伝説の魔物使いも箱庭に来るそうですよ?   作:60067

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最後の方が意味不明になった感を抱えながら実に2ヶ月ぶりの更新でござい。
いやまあ、全体的に見たらそこまで遅い更新ではないんですよ、一応。

んだらばどぞやでー


新たな力

リュカは一人、街を歩いていた。

十六夜達が魔王・ペスト率いる“グリムグリモワール・ハーメルン”からゲーム再開まで一週間の猶予をもぎ取り、現在その一週間の内三日が過ぎていた。

この三日で起きたことと言えば、ゲームに参加していた他コミュニティのメンバーからペストを発症した者がチラホラと現れてきたことだろう。

そのペストに仲間である耀も発症してしまい、今は隔離部屋に移されている。

仲間の容態は気になるが、ペストの性質上近寄っていいものかどうか判断がつかずにこうして街を彷徨いている次第だ。

だが、普段のリュカならそんな事は気にしなかっただろう。

仲間の一人である久遠飛鳥が相手に攫われたのだ。それも自らの手の届く範囲で。

これで優しい、優し過ぎるリュカが冷静でいられるはずも無い。

もっと力が、力さえあれば護れたはずなのだ。

リュカは自身のギフトの詳細は兎も角、大雑把な内容は把握していた。

誰でもいいから仲間にすればするだけ強くなれる能力。

今からでも仲間を増やすか?

否、増やせたとしても相互理解の時間が無いので却下。

今から鍛えるか?

確かに強くはなれるが、仲間を増やすのに比べるとどうしても微々たる変化でしかないため却下。

ならばどうすれば?どうすれば強くなれる?

どんな代償を支払ってもいい。一気に強くなるためには…………。

そう考えながら歩いていためか、注意力が散漫となっており、結果人とぶつかってしまった。

 

 

「おっ…………と。すいません、考え事をしながら歩いていたもので…………」

 

「なに、私も周りを見ていなかったようだ。ここはお互い様、ということにしようではないか」

 

 

リュカが長い銀髪の美丈夫に謝ると、彼も自分に非があるとした。

そう言えば自分はよろめいたのに彼は微動だにしなかった。

体格にそこまで差はないように思えるのにだ。

 

 

「それにしてもゲームで自らを魔王と宣った輩が周りが見えなくなるほど考え込むとはな。よほど、自分にとって大事な事柄らしい」

 

「あのゲームを観戦していたのですか?ハハ、少し恥ずかしいですね」

 

「恥ずかしがることはない。あのジャック・オー・ランタンを抑え込んだあの手際。実に素晴らしかった。アレも油断はあったのだろうが、ああもアッサリと決まるゲームは久し振りに観た。…………それで、それ程の実力を持っているお前が何を考えていたのか、私は興味がある。どうだ?私にその心の内を話してみないか?」

 

 

ここでリュカは不思議な感覚に襲われる。

普通ならばたまたまぶつかってしまった人に己の悩みを曝け出すだろうか?いや、あり得ない。

だがリュカは曝け出したのだ。

まるで目の前の存在が、知己以上の存在であったかのように。

 

 

「…………成る程な。力を欲してるのか。それはこの箱庭ならば誰もが思い、願っていることだろうな。かつての私もそうであった」

 

「貴方が…………?失礼ですが、かなりの力を持ち合わせているように思えますが」

 

 

抑えているようだが、リュカには彼の実力がヒシヒシと感じられた。

単純なステータスならいい勝負かもしれないが、経験、技量には大きな差が開いていると。

 

 

「かつてと言っただろう。…………それで、お前はどうしたいのだ?あの若輩魔王のゲームが再開されるのは三日後だ。お前は力を手に入れる為ならどんな代償も支払うだのと言ったが、その言葉に偽りはないか?」

 

「ええ、勿論でーーーー」

 

「ならばお前の妻子の命を奪っても構わんということだな?」

 

 

