弓有香織は勇者をやめた   作:GGO好きの幸村

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前回の投稿から3ヶ月しか経ってないな、ヨシ‼️((目そらし))


郡千景は、勇者でありたい

 Side千景

 

 私が丸亀に帰ってすぐに、新たなバーテックスの集団が襲ってきた。

 高嶋さんは前回の戦いで切り札を使用した為、検査入院中…の、筈だ。

 

 しかし、感じる。

 

 私の中の何かが、高嶋さんの気配を感知している。

 

 一先ず私は()()()()()に声をかける。

 

「…弓有さん、少し緑を使って周りを調べてみてちょうだい」

 

「え?まぁいいけど…あれ、樹海の中だと使い物にならないよ?なんというかすごい大きい生き物のお腹の中に居る感覚と言うか…」

 

 うん、やっぱり何も感じないと言うかおちゃんを一瞥し、気配を感じた辺りを覗き込む。そこには、いつも愛くるしい笑顔を浮かべている彼女の姿が…

 

 こちらに気付いたのか、「わわわっ!」と飛び跳ね、驚いたように彼女は問う。

 

「ぐ、ぐんちゃん⁉️なんでここが分かったの⁉️」

 

「なんでここにはこっちの台詞だと思うのだけれど…病院、抜け出してきちゃったの?高嶋さん」

 

 と、私は目の前の彼女…高嶋さんに問い返すのだった。

 

 SideOut

 

 

 

「友奈⁉️何故ここに⁉️まさか、自力で脱出を⁉️」

 

「え、友奈ちゃん⁉️入院してたんじゃ…てかなんで郡さんは場所分かったの…❓わ…わからない…さっぱりわからない…」

 

「お、友奈‼️もうよくなったのか‼️そうならそうと知らせタマえ‼️」

 

「えっへっへ~抜け出してきちゃった‼️」

 

「もう、ダメですよ友奈さん‼️…もどったらひなたさんに怒られますよ~」

 

「うっ‼️…まぁまぁ、戦いのすぐあとならひなたちゃんもそこまでは厳しくない…はず…」

 

「私と若葉はゴリゴリに詰められたけどね~」

 

「うむ、まぁ…前もって覚悟はしておいた方が良いだろう」

 

「えぇ‼️そんなぁ…」

 

「…でも、私は貴女が来てくれて嬉しいわ、高嶋さん」

 

「ありがとう、ぐんちゃん‼️よぉし、頑張るぞー‼️」

 

 その声を切り始めに、勇者たちは空を覆い尽くさんとするバーテックスに向かっていった。

 

 

 

 Side千景

 

 …体が軽い。

 

 勇者である限り、私が必要とされていると分かったからだろうか。

 

 隣に彼女(高嶋さん)が居るからだろうか、もしかしたら彼女(かおちゃん)の真意を知ったからかもしれない。

 

 …どのような理由であれ、私の体が今までよりもスムーズに、思ったままに動く。

 

 恐怖は、ある。

 

 前回の戦いではそれで足を引っ張ってしまった節もあった。

 

 私は他の勇者とは違って、バーテックスがやって来た時に戦った経験が無い。たった1回の実戦で、恐怖が無くなる筈もない。

 

 

 

 ─それでも。

 

 

 

「皆さん、気をつけてください‼️進化体が来ます‼️」

 

 伊予島さんの警告とほぼ同時に多くの小型が融合し、巨大な口を持つ進化体へと姿を変える。

 

「まずは私が行ってみる!若葉、アンちゃん、露払いお願い!」

 

「あぁ、任せろ!」「了解です!」

 

 その号令に合わせ、3人が一斉に動く。

 

 伊予島さんが射る、乃木さんが斬る、そしてかおちゃんが鉤爪を一閃しようとしたところで…

 

キィン!

