ダメ提督と艦娘達   作:冷やし冷麺

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今回は書いていると場面転換の数が多く、話も長いので前編後編に分けさせていただきました。
てかちょっと真面目な話になったら前編後編に分かれてしまう……
ところで、萩風どこですか?(白目)


第8話 ちょろさと新人(前編)

「よし。終わった……俺だって全力出したら余裕なんだよ!はははっ!」

 

 少し前に仕事の役目を終えたパソコンの電源を切り、たった今終わった書類を軽く叩いて、わざとらしく大きく声をあげる。

 

「はぁ……」

 

 その声はため息もろとも誰の耳に入ることなく虚空に消えていった。

 

 ……暇だな。なんか妖精も仕事始めた俺に遠慮したのか1人もいねえし。ゲームのやる気も起きねえし。

 

「……」

 

 時計を見れば5時を指していた。……この時間なら寝ても大丈夫だな。スマホのアラームを6時にセットかつ5分毎に鳴るように設定……あいつらからの通信が入ったときに鳴るなんかよく分からん仲介機の音も最大にしてと。……まあよっぽどじゃないと連絡入んねえけど。

 

 俺は軍服で寝るのはやばいということで白のTシャツと黒のスウェットパンツに着替え、一部分だけ畳にした所に寝転がった。疲れからなのか意識が朦朧とし、独りなことによるこのなんともいえない気持ちにふたを閉めるのだった。

 


 

「ごちそうさまでした……っと」

 

 結局あのあと2度目のアラームで目を覚ました俺は、仲介機とスマホを持って部屋まで戻り、霞の作ってくれた夕食を堪能した後、7時開店の11時閉店だったコンビニから仕入れて隠しておいたインスタントの蕎麦を片手に食堂に移動し、だらだらテレビを見ながら追い蕎麦という天国を終えたところだ。

 

 ちなみに食堂に移動した理由は至って簡単。この鎮守府には食堂、執務室、艦娘の風呂以外にテレビがないのだ。風呂にあるのはケガを治すやつが暇しないようにつけ、あとは人が集まりやすいとこに置いたってことだ。

 

「さて、捨てに――『ピー!!!!』ッ!?!???」

 

 萩風や霞にばれるのを防ぐため証拠隠滅を図ろうとしたところ、持っていた仲介機の音が静かな部屋に鳴り響く。

 

「いっ……誰だよ、こんな音量にしたやつは」

 

 音量を下げながら誰にもツッコまれない虚しいボケを呟く。

 

 とりあえず、と片付けはあとにして通信室まで向かい、仕組みのよく分からん機材を説明書通りに使って通信を繋ぐ。

 

 ……たよりがないのは元気な証拠という考えのもと、トラブルがない限り連絡はなしにしてるからな。正直報告のことも相まって少しだけ心配してる。

 

決してめんどくさいからじゃないぞ、うん。

 

「あーあー。こちら辺境鎮守府でーす」

 

 もしかしたらマイナスな報告ではないのでは、と根拠のない物を抱きながらふざけ気味に話しかける。

 

「あ、ようやく繋がった」

 

「川内か。どうした?」

 

 いつもよか真面目な声のトーンなので切り替えるために頬を叩いて返事を待つ。

 

「詳しくは帰ってから言うんだけど……潜水艦の奇襲にあっちゃってね」

 

「……了解。被害は?」

 

 努めて平静に言葉を返す。

 

「……霞が中破で他は軽傷か無傷。霞以外は入渠の緊急性はなし。いつも通りのお風呂時間でオッケーだね」

 

「……」

 

 ……敵が確認されたという話は聞いていたというのに。あのときもっと上に強く進言すりゃあ……この海域は危険性があると、もっと言えてれば。

 

 たかが中破、と他の提督達は笑うかもしれない。だが経験が浅くて、臆病な俺にとってはされど中破なのだ。それに加え己のせい、という言葉がのし掛かってくる

 

 思考が離れ川内からの言葉がどこか他人事のように聞こえてしまう。

 

「提督?」

 

「……!悪い。あとどれくらいで戻ってくる?」

 

