伝説の魔物使いも箱庭に来るそうですよ?   作:60067

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「ンァッ! ハッハッハッハー! この私ンフンフンッハアアアアアアアアアアァン! アゥッアゥオゥウアアアアアアアアアアアアアアーゥアン! コノワタシァゥァゥ……アー! 私の投稿頻度を……ウッ……ガエダイ!」


ってふざけたところで許されないでしょうがようやく完成しました。


それではどぞー


伝説の魔物使いVS元魔王

「おんしらが望むのは“挑戦”かーーーーもしくは、“決闘”か?」

 

 

刹那、四人の視界に爆発的な変化が起きた。

四人の視界は意味をなくし、様々な情景が脳裏で回転し始める。

脳裏を掠めたのは、黄金色の穂波が揺れる大草原。白い地平線を覗く丘。森林の湖畔。

記憶にない場所が流転を繰り返し、足元から四人を呑み込んでいく。

四人が投げ出されたのは白い雪原と凍る湖畔ーーーーそして、水平に太陽が廻る世界だった。

 

 

「……なっ…………⁉︎」

 

 

余りに異常な光景に十六夜達は息を呑む。

箱庭に招待された時とはまるで違うその感覚は、最早言葉で表現できる御技ではない。

遠く薄明の空にある星は只一つ。緩やかに世界を水平に廻る、白い太陽のみ。

まるで星を一つ、世界を一つ創り出したかのような奇跡の顕現。

 

 

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は“白き夜叉の魔王”ーーーー太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは試練への“挑戦”か?それとも対等な“決闘”か?」

 

 

魔王・白夜叉。少女の笑みとは思えぬ凄味に、息を呑む三人。

“星霊”とは、惑星級以上の星に存在する主精霊を指す。妖精や鬼・悪魔などの概念の最上級種であり、同時にギフトを“与える側”の存在でもある。

十六夜は背中に心地いい冷や汗を感じ取りながら、白夜叉を睨んで笑う。

 

 

「水平に廻る太陽と…………そうか、白夜と夜叉。あの水平に廻る太陽やこの土地は、オマエを表現してるってことか」

 

「如何にも。この白夜の湖畔と雪原。永遠に世界を照らす太陽こそ、私が持つゲーム盤の一つだ」

 

 

白夜叉が両手を広げると、地平線の彼方の雲海が瞬く間に裂け、薄明の太陽が晒される。

“白夜の星霊”。十六夜の指す白夜とは、フィンランドやノルウェーといった特定の経緯に位置する北欧諸国などで見られる、太陽が沈まない現象である。

そして“夜叉”とは、水と大地の神霊を指し示すと同時に、悪神としての側面を持つ鬼神。

あまたの修羅神仏が集うこの箱庭で、最強種と名高い“星霊”にして“神霊”。

彼女はまさに、箱庭の代表とも言えるほどーーーー強大な“魔王”だった。

 

 

「これだけ莫大な土地がゲーム盤…………⁉︎」

 

「如何にも。して、おんしらの返答は?“挑戦”であるならば、手慰み程度に遊んでやる。ーーーーだがしかし“決闘”を望むなら話は別。魔王として、命と誇りの限り戦おうではないか」

 

「…………っ」

 

 

飛鳥と耀、自信家の十六夜でさえ即答できず返事を躊躇った。

白夜叉が如何なるギフトを持つかは定かではない。だがリュカの言ったように勝ち目がない事だけ一目瞭然だった。しかし自分達が売った喧嘩を、このような形で取り下げるにはプライドが邪魔をした。

しばしの静寂の後ーーーー諦めたように笑う十六夜が、ゆっくりと挙手し、

 

 

「参った。やられたよ。降参だ」

 

「ふむ?それは決闘ではなく、試練を受けるという事かの?」

 

「ああ。これだけのゲーム盤を用意出来るんだからな。アンタには資格がある。ーーーーいいぜ。今回は黙って試されてやるよ、魔王様」

 

 

苦笑と共に吐き捨てるような物言いをした十六夜を、白夜叉は堪え切れず高らかと笑い飛ばした。プライドの高い十六夜にしては最大限の譲歩なのだろうが、『試されてやる』とは随分可愛らしい意地の張り方があったものだと、白夜叉は腹を抱えて哄笑をあげた。

一頻り笑った白夜叉は笑を噛み殺して他の二人にも問う。

 

 

「く、くく…………して、他の童達も同じか?」

 

「…………ええ。私も、試されてあげてもいいわ」

 

「右に同じ」

 

 

苦虫を噛み潰したような表情で返事をする二人。満足そうに声を上げる白夜叉。白夜叉はリュカにも問う。

 

 

「して、おんしはどうするのだ?リュカよ」

 

「勿論、“決闘”で」

 

 

リュカの一言に問題児達と黒ウサギに衝撃が奔る。

黒ウサギは今にも気絶しそうなぐらい顔を青ざめさせて、問題児達は先程彼が言ったことと矛盾していることに訝しんだ。

 

 

「おい、どういうことだよリュカ。オマエは自分自身で『勝てない』と明言したんだぜ?なのになんで“決闘”を選んでんだよ」

 

 

十六夜がリュカに問う。十六夜からすれば喧嘩を売った時にリュカに窘められカチンときたがそれが事実だったからリュカの観察眼に一目置いていたのだ。が、勝てないと言った本人が“決闘”を望む。その事に十六夜は疑問を抱き、問題児を代表して聞いた。

 

 

「イザヨイ。僕の発言をもう少し思い出して欲しい。僕は『この四人で挑んでも勝てない。司令官役がいれば話は別』と大体こんな風に言ったはずだ。白夜叉は確かに強い。が、戦い方さえちゃんとしていれば勝てない相手ではないはずだ」

 

「ならオマエは勝てるって言うのか?」

 

「勝てると断言できたら格好いいんだろうけど、未来は不変のものだから断言はできない。ゲームの内容にもよるとしか僕には言えない」

 

 

つまりは負けるかもしれないし勝てるかもしれない。玉虫色の解答に十六夜はムッとなるが、その後にニヤァっと笑い、リュカに言った。

 

 

「そこまで言うなら見せてくれよ。オマエの勇姿ってやつをよ」

 

「わかった。気に入るかどうかはわからないけど、僕の戦い方を見せてあげるよ」

 

「話は纏まったかの?」

 

「ああ。僕は貴女に“決闘”を望む」

 

 

リュカは毅然とした態度で白夜叉に改めて返答する。

白夜叉はその返答に笑みでもって応えた。

 

 

「よかろう!ならば本気と本気でぶつかり合おうではないか!おんしの本気とやらが大言壮語でないことを願うぞ?…………さて、それではおんしとの“決闘”の前におんしらの“挑戦”を済ませるかの。しかしいいゲームはあったものか……………」

