真伝・湊友希那は勇者である   作:悠@ゆー

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怨みは膨らんでいく。一度針を刺せば破裂しそうな程に。

閉鎖的な環境、不満やストレスを抱えた住人達、そして虐げられてきた紗夜と"四国と人々を守る"という役割を持ちながら、それを果たせない勇者の存在。

これは誰のせいでも無い。あまりにも不幸な事に、悪条件が揃ってしまったのだ。




怨嗟-えんさ-

 

 

病院での手の怪我を治療した後、友希那は自分の部屋に帰った。包帯を巻かれた手を見ながら、自分の感情に戸惑う。

 

友希那(紗夜が病院から出て行こうとした時……私は追いかけて何をするつもりだったの………?)

 

あの時、友希那は酷く気が立っていた。リサを踏み躙る紗夜の態度を見て、頭に血が上ってしまったのは確かだ。だが、それでもいつもより冷静さを欠いていた。

 

友希那(あの時、リサが止めてくれなかったら、私は紗夜を傷付けてたかもしれない……。)

 

そう考えると、友希那は背筋が寒くなった。紗夜と口論になってしまったとしても、もっと違う言い方をすれば良かったと、今更ながらに後悔する。紗夜の心が危うい状態だという事は分かっていたのだから。

 

友希那(私自身も……追い込まれているのかもしれないわね…。)

 

感情の自制が出来なくなってしまっているように感じる。良くない兆候だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後の早朝、紗夜は故郷の村へと向かった。両親を丸亀市に移住させる準備が整ったので、迎えに行くためだ。電車の座席に座り、ゲームを起動する。だがいつもの調子が全く出ない。集中出来ず、何度もミスを繰り返す。

 

ゲーム機の電源を切り、目を閉じた。未成年の紗夜が家族と共に暮らすのは自然なことであり、心身の健全な育成のために有効だと大社は考えている。だがそれは紗夜に拠り所を与えるためだろう。その程度の考えは、紗夜でも想像出来る。彼女が精神的な問題で戦えなくなってしまえば、大社は貴重な戦力を失うことになるのだから。

 

紗夜?『大社は道具を失いたくないだけ。あなたのことを思いやっているわけではありません。大社も大人も、誰もあなたの味方ではないんです。』

 

夢の中に出てきた、自分と同じ顔の少女の声。あの日から度々この声が聞こえるようになった。夢の登場人物に過ぎないくせに、現実にまで口を出してくる。

 

紗夜(うるさい…うるさい……。)

 

それとも、この声は現実なのだろうか。夢が現実に続いているのだろうか。自分と同じ姿の少女は夢で現実なのだろうか。今は夢なのか。

 

思考が纏まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜が帰郷した日、リサが慌てた様子で友希那の部屋を訪れた。

 

リサ「友希那!今、大社から連絡があって……!」

 

友希那「何かあったの?」

 

リサ「"切り札"を使う事の影響について、分かったことが……。」

 

リサは珍しく焦りながら、大社から報告されたことを友希那に説明する。

 

友希那、紗夜、そして香澄の検査結果から、精霊を人体に宿す影響について、新たな事実が判明したというのだ。

 

影響には、物理的なものと呪術的なものとがある。前者は、人体の限界以上の力を使うことによって、筋肉、骨格、内臓がダメージを受け、破壊されて行くこと。だが、それは以前から分かっていた。今回判明したことは後者である。

 

リサ「その身に精霊を宿す。人ならざるものと触れ合う。その時、人体には"良くないもの"が溜まる。古来から瘴気とか穢れって呼ばれてるものだよ。」

 

大社の人間は神職の者が多いため、以前から人ならざるものを身に宿すことは危険だと囁かれてきた。しかし瘴気や穢れといったものは、数字で測定出来ない。その為物理的な肉体への負担とは違い、真剣に受け止められていなかったのだ。

 

リサ「だけど、燐子のお陰で大社もそのことに目を向けるようになったんだ。」

 

友希那「燐子の?」

 

リサ「うん。燐子はずっと前から、周りの勇者達を観察して、精霊を使った影響や危険性をノートに纏めてた。そのノートを見て、大社も本格的に呪術的な影響を調べ始めて……。」

 

その燐子のノートは、明日香が遺品整理をしに来た際に、本棚に隠されていた手書きのノート。

 

友希那「そういえば燐子は、最後の戦いでも"切り札"を使うのは危険だと言っていたわ。」

 

燐子は精霊の危険性を、勇者の中で一番強く感じていたのだ。また、"完成型"の出現によって、香澄が"酒呑童子"という強力な精霊をその身に宿した。"良くないもの"の影響は顕著に表れ、大社は精霊の危険性を確信するようになったのである。

 

友希那「その影響はどんなものなの?」

 

