ダメ提督と艦娘達   作:冷やし冷麺

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まず言い訳せずに謝ります。投稿遅れてすみませんでした。明けましておめでとうを言う機会すらなくなりました。
ここ最近ようやく時間に余裕が出てきたので投稿頑張りたいですね……


第9話 萩風とトラウマ

「ふぅぅ……」

 

 時計の針が12を越えて夜が深まり、瞼が重く感じて溜め息をついた。仕事以外で久しぶりに日を跨いだな……。

 

 先程まで明々とwik○ぺディアを映していたパソコンを切りながら、ふと今日来た新人、曙について考える。

 

「ありゃまた……大変なのが来やがったな」

 

 まさか初対面でクソ提督と呼ばれるとは……あのあとも数10秒フリーズしたせいで色々言われちまったし。

 

 そして曙を空き部屋……霞とかあかしから新しい子が来たときのために用意しておけと言われていた部屋に連れていくとき、設備を説明していたときも口撃の手を緩めなかった。

 

 ……ほんと、疲れた。

 

 疲れたと言えば洗い物もだ。秘書艦である霞が怪我をしているから、意を決して俺がやろうとしたのだが……手際が悪すぎて結局手伝いに来た夕立がほとんどやってしまった。……流石に洗い物くらい自分で出来るようにしなくちゃな。

 

「あーあ。家事スキルがいきなり身に付かねえかなあ……」

 

 疲れを紛らわせるためによく分からねえことを口からこぼす。そうなりゃなんか金儲けに使え……るわけねえな。世の中の主婦全員が億万長者になっちまう。

 

「………?」

 

 アホくさいことを忘れ、さて寝るぞといったときにコンコンコンと扉を叩く音が鳴り響く。

 

 時雨か……?いやあいつなら問答無用で入ってくるか。それにあいつは明日……いや、もう今日か……秘書艦なんだからわざわざ来る可能性は低いだろう。

 

 どうせ答えはすぐそこにあるということで、とりあえず扉を開けるとそこには予想外の人物……萩風がいた。

 

 パジャマ姿に普段くくっている髪はストレートと、その姿に懐かしさを覚えていたのも束の間。気づけば萩風は俺にくっついて、簡単に言えば抱きついてきていた。

 

「またあの夢でも見たか?」

 

 至って冷静に萩風に確認する。俺がたいして取り乱さないのは以前にもこういうことがあったからだ。

 

 確か萩風が着任して1週間頃、忘れ物を届けようと部屋に行ったときだ。その際萩風が泣いていたので理由を聞けば、昔の……艦だった頃の夢を見てしまったからと、顔を隠すように俯いて言われたのを今でも覚えている。

 

 結局そのあと萩風が落ち着き、再び眠るまで傍にいたのだが……なんでも人が傍にいることが安心したらしく、それからも週に何度か通うことになった。……正直俺である理由はないだろうが、なし崩し的にそうなったとしか言えない。

 

 この夜の訪問も徐々に減っていき、最近はめっきりなくなったのだが……やはり昨日の夜の海で、魚雷による奇襲が萩風のトラウマを刺激してしまったのかもしれない。

 

 あぁ……そういやこの、萩風の傍にいたとかその他諸々が川内にばれてたっけな……もしかすると他の奴らにも……今はそんなこと考えるのはよすか。

 

 天井を見上げて無駄な思考を追いやり、萩風が大丈夫になるまで待つのであった。

 


 

「ひとまず大丈夫……か?」

 

「はい……。ごめんなさい、こんな時間にあ、あんなことして……」

 

 萩風は後半の言葉に含羞の色を現しながら、申し訳なさそうに呟いた。

 

 ちなみに部屋は既に移動し、萩風の部屋となっている。流石に俺の部屋で寝させるわけにゃいかねえからな。

 

 ……部屋に戻る間すげえ力で腕を組まれて血が止まりそうだった。

 

「気にすんな。全然眠くなくて・・・・・・・今からスマホゲーに勤しむ予定だったからな」

 

「それはそれで問題ですよ……」

 

「昼寝の力ってすげえよな」

 

 俺は悪びることもなく笑えば、困ったように溜め息をつく萩風の姿を見て、眠そうということを除けば調子を取り戻していることに安心する。

 

「ま、子供のお前にはもうしんどい時間かもな。てなわけでそろそろ寝ときな」

 

 萩風はうとうとしながらも俺の言葉に子供じゃないですよと言いたげにむっとした顔になる。

 

 んな顔されてもなあ……実際まだ子供だし。まあ言い方が悪かったのは認めるが……これ以上起こす方が悪いし。俺悪くねえし

 

「司令……寝る前に、少しお話よろしいですか?」

 

「ん……いいぞ?」

 

 先程の言葉に諭されベッドに入り横向きに寝た萩風は、床に座ってベッドにもたれ掛かる俺に話しかけてくる。

 

 目をこすって眠いだろうに言うってことは……それなりに重要なことなのだうか?

