作者自身真面目な話は書くのが初めてだったので書いてて楽しかったし、難しかったです、はい
「ちっ……またお前らかよ……」
私と時雨が生まれて初めて言われた言葉はこれだった。
同じ艦娘は同じ鎮守府に2人いらない。力がうまく使えなくなるから。そして私達みたいな簡単に作れる駆逐艦なんか誰も欲しがらないから解体だと
そんな話と、仕事があり今日ではなく明日には解体することだけを告げると……営倉?みたいな場所に入れてどっかに行ってしまった。
私も時雨も全く喋らない……そんな気力はないから仕方ないけど。
「お前ら。出ろ」
翌日、夕立達を建造した人がやって来て扉を開けた。もう終わるんだ、なんて考えていたら思いもよらないことを言われた
「昨日、お前達のような代えがきく駆逐艦でもいいから欲しいという変わり者がいてな。そいつのとこに着任することになった」
「まあどんな扱いになるかは知らないがな」
囮にでもなるんじゃないか?と高らかに笑いながら夕立達を連れていく。
門の前まで行けば、そこには軍服をしっかりと着こなし、180㎝くらいの身長で短めの黒髪を整えた、相手の機嫌を取るようにニコニコする男の人がいた。
「おらよ。お望みの品だ」
「はい……ありがとうございます。私のような者に」
ニコニコした男は建造した男に対し、これでもかと下手に出ながら顔を崩さない。
「まあ頑張れよ、才能溢れる新人君」
最後に相手をバカにするような……いや、バカにしている声でそう言い残し、建造した男は帰っていった。
ニコニコしすぎて胡散臭い男はバス停に行くとだけ伝えて私達を連れて田舎道を歩く。
途中見た散りかけの桜にちょっとの共感を得ながら、小さめのベンチのあるバス停まで着く。
これからどうなるんだろうか、そんなことを考えていると
「は"ぁぁぁあああ……」
「かったりい……ほんとかったりいよお……」
男は絶対崩さないと思えた顔を一気にだるさを滲み出すものに変え、大きくため息をついて文句を言い始めたのだ。
あまりに予想外のことで夕立も時雨も思わず目を見開く。
「ん?あぁ驚かせたか。さっきまでは猫かぶってただけだ。一応上官なんでな」
質問とかあるなら受け付けるぜ、とつけ足しながらあくびをする。
「……僕たちをどうする気だい?」
「……?どうって」
「囮にでもするのかい?」
「は……?もしかして何も聞いてねえのか?」
彼は頭をかきながら私達に目をやりつつ話を続ける
「あー簡単に説明するとな。うちの鎮守府は遠征を主にやるとこなんだよ。そんで所属艦娘がお前らを除けば2人しかいなくてな」
彼は気だるげに1拍置く
「上としては俺なんかにあんま開発資材を割きたくないらしくてな……この前送られて来たのが一つの開発資材と、周りの鎮守府に頼んでちょ☆っていう伝達でな。その結果お前らに白羽の矢が立ったってわけだ」
彼は話終えると少し気まずそうに目をそらす。
……もしかするとさっきのちょ☆で笑って欲しかったのかもしれない
「てかさ、どうでもいい話なんだが……そもそも提督が艦娘を迎えに行くってどうなんだ……?普通向かわせるもんだと思うんだが……まあお前らの電車代とバス代が出るから別にいいけどな」
「…………」
二人とも何も言わないのを横目に捉えると、彼は時刻表の方に集中する。
「とりあえず……バスが来るまで時間があるな……田舎はこういうところが大変だな。まあうちの鎮守府も同じようなもんだが」
「まだ先はなげえし何か飲むか。何がいい?折角奢りなんだから、遠慮して水とかお茶とか味気ないのはなしだぜ」
自販機を指差し、ニヤリと笑いながらそんな質問をしてくる。
……水にしようとしていたのに出鼻をくじかれてしまった
「……ならあなたのオススメで」
「僕もそれでいいかな……」
「オッケーだ。……ほい」
まじでうめえから、と念押しのごとく言いココアを渡してくる。
……甘くておいしい
飲んでみるとそんな感想が頭に浮かんで、少し気が楽になったのかなと思った。
「座ってていいぞ。……それにしてもしっかりしてそうな奴らで良かったよ。俺は結構ダメなやつだからな。背中を蹴ってくれるやつのが嬉しいもんだ」
彼は1人立ちながら、まあ服でそう判断したのは流石にダメか……?とよく分からない独り言を溢す。
「えっと……軍人がこんなこと言っていいのか分からんが……気楽にいこうぜ。気楽にさ」
少しでも私達の緊張を解くためか、焦るように、でもゆっくりと話を繋げる。
「これからよろしく頼むぞ。夕立、時雨」
決まった……という顔をしている彼に対し今までとは少し違う沈黙が訪れる。
