僕のヒーローアカデミア with EX-AID 作:ムジョー555
以後各地で「超常」が発見され、原因も判然としないまま、時は流れる。
世界総人口の八割が何らかの特異体質である超人社会となった現在。
生まれ持った超常的な力「個性」を悪用する犯罪者・敵(ヴィラン)が増加の一途をたどる中、同じく「個性」を持つ者たちが『ヒーロー』として敵(ヴィラン)や災害に立ち向かい、人々を救ける社会が確立されていた。
降りしきる雨の交差点……
横断歩道の上に、小さい緑色の傘がひとつ、横たわる。
『……もし、この世界に真の『ヒーロー』が存在するとすれば、それは彼らのことを言うのだろう』
「患者は緑谷出久くん、4歳。交通外傷で搬送。腹部損傷、重症です!」
『どんな逆境でも、決して諦めずに立ち向かい……』
「血圧低下、心音微弱」
「本当にこんな状況でオペするんですか!?」
「大丈夫、絶対救けるから……」
『人の命を救う。そんな『ヒーロー』に、僕たちは守られている……』
〜10年後〜
「そのざわざわがモブたる所以だ! !俺は模試もA判定!雄英の合格圏内!!」
とある中学校の教室。
ホームルームの途中で突如として机の上に立ち上がった少年『爆豪勝己』の声が響く。
「あのオールマイトをも超えて、俺はトップヒーローと成り!! 必ずや高額納税者ランキングに名を刻むのだ!!」
「そういや、緑谷も雄英志望だったな」
担任の教師がふいにそんな事を口走ると、教室中の視線がひとりの少年『緑谷出久』に集中した。
「……あぁん?このデク!!」
爆豪は怒りの形相で右掌を出久の机に叩きつけた。
出久は咄嗟に回避するが、それと同時に机が爆発に包まれる。
「没個性どころか無個性のてめぇが……何で俺と同じ土俵に立てるんだ!? お医者さん志望のお利口さんだからって、調子のったか?あぁっ!」
「別に……雄英ヒーロー科入試要項の受験資格項目に『個性』の有無は記載されていないよ。だから『無個性』だからといって受験しちゃいけない理屈はない。それに医療活動とヒーロー活動を両立している人たちだって、たくさんいる。寧ろ、ヒーロー資格があるからこそできる医療活動も……」
「ごちゃごちゃうっせぇんだよ!!」
怒りに震え、個性による爆破を乱発する爆豪だったが、内申点を餌に担任が宥め、とりあえずその場は落ち着いた。
……そして放課後。
帰ろうとした出久の前に、爆豪が取り巻きたちを連れて現れた。
「話はまだ済んでねぇぞ、デク」
そう言うと爆豪は、机に置かれた出久のノートを取り上げ、爆破。
嘲笑いながら、焼け焦げたノートを窓の外へと投げ捨てた。
「一線級のトップヒーローは大抵、学生時から逸話を残してる。俺はこの平凡な市立中学から初めて!唯一の!『雄英進学者』っつぅ箔を付けてぇのさ」
落ち行くノートには目もくれず、爆豪は出久を睨みつける。
「無個性のてめぇがヒーロー科の実技に受かるとは思っちゃいねぇが……お利口さんだから筆記は訳ねぇもんなぁ。だから、てめぇは雄英受けるな。医者志望のクソナード!!」
そう言い放つと、満足したのか。
爆豪は教室を後にしていく。そして……
「そんなにヒーローに成りてぇなら、効率良い方法あるぜ。来世は個性が宿ると信じて……屋上からのワンチャンダイブ!!」
「……今、なんて言った?」
ハハハ!と高笑いする爆豪だったが、出久の低い声を聴き取り、彼の方に目を向けると……一転、顔を青ざめた。
そこには恐ろしくも冷たく、鋭い怒りを帯びた視線を向ける出久の姿があった。
「個性蔑視は構わない。思想は自由だし、僕が無個性なのも事実だ。でも……命を軽率にする発言は許されない……」
出久はその視線を逸らすことなく、爆豪へと歩み寄る。
「……命を愚弄するな!!」
「す……すまねぇ……言い過ぎた……」
爆豪はそれ以上は何も言えず、逃げ去るようにその場をあとにした。
出久はふぅ……と息を吐き出し、冷静に窓の外のノートを眺める。
「まったく、かっちゃんったら……」
〜衛生省〜
豪華な調度品に囲まれた一室。
スーツ姿の女性『仮野明日那』から渡された書類に、衛生省審議官『日向恭太郎』が目を通していた。
「ハンドルネーム『M』……本名不明。数多くのゲーム大会で好成績を記録……か」
「はい。天才ゲーマーMなら、きっと『ゲーマドライバー』の適合者に成れるはずです」
明日那はそう言うと、デスクに置かれたアタッシュケースに軽く目を向ける。
「しかし、あの一件以来、公安も慎重になっている。我々は同じ過ちを繰り返すわけにはいかない……」
考え込む審議官を尻目に、明日那はアタッシュケースを手に取る。
「とにかく、わたしは天才ゲーマーMを探してきます」
明日那はそう言い残し、一礼すると足早に部屋をあとにした。
〜イベント会場〜
綺羅びやかなステージ。
巨大スクリーンを背に、爽やかな笑みを浮かべた青年が姿を現す。