リサ「不安感、不信感、攻撃性の増加、自制心の低下、マイナス思考や破滅的思考への傾倒……色々難しい言葉で報告されたけど、結局は心が不安定になって、危ない行動を取りやすいってこと。」

 

友希那「………そう……なのね…。」

 

友希那の感情が不安定になり、苛立ちやすくなっていたのは、精霊の力を何度も使った影響があったのだろう。紗夜の心理的な危うさも、原因の一部は精霊の影響か。今の絶望的な状況に対する不安感のためだけでは無かったのだ。

 

その時、友希那のスマホに着信が入る。画面を見ると、公衆電話からの着信だった。怪訝に思いながら通話を繋ぐ。

 

香澄『もしもし、友希那ちゃん?』

 

声の主は香澄だった。

 

友希那「香澄?一体どうしたの?」

 

香澄『あのね、今病院なんだけど、友希那ちゃんと紗夜ちゃんの事が心配で、でも抜け出せないから!精霊のことで、紗夜ちゃんが電話に出なくて……。』

 

友希那「香澄、落ち着いて。」

 

香澄『ああぁ、ごめんね!えっと、でも急がないと、電話も繋がらなくて!』

 

要領を得ない香澄に友希那が戸惑っていると、リサが電話を替わった。

 

リサ「香澄、まず深呼吸して。大丈夫。病院の電話からかけてるんだね?……うん、アタシも聞いたよ。その事で電話してきたんだね。………そっか、友希那は大丈夫だよ。……うん。」

 

暫く電話で会話した後、リサは香澄から聞いた話を友希那に伝える。

 

リサ「香澄も、病院で精霊の影響について聞かされたみたい。面会謝絶が長引いてるのは、精神的な不安さもある、って。」

 

友希那「そうだったのね……。」

 

いつも明るく前向きな香澄でさえ、人と会うことが難しくなるほどの影響が出てしまう。"切り札"による呪術的影響は楽観視出来ない。

 

リサ「それで香澄は、友希那と紗夜が心配になって電話してきたみたい。」

 

友希那「私は大丈夫よ…今はまだ。」

 

リサ「そう伝えたよ。そしたら香澄は紗夜が心配だって……さっきから紗夜に何度か電話してるみたいなんだけど、繋がらないみたい。」

 

友希那「………っ!」

 

友希那はリサからスマホを受け取り、再び香澄と会話をする。

 

友希那「湊よ。紗夜は今、高知に帰っているわ。」

 

香澄『そうなの?じゃあ、電車の中だから出られないのかな……。』

 

友希那「時間的には、もう実家に着いていてもおかしくないわ。」

 

紗夜の不安定な精神状態。繋がらない電話。悪い予感がした。

 

香澄『私、ずっと病院の中で見張られてて、抜け出せないよ!スマホも無くて!あっ、看護師さんが来た………。』

 

電話の向こうから、人の話し声が聞こえる。どうやら香澄は病院の監視から逃れて、電話をかけているようだ。

 

友希那「いい、香澄?病院を抜け出して紗夜を探すなんて考えないで!あなたも重症を負ってるのよ!」

 

香澄『でも、紗夜ちゃんが……。』

 

友希那「私が行くわ。すぐ紗夜の所に行って、無事を確かめてくるから。」

 

香澄『友希那ちゃん……もし…何かあったら、紗夜ちゃんを助けて。お願い。』

 

縋るような声だった。

 

友希那「ええ。私はリーダーだから!」

 

友希那は電話を切り、すぐに勇者の姿へ変身する。

 

友希那「今から紗夜の所へ行ってくるわ。香澄に頼まれたから。」

 

その言葉だけで、リサは全てを理解してくれた。

 

リサ「分かった。」

 

友希那は窓を開け、跳躍する。丸亀城の敷地を越え、高い建物の屋上を足場にして、高知へと向かう。

 

友希那(たまたま電話の着信に気が付かなかっただけ………それなら良いのだけれど…紗夜…!)

 

 

 

 

 

 

紗夜が村のバス停に着いたのは、友希那が丸亀城を出る少し前。家に帰る前に、紗夜は村を少し見て回ることにした。両親が丸亀市に移住すれば、紗夜がここを訪れることは二度と無いだろう。だから最後の見納めである。

 

布袋にいれた大葉刈を携え、水田の側を歩いて行く。歩きながら、去年帰郷した時の事を思い出す。勇者である自分を賞賛してくれる声、自分の価値を認めてくれる声、自分を愛してくれる人々の声。今の紗夜に必要なものはそれだった。

 

紗夜(村の人達は、きっと私の価値を認めて、愛してくれる………だって、勇者である私が誇らしいと言ってくれたから…だから……。)

 

元々人が少ない村だったが、紗夜はわざと人と出会いそうな道を歩いた。村の人達と出会えば、きっと前の様に駆け寄ってきて声をかけてくれるに違いない。そう思っていた。

 

暫く歩くと、道の向こうから母親と同年齢くらいの女性二人が歩いてきた。だが、彼女達は紗夜に気付くと、ハッとした表情を浮かべた。

 

女性A「あ、氷川様……。帰っていたんですか?」

 

紗夜「ええ……少し用事がありまして…。」

 

女性B「そうですかそうですか。」

 

それだけ言って、二人は紗夜の横を通り過ぎ、去っていった。

 

紗夜(…………え?)

