あの日見たエアロシャークの強さを僕達はまだ知らない 作:魔導
俺こと
なんでもハートランド学園内で後輩のくせに幅を利かせてる俺を見て腹が立ったからデュエルしろということらしい。
たまにこう言ったいちゃもんを凌牙につけてくる輩は一定数存在する。しかし、そういう時は大体適当にあしらったり、新作デッキの実験台にしている。今回も新作デッキの相手をしてもらおうと呑気に考えていた。
凌牙と男子生徒がいざこざを起こしているのに気づき、辺りの生徒たちがその騒動に注目し始めた。
「そういえばお前、全国大会で失格処分を受けたらしいじゃねえか。あぁ?」
「それがなんだよ?」
以前、凌牙はデュエルモンスターズの全国大会で相手のデッキを盗み見てしまい、失格処分を受けたことがある。
男子生徒はどうやら凌牙が全国大会で失格処分になったことを引き出して、少しでも優位な状況に立とうとしているようだった。
しかし、凌牙もそんなことは気づいているので全く気にするそぶりも見せずにそのままデュエルでもしようと考えていた。
その様子が気に入らなかったのだろう。
「どうせ今までのデュエルも全部イカサマなんだろ」
……言ってはいけないことを言ってしまった。
凌牙はデュエルモンスターズに対する熱意は人一倍ある。特にあの動画を見てからは手を抜いたことなどない。
にも関わらず、その全てを見ず知らずのやつに言われるのを見過ごすことはできなかった。
……凌牙から出る雰囲気が変わった。
「下手に出てりゃいい気になりやがって。いいぜ今日は使う気はなかったが……」
そう言って手に持っていた新作デッキをデッキケースにしまい。新たなデッキを取り出した。
すると辺りの生徒達がざわめき出した。
「もしかしてあのデッキは!」
「やべえ、本気のシャークが見られるぞ!」
「おい、今どこだよ。シャークさんのエアロシャークコンボが見られるぞ」
生徒達は様々な行動をするものばかりだった。ある人は驚愕していたり、ある人は他の生徒に電話をかけて呼び出しているようだった。
「……一体なにが起こってるんだ」
あまりの異様な光景に男子生徒は飲み込まれているようだった。
「いいぜ先輩、先行後攻どっちがいい?」
突然声をかけられビクッとなってしまった。その時、男子生徒は自分が動揺していることに気づいた。
自分から動かないと俺は……、あいつに喰われる。
男子生徒はその時、足元までサメに群がられいるような錯覚を覚えた。
少しでもこの流れを変えなければ……。
「お、俺は先輩だからな。先行は譲ってやるぜ」
虚勢を張ったつもりだったのだろう。しかし、この言葉を男子生徒は後悔することになる。
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D・ゲイザーとデュエルディスクを両者がセットし終え、
0と1で空間が構築され、ARビジョンのリンクが完了した。
「「デュエル!」」
「先行は頂くぜ、俺のターン!」
凌牙はニヤリと笑った。男子生徒は一種の気味の悪さを感じた。
「俺は<アーメイル>を召喚!」
「なに⁉︎ 攻撃力700だと」
凌牙が召喚したのは、攻撃力700の通常モンスターだった。お世辞にも強いとはいえないカードであることは明白だった。
「くそっ、舐めやがって」
男子生徒は苛立ちを見せたようだったが、凌牙にとってはその反応も織り込み済みだったのだろう。
「そう思い込むのは早いぜ、俺は<馬の骨の対価>を発動! フィールド上の<アーメイル>を墓地に送りデッキからカードを2枚ドローする」
『そういうことか、だか<アーメイル>なんかよりも強いカードなんて沢山あるはずだ。やはり舐めているのか?』
確かに<馬の骨の対価>を発動するだけならば<アーメイル>である必要はないだろう。男子生徒がそう考えるのも無理はない。
「俺はカードを2枚セットしてターンエンドだ」
「モンスターゾーンがガラ空きだと? へっ、後悔すんじゃねえぞ。俺のターンドロー! 俺は<切り込み隊長>を召喚! そして効果発動! 手札から<闇魔界の戦士ダークソード>特殊召喚! どうだ、お前の攻撃力700のモンスターなんかとは格が違うんだよ」
