作者が物語を思いついたけど、今これはちょっと早いなとか、遅いなと思った場合の折衷案と言いますか、そんな感じで解釈頂ければ幸いです。
「うっ、うわあああああー!」
ボクは死ぬような思いで逃げていた。
いつも通り、ダンジョンに潜って、ちょっとした好奇心から5階層に足を伸ばして、気がつけば本来ここに居ないハズのミノタウロスがウロついてて
慌てて引き返して逃げだした。
それがちょっと前の行動だ。
魔がさしたなんてもんじゃ無い!
大人しく浅い階層で稼いでれば良かった!
しかし、後悔している間にも背後にはミノタウロスの重厚な足音がして、恐怖で気が狂いそうだった。
このままでは埒があかない。
一矢報いようにも、まずは開けた場所に行かなくちゃ。
しかし運命は意地が悪かった。
逃げても逃げても影のように追ってくる。あの怪物が。
そして、とうとう行き止まり。
反撃しようにもボクはすでにヘトヘトで、へたり込むしか出来なくて。
ミノタウロスが手にした武器を持ち上げた瞬間、ボクは目を閉じて、そして………。
ヌルヌルした液体が降ってきた。
恐る恐る目を開けて、ミノタウロスがさっき立っていた場所を見ると
「おぅボウズ、大丈夫か?」
ミノタウロスからボクを助けてくれたのは、軽鎧に身を包み、東洋の刀を持つ英雄のような男だった。
「しかし、オマエも運が悪かったな。いや、この場合は良かったっていうべきか。命あっての物種だからな。」
「あ、あのミノタウロスはいったい?」
「あー、ロキファミリアの連中が仕留め損なったらしい。説教はしといたから、へんに因縁つけられることもないだろ。」
ったくあのバカ弟子共が
小声で何かブツクサ言っていたが、それが終わるとおもむろに彼は、腰につけたポーチから何枚かタオルを取り出すとこちらに放る。
「血ィ拭いとけ。ニオイに敏感なモンスターもいる。連中を悪戯に刺激すべきじゃ無い。」
「あっ、はい。ありがとうございます。」
せっかくのご厚意だし、受けないと逆に失礼だよね。
一通り拭き終わり、タオルを見ると。
「うげ、結構ベッタリついてたなぁ。」
「帰ったらすぐにシャワー浴びな。それと、モンスターによっちゃ、血液に毒を持つようなヤツもいる。今回はミノタウロスだったから良かったが、次はないと思え。」
「はっはい。」
「と、まぁ、説教くさいこといったが、まずは何より無事で良かったよ。それと、念のためにコレ飲んどけ。」
と、綺麗な小瓶を渡される。
こっ、これってポーション?
確か神様が言うには一番安いのでもそれなりに値段がするって話だけど。
彼はじゃあな、と手を振り出口へと向かう。
行ってしまう。
やっと見つけた本物の英雄。
「あっあの!!!」
「ん?どうした?」
「おっ、おっ」
さあ、聞け!聞くんだベル・クラネル!
名前を聞くんだ!
英雄とお近づきになれるなんてこんなチャンスきっと二度と巡って来ない!!
「お?」
「お金ならありません!!!」
我ながら情けない叫びがダンジョンにこだました。
言ってからしまったとおもった。
彼は、お腹をひとしきり抱えて笑ったあと
「やるよ。」って言ってくれた。