真伝・湊友希那は勇者である   作:悠@ゆー

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始まる"丸亀城の戦い"。無数の星が迫る中、立ち向かう勇者は五人。信頼を武器に勇者達は立ち向かっていく。




信頼-しんらい-

 

 

空を埋め尽くす無数の星々。星の数は、かつて誰も見たことがない程に多い。星々の幾つかは重なり合い、より輝きを増していく。

 

それらは流星のように堕ちて、大地を蝕み、壊していくーー

 

 

これが、リサが受けた神託の全て。意味するものはバーテックスの総攻撃。

 

そしてもう一つ、大社が気にかけていることがあった。

 

"輝きを増していく星"。それがバーテックスの進化を意味するのなら、バーテックスはどこまで強化されるのだろうか。無作為に大型化しているだけなのか、それとも目指すべき"形"があるのか。

 

 

 

 

そして予言された侵攻が起こったのは、神託から半月も経たない頃だった。

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

樹海化によって一変した風景を見下ろしながら、勇者達は丸亀城の城郭に立っていた。海の向こうから、バーテックスの群れが迫ってくるのが確認できる。

 

最早目算でも分からない。マップ全体を埋め尽くす程の量。千や二千といったレベルではない。

 

友希那「まさに無数……と言ったところね…。」

 

前回よりも更に厳しい戦いになる。分かっていた事だが、いざその状況を前にすると、不安を感じない訳はなかった。そんな友希那の額を、香澄が指でつつく。

 

香澄「友希那ちゃん、眉間に皺が寄ってるよ!そんな恐い顔しなくても大丈夫。私達は絶対に勝てるから。」

 

友希那「………そうね。」

 

リーダーである自分が不安を露呈させる訳にはいかなかった。

 

香澄「そうだ、みんなでアレやろうよ!」

 

あこ「あれ?」

 

香澄「みんなで肩組んで輪になって、叫ぶやつ!」

 

燐子「円陣ですね……。」

 

友希那「良いかもしれないわね。」

 

友希那達四人が肩を組んで円陣になる。紗夜はどうすべきか迷っていたが、香澄が手を差し出した。

 

香澄「ほら、紗夜ちゃんも!」

 

紗夜「…………はい。」

 

五人が輪になり、リーダーである友希那が声を上げた。

 

友希那「四国以外にも人類が生き残っている可能性……希望が見つかった。希望がある以上、私達は負ける訳にはいかないわ!この戦いも、必ず勝つわよ!!」

 

勇者達「「「オー!!!」」」

 

勇者達五人の声が重なり合った。

 

 

 

 

 

 

今回の総攻撃に当たり、燐子が考えた作戦は、陣形を使うことだった。勇者達五人を決められた場所に配置して、役割を分担しバーテックスを迎撃する。迎撃の中心は丸亀城。丸亀城周辺は樹海化中も、まだ完全には植物に覆われておらず、見通しが良いためだ。

 

丸亀城の正面・東・西にそれぞれ一人ずつ勇者が立ち、その後方に燐子が待機。残った一人は休憩しておく。前方の三人が襲撃してくるバーテックスを倒していき、討ち漏らした敵は遠距離攻撃に秀でた燐子が仕留める。そして前方の三人の中で、疲労が見えてきた人は、休憩中の一人と交代する。

 

敵の多さから、今回は戦いが長引くのは間違いない。しかし休憩を挟んだローテーションで戦えば、長期戦にも対応が出来る。また、"切り札"は消耗が激しいため、出来る限り使わない。

 

友希那「丸亀城の正面には私が立つわ。」

 

円陣を組んだ後にそう言ったのは友希那だった。

 

香澄「正面はバーテックスの群れの中心だから、きっと一番大変だよ?いいの?」

 

友希那「だからこそ……よ。」

 

紗夜「どうしてです?より多くのバーテックスを仕留めたいからですか?」

 

友希那「違うわ。リーダーとしての責務、そして何よりこの四国の人々を守るためよ。」

 

友希那の答えを聞き、仲間達は表情を緩める。紗夜だけは、まだ少し納得していないようだったが。

 

あこ「分かりました。正面はお願いします!」

 

香澄「無理しないでね、友希那ちゃん。」

 

燐子「では、正面は友希那さん…東側は高嶋さん…西側はあこちゃんがお願いします……。氷川さんは一時待機です…始めましょう……。」

 

指揮官役も兼ねる燐子の声と同時に、勇者達はそれぞれの配置に向かって跳躍した。

 

 

 

 

 

 

友希那は丸亀城の丁度正面にある、市役所の屋上に降り立つ。雪崩の様に押し寄せてくるバーテックス達は、既に海を越えて間近に迫っていた。友希那は敵集団の中心と、真っ向から激突することになる。

 

友希那「絶対に抜かせない………!」

 

