スーパーロボット大戦VB   作:元ゴリラ

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第一部「暗黒大将軍編」
第1話「長い夏のはじまり」


—デビルコロニー宙域—

 

 彼女はその時、最前線にいた。ジェガンの中で彼女は、無数の木星軍のMSと交戦し、そして、命尽きようとしていた。

 

マーガレット「ここで、おわりなの……?」

 

 デビルコロニーは、地球への攻撃を止めることはない。士官学校のあったマンハッタンも、炎の中に沈んだ。失意の中、木星のモビルスーツが彼女のジェガンに照準を合わせた。もう、終わるのならばそれでいい。そう、全てを諦めようとした時だ。

 

???「諦めるな!」

 

 そんな声が、響いた。それと同時に、巨大な髑髏を胸に刻んだモビルスーツが、木星軍のモビルスーツを巨大なビームの刃で両断する。

 

マーガレット「海賊軍の、モビルスーツ……?」

 

 連邦軍と水面下で敵対しながら、陰ながら木星軍と戦っていた義勇軍クロスボーン・バンガード。海賊のガンダムが、彼女を助けたのだ。

 

マーガレット「どうして、私を助けたの?」

 

トビア「助けたわけじゃない。ただ……こんな戦いで命を無駄にするのは、勿体無いって思ったからだ!」

 

 それだけ言い捨てて、海賊のガンダムはデビルコロニーへと向かっていく。

 

マーガレット「命を……無駄に……」

 

 月並みな言葉だった。だけどそれが、秒単位で敵も味方も死んでいくこの時には彼女の心に、重く響いていた。

 彼女……マーガレット・エクスは、改めてコンソール・パネルを見やり、ジェガンの武装を確認する。それから、コクピットに飾りつけたロケットを開いた。

 中にあるのは彼女と、新宿で戦死したという恋人の2人で撮った最後の写真。

 

マーガレット「力を貸して、紫蘭……!」

 

 彼女は再び、動き出す。生き残っている部隊と合流し、生き延びるために。

 戦いが終わったのを彼女が知ったのは、デビルガンダム細胞で作られた触手が崩れ落ち、ガンダム連合の大歓声が宇宙に響いた時だった。

 

 そして、時は流れた……。

 

 

…………

…………

…………

 

 

ー原子力空母パブッシュー

 

 ネオアメリカ海軍所属原子力空母パブッシュ。腕っぷし自慢の男達が怒声を飛ばし、機動兵器の鉄錆と、オイルの匂いが充満する格納庫から伸びるカタパルトデッキに、一機の人型機動兵器がワイヤーで固定され、吊るされている。

 全長は、20mほど。黒い体躯と、その頭部の中央についている、人間の顔のような目鼻立ちが、この機体が軍事目的で製造されている量産型モビルスーツとは違うものであると見るものに印象付ける。

 即ち、スーパーロボット。「ゼノ・アストラ」とパブッシュに所属する彼らはこの機体を呼んでいる。

 「異なる星」そう名付けた人はこの鉄の塊にどのような思いを込めたのだろうか。そんなことを、マーガレット・エクスは、ゼノ・アストラのコクピット。人間の身体で言うならば、子宮に位置する場所で考えていた。

 

整備兵「ゼノ・アストラ、いつでもいけますよ」

 

マーガレット「ありがとう。これよりゼノ・アストラの起動テストを開始します」

 

アレックス「ああ、少尉。無理はするなよ」

 

 アメリカ軍の岩国基地司令であり、このパブッシュの艦長として新たに赴任されたアレックス・ゴレム大佐から、激励の言葉が届く。

 

マーガレット「了解。機動実験開始。ヴリルエネルギー、出力安定しています」

 

 ヴリルエネルギー。旧世紀、某国で研究が進められたが机上の空論として一笑に付された永久機関。ゼノ・アストラはそれを動力にしている。この機体は、ヴリルエネルギーを実用化することで、地球に永久機関をもたらす技術革新の先駆けとして作られた。マーガレットは、そう教えられている。

 

アレックス「しかし……いいのですか?」

 

 その推移を見守るアレックスは、その後方ででっぷりとした腹を湛えて座る上司……マキャベルへと訊ねる。

 

マキャベル「何か不満かね?」

 

アレックス「不満があるわけじゃありませんが、ヴリルエネルギーは我が国の発明というわけではないでしょう。それを独占するような真似をして、不味くないのかということです」

 

マキャベル「そんなことか。大した問題ではないよ君。前回のガンダムファイトで我が国は敗れた。だが、2年後には新たなガンダムファイトが始まるわけだ。その時、他国に差をつけるために……どの国もきっと同じことをするし、ガンダムファイトを理由にすれば各国も言い訳できんさ」

 

 それは詭弁のようにも聞こえるが、ある一定の真実を突いてもいた。即ち……ガンダムファイト。アレックスやマキャベルが国籍を持つネオアメリカは、2年前の第13回ガンダムファイトにおいて決勝バトルロイヤルに残りこそしたものの、優勝を逃した。

 ガンダムファイト……旧世紀、戦争により地球を汚染した人類は宇宙コロニーに国家の拠点を移すとともに今後愚かな戦争で地球を傷つけぬために、ひとつの取り決めをした。それは、4年に1度開かれる「ガンダムファイト」という代理戦争により、向こう4年の世界国家運営の主導権を決めるというもの。

