MHXXとMHRiseで溜めた狩魂を解き放ち、5ヶ月ぶりの投稿再開です。
かつての願いを取り戻し、新たな決意を胸に抱いて。
狩人たちは再び、己が戦場へと舞い戻る。
「また潜った!」
「ヴィータ、音爆弾頼む!」
「ここで終わらせるぞ!気合い入れろ、皆!」
うだるような熱気に包まれた、溶岩流の直ぐ側に広がる荒野。
「ラティオ活火山」の麓で、龍識船の狩人たちはターゲットであるモンスターと対峙していた。
ヴィータが投げた音爆弾の高周波音によって溶岩から引きずり出されたのは、火山の主とも称される大型魚竜種、[溶岩竜]ヴォルガノス。
龍識船強化のために狩猟を依頼された、大型モンスターの一体である。
「いっくぞおおおおおおッ!!」
岩盤の上をのたうつ[溶岩竜]へと、雷光をまとう一陣の風が襲いかかった。
二刀を振るい飛び込んだヒロが、高熱で軟化した外殻をすれ違いざまに切り砕く。
「ヒロに続くわよ、ヴィータちゃん!」「はいっ!」
外殻に開いた傷をめがけて放たれるのは、強力な属性を纏った2つの剣撃。
地上から突き刺さった剣斧と、空中から叩きつけられた盾斧が、迸るエネルギーを炸裂させる。
ルナとヴィータ、それぞれが操る機構型武器の切り札によって、[溶岩竜]は完全に地上へと縫い付けられた。
「決めちゃってください、リゼさん!」
「承知した!全力でぶっ放すぞ!」
そして、その後方。
大きく腰を落とし、[巨竜殺し]が大弓を全力で引き絞る。
「剛射」によって凄まじい威力で放たれた弓は、傷ついた[溶岩竜]の土手っ腹を貫通してのけた。
[溶岩竜]は振り絞るように短く吠えると――数度身体を震わせた後、沈黙した。
「片付いた......か?」
「つんつん......死んでますね。討伐完了です」
「みんなお疲れ様。暑いしさっさと剥ぎ取って帰りましょう」
剣先で巨大な亡骸をつつくヒロの元へ、他の3人が駆け寄ってくる。
そのまま手早く必要な素材の確保を終え、一同は灼熱の狩場を後にした。
比較的涼しい岩場を抜け、海岸沿いのベースキャンプが近づいてきた時。ふとヴィータが隣を行くヒロの肩を叩いた。
「ヴィータ?どうしたの?」
「あっ......えっと、荷物が多そうなので、わたしがちょっと貰ったほうがいいかなと思って」
「大丈夫、僕が一番身軽なんだから。そんな重そうな武器背負ってる人に任せられないよ」
「むっ......前にも言いましたけど、こう見えても力はありますからね、私。昔から漁の手伝いで鍛えてますから」
「あー、だからヴィータは背が伸びなかったのね」
「そういうのは思っても言わないものですよルナさん!」
やいのやいのと騒ぎ歩く3人を、殿のリゼは微笑ましく眺めていた。
一見すると、特に今までと変わった様子はない。だがパーティの一員としては、明らかに全体の雰囲気が柔らかくなったように感じる。
(ヒロのやつ、気を張るのはやめたっぽいな)
ユクモ村での一件を経て、彼の中で何かが変わったのだろうか。
あるいは本人が忘れていただけで、何も変える必要は無かったのかもしれない。
「リゼさーん、よそ見してないで護衛お願いしまーす」
「はいはい、ちゃんと見てるから大丈夫だぞー」
朗らかに笑う「英雄」の――友と進む若き狩人の背中を追って、リゼは少し歩みを早めた。
ルナたちが龍識船に戻ると、ちょうど飛行船で届いた荷物の積み下ろしをしているところだった。本来なら商業船の方で行われる作業だが、主船にまで荷物が運び込まれているのは、恐らく研究用の資料も混ざっているからだろう。
荷物の横を通り、いつも通りに船室に戻ろうとしたルナだったが、道すがらに置かれていたものを見て思わず足を止めた。
「これは......」
木箱の蓋を開けたまま放置されていたのは、[魚竜]ガノトトスの鱗。
ユクモ村に出現したナルガクルガによって主戦力が足止めされてしまったことを受け、他の拠点から購入する形で確保された、龍識船強化のための素材の1つだ。確か、ドンドルマの街に近い港のあたりから買ったものだったか。
それだけなら、何の変哲もないただの鱗である。しかし、ルナはそれがどうしても気になった。
なんとなく、誰も見ていないのを確認してから、木箱の中の鱗を手に取る。
綺麗なものはやはり少なく、刀傷や擦り傷など、戦闘によって何かしら傷を負ったものがほとんどだ。ボウガンによる射撃を受けたのであろう、弾痕が残ったものもある。
どれも持ち帰った素材ではよくあること......なのだが。
その弾痕の付き方に、ルナはどうも見覚えがあるように感じた。
「ねえ、この鱗なんだけど......」
「ああルナさん、帰ってたんですか!ちょっと来てください!」
「え、えっ?」
思い切って通りがかった乗組員に話しかけると、何故か慌てた様子で腕を引っ張られた。