確かに、モンスターの攻撃力は<切り込み隊長>の攻撃力1300と<闇魔界の戦士ダークソード>の攻撃力1800比べれば大きな差がある。
「バトルだ! <切り込み隊長>と<闇魔界の戦士ダークソード>でダイレクトアタックだ! くらえ!」
「っく!」
神代凌牙LP:4000→900
凌牙は伏せカードも発動せずにダイレクトアタックを受けた。
「はっ! やっぱりイカサマだったんじゃねえか、弱すぎだぜお前」
男子生徒は思ったよりも手応えがなく、思ったよりも簡単に勝てそうだと笑いが顔から滲み出ていた。
また、自分の勝利を確信していた。それは何故か。男子生徒の手札がかなり良かったからである。
『<聖なるバリアーミラーフォースー>に<魔法の筒>が手札にあるとか最強すぎるだろ。こんなの負けるほうがバカだぜ!』
この男子生徒、凌牙と戦うためにお小遣いを貯めたり、そこら辺にいる生徒にカツアゲをしたりしてお金を貯め、レアカードを購入していた。
そして、手札に絶対にくるように細工をしておいたのだ。イカサマとはどの口が言うのだろうか。
「俺はカード3枚伏せてターンエンドだ」
ターンの終了を宣言した途端、辺りの
「はあ、また本気のシャークに勝てなかったかー」
「くるぜ、あのコンボが……」
どういうことかみんながみんなシャークの勝利を疑っていない様子だった。
『おいおい、俺はあいつよりも圧倒的に有利なんだぞ! なのになんで』
「じゃあ、始めるか。悪いけど先輩、このターンで勝たせてもらうわ」
「なんだと⁉︎」
凌牙はこのターン勝利を確信していた。キーカードはもう揃っているのだから。
「俺のターンドロー! 俺は手札から魔法カード<テラ・フォーミング>を発動! デッキからフィールド魔法を1枚手札に加える。 俺は<フュージョン・ゲート>を手札に加えるぜ」
「<フュージョン・ゲート>だと⁉︎ 融合召喚でもするつもりか」
「ああ、その通りだ。そして俺はセットされていたトラップカード<チェーン・マテリアル>を発動する!
チェーン・マテリアル
通常罠
このカードの発動ターンに自分が融合召喚をする場合、
融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを
自分の手札・デッキ・フィールド上・墓地から選んでゲームから除外し、
これらを融合素材にできる。
このカードを発動するターン、自分は攻撃する事ができず、
この効果で融合召喚したモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。
「この効果を発動したターン、俺は融合召喚する場合、手札、デッキ、フィールド、墓地からモンスターを融合素材にできるようになる!」
「なんだと⁉︎」
「そしてさっき手札に加えた<フュージョン・ゲート>を発動!」
フュージョン・ゲート
フィールド魔法
このカードがフィールド上に存在する限り、
ターンプレイヤーは手札・自分フィールド上から
融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをゲームから除外し、その融合モンスター1体を融合召喚扱いとして
エクストラデッキから特殊召喚する事ができる。
「これで俺は手札、デッキ、フィールド、墓地から融合召喚ができるって言うわけだ」
「なんだよそれ、無茶苦茶じゃねえかよ」
『くそっ、なんか色々されて良くわかんねえし。ああくそっ! なんなんだよ』
「じゃあ始めるぜ! 俺はデッキの<モンスター・エッグ>と<スティング>を除外して融合召喚! 現れよ<炎の騎士キラー>‼︎」
炎の騎士キラー
融合モンスター
星3/炎属性/炎族/攻1100/守 800
「モンスター・エッグ」+「スティング」
「……は?、攻撃力1100だと?」
男子生徒はそのモンスターの攻撃力の低さに驚いていた。融合召喚とは普通決められた素材のモンスターを融合することによって強力なモンスターを場に出す高等テクニックである。
しかし、強力とは程遠いモンスターが出てきたのだ。驚きもするだろう。
「俺はもう一度デッキから<モンスターエッグ>と<スティング>を除外し、融合召喚! 現れよ<炎の騎士キラー>」
その後、さらに凌牙は続けざまにもう一体<炎の騎士キラー>を召喚した。