 

『なんともスポーツマンシップに溢れた戦争ではありませんか』

 

 そう、誰かが皮肉げに口にしたのをアレックスは覚えていた。それは確かに画期的であると言えたが、問題が一つだけあった。即ちガンダムファイトの舞台となるのがこの地球であるという問題だ。コロニーに住むエリート層には見えない問題。いや、見えていても無視できる問題。ガンダムファイトは世界の全面戦争を遅延させることにこそ成功しているが結局それはエリート層だけのものであり、地球に住む人々に残されたのは難民問題や、そして地球環境の汚染。そういった諸問題に対し、治世の城を宇宙コロニーに移したエリート層は見て見ぬふりをして、次の4年のための準備にかまけている。

 スポーツマンシップに溢れた戦争の代償。それが未来への展望のための施策を放棄して各国が続ける永遠の冷戦状態であると言えた。

 そして、このヴリルエネルギーの実験も2年後に行われる戦争……第14回ガンダムファイトのための準備であると言われてしまえば、アメリカ国民であるアレックスには言い返す言葉もない。

 

マキャベル「それに、マーガレット少尉はやる気みたいじゃないか」

 

アレックス「それはそうでしょうが……」

 

 マーガレット・エクス少尉は若く、実力もある。この起動実験に成功すれば、コロニーへ移住することも叶うだろう。地球に住む者なら誰もが憧れるコロニーへの移住。それは特にネオアメリカ市民にとっては、前回ガンダムファイトで国民にアメリカンドリームを見せた男・チボデー・クロケットに続く道標とも言えるものだった。

 アレックスが個人的にマーガレットへ気にかけているのは、彼女が優秀であるという理由に加えていくつかある。ひとつは、マーガレットがアレックスと同じネオアメリカ海兵隊出身の身であるということ。同じ門を潜ってきた同胞に対して、それが優秀な人物であれば尚のこと誇らしさを感じる。

 そしてもうひとつが、マーガレットがアレックスの息子と同年代だという事実だろう。

 

アレックス(エイサップ……)

 

 アレックスには、息子がいる。現在は別居中だが、岩国に妻と住んでいるはずだ。もう何年も顔を合わせていないし声も聞いていないが、それでも血を分けた息子だ。

 できるならば、マーガレット少尉のように誇らしく思える青年に成長していてほしいと思う。

 

アレックス「いかんな、集中せねば」

 

 息子と妻のことを考えるのは、いつでもできる。しかし今はアレックスにも任務があった。そのことを思い出して、ゼノ・アストラへ向き直る。

 

アレックス「少尉、ヴリルエネルギーの制御どうなっている?」

 

 ゼノ・アストラのコクピットには、パブッシュのモニターと同期してモニタリングするためのカメラがいくつも搭載されている。そこから、ヴリルエネルギーの様子やパイロットのバイタル、コクピット内部での様子はモニターに映っていた。しかし、操縦する生のパイロットであるマーガレットの意識が何より大事だと、アレックスは実感として知っている。

 

マーガレット「待って、様子がおかしい」

 

 そのマーガレットが、危険を知らせるコールサインを発したのは、実験開始から30分が経過した時だった。

 

アレックス「どうした、少尉!?」

 

マーガレット「ヴリルエネルギーの上昇率が高すぎる。コントロールを受け付けない!」

 

 それは、予想されてはいた事態だった。しかし、その際の緊急停止のやり方も、マーガレットには教えられている。マーガレットは既に何度も試みる挙動を繰り返しているが、ヴリルエネルギーは上昇し続けていた。

 

アレックス「まさか、暴走したというのか!?」

 

 アレックスのその一言で、パブッシュ艦内の緊張はピークに達した。

 

マーガレット「外に出して! このままじゃこいつ、艦を破壊する!?」

 

 パブッシュは原子力空母である。その名の通り、原子炉を動力としている。もしここで暴走したゼノ・アストラが、ヴリルエネルギーがパブッシュの原子炉にダメージを与えた場合、ここにいる全員が死ぬことになるだろう。

 それだけではない。パブッシュには、絶対に爆発させてはいけないものが積載されているのだ。

 

アレックス「クッ、ハッチ開け!」

 

オペレーター「よろしいのですか!?」

 

アレックス「ここで何かあれば、全員あの世行きだ!」

 

 アレックスの命令が降り、ハッチが開かれる。と同時、ゼノ・アストラは自らを固定する拘束ワイヤーを、まるで鎖を引き千切るようにして解き放った。

 

アレックス「少尉がやっているわけではないのか……?」

 

 本来、こちらからの指示で解放されるはずのそれを解き放ち、艦板へと歩を進めるゼノ・アストラはまるで、獰猛な獣のようですらある。マーガレットはそれを、何とか押さえ込もうと操縦桿を握りコンソールパネルをチェックするが、異星の巨人は人の操作を受け付けない。

 

マーガレット「何が、何が目的でこんな……ああっ!?」

 

 大きく足を踏み出したその衝撃で、マーガレットを守る揺籃が揺れる。衝撃が、ダイレクトに伝わってマーガレットの背中を襲った。しかし、その間にもマーガレットはテストパイロットとしての務めを果たしていた。

 

マーガレット「お前…………ゼノ・アストラが、何かに反応している?」

 

