楽しんでいただけると幸いです
「なあ」
「なによ」
仕事がだるくなり、眠気も増してきた夜。窓を開けながら俺は今日の秘書官である霞に話しかける。
「お前と過ごしてもう半年以上は過ぎたわけなんだが……会ったときからの疑問を聞いていいか?」
「いいわよ。でも手短に済ませなさい。執務は少ないけど残ってるのよ」
「はいはい。りょーかい、りょーかい」
「ホントに分かってんのかしら……」
窓を後ろに夜風を浴びながら、執務を止めた霞の疑念の瞳から目をそらす。そうすると霞はすぐにまたペンを動かし始めた。
「そんで本題だが、なんで俺の初期艦はお前なんだ?普通は吹雪や電だって聞いてたんだが」
「あんた……そういうのは普通最初に聞くものよ」
「俺も初対面のときお前から聞こうと思ったんだよ。でもお前自分の一言目覚えてるか?」
「……」
俺の言葉を聞きながらもしっかりと手の動きは止まらない。
「『あんたには何も期待してないから。』だぞ。怖すぎて聞けねえよ」
「かと思えば今じゃこんな風に話せるようになるしよ。自分でも何がなんだか。あ、これも一応質問な。気になるし」
ふぅと一息つきながら霞はペンを机に置く。それからこちらを見つめ自然と話し始めた。
「……まあまずは一つ目の質問ね。それは簡単よ。あんたって軍学校の成績は?」
「悪い」
「上官との仲は?」
「一部からやばいほど毛嫌いされてる」
「そしてあたしは昔所属してた鎮守府で司令官と大喧嘩。そんで左遷場所としてここが選ばれたわけ。まあつまりのけ者が所属する場所に邪魔者を配属させたってわけよ。まあ大方あんたへの嫌がらせね」
まじか……正直霞が有能すぎて上層部がついに俺にデレたのかとも思ったんだが……。
てか霞にグサグサ言われすぎて心が痛い。霞がこうなのはいつも通りだから気にならないが、今回は軍学校時代の話が混じったのでダメージがでかい。
「……なあ」
「なによ」
「レジギガスをスロースタート状態で3タテさせて相手を絶望させたいんだがどうすればいいと思う?」
「話題の変え方下手すぎでしょあんた」
「いやだって……んなまるで俺が無能で厄介者みたいな言い方……」
「事実よ。それで二つ目の質問ね。それも簡単よ。前のとこの司令官とは違うとわかったからってだけ」
「……そうなのか?」
「あいつは正真正銘のクズだったわ。間違えたらすぐ人のせいにするわ、補給もさせない、疲労も無視する……」グチグチ
《5分後》
「まあこんな感じのやつだったわ。左遷先なんだがらあいつと同等かそれ以下だと考えてただけよ」
「なげえよ。カップラーメン作って食い終わったわ」
「人が話してるときに何してんのよ!」
「いやだって長いし……俺悪くねえし」
「……いいわよ。この時間にカップ麺食べてたって萩風に言っとくから」
「それだけは勘弁してくれ。この通りだ」
俺は即座に自分よりも小さい少女へと土下座をかます。俺の辞書に恥という言葉はないのだ。
「あんた発言を曲げる速度でギネス取れるわね」
「まじか。それって金貰えるかな」
呆れたと言わんばかりの目で見られるが特に気にすることなく話を待つ。
「……まあようは、あたしたちのことを考えて動いてくれるあんたと前のやつと同じような関係でいる必要がなかったってことよ」
「霞……」
「そもそもあたしがどんだけ言おうともうざったいくらい話しかけてきたのが一番の理由だけどね」
「それ言わなくてもよかったよな?」
少し感動しかけた俺の僅かに残ってた純情を返してくれ。
「……仕方ねえだろ二人しかいねえのにそこの仲が最悪とか地獄じゃねえか。コミュ障なりに努力したんだぞ」
それもそうね、と返事をすると再びペンを持ち、動かし始める。
「あとはあれね」
「まだあんのか」
少しの間があき、霞は思い出したかのように話を再開させる。
「あたしの最初の言葉で半泣きになったじゃない?そのときに妖精さんが沢山かけつけて慰めてるのを見たからってのもあるわ」
「それ理由になんのか?あと半泣きのことは忘れろ」
「どうしようもないやつには人も妖精も寄り付かないってだけの話よ。半泣き司令官」
「ガチ泣きするぞ?……てか軍学校時代の俺にはほぼ人が寄り付かなかったんだが」
俺のこの中々に恥ずかしかった返しにあいつからの返事はない。どうやら霞としてはこの会話のキャッチボールは終わったらしい。
「……よし。執務も終わったしあたしはもう寝るわ」
「待て最後に俺の悲しい過去暴露で終わるのかよ。納得いかねえぞ。せめてなんか返せよ」
「手短に済ませなかった罰よ。おやすみ、クズ司令官」
「お、おい!そもそもお前が話を長く……」
呼び止める声もむなしく霞の姿は見えなってしまった。
……出ていく直前、少しだけあいつの口元が上がっているのが見えたな。ほんと最初からだと考えられない進歩だ。
笑みをこぼしふと机を見れば、写るのは昼にサボったせいでたまっている書類
「……はぁ」
「執務終わらそ……」
現実に引き戻され、独り残った執務室で俺の声だけが静かに響いた
本編でそのうち書くからあんまり意味ないキャラ設定その1
《提督》
本編にあるとおり軍学校の成績はよくなく、上官にも嫌われているが、軍からは提督適正が無駄に高いため微妙な扱いになってしまっている。《提督適正については下記参考》
また金遣いが荒く、艦娘達に度々注意されている。
本人はカップラーメンやジャンクフードが好物だが、萩風に食べ過ぎだとよく没収されている。
あまり本編に絡まない設定その1
提督適正・・・簡単に言えば妖精との意思疎通度。とりあえず見えれば御の字であるので、喋れる人間はかなり重宝することになる。高ければ高いほど艦娘の力を引き出せる。
後天的に発祥する者もいるがごく稀。その一人が主人公であり、成績が悪いのは軍学校に行く前は一般人だったせいも少しある。