弓有香織は勇者をやめた   作:GGO好きの幸村

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…おかしいな、ひろプリ終わる前には上げようと思ってたのに、もうそろそろわんプリの猫組が変身しそうだぞ…?


風船

 勇者達の初陣から数日後。大社によって大々的に勇者の事が報じられ、それに伴って勇者達は様々なメディアから取材を受けたりと、活動をしていたのだが…

 

「た だ い ま ぁ つ か れ た よ ぉ」

 

 授業終わりの丸亀城で、扉から入ってきた香織がぐでぇと自分の椅子にもたれかかる。

 

「お~ぅ、おかえり~」

 

 と球子が返し、ほれ、とスポドリの入ったペットボトルを投げ渡す。

 

「ありがと…あ~っ‼️生き返るぅ~」

 

 香織はぐびっと飲むと、やたらとおっさんくさい声を上げ、目に生気を取り戻す。

 

「それにしても香織さん、何をして来たんでしょう?雑誌や新聞のインタビューなら私達も受けましたけど、ここまで長くかかりませんでしたよね?」

 

「さぁ…インタビュー系なら基本大社が書いた台本道理に話せば良いし、そもそもそんなに長引くようならリーダーの乃木さんに回されそうなものだけど…」

 

 と、杏と千景が疑問に思うことを喋る。

 それを見ていたひなたが、「ああ、それならこれですね」と、スマホを動かしてテレビを流す。夕暮れ時、この時間帯にやってるのはニュース番組くらいだが…

 

『…続いてのニュースです。本日、勇者の1人である弓有香織様が、避難地区を訪問されました』

 

 

 ─避難地区。それはかつてバーテックスが現れた際、四国外から避難してきた人々、あるいはたまたまその時に四国内に来ていた四国外の人々に急遽割り当てられた居住区であり、生きることを諦めなかった人々の希望の地であると同時に、元々四国在住の人には煙たがられることもある地域だ。

 

「なるほど、香織の用事はこれだったのか…確かに四国外から人々を避難させてきた香織だからこそ、あの地に住まう人々に希望を与えられると言うもの…うむ、立派な事じゃないか!しかしそれなら、私も共に行った方が良かったのでは無いか?誘ってくれたら行ったのだが…」

 

 若葉の賛辞と拗ねた様子に、香織は「あー…」と若干気まずそうにして、「そんなに高尚な動機じゃ無かったんだけど…」と語り始める。

 

 

 

 Side香織

 

 あれは数日前、大社の神官さんから、「大々的に勇者の存在を周知させる為に、勇者各員はインタビューやそれに準ずる、何かしらの形で四国の人々に希望を与える行動を取って欲しい」と言われた時の事。

 ぶっちゃけると、何にも思い浮かばなかった。と言うより、一応テレビ出演とかは考えたが、散々取り上げられてる上に言う内容も大社が用意したもの限定とか、やりがいが無いにも程がある。どうせ何かやるなら、ある程度自分の思いどうりに出来る事の方が良い。

 

 そんな時にふと思ったのが、広島から避難する時に出来た友人や、あの船の中で友達になったソフィアちゃんの事だ。勇者が実名・顔写真付きで堂々と発表された為、今後彼ら彼女らと会うのは相当困難だろう。

 そこでこの機会に会えるだけ会っておこうと思ったのだ。…まぁ避難地区には現在両親も在住している─お父さんの片腕がバーテックスに噛みちぎられた為、元の家ではバリアフリーが不十分とされたからだ─から、許可さえ貰えればいつでも会う事は可能なのだが。

 

 とまぁ、そんな感じで、建前:外部から避難してきた人々を励まし、希望を与える為、本音:友人や知り合いと会うための訪問だったのだが…

 

 

『はい、こちら現場です。たった今、弓有香織様が、こちらに到着しました‼️』

 

『勇者様‼️外部からの人々に対する政府の対応について一言‼️』

 

『勇者様、そろそろお時間ですので…』

 

 

 

「行く先々で現れるテレビの取材班やパパラッチ、何かしらの政治活動の為に勇者の発言が欲しい人、分単位で決まってて久しぶりに会った人ともまともに話せないスケジュール…やってられるかー‼️」

 