 

 

白夜叉が考えていると獣とも鳥ともつかぬけたたましい叫び声が聞こえた。その声を聞き白夜叉は平手に拳をポンと打ちつける。

 

 

「おお、そう言えばあやつがおったの。あやつならばおんしらを試すのに打って付けかもしれんの」

 

 

湖畔を挟んだ向こう岸にある山脈に、チョイチョイと手招きをする白夜叉。すると体長5mはあろうかという巨大な獣が翼を広げて空を滑空し、風の如く四人の元に現れた。

鷲の翼と獅子の下半身を持つ獣を見て、春日部耀は驚愕と歓喜の籠もった声を上げた。

 

 

「グリフォン…………嘘、本物⁉︎」

 

「フフン、如何にも。あやつこそ鳥の王にして獣の王。“力”“知恵”“勇気”の全てを兼ね備えたギフトゲームを代表する獣だ」

 

 

白夜叉がグリフォンの説明をしているそばでリュカは別の事を考えていた。

 

 

(見た目で一番近いのはゴールデンゴーレムかな?アンクルホーンは大分違うだろうし。ゴールデンゴーレムなら浮かんでいるんだけどこのグリフォンとか言う幻獣はどうなんだろう?見た限り立派な翼が付いているからアレで飛んでいると言われてもおかしくないけどそれだけだとジンくんが言っていた事の説明にはならないよな。翼が付いている事がギフトだと言われたらそれまでだけど)

 

 

リュカはグリフォンと言う初めて見る幻獣の特徴を眼で捉え、自分が知る魔物の中でどれに類似しているか考えて、相手のギフトを考察しようとしていた。流石に見ただけの情報だと少な過ぎて考察するには至らなかったが。

 

 

「さて、肝心の試練だがの。リュカを除くおんしら三人とこのグリフォンで“力”“知恵”“勇気”の何れかを比べ合い、背に跨って湖畔を舞う事が出来ればクリア、という事にしようか」

 

 

白夜叉が双女神の紋が入ったカードを取り出す。すると虚空から“主催者権限”にのみ許された輝く羊皮紙が現れる。白夜叉は白い指を奔らせて羊皮紙に記述する。

 

 

『ギフトゲーム名 “鷲獅子の手綱”

・プレイヤー一覧 逆廻 十六夜 久遠 飛鳥 春日部 耀

・クリア条件 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う

・クリア方法 “力”“知恵”“勇気”の何れかでグリフォンに認められる

・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します

“サウザンドアイズ”印』

 

 

 

「私がやる」

 

 

読み終わるや否やピシ!と指先まで挙手をしたのは耀だった。彼女の瞳はグリフォンを羨望の眼差しで見つめている。比較的に大人しい彼女にしては珍しく熱い視線だ。

 

 

『お、お嬢…………大丈夫か?なんや獅子の旦那より遥かに怖そうやしデカイけど』

 

「大丈夫、問題ない」

 

「ふむ。自信があるようだが、コレは結構な難物だぞ?失敗すれば大怪我では済まんが」

 

「大丈夫、問題ない」

 

 

耀の瞳は真っ直ぐにグリフォンに向いている。キラキラと光るその瞳は、探し続けていた宝物を見つけた子供のように輝いていた。隣で呆れたように苦笑いを漏らす十六夜と飛鳥。ただリュカだけが真顔であった。

 

 

(ヨウのギフトは確か動物と話せるモノ。だが恐らくだがそれだけではないだろう。何と言うか、ヨウからは複数の命があるみたいな感じがする。それが何なのかまではわからないが、ヨウはそれを上手く用いてこのゲームはクリアするだろう)

 

 

 

 

 

 

 

 

結果だけ言えばリュカの予想通りとなった。耀は見事にグリフォンを乗りこなし、更にそのギフトまで自分の物としてみせたのだ。耀が他の生き物の特性を手に入れるギフトは後天性のもので白夜叉が大変興味を示していたがそんなのは些細なことだ。

今大事なのはこれから行われるリュカと白夜叉の本気の戦い。双方が本気をぶつけ合い、その上で勝者を決める戦いだ。

 

 

「まず聞いておこうかの。そのような貧相な形で本気で私に勝てると思うのか?」

 

「確かにね。こんな装備では僕の本気とは言えない。僕の本気の格好なら今からお見せするさ」

 

 

そう言ってリュカは腰紐に括り付けていた袋を外し地面に置く。その袋から龍の装飾がなされた杖、太陽のような輝きを放つ冠、光をたたえた盾、そして王者が羽織るに相応しいマントを取り出した。

 

 

「いやちょっと待て」

 

 

取り出したところで十六夜からストップが入る。リュカは何事かと十六夜の方を向く。

 

 

「オマエどうやって収納してたんだよ。なんだその袋。四次元ポケットか?物理法則を完全に無視してやがるぞ」

 

「…………?何を言ってるんだい?袋は全部こんな感じだろう?」

 

「いやまだ大きいのならわからなくはないが、明らかにその袋杖よりも冠よりもマントよりも盾よりも小さいよな?普通入らねえよ」

 

「そ、そうでございますよ!ギフトであるのならともかく、リュカさんの言い方だと誰でも持ってる事になりますよ!」

 

 

黒ウサギも突っ込む。

 

 

「と言っても物心つく前から持ってたからなあ…………。他の人が袋を持ってるかは知らないけど僕の世界の旅人なら全員持ってるんじゃないかな」

 

 

十六夜と黒ウサギはまだ何か言いたそうにしていたが諦めて口を閉ざした。

リュカはそんな二人を不思議に思い、装備を身につけ始める。太陽の冠を頭に被り、王者のマントをその背に羽織り、光の盾を腕に通して、ドラゴンの杖を手に持ち構える。その姿は正しく王者の如き出で立ち。先程のボロ布を纏った彼の姿からは全く想像もつかない身形だった。

白夜叉も雰囲気が変わったのを感じ取ったのか、表情を引き締める。

 

 

「ほう…………!おんしのその姿、まるで一国の王のようだ。いや、正しく王なのかもしれんのう?」

 

「そうだよ。僕はグランバニア国現国王、リュカ・グランバニアだ」

 

「「「「ハァァァァァァァァ⁉︎」」」」

 

 

リュカの言葉に問題児達と黒ウサギが反応する。耀も大声を出して反応しているのが余程信じられないといった証拠なのだろう。

 

 

「ちょちょちょちょっと待ってください!え、リュカさんは王様だったんですか⁉︎」

 

「だったじゃなくて現時点でそうなんだけど…………ああ、そういや言ってなかったっけ?」

 

「聞いてませんよ!アレ、てことは黒ウサギは呑気にも一国の現国王を呼び出してしまったのですか⁉︎」

 