「お集まりの皆さま。幻夢コーポレーションCEOの檀黎斗です。大変永らくお待たせいたしました」
檀黎斗は軽く会釈すると言葉を続ける。
「制作発表から5年以上の開発期間を経て、ついに、あの伝説のゲーム『マイティアクションX』が完成しました!」
―マイティアクションX―
どことなくポップでコミカルな一等身のキャラクター・マイティが、お菓子の国を冒険する、典型的な横スクロールアクションゲーム。
マイティの得意技はジャンプとキック。
ステージに隠されたお菓子アイテムを食べることでパワーアップすることができる。
……マ○オ?カー○ィ?……なんですか、それは?ゴホッゴホッ
イベント会場に設置された試遊台には老若男女問わず多くの人々が押し寄せていた。
その様子を眺めていたのは、明日那。
「……きっとこの中に、天才ゲーマーが来ているはず」
「ぐっ……!」
そのときだった。
試遊台の列に並ぶ少年が、突如苦しみ、倒れ込んだ。
それに気づいた明日那が少年に駆け寄ろうとしたとき、彼女よりも早く少年のもとに駆けつけた者がいた。
「君、大丈夫!?」
それは出久だった。
声かけ、状態確認、体位保持……
衛生省職員である明日那の目から見ても完璧な初期対応をテキパキとこなしていく。
誰かに119番通報をお願いしようかと思案していた出久と目があい、明日那は改めて駆け寄った。
「初期対応ありがとう。君の名前は?」
「緑谷出久です。あなたは……?」
「わたしは衛生省職員の仮野明日那。あとは任せて!」
明日那が倒れ込んだ少年の容態を確認しようとしたとき……それは起こった。
まるで『何かが産まれる』かのように、少年の輪郭が歪み始めた。
「これって……まさか!?」
その歪みは少年を飲み込むと、その姿を変えた。
それは緑色の流動体の塊でありながら、その中に瞳があり、ギョロリと明日那と出久を見つめている。
「ヘドロ状の異形個性!?なんで突然!?」
驚く出久の横で、明日那は呟く。
「発症……」
突如として現れたヘドロヴィランに会場は騒然とする。
人々は暴れるヘドロヴィランに怯え、慌てて逃げ惑う。
明日那はなんとか被害を食い止めようとするが、ヘドロヴィランの猛攻を回避するのに精いっぱいで手も足も出ず、物陰に隠れて様子を窺う。
「仮野さん!」
出久はそんな中でも逃げることなく、明日那に話しかけた。
「あなた、まだいたの!?ここは危ないから早く逃げて!!」
「逃げません!!」
出久は強く叫ぶ。
「彼は……明らかに弱ってて……救けを求めてた。『発症』ってなんですか!?」
「……『超常』……今でいう『個性』ね。かつて突如として人々にもたらされた謎の変異。一説では未知のウイルスがネズミを介し、世界へ拡がったと言われている。でも、実態はネズミではなく、コンピュータが原因だったの」
「コンピュータが……?」
「ゲームから発生したコンピュータウイルスが人体に直接感染するように進化したの。それが『バグスターウイルス』……人体はバグスターウイルスと共生することで『個性』を獲得した。でも、その共生関係に綻びが生じようとしているの」
明日那は暴れるヘドロヴィランを眺めながら話を続ける。
「世代を経るごとに混ざり、より複雑に、より曖昧に、より強く膨張していく『個性』……その容量の膨らむ速度に身体の進化が間に合わず、コントロールを失う現象。それが『個性特異点』よ。容量に身体を適応させなければ、人はウイルスを制御できなくなる。その兆候は第4世代からあった。そして、最終的に患者の身体は……『バグスター』に乗っ取られる」
「そんな……何か、何かできることはないんですか!!」
事実を聞かされた出久は驚きを隠せない。
それでも、その驚き以上に強い感情が彼を突き動かしていた。
これは本来よくないことであろう。
しかし、明日那は目の前の少年『緑谷出久』の発する思いに、彼女もまた、何か突き動かされる気がした。
「……救ける手はあるわ」
明日那はアタッシュケースを開け、中の物を取り出す。
ひとつは大ぶりで蛍光グリーン&蛍光ピンクという派手なカラーリングのベルトのバックル。
何かを差し込めるような仕掛けも見える。
もうひとつは幻夢コーポレーション製のゲームソフトに似通ったアイテム。
通常のゲームソフトにはないグリップのようなものが付いている。
「ゲーマドライバーとライダーガシャット。これがあれば、患者からバグスターを切り離し、暴走する個性の治療ができる……でも……」
「仮野さん。これ、お借りします!」
「ちょっと、緑谷くん!?」
出久はゲーマドライバーとガシャットを手に取ると、ヘドロヴィランの元へと向かう。
「無茶よ!それはただのゲームじゃないのよ!!」
「……ゲーム?」
出久は改めてガシャットを見つめる。
そのラベルには『マイティ』のイラストが描かれていた。
ふっ……と軽く息を漏らした出久はどことなく口元に笑みを浮かべているようだった。