「んー……だいたい20分くらいかな」

 

「了解……切るぞ」

 

 了承の言葉を聞き取り通信を切る。そして俺は、どこか放心状態ながらも立ち上がり港に向かうのだった。

 


 

 

 どこまでも続く黒く、蒼い水平線を見つめる。星空と俺の気持ちも相まってその景色はどこかいつもより暗く、幻想的に見えた。

 

「何たそがれてんのよ」

 

「……別に。そんなことねえよ」

 

 その深い色に囚われそうで、俯きかけてパーカーのポケットに手を突っ込んでいると、帰還してこちらに痛そうに足を引きずってきた霞に話しかけられる。

 

 俺は夜の寒さのなか動いてない影響で少し鼻をすすりながら、強がりで否定して、傷が目立つ霞の方を見た。

 

「……服、破れてるからあんまりじろじろ見ないでくれるかしら?」

 

「……悪い」

 

 そりゃあ男の俺にそんな姿見られたくねえか、と目をそらす。

 

「はぁ……まずは報告を……って言いたいんだけど」

 

 霞はどうしても我慢出来ないといった風に話を切り替える。

 

「さっきからなんでそんなしけた面してんのよ」

 

「…………俺のせいだ」

 

「は?」

 

「俺が……上の人達にもっと……言ってりゃ、不安定な海域に行かなくて済んだかもしれねえ」

 

「……あぁ。そういう」

 

 誤魔化しや否定も通じないだろうと判断し、ばか正直に小恥ずかしいことを伝えると、霞は馬鹿ねと言いたげな、面倒見のいい姉のような目でこちらを見てきた。

 

「まずひとつ言っておくけど。私の前の鎮守府ならこのくらいのケガ日常茶飯事よ」

 

「そしてこれが1番重要だけど、私達が接敵したのはあんたが警戒してない帰り道よ。だからあんたが気負う必要はないわ」

 

「……だが」

 

「はぁ……ちょっと屈みなさい」

 

「??」

 

 反論を試みたが霞はそれを遮りよくわかんねえ命令をしてきた。なんか怖いが拒否する方が怖いのでおとなしく言われた通りにする。

 

「いい加減にうじうじするのをやめる!!」

 

「いってえ!」

 

 霞は勢いのある言葉と共にでこぴんをお見舞いしてきやがった。

 

「おまっ……気合い入れるにしてももうちょい他のやり方があんだろ……」

 

「あんたにはこれくらいが丁度いいわよ」

 

「なんてやつだ……」

 

 ま、それはお互い様か。

 

 そんなことを心のなかで考えて、改めて霞の方を見ながら、俺はでこぴんの痛みと一緒に陰っていた気持ちも飛んでいっていたことを確信する。

 

「よし。気を取り直して報告頼むわ」

 

「私が言うのもなんだけど……馬鹿みたいにちょろいわね」

 

「あー……まああれだ。許しと喝ってのは何よりも特効薬になるんだ。俺にとっちゃな」

 

「ま、そっちの馬鹿みたいな方があんたらしくていいわ」

 

「僕はどっちの提督も好きだよ」

 

「はいはい。会話に割り込むのはダメっぽい」

 

 こいつまた馬鹿って言ったなと思っていたら、今まで静かに後ろにいた時雨が急に入ってきた……と思ったら速攻で夕立に退場させられていった。なんだったんだあいつ……。

 

「……ちょっと待て時雨。その手に持ってるのってドロップ艦じゃねえか」

 

「そうなんだよ。僕の倒した潜水艦から手に入ったんだ」

 

 ドロップ艦……簡単に言えば深海棲艦を倒した際に低確率で現れる物であり、手で持てるサイズのカードの形をした何かだ。それを建造ドックの機械にセットすりゃあ艦娘が開発資材なしで生まれるのだが……如何せん確率が低いし、うちはあんま敵倒さねえしでもう2度と見ることはねえと思っていたが……ラッキーだな。

 

 ちなみにうちの鎮守府は霞、時雨、夕立は余所からの異動。加賀、川内は開発資材から。そんで萩風がドロップ艦だ。

 