「そうなるねえ。だからさっきまでは僕の国の大臣とかそこら辺は皆慌ててたんじゃないかな。だって目の前で消えられたわけだしね」

 

「だからジェリーだとかいうあの不定形なドロドロしたのを自分に化けさせて向こうに送ったのか?」

 

「そういうこと。影武者は立てとかないとね。国が混乱してしまう。それ以外にも理由はなくはないけどね」

 

「待って。なら貴方は手紙をどうやって手に入れたの?」

 

 

ここで飛鳥が質問する。自分と同じように密室内に封筒があったのか。十六夜のように荷物に飛び込んできたのか。耀のように空から落ちてきたのか。そのような非常識な感じで手紙がきたのならまだ納得できる部分もあるというものだ。

 

 

「差出人の名前が書かれていない手紙が親衛隊所属の兵士を通じて僕のところにきました。因みに中身までは検分させてないけど呪文とかそういうのが仕込まれていないかはちゃんと確認させてます。まさかかかってたのがギフトだとは思わなかったけどね」

 

「うわ…………これは黒ウサギは有罪ね。それよりやも差出人の名前がない手紙をどうして読もうと思ったの?親衛隊がちやんと確認してそんな要素がなかったから安心したってのもあるのでしょうけど」

 

「いい具合に僕の親友に差出人不明にして手紙を出しそうな輩がいるんだよねぇ…………。あ、因みにその親友は王兄殿下だよ」

 

「王兄殿下?普通そういうのは長男がなるもんじゃねえのか?…………ああーいや待て。迂闊だったな」

 

「察しが良くて助かるよ。イザヨイが考えている通り継承に関するイザコザで本来なら王となるはずだったんだけどなれなかったんだ。ま、今はそんなことより白夜叉と本気で戦わせてよ。彼方もやりたくて仕方が無いみたいだし」

 

「ようやく話が終わったか。私が何となく言ったことに反応するなよおんしら。まあ良かろう。さて、では始めるとするかの?」

 

 

白夜叉は耀の時にも出した羊皮紙を取り出し再び指を奔らせる。

 

 

『ギフトゲーム名 “白夜の王と魔物の王”

・プレイヤー一覧 ・リュカ・グランバニア

・クリア条件 白夜叉にマトモに一撃を喰らわせる

・敗北条件 降参か、上記の勝利条件が満たせなくなった場合

 

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します

“サウザンドアイズ印”』

 

 

「このマトモに一撃を喰らわせるというのは?」

 

 

リュカが早速ゲームのクリア条件について訊く。

 

 

「うむ。本気で戦いはするがそれ相応のハンデというものがあるべきと思うてな。私が腕や足で防げずに頭や腹、胸に背に一撃当てさえすればおんしの勝ちとするというわけだ」

 

「なるほど。最初からハンデありの戦いというわけか。まあ僕は勝てさえすればいいから別にいいか」

 

「ほう?おんしもあの問題児どもと同じでハンデを無しにしてくれと言うと思ったのだがのう」

 

「わざわざハンデをくれるんだ。ありがたく貰っておくよ。使えるものは全て使って勝つ。それが人でも物でも場所でも条件でもだ」

 

「その勝利に対する直向きな貪欲さ。実に素晴らしいぞ!では、早速始めるとするかのう」

 

「ああ。さあ、出ておいで。スラりん、ピエール、ゲレゲレ」

 

 

リュカが何らかの名前らしきものを言うと言われた数だけ魔方陣が現れてそこから魔物が現れる。

青い雫のような形状をしたスライムのスラりん。そのスライムが黄緑になったものの上に小さな騎士が乗っているスライムナイトのピエール。黄色い毛皮に黒い斑がいくつもついて背には赤い鬣があるキラーパンサーのゲレゲレだ。

 

 

「あら、可愛らしいのがいるわね」

 

「でもゲレゲレとかいうのは凶暴そうだぜ?お嬢様は喰われちまうかもな」

 

「大丈夫よ。十六夜くんより凶暴なんてそうそういないから。…………あら、耀どうしたの?」

 

「スラりんにピエールとゲレゲレ。彼らとお友達になりたい」

 

「春日部のギフトか。あいつらからは何が手に入るんだろうな」

 

 

と、問題児達は各々好き勝手なことを言っている。

 

 

「兄貴!会いたかったぜ〜!」

 

 

スラりんが急にリュカに飛びかかってくる。リュカは自分の膝ほどもない大きさのスラりんを体全体で受け止め頭を撫でる。

 

 

「ハハハ、ゴメンゴメン。急に異世界に召喚されてしまってたからね。連絡を入れれただけでもだいぶマシだとは思うけど」

 

「いやもう兄貴がいなくなったからオイラも他の魔物の皆も奥方様にティミーとポピーも不安がってたんだ。けどモシャスで兄貴に化けたジェリーが来たから取り敢えずの無事は確認できたってわけさ。で、どんな用でオイラを呼んだんだい?」

 

「向こうを見てみればわかるさ」

 

 

スラりんはリュカが向いている方に自分も体の向きを帰る。すると視線の先には白い髪の見た目は幼く見える女の子がいた。だがスラりんは

 

 

「ははーん。彼奴人間じゃねえな?しかもめっちゃ強いと見える。だけど…………ミルドラース以下だな」

 

「貴方もそう見えましたか、スラりん。この私もかの大魔王ミルドラースよりは弱いと見えました」

 

 

スラりんの言葉にピエールも反応する。下のスライムが喋っているのか上の騎士が喋っているのかは定かではないが。

 

 

「今回君達を呼んだのは彼女と戦い勝つためだ。勝利条件は彼女にマトモに一撃を喰らわせる事。敗北条件は僕達の降参か勝利条件を満たせなくなった場合とあるが…………これはありえないね。ああ、あと最初は君達だけだけど、状況に応じてメンバーを変えるからその気でいてくれ」

 

「了解!兄貴の為なら死中にも飛び込んでやるぜ!」

 

「死んだのを蘇生するのにも魔力を用いるのですよ?なるべく死なないようにしましょう」

 

「グワォォォォォォォォ」

 

 

三者三様の返事を返してくる。リュカはその様子に満足そうに頷き、改めて白夜叉に向き合った。

 

 

「さあ、勝負だ、白夜叉!スラりん!スクルト限界まで!ゲレゲレ!力溜め後攻撃!ピエールは僕と一緒に白夜叉と戦うぞ!」

 

 

彼らは散開し各々の行動を始める。

スラりんは全体守備増強呪文スクルトを唱える。唱える。唱える。ゲレゲレは体を力ませて次の攻撃に備えている。ピエールはリュカと一緒に前に出て白夜叉と対峙した。

リュカはドラゴンの杖で突きを放つ。その突きは真っ直ぐ白夜叉の喉元に吸い込まれそうになったが白夜叉はこれを手の甲で払う事で回避。そこにすかさずピエールが飛び込み手にしている吹雪の剣で斬りかかる。だがそれは足で受け止めた。