 

「ッ⁉️」

 

 進化体が、その大きな口から矢を射出した(吐いた)

 

 かおちゃんはギリギリ鉤爪で矢を逸らせたが、息をつく間もなく、第2射がより多くの物量で放たれる。

 

「総員、回避ーッ‼️」

 

 乃木さんの焦燥した声が響き、全員がなんとか距離を取って矢を回避する。

 圧倒的な物量の前に、反撃の隙を見いだせない。

 

 

 

 死ぬのは怖い。

 

 恐怖は無くならない。

 

 ─それでも。

 

 あぁ、それでも私は…あなた(高嶋さん)の…あなた達(勇者)の隣で誇れる(勇者)で居たいのだ。

 

 その為に…

 

 

 

「私が、倒す」

 

 

 私は意識を端末に集中する。端末から神樹へ。神樹からその中のデータベースへ。そしてそこから呼び起こすのは…

 

「…来なさい、七人御先‼️」

 

 SideOut

 

 

 進化体となったバーテックスは次々と矢を雨あられのように連発する。

 

 勇者たちが各々の方法で回避や防御している中、白い影がその中を高速で駆け抜ける。

 

 千景だ。

 切り札を使用した千景が、進化体の懐まで急接近する。常人よりも優れている勇者としての身体能力に精霊の力も加わった事で、矢の雨を軽々と躱してゆく。

 

 だが、いかんせんその圧倒的な物量を完全に潜り抜ける事は難しく、ついに全身に針鼠のように矢を受け─

 

──斬‼️

 

 それと同時に、進化体の背後を大鎌の一撃が襲った。

 

「…勝ったと思ってたところに悪いけど、私を倒したかったら今の7倍は必要よ」

 

 殺したと思っていた獲物(千景)の声に、進化体は急いで方向転換する。いや、しようとしたところで

 

──斬‼️

 

───斬‼️

 

────斬‼️

 

 と、続けざまに別方向から同じ攻撃を三回浴びせられる。

 それに反応する間も無く、5回、6回…7回。合計7回の斬撃が、進化体の体を襲った。

 

 

 その一部始終を見ていた勇者たちは、全員目が点になったような顔をする。

 

「分身の術⁉️ぐんちゃんは忍者だった⁉️」

 

 と友奈は驚き、

 

「双子、いや3つ子かァ⁉️」

 

「タマちゃん、それを言うなら七つ子だよ」

 

「いや、訂正するところそこじゃないですよね⁉️もしかしなくても香織さんも混乱してません⁉️」

 

 球子の声に香織が少しズレた返答をし、杏がツッこむ。

 

 彼女達が驚くのは当然だろう。なにしろ見知った顔が急に七人に増えたのだから。

 これこそが精霊、『七人御先』の力。

 己を七人に増やし、その全てを同時に殺されなければ死なずに新たな千景が現れ再び七人となる、欠けることを知らぬ攻防一体の力である。

 

 そして千景が手に持つ武器は『大葉刈』。神が死者と見間違えられた怒りで罪なき人を斬り殺した刃。イザナギが振るいし天之尾羽張、ヤマタノオロチを斬りし天羽々斬に次いで知られる十束剣が一振り。

 

(死ぬには、ふさわしい武器でしょう…?)

 

 千景はそう独り言ちると、七人で一斉に斬りかかった。

 その乱雑ながらも鋭い攻撃は、数で押しているのも相まってあっという間に進化体の体を引き裂いた。

 

 千景が進化体を攻撃している間に他の勇者…特に若葉がバーテックスを殲滅していた為、勇者たちは総数100を超えるバーテックスの群れを、今回も無事に退けることが出来たのだった。

 

 

 

 Side 千景

 

 2回目の戦いから数日後。半袖だと少し肌寒くなってきた体育館の中で、私は鎌の素振りをしていた。

 元々インドア派なのも原因だと思うが、勇者の中で私がいちばん早く体力が無くなってしまうのだ。

 …いや、正確に言えば伊予島さんとほぼ同じタイミングではあるのだが、流石に敵から離れた場所にいる後衛の彼女と目の前に敵がいる前衛の私だと、戦闘中に体力が尽きた時の危険度が違うだろう。