 

自分が想像していた反応とは、まるで違う。賞賛の声も畏敬の念も無く、ただよそよそしさだけを感じる。

 

紗夜(どうして…。)

 

紗夜は少し呆然とした後、踵を返し二人の後を追いかけた。二人の姿を見つけると、何やら話している様子だった。

 

女性A「あの子、戻ってきたのね。」

 

女性B「よくあんな平然としていられるわね……あの子達のせいで人が死んでるのに。」

 

紗夜(………………え?)

 

紗夜は耳を疑う。

 

紗夜(私のせいで、人が死んでる……。)

 

二人は紗夜が追ってきた事に気付いていないらしく、歩きながら話し続ける。

 

女性A「勇者が化け物を倒せないから、怪我人とか死ぬ人も出てくるんでしょ?」

 

女性B「本当にちゃんと戦ってるのかしら?」

 

女性A「さぁ…何処で何をしてるのか分かったもんじゃないし。」

 

女性B「大体、何であの子なのかしら……親もロクなもんじゃないのに…。」

 

紗夜は拳を握り締め、立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜?『ああ、酷いですね。あんなに勇者様、勇者様と言っていたのに、すぐに手のひらを返す。』

 

またあの声が聞こえる。

 

紗夜(うるさい…うるさい………。)

 

紗夜?『味方なんていない。幼い頃を思い出してください。みんな、あなたを傷付ける敵なんです。』

 

紗夜(うるさい……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜は人通りの少ない道を通って早足で家に向かった。途中、何度かスマホが着信したが、出るのが億劫で見ることさえしなかった。

 

実家に辿り着き、居間に入ると、布団に伏している母親と、その傍らには父親の姿があった。

 

紗夜父「帰ってきたのか、紗夜。」

 

その顔は、娘の帰郷を喜ぶ感情など微塵も無く、疲れた様な無表情さで紗夜を見つめていた。

 

紗夜父「母さんは今、薬で眠ってるよ。最近は一日の半分は寝てる。起きて暴れられたら困るから、その方が嬉しいけどね。」

 

淡々と話す父親の言葉を、紗夜は何も言わずに聞いている。そして唐突に、無感情に、父親は呟いた。

 

紗夜父「なぁ、紗夜………冗談だろう?」

 

紗夜「え…?」

 

紗夜父「三人で暮らす?そんな事出来るわけないだろ?母さんはこんな状態だ。一緒に生活出来るわけがない!病院に入れているのが一番安心なのに……なんで今更三人で暮らせだなんて……。」

 

紗夜「それは…大社が決めた事で…。」

 

紗夜父「馬鹿げてる!だけど、引っ越すのは良い。すぐにでもこんな村、離れたいんだ。こんな村!今すぐ出て行ってやる!」

 

父親は苛立たしげに叫ぶ。

 

紗夜「一体何が……。」

 

紗夜父「これを見ろ!」

 

そう言って、紗夜に向かって置いてあった紙の束を無造作に投げ付けた。材質も大きさも不揃いな数十枚の紙が、床に散らばる。そこに書かれていたのは、無数の罵詈雑言の数々だった。

 

 

『勇者は役立たず』

 

 

『クズの娘はクズ』

 

 

『村の恥』

 

 

『お前の娘がもっとちゃんとしていたら』

 

 

『死ね』

 

 

『人を守れない勇者に価値無し』

 

 

『ゴミ一家消えろ』

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「何ですか……これは………。」

 

紗夜は声が震え、目の前が暗くなり、足元がふらつく。

 

紗夜父「毎日毎日、うちに投げ込まれていく!紙だけじゃない、そこに書いてあることはな、陰口でみんなが言っていることだ!村を歩いているだけで蔑まれ、中傷されて……ああ、もうこんな村に住んでいられるか!紗夜、お前のせいだぞ!勇者のくせに負けるから!人を守れないから!クズが!!」

 

紗夜「…………!」

 

元々氷川家は、村の中でも嫌われものだった。しかし、紗夜が勇者になったお陰で村人から敬われる立場になったのだ。それなのにーー

 

 

 

 

 

 

 

紗夜?『勇者が苦戦するようになったら、この様です。』

 

また頭の中に声が響く。そして紗夜は罵詈雑言が書かれた紙の中に、あってはならない言葉を見つけてしまう。

 

 

 

