伝説の魔物使いも箱庭に来るそうですよ?   作:60067

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二週間ぶりの投稿だと思うなー。
今後はもうちょい早めのスペースでできると信じてくだすぇ!


邂逅、白夜叉

「な、なんであの短時間に“フォレス・ガロ”のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか⁉︎」「しかもゲームの日取りは明日⁉︎」「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」「準備している時間もお金もありません!」「一体どういう心算があってのことです!」「聞いてるのですか四人とも!」

 

 

「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」

 

 

「反省も後悔もしていない。あのような下種はこの世からいなくなるべき奴だ」

 

 

「黙らっしゃい!!!」

 

 

誰が言い出したのか、まるで口裏を合わせていたかのような言い訳に激怒する黒ウサギ。リュカに至っては反省すらしていないという始末だ。

それをニヤニヤと笑って見ていた十六夜が止めに入る。

 

 

「別にいいじゃねえか。見境なく選んで喧嘩売ったわけじゃないんだから許してやれよ」

 

「い、十六夜さんは面白ければいいと思っているかもしれませんけど、このゲームで得られるものは自己満足だけなんですよ?この“契約書類”を見てください」

 

 

黒ウサギの見せた“契約書類”は“主催者権限”を持たない者達が“主催者”となってゲームを開催するために必要なギフトである。

そこにはゲーム内容・ルール・チップ・賞品が書かれており、“主催者”のコミュニティのリーダーが署名することで成立する。黒ウサギが指す賞品の内容はこうだ。

 

 

「“参加者が勝利した場合、主催者は参加者の言及する全ての罪を認め、箱庭の法の下で正しい裁きを受けた後、コミュニティを解散する”ーーーーまあ、確かに自己満足だ。時間をかければ立証できるものを、わざわざ取り逃がすリスクを背負ってまで短縮させるんだからな」

 

 

因みにだがリュカ達のチップは“罪を黙認する”だというものだ。それは今回に限ったことではなく、これ以降もずっと口を閉ざし続けるという意味である。

 

 

「でも時間さえかければ、彼らの罪は必ず暴かれます。だって肝心の子供達は…………その、」

 

 

黒ウサギが言い淀む。ガルドの証言通りならば子供達は既に死んでいるからだ。そしてその事実こそがリュカが最も憤る点でもある。

 

 

「そうだ。既に人質はこの世にはいない。その点を責めたてれば必ず証拠は出るだろう。だけどそれには時間がかかる。あのような下種を裁くのにそんな時間はかけたくない」

 

 

リュカもまた子持ちの親だ。自分に置き換えたらどうなるかを考えただけで既に死んでしまった子供達の親の為にも早急に裁きたいと思っている。

…………同様に自分の息子娘ならば人質になったところでどうしようもできないだろうと考えるのもまた事実だが。

 

 

「それにだ、黒ウサギ。僕は全ての親の代表とおこがましくも名乗って参加するわけだがアスカたちは違う。恐らくだが活動範囲内にあのような下種がいること自体が許せないんだと思う。ここで逃がしたらいつかまた狙ってくるとも」

 

「あら、わかってるじゃない」

 

「僕もガルドを逃したくないと思っている。彼のような悪人は野放しにしちゃいけない」

 

 

ジンも同調する姿勢を見せ、黒ウサギは諦めたように頷いた。

 

 

「はぁ〜……。仕方がない人達です。まあいいデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。“フォレス・ガロ”程度なら十六夜さんが一人いれば楽勝でしょう」

 

「何言ってんだよ。俺は参加しねえよ?」

 

「当たり前よ。貴方なんて参加させないわ」

 

 

フン、と鼻を鳴らす二人。黒ウサギは慌てて二人に食ってかかる。

 

 

「だ、駄目ですよ!御二人はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと」

 

「そういうことじゃねえよ黒ウサギ。いいか?この喧嘩はコイツらが売った。そしてヤツらが買った。なのに俺が手を出すのは無粋だって言ってるんだよ」

 

「あら、わかっているじゃない」

 

「…………。ああもう、好きにしてください」

 

 

丸一日振り回され続けて疲弊した黒ウサギはもう言い返す気力も残っていない。

どうせ失う物は無いゲーム、もうどうにでもなればいいと呟いて肩を落とすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばお前子供がいるそうじゃねえか。何歳だ?」