 

 勇者服のアシストが無いにも関わらず戦闘中一番スタミナが保てているかおちゃんにそれとなく聞いてみたところ─私から話しかけた事に酷く驚いていたが─戦闘中は体力の消耗を抑えるよう、効率よい動きで戦っていると言っていた。なので一先ず今までしていなかった自主訓練で、鎌の基礎的な使い方を見に染み込ませようと思ったのだ。

 

 …まぁ、今まで型練習なんてしたことないから、どう動かせばいいのか分からないのだけれど。

 

「ぐんちゃーん‼️」

 

 そう思いながら鎌を振っていると、入口の方から鈴を転がすような声が聞こえてきた。

 

「‼️…高嶋さん。今日退院だったの❓連絡くれたら…み、皆で迎えに行ったのに…」

 

「それは嬉しいけど、昨日の今日で動いたら皆疲れちゃうよ。ところでぐんちゃんは自主訓練❓」

 

 高嶋さんの問いに、コクリと頷く。

 

「えぇ、私が皆の中で1番体力が無いから。だから体力を抑えながら動くというか、効率のいい戦い方を身につけたくて…」

 

「あ‼️それで型練習してたんだ‼️」

 

 少ししか見ていない、しかも拙い私のそれを見て型練習だと分かった高嶋さんに少し驚きつつ、いまいちやり方が分からないのよねと返す。

 

「ぐんちゃん、ちょっとごめんね」

 

 そう言うやいなや、彼女の手が私の方に伸びてきて、体に妙な力が入って、全身が氷漬けになったかのような錯覚を覚える。

 …分かっているのだ。ここがあそことは違う事は。分かっているのだ。高嶋さんが誰かを傷つける事を良しとしない人だと言う事は。

 なのに、体が警戒してしまう、心が拒絶してしまう。

 理性ではそんな事ないと分かっているのに、悪感情で鍛造された本能が、誰かが突然触れようとしてくることに恐怖してしまう。

 そんな高嶋さんの好意を素直に受け入れられず、怯えてしまうような自分に嫌気がさし…

 

 ピトッ、と彼女と私の手が触れた。

 

 ──暖かい。

 

「鎌はね、こう持って、もっとこう…ズバーン‼️って感じで振るといいと思うよ」

 

 高嶋さんはなんとも拙い表現ながらも、私に一生懸命鎌の振り方を教えてくれる。

 

 …正直、かなり分かりにくい。だけど、その身体が、こころが…暖かいのだ。

 それが、恐怖と劣等感で氷のようになっていたこころを溶かしてくれて…

 

「あとね、ぐんちゃん」

 

「…何❓」

 

「私はこの前の戦い、ぐんちゃんが1番活躍したとおもうな。こう、シュババッて増えて、ズギャーン‼️って感じで敵を斬ってて‼️凄いカッコよかった‼️」

 

 …ずるい。

 本当にずるい人だ、高嶋さんは。

『1番何も出来ていない』という諦念も、『愛されるために勇者でいないと』という重石も、全部簡単に捨てさせてくれるのだから。

 

 堰き止めていた涙が溢れ出す。地元で流したそれとは違う、まるで桜咲く春の日差しのような、暖かい涙が。

 

「あれ⁉️なにか悪いこと言っちゃったかな⁉️ぐんちゃんごめん‼️」

 

 違う、違うのよ、高嶋さん。だけど、その嘲りが全く無い心配も、あわててハンカチで涙を拭ってくれる優しさも、私にとっては十分すぎるくらいで…

 

 

「ねぇ、高嶋さん…」

 

「なに❓」

 

「私、貴女と同じ、勇者で居られたかしら…❓」

 

「❓うん‼️ぐんちゃんは、いつだって頼りになる、私とおんなじ勇者の一員だよ‼️」

 

 

 

「…ありがとう、高嶋さん」

 

 ─私、しあわせよ─

 

 そんな事を思いながら、私はまた鎌の稽古を再開した。

 

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