 

 

「いいコンビネーションだ。一朝一夕で身に付くものではない。何度も何度も戦いを乗り越えてきた証拠でもある。だがその程度ではまだまだ私には届かんぞ?」

 

 

白夜叉は不敵に笑い、挑発するかの如く手をクイックイッと曲げる。そこに力溜めを終えたゲレゲレが牙を剥き出して襲い掛かる。だがそれすらもしゃがみ込み回避した後アッパーカットでゲレゲレのボディを思い切り打ち上げた。

ゲレゲレは大きく上に飛ばされたが空中で体勢を立て直し地面に着地する。

 

 

「ゲレゲレ、大丈夫か?」

 

「ニャフン」

 

 

ゲレゲレは首肯し白夜叉を敵意を向ける。見た目ほどダメージは喰らってないようだ。

 

 

(ふむ?殺すつもりこそないが意識を刈り取る気はあったのに全く堪えておらんな。あの地獄の殺し屋が装備している防具も一躍をかっているのだろうがそれでも説明がつかぬ。となると…………)

 

 

白夜叉は思案し、自分の一撃がそんなにダメージとして相手に与えられなかったことに考える。そしてスラりんの方を見やる。

 

 

(先程リュカがあのスライムに指示していたスクルトとかいう何か。これが防御力を上げているとみた。しかしだとすると厄介だの。アレの効力がいつ切れるか私にはわからん。まあ、わざわざ防御力を上げているくらいではあるから何れ効力は切れるとは思うのだが。ま、難しく考えても仕方ないかの)

 

 

軽く息を吐くと白夜叉は構えを取る。目標は目の前の一人+三匹。

 

 

「さあ、これをどう対処する!」

 

 

白夜叉は迸る火炎を相手に放った。火炎は直様リュカ達を飲み込み爆炎と化す。

その光景を見た黒ウサギは顔面蒼白になる。

 

 

「リュカさん⁉︎」

 

「落ち着け黒ウサギ。彼奴らは無事だ」

 

 

今にもリュカ達の元に駆け出しそうだった黒ウサギを十六夜が押し留める。黒ウサギはえ?と言った感じで十六夜を見るが十六夜はずっとある一点、リュカ達が爆炎に飲み込まれた場所を注視していた。

 

 

「ケホッケホッ。まったく、太陽の星霊とは言っていたけど炎を操るなんてね。僕の装備とシーザーがいなかったら大変な事になってたよ」

 

 

リュカ達は無事だった。だが先程と変わっている点がある。それはリュカの隣に金色の大きな龍がいること。この龍はグレイトドラゴンのシーザー。何故シーザーを呼んだのかというと

 

 

「いや、ゴメンね?炎ならシーザーが盾には適任だったからさ。炎に耐性があるのは装備で固めた僕とシーザーとあともう何体かいるけどそこまで余裕なかったしなぁ」

 

「成る程。咄嗟に炎に耐性のあるグレイトドラゴンを呼び出しそれを仲間を守る肉の壁となしたか。おんしの装備は装備で大概だがの」

 

「ハハハ。さて、と。ゲレゲレ。いくよ!」

 

 

リュカは一声ゲレゲレに声を掛けてゲレゲレに飛び乗る。騎馬ならぬ騎豹。これでリュカはより速く動けるようになった。

 

 

「さあ、第二ターンの開始だ。スラりん、灼熱!ピエール、イオラ!シーザー、輝く息!」

 

「おうよ、任せな!」

 

 

スラりんは大きく息を吸い込むとそれを一気に炎として白夜叉に噴出した。流石の白夜叉もまさか魔物の中で最弱と確実に言えるスライムがこれ程までの規模の炎を吐けるというのは想定外だったようだ。だが驚きは束の間で済ませ、拳で炎を横薙ぎにする。すると灼熱は雲散霧消した。

 

 

「熱した後は冷やさないとね!」

 

 

次にシーザーが口から輝く白い息を吐き出す。今度は先程のスラりんが放った灼熱の熱気とはベクトルが真逆な冷気。だがそれも拳の横薙ぎで掻き消してしまう。

 

 

「どうした!こんなものではなかろう!」

 

「当たり前!ピエールを忘れてないかい?」

 

 

突如、白夜叉が立っていた場所が爆発を起こす。ピエールが中級爆破呪文を唱えたのだ。だが勝利とはならなかった。白夜叉はガードしつつ、爆風の勢いを利用し大きく後方に下がっていたのだ。

 

 

「中々よい一撃であった。だが惜しいのうまだ届かんぞ?」

 

「いいや。これでいいんだ。時間は稼げたからね」

 

 

そう言ったリュカの手には太鼓があった。この太鼓の名前は戦いのドラム。戦場において味方を鼓舞する為に用いられる太鼓だ。この音色を聞いた味方は攻撃力が二倍となる。

 

 

「さあ、聞けこの音を。そして猛ろ精鋭達よ!」

 

 

リュカは戦いのドラムを打ち鳴らした。味方を昂揚させる音色が辺りに響く。これで取り敢えず今この場にいるリュカ、ゲレゲレ、スラりん、ピエール、シーザーは攻撃力が二倍となった。

音色を聴き終えたピエールが真っ先に白夜叉に斬りかかる。白夜叉は先程と同じ様に剣を止めようとした。だが止められなかった。

白夜叉は余計な体力を使わないタイプだ。相手が攻撃に5を振るなら白夜叉もまた防御に5を振る。つまり余計な力を使わないで必要最低限の力で相手の攻撃をいなすのだ。が、それ故に先程ピエールの剣を足で受け止めたのが仇となった。先程と同じ力で斬りつけてきたと思ったから先程と同じ力で対処しようとしたのに実は二倍になっていた。故に受け止め切れずに体勢を崩された。そこを見逃すリュカではない。ゲレゲレに騎乗したリュカは疾風の如く駆け出し、白夜叉に上から襲い掛かり杖で突こうとした。だがそこは東側最強と呼ばれている白夜叉だ。崩された体勢からでも拳を放とうとする。

 

 

「スラ・ストライク!」

 

 

その白夜叉の脇腹目掛けてスラりんが体当たりを仕掛ける。スラ・ストライクはスライムが限界まで体を伸ばし、それを一気に戻すことにより得られる反動で体当たりをする技である。体当たりと違うところと言えば単純に威力とスピードが段違いというところである。

白夜叉は拳を放つ事を断念し、炎をボンっと自分を中心に出し、その反動で場を脱しつつリュカ、ゲレゲレ、スラりんにダメージを与える。

白夜叉は着地し、息をフウッと吐く。

 

