弓有香織は勇者をやめた   作:GGO好きの幸村

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なんとか今年中に投稿出来ました‼️

今回は作中の出来事を妄想して作ったので、既存の資料と整合性が取れなかったり、今後の新作などで補完されて否定される可能性は十二分にありますが、そこは暖かく見ていただくようお願いします

追記:この話を書いた時点では公開されていなかった「芙蓉友奈は語り部となる」にて設定の矛盾が生じていて、作者がこれを放置したまま話を進めることに納得出来なかったので、修正しました


初めての勇者システム/海上の異変

 Side香織

 

 美香ちゃんと話してから少しして。勇者システムの試作機の用意が出来たと言うことで、私は神樹サマの力を解析する部署の部屋にやってきた、が…

 

「え~と…これは?」

 

「…?勇者システムですが?」

 

 そこにあったのは、一見普通のスマホ…の、四隅を大幣で囲い、本体にも大きくゴテゴテした機械から沢山のコードが繋がっていた。

 そのあまりにシュールな絵面に、思わず宇宙猫のようなボケーッとした顔になった。少し間違えたら周りが真剣極まりない環境の中で変な笑いが込み上げていただろうからまだましだろう。

 

 …それにしても驚きなのは見た目が思った以上に普通のスマホな事だ。スマホ型とは聞いていたが、本当にスマホそのままなのだ。

〈鎧〉の時みたいに魔法少女が使うようなファンシーな見た目や特撮で出てくるロボットになるようなものに期待はしていなかったが、未知の力を扱う為の試作機なのだから、こうごつくて、とてもスマートとは言えない物かと思っていた…もっとも、本体以外はごちゃごちゃしているが。

 

「まぁ、神樹様の力を直接機械に取り入れるなんて有史以来初の挑戦ですからね、どんな些細な挙動でもそれは貴重なデータですから」

我々は少しでもそれが欲しいんですよ、と朗らかに話しているのは黄碗さんだ。

 

 四国に到着した時、神官さんに黄碗さんが作ったバーテックス感知結界の話をしたところ、「そんなモノの話聞いたこともない」と大層驚き、すぐさま黄碗さんをスカウトし、黄碗さんはそれを快諾。今は大社の中にある「神秘解明および勇者システム開発部署」という長ったらしい名前の部署に籍を置いている。

 ただ、『大社』は神官達の組織であり、黄碗さんも籍を置いているとはいえあくまで『研究者』としてだから、いくら成果を出しても出世は出来ないそうだ。もっとも、黄碗さんにそんな欲が無い事は広島で共に戦った私がよく知っているが。彼はどちらかと言うとそういう立場とか名誉よりも知識欲を満たすほうを望んでいる。

 

 そんなどうでもいい事を考えていると、どうやらデータを取るための機材の用意が出来たようだ。私は指示に従って〈鎧〉を装着─一通りデータを取るようなので陣羽織の色は1番よく使う赤にしておいた─し、スマホ画面に表示された四つ葉のクローバー型の模様をタップする。

 

 変化は如実に現れた。

 自分の周りに大量の四つ葉が吹き荒れると、まず鎧の間の防御が脆弱な部分を補うかのように空色の鎧直垂が出現。次いで紺色を基調にしたヒールとハンドグローブを身につけ、いつも通りな陣羽織も、縁の赤いところから内の白色の部分にまるで生い茂るかのように赤い四つ葉のクローバーの模様が現れる。そして最後に頭の右上に四つ葉型の髪留めが現れて変化は止まった。

 

 周りでは研究員さんたちが実験の成功やデータのチェックで湧き上がっているが、私はそれを気にせず、変わった部分を確かめる事に夢中になっていた。変身が終わったこの段階で既に全身に今まで以上の力が溢れている事が分かる。しかも今日使っているこれは試作機…さらにもっと言えば私の〈鎧〉はほかのみんな(勇者)システム(武器)と比較した時の強化の倍率はかなり低い。

 つまり全員分のシステムが完成すれば…想像も出来ないほどの最強の布陣が出来上がるだろう。そうなればバーテックスを絶滅させる事も出来る‼️その時にはきっと…

 

 私は力を手に入れた全能感に包まれながら、明るい未来を夢想するのだった。

 

 