 

「食堂……」

 

「?」

 

「インスタントのゴミ……」

 

「……ぁ」

 

「捨て忘れてましたね」

 

「えっとぉ……悪かった。だ、だから霞にだけは言わないでくれ……」

 

 顔を見るのが怖くて明後日の方向を向いて子供に縋る大人という最悪に情けない様子が展開されてしまった。……次あいつにいらねえことバレたら、小遣いが吹きとんじまうかもしれねえ。

 

「えっと、大丈夫ですよ。言いませんから」

 

「……まじ?」

 

「まじです」

 

 何か考える仕草をしたと思えば、目の前の少女は予感していた表情とは大きくかけ離れた薄い微笑みを見せる。

 

 もし霞と萩風が反対の状況ならすぐにチクりそうなものをこいつは……それにしても、さっきの言い方的に怒ってると思ったんだが……ラッキーってやつだな。

 

「でも……代わりに1つお願いがあるん、です」

 

「……なんだ?」

 

 後半になるにつれて声がか細くなっていく萩風に疑問を抱きながら続きを待つ。

 

「その、えっと……一緒に寝てくれませんかっ……?」

 

「あぁ……」

 

 なるほど一緒にかあ……

 

「……は?本気か?」

 

「ほ、本気です……」

 

「二人じゃ狭いぞ?」

 

「大丈夫です……!」

 

 恥ずかしさからか耳までが真っ赤になって、あわあわし出す寸前の萩風をこれ以上追い詰めるのは酷なことだろう。

 

 ていうかこれを了承するのは時雨に悪いか……?いやでもあいつと違って下心はないだろうし別にいいか。

 

 眠くて判断がふわふわしてるし、なんか見落としてる気がするが……考えるのだるいし無視だ無視。

 

「分かった……けど、寝にくいと思ったらすぐにやめろよ」

 

 言葉もなくこくりと頷く萩風を一瞥した後、気持ち楽になるように萩風の方とは逆の横向きに寝る。すると眠気が壊れたダムのごとく溢れだし、意識が流されていく。

 

 あぁクソ……萩風が寝てから床に転げ落ちようと思ってたが、これじゃ確実に俺が先に寝ちまう……な―――

 


 

 ひんやりとした空気で眠りから覚めてゆったりと目を開けると、そこには天井が広がっていた。

 

 ……天井?俺は横を向いて寝たはずだが。それになんか右腕にも違和感がある。なんだ、この感じ……

 

 寝起きでしっかり働かない思考の中、疑問を紐解くために気になっていた右腕に目をやるとそこには……

 

「何やってんだ……お前」

 

 仰向けになった俺の腕に抱き枕と勘違いしてるかのごとくの萩風が引っ付いていたのだ。正直寝てる最中の行動なのでお互いどうしようもないのだが……それでも何故わざわざ俺なんかにこんな……

 

 というか萩風がまだ寝てることを考えるとかなり早朝みてえだな……いつもなら二度寝をかますところだがここ俺の部屋じゃねえしな……よし。

 

 俺にしては珍しく目覚まし時計含め誰にも起こされずに目を覚ましたことだし、余裕ついでに朝からポケットなモンスターでもやりに部屋に戻るか。そのためにもまずはこの拘束から脱げ出さなくちゃな。

 

「力強くねえか……?」

 

 さっきは冗談で拘束とか表現したが、洒落になんないぞこれ……

 

「……よし」

 

 結局カップ麺1つ分くらいの時間をかけたが、なんとか腕からの脱出に成功する。

 

「……はぁ」

 

 ふと萩風の方を見ればなんとも穏やかな、満足げな顔して寝ていやがった……俺が隣にいた状況でよくこんな風に意識を沈めれるもんだ。

 

 よく分かんねえなと考えながら、また久々の朝ゲームに楽しみを覚えながら、自分の部屋の扉を開ける。

 

 ……なんだこの嫌な予感は。そういや寝る前も何かが引っかかったんだよな……けど別に俺が萩風の部屋に行ってとやかく言ってくるようなやつなんていねえし、そもそも俺が萩風の部屋にいたかなんて分からねえしな。

