下手な拳も数打ちゃオールマイト 作:AEONCINEMA
「ありがとうございます。俺なんかには有り余る順位な気がしますけどね」
Q:ご謙遜を!年間救助被害者数記録第1位、親友に欲しいヒーローランキング第1位、旦那に欲しいヒーローランキング第1位と、支持率だけで見れば、No.1を上回っています。
「ははっ、確かにそれはうれしいですね。俺の望んだヒーロー像に、だいぶ近づけたってことですから」
Q:テレビや雑誌などのインタビューで度々口にされているヒーロー像についてですが、それを掲げたのはいつ頃からなのでしょうか?
「元をたどっていくと4とか5歳の頃になるんですが、ヒーロー像と言うなら、小学四年生の夏からですね。日付まではっきりと覚えてます。多分あの日がなかったら、今ごろ一人で酒にでも飲んだくれてたんじゃないかなぁ?」
Q:それほどはっきり覚えているということは、なにか影響を受ける出来事でもあったのでしょうか?
「そうですね。あの出来事は多分、記憶消去でもしない限り忘れないと思います。
ーーあの日俺は、あの人に生きる道を示して貰いました」
少年は、それをただの好調だと思い込んでいた。
(すげえ、はやい、はやい。体が軽い。すごく、調子がいい!これなら、今年こそ……!)
いつもよりも体が軽い、動きが速い、力が強い。
技を繰り出すたびに少年の動きに異変が起こり、連打が10も続いたころには、最早だれの目にも異常として映っていたというのに。
ただただ試合を楽しんでいた少年だけが、最後の一瞬まで自身が引き起こしている異変に気付かずにいた。
「うあああ!!」
「え?」
いつもとは違う鈍い感触が腕を蹴った足に伝わると共に、対戦相手の少年が蹴られた腕を抱えてうずくまる。
──人は、生まれながらに平等ではない。
「
もうとっくに受け入れたと思っていた世界の常識が、彼にもう一度牙をむいた。
「……は?」
8月某日 ○×市総合病院
休日ということもあって人が多く出入りするこの病院。
その人の波の合間を縫って、声をあげながら外へ出ていく一人の少年がいた。
「うわああああん!」
少年の耳をつんざくような泣き声に、周囲の人たちは思わず立ち止まってそちらを振り返る。
その中で、少年を追う用に動く老人の影がまた一つ、病院から姿を現した。
「おいまて連!武道の本質は試合で勝つことじゃねえ!これからは爺ちゃんと道場で組手しよう!な!?」
「うるっさい!もういいよ空手なんて!ついてこないでよ!」
そう言い捨ててぐんぐんと離れていく少年。その手につかむグシャグシャの書類には、こう記されていた。
塚鎖 連 平成□□年1月11日生まれ 血液型 O型
経歴:空手道選手権全国大会 小学一年男子 ベスト4
同上 小学二年男子 ベスト8
同上 小学三年男子 準優勝
空手道選手権地区予選 小学四年男子 失格
個性:なし コンボ
どうにか老人──ー祖父の追跡を振り切って、町はずれの山に逃げ込んだ少年──ー連は、一人草むらに体育座りしてすすり泣いている。
涙で潤む目を手の甲でぬぐって、病院から持ち去ってきた自身の個性に関する書類に目を向ける。
そこには、病院で受けた様々なテストや検査の結果と共に、連に発現した個性であるコンボに関する説明がつらつらと記されていた。
【連続した行動が成功すると、身体能力が上昇する】
【連続行動の成功(以下、コンボとする)が何度も行われた場合は、その分身体能力も上昇する】
【コンボによる身体能力の上昇は一定時間保たれる】
【コンボの連続発動中、とる行動が変わった場合、身体能力の上昇はリセットされる】
ぺらぺらと書類をめくっていくと、見れば見るほどにあの時の感覚と合致していることが分かり、浮き足だった考えだったものが現実として消化されていく。
最後のページに至ったところで、連は目を背けるように書類を地面に叩きつけた。
【この個性は発動条件さえ満たせば、本人の意思に関わらず効果を発揮する】
「はぁ、もうっ」
負の感情の高ぶりを抑えているのが我慢ならなくなった連は立ち上がり、辺りを見回して近くにあった木の前まで歩み寄った。