銀髪の美丈夫がそう言った瞬間、リュカに怒気が漲る。

彼にとってとても大事なもの。それを奪おうという発言はとても看過できるものではなかった。

 

 

「ここでお前がそれでもいいと言うのなら、私はお前を斬り捨てただろうな。軽々しくどんな、やなんでも、といった言葉を口にするんじゃない。反吐がでる」

 

「…………すいません」

 

「ふん、解ったのならいい。ーーーー合格だ。お前に強くなる術を授けてやろう。ついてこい」

 

 

そう言って銀髪の美丈夫は歩き出す。

リュカはそれに何の疑問も覚えることなくついていく。

 

 

「そう言えば貴方のお名前は?」

 

「私の名か。私の名はーーーーピサロだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピサロと名乗った男につられてやってきたのは何かの建物の前だった。

ピサロが扉を開け放つと、そこにはリュカにはそこそこ見慣れたものだった。

 

 

「これは、旅の扉…………!」

 

 

それはA地点とB地点を繋ぐゲートのようなもの。

箱庭の外門と違って、好きな門から出ることは出来ないが、それでも利便性の高いものではある。

しかし、この男がこれの存在を知っていたということは、リュカと同じような世界出身である可能性が非常に濃厚になってきた。

繋がっていた場所はただただ広い空間だけがあった。

それなりに明るいが、照明の類が一切見当たらないので、恐らくギフトなり呪文なりが関わっているのだろう。

 

 

「ここでお前に力を授けるが、それに際し幾つか条件がある。それを飲めるのなら渡そう」

 

「条件、ですか…………。ええ、構いません。それで一体どのような?」

 

「俺がお前に出す条件は二つだけだ。一つ目だがーーーー俺と戦ってもらう」

 

 

殺気。

まるで濁流のような殺気がピサロの身から迸る。

リュカはそれを感じ取り、咄嗟に後ろに跳躍し、袋から王家の剣を取り出す。

 

 

「知ってか知らずか、どちらでもいいが剣士に剣で挑むか。では、改めて名乗るとしよう。私はピサロ。魔剣士ピサロだ」

 

 

彼が再び名乗り、袋から剣を取り出す。

だがその剣は、リュカが未だかつて目にしたことがないほど大きく、且つ何処かで見た事のあるような感じの剣だった。

そう、確かカジノの景品になっていたメタルキングの剣と似ている。アレをそのまま大きくすればあんな感じになりそうだ。

 

 

「来ないのならこちらから行くぞ」

 

 

ピサロが大剣を担ぎ、リュカに向かい一気に踏み込んでくる。

そのままの勢いで縦に斬りつけてくる。

リュカはどうにか剣で受け止めるが、その威力に足が地面に減り込む。

足がミシミシと嫌な音をたてる。下手すれば足の骨にヒビが入ってるかもしれない。

だが休む暇をピサロは与えてくれない。

続け様に横から、斜めから、真っ直ぐと剣戟を放ってくる。

それら全てをいなし、躱し、受け止める。

一見リュカに余裕が出てきたようにも見えるが、実際はそうでもない。

それらの動作をするだけで手一杯なのだ。守勢から攻勢に移れない。

それほどまでにピサロの一撃は重く、疾く、鋭かった。

兎にも角にも、一旦態勢を立て直そうと斬撃を弾き、バックステップする。

そこで息つく間もなくリュカは自身に補助呪文を重ね掛けする。

 

 

「ピオラ、ピオラ、スカラ、スカラ、バイキルト!」

 

 