 

「十歳の男の子と女の子の双子だよ。男の子の方はティミーで女の子の方はポピー。どっちも可愛らしい子供だよ」

 

「へえ…………。で、お前何歳なんだ?見た目じゃ俺らとタメ張るくらいに見えるが」

 

 

その疑問は十六夜だけでなく飛鳥も耀も黒ウサギもジンも考えていたことである。

その質問になんでも無い風に彼は答える。

 

 

「ああ、僕は26歳だよ。肉体的な年齢となると18歳になるけども」

 

 

「「「「「26歳⁉︎」」」」」

 

 

リュカが何でも無い風に言ったことが十六夜達には驚きであった。見た目は高校生程度であるにも関わらずその実年齢は26歳。一体何があったのかと考えてしまうレベルである。種族的に長寿な黒ウサギですら驚いてしまう。

 

 

「おいおい、お前の世界はどんな面白いことがあったんだよ教えろよオイ」

 

「別に今は乗り越えているからいいけど、今から話したら“サウザンドアイズ”の閉店時間に間に合わなくなるんじゃないかなあ?」

 

「確かに気にはなりますが、それもそうですね」

 

 

黒ウサギも気になってはいたがそれを押し殺し振り返る。どうやら店に着いたらしい。商店の旗には、蒼い生地に互いが向き合う二人の女神像が記されている。あれが“サウザンドアイズ”の旗なのだろう。

日が暮れて看板を下げる割烹着の女性店員に、黒ウサギは滑り込みでストップを、

 

 

「まっ」

 

「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」

 

 

かけることすら出来なかった。黒ウサギは悔しそうに店員を睨めつける。

流石は超大手の商業コミュニティ。押し入る客の拒み方にも隙がない。

 

 

「なんて商売っ気の無い店なのかしら」

 

「ま、全くです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」

 

「いや普通閉店時間五分前とかに来る僕らの方が異端なんじゃ?」

 

「文句があるのならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」

 

「出禁⁉︎これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ⁉︎」

 

「いやだから閉店時間五分前に来る僕達の方が店側を舐めていると思うんだけど」

 

「なるほど、“箱庭の貴族”であるウサギの御客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」

 

「…………う」

 

 

先程までキャーキャー喚いていたのが一転して言葉に詰まる黒ウサギ。しかしそんな黒ウサギを意にも介さずに十六夜は何の躊躇いもなく名乗る。

 

 

「俺達は“ノーネーム”ってコミュニティなんだが」

 

「ほほう。ではどこの“ノーネーム”様でしょう。よかった、旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

 

ぐっ、と黙り込む。黒ウサギが言っていた“名”と“旗印”がないコミュニティのリスクとはまさにこういう状況のことだった。

 

 

(ま、まずいです。“サウザンドアイズ”の商店は“ノーネーム”御断りでした。このままだと本当に出禁にされるかも)

 

 

力のある商店だからこそ彼らは客を選ぶ。信用できない客を扱うリスクを彼らは冒さない。

全員の視線が黒ウサギに集中する。彼女は心の底から悔しそうな顔をして、小声で呟いた。

 

 

「その…………あの…………私達に、旗はありま」

 

「いぃぃぃやほおぉぉぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギィィィィ!」

 

 

黒ウサギは店内から爆走してくる着物風の服を着た真っ白い髪の少女に抱き(もしくはフライングボディーアタック)つかれ、少女と共にクルクルクルクルと空中四回転半ひねりして街道の向こうにある浅い水路まで吹き飛んだ。

 

 

「きゃあーーーーー…………!」

 

 

ボチャン。そして遠くなる悲鳴。

十六夜達は眼を丸くし、店員は痛そうな頭を抱えていた。

 

 

「……おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?なら俺も別バージョンで是非」

 

「ありません」

 

「なんなら有料でも」

 

「やりません」

 

 

真剣な表情の十六夜に真剣な表情でキッパリ言い切る女性店員。二人は割とマジだった。

フライングボディーアタックで黒ウサギを強襲した白い髪の幼い少女は、黒ウサギの胸に顔を埋めてなすり付けていた。

 

 

「し、白夜叉様⁉︎どうして貴女がこんな下層に⁉︎」

 

「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろに!フフ、フホホフホホ!やっぱりウサギは触り心地が違うのう!ほれ、ここが良いかここが良いか!」