 

「いや、今のは危なかった。スライムナイトの攻撃力が上がったのは先程打ち鳴らした太鼓の効果か?おんしはギフトを大量に持っているのう」

 

「お望みとあらばまだまだ出せるよ。僕が持っている道具はこれだけじゃないからね」

 

 

とリュカはまだまだ手はあるぞ、と言ってみせたが内心はそろそろキツくなってきたと考えていた。

 

 

(参ったな。スラりんのスラ・ストライクでどうにかなると思っていたのに。他にも手はあることにはあるけども果たしてそれは効くのだろうか)

 

「兄貴!考えすぎるのはよくないぜ。俺たちゃ兄貴の命令には従うからよ!偽太后の時の戦いを思い出すなぁ、オイ。あんときゃヘンリーのマヌーサがよく効いてたな」

 

「そうか。ありがとう、スラりん。…………ならシーザーに向かって灼熱。シーザーはスラりんに向かって輝く息だ」

 

「おうよ!いくぜシーザー!」

 

「ガァァァァァァァ!」

 

 

スラりんとシーザーは命令された通りに灼熱、輝く息をお互いに向けて吐き出した。白夜叉はその行動に僅かに眼を見開くがすぐに行動の意味を理解する。

灼熱と輝く息がぶつかり合い、たちまち白い煙が爆発的に出た。

 

 

(上手いな。これは水蒸気か。私の眼を潰そうという魂胆なのだろうが…………)

 

「そうは問屋が卸さんぞ!」

 

 

白夜叉は扇子を懐から取り出し思い切り前方を払う。すると暴風が巻き起こり水蒸気は一気に吹き飛んでしまった。すぐにリュカ達の姿が露わとなるがまた違う点があった。腕が4本、足が4本あるライオンがいたのだ。

このライオンはアームライオンという魔物で彼の名前はアムール。何故アムールを呼び出したのかというと

 

 

「アムール!マヌーサだ!」

 

「任せとけ!オラっ、マヌーサだ!」

 

 

これを唱える為である。

マヌーサとは幻惑呪文。相手に幻惑を見せることで相手のミスを誘う呪文である。勿論、この呪文が必ず効くわけではない。効く時もあるし効かない時もある。ましてやそもそも効かない相手だっているのだ。

だが白夜叉には見事に効いた。

 

 

「なにっ?リュカとその他の魔物が大量におる、だと?成る程、幻影か!」

 

「あ、因みにそれ五感全て騙くらかす幻惑呪文だから眼を閉じたところで無意味だよ」

 

「むぅ、小賢しい!」

 

 

リュカはマヌーサが通じて安心してはいたが慢心はしていなかった。恐らくだがマヌーサが効いたのは白夜叉がマヌーサを今の今まで受けた事がなかったからだ。白夜叉程の実力者なら一回受ければ今後は二度と効かないということになってもおかしくはない。更に言えば本来ならマヌーサが効いた場合は数分は保つものだが白夜叉相手だと20秒保てばいい方だろう。

 

 

「行け!ゲレゲレ、スラりん、ピエール、シーザー、アムール!」

 

 

魔物達を全て攻撃に回す。作戦で言うのならガンガン行こうぜ、だ。

アムールが爪を振り下ろす。ゲレゲレが牙を突き立てる。ピエールが剣で斬りかかる。シーザーが丸太の様に太い尾を叩きつける。スラりんがスラ・ストライクを仕掛ける。

だがそれらの全てを白夜叉は防ぎ切った。途中何も無い場所で拳を振ったり足を上げたりと意味の無い行動をがしていたところからすると恐らく幻影からも攻撃されていてそれも含めて全て防ぎ切ったのだろう。やはり強い。

そうこうしている内にマヌーサの効果が切れる。白夜叉が見えていたであろう幻影は全て消え、残されたのは実体を持つ者だけ。

 

 

「効果が切れたか!ならばらこちらのもの!」

 

 

白夜叉は手始めにスラりんに肉薄した。スラりんは咄嗟に回避行動を取ろうとするが、時既に遅く白夜叉は肉薄しておりスラりんはまず掌打を受けた。吹き飛ぶスラりんの小さな肉体。だがそれが落ちる事を白夜叉は許さない。スラりんが吹き飛ぶスピードよりも速くスラりんに追い付き、アッパーカット。今度は大きく上に吹き飛ばされる。白夜叉、更に追撃。またもや飛ばされるスピードよりも速く跳躍し空中で踵落とし。スラりんは地面に凄い勢いで叩きつけられて二度と起きる気配を見せなかった。

 

 

「まずは一匹」

 

 

白夜叉の無慈悲な宣告。恐らく、いや確実にスラりんは倒されただろう。それが気絶にしろ死亡にしろ。

白夜叉が次にターゲットにしたのはゲレゲレだ。当然、先程スラりんがやられたのでゲレゲレも警戒していた。白夜叉のスピードはゲレゲレと同等かそれ以上。しかしゲレゲレは地獄の殺し屋という異名を持つキラーパンサーとしての本分を大いに発揮した。

それは殺す事。自身が殺しに特化しているからこそ殺される事にも敏感になれたのだ。

白夜叉が攻撃する。それに込められた殺気を感じ取りなんとか避ける。それを繰り返していた。其の間にアムールにシーザー、ピエールが救援に駆けつける。これで四対一だ。数の上ではこちらが有利。だがそれを有利にさせないだけの実力を白夜叉は兼ね備えていた。

ここでリュカはある決断をした。

 

 

「ゲレゲレ!ピエール!アムール!シーザー!スラりんも含めて君達を送還する!代わりに彼等を呼び出す」

 

 

リュカの一言で彼が何をしようとしているのかを魔物達は悟る。ならば後は身を任せるだけだ。

彼等の足元に魔方陣が展開される。彼等はそれによりリュカがいた世界へと送り返される。代わりに別の四体の魔物が呼び出された。

地獄の帝王エスタークの息子(自称)であるプチタークのターク。今でこそ可愛らしい容姿だがかつて彼が物見塔の上で戦い封印しなおしたがうっかり彼が蓋を開けてしまい封印を解いてしまったプオーン。人の上半身に山羊か羊の下半身で全体的に紫の色調で染められているヘルバトラーの○○。スライム系ではあるがかなり大きく黄緑色で王冠を被っているスライムベホマズンのベホズンだ。

その中で白夜叉はタークの存在に驚く。小さいし可愛らしい感じはするが、その容姿はかつて箱庭で破壊の限りを尽くした魔王エスタークに瓜二つであった。その事実に白夜叉は戦慄する。リュカは如何様な方法かは知らないがエスタークに連なる者を仲間としているのだ。それだけで彼のカリスマ性か、或いは力を認めざるを得ない。