 私の魂の叫びに『あぁ…』と皆の憐れむような声が聞こえる。いやまさかこうなるとは思わないじゃん‼️というか何で仮住居の中にまでずかずかと入ってくるのよあの人たち(マスコミ)は‼️

 

「みんな~今日骨付鳥食べに行かない?…もう「おや」でも「ひな」でもいいからドカ食いしてストレス発散したい…」

 

「…本当に疲れているんだな…いつもなら「おや」と「ひな」で雌雄を決する所だが、今回は辞めておこう…「ひな」派が1人減っては、あまりに我々が有利だからな」

 

「確かにそうね…『つまらん。戦場に出たら一方的に勝つに決まっている』という訳よ、土居さん」

 

「はっ、ハーン?いやぁ、香織が戦力にならないだけで、「おや」の勝利を確信するとは、随分と「ひな」も舐められたものだな…というか千景‼️お前それザギャーンのテキストだろ‼️コストそこそこの割にパワーがイマイチなやつを出すとは、語るに落ちたな‼️タマのヴァルポーグの方が強い‼️」

 

「…いやそれ殴り返されたらザギャーンに普通に負けるじゃない」

 

「バッか言え‼️アイツは進化だから直ぐに殴れるのが強いんだ、出して直ぐは木偶の坊なザギャーンとは違うのだよ、ザギャーンとは」

 

「あら、殴って来るのは良いけど、こちらの悪魔ハンドにやられたら立て直せないでしょう?ザギャーンは炎のヘルスクラッパーに引っかからないのも強いのよ」

 

「…2人とも、あのカードゲームやってたんだ…とにかく、香織ちゃん1人欠けただけで、「ひな」派が敗れると思わない事ですね、若葉さん‼️」

 

「う、うむ…2人が何の話をしているのかさっぱりだが、とりあえず行くとしよう‼️」

 

 別種の話題で火花を散らす4人と、机に寄りかかる私、そしてそれを見て微笑むひなたと、なんとも混沌とした空間震が完成していた。検査入院中の友奈ちゃんが居たら、右往左往していた事だろう。そんな風に、何気ない日常の風景は流れていくのだった。

 

 ─これは完全な余談だが、後日、勇者の中で例のカードゲーム最強を決める大会を開いたところ…

 

「バ、バカなぁ~‼️タマの最強デッキがぁ~‼️」

 

「くっ、まさか貴方が頂点だとは思わなかったわ…」

 

「えぇと…私が優勝って事なんでしょうか?」

 

 まさかのアンちゃんの雪の妖精デッキが優勝だった…くそぅ、私の「百目ハンドレス(満足)デッキ」もいい線行ってたんだけどな…

 

 

 

 

 ─数十分後…

 

 はむあむがつがつ…

 

「香織ちゃん、お水も飲まないと喉に詰まらせますよ」

 

 ごきゅっ、ごきゅっ、ぷはぁー‼️

 

「…すっごい食べっぷりだな、タマおっタマげたぞ」

 

「あぁ…余程疲れていたんだろうな」

 

 私の食べっぷりに、若葉とタマちゃんが若干引き気味に反応する。

 

「いやもう、本当にしんどかった‼️みんなも訪問系の仕事は避けた方がいいよ…マジで」

 

 心からの助言に、「あはは…」と苦笑いすると、「そういえば千景さん、明日ご実家の方に帰られるんですよね?」とアンちゃんが郡さんに聞く。

 

「…えぇまぁ、一応。ここ3年顔を合わせて無かったから、大社の方から療養も兼ねて行ってきなさいって言われたから…」

 

「む、そういえば千景と香織は同郷なんだよな?香織は一緒に帰省しないのか?」

 

 郡さんの回答に若葉が疑問を発し…空気が凍る。

 

「ほ、ほら‼️家はお父さんが腕をやられた関係で避難地区に住んでるから、あんまり、行く意義が無いと言うか、うん、そんな感じ…」

 

 背筋が凍る、喉が震える、頭の中がぐちゃぐちゃになる。嫌だ、気付かれたくない、嫌だ、私は常に認められなくちゃダメだ、嫌だ…もうひとりぼっちに戻りたくない‼️

 

「…弓有さんのご両親の事もあるし、家の母が天恐だから、あんまり動かせないのよ」

 

「む、そうだったのか…すまんな、無神経な事を聞いてしまった」

 

