真伝・湊友希那は勇者である   作:悠@ゆー

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生存者がいる可能性がある北方の地を目指しながら、各地を調査する勇者達。蹂躙し尽くされた光景を目の当たりにし、彼女達は何を思うのか。




旅路-たびじ-

 

 

 

友希那達勇者五人と、リサは、瀬戸大橋記念公園に立っていた。勇者達は装束を、巫女は巫女服を纏い、各々が大きな荷物を背負っている。

 

あこ「それにしても、四国の外に出るのは何年振りかな?」

 

香澄「私、バーテックスが出てきた時に奈良から移ってきたから三年半ぶりくらいだよ。」

 

燐子「私もあこちゃんに初めて会った時が最後だよ…。」

 

紗夜「私はありませんね。」

 

これから友希那達は、結界の外へ調査遠征な出かける事になっていた。四国から出発し、蘭が守っていた諏訪や、人類生存の可能性が見い出された北海道を目指す。乗り物を使えばバーテックスを引き寄せてしまう可能性があるので、移動手段は徒歩のみだ。

 

勇者達は徒歩でも問題は無いが、リサは巫女であり、身体能力は普通の人間と変わらない。その為、他の勇者達がリサを背負って移動することになっている。

 

リサ「ごめんね、みんな。」

 

香澄「全然気にすることないよ。いつもリサちゃんには、私達が出来ない巫女の仕事をやってもらってるんだから。」

 

リサ「ありがとね、香澄。」

 

友希那「では、行くわよ。」

 

友希那がリサを背負い移動を開始する。

 

 

 

 

 

 

先の大侵攻の後、巫女の神託により、四国の平和はしばし保たれると告げられた。前回の攻撃で、バーテックス側も戦力の大半を失ってしまったのだろうというのが、大社の推測である。

 

敵の攻撃が沈静化している今なら、勇者達が四国を離れることも可能になる。そこで大社は、四国外の地域調査が出来ないかと検討を始める。北海道と沖縄で人類生存の可能性が見つかったことも、理由としては大きい。

 

調査任務を行うにあたり、瀬戸内海にある結界外の小島で実験が行われ、幾つかの事実が判明した。

 

一つ、勇者の力は結界の外でも問題無く使うことが出来る。

 

二つ、結界外の大気は清浄。バーテックスが持つ毒素やウィルスにより汚染されているという噂が広まっていたが、誤りだというのが分かった。寧ろバーテックス出現前よりも、大気の状態は良くなっている。

 

三つ、神の力を織り交ぜた通信により、四国から離れても四国内と連絡を取り合うことが出来る。これはかつて、四国と諏訪の間で行っていた通信技術の応用だ。

 

これらの実験結果により、勇者達が結界外へ出て調査を行う事は可能である、と大社は判断した。また、もしもの為に、神樹から神託を受けられる存在としてリサも同行することが決まる。

 

友希那達の任務は、四国外の環境状態の調査、及び人が生き残っている地域がないかを調べること。生存者を探す地域は、諏訪、北海道、そして各地の主要都市。また、各地で水質や地質調査用のサンプル採取もあり、やることは多い。

 

 

 

 

 

 

友希那達は大橋を渡り、瀬戸内海を越えていく。任務とはいえ、バーテックスの活動が沈静化していることと、前回の勝利もあり、勇者達の気分は明るい。

 

香澄「あこちゃんのアウトドアグッズがあって良かったね!」

 

あこ「でしょー!何でも教えてあげるよ!」

 

燐子「流石だね、あこちゃん……。」

 

紗夜「人は見かけに寄りませんね…。」

 

あこ「紗夜さーーん!」

 

賑やかに進む三人。一方で友希那はリサを気遣いながら進んでいた。

 

友希那「リサ、怖くない?」

 

勇者の移動速度は車以上だ。友希那達は慣れただろうが、リサにとってはジェットコースターにずっと乗っている様なものだろう。

 

リサ「大丈夫。だって友希那がアタシを落としたりする筈無いから。」

 

友希那「…………当たり前よ。」

 

友希那は力強く答えるのだった。

 

 

 

だが、瀬戸大橋も終端に来て、岡山が見えると状況が一変する。臨海部の工業地帯が、最早原型を留めない程に破壊されているのだ。大爆発が起こったのか、建造物の多くは内側から吹き飛ばされている。形を残している建物も、熱によって変形した跡が見られた。

 

友希那達は、無惨な姿になった工場群の中に降り立つ。

 

あこ「酷い………。」

 