 

 

「旦那様。此度の相手はこの星霊でよろしいのですかな?」

 

 

とても丁寧な口調でリュカに話し掛けるのはヘルバトラーのバトラー。旦那様と言うところからして地獄の執事かと問いたくなる。

 

 

「僕が知らなかった星霊の存在をよく知っていたね」

 

「執事の嗜みにございますから」

 

 

どんな嗜みだと小一時間程問い詰めたくなる。

 

 

「さあ白夜叉。これが僕の最強パーティだ。その力をとくとご覧あれ!ターク、プオーン、バトラーは白夜叉に攻撃!タークはプチスラッシュ、プチスパークを使用する事を許可する!プオーンは皆殺しを許可!バトラーは好きな様に動け!ベホズンは皆の体力がかなり減ってきたら適宜回復を!」

 

「え?オイラの技使っていいの?やったー!オイラが早くお父さんみたいになる為の糧となれー!」

 

 

タークは子供の様に嬉々として白夜叉に襲い掛かる。手に持つ双剣に雷を宿しそれを白夜叉に放つ。タークの固有技の一つであるプチスラッシュだ。放たれた雷は地面を砕きながら白夜叉に襲い掛かる。それに対し白夜叉は炎でもって迎撃する。威力は互角なのがタークの恐ろしいところだがその均衡は破られた。タークがもう一方の剣に宿していた雷を放ったのだ。白夜叉が放った炎の威力をアッサリと超え雷が白夜叉に迫る。これを白夜叉は横に大きく跳ぶ事で回避する。だがそこにはいきり立ったプオーンがいた。

 

 

「死にさらせぇっ!」

 

 

プオーンの拳が白夜叉を砕かんとする。白夜叉は相手の攻撃の危険さに気付いたのか今度は後ろに大きく跳ぶ。先程まで白夜叉が立っていた場所にプオーンの一撃が放たれる。

ドゴォーンッ!

プオーンの拳が触れた場所を中心に大きくクレーターが出来上がる。十六夜なら簡単に作れそうなクレーターではあるが特筆すべきはプオーンが封印されていたせいで全盛期の力ではないというところである。全盛期でなくともこの威力。末恐ろしいものであった。

 

 

「おいコラ!私のような美少女を防御ごとぶち殺そうとしただろ!防御していたら今頃死んでおったわ!」

 

「ぬかせ。少女なのは見た目だけでその実数百どころではないだろう貴様の年齢は。それにワシら魔物は殺すか殺されるかの世界だ。貴様の道理を持ってこられても困る」

 

 

リュカは手に持つ杖の力を感じている。この杖はこの世界で言うならば龍造の杖。更に作った龍の力が込められている一品である。今までにこれを使ったのはミルドラースの時しかない。だがこれ以外に手がないのもまた事実。

 

 

「ドラゴンの杖よ!今こそその力を我に宿したまえ!」

 

 

瞬間、リュカから爆発的な閃光が迸る。突然の閃光に背を向けていた魔物達以外は目を細める。目を細めて何とかリュカのシルエットだけは見えたがそれに変化が如実に現れた。人から人じゃない何かに。腕は太くなり、口は裂けて、翼が生えて、尾も生える。閃光がおさまった時にその場にいたのはリュカではなく蒼白の鱗に身を包んだ龍そのもの。

 

 

「オイオイオイオイ。面白い奴だとはわかっていたが…………まさか龍になるなんてな!」

 

「リュカくんが龍に…………?いえ、それよりもなんて神々しいのかしら…………」

 

「リュカの正体は龍…………?なら、リュカと友達になれば龍の力が手に入る?」

 

「リュカさんが龍になってしまったのですよ!箱庭の最強種の一角を担う龍に!」

 

 

問題児と黒ウサギは各々の感想を言う。物騒に聞こえてしまうもの。見惚れているもの。なんか場違いなもの。リュカがなったものに驚愕の声を上げるもの。

そんな事を彼等が言っている中で白夜叉は黒ウサギ以上に驚愕していた。

 

 

(あの姿はマスタードラゴンのものではないか!箱庭の三桁に拠点を構える押しも押されぬ強豪コミュニティ“天空城”の長!だが、マスタードラゴンよりは力を感じないな…………。とすると彼奴の眷属と考えるのが妥当だろう。黒ウサギもまた面白い奴を仲間にしたのう)

 

「さあ、白夜叉。この姿になったからには貴女には確実に勝たせてもらおう。行くぞ!」

 

 

龍となったリュカが白夜叉に強襲する。確かにマスタードラゴンよりは弱いと言えど、リュカの今の力は白夜叉と同等だ。何故なら白夜叉が最強種の星霊と神霊の二つを兼ね備えているのならリュカは龍と神霊の二つを兼ね備えているからだ。少なくとも種族の差は無いも同然だった。

リュカの動きに合わせて魔物達も動く。バトラーは上級爆破呪文イオナズンを。タークは地獄より呼び出した雷を相手にぶつけるジゴスパークのターク版であるプチスパークを。プオーンは激しい稲妻を呼び寄せた。

魔物達の攻撃を躱したり弾いたりいなしたりしていた白夜叉だがそこにリュカの拳が振るわれる。その拳を腕を交差させる事でガードはしたがそのまま大きく上空に吹き飛ばされてしまった。ガードを崩されずにいたのはただの幸運でしかない。

上空に吹き飛んだ白夜叉を噛み砕かんとリュカぎ迫る。ようやく重力に従った落下をし始めた白夜叉はそれを迎え撃たんと両手から炎を出しグングンとスピードを上げながら蹴りを放つ。

リュカの牙と白夜叉の足。それがぶつかろうとした瞬間龍であったリュカの姿が消えた。

 

 

「なんじゃと⁉︎…………グホッ⁉︎」

 

 

驚いた白夜叉の背中に衝撃が奔る。全く予期していない状態での一撃だったから普段よりは効いたがそれで崩された体勢もすぐに元に戻った。いまだ落ち行く中で白夜叉が空を見上げればそこには人の姿をしているリュカその人がいた。

 

 

「僕の、勝ちだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、実に見事!いつの間にやら私の後ろにいたとはな!どうやって私の背後を取ったか訊いても構わんかのう?」

 

「ほとんど一か八かだったけどこれのおかげだよ。ターク」

 

 

リュカが声を掛けるとエスタークの縮小版のようなプチタークのタークがトテトテと手に何かを持って歩いてくる。その何かをリュカは持ち上げ白夜叉に見せる。

 

 

「これは…………?」

 

「ラーの鏡。鏡に映した者の真の姿を映し、その姿に強制的に戻す鏡だ。実は僕の頭にタークがその鏡を持った状態で龍となった僕の頭にしがみついていたんだ。で、白夜叉と交差する際にラーの鏡を僕の眼前に持ってきて僕は元の姿に戻ったんだ」