 ゼノ・アストラのモニタは、赤く点滅しマーガレットに何かを伝えようとしている。しかし、それが何を意味しているのか、マーガレットには読むことができない。

 英語ではないのだ。現在、広く公用語として使われている英語でもなければ、マーガレットの記憶の中にあるどの言語圏の文字とも違う。

 

マーガレット「お前は……一体……?」

 

 マーガレットの中に湧いたのは、疑問だ。果たしてこの機体は、本当にネオアメリカが開発したものなのだろうか。

 いや、これは本当に現代人類が生み出した文明のものなのだろうか。

 機神は、咆哮のような音を発しながら進む。ただ、一歩一歩進む。脚が艦板を蹴るたびに、待機していた戦闘機が大きく揺れた。そして、空に向かって声高に吠える。鉄の塊が軋む音が、猛獣の吼える声のような音を発しているのだ。

 

マーガレット「ヴリルエネルギー、レッドゾーンを突破! このままじゃ……」

 

 自爆する。そう肌で感じた直後。マーガレットの意識は暗転した。ゼノ・アストラの熱が高まると同時に、時空のうねりをパブッシュでは観測していた。時空のうねり。2年前の第13回ガンダムファイト終了後、はじめて観測された現象である。その時は、人やモノがオーロラのような光ととともに消え、地上界から消失した。今回も、それと同じ現象が起きた。少なくとも、アレックスの目にはそう見えていた。

 

アレックス「消えた……?」

 

 報告では、その光の後に消えたものはバイストン・ウェルという世界へ行くという。海と大地の狭間に存在する、地上の人々に想像力を齎す世界。その存在を示す証拠は現在、どこにもない。ただ、報告書に記されていた「浄化の光」と呼ばれていたものと今ゼノ・アストラが放った光はよく似ているように思えた。

 

マキャベル「……これが、ヴリルエネルギー」

 

アレックス「司令……?」

 

 アレックスの背後。マキャベルはその光に魅せられたように瞳をギラつかせている。そして、醜く口角を歪めていた。

 

アレックス「…………」

 

 よくないものを感じる。しかし、マキャベルはすぐに口元を整え、部下であるアレックスに指示を出す。

 

マキャベル「ゼノ・アストラの反応を探せ。消滅したわけではあるまい!」

 

アレックス「…………各員、ゼノ・アストラの反応を確認しろ。レーダー、GPS、パイロットの生体反応。何でもいい、ゼノ・アストラとマーガレット少尉がこの世にいる証拠を探すんだ!」

 

 もとより、そのつもりだった。しかし、もし本当にゼノ・アストラが海と大地の狭間の世界へと消えたのなら、汚れ果てた地球から探すことなどできるのだろうか。

 アレックスは、その疑問を頭の隅に追いやり、部下からの報告を待った。

 

 

ー岩国/喫茶店ー

 

槇菜「う、うむむむ……」

 

 午後の陽光が窓から差し込むテーブルに教科書とノートを広げ、女の子が呻いていた。歳の頃は14、5歳ほど。髪は薄い銀色で、それを肩口で切り揃えたショートボブに眼鏡をかけた女の子だった。青い瞳は、忌々しげに教科書を睨んでいた。その対面で高校生くらいの男女が、銀髪の女の子の様子を見守っている。

 

槇菜「む、難しいよぉ〜〜」

 

 銀髪の女の子……櫻庭槇菜は、両手を大きく上げ、パタリとテーブルに倒れ込みため息をついた。

 

甲児「やれやれ……。いいか、ここはこの公式をな……」

 

 見守っていた男性、兜甲児は肩をすくめて教科書を手に取ると、解説を始める。

 

槇菜「ふむふむ……。さっすが甲児さん!」

 

 こう見えても兜甲児は、成績優秀だった。とりわけ物理学や工学といった分野に関しては、天才的と言っていい。そんな頼れる先輩の甲児に、こと勉強面において槇菜は甘えっぱなしだった。

 

さやか「槇菜、甲児くんは昨日も自分の勉強で疲れてるんだから、ちゃんとお礼言いなさいよ」

 

槇菜「はーい。ありがとう甲児さん、さやかさん!」

 

甲児「へへ、いいってことよ」

 

 槇菜は、両親がいない。2年前に起きたドクターヘルの反乱で、幼くして両親を失い姉と二人暮らしをしている。その姉も軍属で、ほとんど家に帰らない。そんな中槇菜の面倒を見てくれているのが、マジンガーZでドクターヘルと戦った英雄・兜甲児とそのガールフレンドである弓さやかだった。

 甲児達と槇菜が出会ったのは、偶然の出来事だった。しかしその偶然を槇菜も甲児達も大事にしている。

 自衛隊に所属する槇菜の姉……櫻庭桔梗が甲児やさやかと、ドクターヘルとの戦いで面識を持っていたのも大きいだろう。尤も、その桔梗は今任務のために岩国を離れているのだが。

 甲児やさやかは、静岡に居を構えている。故になかなか会えないのだが、夏休みの時期などにはこうして遊びにきてくれる。

 何でも、在日米軍基地にも用があるらしく、今年の夏は長くこちらに滞在することになると言っていた。

 

甲児「でも、こうして勉強みてやるのも今年が最後かもしれねえって思うと、なかなか感慨深いな」

 

さやか「そうね……」

 