 …それがこの後すぐに如何に儚くも愚かな事だとも知らずに。

 

 

 その後、各形態や武器の威力測定も行われた。

「赤の姿」はシステム起動以前と比べるとパンチ力・キック力の増強、並びに鉤爪の切れ味が上がっていた。

「青の姿」は以前は赤と比較してパワーが落ちてスピードが上がるだけだったのが、それに加えてジャンプ力や手元の鎖を扱うコントロール力も上がっていた。

 パワー特化の「紫の姿」は以前その重さに振り回されたハンマーを自在に操る事が出来るようになった。更に、陣羽織が無い時の姿程では無いが、それでも他の形態と比べると破格の防御力も備わっている。

 

「ここまでは問題無く神樹様の力を扱えていますね」

「ええ、特に動作不良も無く、実験はおおまか成功と言って良いでしょう」

「次で最後なんでしたっけ」

「なんでも、ほか3つと違い感覚的なモノが強化されるそうで」

 

 問題無く進む実験に部屋の雰囲気も緩和し、中には談笑する研究員さんまで出てきた。

 

 次が私が〈鎧〉から引き出せる最後の力、感覚強化の「緑の姿」だ。

 火力・スピード・防御力。そのいずれにおいても最低値だが、その代わりに人の気配や敵の来る方向などを敏感に感じられる。

 ただ、範囲や精度はお世辞にも良いとは言えない為、広島に居た時はこの姿を使う事は全くと言っていい程無かった。強いて言うなら、結界を発生させる装置のメンテナンス中くらいだろうか?そのメンテナンスも精々1時間で終わった為に印象的な出来事も無かった。

 今後使うかさえ不明だが、まぁ確認やデータを取るだけだし何も問題無いだろう。

 

 そう思いながら「緑の姿」へと変わった時、世界がガラッと変わった(・・・・・・・・・・・)

 

 最初に違和感を感じたのは視界だ。普通なら見えないような細かい空気中のゴミに、あれは…赤外線だろうか?とにかく、レンズ越しでしか見えないようなものが鮮明に見える。

 違和感はそれだけではなく、扉や床越しに人の気配を感じたり、カメラ越しに私を見ている人の人数が分かったり…そしてそんな中で最も変化が顕著なのが

 

『『『『『『はい、グゥイおかあからすまこおりゆうしゃたいしゃリーダれいのろくにんのうえさとみこたちそらごはんこわい』』』』』』

 

 聴覚だ。

 近くの機械の僅かな駆動音や建物内の話し声、更には外の何気ない日常会話までありとあらゆる音が頭の中に入ってくる。

 

 その中でも一際耳に入るのは…英語の悲鳴と怒声そして…

 

「…バーテックスの、声…?」

 

 場所はここから離れた海上…ちょうど神樹サマの壁と外の境目程だ。

 

 私は窓から声を感じた方へと向かう。後ろからは狼狽する研究員さんたちや私に止まるよう叫ぶ神官さんたちの声が聞こえるが、それを無視して先に進む。

 

 あの神官さんは今回が初対面の人だ、ここで嫌われようが顔見知りの神官さんは私の事を嫌わない、私の世界に問題はない(・・・・・・・・・・)。そんな柔な信頼では無い。

 

 そしてそれ以上に

 

『たすけて』

 

 ここで誰かを見殺しにしても快眠できる程豪胆では無いし、

 

『痛い…やめて、やめてよ…』

 

 自分に勇気があれば変えられた筈の出来事で誰かが苦しむのを見るのはもう沢山だ。

 

 私は〈鎧〉によって強化された感覚の全てをバーテックスが居る海域に集中させ、そこへ向かった。

 

 SideOut

 

 

 

 

 

 四国より太平洋側に出て神樹の壁に近しい海域。ここには3隻のクルーザーが停泊していた。その内の2隻で、それぞれ白人の女性と黒人の男性が無線越しに会話する。

 

『アイク、本当にこれで私たちはアメリカに帰れるのかしら…?』

 

『大丈夫さエリー。ケビンの実家は解体業者だぜ?あんな壁なんてダイナマイトで簡単にバラしてくれるさ』

 

 エリーと呼ばれた女性の不安げな声に対して、アイクと呼ばれた男性は大社の神官が聞いたら激昂するか卒倒する物騒な発言で笑い飛ばす。

 