 

 

スリスリスリスリ。

 

 

「し、白夜叉様!ちょ、ちょっと離れてください!」

 

 

白夜叉と呼ばれた少女を無理やり引き剥がし、頭を掴んで店に向かって投げつける。

くるくると縦回転した少女を、十六夜が足で受け止めた。

 

 

「てい」

 

「ゴバァ!お、おんし、飛んできた初対面の美少女を足で受け止めるとは何様だ!」

 

「十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ」

 

 

ヤハハと笑いながら自己紹介する十六夜。

一連の流れの中で呆気にとられていた飛鳥は、思い出したように白夜叉に話しかける。

 

 

「貴女はこの店の人?」

 

「おお、そうだとも。この“サウザンドアイズ”の幹部様で白夜叉様だよご令嬢。仕事の依頼ならおんしのその年齢の割りに発育が良い胸をワンタッチで引き受けるぞ」

 

「オーナー。そへでは売上が伸びません。ボスが怒ります」

 

「わかっておるわ。ほんにおんしの頭は固いのう。…………ん?そこの身形が貧相なおんし、そうおんしじゃ。名前は?」

 

「僕の名前はリュカだけど…………どうして名前を聞いたんだい?」

 

「…………いやちとばかし古い知り合いと似ておったからな。取り敢えず名前を聞いてみたまでじゃ。それはそうとお前達が黒ウサギの新しい同士か。異世界の人間が私の元に来たということは…………遂に黒ウサギが私のペットに」

 

「なりません!どういう起承転結があってそんなことになるんですか!」

 

 

ウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギ。何処まで本気かわからない白夜叉は笑って店に招く。

 

 

「まあ良い。話があるなら店内で聞こう」

 

「よろしいのですか?彼らは旗を持たない“ノーネーム”のはず。規定では」

 

「“ノーネーム”だと分かっていながらも名を尋ねる、性悪店員に対する詫びだ。身元は私が保証するし、ボスに睨まれても私が責任を取る。いいから入れてやれ」

 

 

むっ、と拗ねるような表情を浮かべる女性店員。彼女にしてみればルールを守っただけなのだから気を悪くするのは仕方がない事だろう。女性店員に睨まれながら暖簾をくぐった五人と一匹は、店の外観からは考えられない、不自然な広さの中庭に出た。

 

 

「生憎と店は閉めてしまったのでな。私の私室で勘弁してくれ」

 

 

五人と一匹は和風の中庭を進み、縁側で足を止める。

障子を開けて招かれた場所は香の様な物が焚かれており、風と共に五人の鼻をくすぐる。

個室と言うにはやや広い和室の上座に腰を下ろした白夜叉は、大きく背伸びをしてから十六夜達に向き直る。気がつけば、彼女の着物はいつの間にか乾ききっていた。

 

 

「もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている“サウザンドアイズ”幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」

 

「はいはい、お世話になっております本当に」

 

 

投げやりな言葉で受け流す黒ウサギ。その隣で耀が小首を傾げて問う。

 

 

「その外門、って何?」

 

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいるのです」

 

 

此処、箱庭の都市は上層から下層まで七つの階層に分かれており、それに伴ってそれぞれを区切る門には数時後与えられている。

外壁から数えて七桁の外門、六桁の外門、と内側に行くほど数字は若くなり、同時に強大な力を持つ。箱庭で四桁の外門ともなれば、名のある修羅神仏が割拠する完全な人外魔境だ。

黒ウサギが描く上空から見た箱庭の図は、外門によって幾重もの階層に分かれている。

その図を見た三人は口を揃えて、

 

「…………超巨大タマネギ?」

 

「いえ、どちらかといえばバームクーヘンではないかしら?」

 

「そうだな。どちらかといえばバームクーヘンだ」

 

 

うん、と頷き合う三人。それに対してリュカは、

 

 

「バームクーヘン?それは一体どんな食べ物なんだ?甘いのか?苦いのか?実に気になるな」

 

 

と、こんな場違いな事を考えていた。元の世界で聞いたことのない物だから余計に反応してしまうのだろう。取り敢えず食べ物ということはわかっているらしいが。

 

 