「ふぅー……」
深い深呼吸の後、木に向かって一礼。目をつむり、開いた両掌のそれぞれの指の腹を合わせる。
「ふっ!!」
いつも通りのルーティーンから、いつも通りの連打を繰り出す。突き、突き、蹴り、突き。いつも通りの順序で、いつもと同じ手ごたえを感じるはずだったのだが。
(やっぱり、いつもと違う。あの時と同じ……)
ただ今回は、その動きがいつも通りでないことにすぐ気付いた。
『……確かに個性が発現していますね。ごくまれにあるんですよ、こういうケース。私も実際に立ち会うのは初めてなんですがね。
お母様がパワーアップの個性、お父様が学習能力向上の個性とのことですね。詳しい内容はご存知でしょうか?』
『へぇ。娘の方は、食卓を片手で持ち上げるくらいの力が出せて、旦那の方は、教えた技の習得が人より早いくらいのもんでした』
『なるほど……。恐らく発動に関してましては、お父様の特徴が色濃く浮き出た結果、常時発動型として発現したのでしょう』
『そ、それで先生!こいつの空手はどうなるんだ?まだ、続けられるんだよな!?』
『……どうにか抜け道を探し出したとしても、万が一の可能性は拭いきれません。通常競技は諦めるしかないでしょう』
「──なんっっっでだよ!!!!!」
個性の力が上乗せされた連のハイキックにより、蹴った箇所から軋むような悲鳴が上がる。
「くそ、くそ、くそ!ふざっけんな!!」
連打の回数を重ねるごとに木の全体像がみるみる変貌を遂げていき、自身の力が膨れ上がっているのを全身が感じている。
幼い頃、喉から手が出るほど欲していた力だと言うのに、今の連には、その全てが苛立ちへと変換されてしまう。
「なんでっ!!今更!!」
連打の最後となる突きを、連は自身の中にある怒りをすべてぶつけるように木の中心に叩きつけ、
「ぁ?」
その拳は、傷だらけの木の幹を貫通して中に埋め込まれた。
無理もないだろう。最後ということは、今まで何十発と打ち込んできた連打の集大成の一撃ということ。それだけの蓄積があれば、その分"コンボ"によるパワーアップも相当のものとなっている。
さらには、今までの連打で、木の幹はへこんだり木片が削り取られたりとボロボロになり、重心は連側に傾いている。そこにとどめの一撃が刺さったとなれば……。
(た、倒れてくる……!!)
連打をやめたことで身体能力の上昇も途切れ、まるまる埋め込まれた上に木の重みまで乗った拳を引き抜く術はない。ええいままよと衝撃を受け入れることにした──────その瞬間だった。
「デトロイト──SMASH!!」
辺りに一陣の風を巻き起こしながらやってきた大男が、その大きな拳で、倒れる大木を木っ端みじんに吹き飛ばした。
彼の放った拳は辺りに衝撃と轟音を轟かせ、それを間近で受け止めた連はぽかんと口を開けて座り込む。
「少年、もう大丈夫だ。なぜかって?」
その姿は液晶越しに眺めていた以上の強靭さをもち、彼の周囲からは熱気が漏れ出ているかのような力強さを感じる。昔から毎日のようにテレビで見てきた笑顔で連を助けた彼は、"発光"の個性でもないのに物理的に輝いているようにすら感じさせる。
その様はまさに、ナチュラルボーンヒーロー。生ける伝説。世界の救世主。そして、平和の象徴。
「私が来た!」
No.1ヒーロー、オールマイトの姿が、そこにはあった。
「オ、オールマイト……?本物……?」
「町の上を飛んでパトロールしていたら、まさか木が独りでに倒れるなんて場面に出くわすとはね!自然現象ってやつはなにがあるかわからないもんだ!さ、立てるか?少年」
「は、はい……いっつ!」
差し出されたオールマイトの手を取り立ち上がろうとした瞬間、手の甲に激痛が走った。
思わずうめき声のようなものを上げてオールマイトの手を振りほどいてしりもちをつくと、その衝撃で、今度は両手と両脚にさっきと同じ激痛を感じた。
痛みに悶える連を見て慌てたオールマイトが、輝く笑顔をそのままに、冷汗を浮かべてうろたえる。
「す、すまない少年!痛かっただろうか!加減はいつも通りしたはずなのだが……っ!?」