刀の柄に手をかける。だが、その瞬間ーー

 

 

 

 

友希那「っ!?」

 

足に何かが纏わりつく感触があった。友希那が足下を見下ろすと、無数の黒い人型の影が、友希那の足首を握り締めていたのだ。人影は怒りと憎悪に顔を歪め、友希那を見つめている。

 

友希那「…………!」

 

体が強張る。この影は、友希那を怒りへと駆り立てる過去そのものーー

 

 

 

 

香澄「友希那ちゃーーーん!」

 

その時、友希那の意識を掬い上げるように大声が響く。声の方向を向くと、香澄が力の限りひ叫んでいた。

 

香澄「落ち着いて行こーーー!!頑張って、リーダーーーー!!」

 

友希那「…………ええ!」

 

再び足下に視線を移す。まとわりついていた黒い影はもう消えていた。バーテックスの群れが市役所に接近すると同時に、友希那は生太刀を抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

友希那が襲撃してきたバーテックスを次々に切っていく。その姿は東側の香澄からも見えていた。

 

香澄「よーし!私も頑張るよ!!」

 

拳を構え、バーテックスに立ち向かう。

 

 

 

 

 

 

 

西側では、旋刃盤を投擲して、あこがバーテックスを次々に屠っていた。

 

あこ「絶好調!友希那さんに負けてられないぞーー!」

 

 

 

 

 

 

正面と左右からバーテックスに立ち向かう。これなら、前回のように誰か一人がバーテックスの集団に取り囲まれることは起こりにくくなる。

 

三人の戦いを丸亀城城郭から見ながら、燐子はホッと胸を撫で下ろしていた。バーテックスとの戦闘は事前のシミュレーションが出来ない為、作戦が上手くいく保証はどこにも無い。だが、今のところは成功している。

 

香澄「燐子ちゃん、ごめん!そっちに一匹行っちゃった!」

 

燐子「任せたください……!」

 

燐子は金弓箭を構え、香澄が討ち漏らしたバーテックスに矢を放った。大量の敵を同時に相手取るのは得意で無いが、攻撃範囲の広さと一匹一匹を確実に仕留められる精密射撃が燐子の強みだ。前線三人の猛攻を逃れたバーテックスを、着実に討ち取っていく。また、後方にいるが故に、燐子は戦況を俯瞰的に見れる。

 

燐子「あこちゃん…地面スレスレの下方から一群が来る!」

 

あこ「りょーかい!あこに任せて!」

 

燐子「香澄さん、前に出過ぎてます…!少しだけ後ろに下がってください…!」

 

香澄「分かった!」

 

状況を見つつ、燐子は時折前線の三人へ指示を出す。ほんの少し臆病な燐子だが、だからこそ状況をよく観察して的確に判断することが出来るのだ。この作戦のお陰で、前回よりも敵の数が多いにも関わらず、勇者達が完全に優勢を保っていた。

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼女達を見ながら、紗夜は焦りを抱えていた。

 

紗夜(こんなところでじっとしているなんて……。)

 

戦わない勇者に価値など無い。紗夜は自分の武器である大葉刈を、強く握り締めた。

 

紗夜(私は……一匹でも多くのバーテックスを殺さないといけないのに………。」

 

燐子「氷川さん。」

 

紗夜の思考を遮るように、燐子が声をかける。

 

燐子「焦ることはありません…この戦いは一人でも欠けたら成り立たないです。すぐに氷川さんが必要になります……。」

 

紗夜「必要………。」

 

その言葉を聞いて、紗夜は少しだけ気持ちを落ち着かせる。

 

紗夜(湊さんが皆さんと足並みを揃えて戦っているんです。私が身勝手な行動を取れば、以前の湊さんと何も変わらない……。)

 

紗夜「大丈夫です、白金さん。焦ってなんかいません。さっきのは、戦いへの意気込みで緊張していただけです…。」

 

自分の役割を忘れてはならない。疲労が見えてきた人と交代した後、確実にバーテックスを仕留めること。今前線で戦っている人達の努力を無駄にしない為にも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三十分程経った頃、初めに動きが鈍り始めたのは、バーテックスの群れと真正面で戦っている友希那だった。恐らく燐子以外であれば気付かない程、ほんの僅かな鈍り方だったが、燐子はそれを見逃さなかった。

 

燐子「友希那さん、交代です!撤退してください…!」

 

友希那「まだ戦えーー」

 

答える寸前に友希那は考え直す。今回は長期戦になる。ここで疲労が大きくなれば、後で支障が出るかもしれない。自分の意地や勝手な考えで、チームワークを崩してはいけない。そして何より、友希那は燐子の判断を信じることにしたのだ。

 

友希那「分かった。紗夜、後はお願い!」

 

紗夜「任せてください!」

 