素早さを上げる呪文、防御力を上げる呪文、攻撃力を上げる呪文をそれぞれ唱える。

ピオラはここ最近リュカが覚えた呪文の一つだ。

全体の素早さをほぼ二倍にするピオリムとは違い、こちらは個人の素早さを1.5倍にするものだ。

ピオラ二回でピオリム一回の魔力消費となるので、実の所ピオリム一回掛けるだけの方が面倒は少ない。

だが敢えてピオラを選んだのには理由がある。

リュカは魔物を召喚して戦うスタイルだ。

その際に魔物を呪文で強化させる。が、その場その場に応じて魔物を変える必要が出てくるだろう。

その時に出てきた魔物は、当然ながら強化されていない。だがその魔物のためだけに全体にかかる補助呪文を掛ける。それは無駄が多い。

故に単体に作用する呪文を覚え、今回はそれを使用することで今後のために慣れようとしているのだ。

 

 

「成る程、自己強化か。確かに基本中の基本だな。だが、私の前では無意味と知れ」

 

 

そう言ったピサロが前方に手をかざすと、そこから何かが迸る。

その何かはリュカに掛かっていた補助呪文の効果を全て打ち消し、リュカは元の状態に戻ってしまった。

 

 

「凍てつく波動か…………!」

 

 

凍てつく波動。

相手に掛かっている全ての補助効果を打ち消す技である。

その性質上、ボミエ系やマホトーンなどのこちらが不利になる呪文も打ち消されるが、基本それらの呪文を使えて且つ凍てつく波動を使える者は少ない。

ピサロがどちらかは知らないが、これで状況は振り出しに戻ってしまった。

このままジワジワと削り取られていくのか。それだけは勘弁願いたい。

 

 

「足を止めていてはただの案山子にすぎんぞ」

 

 

再びピサロが接近してくる。

このままでは先程の繰り返しとなってしまう。何か良い手がないものか。

ピサロが迫り来る前に考えに考えて、あることを思いついた。

リュカはすかさずそれを実行する。

 

 

「ピオラ!」

 

 

リュカが唱えたのは先程唱え、無意味と化した補助呪文だった。

だが対象が違った。

対象はリュカではなくーーーーピサロだ。

ピサロが一気に速くなり、リュカに肉薄する。それこそがリュカの狙いだった。

ピサロが大剣を振り下ろそうとするが、大剣の切先はおろか、根元にもリュカの身体はない。

彼の想定よりも速くリュカに近付き過ぎて、振り下ろすタイミングを外したのだ。

リュカは振り下ろされる腕を左手で掴み、右手に持った剣でピサロを貫こうとする。

これで勝負がつけば話が早いが事はそう簡単には運ばない。

ピサロが左足でリュカを蹴り飛ばしたのだ。

お陰でリュカの剣は軽く胸部に刺さる程度に終わった。

 

 

「ゴホッ、ゴホッ…………。凍てつく波動!」

 

 

リュカもまた手から凍てつく波動を迸らせ、ピサロに掛かっていたピオラの効果を打ち消す。

ダメージで言えば明らかにこちらの方が大きいが、回復をしようと思えるほど喰らってはいないので、放置。

 

 

「今のは中々良かったぞ。私の意表をついてくるとはな。では私も魔剣士が魔剣士たる理由をお見せしよう」

 

 

ピサロが大剣を構えると、身体から黒い魔力が滲み出す。

リュカも剣を構える。が、その時には既にピサロの間合いに入っていた。

 

 

「何っ…………⁉︎」

 

 

反応できたのはマグレと言ってもいいだろう。

薙ぎ払われる大剣をリュカは剣の腹で受け止めーーーー切れなかった。

 

 

「ぐぅっ……………⁉︎」

 

 

リュカはピサロの力に耐え切れず、大きく横に吹き飛ばされた。

体勢を立て直すことが出来ずに、地面にぶつかり、少しの間地面と擦れていく。

ようやく止まってからリュカはベホイミを唱え、傷を治した。

急にピサロの力が強くなり、速くなったのは滲み出した黒い魔力が原因だろう。

強くなったのなら、補助呪文かそれに類するものだろうと思い、再び凍てつく波動を放つ。

ピサロは凍てつく波動をマトモに浴びるが、黒い魔力は収まる気配を見せない。

 

 

「補助呪文じゃないのか…………⁉︎」

 

