クモ行き怪しく!?   作:風のヒト

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 どう頑張っても基本コメディー寄りです。


プロローグ・蜘蛛の話

 僕はその日よりずっと前に生まれた……

 

 でも知識を欲し、今の僕になったその日を……僕は誕生日にしたよ。

 

 僕は人間を食べたこともある。

 ……でもちゃんと、野菜や果物や虫も食べてたよ。

 何せ僕は飛び切りの雑食だからね!

 

 人は賢いけど、群れてなきゃさほど脅威じゃなかった。

 せいぜい罠に誘い込んでいるのかどうかさえ気を付けていればホントにたいしたことはなかった。

 

 

 ……僕の誕生日前まではね。

 

 あの日、僕は一人で森を探索している男と出会った。

 よーく覚えているよ、嫌な感じを全身から出してあの男はたった一人で僕を探していたんだからね。

 しかも僕を見つけて対峙したとき、笑ったんだよ? ニタァって感じでさ。

 

 後に分かったけど、彼はここに住む原住民族から依頼を受けた『ハンター』だったのさ。

 

 話を戻すけど、そのとき笑った男は僕に跳びかかって来たんだよ。

 あれは凄かったねぇ…… なにせ今まで見たことのないようなスピードで、気付いた時には思いっきり頭を蹴られてたよ。

 それからは酷いもんさ、殴る蹴る、肘に膝、掴んで投げたりもう好き放題!

 ああ、死んだなこれって本能的に感じたころ(まぁ、その当時は本能しかなかったけど)

 僕さ…… 見えたんだよね。

 

 

 その男から湯気みたいな、纏っている何かがさ……

 

 で、驚いて飛び退いたんだけどそのスピードがさぁ、その男より明らか速かったんだよ。

 うん、勝った…… 渾身の体当たり一発でけーおーさ、優勝賞品はその男。

 

 でもその後が大変だったね、なにせ男と同じ様な何かを僕自身も出してたんだから。

 力が溢れるけど力が抜けるっていう、訳の分からない状態さ。

 まぁ本能の塊みたいな状態だったからかすぐにコツを掴んで大事にならずにすんだよ、今言うならコツは抗わないで受け入れる感じかな?

 

 アレは楽しかったね、纏えば体は軽く感じるし頑丈になる、極限まで引っ込ませれば誰も僕に気付かなくなって狩りが楽、おまけに疲れも吹っ飛ぶ。

 いつの間にか周りの生き物の気配? っていうのかな? そんなものも感じることが出来るようになったしね。

 

 でも一番はその力を使って僕は初めて『楽しい』と感じて初めて『遊び』をしたんだ。

 

 つまり僕はその日から知的生命体と呼べるに相応しい存在と……

 

 うん、急に難しいことを言ったけど実はよくわかんないんだ…… その日を切っ掛けにたくさんの本を読んだんだぞっていう知的アピールをしたかったんだけど唐突過ぎて失敗しちゃったな。

 とにかくその日は僕が僕になった誕生日さ!

 誕生日プレゼントの知性で僕は今まで毛ほどに興味を持たなかった読書ってやつをしたのさ。

 

 ……最初は絵しか分かんなかったけどね、でもでもこっそり学校覗いて勉強したから字も覚えたし数学もバッチリさ!

 

 幾ら気配を消せるとはいえ、こんな異形の巨体がよく学校なんかをこっそり覗けるなぁ、とかそんな疑問があるかもしれないね。

 

 そこは僕の不思議能力の出番さ!

 僕はここにいながら世界中に散った僕の分身達を通して世界中を見ることができるのさ!

 ……その代わりとても弱い上にあっという間に成長して塵も残さず死んじゃうんだけどね。

 

 そんな欠点を秘めているけど、僕はこの能力【ともだちの輪】(ワールド・ワイド・ウェブ)をとても気に入ってるんだ。

 

 ……友達いないし、能力の媒体も自分の生んだ『分身』じゃん、と常々思うけどね。

 

 ま、そんなことはともかくとして、僕はこの能力によって学校で勉強したり、都会に行った気分で一人孤独にシティー派気取って森の愉快な動物相手に優越を感じたり、どっかの国やらマフィアやらの機密情報を聞いてその証拠文献を書いたりとかもう世界も夢も広がりまくりって奴さ!

 

 ……そうだ

 

 ……やっぱり唐突だけど僕の夢が何か聞いてくれるかい?

 よく考えなくても君に拒否権ないし、そもそも君が話を聞いているのかどうかも微妙に怪しーからなぁ…… 勝手に喋るけども。

 

 どのみち僕の夢を語って、あと二言三言でこの長い長い自分語りとも、子に昔話を聞かせる親の様な光景ともとれるコレも終わるんだ、時間的にも丁度良いや。

 

 さて、僕の夢の話だけども……

 僕の夢はね、一人どころか一匹の僕には叶えることが非常に難しいものなんだよ。

 

 『友達』をつくること、それが僕の叶えられなかった夢さ!

 

 ……何だかどこかで僕の事を哀れな目で見ている存在がいる気さえしてくるほど、僕の夢ってアレだなーって思ったよ。

 長い間考えたけど、こればっかりは能力が使えるようになったあの時みたいに、第三者が介入して突然変異を起こすことぐらいしないと無理と悟ったさ。

 

 何せ空腹を感じたら理性も何もかも吹き飛ぶからね。

 ここだけ他の野生動物でも滅多にないほどのワイルドな種族的特徴を有しているってのもなー。

 しかも種族的って言ったけど、そもそも僕って能力云々以前に生まれた時点で突然変異してる個体らしいんだよね。

 

 ……もしかしたら、お腹減った時に考える事さえ放棄するのって僕だけのモノかも。

 

 うわー、そう考えたらなんか凹むなぁ……

 頼むから君はこうならないでくれよ?

 

 

 

 じゃあ、最後に君のことを赴くままに語ってみるかな?

 

………

……

 

 まず、ありがとう。

 君にしてみれば偶然さ、ただそれだけ。

 でもね? あの日、僕の前に出来たあの『裂け目』

 そこから見えた途方もなく遠い所、もう閉じてしまったあの場所。

 君と過ごした時間は短いどころの話じゃないけど……

 『友達』になってくれてありがとう。

 

 こんな『化け蜘蛛』の願いを叶えてくれてありがとう!

 

 そして、ごめんなさい……

 

 救うためとはいえ、人として生きられる可能性を奪ってしまって。

 

 僕のもう一つ、とっておきの能力。【蜘蛛の糸】(カンダタ・ロープ)

 

 【蜘蛛の糸】(カンダタ・ロープ)……

 遠い場所で読んだ本を基にした能力。

 分身の糸が届くなら、僕の『友達』を…… 救う能力

 

 僕の命と、友達からの半分を代償に発動する他人の意見を求めない身勝手な能力!

 

 友達が対象なのに、発動にその友達の許可不必要で勝手に代償として色々奪うところが、僕の人生のすべてをかけても友達が出来ないことを暗に示していると思うよ。

 最後まで僕の能力は名前負けだったね。

 

 ああ、もう足の感覚さえ無くなってきた…… 目も霞んできたよ……

 

 面と向かってごめんなさい、って言いたかったなぁ……

 

 君にありがとうって言いたかったなぁ……

 

 君とお喋りしたかったなぁ……

 

 僕の……

 

 友、達

 

 

 

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