 私の内心を察したのか、郡さんは早々に話題を切り上げる

 …なんで、貴女はそんなにも優しいのだろうか。先に裏切ったのは…私なのに。彼女の優しさと、己の身勝手さで反吐が出る。そうだ、私は彼女に許される訳なんて無い、彼女に罰せられる資格なんて無い、彼女に謝る勇気すらない…彼女と、再び仲良くなれる未来なんて無い。

 

 …あぁそうだ、だから私は戦い続けなくちゃいけないんだ。彼女を痛めつけるだけの優しさに甘えないようにする為に。許されなくても、どれだけの罰を与えられても構わない。だけど…この戦いの中で、彼女に総てを謝罪する勇気が、覚悟が、見つかることを信じて。元に戻れなくても、また前を向けるようになる為に、私は戦い続けなくちゃ行けないのだ。

 

「…香織さん、大丈夫ですか?」

 

 あまり良くない顔をしていたのが、アンちゃんが心配して声をかけてくれる。

 

 大丈夫だよ、と声を返し、再び食事に集中する。そうだ、食べている時だけは口の中だけに集中出来る…見たくないもの(燃える思い出の場所)も見ずに済むし、聞きたくないもの(その子も死んでれば良かったのに)も聞こえない、思い出したくないもの(私のせいでちーちゃんは居場所を無くした)も忘れられる。

 そんな私を見た郡さんは、どこか複雑そうな表情を浮かべた後、明日の準備があるからと言って、料金を置いて先に帰って行った。あぁ、やはり私は…と考えていると、ポン、とタマちゃんが肩を叩く。

 

「いよぉ~し‼️この後コンビニ寄ってこう‼️香織は疲れてるみたいだからな、今回は特別にタマがアイス奢ってやる‼️」

 

「おい球子‼️こんな時間に買い食いは…」

 

「まぁまあ若葉ちゃん。たまには良いじゃありませんか。しばらく休息なんですし、休む時はとことん羽目を外してみるものですよ?」

 

「タマっち先輩、私のも一緒に買ってもらっても大丈夫?…新作の恋愛小説買いすぎちゃって…」

 

「あんず…タマも我ながら散財癖あると思うが、お前も中々だな…まぁタマには良いか‼️ただし、タマにも1口寄越しタマえ‼️」

 

 なんて、ワイワイ言いながらコンビニへと向かう。

 …自分でさっき覚悟を決めたと言うのに、なんて脆いのだろう、どこまで浅ましいのだろう。

 それでも…私は、こんなどうでもいい事を話しながら、皆と一緒に居る時間が、ずっと続けば良いと思ってしまう、このぬるま湯にいつまでも浸かっていたいと思ってしまう。

 そんな忸怩たる思いを胸に抱えながらも、私はタマちゃん達に少し遅れてついて行くのだった。

 

 SideOut

 

 

 

 

 Side千景

 

 …高嶋さんも居たら、もっと楽しかっただろうな…

 

 帰りたくもない生家へのバスの中、昨日の出来事を思い出す。

 あの家に、幸せな思い出は無い…より正確に言えば、思い出せない。余白ばかりのアルバムを覗けば千景が小さかった頃の幸せだった家族が写っているが…この裏で徐々に崩れて行ったと考えると、あまり見返す気にもならない。

 そんな事を考えている内に自宅近くのバス停に着いており、千景は憂鬱な気持ちになりながらもゲームの電源を切った。

 

 

 

 ─数時間後

 

 千景は、人生の絶頂に居た。両親にとって邪魔者だったのが誇りと言われ、嘲笑してきた人々が『勇者』の千景を褒め讃えている…生まれた事を疎まれ、呪われ、無価値で理由無しに傷つけて良い存在だった千景が、だ。

 

『勇者』だから…皆から賞賛される

 

『勇者』だから…誰にも傷つけられない

 

『勇者』だから…無条件に愛される。

 

 生まれて初めての喜び。生きてきた中で一番の幸福。「生まれてきて良かった」と、胸を張って言える程の幸せの、はず、なのに…

 

 何故だろうか、苦手な筈の乃木さんや土居さんと話している時の方が、満たされるような気がするのは。

 

 何故だろうか、弓有さんと2人きりの時の気まずい沈黙の方が、充実していると感じてしまうのは。

 

 何故だろうか、この胸が膨らむような気持ちが…まるで薄い風船に適当に空気を入れただけの、虚しいもののような気がするのは。

 