「これはただ魔力を解放しただけだ。そら、まだ終わりではないぞ」

 

 

ピサロが地を蹴る。

ただそれだけの動作なのに、一歩だけで相手の間合いに捉えられる。

それが解ってはいたが、具体的に対策を立てることが出来なかった。

こうなったら、と苦肉の策としてリュカは自らの身体を中心にバギクロスを放つ。

ピサロならばすぐにでも突破してくるだろうが、その突破する時間内に何か考えつく。考えつかねばならない。

 

 

「無駄なことを。真空波」

 

 

ピサロが大剣を一振りすると、荒ぶる風の刃が無数に放たれる。

それはリュカのバギクロスを容易に相殺し、リュカの姿は曝け出された。握り拳をピサロに向けた状態で。

 

 

「メ・ラ・ゾ・ー・マ」

 

 

ピサロに向けた握り拳の指を一本ずつ開くと同時に小さな火球が現れる。

だが見た目が小さいだけでこの火球は、一つ一つがメラゾーマ級の威力である。

 

 

「五指爆炎弾!」

 

 

接近していたピサロに、メラゾーマの実に五倍の威力はある五指爆炎弾が放たれる。

ピサロはそれに向けて自らも呪文を放つ。

 

 

「ドルマドン」

 

 

巨大な暗黒の雷と五指爆炎弾とぶつかり、爆発が起きる。

爆風が、二人の身体を焦がしていく。そんなものは微々たるダメージしかないが、爆風が収まった時、それが次の勝負所となるだろう。

そしてついに爆風が止む。

煙が晴れ、見えたのは未だ黒い魔力を滲ませているピサロにーーーーいつの間にそんな技法を覚えたのやら、紫の魔力を滲ませていたリュカがいた。

 

 

「五指爆炎弾…………とか言ったか。それだけでもそれなりに驚いたが、まさか魔力解放を使えるようになっているとはな」

 

「そうしないと貴方に一方的にやられるだけですからね…………かふっ」

 

 

リュカは咳き込み、口の端から血を流す。

先程の爆風で小さな飛礫でも飛んできて口の中を傷付けられたのだろうか。

それだと咳き込んだ理由がわからないが。

 

 

「やはりな。五指爆炎弾とやらは全くの代償なしに使える呪文ではあるまい?少なくとも今のお前にとっては、だ」

 

「その通りですよ。本に載っていたのを思い出して今ぶっつけ本番で撃ちましたから。下手すれば寿命を縮めると書いてましたが、これがその兆候なんですかね?」

 

 

流れる血を手で拭いつつ、剣を構える。

ピサロもそれに応じ、大剣を構える。

二人は一秒ほどの間睨み合い、お互い同時に駆け出した。

リュカはピサロの左脇腹目掛けて斬りかかる。

それをピサロは大剣の腹で受け止めて、弾き返す。

リュカはその反動を利用し、今度は右側頭部に峰打を叩き込もうとする。

これをピサロは大剣での防御が間に合わないとわかるやいなや、右手だけ大剣から外し、裏拳によって剣を弾いた。

弾かれた剣ごと身体が持っていかれ、体勢を崩す。

そこにピサロの強烈な蹴りが腹目掛けて放たれた。

 

 

「ちぃっ…………!イオラ!」

 

 

リュカはイオラを地面に向かって発動。

威力はともかくとして中規模の爆発が爆風を巻き起こし、それに乗じてピサロの蹴りを回避する。

時間にして五秒にも満たないが、その中で激しい攻防を繰り広げる二人。

距離がまた開き、再び睨み合う形となった。

 

 

「私の動きについてくるか。凄まじい成長ぶりだな。…………では、ある女戦士が使ってた技でも披露するか」

 

 

ピサロは大剣を上段に構え、そこに氷の魔力が集い始める。

魔力が溜りきると、大剣を振り下ろした。

 

 

「ダイヤモンドダスト」

 

 

大剣から放たれたのは、氷の竜巻。

全てを呑み込み、凍らせ、切り刻む暴威の塊。

無視してピサロに突っ込むか?