 甲児は、高校卒業後はネオアメリカのコロニーに留学する予定になっている。そうなれば、しばらくはこうして話すこともない。もしかしたら、槇菜が甲児やさやかと共に過ごせるのは今年が最後かもしれない。

 

槇菜「うん……。だから、終わったら海行きましょう海!」

 

 そう言って、子供みたいに甘えるのは今のうちにたくさん先輩に甘えたいという打算もあった。

 

さやか「はいはい。じゃあ次は化学ね」

 

槇菜「ウッ……」

 

 数学化学は、槇菜の特に苦手な分野だった。マジマジと参考書と睨めっこし、根を上げる。

 

槇菜「やっぱり難しいな……。この調子で立派な歴史の先生、なれるかな……」

 

 歴史の先生。それが槇菜の夢だった。そのために、夏休みも難関とも言われているコロニーのハイスクールを目指して勉強している。

 未来世紀62年という時代は、何をするにも地球という場は狭すぎた。

 過去の戦争や環境汚染で、多くの人間が死に、教師という人種が活躍できる場も限られるようになった。教師というのはある種のエリートコースである。どこで勉強してもなれる職業というわけではなく、一度は設備の優れたコロニーに留学する必要がある。そのための勉強なので、ハイスクールに入学するための基礎教養は必要だった。

 

さやか「そういえば、槇菜ってどうして歴史の先生になりたいの?」

 

槇菜「うん。今の人類って宇宙に出て、これからもどんどん先に進んでいくと思うの。だけど、それって歴史の積み重ねでしょ。だから、それを覚えて……伝えられるような人になりたいなぁって。それで、どういう仕事がいいかなってお姉ちゃんに相談したら、歴史の先生なんてどうかなって」

 

甲児「なるほどなぁ。槇菜、思ってたより色々考えてるんだな」

 

槇菜「え〜〜。甲児さん、それどういう意味ですか?」

 

 そんなやりとりをしていると、3人のテーブルにコーヒーとサンドイッチが運ばれてくる。運んできたのは、金髪の青年だった。

 

エイサップ「店長から差し入れだって。勉強頑張ってるね」 

 

槇菜「あっエイサップ兄ぃ、ありがとう」

 

 槇菜が言うと甲児も軽く会釈し、サンドイッチに手をつける。この喫茶店でアルバイトしている大学浪人中のフリーター・エイサップ鈴木だった。

 

エイサップ「それにしても甲児くん、ここ最近また、物騒な世の中になってるんじゃないか?」

 

 槇菜がここの常連なこともあり、エイサップも甲児達とは少し面識があった。

 

甲児「そうなんですよね。ガンダムファイトが終わったっていうのに、どこもかしこも様子がおかしいですよ」

 

 コーヒーの香りを嗅ぎながら、甲児が言う。

 

さやか「そうね……第13回ガンダムファイトが終わってから、あちこちで武力衝突が起きてるわ。デビルガンダムの拠点になって壊滅した新宿とかもまだ復興の目処も立たないから、暴動が起きてるって」

 

槇菜「それ、聞いたことあります。新宿はほとんど廃墟同然で、行政の手も入らないから反政府運動の温床になってるって、噂になってます」

 

 コーヒーにミルクと砂糖を入れて、掻き混ぜながら槇菜が言う。岩国には、ネオアメリカの軍事基地が存在する。旧世紀から続く、在日米軍基地。それと同じ流れの基地が、未来世紀63年の現在にまで存在している。そういう関係もあるのか、廃墟と化している新宿や京都に比べれば遥かに治安もいい。しかし、同じ国の中でこんなにも治安に差があるというのも、気分のいい話ではなかった。

 

さやか「うん、最近は日本も物騒になったわ。それに、去年起きたバイストン・ウェル事件。あの時も甲児くんは最前線にいたでしょ?」

 

 槇菜の言葉に、さやかが続ける。それは、ここ数年に起きた「物騒な事件」の中でも群を抜いて理解を越えたものだった。しかし、その当事者である甲児は違う。

 

甲児「ああ。行方不明になってたバイク仲間のショウ・ザマが、バイストン・ウェルとかいう世界で聖戦士なんてもんになってたんだ。俺は国連軍やショウの仲間達と協力して、バイストン・ウェルから地上へ侵略を始めたドレイク軍と戦ったんだが……結局、バイストン・ウェルの軍はシーラ女王に浄化されて、オーラマシンもこの世界から消えた。あれ以来、ショウとも連絡がつかなくなったんだよな……」

 

 バイストン・ウェル、聖戦士、オーラマシン。理解の追いつかない言葉を並べられて槇菜は混乱しそうになるが、それでも理解できる部分はある。

 

槇菜「……それって、ショウって人もバイストン・ウェルって世界に戻っちゃったってこと?」

 

 異世界に召喚されて冒険する。そんな物語はたくさんあって、槇菜もいくつかは読んだことがあったから、なんとなく想像がついたからだ。しかし、多くの冒険譚は異世界で冒険する主人公の物語であって、現代に残された人の物語というのはあまりにも少ない。

 

甲児「わかんねえ。でも、あいつが死んだなんて思えないからきっと、バイストン・ウェルで元気にやってると思うことにしてるよ」

 

 甲児は、笑ってそう返した。それは本心からの言葉なのだろう、と槇菜は思った。そう思える、爽やかな笑顔だった。

 

エイサップ「海と大地の狭間、バイストン・ウェルか……」

 

