例《タイトル》(○話補足)的な感じです
あと私事ではありますが、ようやく萩風が来てくれました。ほんと可愛い。以上です。
《霞と加賀とラブコメ》(第8話後半の終盤補足)
「あなたが部屋に来るなんて珍しいわね、霞」
「……この前借りた本を返しに来たの。……えっと、お邪魔だったかしら」
「大丈夫よ。今日は特に予定もありませんから」
昼食が終わり、一段落した私は借りていた恋愛漫画を返すため、加賀さんの部屋に訪れていた。
……それにしても加賀さんに私が砕けた口調で話すことになるとは想像もしていなかった。加賀さん本人からここの提督は延ばしきったゴムみたいな人間だから私達が固くならなくていいし、そもそも私の方が所属歴も長いと言われたからだけど……
そういえば萩風や夕立は敬語のままだったわね。こっちの方がしっくり来るって理由だったけど……まあ私も神通さんには何を言われようが絶対敬語を使うだろうからよく分かる。
この話を加賀さんにしたら、私も五航戦には敬語を使わせたいから分かると言われ、それは少し違うのではと伝えれば、ぽかんとした顔をされたのは印象濃く記憶に残っている。……この人は思ったより天然なのだ。
「もう読んだのね……どうだったかしら」
「面白かったわ。紹介してくれてありがとう」
「なら良かったわ。私としては主人公がヒロインに毎日朝食を作ってくれというシーンが――」
『飯うまかったぞ。毎日御所望レベルだ』
「……ぁ」
その言葉で思い出すは怪我した先日の司令官との会話。このシーンの影響でいらない読みをして、無様に沈んだあの会話を。
「特に語彙力のない主人公が必死に告……って、あなた顔が真っ赤よ。大丈夫?」
「だだだ大丈夫!そろそろ失礼するわ!」
「?そう……でも体調には気をつけなさい」
熱湯で茹でられたのかと錯覚するほど気が動転しながら部屋を出る。
……顔が熱い。外の空気を浴びたくなってしまうくらいに。
あぁ、そもそもあれは私は悪くない。あのときは疲れてたし、あの漫画を最近読み終わったことも拍車をかけた。だから、状況が悪かっただけで、私は……悪く……ない。
「……っ!!」
忘れるために首をブンブン振って邪念と言い訳を飛ばし、これから何をするかに意識を持っていくのだった。
《川内とマフラー》(第6話序盤補足)
「お前さ……」
「ん?どしたの?」
「気になってたんだが、どうしていつでもマフラーしてんだ?ジャージのときまでしてるし……」
執務中に何気なく呟いた提督は頭をかきながら「どんだけ好きなんだよ……」と若干引き気味に呟いた。
「うーん、そうだねえ……」
私は自分の首に巻かれている大切なマフラーを見つめて、夏頃の提督との一幕を思い出す。
「改二っていいよねー改二ってさあ」
「いきなりだな……」
「いやさ、最近夕立が改二になって大幅イメチェンしたじゃん?私も早くそうなりたいなーってね」
執務中に何気なく呟いた一言で始まった話を私は雑に広げる。それからすぐに提督も手を書類から下手なペン回しに移行した。
「珍しく早めに書類を片しているやつの前で呑気だな……」
「書類がいつもより多くてびびってるだけでしょ」
偉いだろ?と言いたげな、どこかどや顔な提督。そんな彼に外のじりじりとしたものとは正反対の冷ややかな表情を投げる。
「それで聞きたいんだけどさ、私の改二衣装ってどんな感じなの?」
「資料で1度しか見てねえが……確かマフラーしててクナイを持ってた……気がする」
「おぉ!いいねえー……かっこいいじゃん!」
私がキラキラと思いを馳せているとき提督は「クナイ……ってか魚雷か……?」と誰も分からないのに確かめるようにぼそりと呟く。
そこははっきりした方がいいでしょ………まあどっちでもかっこいいしいっかあ!
