TS転生転生したから貴族を辞めて冒険者になる事にしたけど、何故か前世の親友が付いてきた。 作:ポテふ
家を出て3日目。
家を出よう!なんて突飛な考えで家を出てきちゃったけど、はたして今頃、俺がいなくなったことに気付いたものはいるのだろうか?
思えばろくに家族との交流がなかったせいかあんまり記憶が無い。多分、父以外みんなが母親譲りの顔をしていた気がするのだが、いかせん疎遠になりすぎた。全く思い出せない。それに俺の記憶は幼少の頃で止まっているから、本当に今の家族の顔が分からなかった。
ただ俺が覚えているのは、父は茶髪をオールバックにドギツイ赤目を光らせていて、母も同じように銀髪縦ロールにピンクの瞳を常に釣り上げていた事だけは覚えていた。
そんな両親からは勿論悪女顔の子供が生まれるのは何ら不思議じゃないわけで、案の定俺の顔も母親譲りの銀髪に父親譲りの赤目だ。少し違うのは母よりも幾分か垂れた目をしていることと、顔の造形が母似だということだけだった。
「はぁ…」
色々と複雑な家庭事情についついため息が出てしまう。
「...」
実を言うと、俺は家を出て、ギルドへ行き、宿を見つけるためにと街を歩き回ったが、宿を見つけてからはこの部屋から食事以外で一歩たりとも出ていない。
つまり、金も稼がずゴロゴロと過ごしているわけだ。
だからか、考えなくていい事まで頭に浮かんできて、こうして過去を振り返るなんていうどうでもいい事をしていた。
分かってる、分かってはいるんだ。でも正直面倒くさいじゃん?ギルドの依頼なんて魔物討伐とか薬草採集とかばっかりだし。
いや薬草採集はいいよ?でも報酬はクソほど低い、だからと言って討伐依頼をやるとしたら俺には無理だ、魔物なんて殺せない。安寧な日本で育った甘ちゃんの俺には無理な話だ。
と言ってもこんな生活がいつまで続くかも分からない。
正直言うと金もない。
たしか、家を出る時詰めてきたお金は全部で1万8000G、金貨1枚に銀貨8枚分だった。それを考えると少々この宿はお高い気もするが、もう取っちゃったからどうしようもない。
はぁ、やっぱり、討伐しかないのかなぁ。
「…はぁぁぁぁ」
重たいため息をひとつ。
俺はベットにくっついたまま動かない体に鞭を打って起き上がると、久々に外へと出たのだった。
がしかし、向かったギルドは想像以上に賑やかだった。
「オラオラ兄ちゃん、足が震えてるぜ、小便でも我慢してんのか?」
「あぁ?なんだお前」
「あぁん?そっちこそなんだよ、先輩が可愛いルーキーに声掛けちゃダメなのかよ、えぇ?」
「…いや、ダメではない」
「そうかいそうかい、じゃあ先輩は頑張ってルーキーにお手本を見せなくちゃなぁ」
「いや、結構だ」
「なんだとこの野郎!!ちょっと顔が良いからって調子こいてんじゃねーぞ!?」
ギルドの入口。
なにやら中央の方が騒がしいことに気がついた。
周りの人達もやいやいと中央に円を作って何か見ているようだし。何か揉め事でもあったんだろうか?
残念ながらこちらからは声も聞こえないし、肝心の現場は人だかりのせいで何も見えなかったので、俺は取り敢えず少々動きづらくはあるが、人ごみを掻き分けながら掲示板へと向かった。
自分で冒険者になると決めたんだ、やってやろうじゃねーか!と意気込みを新たに。吟味に吟味を重ね選んだのは無難なゴブリン退治の依頼だった。
残念ながら所詮Fランクである俺にとってはこれが限度の討伐依頼。報酬が少なからろうが金だ。例え銀貨3枚だとしても、されど3枚だ。少しずつ経験を積んで、そんでもってランクを上げて稼いでいけばいい!!
そうして自分を鼓舞しながら掲示板から紙を剥がし、また人ごみを掻き分けながら受付嬢のいるカウンターまで持って行った。
「頑張ってくださいね!!」
諸々の受理が終わると、受付嬢の応援の言葉を背に受けながら俺はゴブリンが出るという農村へと向かったのだった。