 

 

 …まぁ、どうでもいいか。

 

 この気持ちがなんであれ、私が勇者であれば愛される、私が勇者であれば皆と一緒に居られる。どちらにせよ、私が勇者ならば問題は無い。

 

 その結論に行き着き、1晩がたった。私は、朝方のバスで香川に帰ることにした。それは、バーテックスに対して備える為でもあるが…1番の理由は、今村の人と正面から話したら、何かが堪えられなくなりそうだと思ったからだ。

 私はここで、生まれて初めてと言えるほどの祝福を受けているのだ、その堪えられないものはひょっとしたら歓喜の涙かもしれない。それでも…それを溢れさせたら、何かが後戻り出来ないような気がしたのだ。

 

 

「えっと、千景ちゃん、ちょっと…いい?」

 

 そんな事を考えながらバス停に向かうと、そこには私と同い年の先客(少女)が居た。一瞬誰だろうかと考えてから、村の名家の一人娘だと思い出す。昔は弓有さんや他の娘も含めて、よく一緒に遊んだものだ。一瞬何故彼女のことが分からなかったのだろうかと考えると、そういえば彼女は村外の私立中に進学したし、私も…

 

『あんな親だから』

 

『いんらん』

 

『先生、知らなかったわ』

 

 …色々あったから、ここ3年くらい顔を合わせた事も無かった。

 

「…どうかしたのかしら」

 

「っ!うん、…どうしても、話しておきたい事があって」

 

 

 

 …そうして彼女の口から語られたのは、あの日の真実。

 1人の少女が義憤に駆られて空回りし、それをもう1人の少女が背負おうとして…それすら許されなかった、遠い日のおはなし。

 少女達にとっての悪魔を討てず、人々を堕落させ、魔女となってしまった話。

 背負おうとした(覚悟)栄光(肯定)に反転し、少女の心に呪いが住み着いた一部始終。

 

 

 …なるほど、そういう事だったのか。通りで弓有さんは私に石を当ててしまったし…昔より、1人きりを恐れているのか。

 しかし、それにしても

 

「…なんでその事を私に話したのかしら?言わなければ、貴方はただの傍観者のままで居られたのに」

 

 

「…だって、あれは私が背負うべき罪だもの。香織ちゃんの優しさに甘えて、それを彼女に押し付けてしまった。1人で勝手に縮こまって、顔向けできないからなんて理由で貴女が苦しい時に、見て見ぬふりをしているだけの加害者になってしまった。」

 

「だけど、時間が私の愚かさを自覚させた。奇跡的に、貴女と話そうとしても、お父様から『あの娘に近寄らないように』という愛情()をかけられない環境になった。なら…後は勇気を出して、謝るだけ」

 

「今更なのは分かってる、決して許されないのも、分かってる。その上で…謝らないといけないと思ったから」

 

 そう、と返事して、少し考える。

 私はこの話を聞いても…()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

「そんな事で」とも思う。「信じられない」「何を今更」と思わなくもない。

 

 ただ…

 

「私、意外とまだ貴女の事を友達だと思ってるみたい」

 

「………え?」

 

 戸惑っている彼女に軽く微笑み、続ける。

 

「確かに、その事故は貴女のせいかもしれない。けど、そこには私への優しさがあった。何を今更、とも思った。だけど、貴女の謝罪には誠意があった。

 それに…多分、その事故が無くても、遅かれ早かれ、私はああなってたと思う。なら…許さない理由を見つける方が、私には難しいわ」

 

「…ちかげ、ちゃんっ‼️」

 

 泣き崩れる彼女の後ろから、ピピッ、ピピッ、ピピッと電子音を響かせながら、バスが到着する。

 私はバスの中に入ると、少し振り向いてまたね、と声をかける。

 

「ッ、うん、…またね、千景ちゃん‼️」

 

 涙ぐみながら手を振る彼女の姿が見えなくなったので、私はゲームを立ち上げる。

 

 …今は、丸亀に居る時のように、心が満たされている気がした。

 

 Side Out




冷静に考えたら、常識ある大人ほど村ぐるみで虐められてる子が居るやべー環境に、自分の子供を近寄らせたくないよね(尚、その原因に()()()()()()()のは、自分の娘とする、娘は罪悪感で曇る)
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