「早くマフラーとクナイ携えたーい!!」
「無茶言うな……改二は本人の実力に伴うんだ。お前じゃもう少し先だろうよ」
「えー!?マフラー!クナイー!」
「はあ……」
提督は普段はされる側のため息をつけば、何か考えるように全く回せていないペンを不満げに見ると、そそくさと仕事の方へと戻ってしまった。
そうそう、このときは心底だるそうに受け流されちゃったんだよね。……だからこそ、後々の提督の行動は意外だったんだよね。
「これ、やるよ」
「なにこれ?」
改二に対する駄々をこねてから数週間後、執務室にて突然小包を貰って疑問の声を上げる。
「開けたら分かっだろ」
「そりゃそうで――ってマフラー?」
いきなり当たり前のこと言うなぁと思いながら慣れない開封を終えると、そこにあったのは積もった雪に太陽が射したみたいに明るい色のマフラー。
「あぁ。実家の親がいきなり送ってきてな。俺はつけねえし……お前の改二のマフラーに似てるからくれてやろうと思ってな」
「そうなんだ……この時期に送られて来たの?」
「……あぁ。冬に向けてだってさ。流石俺みたいなやつを軍に入れる親……イカれてんねえ」
「ふーん」
右手の人差し指を頭の横でくるくる回しながら、馬鹿にするように笑う彼を見てると、なんだか面白くなって、込み上げてくるものを我慢しながら気の抜けた返事をする。
「なんだその顔は……何も問題ないだろ」
「べっつにー」
怪訝そうな顔をする提督に、まあいいですよという風なわざとらしい口調で答える。
「とにかく!提督、ありがとね!」
仕切り直してお礼を伝えれば、提督は顔をそらして私を見ないようにしてきた。
「……その礼は親に伝えとくよ」
その声はどこか緊張が解れた、疲れのまじった声だった。
「さっきから聞いてんのか?」
「……うんうん。聞こえてるよ」
時は戻って現在。回想に浸っていた私を提督の刺すような声が現実に引き戻す。
「もしかしてそれ俺の……っ親のやつか?なら上司からの贈り物とかで義務感で無理してつけてんならはずせよ」
「別にそういうわけじゃないよ」
提督の的はずれな勘ぐりを即座にバッサリ切り捨てる。
私知ってるんだよ?これは君自身が買ったものってこと。
マフラーの話をした1、2週間後だったかな。予定より早く終わった演習の報告に行ったら提督ってば机に突っ伏して授業から逃げる学生みたいに寝てんの。パソコンもつけっぱでさ。なんかとんでもないこと調べてないかなーってわくわくしながらパソコン覗いたら、『マフラー 白色』って検索してるからびっくりしちゃって提督の方をじっくり見たら私の改二の資料広げてたし……驚きのお祭りだったよ。
正直『俺に感謝しろよ?』とか恩着せがましく言うかなあと思ってたら、下手な嘘はつくし、内容は酷いのに演技はそれなりにうまいしで……ほんと面白かったよ。
「じゃあなんで……」
「ふふっ……なーいしょ」
「はあ?」
提督が隠すなら……私も隠しちゃうから。提督は言わないのに、私だけ言って気恥ずかしくなるのはなんだか不公平だしね。
「あ、でも毎日夜戦させてくれるなら言っても……」
「じゃあこの話は終いだ」
「ちぇー……」
《霞とナンパ》
とある日の休日、私と半泣き司令官は最近公開された映画を観るためにいつもより少し遠めのショッピングモールにやって来ていた。
既に映画は見終わり、私はこのバカが食べきれなかったポップコーンを抱えている。一方バカはというと飲み切れなかったジュースの一気飲みをしていた。
「ようやく飲み終わった……」
「だからジュースを2種類頼むのはやめとけって言ったのに……」
「限定のやつがうまそうでな……サイズは小さいからいけると思ったんだが、片方をLサイズにしたのはしくったな」
ゴミを捨ててパーカーのポケットに手を突っ込みながら悪びれもせず笑うバカに耐えきれずため息をつく。
「ちょいとトイレ行ってくる。……俺のポップコーン食うなよ」
「心配しなくても、あんたみたいに欲深い幼稚人間じゃないから食べないわよ」
「ひっでえ言われよう……湊君泣いちゃう」