 これまた余談だが川内……ようは2つ目の開発資材は身元不明のとこから送られてきてかなり不気味だった。同封されてた手紙には『使ってね☆PSタンスに小指をぶつけました』って書いてあって不気味を越えて何も感じなくなった。

 

「よくやった時雨……ナイスだ」

 

「……ありがとう、これも提督のおかげさ」

 

 俺なんもしてねえよ……と思いながら撫でるの待ってますと言いたげな雰囲気に押されて時雨の頭を優しく撫でると、横から夕立も潜水艦倒したよ……と控え目に袖を引っ張るなどのアピールしてきたので、しっかりと撫でておく。……なんかあれだな。犬的可愛さを感じるな。

 

「……報告させてくれないかしら」

 

「……わりい」

 

 柄にもなく癒されていると、霞のなんとも言えない声が聞こえてきたので、撫でるのをやめて話を促す。「また今度な」と切り上げると名残惜しそうに2人は下がっていった……近いうちにまた撫でてやるか……てか、なんか加賀がすごいこっち見てくんだが。なんだ?ありゃ。他にも萩風なんかは俯いちまってるし……夜だからか?

 

「あー……報告の前にこれ着ろ。夜が冷えるつったのはお前だろ?」

 

「そうね……お礼はなしよ」

 

 迷惑かけちまったしな……と霞の方に目をやると、パーカーを羽織り前を閉めていた……これで目のやり場には多少困らなそうだな。

 

「まず、輸送任務はなにも問題なく終わったわ。その帰還の最中に3体の潜水艦からの奇襲攻撃。それで私が中破してそこから戦闘開始で時雨と夕立の爆雷で2体は撃破、残り1体は逃走したわ」

 

「オッケー……だいたい分かった。あんがとさん」

 

 ……やっぱ夜は加賀の艦載機が飛ばせねえから索敵がきちいな。川内の夜偵だって1機だから限界があるし。

 

「じゃあこれからの命令といきたいとこだが……萩風、大丈夫か?」

 

 思考を止めて話を始めようと思ったが、さっきから川内の後ろに隠れ気味で暗い雰囲気の萩風がどうしても気になり声をかける。

 

「……私の、、」

 

「ん?」

 

「……私のせいなんです」

 

「え?」

 

 目を合わせず暗い顔をする萩風に疑問の眼差しを向けることしか出来ない。

 

 そういや、なんかさっきも似たようなこと聞いた気がするな……誰だっけ?言ったの

 

「夜の海で……うまく動けなくて、それで魚雷がきて……そ、そのとき霞さんが庇って……!」

 

「もういいわよ……実践経験も少ないし、あんたの苦手な夜なんだから」

 

 声を震わせて吐露する萩風に、霞はしょうがなかったとフォローを入れた。

 

「ああ、霞の言う通りだ。そもそも、リハビリのような段階のお前に帰りのみとはいえ夜の任務を入れた俺にも責任はあるしな」

 

 そう言うと萩風は「そんなことは……!」と焦り声ですぐに否定した。

 

 ……ほんといいやつだな、こいつ。

 

「あー……それに、自分のせいって気負いすぎるのは体によくねえ」

 

「そうですね……誰が言ってるんですか、とは思いますが」

 

「そーそー。誰かさんみたいにちょろいくらいのがいいんだよ」

 

 おまいう案件なことを伝えれば案の定、加賀と川内に片方は呆れ顔、もう片方にはふざけ気味に指摘される。

 

「はいそこ、揚げ足とるな……あと川内、とりあえず」

 

「なに?」

 

「あとでラリアットな」

 

「私だけ!?」

 

 川内は鳩が豆鉄砲を越えてガトリングくらったみたいに顔を歪ませる。日頃の行いってやつだな……その話になると俺のがやばそうだけど。

 

 萩風の方を見るとほんのちょっと顔が晴れていた……がまだ少し暗いな。好天になるにはあと1歩足りねえみたいだ。

 

 先程言おうと考えていたこれからの命令を整理しながら、他のこれからにも頭を悩ますのだった。




設定などは後編に
次回はそれなりに早く書き終わる……はず
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