先ほどは体に隠れて見えなかった部分が露わになった連の体を見て、オールマイトは息を呑んだ。
両手の甲は皮がほとんど剥けてなくなっていて、傷口から血がだらだらと溢れ出している。両脚はそれに加えてその周辺が青黒く変色した痣となり、木から取れた木片があちこちに刺さっている。
最も重症な右腕は、木に刺さった影響で足とは比べ物にならないほどの木片が手首から拳にかけて突き刺さっており、木片に傷つけられた皮膚はあちこちから血がにじんでいる。
(!!まさか……)
それらの傷を見てこの場で起きた事を確信したオールマイトは振り返り、自身が吹き飛ばした木の切り株と、その周辺の草むらを見渡す。
すると彼が予想したとおりに、そこには恐らく彼のものと思われる血痕が、あちこちに付着していた。
「……なるほど。これは君がやったようだな。だがなぜそんなことを?」
「…………」
オールマイトの問いかけに、先ほどまでの自分の行動を思い返して、その幼稚さに恥ずかしさを覚え、連はばつが悪そうに顔を背ける。それを見たオールマイトは、緊急性のない子どもが粗相を働いただけと判断し、深追いは逆効果であることを察した。
「わかった、無理に聞き出しはしまい。それよりも、そのけがの治療が先決だ。すまないが失礼するぞ、少年」
そう言って連の横に立ったオールマイトは、なるべく怪我に触らぬよう、連の体を両腕でいわゆるお姫様抱っこで持ち上げた。
「ここから一番近い病院は……○×市総合病院か」
「っ!!やめて!!」
せっかく逃げだした場所へ問答無用で連行されそうになり、連は思わず声を荒げてしまう。それに驚いてかたまってしまったオールマイトによっての沈黙が流れ、またもやばつが悪くなった連は少し頬を赤らめて明後日の方向へ顔を向ける。
「……いや、そうだな。ここで会ったのも何かの縁!少し遠いところまで、話でもしながら行こうじゃないか!しっかりつかまっていろよ!」
しかし、そんな子どものわがまますらも汲み取ってしまうのがNo.1ヒーロー。連がやってきた病院へと続く道から東に30度ほどの方向を向き、膝を曲げて力をため──。
「とうっ!!」
──真夏の澄んだ青空へ、一瞬で飛び上がった。
「ふわああああああ!!」
上昇時にのしかかる重力の感覚に怯えはしたものの、開いた目に映る小さくもすべてを見わたせる街並み、遠くの方に見える連なる山々、そして広がる無限の空と雲。それら全てが視界に収まるこの景色は、まさに絶景の一言であった。
「はっはっは!ようやく笑ったな!少年!」
そのオールマイトの言葉を聞いて驚いた連は、景色から視線を切り、頭に疑問符を浮かべて彼の顔を見つめた。
「君、さっきからずっと笑っていなかっただろう。人々の笑顔を守ることが、我々ヒーローの務めなのさ!」
そう言い放ったオールマイトの笑顔は先ほどまでと同じものであるはずなのに。
連の目には、先ほどまでとは比べ物にならないほどに、輝いて見えた。
同時に、先ほどまで連が抱いていた苛立ちはいつの間にか消え去っていて、代わりに、最初に抱いた恐怖や不安が口から零れ落ちるようになった。
「オールマイト。少し……話聞いてもらってもいいですか?」
「ああ。元よりそのつもりさ」
「俺、最近まで自分が無個性だと思ってたんです。四歳になって、周りがどんどん個性を発現させていく中で、俺だけが置いてきぼりにされて……」
思い出すのは、連がまだ幼稚園に通っていたころのこと。その頃の連は、テレビの中に映るヒーローの全てに憧れを示し、いつか自分も個性を発現させて、こんな風になるんだと毎日のように口にして、まだかまだかと個性の発言を待ち望んでいた。
──ーそんな日々が、五歳の誕生日を迎えても、まだ続いていた。
それが意味することを理解するのは幼い連にとっても容易いことで、その後の世界の変わりようは早かった。それまでは仲良くしていた子たちがみな個性を発現するようになり、個性が発現しなかった連は、いつの間にか半ば仲間外れのような状態に追いやられ、その上ある不幸まで重なって、連の精神は擦り切れそうになり、ふさぎ込んだ性格になっていた。