「……身長180越えの目付き悪い男の自分の名前一人称はきっついわね」
「そんな人のステータス晒しながら悪く言うか?」
バカが顔をしかめて歩いていくのを見送り、空いた片手で暇を潰すためにも携帯をいじり始める。
……というかあいつの本名『湊』だったわね。正直薄れてたわ……まあ誰もあいつのこと名前で呼ばないから仕方ないけど。
しばらくして結局見るものもなくスマホを閉まったとき、さっきまではいなかった自分たち遊び人ですと言いたげな2人組の男が此方を見てニヤニヤしているのに気づいてしまった。
……なんか嫌な予感がするわね。思い違いだと嬉し――
「へい!そこの彼女。俺達とあのカッフェでお茶していかねえ?」
「……遠慮します」
はぁ……なんでこういう嫌なことばっか当たるのかしらね。当たるなら懸賞とかだけにして欲しいわ……この考えはあいつみたい。ちょっと反省ね。
てかカッフェってなによカッフェって。テンションの高さが相まってめちゃくちゃムカつくわね。
「お兄さんら」
「……!」
こいつらの理解するのも面倒くさい話を聞き流すのも限界になってきたところに、戻ってきた司令官が諌めるように声をかける。
大丈夫なのかとあいつの顔を見れば任せろといいだけな自信満々な顔を返される。
まあそうね。なんだかんだ社会人だし……私がやるより効果的だろうから、ここはこいつに任せ―――
「こいつはやめとけって。こんな小せえなりしてるけど口悪いし、たまに手え上げるしで……仕事は出来るがどうなんだって感じだぞ?」
――――――は???
「しっかりと選択を見極めなきゃあこれからの人生お先真っ暗に」「なるのはあんたよ」「え」
「少し向こうで話しましょうか……」
「ははっ……ちょっとしたジョークだ。な?そんな怖い声ちょ、引っ張んなって!」
唖然とした男達を無視し、クズを引っ張って足早に映画館から去る。
ある程度歩いたところで軽く息を吐き、クズの服から手を離し自由の身にしてやった。
「えっと、悪かったって……でもめんどくさいやつには、めんどくさいやつをぶつけんのが一番だろ?ハンムラビ法典にも似たようなことが……」
「その場合同害報復だからあんたがあいつらをナンパしなくちゃいけないわよ?」
「……おぇぇ」
わざとらしい吐き真似をする司令官にこいつは本当に謝る気持ちがあるのかと疑ってしまう。
「……ああいうのは男連れって分かった時点で引くやつ多いんだから、わざわざ余計なこと言わなくていいのよ」
司令官は右手で頭を雑にかきながら、「正論のナイフが痛てえ」と居心地悪そうに呟いた。
……まあこいつが私を助けようとしたのは分かるけど、焦ると少し外れたことをするのは厄介なとこね。はぁ……ったく、いつまでたっても。直さなくちゃいけないとこばっか見つかるわね。
「お前……なんか笑ってね?おかしくなっちまったのか?」
「……あんたの次のお小遣いをどれだけ減らそうか考えてただけよ、クズ」
「大泣きしながら訴えってやっから覚悟しろよ……」
「良かったわね。半泣き卒業よ」
ぐぬぬという表現がぴったりの顔を拝み、すたすたと司令官の前を歩く。
寸刻の間、沈黙が流れる。周りの賑やかさも相まって、私達だけ取り残されたような妙な気分になってしまう。
「まぁ、えっと……なんだ。第三者に言うには……その、言いすぎた。悪い」
司令官は突然ばつの悪そうな声でぎこちない機械のように喋り始める。
「別に……気にしてないわよ」
「……そうか」
「ところでこのキャラメルポップコーン、とてもおいしいわね。私も買えばよかったわ」
「さては普通に怒ってるなお前」
顔がひきつる司令官にポップコーンの容器を返し、直前に取っておいた1粒、また口に放り込む。
――ほんと、どうしようもないくらいに甘いわね。
主役の名前の登場が番外編ってどうなんすかね。本編と繋がってると言っても……。因みに名前の由来は安直に船が停まる場所の港からです。
余談ですが作者はずっと川内改二が持ってるの魚雷じゃなくてクナイだと思ってました。