心の奥底に、どうしても消せない炎がある。
消そうとしても、蓋をしても、なにをやっても消えてくれない。
正体は分かっている。
コレは、どうしようも無く大きな『怒り』だ。
オレには小さな頃からの友人がいる。
今はとあるファミリアで冒険者をやっており、たまに会ったりもしてる。
いわゆる幼馴染ってやつだ。
どっかの国の地図の、端っこの方にあるような辺境も辺境の村で、オレは育った。
因みに俺はそこでガキ大将のポジションだった。
体も大きく頑強で、力もそれなりにあったからだろう。
ある時、一組の夫婦が子供を連れて村にやって来た。
初めてその二人を見た時の印象は優しそうだな、と言ったところだ。
まぁ、ガキだったしそんなもんだろ。
しかし、自分の故郷を悪く言うわけではないが、あそこまでの田舎に越してくるなど、今にして思えばワケありだったのだろう。
しかし当時の俺は好奇心旺盛で、そんなことは知らんと言わんばかりに両親の影に隠れた子供を遊びに誘った。
彼女は一瞬戸惑った様子を見せたが、恐る恐ると言った風に頷き、俺の手を取った。
そうして遊んでいるうちに、彼女が恐ろしく口下手ということが分かり、仕方なしに彼女のいうことを俺が代弁してあげるようになっていった。
最初は彼女をからかっていたような奴らも、俺が注意すれば少なくともその場は何とかなった。
幸いなことに、陰でいじめがあったとかそう言ったこともなかった。
そして彼女はいつしかカモの雛のように俺の後ろをトコトコとついて回るようになった。
そうしたら、今度は俺がからかわれたりなんかもしたが、俺自身やましい気持ちはなかったし、普通に友達として接していたつもりではあったため特に気にも留めなかった。
そして、そんな当たり前の日々がいつまでも続くと、そう信じて疑わなかったのだ。
何でもなかったある日、村に10人足らずくらいの男たちがやって来た。
何でも、とある神に仕えていたが、ファミリア同士の抗争に敗れ、オラリオからも放逐され、むしゃくしゃしたという理由でこの村を焼くと言うのだ。
冗談じゃない。
ふざけるな。
その声が村にこだますることはなかった。
何故なら、彼らは元とはいえ、戦闘経験のある冒険者で、一般人には手も足も出せなかったからだ。
火の海になるのは、本当に一瞬だった。
自警団をしていた俺の父も母も、
パン屋のおばちゃんも、靴屋のおっちゃんも、鍛冶屋のじいちゃんも、みんな死んでしまった。
そして、俺は心に決めた。
こんな奴らを庇護する神を絶対に許さないと。
そして、それを唆した奴も見つけ出してやると。
必ず突き止め、俺の手で天に還してやると。
そのためなら、他の神だって利用してやると。
村の人々の墓の前でそう誓った。
「だから、お前とはもうお別れだ。」
「……イヤ。」
「俺はこれから神を殺そうってんだ。お前まで復讐に取り憑かれる事はないんだ。」
「でも、イヤ。」
「なんで?」
「おにいちゃんいない。喋れない。」
「じゃあこれから練習しろ。俺も手伝うから。」
「イヤ!!」
「!!」
彼女には珍しい、強い否定の言葉。
彼女の両親が、彼女を置いて再び旅に出た時も、こんな意固地では無かった。
「アイズ、お前は普通に暮らせ。普通の町娘として生きて、普通に結婚して、普通に歳取って普通に穏やかに暮らしてくれ。」
「そんなの、意味ない。」
「は?」
「おにいちゃんがいなきゃ、意味ないもん!!」
ため息が出た。
「俺はお前のためを思って……。」
「じゃあ、わたしもついてくもん。」
「え?」
「おにいちゃんになに言われたってついてくもん!!」
泣きそうになりながら、というか実際泣きながらオレの服を掴んで離さなかった。
「オマエなぁ……。」
困ったなぁ。
そんな顔、させたくなかったってのになぁ……。
結局、彼女はオラリオまでついて来た。
元々オレと同じGOファミリアに入るつもりだったらしいが、生憎とGOファミリアは女人禁制である。
これは女性冒険者があまりよく思われていなかった大昔からのルールがそのまま生きている名残りでもあって、別に今になって女性冒険者に対して差別意識があってのことでは無い。
結局、困った顔をした主神GOの口利きでロキファミリアに入ることになったらしいことを後になって本人から聞いた。
売店や、酒場で勤めることも勧めたが、彼女はガンとして嫌がり、結局ロキファミリアに入団することにしたらしい。
と言うか会った時にする話も、彼女のファミリアの仲間の話や、どこそこのじゃが丸くんが美味しいとか、そんな世間話ばかりだ。
まだ過去を吹っ切れてはいないようだが、彼女が今幸せならばそれに越したことはない。
なお、すぐにオレのレベルを抜かれたのは余談である。