 そう、彼らは神樹の壁を破壊して、アメリカへと帰還する事を計画…より正確に言うならば旅先で出会った同士と共に家に帰る事を望む教師たちだ。

 

 彼らは旅行会社の企画したツアーで四国を訪れていたのだが、運悪く…いや、バーテックスに出会うこともなかったからある意味運は良いのだろうが、突然現れた壁の中から出る事が出来なくなってしまった。

 このことに幼い子供たちはもちろん、家庭を持つ大人たちさえも激しく動揺し、中にはホームシックで泣き始める生徒まで現れた。

 

 しかもこの異常事態に対して先導を切っているのは怪しい宗教集団らしい。

 

 自分達と同じ主を崇めて(キリスト教)いても不信感は拭えないというのに、彼らが信仰しているのは同じ日本人でもよく分からない神だというではないか。

 

 いくら日本人が信仰が薄い者が多いとはいえ、そんなよく分からないモノに縋り、助けを求めるなど出来やしない。

 故に彼らが壁を破壊し、アメリカへ向かうという考えにたどり着いたのは当然の帰結だろう。

 

『アイク、ダイナマイトの設置が終わったぜ』

 

 と、ここで壁に爆弾を仕掛けていたケビンから任務完了の報告が入る。

 

『船には戻れてないが、十分に距離はとった。もう起爆してオーケーだ』

 

『ナイスだケビン!向こう(アメリカ)に帰ったらメシを奢ってやるよ』

 

『お、そいつはいいね…たしかお前この間、貯めた小遣いでロマネ・コンティを買ったとか言ってたよな?あれも飲ませてくれよ』

 

『おいおいブラザー、あれはおれのとっておきの…まぁ、開けるタイミングを逃してたし丁度いいか。よし、帰ったら盛大にホームパーティを開いて、そこで皆に振舞ってやる!』

 

『お、それは最高だな!』

 

 アイクは己の友人を、ケビンは自分の腕を信用し、軽口を叩きあう。アメリカに帰れる事をちっとも疑ってはいない。

 

『ねぇ、大丈夫なら早く起爆しない?』

 

『おっと、そうだな。じゃ、起爆するぞ!』

 

 男どもの長話に辟易したのか、はたまたはやく故郷の土を踏みたくなったのか。エリーがしびれを切らして言うと、アイクもそれを了承してスイッチを押す。

 

 ドカァァン‼️

 

 と爆音が轟き、壁には2,3人程が通れる程の穴が空く。

 

『む、ダイナマイトが足りなかったか。だが後3回は同じ威力の爆発が出来るだけの爆薬があるし問題ないか』

 

 ケビンは海中でそんな事を思った後、次の爆弾を用意するために穴に背を向けて船に向かい泳ぐ。その後ろから…

 

 ぐしゃり

 

 現れたバーテックスが不快な音をたてながらその顎でケビンを肉塊へと変貌させる。

 

 これを見たアイクは慌てて船を四国へと戻そうとした…が、思うように船が動かない。何度もエンジンを吹かすが、うんともすんとも言わない。…実は、壁の外から現れたバーテックスがアイクの船の後ろ…スクリュー部分を食い破っていた。そのせいで思うように動かないのだ。

 普段ならばアイクも検討がつく故障位置だが、つい先程目の前で友人が物言わぬ肉塊となった彼に冷静な判断をしろと言う方が無理な話だろう。彼は運転席の正面にまで迫っていたバーテックスに気付かず、ガラスが割れる音と共にケビンの後を追った。

 

 一方でエリーは、壁の外からバーテックスが現れるのを見ると、船を反転させ、一目散にその場を立ち去った。

 彼女は元々臆病かつ慎重な性格で、今回の計画もその不安よりも今の日本政府並びに大社の言う事に従う事に対する不信感が上回ったからこそ賛同したのだ。本当に命の危険があるならば話は別だ。

 彼女はバーテックスがこちらに気付く前に行動を開始した…未だ繋がったままの無線機から聞こえる、アイクの断末魔を耳に入れぬようにしながら。

 

 

 Side???