否、あれは追尾性能があるだろう。

ピサロと氷の竜巻の挟み撃ちだなんて考えたくもない。

ならば迎え撃つのみ。

 

 

「右手にメラゾーマ、左手にバギクロス。合成!唸れ、炎の竜巻!メラゾロス!」

 

 

リュカは呪文同士を合成して新たな呪文として放つ。

先程の五指爆炎弾の時に浮かんでいた考えを実行したのだ。

結果は見事なものだった。

炎の竜巻と氷の竜巻がぶつかり合い、水蒸気が生み出される。

それは視界を覆い、またもや二人の姿は見えなくなってしまった。

 

 

(眼を潰しにきたか。だがこの程度ならば真空波でーーーー)

 

 

 

そう考えていたピサロが、咄嗟に大剣で防御行動をとった。

それから瞬きほどの間に、大剣を伝いピサロに衝撃がはしる。

その衝撃は断続的に金属音を鳴らせながらピサロを水蒸気の外に出させる。

 

 

「風神突きぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

 

ピサロに衝撃を与えたそれは、足元から収縮したバギクロスを放つことにより爆発的な推進力を得て、己の身体そのものを矢となして突撃してきたリュカであった。

 

 

「ぐっ…………!」

 

 

ピサロが眉を顰め、魔力を更に解放する。

そうしなければ、リュカの風神突きに対抗できないのだ。

それに呼応するようにリュカもまた、バギクロスに注いでいる魔力を増幅させる。

矛が勝つか、盾が勝つか。

一瞬の油断が命取りとなる鍔迫り合いが今行われていた。

 

 

「ハァァァァァァァァァ!」

 

「オォォォォォォォォォ!」

 

 

互いに咆哮を発しながら、魔力をガンガン消費していく。

未だ均衡は保ったままであったが、遂にその均衡が崩れる。

 

 

「バイキルトォォォォ!」

 

 

リュカがこのタイミングでバイキルトを発動したのだ。

しかし、これほど素晴らしいタイミングもないと言える。

相手は防御に徹しているため、凍てつく波動が使えない状態にある。

使おうとすれば、片手を外す必要があり、そんなことをしてしまえば一気にリュカの一撃が決まるだろう。

バイキルトの結果、リュカの力が一気に増幅し、ピサロの大剣を弾き飛ばすだけじゃ飽き足らず、ピサロの右胸を貫きそのまま壁まで突き進んで行き縫い付けた。

 

 

「がはっ…………!…………見事、だ…………!」

 

 

口から血反吐を吐きつつも、リュカに賞賛の言葉を贈るピサロ。

急に始まったこの戦いは、一応の終了を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベホマ。…………うむ、傷は癒えたな」

 

 

リュカが剣を抜いた後にピサロは自前の回復呪文を行使し、貫かれた右胸の傷を塞ぐ。

回復呪文が使えるのに、どうして先程までの戦いで使わなかったのかと疑問に覚えるが、今気にすることではないと頭の隅に追いやった。

 

 

「それで、戦いましたがこれで強くなる術を授けてくださるのですか?」

 

「ああ、授けてやるとも。…………だが、お前はこの戦いにおいて新たに札を得た。それでも尚、足りないと言うのか?」

 

「…………ええ、まだ足りません。この程度ではダメなんです。もっと、もっと圧倒的な力でないと…………」

 

 

少しの間考え込むが、リュカは力を欲することを選んだ。

リュカとしては自分はあまりにも弱い存在だと思っている。

だからこそ、力を欲するのだ。

 

 

「ならばこれを授けよう」

 

 

ピサロは懐からオレンジ色に輝く玉を取り出し、リュカに手渡した。

リュカがそれを受け取ると、掌程度のサイズだと言うのに、大瀑布のような力の奔流を感じ取ることができた。

 