人間が築き上げてきたものが、全てバーテックスにより蹂躙されている。リサは友希那から降り、大社への報告用として、デジカメで写真を撮る。

 

友希那「念の為に………生き残りがいないから周辺を探しましょう…………。」

 

友希那達は岡山の工場地帯から、倉敷市内を探索する。跳躍して上空から様子を見たり、歩き回りつつ人気を探す。

 

燐子「街が………これ程までに……。」

 

美しかった街並みも、今や瓦礫の平野と化してしまっていた。

 

 

 

 

 

 

結局、人を見つけることは出来なかった。同時にバーテックスの姿を見かける事なかったので、大社の予測は当たっているらしい。彼女達に、落ち込んで足を止めている時間は無い。

 

友希那「行きましょう……まだ先は長いわ。」

 

 

 

ーーー

 

 

岡山を抜け兵庫に入る。友希那達は、辛うじて形を残しているビルの屋上に降り立ち、神戸の全景を一望する。

 

大都市である神戸も、今はその名残さえ見えない。ビル、民家、道路は殆ど破壊されら淡路島と神戸を繋ぐ明石海峡大橋も崩れ落ちていた。

 

友希那「二手に分かれて調査しましょう。」

 

バーテックスに遭遇した際の危険性は増えるが、時間短縮の為には多少の無茶も仕方ない。

 

じゃんけんにより、友希那・リサ・紗夜と香澄・あこ・燐子のグループに決まる。三時間後に神戸港のフェリー乗り場近くに集合することに決め、それぞれ別方向へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那達は廃墟と化した街並みを歩きながら、生存者の気配を探す。崩れた建物の瓦礫や横転した車が各所で道を塞ぎ、歩き回るのも困難だった。どれほど多くの命が、ここで失われてしまったのだろうか。

 

リサ「生き残ってる人は……いないのかな…。」

 

紗夜「ここも全滅したのでしょう………。」

 

岡山を後にした後から口数が少なくなっていた紗夜が、口を開く。その口調にやるせなさと怒りが滲んでいる。

 

友希那「まだそうと決まった訳じゃない。何処かに避難してる可能性もあるわ。」

 

紗夜「……………。」

 

その時、リサの声が響く。

 

リサ「友希那!紗夜!あれ………!」

 

瓦礫の影に、バーテックスが数体蠢いているのが見えたのだ。友希那はリサを守るように前に立つ。だが、友希那が攻撃しようとするよりも早く、紗夜が大葉刈を大きく振り上げ、バーテックスへ飛びかかっていったのだ。

 

紗夜「お前……達が………!」

 

怒りのままに大葉刈を振るい、紗夜はバーテックスを何度も何度も切り裂いた。

 

友希那「紗夜………。」

 

紗夜の鬼気迫るその様子に言葉をかけることが出来ず、友希那とリサはただ彼女が暴れる様を見ていることしか出来なかった。

 

やがて、全てのバーテックスを殺し終えると、紗夜は呟いた。

 

紗夜「……行きましょう………生きている人を、探さなくては……。」

 

紗夜は俯いたまま歩き出す。その表情は、友希那からは見えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

三時間後、友希那達は待ち合わせ場所のフェリー乗り場まで来ていた。結局生存者は一人も見つからず、遭遇するものと言えばバーテックスのみだった。大群ではなかったが、徒労感がかなり大きい。

 

日が暮れる中、三人は何も話す気がおきず、海を見ていた。沿岸部の船はバーテックスに襲撃されたのか、あるものは船体が半ばで折れ、あるものは傾いて水中に沈んでいる。

 

香澄「友希那ちゃーん!紗夜ちゃん、リサちゃーん!」

 

背後から声が聞こえ、友希那が振り返ると、香澄達がやって来る姿があった。だが、彼女達の表情はあまり明るくない。

 

燐子「私達の方では、生存者は見つけられませんでした……。バーテックスとは何度か遭遇しましたが……友希那さん達はどうでしたか…?」

 

友希那「私達も同じね。それに、今でもバーテックスが彷徨いているのなら、この辺りに人が残っている可能性は……。」

 

そう言って友希那は荒れ果てた神戸を見つめる。沈黙が続く中、それを破ったのはあこだった。

 

あこ「日も暮れてきたし、そろそろ野営する場所を決めましょう!」

 

あこの意図を察したのだろう。燐子も同じ様に振る舞った。

 

燐子「そうだね…お腹も空きましたし…!」

 

二人の姿を見て、友希那も暗い気分を振り払う。

 