 そう言いながら、エイサップは窓辺に目を向ける。晴天。どこまでも青い夏の空が、広がっていた。

 

槇菜「でも、そんな異世界からも戦争しに来る敵がいたなんて……ちょっと怖いですね」

 

 漆黒の液体が薄い乳白色と混ざり合ったのを確認して、槇菜はそれを飲むこむ。

 

甲児「でも、ドレイク軍との戦争は終わったんだ。もしかしたら、次にバイストン・ウェルとこの世界が繋がる時は平和な交流ができるかもしれないぜ」

 

エイサップ「どうだろうな……」

 

 しかしエイサップは、そんな甲児の言葉に少し遠い目をしていた。

 

槇菜「エイサップ兄ぃ……」

 

 エイサップと槇菜は、所謂近所付き合いになる。甲児やさやかよりも、付き合いは長い。そんな槇菜は、彼の家庭の事情や交友を少しばかり知っていた。だから、察するものもある。

 

エイサップ「人ってふたり以上になるとさ、どうしたって敵か味方かって切り分けたがるんだ。もし異世界の人ともう一度会えても、それが次の戦争にきっかけにならないとは限らないよ」

 

甲児「エイサップさんは、リアリストだなぁ」

 

槇菜「うん……。でも、こうして話してると私達、ちゃんと学校に行けてるのってすごく恵まれてるよね」

 

 あまり、エイサップの心を逆撫でないように話題を変えよう。そう思って槇菜がそう口にしてから……「あ、」と気付く。

 

エイサップ「……槇菜」

 

 そのエイサップ本人が、大学浪人中のフリーターであるという事実を、少し前まで高校生だった彼を知っているが故に失念していたのだ。

 

槇菜「ご、ごめん! 別に悪気があったわけじゃなくて……」

 

 実際、それは槇菜にとっては実感だった。ムゲ・ゾルバトス帝国とのムゲ戦役から続く一連の戦争は、地球圏を大きく疲弊させた。

 そんな中で、自分は両親こそ失ったが姉がいて、学校に通えている。それは、恵まれたことなのだと感じている。

 そう、姉が教えてくれたから。

 槇菜の姉……桔梗は、真面目な人だった。

 両親を失ってから、ずっと槇菜をひとりで養ってくれた。

 そんな姉は、いつも言っていた。

 『今を精一杯楽しみなさい』と。

 

エイサップ「いや、いいんだよ。……槇菜は学校の先生になりたいんだろ。だったらさ、今からちゃんと勉強しような」

 

 俺みたいにならないようにな。そう自虐的に言ってから笑うエイサップに、甲児とさやかが苦笑する。釣られて槇菜の頬にも、笑みが溢れる。

 そんな、他愛ない世間話に花を咲かせていた時だった。喫茶店の扉が物々しく開かれる。そして、巨漢の大男が入ってきて槇菜達の席へ駆け込んでくる。

 

ボス「た、大変だ兜!」

 

甲児「ボス、今日は後輩の勉強会だからお前は邪魔になるって言っただろ」

 

ボス「それどころじゃねえ、機械獣の大群がこっちに押し寄せてきてやがる!」

 

甲児「なっ……!?」

 

……………………

 

第一話

『長い夏のはじまり』

 

……………………

 

 

 甲児がマジンガーZに乗り込み、ジェットスクランダーで駆けつけた時、既に市街地をへ敵を入れまいと海岸は戦場となっていた。軍のモビルスーツ部隊は、見たこともない機械獣率いる軍団により追い詰められている。そんな中で、一機の青いモビルスーツが、機械獣の攻撃を掻い潜り、大型のビームライフルで双頭の機械獣……ダブラスM2を撃破していた。

 

ハリソン「マジンガーZ! 甲児君が来てくれたか!」

 

 青いモビルスーツ……ガンダムF91に搭乗する在日米軍のハリソン・マディン大尉。デビルガンダム事件の際、ネオスウェーデンのアレンビー・ビアズリーやネオネパールのキラル・メキレルと共にガンダム連合を結成し、木星帝国に利用されデビルドゥガチと化したデビルガンダムとの決戦をくぐり抜けた、歴戦のパイロットだった。

 

甲児「ハリソン大尉、状況はどうなってますか!?」

 

ハリソン「敵は真っ直ぐに岩国基地を狙っている。絶対街には入れるなよ!」

 

 甲児が「了解だ!」と叫ぶと同時、マジンガーZは機械獣の群れへと一目散に突っ込んでいく。

 

甲児「サザンクロス・ナイフ!」

 

 ジェットスクランダーから放たれる刃が機械獣の駆動系をズタズタに破壊し、動きの止まったところにF91のビームライフルが直撃していく。敵陣の中枢に斬り込んで行くマジンガーZ。そこには、しばらく実戦を離れていたブランクなど存在しないに等しい。懐かしい顔ぶれの機械獣を、ロケットパンチが、スクランダーカッターが次々と葬っていく。やがて、甲児は機械獣軍団の最奥に、見慣れない機械獣を確認した。

 

甲児「データにない機械獣……ドクターヘルの新型か?」

 

 紫色の、毒々しい機械獣は頭部と別に、腹部に顔のようなものがついていた。そして、頭部の顔がニヤリと顔を歪める。

 

グラトニオス「俺は戦闘獣グラトニオス! 機械獣などと言うデク人形とは違うわ!」

 