 

「これは…………?」

 

「進化の秘法と呼ばれるものだ。それを使えばお前は確実に強くなれるだろう。だがこれの使用に際して条件をつけさせてもらう。戦う前に言っていたもう一つの条件だ」

 

「それは、一体?」

 

「これを使うのならば、覚悟を決めることだ。そうでなければお前はこれに呑み込まれるだろう。少なくとも今回のゲームで使うのは止めておけ。碌なことにならんぞ」

 

「…………わかり、ました。今回のゲームでは使いませんし、使うとしても覚悟を決めます」

 

「うむ。ではな、リュカよ。再び会うことがあるかもしれんな」

 

 

そう言い残してピサロは旅の扉に入り、何処かへと行ってしまった。

暫くしてからリュカはある事に気付き、訝しんだ。

 

 

「僕はあのゲームではリュケイロムとしか名乗ってないのに、どうやって僕がリュカって呼ばれている事を知ったんだ…………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒い風によって身動きが取れない状態となっている白夜叉。

そんな彼女の元に向かう人影が一つあった。

気配を感じ取り、彼女が眼を覚まして人影がいる方を見やると、そこには懐かしい顔があった。

 

 

「久しいな、白夜叉。今回は随分と間抜けを晒したものだ」

 

「やかましいぞ、デスピサロ。そもそも何しに来た」

 

「間抜けなお前を肴にして、この月の下で酒を飲もうと思ってな。あと、デスピサロの名はもう捨てた。今の俺はただのピサロだ」

 

 

ピサロは白夜叉の隣にどかっと座り込み、袋からグラスと酒を取り出して、グラスになみなみと酒を注いだ。

 

 

「って、おま、それはルラフェンの地酒ではないか⁉︎くそっ、動けない私に対する当てつけか⁉︎」

 

「それも多分に含まれているな」

 

 

ゴクッ、と喉を鳴らして酒を胃の腑に収めるピサロ。

その様子を心底悔しそうに見る白夜叉だったが、急に目つきを鋭くしてピサロに訊く。

 

 

「おんし、今まで何をしていた?」

 

「ふむ、範囲が広すぎて答えきれんが、ここに来るまでの間にリュカと戦ってきた」

 

「…………おんし、リュカとはどういった関係だ?親族であるというのは目星がついておるのだが」

 

「私の孫だ。私の一人娘のマーサが人間との間につくった子供だ」

 

「孫だと?つまりお前はエスタークの息子と言うことか。どうしてこうも短期間にエスタークの息子と二回も出会わねばならんのだ」

 

「私以外にも息子がいたのか。まあ、いい。あとは進化の秘法を渡してきた」

 

「おい、おんし…………!あれは不完全な代物であろう⁉︎第二のエスタークを生み出す気か!」

 

「そうなったらあいつはそれまでの輩だったというだけだ。だが私はリュカが進化の秘法で新たな可能性となるのではないかと思っている。白夜叉よ、私の孫をあまりり見くびるな。仮にエスタークのような無差別な破壊を齎す化物になったら、責任を持って私が殺すさ」

 

 

ピサロはグラスを月に翳し、こう言った。

 

 

「我が孫リュカの未来に幸があらん事を」




ピサロおじいちゃーん!

前話でのリュカくん力を欲してたのを早速回収してみました。
っかしいな、本来なら番外編の話だったはずなのに。

で、皆大好きな進化の秘法だよ。リュカくんもいずれこれを使うよ。どんな姿にゲフンゲフンどんな力を手に入れるか、タノシミダナア。

リュカくんがフィンガーフレアボムズ使って吐血してましたが、それだけで済んだのは僥倖ですな。
つーかポップでも最初3発だけだったのにぶっつけ本番で5発出す事に成功してるしね。


長々と書いてもあれだからここいらで失礼つかまつります。
次回更新は未定。執筆速度が向上することを教会で祈っておいてくださいな
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