋として、誰かを殺して生きる事でしか俺は生活出来なかった。
誰かを殺してでも、俺は生きたかった。
───“人生"を生きたかった───
いつしか俺は殺し専門の魔術師として一部で有名になり、マリスビリー・アニムスフィアからスカウトが来て、俺はカルデアのAチームに配属された。
カルデアに来てからは、俺は出来るだけ明るく振る舞った。
街でよく見かけた気のいい男を真似た。
だからある程度は馴染めたと思う。
でも、「狼男」や「人狼」と呼ばれるほどにやってきた殺し屋稼業の所為で一部では怖がれられているが仕方ない。
特に同じAチームのオフェリアにはかなり嫌われた。
まあ、魔術師の
俺以外の魔術師の殺し屋にも接触した事はあるが、どれもこれも俺と同じようなクズしかいなかった。
あの反応は当然だ。納得しかない。
他のメンバーは少しは話す程度には仲を深められたと思う。
カドックは揶揄いやすくて気に入ってるが、他はどうもやり難い。
キリシュタリアはなんか妙に天然で振り回されるし、デイビットは妙に鋭い。
天才連中は関わり難い。
特に苦手と思ったのがペペロンチーノだ。
「貴方が人狼さんね?初めまして私はペペロンチーノ。ペペって呼んで」
「なんか必死に振る舞っているみたいだけど、ひとまず貴方は無理をしない方が良いわ。いつかきっと爆発しちゃうわよ?」
どうも苦手だ。
一目で俺の本質を見抜かれた。
普通になれなくて屑でいる事を自分に強いている事を見抜かれた。
適当に会話して、いつも通りに明るい屑として振る舞った。
それを見たペペロンチーノは特に気にした様子はなかった。
よかった。ペペロンチーノはあまり他人に深入りするタイプじゃないみたいだ。
そしてマシュ・キリエライト。
普通に
だってそうだろ?
あんなのホムンクルスと何が違う。
可哀想だと思ったが、
ただドクターがやたらとマシュの事を気にかけていて、「大令呪を刻んでほしくない」と一人でボヤいていたので、偶然それを聞いた俺は、ほんの気まぐれにたまたまマシュに大令呪が刻まれる日の前日にマシュの部屋に乗り込み、
急いで来たドクターに殴られたが、別にいい。嫌われるのは慣れてる。
まあ、そのせいでしばらく謹慎処分が下された。
まあやった事がやった事だ。仕方ないだろう。
オフェリアには余計に嫌われた。
カドックからは避けられる様になったが、カドックは魔術師だ。後で適当に深読みしてくれるだろう。
ペペロンチーノには
「不器用なのね。貴方って…」
と苦笑いしながら慰められた。色々察してくれた様で、なんだか照れ臭かった。
「どうしてこんな事をしたのか説明してくれないか?」
Aチームのリーダーであるキリシュタリアからは事情聴取を受けたがのらりくらりとしていればなんとかなるだろうと思ってタカを括っていたが、めちゃくちゃ長い時間同じ質問をされ続けたので、流石に折れて犯行の動機をつい話してしまった。
「それは良かった。コレで漸く
それを聞いたキリシュタリアはむしろ嬉しそうにしていた。
後で知った事だが、この後キリシュタリアはマシュに大令呪を刻まない様に根回ししていたらしい。
どうやらキリシュタリアという人間は、思ったよりお人好しらしい。
そして月日は経ち、俺はカルデアのAチームの1人として活動を開始した。
まあ、
爆破により命を落とした俺は『異星の神』とやらに蘇生された。
選択の余地は無かった。
無論、蘇生を選んだ。
俺はまだ死にたくなかった。
クリプターとして空想樹を異聞帯で育てる様に任務を承ったが、粗方の説明をキリシュタリアからされた後に俺はキリシュタリアから呼び出された。
何でも俺がブリテン異聞帯を担当されたのは、ブリテン異聞帯を消す魂胆だったらしい。
「断るんだったら殺すしかないんだが……」
酷くね?