そんな連を救ったのは、育ての親である連の祖父──柔造の一言。
『連。人ってのはな、人とのつながりがなきゃ生きていけねえんだ。なんせ、人は人を生きる意味にする生きもんだからな。親だの家族だの、お前にはまだわからんだろうが、親友や恋人、嫁さん。そんなもんがいざって時心の柱になって、人は頑張るんだ。
だから、時間かかってもいい。前向いて、何か一つやりたいことを見つけてみろ。そんで、それを極めてみろ。そうすりゃその道のどこかで絶対に、ぜってえ切れねえつながりのあるやつみたいなもんが、一人や二人できらぁ』
その言葉が、大きな孤独を抱いていた連の心の、一筋の光となった。
「それで俺は、もともと爺ちゃんが経営していた道場で空手を始めて、いろんな人と仲良くなって……。無個性である自分にも段々自信がついてきたんです」
「そうか。いいおじいさんを持ったんだな」
「はい。でも昨日……突然、こいつが発現したんです」
忘れもしない、昨日のこと。空手の地区予選大会に出場し、決勝の舞台に立った時のことであった。今思えば、なぜ気付かなかったかが不思議でならない。いつもの倍以上のスピードで動く体、いつもの倍以上の膂力。すべてをただの好調だと思い込み、その結末は…………。
「忘れられないんです。あの時、相手の腕を折った時の感触が。それだけじゃない。審判や医療団が相手の様子を見ている間の無限に等しい時間。周囲の観客から向けられる視線。凍りきった空気に呼吸が苦しくなって、手足の震えが止まらなくなって……」
今更になって顔を出した、連が心から望んだはずの
またあの時に戻りたくないと願う連の心が、オールマイトの腕の中にあるという事実をお構いなしに、彼の体を容赦なく震わせる。
「オールマイト。俺、もう何にも裏切られたくないです。教えてくださいNo.1。俺は、どうすればいいですか……?」
「……少年、私はね「キャアアアァァァ!!!
オールマイトたちが飛んでいる場所からわずかにそれた場所から、女性の甲高い悲鳴が辺りにとどろいた。その悲鳴をキャッチしたオールマイトと連の二人は、反射的にそちらを向くと、そこには銀行があり、声を上げたと思われる銀行の女性職員がいた。そして銀行の中には、カウンターの裏に立てこもる
「おいそこのクソども!!よけいなことすんじゃねえぞぉ?変な動きしたらこの女ァ、俺の舌で一撃だかんなぁ?」
そう言って、女性を拘束している男は舌をチロリと見せびらかし、その見た目を光沢の輝く銀色の金属に変形させる。
「くっ、少年!「大丈夫です。行ってください。全速力で」──なんだよ、かっこいいじゃないか」
そう言ってオールマイトは、次の着地点であるビルの
そして、弓をもって矢を引き絞る弓引きのように、ぐっとその場で力を溜める。
「少年!!君の願いをかなえるというのならば、ヒーローを志すことをお勧めしよう!」
「えっ?な、なんで、っていうか。こ、こんな時に?てかまさかこっから、ぁぁああああ!!」
今まで経験したことがない状況に頭が付いて行かず、今度は上昇時とは違う恐怖100%の悲鳴を上げながら、連はオールマイトと共にテロ現場である銀行に突っ込んだ。
その衝撃で辺りには轟音がとどろくと同時に煙が巻き上がり、周囲の者たちは中で何が起こっているのか視認不可能な状態になる。
その中で、オールマイトが着地したすぐそばにいた
「オールマイト!」
「オールマイぐへっ!」
突然現れたオールマイトの姿にうろたえる
店内に充満する煙の中、次々と
「なぜかって!?それはね、私が裏切ったことがないからさ!!」
いやそれだけではない。彼は
「確かに最近のヒーローってやつは、職業化に呑み込まれたサラリーマンだの、金と名誉に溺れた偽物だのと揶揄されることも多々ある!
しかしね、ヒーローってのは、己の信じたものを裏切らないために!人を助ける!敵を倒す!人と人とのつながりを守る!そんなくっそキツい仕事を笑ってやり遂げる!!そういうイカれた生き物のことを言うんだ!!」
そして、煙が晴れたあと。全員が気絶した
ヒーローが、拳を突き上げて勝利を体現していた。
「それが!