これで凌牙のフィールドには<炎の騎士キラー>が3体存在すると言う異様な光景が作られた。
「こ、これで終わりか?」
「いやまだだ」
「まだあるのかよ⁉︎」
「ああ、俺は墓地の<アーメイル>と手札の<
魔装騎士ドラゴネス
融合モンスター
星3/風属性/戦士族/攻1200/守 900
「アーメイル」+「一眼の盾竜」
『コイツも弱えーじゃねえかよ』
男子生徒は内心思った。
「さらにデッキの<アーメイル>と<一眼の盾竜>を除外し、融合召喚! 現れよ<魔装騎士ドラゴネス>!!」
『もういいよ!』
こうして凌牙のフィールドには5体の融合モンスターが召喚された。だが、まだターンは終わらない。
「俺はフィールドの炎族<炎の騎士キラー>とデッキの機械族<
重爆撃禽ボム・フェネクス
融合・効果モンスター
星8/炎属性/炎族/攻2800/守2300
機械族モンスター+炎族モンスター
自分のメインフェイズ時、フィールド上に存在するカード1枚につき
300ポイントダメージを相手ライフに与える事ができる。
この効果を発動するターンこのカードは攻撃する事ができない。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
ここでとうとう上級モンスターが現れたことに何故かホッとする男子生徒。しかし、そんなことは凌牙には関係ない。
「俺は<重爆撃禽ボム・フェネクス>の効果発動! 自分のメインフェイズ時、フィールド上に存在するカード1枚につき300ポイントのダメージを相手に与える! 枚数はお前のフィールドで5枚、おれのフィールドで7枚! 合わせて12枚だ。合計3600ポイントのダメージを与える! くらえ『フェネクス・ビック・エアライド』!!」
「3600ダメージだと⁉︎ グワァァー!!」
男子生徒LP:4000→400
<重爆撃禽ボム・フェネクス>の効果により男子生徒はLPが700まで削られ、形勢が逆転した……かのように思われた。
「トラップ発動! <ダメージ・ワクチンΩMAX>発動!」
ダメージ・ワクチンΩMAX
通常罠
自分が戦闘またはカードの効果によってダメージを受けた時に発動する事ができる。
自分が受けたそのダメージの数値分だけ自分のライフポイントを回復する。
「ひゃー、危なかったぜぇ。これで俺の体力は元通りだ」
男子生徒LP400→4000
なんとこの男、イカサマだけでなく運にも味方されていた。ただ余っていた枠に適当に入れた<ダメージ・ワクチンΩMAX>がここで活躍したのである。
しかし、凌牙はそんなこと気にも留めていなかった。
「ならば、俺はフィールド上の炎族<重爆撃禽 ボム・フェネクス>とデッキの<惑星探索車>を除外し、融合召喚! 現れよ<
「なんだと! <重爆撃禽 ボム・フェネクス>をも融合素材にだと!」
起爆獣ヴァルカノン
融合・効果モンスター
星6/地属性/機械族/攻2300/守1600
機械族モンスター+炎族モンスター
このカードが融合召喚に成功した時、
相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動する事ができる。
選択した相手モンスターとこのカードを破壊して墓地へ送る。
その後、墓地へ送られた相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
「そしてこのモンスターが融合召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。そのモンスターとこのカードを墓地に送り、その後、墓地に送られた相手モンスターを攻撃力分のダメージを相手に与える!」
「まさか!」
「そのまさかだよ、俺が選択するのは<闇魔界の戦士ダークソード>! その攻撃力1800のダメージをお前に食らってもらう! くらえ『融爆』!!」
「グワァァ!!」
男子生徒LP:4000→2200
『くそっ、なんで回復したはずなのにこんなにダメージを受けてるんだ⁉︎ とりあえず、次ターンに立て直して……』
しかし、そんなことを考える時間は残されていなかった。
「なに勝手に安心してるんだ? まだ俺のターンは終わっちゃいねーぜ!