出久は手にしたガシャットのスイッチを押す。
『マイティアクションX!』
ゲームタイトルを告げる電子音声が鳴り響く。
出久の背後にゲームタイトルが映し出され、彼の周囲をいくつもの大きな板チョコのようなブロックが飛び交う。
そして、会場中にそのブロックが拡散する。
「そんな、ゲームエリアが展開してる!?なんで!?」
ライダーガシャットが起動したことに驚く明日那。
「大丈夫……『ゲーム』なら、僕に任せてください!」
「……え?」
出久がゲーマドライバーを腰に翳すと、ベルトが伸び、自然と巻かれていく。
「あの子は僕が救けます……変身!」
『ガッシャット!』
出久はマイティアクションXのガシャットをゲーマドライバーに差し込む。
『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?』
出久の周囲を囲むように、キャラクター選択パネルが表示される。
出久は自分の正面のパネルにまっすぐと手を伸ばした。
『アイム ア カメンライダー!』
電子音声が止んだとき、そこに現れたのは、逆立った髪の毛のような頭部が特徴のゆるキャラのような、ずんぐりとした体型で可愛らしい出で立ちに姿を変えた出久。
―仮面ライダーエグゼイド アクションゲーマーレベル1―
「……え、なんだこれ!?僕、本当に変身してる!?」
困惑する出久にヘドロヴィランの拳が迫る。
「危ない!」
明日那の声で危機を察した出久。
軽い身のこなしで跳び上がると、ヘドロヴィランの拳に乗り、さらに高く飛び跳ねる。
『ガシャコンブレイカー!』
ハンマー状の武器を取り出した出久は、それをヘドロヴィランの頭に叩きつける。
流動体にも関わらず、何故かその打撃は炸裂し、まるでゲームのエフェクトかのように『HIT』の文字が飛ぶ。
「効いてる……だったら……」
出久はヘドロヴィランに背を向け、走り出す。
「ちょっと、どこいくの!」
「マイティは、お菓子を食べて強くなるんです!」
ヘドロヴィランから距離を取った出久は、会場に展開されたブロックのひとつを砕く。
そこから飛び出したのは、ゲームキャラが疾走する絵柄が描かれたメダルだった。
「アイテムゲット!」
―エナジーアイテム「高速化」―
使用したキャラのスピードを一時的に上げる黄色のメダル。
出久は目に止まらぬ高速移動で、連続攻撃を繰り出す。
「トドメだ!!」
ヘドロヴィランの脳天に『PERFECT』の一撃が炸裂すると、その姿を消し、元の少年へと戻った。
「やった!」
「……いや、まだゲームは終わってない!」
ヘドロヴィランだった少年は元の姿に戻り、倒れ込んでいる。
しかし、その身体から湧き出るように緑色の流動体が飛び出してくる。
「ヘドロヴィランが……分離した!?」
ゲーマドライバーの働きによって少年の身体から解放されたヘドロヴィランは、独立した存在となり、再びその猛威を振るう。
「緑谷くん、これ以上はあなたには無理よ!戻って!!」
「いや、まだやれます!!」
出久は何か手はないかと、腰に巻かれたゲーマドライバーを探る。
「これだ!大変身!!」
出久はゲーマドライバーの正面にあるレバーを開放する。
『ガッチャーン!レベルアーップ!』
出久が跳び上がると、それに合わせて音声が続く。
『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクションX!!』
変身音に合わせてジャンプ・キックを行いながら、レベル1のボディから細身ながらも大柄な人型が分離し、決めポーズを取って着地する。
―仮面ライダーエグゼイド アクションゲーマーレベル2―
「ウソ……」
難なくレベルアップに成功した出久を見て、啞然とする明日那。
「緑谷出久……MIDORIYA……まさか、天才ゲーマー『M』……?」
出久はガシャコンブレイカーから刃を伸ばし、剣状にすると、レベル1のときよりも軽快な身のこなしで、何度もヘドロヴィランへ斬りかかる。
「一気に決めます!!」
ゲーマドライバーからガシャットを抜き、ふっ……と息を吹きかけると、ベルトの左腰部分に装着されたホルダーへ挿し直す。
出久がホルダーのボタンを2連打すると……
『キメワザ!』
鳴り響く音声とともに、出久の脚にエネルギーが満ちていく。
そして、その脚のエネルギーを威力に変えて、ヘドロヴィランへと跳び蹴りを放つ。
『マイティクリティカルストライク!!』
ヘドロヴィランの身体に必殺のキックが突き刺さる。
文字通り『PERFECT』の一撃が炸裂し、ヘドロヴィランの身体は爆散した。
「や……やった……」
出久は着地するや否や、変身が解け、その場に倒れ込む。
『これが、僕の新しいゲームの始まりだった。そして……』
「ちょっと、緑谷くん、大丈夫!?」
心配する明日那に、出久は無言でグッと親指を立てた拳を示して答えた。
『これは、僕が最高のヒーローになるまでの物語だ』