「その……」
「どうした?」
「僕の名前は時雨だよ……提督」
「……まじか」
そのあと時雨に謝り倒すこの人を見てちょっとだけ笑ったのは内緒だ。
「ふっふふーん♪」
スキップしながらさっき買ってきたココアからの連想で会ったばかりのことを思い出す。
少し早めに執務から抜けた理由は単純。近くの自販機で買ってきたこのココアを提督さんに渡すためだ。
そしたらきっとまた褒めてくれるはずだ。
……最近夕立から甘えにはいけてないからこういうチャンスは逃せない。
こちらの理由はいささか複雑だ。まずは時雨を止めなくちゃいけないこと。そしてこっちがメインだけど……提督さんに拒絶されたらどうしようと思ってしまったこと。
そんなことはないことは頭では分かってる。でも心は理解していない。
1度誰かに否定される経験をしてしまったせいか、ある日ふと現れた小さな不安はいつの間にか自身の行動を制限するものになってしまった。
「提督さん!サプラ――」
気を取り直して扉を開けるとそこには
「分かった、妥協するよ!唇と唇を重ねるだけでいいから!」
「それを世間ではキスって言うんだよ……!てかお前艦装つけてねえのに力強すぎだろ……!ていうか艦娘は人に対しては艦装の有無に限らず普通の女子程度の力しか出せねえから、それ以前の問題だよなこれ……!」
「これも愛の力だね……」
「だからそのふりがな必要ねえだろ……ッ」
提督さんと時雨で取っ組み合いが始まっていた
「はぁ……時雨何してるっぽい」
「ゆっ、夕立」
時雨の襟元を掴みながら少しの羨ましさを隠しながら声を低くして言う。
「離してよ夕立。今僕は最大の任務を」
「はいはい。遠征のが優先よ」
「そんな殺生な……」
手に持ったものを机に置きながら時雨を引きずって執務室から出て行く。
……ある程度歩いたところで、今更ながら時雨の方を優先したせいで褒めてもらう作戦が失敗したことにダメージを受ける。
「うぅ……」
「あのー夕立。ちゃんと歩くからそろそろ離してほしいんだ」
時雨が何か言ってるけど放心してるせいでよく聞こえない。
「おい……!」
すると後ろから聞き慣れた声が飛んできた。
「はぁ……間に合った……」
「提督、まさか僕に行ってらっしゃいのキスを」
「このココアお前が買ってきてくれたんだろ?」
「二人して無視は流石に傷つくかな」
提督さんは夕立のココアを見せながら時雨の言葉を華麗にスルーをかます。
「ありがとな」
「……えへへ。提督さんのためなら夕立もっともっと頑張れるっぽい」
嬉しい誤算で思わず顔が綻んでしまう
「時雨は……帰ったら頭を撫でる……とかでいいか?」
「それで充分だよ」
「なら最初からキスなんて馬鹿げたことを言うなよ……」
提督さんはいかにも呆れてますというような声を上げる。
……いいなぁ。夕立も撫でて欲しいっぽい。でも自分からいくのは……
「夕立、どうしたんだい?」
「な、なんでもないっぽい!」
時雨の質問にあわてて取り繕う私に、提督さんは追撃のような言葉を放つ。
「なんだ夕立、お前も頭を撫でて欲しいのか?」
「……はい……っぽい……」
冗談めかして言う提督さんにさっきの高揚もあり、勇気を振り絞ってうつむきながら了承の言葉を示す。
「……!あぁ……その、なんだ。うまくは言えんが……甘えたいときは遠慮すんな。そう深く考えず、気楽にいこうぜ」
「……うん」
提督さんは夕立の頭を撫でながら元気付けるように言葉を紡ぐ。
少し見上げれば、いつもみたいな打算的にニヤついてる顔でも、初対面のニコニコしたものでもない。
小さく、だけども優しさが分かる笑顔がそこにはあった。
「まあ時雨を見習うのもありだな。少し……いやミジンコくらいなら」
「ミジンコ!?」
夕立が手を離したので立ち上がった時雨がわーわーと言い出し、それに応戦する提督さんを見ながら、この鎮守府に来れて良かったななんて場違いなことを考えるのだった。
少しのキャラ設定
提督・・・我敬語使えたんかキャラNo.1。
自販機のときのやつは折角だから美味しいもの飲んで欲しくて言ったけど正直お節介だったなと少し後悔してる。
夕立・・・これからはまた少しづつ甘えていこうと思えた。
しっかりしていてるという予想が当たった方。
ちなみに服で判断の言葉の意味は未だに分かってない。
時雨・・・提督から最初のクールで警戒心マックスのお前はどこにいったと思われてる。
しっかしているという予想が外れた方。
ほんとどうしてこうなった。
次回はいつも通りの感じの回で川内メインの話です。