友希那(リーダーである私がしっかりしないと。)

 

友希那は周囲を見回し、寝泊まりに使えそうな建物がないか探す。

 

友希那「無事に残ってる建物があれば良いけど……。」

 

香澄「うーん…どれもボロボロで崩れそうだし…。」

 

中々丁度いい建物は見当たらない。そこでまたあこが声を上げる。

 

あこ「待って!野営するなら、綺麗な水がある所じゃないと。あこ達はそんなに沢山の水を持ってきてないですから。」

 

リサ「おー。流石あこ、詳しいね。」

 

あこ「後、焚き火をする為に木の枝を集めやすい所が良いですね……ご飯を作るのに火も必要だし……となると……。あそこまで行きましょう!!」

 

全員はあこの提案で神戸から移動するのだった。

 

 

 

[newpage]

 

 

 

あこが先頭になり、勇者達は六甲山近くのキャンプ場跡へやって来た。既に日は落ち、辺りは暗くなっている。

 

あこ「ここなら、水も確保しやすいし、焚き火の為の木枝だってあります!」

 

キャンプ場の近くには川が流れている。山中だから木枝だって簡単に集められるだろう。友希那達は、念の為にキャンプ場内を隈なく調べてみた。生存者がいないか、使える道具が残ってないかを確認するためだ。

 

辺りは一度はバーテックスの襲撃を受けたらしく、ロッジや施設は破壊されていた。生存者は見つからない。道具に関しては、リサが倉庫の中でキャンプ用のテントを発見した。

 

友希那達は全員で協力してテントを張り、木枝を集めて焚き火を起こした。夕飯は鍋でお湯を沸かし、持ってきたうどんを茹でる。

 

香澄「うん、美味しい!みんなで食べるご飯はやっぱり格別だね!」

 

友希那「そうね。今日は随分酷い光景を見たけれど、こうしてみんなでご飯を食べてると……心が安らぐわ。」

 

今日は、四国の中で見たことの無い、非日常的な破壊された世界を見てきた。しかし、みんなと一緒にご飯を食べるこの時間は、四国にいた時と同じ、友希那にとって大切な日常だった。

 

リサ「友希那ってば、しんみりし過ぎ。」

 

あこ「まだ一日目です!明日は大阪に行って、その後はもっと遠くまで行くんだから、きっと無事な地域だってあるはずです!」

 

友希那「………そうね。」

 

紗夜「………………。」

 

紗夜はうどんを食べながら、無言で夜空を見上げていた。

 

 

 

 

 

 

夕飯を食べ終わると、みんなで川に入って汗を流す事にした。バーテックスが襲って来る可能性も考えて、念の為に見張りは立てておく。見張り役は紗夜が引き受けてくれ、他の五人は川に入った。

 

あこ「ううっ…冷たい!これが夏だったら、もっと楽しいのになぁ……水のかけ合いとかしてさ!」

 

そう言いつつ、あこは香澄に水をかける。

 

香澄「うわっ!何するの、あこちゃん!」

 

あこ「香澄も水、かけてかけて!せめて気分だけでも、楽しもう!」

 

香澄「よーし、分かった!だったら容赦しないよ!」

 

友希那「2人とも元気ね。」

 

二人が活発に遊んでいる一方、友希那達はジッとして水に浸かっていた。

 

リサ「冷たい水に浸かるなら動かない方が良いのに。」

 

燐子「体温を奪われますからね…。」

 

友希那「あんなに動き回るなんて銃撃戦の中に飛び込んでいくようなものーー」

 

その時、3人に大量の水がかかった。

 

リサ「きゃあっ!!」

 

水をかけたのは言うまでもなく香澄とあこである。

 

高嶋「どうせ動いてもジッとしてても同じなんだから。」

 

あこ「みんなもあこ達と楽しもう!!」

 

その言葉にリサが腹黒い笑みを浮かべる。

 

リサ「…ほう。ならば容赦はしないよ?」

 

あこ・高嶋「「………。」」

 

香澄とあこは生唾を飲み込む。

 

リサ「うおりゃー!」

 

水かけバトルにリサと燐子が参戦し戦いは熾烈を極めるのだった。

 

因みに友希那は我関せずの姿勢で眺めている。

 

友希那「みんな元気ね。」

 

友希那がふと目を横にやると紗夜が岩壁にもたれ遠くを眺めていた。

 

友希那「紗夜…。昼間も様子がおかしかったけれど…。」

 

そこへ香澄がやって来た。

 