断る選択肢ないじゃん。
そして俺はブリテン異聞帯に向かった。
そこに向かった事で俺の運命は劇的に変わった。
ブリテン異聞帯に向かった俺は確かに確認した。
ブリテン異聞帯は大した脅威にはなり得ない。
何故なら既に滅んでいたからだ。
キリシュタリアの危惧は杞憂だった訳だ。
そこで俺はブリテン異聞帯で、折角だからサーヴァントを召喚した。
召喚されたサーヴァントはルーラー。
真名はモルガン。
アーサー王が治めていたブリテンを崩壊させた魔女。
何で彼女が召喚されたのは分からない。
もしかしたら俺の血筋が関係しているのかもしれないが、まあどうでもいいだろう。
一通り話し終えて疲れたので、荒野で寝っ転がって寝た。
サーヴァントも召喚したし後はキリシュタリアの元に戻れば良いと思いながら眠っていたから
「は?」
目が覚めたら
荒野で寝ていた筈なのにいつの間にかフッカフカのソファで寝ていたらそりゃ驚くだろう。
モルガンから説明を受けたけど、トンデモ展開過ぎてついていけない。
あの女は自力でレイシフトを模倣した挙句、ブリテン異聞帯の歴史を書き換えていたのだ。
魔術師としてトンデモない実力者と思っていたが、想像以上の怪物だ。
そして、この異聞帯は妖精が霊長類となった世界。もはや此処は異世界だ。
妖精という単語を聞いて改めてゲンナリする。
どうやら俺は妖精に縁があるらしい。
後、ついでに俺も巻き添えを食らって本来の俺はどうやら既に死んでいた。
今の俺は汎人類史のベリル・ガッドを模倣したそっくりさんになっていた訳だ。
「マスターは、ひとまず私の夫として扱う。形式上とはいえ夫婦ならば他の者達も手を出せない筈だ」
「それと形式上とは私の夫となったからには、
何か知らない間に殺された上に夫になってた。しかも、この人めちゃくちゃ重いんだけど。俺この人に何かしたか?
マジで酷くね?そろそろ泣くぞ。
それから俺はモルガンにどうしてこの異聞帯が生まれたのか聞いた。
この異聞帯は『
妖精が仕事をサボった結果生まれた世界だと、大穴の厄災の正体も聞いた。
正直言って同情する。
その神様の怒りはごもっともだ。
正直言ってマジでこの異聞帯は滅した方が良いんじゃないかと思ったくらいだ。
「どうしてだ?どうしてアンタはこの異聞帯を守ろうとしてるんだい?」
「正直言って、妖精が霊長類の世界なんて今すぐにでも滅した方が良い。せめて人間が霊長類の方がマシだろう?何でアイツらを守ろうと思うんだ?」
俺の質問にモルガンは分かりやすいくらいに不機嫌になった。
まあ、自分のして来た事が間違いだと言われた様なものだ。
不機嫌になるのも仕方ない。
俺は正直殺されるかと思ったが、彼女は俺に攻撃する事なく告げた。
「私は……ブリテンを失いたくないんだ……」
彼女はそれだけ言ってその場を去った。
一見すると訳が分からないが、なんとなくだが察する事が出来た。
もしかしたら間違ってるかもしれないが、ここは俺の解釈を信じよう。
モルガンは
一度滅びた故郷を見て、滅びの結末を変えようと躍起になっているだけだ。
何故なら故郷を守りたいと思うのは『普通』の事だと思うから。
「やれやれ……面倒くせぇ女引いちまった…」
故郷を捨てた俺と違って、彼女は故郷を大切にしている。
その頑張っている姿を見て、つい気まぐれにこう思ってしまった。
────
気まぐれに彼女の事を応援したくなった。
俺は屑だ。
サーヴァントの為に
俺は屑だ。
悪い事してる魔女に手を貸すのも、屑の役割だ。
この瞬間、俺はクリプターを、Aチームを、キリシュタリア達を裏切った。
あれから俺はクリプターを演じながら、モルガンの手先として行動し続けた。
そしてキリシュタリアの根城であるギリシャ異聞帯にてギリシャの空想樹に火を付けて、キリシュタリアを刺した。
その後はブリテン異聞帯に戻り、事の顛末をモルガンに説明した。
ペペロンチーノにはケジメをつけさせられるだろう。
だが、それでも俺は彼女の味方だ。彼女のマスターだ。
こんなクソみたいな世界を意地張って守ろうとしてる奴を俺は見捨てられない。
「ねぇー、どうしたの?ベリル?」
思考に集中していたらバーヴァン・シーの声に気づかなかった。