 

 

 

『宇田川あこと白金燐子は無能。税金返せ。勇者なんて無価値!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「……………何ですか、それは…。」

 

あこと燐子は、こんな事を言われるために戦ってきたのか。心身を削り取るようにして戦って、最後には命を落としてーー

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「その報いが………これ……?」

 

 

 

 

 

紗夜?『ふざけてる。』

 

 

 

 

 

紗夜「無価値なのはーー」

 

 

 

 

 

紗夜・紗夜?「『お前達だ。』」

 

 

 

 

 

 

家を出た紗夜は、大葉刈を布袋から出しつつ、道を歩いて行く。

 

紗夜・紗夜?「『勇者の犠牲の上に暮らしているくせに私達のお陰で生きている寄生中のくせに今まで散々頼っておいて状況が悪くなったら手のひらを返して許せない許せない許せない何故褒めてくれないの何故讃えてくれないの何故価値を認めてくれないの何故愛してくれないの価値を認めてくれないなら愛してくれないならーー』」

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「殺してやる。」

 

紗夜は全て理解した。自分と同じ顔をした少女などいなかった。頭の中に直接響く声など無かった。

 

紗夜(これは、私自身の声……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

道の向こうから四人の少女達が雑談しながら歩いてくる。紗夜にとって見覚えのある顔。小学生時代、紗夜を虐めていた少女達だった。

 

彼女達は紗夜に気付き、目を見開いて立ち止まる。前からやって来るのは、人の背丈程の大鎌を持ち、害虫を見るような冷たい目をした少女。人を恐怖させるのには充分だった。

 

少女A「え、な、ひ、氷川さん……?」

 

少女B「鎌……?何それ…え?え?」

 

だが少女達の一人が、自分の怯えを誤魔化すように声を荒げた。

 

少女C「な、何考えてるのよ……!こんな所でそんな刃物持ち歩いて!勇者だから、何でも許されると思ってるの!?バカじゃないの!?」

 

その罵声を紗夜は無言で聞き続ける。仲間の声に勇気付けられたのか、他の三人も紗夜をなじり始める。

 

少女A「自分が特権階級だとでも思ってんじゃないの、役立たずのくせに!」

 

少女B「こんなとこにいないで、さっさと化け物と戦えよ!やっぱアンタは勇者になっても昔のままだな、愚図!」

 

少女D「あんたら勇者が負けるから、被害者が出てるのよ!」

 

紗夜は一切表情を動かさず、ゆっくりと大葉刈を振り上げ、虫でも払うかの様に振り下ろした。

 

余りにも何気ない動作だった。一番前にいた少女の服が胸から腹にかけて袈裟斬りで裂かれ、皮膚に薄っすらと血の線が浮かぶ。

 

少女A「……ひっ、いやあああああっ!」

 

大した傷ではないが、彼女は血に怯え、悲鳴を上げてその場に座り込んだ。

 

少女B「ひいいいいっ……。」

 

一人が踵を返して逃げ出した。だが、逃げる獲物は真っ先に狙われる。紗夜は少女が逃げる先に回り込み、大葉刈の柄で足を打ち払う。

 

少女B「うっ!」

 

彼女は転倒し、地面に突っ伏す。

 

少女B「たっ、助け、お、お願っ、お願い……助けて………!」

 

涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、紗夜に懇願する。紗夜は冷たく少女を一瞥した後、スマホを取り出し勇者へ変身する。そして再び、紗夜は伏せている少女へ目を向ける。

 

少女B「な、なん……た、助け……お、お願いっ…!」

 

紗夜は大葉刈を振り上げる。

 

紗夜「……戦ってみなさい。」

 

少女B「え……?」

 

言葉の意味が分からずキョトンとする少女の頬を、紗夜は斬り付ける。血が一筋流れ落ちた。

 

少女B「ひぁっ!?」

 

紗夜「宇田川さんと白金さんは……命を落としてまで、絶望的な強さの化け物に立ち向かった……。私も…頑張って戦った……。私達を蔑むのなら、あなたも…自分より圧倒的に強い者と、戦ってみなさい!!」

 

紗夜は再び大葉刈を振り上げ、今度は太腿を斬り付けた。

 

少女B「ひいいああっ!?」

 

紗夜「戦いなさい……!戦え……私達の苦しみを、知れ………!」

 

紗夜が振り下ろす度に、少女に傷が増えていく。少女は狂ったように悲鳴を上げるが、紗夜は武器を振るうのをやめない。

 

紗夜は怒りに身を任せる心地良さに酔っていた。自分の心がグズグズと崩れていくような感覚。周りにいる他の三人は、恐怖で立ちすくむか、腰を抜かして座り込んでいる。

 

 

 

そして、遂に紗夜は少女の脳天目掛けて大葉刈を振り下ろしたーー

 

 

 

 

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