 

 どうしてこんな事になったのだろう。クローゼットの外では、白いモンスターたちが友人を喰らった血でその体を真っ赤に染めている。

 

 数時間、政府に抗議していた人達からアメリカに帰る目処がたったと聞いた時は、みんな歓喜の雄叫びを挙げていた。船の中でも、友人とホームパーティの約束をしたり、慣れない日本での生活の愚痴を吐いたりして、終始穏やかな雰囲気に包まれていた。…ここに姉さんが居ないのが寂しいし、心苦しいけれど…日本を出れば、きっと大丈夫だ。アメリカに帰ったら一旦落ち着くまで向こうで待って…そしたらまたこっちに来て、今度はちゃんとしたお葬式をしよう。小さい石ではなく、大きなガラスのお墓を建てるのだ。そんな事を考えながら、私も船に揺られていた。

 

 様子がおかしくなったのはほんの少し前、元軍人のケビンが仕掛けたダイナマイトで壁を破壊したと放送で連絡が入ったすぐ後だ。操縦室からの通信でまるで肉をミンチにしたかの様な音が聞こえると、窓を突き破ってあの白いモンスターたちがまるで飴に群がるアリのように押し寄せてきた。

 

 私は友達になったアーシャの手を引いて隠れる場所を探したが、皆パニックになっていて思うように身動きが取れず、途中ではぐれてしまった。

 

 1人でなんとか部屋にたどり着き、クローゼットに身を潜めたが、外からは旅で出来た友人たちの悲鳴や絶叫、断末魔が絶えず聞こえてくる。

 

 何で私たちがこんな目にあわなきゃいけないのだろう。私たちはただ日本に旅行に来て、急に帰れなくなって、しかもよく分からない人たちの指示に従うよう言われて…居るかも分からないモンスターの事を聞かされて、アメリカには危ないから帰りたくても帰れないって何度も言われて…でも、でもどうしても家に帰りたかっただけなのに…

 

 頭の中がぐちゃぐちゃになる。もうやめてと言っても、きっとあのモンスターたちは止まらない。

 

 神様、私たちは何かいけないことをしてしまったでしょうか。家に帰りたいと思う事は、そんなに悪い事でしょうか。

 皆が死ななければいけない程、許されざる行いなのでしょうか。

 

 外からは未だ悲鳴が聞こえてくる。

 誰か、誰か、誰でも良いんです。だから、だから…

 

『たすけて』

 

 ぽろりと言葉が零れた。誰に聞こえる訳でもないのに…あのモンスターたちを除いては。

 

 モンスターたちはこちらを見ると、あっと言う間にクローゼットを粉々に噛み砕いた…そして獲物を見るようにこちらに顔を向けてきた。

 感情が無いはずの顔は、まるでマヌケな(エサ)をせせら笑っているように見えた。

 

 やつらがどんどん近づいてくるけど、腰がすっかり抜けて全く動けない。ただ喰われるのを待つことしか出来なくて、目を閉じる。

 じりじりとやつらが迫る気配を感じ、私ももう生きるのを諦めたその時

 

 ビュウッ

 

 と風を切る音が聞こえると、

 

 ズブッ

 

 となにかが柔らかい肉質なものに突き刺さる音が続けざまに2回聞こえた。

 

 思わず目を開けると、そこには日本のNINZYAが使う道具…たしかシュリケン…じゃなくてクナイと呼ばれるものが2本、モンスターの横っ腹に突き刺さっていた。

 

 そして飛んできた方向を見ると、

 

「2本でも仕留めきれないか…コイツは牽制や足止め程度にしか使えないと思った方がよさそう」

 

 なにやら小声で呟いている、ヨロイを纏った日本人の少女が居た。

 

 SideOut




はい、いかがでしたでしょうか
今回の話は「海外の人から見た大社とその信頼」を基軸に書いて見ました。

いや、冷静に考えてみると急に祖国へ帰れなくなり、しかもよく分からない宗教家たちの言う通りにしなきゃいけないってめちゃくちゃ怖くないですか⁉️
それだったらその人らを全無視して帰る事を考えて、実行した人も居るんじゃないだろうかという妄想です。
前書きでも言いましたが、原作や他の資料で言及されており、矛盾が発生した場合は指摘した上で「まぁ二次創作だし」の精神でお願いします

今回も読んでくださりありがとうございました‼️
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