もしも艦隊これくしょんの世界に、思想家リチャード・バックミンスター・フラーの定義が当てはまったらという一発ネタの短編です

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 ふと思い付いた衝動で書いたので投稿させてもらいます。


この世界は移り変わる船である

 建造がおかしくなった。

 

 提督である自分が明石からそのことを聞かされたのは、自棄になって大型建造で限界以上の建材を投入した直後であった。

 

 40296×10000000000/h

 

 建造時間は通常、最大でも八時間にしかならない。しかしこの数字はなんだ、自分が生まれてから死ぬまで待っても消化しきれない時間が示されているではないか。

 

「なあ明石、これは自分が悪いのか?」

 不安になってつい明石に聞いてしまう。いや、聞かなくてもわかっている。全て十万という鎮守府が傾いてしまう量の建材を考えもなしに投入してしまったのが悪いに決まっている。

「と、とりあえず高速建造材を頼む。このまま待っていても建造ドックも埋まったままだしな」

 

 これで何か進展があればいいが、切実に自分は願ってしまう。

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

 私は生きながらにして死んでいる。いや、正確には今も生きているのは変わらないのかもしれない。

 だって、私が生きていた形跡も、逆に死んでいる痕跡も残ってないのだから。

 

 そもそも、生きてるとはどういう事を言うのだろうか? その辺に落ちている石ころは生きているとは言わないし、逆にその辺にいる微生物は生きているという。なら、私はどちらなのだろうか?

 私は動いている。私は生き物を運んでいる。私はフネだ。否、フネだった。

 最低でもこの時までは、私に対する定義は定まっていなかった。

 

 しかし、今は違う。私には体がある。呼吸をしている。そして何より、心がある。

 まあ、フネそのものを体というなら私には体はあったし、フネである私から発される蒸気が呼吸であるなら、そうなのだろう。

 

 生物の域にある。その事実だけで今は十分だ。

 

「提督、新しい艦が着任しました」

 

 少女の声だ。もう、人の声など聞きあきるほど聞いているのだが、何故か新鮮に聞こえる。新たに聴覚という感覚ができたからだろうか。

 

「やっとか」

 

 今度は若い人間の声だ。

 私は先ほどの少女も知っているし、今の男性も知っている。私がフネの時から彼らを私は見ていたのだから。

 

「名前を教えてくれ」

 

 人間が私に向けて声を放つ。

 

 それにしても、名前ね。私は沢山の名で呼ばれてきた。一つではなく、多数に渡る言語とその数だけの名前で呼ばれたのだ。

 それでも、彼の言語で当てはめて名乗るなら──

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

 もしこの事を中央に伝えたらどうなるだろうか。自分の過失を罪にとわれるのは勿論のこと、もしかしたら提督である自分の行為をとめれなかった明石にまで飛び火するかもしれない。

 その事を考えていると、明石から新しい艦が着任しました。という伝えを聞くまで震えがとまらなかった。

 

 やっとか。と自分は見栄を張りながら答えながら、心の中では『どうかドックが壊れてませんように』と願っていた。

 

 しかし、この時自分はドックの心配よりも、おかしな建造によって建造された艦娘の心配をした方が良かったのかもしれない。

 

 自分がドックに着くと、そこには明石とその隣にいる青い少女が目に写った。

 

 青く、腰辺りまで伸ばされた何処までも深く青い髪に、黒茶色のTシャツにこれまた青いパーカーを羽織った姿。そしてこれまた青いスカートをはいている。いや、良く見たらパーカーとスカートには幾つか緑の模様が施されているようだ。

 瞳は闇のように暗いのに、その奥には深紅の赤が垣間見える。

 

まるで母の様だ。

 

 あえて説明するなら、自分の母は黒髪黒眼の純粋な日本人だ。

 しかし、何処をどう勘違いしたのか、それともそれこそが彼女の真の姿なのか。この時の自分は目の前の青い少女と母を重ねて見てしまった。

 

「名前を聞かせてくれ」

 

 元々ヒントは沢山あった。建造時間も、彼女の姿も。

 しかし、この時まで自分は彼女の事に気づけなかった。それは全て自分の落ち度といっていい。

 その後の名前を聞いたとき、自分は理解した。理解してしまった──

 

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 目の前の人間はまだ私の存在には気づいてないらしい。それならそれでもいい。どうせ私は、今も昔も流れるままに生きるのだから。

 

「宇宙船地球号、私は何者にも縛られない自由を常に愛している。人間はあまり好きではないけど宜しくお願いするよ」

 

 ああ、言いえて妙だ。地球である私が人間の姿をとり、人間の陣営の前に姿を表すなど、

 

「今回の深海棲艦との戦争も当然理解しているよ。ただ、私はどちらの味方でもないし、敵でもないつもりだからね」

 

 地球は常にその身を委ねて移り変わるのだから。


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