甲児「戦闘獣が喋った。ヘルのとは違うのか?」

 

 言葉の通じる機械獣など、甲児の記憶にはない。しかし、ドクターヘルの機械獣を引き連れている以上無関係の存在ではないはずだった。

 

グラトニオス「俺はミケーネ帝国の戦士。暗黒大将軍の命を受けてマジンガーZ、貴様を殺す!」

 

 右腕の巨大なムチが、マジンガーZへと迫った。

 

甲児「クッ!」

 

 腕を掴まれ、甲児は咄嗟にロケットパンチで右腕を押し飛ばす。ロケット噴射でムチをすり抜けた拳骨はしかし、グラトニオスのムチにはたき落とされてしまう。

 

甲児「そんなっ!」

 

グラトニオス「こんなものかマジンガーZ!」

 

 グラトニオスの胸から放たれた破壊光線が、マジンガーを襲う。マジンガーの腹部に大きな風穴が開き、よろめく。

 

甲児「マジンガー……!?」

 

 今までの機械獣とは、パワーが違う。オーラバトラーのスピードとも渡り合ったマジンガーZが、苦戦を余儀なくされている。

 

ハリソン「甲児! クソッ、邪魔だっ!」

 

 機械獣の群れを押し留めるF91は、マジンガーZの援護に向かえないでいる。そんな時だった。

 突如、岩国の空が畝る。

 

ハリソン「なんだ、これは。時空の歪み? オーラロードではないようだが……」

 

 時空の歪み。その中心で何かが黒く瞬いた。次の瞬間、人型の、黒いマシンが畝りの中心点に現れる。

 

マーガレット「クッ、ここは……。座標を確認……ニホンの、イワクニ?」

 

 ゼノ・アストラ。まるで戦闘獣に呼ばれるようにして岩国の海岸沿いに降り立った未知の人型機動兵器。パイロットのマーガレット・エクスは、計器を確認し状況を確認する。

 

マーガレット「あれは、マジンガーZ? 機械獣を相手に苦戦しているようだけど……」

 

 そして次の瞬間、ゼノ・アストラのモニターにまたマーガレットの見たことのない象形文字がいくつも展開される。しかし、今度はそれをマーガレットは理解することができた。

 解読できたわけではない。コクピットの中で、直接脳に響くような声が木霊するのだ。

 

マーガレット「ミケーネ……邪神の使徒……ゼノ・アストラ、お前は……」

 

 ゼノ・アストラは咆哮を上げる。そして、強靭な脚力で飛び上がると、一目散に戦闘獣グラトニオスへと飛びかかった。

 

グラトニオス「何ッ!?」

 

 ゼノ・アストラの強靭な爪が、グラトニオスのムチを掴む。

 

グラトニオス「貴様は、まさか……!?」

 

 グラトニオスに、動揺が走る。グラトニオスはしかし、頭部の角を揺らし、超振動波を起こす。振動波を受けて、ゼノ・アストラは大きくよろめきそして、グラトニオスのキックが炸裂すると、ゼノ・アストラは大地へ倒れ伏した。しかし、再び立ち上がったゼノ・アストラは右腕を掲げると、巨大なハルバードを召喚する。

 

グラトニオス「やはり、貴様は……!?」

 

 ゼノ・アストラがハルバードを振り下ろし、グラトニオスは両腕のムチでそれを防いだ。ジリジリと詰め寄り、咆哮を上げるゼノ・アストラ。グラトニオスは、胸部からビームを放ち、再びゼノ・アストラを押し飛ばす。

 

マーガレット「ああぁっ!?」

 

 押し飛ばされたゼノ・アストラは、街に追突する。建物の崩れる音が、マーガレットの耳に響く。

 

マーガレット「そ……ん、な」

 

 その瞬間、マーガレットの意識は闇に落ちた。

 

グラトニオス「どうやら、巫女は中途半端な欠陥品だったようだな……。奴は、今のうちに!」

 

 そう言ってグラトニオスがムチをゼノ・アストラへ向けた。だがグラトニオスは失念していた。自分が、誰と戦うためにここにきたのかを。

 

甲児「隙ができた!」

 

 マジンガーZの目から、光子力ビームが走る。光子力の光は、戦闘獣グラトニオスの顔に命中し、視界を奪う。

 

グラトニオス「ギャァッ!?」

 

甲児「今……だっ!?」

 

 マジンガーZは立ち上がり、胸部の放熱板から超高熱のブレストファイヤーを発射する。それが、グラトニオスの最期だった。高熱を浴びて、グラトニオスは溶け爛れていく。

 

グラトニオス「お許しください、暗黒大将軍様ッ!?」

 

 それを最期の言葉として、戦闘獣グラトニオスは爆散した。

 

甲児「だが……」

 

 マジンガーZは、グラトニオスとの戦いで手酷いダメージを受けていた。そして機械獣はまだ残っている。骸骨のような顔をしたガラダK7、二足歩行のトロスD7……。

 頼れる味方であるはずのガンダムF91も、同じように機械獣に包囲されている。隙を作ってくれた謎のマシンは倒れたままだ。

 

甲児「万事休すか……だがなっ!」

 

 マジンガーは立ち上がり、機械獣の軍団に立ち向かう。

 

甲児「来やがれ! マジンガーZはまだ、死んじゃいねえ!」

 