瞬間、周囲から歓声が巻き起こった。
「「「「「「うわああああああ!!!!!」」」」」」
沢山の観客からの声援と拍手が飛び交う中で、連は一人、息を吐くように呟いていた。
「……かっっっけぇ」
「こんの、バカタレが!!!急に逃げ出したと思ったらこんな傷だらけになって、こんなあぶねえ事件に巻き込まれやがって!!年寄りに心配かけさすんじゃねえ!!」
「いって!!2回もぶつなよ!こっちだって反省してんだから!」
「はんっ、どうだかねえ」
そんなこんなで、強盗事件はオールマイトの活躍によって無事に閉幕を迎えた。
事件の後始末に来た警察によって連の祖父、柔造に連絡が送られ、家から5kmはある道のりをわずか3分で到着した柔造に連はこってりと説教を受けた。
ちなみに、オールマイトも一般人を無闇に事件に巻き込んだということで、警察から本当にキツいお叱りをうけたという。
説教が終わって鉄拳制裁も終えた柔造は、やり残したことは無いと言った表情でいつもの調子に戻り、振り返って歩き出す。
「オラ、さっさと病院行くぞ、連」
「はー……いや、ちょっと待ってて、爺ちゃん!」
「んん?おい!どこ「オールマイトんとこ!」……手短に済ませよ!」
柔造の言葉を背中で聞き、たった今警察からのお説教が全て終わったところであるオールマイトにかけよる。
「オールマイト!!」
「ん?おお!少年!すまなかったな。こんなことにいきなり巻き込んでしまって。いや、それより怪我は大丈夫なのか?早く病院へ行った方が……」
「それは大丈夫です。あの、それで!
俺、やってみます!ヒーロー!」
新しい道を開いてくれた彼の真正面に立ち、大きな声でそう宣言した。
「俺、誰にも裏切られたくない、離れて欲しくないってずっと願いながら生きてきました。でも、オールマイトを見て、分かりました!人との繋がりは神頼みするものじゃなくて、自分で作って強くしていくものなんだって!
だから俺は、俺のために!ヘナチョコな拳を積み重ねて積み重ねて、貴方みたいな、繋がりをつくって、繋がりを守る、俺のためのヒーローになります!!」
それは、少年の心にできた、新たな柱の表れ。
オールマイトが生み出す人々の繋がりを見て、ああなりたいと切に思った素直な気持ち。
それがここに、新たなヒーローの卵を生み出した。
「……そうか。道は険しいぞ!頑張れよ、少年!」
「はい!ありがとうございました!!それじゃあ失礼します!」
「おう!液晶越しにまた会おう!」
オールマイトの最後の言葉にも律儀に「はい!」と返事を返して、連は人混みの向こう側へと消え去っていった。
(……彼ならば、
「5年後あたりに会えたなら、その時はよろしく頼むぜ。少年」
そんなオールマイトの呟きは、人混みの喧騒の中に吸い込まれ、溶けるように消えていったという……。
「用は終わったか、連」
「うん、お待たせ。いこ、爺ちゃん」
人混みをすり抜けてきた連は柔造と合流して、病院への道を歩いていく。
「爺ちゃん、また空手教えてくれる?」
「……!おう、あったりまえよ」
「あと、それから他にも、柔道、剣道、合気道……爺ちゃんが教えられるやつ全部教えてよ」
突拍子もなくとてつもなく強欲なことを言う連。しかしオールマイトとの問答を聞いていた柔造は、その連の言葉にも、あまり驚かなかった。
「半端なことすんなら俺は付き合わねえぞ」
「大丈夫。絶対なってやるんだ、俺は」
日の落ちた星空にポツポツと光る星をなぞり、それらを繋げるように手を重ねる。
「俺の、最っ高のヒーローに!」
──ーその誓いから、5年。
「っと、やべえやべえ、朝稽古しすぎた。遅刻する〜!」
「おめえが今日から新学期なの忘れてただけだろうが。稽古のせいにすんじゃねえ」
「はいはいごめんってば、そんじゃ爺ちゃん、行ってきまーす!」
第一志望 雄英高校