「ふふ、うまいこと例える。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮の部分に当たるな。更に説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は“世界の果て”と向かい合う場所になる。あそこはコミュニティに所属していないものの、強力なギフトを持ったもの達が棲んでおるぞ。まあ、ギフトこそ持たぬが強いこともある魔物なんてのもいるがな」

 

 

呵々と哄笑を上げて二度三度と頷き補足を付け加えながら説明する。魔物を語る時に少しばかり懐かしむ様な顔をしていたがそれも一瞬だけだった。

 

 

「して、一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ?知恵比べか?勇気を試したのか?」

 

「いえいえ、この水樹は十六夜さんが此処に来る前に、蛇神様を素手で叩きのめしてきたのですよ」

 

「なんと⁉︎クリアではなく直接的に倒したとな⁉︎ではその童は神格持ちの神童か?」

 

「いえ、黒ウサギはそう思えません。神格なら一目見れば分かるはずですし」

 

「む、それもそうか。しかし神格を倒すには同じ神格を持つか、互いの種族によほど崩れたパワーバランスがある時だけのはず。種族の力でいうなら蛇と人はドングリの背比べだぞ」

 

 

神格とは生来の神様そのものではなく、種の最高のランクに体を変幻させるギフトを指す。

蛇に神格を与えれば巨躯の蛇神に。

人に神格を与えれば現人神や神童に。

鬼に神格を与えれば天地を揺るがす鬼神と化す。

更に神格を持つことで他のギフトも強化される。箱庭にあるコミュニティの多くは各々の目的のため神格を手に入れることを第一目標とし、彼らは上層を目指して力を付けているのだ。

 

 

「白夜叉様は蛇神様とお知り合いだったのですか?」

 

「知り合いも何も、アレに神格を与えたのはこの私だぞ。もう何百年も前の話だがの」

 

 

小さな胸を張り、呵々と豪快に笑う白夜叉。

だがそれを聞いた十六夜は物騒に瞳を光らせて問いただす。

 

 

「へえ?じゃあオマエはあのヘビより強いのか?」

 

「ふふん、当然だ。私は東側の“階層支配者”だぞ。この東側の四桁以下にあるコミュニティでは並ぶ者がいない、最強の主催者なのだからの」

 

 

“最強の主催者”ーーーーその言葉に、リュカを除く三人は瞳を輝かせた。

 

 

「そう…………ふふ。ではつまり、貴女のゲームをクリア出来れば、私達のコミュニティは東側で最強のコミュニティという事になるのかしら?」

 

「無論、そうなるのう」

 

「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」

 

 

三人は剥き出しの闘争心を視線に込めて白夜叉を見る。だがそんな三人を諌める声を上げる者がいた。

 

 

「落ち着いて三人とも。余程のハンデをつけてくれるのならともかく、ここにいる四人が一斉にかかっても彼女には勝てないよ」

 

 

もちろんリュカである。だがその言葉に問題児三人はカチンとくる。折角闘争心剥き出しにしていたのにそれに水をかけられた気分になったのだ。

 

 

「なんだ?怖気付いたのか?俺らがこいつに負けるとでも?」

 

「そう言ってるんだ。僕達は知り合ったばかりで連携のれの字も知らない。一人司令官役を設けてその命令を素直に聞くのならまた話は違ってくるけど…………君達はそんな聞き分けのいい子供というわけではないのだろう?」

 

「ハッ、当然だ。俺らが素直に命令を聞くいい子ちゃんに見えるか?」

 

 

十六夜とリュカは真っ向から対立しあい互いに剣呑な雰囲気が流れる。

そんな時に高らかな笑い声を上げる者がいた。闘争心剥き出しの三人に視線を向けられていた白夜叉その人だった。

 

 

「ふふ、そこのリュカとやらはどうも私の力がわかっているようだが他の三人はそうではなかろう?丁度いいではないか。私も遊び相手には飢えていたところだからな」

 

 

そう言うと白夜叉は着物の裾から“サウザンドアイズ”の旗印ーーーー向かい合う双女神の紋が入ったカードを取り出し、壮絶な笑みで一言

 

 

「おんしらが望むのは“挑戦”かーーーーーーもしくは、“決闘”か?」




前話でギフトが分かると言ったな?
スマンがありゃ嘘だ。…………いや、マジでさーせん。次話の展開的にここで一旦区切らないと自分がとてつもなくめんどくさかったんすよ。


次話!次話こそギフトが判明すっからね!
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