妖精騎士トリスタンという肩書きを持っている彼女の声を無視したら周りからどんな反応されるか分かったもんじゃない。
「ああ、悪いな。レディ・スピネル。ちょっと考え事をしていてな」
『スピネル』という言葉の意味は正直言って蔑称だ。
宝石の偽物という意味だ。
冗談で言ったつもりだったのに彼女がそれを気に入ってしまって、今は愛称として彼女をそう呼んでいる。
正直、後でモルガンにバレないか怖くて仕方ない。
この愛称の意味を知れば、モルガンも激怒して俺をシバくだろう。
バーヴァン・シーはモルガンの娘として扱われている。
形式とはいえモルガンの夫の俺には娘みたいなものだ。
何故か懐かれて、ブリテン異聞帯では彼女と行動する事が多かった。
汎人類史のゲームとか再現して遊んでやっている内に、いつの間にか俺と遊ぶのが彼女の日課になっていたようだ。
屑の俺に近づいていれば碌な事にならないだろうから、モルガンにバーヴァン・シーが出来るだけ俺に近づかない様に言う様に言ってみたが
「構わん。遊んでやってくれ」
とバッサリ返されて、俺はバーヴァン・シーの世話役になっていた。
たまにバーヴァン・シーがモルガンの所に行って楽しそうに話しているのをよく見かける。
バーヴァン・シーと話しているモルガンはやけに辛そうだったり、やけに嬉しそうだったり複雑な感情を彼女に抱いていた様だ。
といっても、モルガンもブリテン異聞帯の女王だ。
モルガンは政治に忙しい事もあってあまりバーヴァン・シーの相手を出来ない。
だから俺が世話役になったのだろう。
「あまり女王様を困らせるんじゃないぜ。レディ・スピネル。彼女も女王としての仕事に忙しんだ。察してやってくれよ?」
そう俺が言うと、バーヴァン・シーは不服そうに拗ねていたので、用意していた策で彼女のご機嫌をとる。
「この前に見つけた存在税を払わない妖精をとっちめる為に一緒に来てくれねぇか?かの妖精騎士トリスタン様が来てくれれば、
俺がそう言うと、バーヴァン・シーは「行く行く!」と言って、俺の服を引っ張ってきた。
そのバーヴァン・シーの様子をなんだか心配そうにモルガンは見ていた。
「彼女の世話はお任せを。お仕事頑張ってくださいな、女王様」
俺がそう言うと、モルガンはすぐにいつも通りの仏頂面に戻り、政務に戻っていった。
女王様の仕事を労い、その姫であるバーヴァン・シーの世話をして、たまにモルガンの手伝いとして人間や妖精を殺したりする。
こんな事がこの異聞帯での日常だった。
だがそんな日常も長くは続かない。
カルデアがこのブリテン異聞帯にやってきた
カルデアは異聞帯にとっては死神も同然だ。
ロシア、北欧、中国、インド、ギリシャといった異聞帯を潰して来た実績のあるカルデアはもはや異聞帯の住人からすれば災厄の様なモノだ。
それがついにこのブリテン異聞帯にやってきた。
俺はそろそろ潮時だと思った。
「家族ごっこも終わりだな……」
妻モルガンと娘のバーヴァン・シーのいる生活が終わる。
血も繋がっていない他人同然の俺達は、ただこの世界で家族ごっこをしていたに過ぎないのに……
「存外悪く無かったな……」
なのについそんな事を思ってしまった。
今にして思えば、ごっこ遊びなんて初めてやったな。
遊ぶ友達もいなかったし当たり前か。
こんな感じのベリルを見たくて、つい書いてしまいました。
普通といっても原作の様なズレた所もないし、マシュの事も愛していません。
マシュの部屋に押し入ったのは、マシュに大令呪を刻ませなくなかったドクターの為という設定にしました。
ドクターの為に行動したのは単純にベリルなりの人助けです。
この作品のベリルは割と普通なのでそれなりの良識も常識も備わっています。それでも人殺しには抵抗が無くて、人殺しにしか才能が無いという設定です。
人殺し以外にはほぼ人間失格レベルで駄目人間です。
今作のベリルを誰かで例えると某銀の運命のシスコン某吟遊詩人で人狼な某無職のあの人みたいな感じです。
分かりやすく言うとベリルを普通にしたら無職になったという感じです。
ちなみにグラビティ姫の枠はモルガンです。
ベリルを夫にしたのはそれなりの理由があります。
一応、続きも執筆中ですので完成次第投稿するつもりです。