 兜甲児が叫ぶ。もしかしたら、これが自分とマジンガーZの、最期の戦いかもしれない。それでも、逃げるわけにはいかなかった。

 

甲児「機械獣ども、暗黒大将軍だかミケーネだか知らねえがまだ兜甲児も、マジンガーZも死んでねえぞ!」

 

 兜甲児が吼える。それと同時に、ロケットパンチを機械獣にぶちかまし、軍勢に穴を開ける。その瞬間に、マジンガーは駆け抜ける。

 

甲児「アイアンカッター! 光子力ビーム!」

 

 死地にあっても、闘争心は衰えない。それが兜甲児だった。

 

ハリソン「甲児君、絶対に君を死なせはしない!」

 

F91も、腰に装備された高出力ビームライフル・ヴェスバーで包囲する機械獣を焼き払っていた。その時である。

 

???「なるほど……これがこの世界の守り手。なかなか面白い力をしている」

 

 それは、地獄の底から響き渡る、どす黒い声だった。

 

ハリソン「何者だ!」

 

 ヴェスバーを構えたまま、ハリソンが叫ぶ。甲児もまた、機械獣の群れを薙ぎ払いながらその声の主を探し、神経を研ぎ澄ませる。

 

???「私ですかな? 私の名は……」

 

 現れたのは、下半身が巨大な鉄球と化し、獰猛という言葉をほしいままにする鋭利な角を持つ魔獣。

 鬼。そうとしか形容できない魔獣……いや鬼獣だった。

 

甲児「な、なんだ!?」

 

ハリソン「こいつは有機体なのか、メカなのか……?」

 

晴明「我が名は安倍晴明! ククク、ミケーネ帝国に仕える陰陽師なり!」

 

 安倍晴明。そう名乗る男が、鬼の肩に乗っていた。

 

…………

…………

…………

 

 

—岩国/市街地—

 

 一台のスクーターが、岩国の街を走る。既に戦火はあちこちに飛び火しており、槇菜の見知った街も炎に包まれていた。

 

エイサップ「クソッ! こんな時に親父は何やってるんだよ!」

 

 スクーターを操るエイサップが、ここにいない岩国基地司令アレックス・ゴレムへ毒付く。立派なモビルスーツ部隊まで用意しておきながら、肝心な時に役に立たないのでは何のための軍備増強なのか。

 

槇菜「エイサップ兄ぃ、危ない!」

 

 スクーターの後ろで、エイサップにしがみついている槇菜が声を上げる。交差点から、一台の車が飛び出してきたのだ。

 

エイサップ「うわぁっ!?」

 

金本「ああぁっ!」

 

 互いに急ブレーキをかけて、顔を見合わせる。車に乗っていたのは、目元まで黒髪のかかった長身の男と、茶髪の男だった。

 

エイサップ「ロウリ、金本。無事だったか!」

 

金本「エイサップか!」

 

ロウリ「お前、こんなとこで何してんだ!」

 

 黒髪の方が矢藩朗利(ロウリ)、茶髪を金本平次と言う。エイサップとシェアハウスしているルームメイトだった。

 

エイサップ「俺は今日バイトだって言ってたろ。お前らこそ……いや、そんなことより!」

 

槇菜「エイサップ兄ぃ、早く逃げなきゃ!」

 

エイサップ「あ、ああ!」

 

 槇菜が急かすのは、理由がある。

 エイサップのスクーターを追う者達がいたのだ。

 深く黒い肌。膨張した筋肉。正気を失った目。そして、額から生えた一角。

 鬼。そうとしか形容できないものだった。

 

エイサップ「クソッ! 一体何なんだよあの鬼は!」

 

槇菜「とにかく、避難しないと!」

 

 スピードを上げるスクーター。それを追う鬼の軍団。避難所として想定されている槇菜の在籍する中学校を目指し、走る。しかし、このままでは鬼を引き連れてしまうことになる。どうする……とエイサップは一瞬、思案した。並走する車から、金本が顔を出す。

 

金本「化け物め、こいつを喰らえ!」

 

 金本が投げた手榴弾は、後ろの道路ごと鬼を吹き飛ばした。

 

槇菜「なんでそんなもの……」

 

 槇菜が唖然と金本を見て呟く。

 

エイサップ「あいつら……まさか、米軍基地から盗んだのか!」

 

 毒付くエイサップ。ロウリと金本が、反米を主張するテログループ「ジスミナ」を結成し、右翼的な思想を持つ政治結社に傾倒しているのはエイサップも知るところだった。その活動のために、エイサップのIDを元に父親の……米軍基地司令のパソコンをハッキングしていることも、エイサップは見て見ぬふりをしている。

 親父が困るならそれでもいい。そんな思いもあった。しかし、ロウリと金本の反米はいわゆる『ファッション』だ。それを『カッコいい』と思ってやっているだけの、何の覚悟もない活動だとエイサップは思っていた。それがまさか、本当にテロの準備をしていたとは。

 ともあれ、今はそんなことを抗議している場合ではない。早く、中学校へ行かなければ。エイサップはアクセルを踏み、数年前まで自分も通っていた学校を目指す。そして、中学校の校門へ辿り着いた。

 

槇菜「先生!」

 

 学校の正門には、担任の日本史教師が待っている。

 

先生「さ、さくらば……」

 

 しかし、その様子がおかしい。

 