既に紗夜は友希那がいる市役所の屋上まで移動していた。

 

紗夜「もし、交代を渋るようでしたら……叩いてでも下がらせるところでした。」

 

友希那「ゲームで協力プレーをした時に学ばせてもらったわ。出る時は出る。下がる時には下がる……でしょ?後は頼んだわ、紗夜。」

 

紗夜「ゆっくり休んでてください。」

 

二人はハイタッチをし、友希那は丸亀城へ、紗夜は大葉刈を構えてバーテックスの群れと対峙する。

 

紗夜「来なさい………鏖殺してあげます。」

 

 

 

 

ーーー

ーー

 

紗夜「出来るだけ、高嶋さんを援護してください。」

 

 

ーー

ーーー

 

 

紗夜は前線へ出る際に、燐子にそう伝えていた。香澄は拳が武器であるため、一匹を倒すのにも間近で戦うので本来は集団戦には向いていないのだ。香澄の力だけに頼っていては、防衛網が崩れる可能性がある。

 

燐子は城郭から動けないが、金弓箭でなら遠くからでも香澄を支援出来る。だから燐子は、前線を抜け出たバーテックスの処理に加え、香澄の援護射撃も行う。

 

香澄の背後から喰らい付こうとしたバーテックスの一体を、燐子の矢が射抜く。

 

香澄「ありがとーー!」

 

拳を振るって目の前のバーテックスを倒しながら、香澄が叫ぶ。それと同時に、西側のあこからも声が響いた。

 

あこ「りんりーん!こっちはあこ一人で大丈夫だから、そのまま香澄を援護してーー!」

 

燐子「分かったよ……!」

 

燐子がフォローすれば、香澄ら二人で戦っているのと同じ状況になる。香澄の負担はかなり減るはずだ。

 

香澄「迷惑かけてごめんね!助かってるよ、燐子ちゃん!」

 

燐子「高嶋さんや前線の皆さんを見ているから……私も勇気が持てるんです…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

あこ(香澄を援護しろ………また強がり言っちゃったかな!)

 

そう思いながら、あこは旋刃盤を振るう。香澄に比べれば攻撃範囲は広く集団戦に向いているが、敵の多さを考えればら決して余裕は無い。だが、燐子に香澄を助けるよう言った以上、自分が防衛戦を崩す訳にはいかない。あこの旋刃盤が風を切り、周囲のバーテックスを蹴散らしていった。

 

 

 

 

 

 

 

丸亀城に戻った友希那は次に備え休憩していた。城郭からは、他の勇者達の戦う姿が見える。小さな体で旋刃盤を振るうあこ。リーチ不足を補って懸命に戦う香澄。友希那に替わり最も敵の攻撃が熾烈な正面に立つ紗夜。防衛戦の最終ラインという重責を果たす燐子。そんな仲間達を見ながら、友希那の心は震えていた。

 

友希那(見なさい、湊友希那………あなたの仲間達は、こんなにも頼れるわ。私のすぐ側に、ずっと彼女達はいてくれたのよ。)

 

今の友希那に出来ることは、前線に出る時に備え、仲間を信じて体を休めること。

 

やがて、燐子のサポートも無く戦い続けてきた燐子に、疲労の色が見え始める。

 

燐子「友希那さん、あこちゃんと交代でお願いします……!」

 

友希那「分かったわ!」

 

燐子の指示を受け、友希那があこのいる場所へと跳躍した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「あこ、交代よ!」

 

あこ「友希那さん……あこ、一人で此処を守りきりましたよ…凄いでしょ…!」

 

友希那「ええ、流石だわ。後は任せて休んでなさい。」

 

あこ「はい……流石に疲れました…。」

 

二人はハイタッチを交わし入れ替わる。直後、友希那の目の前にバーテックスの巨体が迫るが、友希那はこれを鋭い一太刀で斬り伏せる。その姿を見て、あこは笑って言った。

 

あこ「友希那さん。友希那さんが後ろで待機してた時、あこはすっごく安心感があったんです。友希那さんがいてくれるから、もしあこが倒れても大丈夫だって。今だって、友希那さんが交代してくれるんだったら心配ないって、安心して休めるんです。」

 

あこは感じていた。強さとは、戦う力だけではない。ただみんなの後ろに立っているだけで、仲間達に安心感を与える。それもまた強さなのだと。

 

友希那「あこが倒れることは絶対に無いわ。」

 

あこ「え?」

 

友希那「…………私がそんなこと絶対にさせないからよ。」

 

刀を振るいバーテックスを次々に斬りながら、友希那は答えた。その答えにあこはまた笑う。

 

あこ「えへへ……そうですね。ありがとうございます、友希那さん。後は任せました!」

 

あこは丸亀城の方へ去っていく。友希那はあこの信頼を背に受けながら、刀を振るい続けるのだった。

 

 

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