 

「成る程な。あの時消えたように見えたのは龍だったのが一気に人の姿に戻ったからだったのか。いやはや実に良き戦いであった!久しぶりにこの私も楽しませてもらったぞ!今度もまたやらないか?」

 

「勘弁してくれ。今回は貴女が見た事のない道具や呪文を色々と駆使してからどうにかこうにか勝てたんだ。二度目以降は僕の負けになるよ」

 

「むう、詰まらんな。…………まあ、よい。私とのゲームに勝ったおんしらには何か褒美を与えねばなるまいが…………そう言えば黒ウサギは何用でここに来たのだ?」

 

「あ、ハイ。白夜叉様にギフトの鑑定をお願いしようと思いまして」

 

「よ、よりにもよってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいいところなのだがの」

 

 

そうボヤきつつも白夜叉は四人の顔を両手で包んで見つめる。

 

 

「どれどれ…………ふむふむ…………うむ、四人ともに素養が高いのは分かる。しかしこれではなんとも言えんな。おんしらは自分のギフトを の力をどの程度に把握している?」

 

「企業秘密」

 

「右に同じ」

 

「以下同文」

 

「寧ろ僕にギフトあるの?」

 

「うおおおおい?いやまあ、仮にも対戦相手だったものにギフトを教えるのが怖いのは分かるが、それじゃ話が進まんだろうに。あとリュカ、おんしはキチンとギフトを所持しているぞ」

 

「別に鑑定なんていらねえよ。人に値札を貼られるのは趣味じゃない」

 

「まあ、何にせよ“主催者”として褒美を与えねばならんしな。リュカが私との“決闘”に勝利したからこれを与えても贅沢にはならんだろう」

 

 

白夜叉がパンパンと柏手を打つと四人の眼前に光り輝く四枚のカードが現れる。

カードにはそれぞれの名前と、体に宿るギフトを表すネームが記されていた。

 

 

コバルトブルーのカードに逆廻十六夜・ギフトネーム“正体不明”

ワインレッドのカードに久遠飛鳥・ギフトネーム“威光”

パールエメラルドのカードに春日部耀・ギフトネーム“生命の目録”“ノーフォーマー”

アメジストパープルのカードにリュカ・グランバニア・ギフトネーム“魔を統べる王”“ドラゴンの杖”“太陽の冠”“王者のマント”“光の盾”“袋”“龍神の加護”

 

 

それぞれの名とギフトが記されたカードを受け取る。

黒ウサギは驚いたような、興奮したような顔で三人のカードを覗き込んだ。

 

 

「ギフトカード!」

 

「お中元?」

 

「お歳暮?」

 

「お年玉?」

 

「トランプ?」

 

「ち、違います!というかなんで皆さんそんなに息が合っているのです⁉︎このギフトカードは顕現しているギフトを収納できる超高価なカードですよ!耀さんの“生命の目録”だって収納可能で、それも好きな時に顕現できるのですよ!」

 

「つまり素敵アイテムってことでオッケーか?リュカさまさまだな」

 

「だからなんで適当に聞き流すんですか!あーもうそうです、超素敵アイテムなんです!」

 

 

黒ウサギに叱られながら四人はそれぞれのカードを物珍しそうに見つめる。

 

 

「我らの双女神の紋のように、本来はコミュニティの名と旗印も記されるのだが、おんしらは“ノーネーム”だからの。少々味気ない絵になっているが、文句は黒ウサギに言ってくれ」

 

「ふぅん…………もしかして水樹って奴も収納できるのか?」

 

 

何気なく水樹にカードを向ける。すると水樹は光の粒子となってカードの中に呑み込まれた。

見ると十六夜のカードは溢れる程の水を生み出す樹の絵が差し込まれ、ギフト欄の“正体不明”の下に“水樹”の名前が並んでいる。

 

 

「おお?これ面白いな。もしかしてこのまま水を出せるのか?」

 

「だ、駄目です!水の無駄遣い反対!その水はコミュニティの為に使ってください!」

 

 

チッ、とつまらなそうに舌打ちする。黒ウサギはまだ安心できないような顔でハラハラと十六夜を監視している。白夜叉はその様子を高らかに笑いながら見つめた。

 

 

「そのギフトカードは、正式名称を“ラプラスの紙片”、即ち全知の一端だ。そこに刻まれるギフトネームとはおんしらの魂と繋がった“恩恵”の名称。鑑定は出来ずともそれを見れば大体のギフトの正体は分かるというもの」

 

「へえ?じゃあ俺のはレアケースなわけだ?」

 

 

ん?と白夜叉が十六夜のギフトカードを覗き込む。そこには確かに“正体不明”の文字が刻まれている。ヤハハと笑う十六夜とは対照的に、白夜叉の表情の変化は劇的だった。

 

 

「…………いや、そんな馬鹿な」

 

 

パシッと白夜叉はすぐさま顔色を変えてギフトカードを取り上げる。その雰囲気には尋常ならざるものがあった。真剣な眼差しでギフトカードを見る白夜叉は、不可解とばかりに呟く。

 

 

「“正体不明”だと…………?いいやありえん、全知である“ラプラスの紙片”がエラーを起こすはずなど」

 

「何にせよ、鑑定は出来なかったってことだろ。俺的にはこの方がありがたいさ」

 

 

パシッとギフトカードを白夜叉から取り上げる。だが白夜叉は納得できないように怪訝な瞳で十六夜を睨む。それほどギフトネームが“正体不明”とはありえないものなのだろう。

 

 

(そういえばこの童…………蛇神を倒したと言っていたな)

 

 

生来の神々や星霊ほどではないものの、神格保持者は種の最高位。嵐を呼び寄せるほどの力を持つ蛇神が人間に打倒されるというのは、まずあり得ないことだ。

 

 

(強大な力を持っている事は間違いないわけか。…………しかし“ラプラスの紙片”ほどのギフトが正常に作動しないとはどういう…………)

 

 

ギフトが正常に機能しない。そこで白夜叉の脳裏に一つの可能性が浮上した。

 

 

(ギフトを無効化した…………?いや、まさかな)

 

 

浮上した可能性を、苦笑とともに切り捨てる。

修羅神仏の集うこの箱庭において無効化のギフトなど対して珍しくもない。だが、それは単一の能力に特化した武装に限られた話。

逆廻十六夜のように強大な奇跡を身に宿す者が、奇跡を打ち消す御技を宿しては大きく矛盾する。その矛盾の大きさに比べれば“ラプラスの紙片”に問題があるという結論の方がまだ納得できた。

 

 