 

「お帰り、提督」

 

 思考の最中、開けた扉の先にはいつもの黒の制服にエプロンをつけた黒髪でアホ毛が特徴の少女がいてしまった。

 

 あぁ……忘れてた、、ヤバめなのを

 

「お、おはよう時雨。いい朝……だな?」

 

「うん。おはよう」

 

「そ、それにしても……なんで玄関なんかに突っ立ってたんだよ?」

 

「そろそろ提督が帰ってくる頃かなって思ったからさ、待ってたんだ」

 

 微笑みながら語る時雨はどこか影が射している気がしてしまうのは考えすぎだろうか。

 

「ところで、質問いいかな?」

 

「……なんだ?」

 

「どうして萩風の部屋にいたんだい?」

 

 ……まじでなんで分かるんだよ。

 

「僕には提督の居場所が分かる提督センサーがあるって言ったじゃないか」

 

「だから当たり前のように読心するのをやめろ……」

 

 ぐちゃぐちゃな感情のままとりあえず率直に思ったことを口にすれば、「まあ別にいいじゃないか」と魔法のような言葉をもってスルーされる。

 

「どうして萩風とは一夜を過ごすのに、僕は夜に行ってもないがしろに追い出されるんだい?」

 

「……そりゃあ下心の有無だろ」

 

「そんなこと分かってるさ!」

 

「分かってんならそんな大声出すな……!」

 

 いきなり目をつぶりそうな勢いを見せてきた時雨に、こちらもつい声が大きくなってしまう。

 

「頭では分かってるよ!!萩風は夜がとても苦手なのが理由ってことも!!その理由については僕もよく知ってるさ!!でも、心は納得出来てないんだよ!!」

 

「それに関しては俺にどうしろっつうんだよ……!!」

 

「午後10時から午前6時まで同じベッドにいるだけでいいから!!!」

 

「要件具体化しただけじゃねえか……!!!」

 

 姿勢が少し前のめりになるほど全力な時雨に何度も駄目だと伝え続ける。

 

「うぅ……この浮気者ぉ!!!!」

 

「言い方が全てにおいてひでえな!!!!」

 

 声の大きさも言い合いそのものもどんどんヒートアップしていく。

 

「そもそも―――」「ねえ」

 

 突然の後ろからの言葉に振り返ると、そこには珍しくにっこりとした笑顔の霞。 

 

 ……いや、笑っているが笑っていない。心が冷えきっている顔だ。そもそもこいつの俺に向けられた満面の笑みなど良い意味の方で見ることはレアだ。つまり、これは……

 

「丁度よかった!聞いてよ霞!提督が――」

 

「あんた達、今何時か知ってる?」

 

「……何時だろうな」

 

 必死になっているのか時雨は霞の異変に気づかずにそのままの調子で話しかける。霞はそれには気にも留めず、急に真顔になり質問を投げかけてくるので、俺は中身のない言葉を返す。

 

「5時ちょっと過ぎたぐらいよ。皆まだ寝てるの。分かる?なのに中に入らずわざわざ廊下であんた達は……はぁぁぁ……こういうときに限って早く起きるなんて運が悪いわね、ほんと……」

 

 俺も時雨も冷静になり、その霞の疲れと呆れが滲む声の正論が重くのしかかる。

 

「……」

 

「あ、曙……」

 

 とりあえずと、霞から借りたおさがりのパジャマを着た冷めた瞳の曙に心臓が喉から飛び出そうになる。そういや、ここから部屋近かったけな……

 

「クソ浮気提督……」

 

「………っっ!!!」

 

 曙はため息に似た言葉をついて部屋に戻っていってしまった。

 

「フリーズしてる……」

 

「自業自得よ、クズ」

 

 俺はただ呆然と曙のいなくなった空間を見つめながら、霞の的を射た発言に更なる心の痛みを増加させるのだった。




軽いキャラ設定

提督・・・今回の件で結局お小遣いおあずけの危機に瀕していている。

萩風・・・恐怖と眠たさの中、横向きに寝ていた提督をわざわざ仰向けにして腕に抱きついたのは内緒。 

時雨・・・エプロンつけてたら新婚っぽいかなって思って着けてた。
萩風との違いは理解しているが、自分にもして欲しいという気持ちは抑えられなかった

曙・・・霞同様早く起きたら廊下がやかましいので出たらなんかすごいことになってた。
提督に対する好感度がやばい。
時雨にたいして何故この提督がそこまで好きなのかと疑問に思っている。

次回は番外編で短編集の予定です。
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