高嶋「紗夜ちゃん。そろそろ見張り交代するね。」

 

紗夜「ええ…そうね。」

 

高嶋「みんなと水かけ楽しいよ!!」

 

紗夜「私は遠慮します…。」

 

どこか覇気のない声で答える紗夜。そうして紗夜は香澄と交代し、一人離れた所で川に浸かった。

 

友希那(香澄相手にも素っ気ない態度…。心身共に過酷な遠征になりそうね。)

 

 

 

 

 

 

 

 

水浴びを終えた後は、テントの中で睡眠を取る。明日も朝から長距離を移動するので、休息は充分に取っておかなければならない。ただし、見張りは必要なので、交代で二人は起きておくことにした。今は香澄とリサが見張りとして、テント前で焚き火を囲んでいる。

 

香澄「ふぁぁ……今日は神戸で、明日は大阪かぁ。まだまだ先は長いね。」

 

リサ「そうだね。その後は東京、そして北海道。」

 

諏訪は昨年から連絡が途絶えているが、人が生き残っている可能性が高い地域の一つだ。諏訪の状況を確認した後は、更に北方まで足を伸ばす。

 

香澄「リサちゃんは凄いね。勇者じゃないのに、バーテックス相手に全然怖がったりしないし。」

 

リサ「全然怖くないって言ったら嘘になるけど、みんなが一緒にいるから。」

 

香澄「その勇気は勇者級だよ!」

 

ふとリサは香澄に尋ねてみる。

 

リサ「そういえば、香澄は何か勇者として戦う理由があるの?」

 

巫女であり勇者の御目付役の立場でもあるリサは、勇者達の人間関係や精神状態にも気を配っている。彼女達は身体能力や戦闘力こそ人間離れしているが、内面は普通の中学生の少女と同じだ。脆いところや、不安定な部分も多い。

 

しかし香澄は勇者達の中で、いつだって明るく振る舞い、迷いなく戦い続けてきた。人の心は全て知れないけれど、それでも香澄の心の強さは特筆すべきものがある。そんな香澄がどういう思いで戦っているのか、リサは以前から気になっていた。

 

香澄「うーん……理由かぁ。あんまり考えた事無かったけど……。」

 

少し頭を捻った後、香澄は言う。

 

香澄「勇者になって、頑張ってバーテックスと戦ったら人を助けられる。人を沢山助けていけば、少しずつ元の世界を取り戻していけるって思うんだ!」

 

その言葉を聞いて、リサは少しだけ香澄の心を理解出来た気がした。彼女は信じているのだろう。人の力、そして未来を。その揺るぎない気持ちが、香澄の心の強さを使っているのかもしれない。

 

香澄「ううん、もっと本当は簡単な事なのかも。勇者って、何だか格好いいでしょ?戦う理由は、それが一番だよ、きっと。」

 

屈託の無い笑顔だった。香澄と一緒にいると、リサも明るい気持ちになってくるから不思議だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、風によるものとは到底思えない、木の葉のざわめきが聞こえた。

 

リサ・香澄「「っ!?」」

 

二人はすぐに音の原因を探る。

 

リサ「みんな、起きて!!バーテックスが近付いてる!」

 

リサが声を上げると、寝ていた四人が武器を持って出てくる。

 

あこ「バーテックス!?」

 

紗夜「敵………。」

 

紗夜は意識こそはっきりしているが、目が充血していた。恐らく今までずっと起きていたのかもしれない。

 

友希那「休む暇も無いわね……。」

 

勇者達は勇者へと変身する。直後、バーテックスが森の木々を軋ませながら姿を現したのだった。

 

 

 

 

 

 

現れたバーテックスは十体前後。今の友希那達にとっては敵では無い。友希那達はバーテックスを殲滅した後、今日の移動を再開する事にした。一度この場所を嗅ぎつけられた以上、他のバーテックスも寄ってくる可能性があるからだ。

 

 

 

 

 

 

夜明けの冷たい空気の中を、勇者達は飛ぶ様に移動していく。次に目指す場所は大阪である。

 

燐子「そういえば…大阪の梅田駅の辺りは、地下街があるようです……。もしかしたら、そこをシェルターみたいにして避難している人もいるかもしれません………。」

 

友希那「そうね……地下なら、出入り口を封鎖すればバーテックスも侵入出来ない。そこに行ってみましょう。」

 

全員が賛成し、梅田に向かうことになった。人が生き残っている場所可能性がある場所を、しらみ潰しに探す。それ以外に彼女達に出来る事は無かった。

 

 

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