俺はレベル3の<炎の騎士キラー>と<魔装騎士ドラゴネス>の2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚!! 来い! <
「なにっ! 融合召喚だけでなくエクシーズ召喚も操るだと」
潜航母艦エアロ・シャーク
エクシーズ・効果モンスター
ランク3/水属性/魚族/攻1900/守1000
レベル3モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。
ゲームから除外されている自分のモンスターの数×100ポイントダメージを
相手ライフに与える。
「だが、そんなもん出したところでなにも変わらねえだろ!」
「……なんだと」
一般的に<潜航母艦エアロ・シャーク>の効果は使いにくいとされている。エクシーズ素材を一つ取り除き、ゲームから除外されている自分のモンスターの数×100ポイントダメージを相手に与えると言うなんとも微妙な効果ということもあり、使われることはほとんどない。
まあ、このデッキは例外であるが……。
「おいおい、忘れてるんじゃないか? 俺が融合召喚をするための素材はどこに行ったんだ?」
「どこって……。あっ……」
「思い出したかマヌケ。今ゲームから取り除かれている俺のモンスターの枚数は14枚!」
そう! 今までの融合召喚によって除外されていた素材は全てここに使うための布石だったのだ。
「俺は<潜航母艦エアロ・シャーク>の効果発動! オーバーレイユニットを使い、除外されている俺のモンスターの枚数分、1400ポイントのダメージをお前に与える。 くらえ! 『エアー・トルピード』!!」
「グワァァ!」
男子生徒LP:2200→800
「はあ、はあ、なんとか耐え切った……」
「なに言ってやがる、もう一体分残ってるだろうが」
男子生徒が凌牙のフィールドを見ると、もう一体の<潜航母艦エアロ・シャーク>がいた。
「……っ、どうして!」
「まだ<炎の騎士キラー>と<魔装騎士ドラゴネス>がいただろうが。そいつらを素材にエクシーズ召喚しただけだ。まあいい、これでチェックメイトだ。くらえ! 『エアー・トルピード』!!」
「チクショォォォー!!」
男子生徒LP:800→0
男子生徒は悔しそうな声と共に宙に舞う。決着がつき、ARビジョンが解除される。
「結局口だけのやつだったな。とりあえず、新作デッキを試すやつでも探すか」
そうして凌牙は倒れたままの男子生徒をほっといて新たな
--------------
会場は冷めあらぬ空気だった。ほとんどのものはシャークのあのプレイングに狂ったように興奮していた。
「やべえぜ、アストラル! 融合召喚とエクシーズ召喚をあんな風に使いこなすなんて! 俺もあんなデュエルしてみてぇー!」
しかし、そんな状況の中、冷静に分析する者がいた。
「遊馬、あのシャークと呼ばれる少年。彼からナンバーズの気配を感じた」
そう言った謎の生命体、アストラルの発言に遊馬はかつてないような衝撃を受けていた。
「マジかよ⁉︎ ナンバーズを集めるのにあんなやつと戦わなきゃいけねえのかよ」
アストラルのためにナンバーズカードを集めることとなった遊馬であるが、思っていたよりも壁が高いことを思い知った。
「なんだ遊馬、ビビっているのか?」
アストラルは遊馬に問う。
「誰に言ってんだよ、高い壁だからこそ燃えるんじゃねえかよ」
九十九遊馬はこの程度では、へこたれない。むしろ、チャレンジし続ける不屈の闘志に火をつけた。
「待ってろシャーク! かっとビングだ俺!!」
遊馬と凌牙の対戦はそう遠くないことだろう。
初めての遊戯王二次創作、楽しかった。