「それよかリュカのがスゲえじゃねえか。なんだよ、このギフトの数は。それになんだ?この“魔を統べる王”ってのは。略したら魔王になるじゃねえか」

 

「本当なんなんだろうねぇ。それよりも僕としては袋がギフトだったことに驚きなんだけど」

 

「そりゃ違いねえ」

 

 

 

 

 

 

 

問題児三人とリュカに猫一匹は店前で待ってもらうことにした。待たせている間に白夜叉は黒ウサギと話をする。

 

 

「さて、ここに呼んだのは他でもない。リュカについてだ」

 

「やはり…………リュカさんは魔王なのでしょうか?少なくとも黒ウサギは魔物を意のままにできるのを魔王以外には知りません」

 

「そうだな。だがそれは半分正解で半分不正解だ。正確には魔王の中でも取り分け特別な者しか魔物を従える事はできぬ」

 

「特別な者…………?それは一体…………?」

 

「おんしも名前だけは聞いた事があるだろうが夢幻の王・デスタムーア。魔族の王・デスピサロ。魔界の王・ミルドラース。少々変則的ではあるが、地獄の帝王・エスタークもこれに当てはまる。他にもいるにはいるがこれらが魔物を従える事ができる魔王だ」

 

「確かに聞いた事はありますが…………名前を挙げた魔王には共通点があるのですか?」

 

「如何にも。名前を上げなかったのにもまあ共通点がなくはないのもいるが、取り敢えず名前を挙げた者は全て“魔界”というコミュニティの長だった者だ」

 

「それとリュカさんの関連性は?」

 

「うむ。実は私はデスピサロ…………今はというか元からピサロという名前ではあったがそれと知己でな。リュカはピサロに似ておったのだ。無論、これだけではただの推測でしかなかったのだがな。彼奴のギフトを見て確信した。リュカはピサロの関係者だ」

 

「リュカさんのギフトというと…………“魔を統べる王”ですか?」

 

「ああ。だがそれにもちょっとした違いがあるせいで私自身100%信じているわけではない。本来ならギフトネームは“魔物を率いる王”なのだ。だがそれがあのように変化しているとなると…………寧ろ、リュカの方がそれらの魔王より酷いものとなるやもしれん」

 

 

白夜叉はリュカのギフトを見た瞬間からある種の考えが頭にありそれが離れなかった。実に荒唐無稽な話でありそれが真実だとするならばそれこそリュカはその気はなくとも本気で魔王認定されかねない。

 

 

「彼奴のギフトは…………恐らくではあるが人間以外の種全てに作用するギフトだ。正確には人間にもある程度は効くのだろうがな。その効果には龍も星霊も神霊も例外はない。条件さえ満たせばそれら全てを仲間にする事が可能だろう。更に言うならそれらを強くするというのも含まれているな」

 

「それは…………別にいいのではないですか?戦力増強は何処だってやっておりますし、特に咎められる理由は無いと思いますが?」

 

「あのギフトには“主催者権限”も含まれておるぞ。彼奴がその気になれば無差別にゲームを仕掛ける事も可能と言うわけだ。今はともかく、本格的に星霊や龍なぞを仲間にすれば出る杭は打たれるの理論でリュカは魔王認定されるであろうな。例えどんな悪事も働かなかったとしてもだ」

 

「そんな…………そんなのって…………!」

 

 

黒ウサギは絶句する。出る杭は打たれる。それはつまりいつか無差別に襲う可能性があるからそれまで何もやってなくてもぶち殺す。そう言っているようなものだ。

 

 

「何の話してるの?」

 

 

そんな場に闖入者が現れる。白夜叉と黒ウサギは驚き闖入者の方を見遣るとそこにはタークがいた。

 

 

「そう言えばおんしにも訊きたい事があったな。おんしの身内にエスタークなる者はおるか?」

 

「え?お父さんの事?お父さんはとても立派な魔王だよ!僕もいずれああなるんだ!」

 

 

リュカよりもこの子をどうにかした方がいいかもしれないと思ったのはこの二人だけではないはずだ。

 

 

「まあ、今お父さんら眠っているからリュカとティミーにポピーが今のところ起きている親族って事になるのかなオイラの場合は」

 

「…………待て。今なんと言った?」

 

「え?オイラの場合は?」

 

「違うその前だ」

 

「リュカとティミーにポピーが今のところ起きている親族?」

 

「何じゃと…………。リュカはエスタークの子孫だと言うのか…………!」

 

「?うん、そうなるね。えーっと、曽孫くらいかな?」

 

「…………黒ウサギ。この事は他言無用だ。分かったな?」

 

「アッハイ」

 

 

白夜叉はタークから訊いた事実を他に漏らす事を禁じた。それもそのはず、エスタークは魔物を率いた魔王の中でも特に破壊の限りを尽くした魔王だからだ。それがかなり昔の話だとしてもその名前は未だに知れ渡っており、箱庭においては一桁に入る程の実力者ではないかという話となる。

そんな存在の曽孫。ハッキリ言って当時から生きている者にとっては恨み骨髄に徹している。その恨みはただ親族というだけで向けられる事もあり得るのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く…………黒ウサギも厄ネタを掴ませおってからに。これは黒ウサギには三食首輪付きの生活を送ってもらうしかないのう?」

 

「絶対にNoです!」

 

 

チェッ、と舌打ちする白夜叉。それを警戒した眼差しで見る黒ウサギ。だが両方ともリュカを危険な眼にあわせない事だけを考えていた。

当のリュカはどこ吹く風ではあったが。

 

 

「へっくし!…………うーん、風邪でも引いたかな?」




皆さん正直に答えてください。



長かったでしょ?私もそう思っているから。


ま、まあ、遂にリュカのギフトが判明して色々と謎設定が出ていますけど細けえ事は気にすんな!……気になるのなら答えますけどねー。


あとこの物語は名前とかそういうチョイチョイとした設定は小説版からですが、基本的にはゲームの設定でいきます。つまり子供達を守って死んでしまったガンドフさんはいませんヤッタネ!


一応、今言っておくか。


ザオラル、ザオリクは蘇生呪文としてドラクエでは扱われております。
当作品におきましては条件を満たしているなら蘇るということにします。


①死後一時間以内である事
②死体になるべく欠損がない事
③対象に生きる意思がある事


の三つですね。

①は死後一時間を過ぎてしまうと問答無用で魂がバイバイするから
②は例えばですけど腹にボコっと穴が空いていてその状態で蘇ってもすぐに死ぬよね?って事でなるべく欠損がない事。腕がもげたくらいならOK
③は漫画にあった設定ですが対象に生きる意思がなかったら対象が拒否してしまうんですよねぇ


とまあこんな感じかな。
え?魔力?
バーロー、それは条件じゃなくて当たり前の前提だ!
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