ルナが質問しようとする間もなく、甲板の反対側へと連れてこられてしまう。そこには数人の研究者が集まって、並べられた素材を検分していた。見れば、武器防具を脱いだヒロの姿もある。
「ああルナさん、お疲れ様です。あれ、まだ片付けて無かったんですか?」
「ち、ちょっと用事があってね。それよりヒロ君、これって......」
「ジャンボ村から、ガノトトスと一緒に届けられたものだそうです。ゲネル・セルタスの外殻みたいですけど......」
言葉を濁したヒロと一緒に、並べられている素材を観察する。
確かに、つやのあるつるりとした甲殻は甲虫種のそれである。しかしゲネル・セルタスといえば美しい緑の体色、あるいは砂色の亜種が知られているが、目の前の甲殻は全体的に黒ずんで見える。
「狩猟したハンターから一緒に届いた手紙には、『獰猛化』と思しき傾向が見られた、と記されていました」
「獰猛化......」
研究員の出した単語を、ルナは小声で復唱した。
[天彗龍]バルファルクの活動が活発化すると同時に、各地で見られるようになったモンスターの狂暴化。
龍歴院はこれを「獰猛化」と呼称し、原因は高高度を飛ぶ[天彗龍]から脱離した鱗に含まれるエネルギー......「龍気エネルギー」によるものだと結論付けた。
かの「狂竜ウィルス」を彷彿とさせる事態に、各拠点は対処に追われている。
放置すれば人はおろか生態系にも影響を与えかねない「獰猛化」個体、すぐに鎮圧したくても、狂暴化したモンスターを狩猟できるハンターは限られてしまう。何せ「ユクモの英雄」ヒロでさえ手こずったのだ。
管轄を問わない緊急クエストのかたちで次々と狩猟依頼が出されており、調査活動の優先が認められているルナたちの隊を除けば、龍識船のハンターが駆けつけることも少なくなかった。
「ユクモ村に出現したナルガクルガを皮切りに、『獰猛化』モンスターの出現報告は増加の一途を辿っています......このままでは、人里が脅かされるのも時間の問題でしょう」
「やっぱり、大元を叩くしか無いんでしょうか。でも、あの古龍をどうやって」
「......落ち込まないでくださいよ。そのためにこうして狩りに出て、龍識船の強化をしてるんじゃないですか。皆さんにも支えてもらいながら。」
「狩りは私たちに任せて、貴方達は自分たちの役目を果たして頂戴。大丈夫よ、この船に乗ってるハンターたちなら、何が来ようと負けないわ」
心配そうに話す研究者を元気づけるように、ヒロとルナは笑顔で答えた。
故郷を守るため、絶対に[天彗龍]を見つけ出すと、狩人たちは改めて決意する。
(そう......ステラのためにも)
禍々しく空に輝く赫耀よりも、熱く燃え盛る意思を、胸に秘めて。
そして、ついにその日は訪れた。
「ココット村から連絡が入りました。クルプティオス湿地帯に、彗星らしきものの落着が確認されたそうです」
「!!それって......!!」
「当初は本当に天体という可能性もありましたが、それ以降一帯でのモンスターの活動が活発化しているそうです。[天彗龍]バルファルクが飛来したと見て、間違いないでしょう」
急報を伝えたハイメルは、言いにくそうな様子で話を続けた。
「すぐにでも急行したいところですが......正直不安も多いです。バルファルク自身の戦闘能力は完全に未知数な上に、『獰猛化』したモンスターを同時に相手取らなければならない可能性もあります」
「まあ、どっちにしろ一筋縄じゃいかないだろうな......だけど」
「それでも、やるしかないと思います。そうですよね、ヒロ?」
「言うまでもないよ、ヴィータ。このままモンスターが暴れ続けるのを野放しにはできない」
それぞれの故郷を守りたいと願う、ハンターたちの意思は硬い。
ハイメルは観念したように頷くと、目の前に立つもう一人の狩人を見上げた。
「ルナさん......」
「......当然、私も同じ気持ちよ。このチャンスを逃す訳にはいかない」
そう答えたルナの語気は、いつになく強かった。
当然だろう、かの龍は彼女の大切な仲間を奪った因縁深い相手。
彼女にとって――否、この場の全員にとって、今が千載一遇の好機なのは間違いない。
全員の覚悟を聞き届け、ハイメルは声を張り上げた。
「――総員に通達!これより龍識船本船は、[天彗龍]バルファルク追跡のためココット村に急行する!単独航行の用意急げ!」
待ってましたと言わんばかりに、手際よく準備を始める船員たち。
狩人たちの努力によって強化された空を行く船は、今ここに決戦の地へと舵を切った。
改めて書いておきますが、
本作では獰猛化の原因はバルファルクと断定して話を進めます。
(ぶっちゃけほぼ確定な気もしますが)