槇菜「先生…………?」

 

 先生の全身が、ひどく震えているのだ。目の焦点が合わない。それに、言葉もはっきりしない。嫌な予感がする。普段は温厚な先生が、こんな風になるなんて。

 

先生「に、げ……」

 

 次の瞬間を、槇菜は見ることができなかった。エイサップが、目を覆ったのだ。

 

エイサップ「逃げるぞ、槇菜!」

 

 そう言って、手を引くエイサップの手の熱が、槇菜に伝わった。そのじわりと滲んだ汗が、槇菜に伝えているのだ。

 

ロウリ「う、うわぁぁぁぁっ!?」

 

金本「そ、そんなぁっ!?」

 

 ロウリと金本の叫び声も、槇菜に伝える。

 先生はもう、槇菜の知る先生ではないのだと。

 スクーターを乗り捨てて、ロウリと金森の車へ乗り移るエイサップと槇菜。金本がアクセルを踏んで、学校を後にする。

 

槇菜「…………うっ、うぅ……」

 

エイサップ(この分じゃ、学校に避難した人は……)

 

 鬼の餌食になっている。そんな最悪の想像をして、エイサップは吐き気を抑えようと喉を抑える。無意識に、エイサップは別居中の母親の無事を案じていた。その時である。

 黒い巨大なヒトガタが、学校を押しつぶすように倒れてきたのは。

 大きな音と共に、校舎が潰れる。その破片が飛び散り、エイサップ達の車の前に飛び込んだ。

 

金本「うぉぁっ!?」

 

 急ブレーキをかけて、車をストップさせる。槇菜は、恐る恐る外の様子を見やった。

 

 

槇菜「……………………え?」

 

 槇菜が、3年間通い続けた日常の在処。友達がいて、先生がいて、成績は中の上くらいで、だけど授業は楽しくて。運動会や文化祭。そんな思い出があって、来年の春先には卒業するはずだった場所。

 中学校は黒い人型マシンの下敷きになり、潰れていた。

 

エイサップ「槇菜、戻れっ!」

 

 エイサップの声も届いていないのか、槇菜は無言で車のドアを開いて、学校へと飛び出していく。鬼のことなど、頭から完全に消えていた。

 

槇菜「やだ……やだよ。私、まだ卒業してない。夏休みの宿題も終わってないんだよ。それに……それに、まだ学校で、クラスで、やりたいことたくさんあったのに!」

 

 どれだけ叫んでも、その叫びは虚空に霧散する。焼けた校舎のにおいが、槇菜の鼻をついた。

 

槇菜「かえして……かえしてよ……」

 

 うわごとのように繰り返しながら、学校を潰した人型……ゼノ・アストラに、近寄っていく。その時だった。黒く、大きな、獣と人の間のような姿をしたグロテスクな生き物……鬼としか言いようのないそれが、槇菜の前に躍り出た。

 

槇菜「!?」

 

エイサップ「槇菜!?」

 

 しかし、鬼は槇菜の身体に触れることはなかった。槇菜が声にならない悲鳴を上げたその時、鬼の首は吹き飛び身体は四散していたのだから。

 

槇菜「え…………?」

 

 理解が及ばず槇菜が振り向くと、倒れていたマシン……ゼノ・アストラの指先が、ドラマで見た拳銃を撃った後のように煙を出している。見れば、指が1本、ワイヤーのようなもので飛び出して鬼を潰していたのだ。

 

槇菜「このロボット……私を助けてくれたの?」

 

 槇菜の日常の象徴を、壊した悪魔が。

 槇菜の命を喰らおうとした、鬼を滅した。

 その事実に困惑しながら、槇菜はゼノ・アストラへ一歩、また一歩と近づいていく。

 黒い悪魔は、よく見れば人の顔のように目鼻立ちを持っている。そして、腹部の下に、球体があるのを見つける。球体は槇菜の存在を認めたかのように下がり、ゼノ・アストラの足下とも言うべき位置へ降りていた。

 槇菜がそこへ足を進めると、人が乗っているのが見える。このロボットのパイロットなら、お礼を言うべきなのか。それとも、恨むべきなのか。そんな風に考えながら、球体の側まで寄る。ヘルメットを被った大人が、倒れていた。

 

槇菜「女の人……?」

 

 パイロットは、女性だった。星をあしらった徽章がスーツの襟についているが、それが何を意味するのか槇菜は知らない。ただ、気絶していることだけは、見て取れる。

 

槇菜「じゃあ……さっきのは……」

 

 ロボットが、自分の意思で助けてくれたのだろうか。そんな、あり得ないことを想像しながら、槇菜はコクピットで倒れている女性へ近寄り、その身体を抱き起こし、ヘルメットを外して呼吸を確認する。息はあった。しかし、額から流れている赤い液体は、決して安心していい状態ではないことが伺える。槇菜はポーチからハンカチとセロテープを取り出し、額にハンカチを当てるとセロテープで固定する。その時、開かれていたキャノピーが閉じられ、槇菜はそこに閉じ込められてしまう。

 

槇菜「あっ……!」

 

 どうしよう。そう思う間も無く槇菜は、狭いコクピットの中でシートに座らざるを得なくなってしまう。モニター内には、意味不明な文字のようなものが表示され続けていた。

 

槇菜「なんだろう……。英語でも、フランス語でもないし……」

 

 強いて言うなら、象形文字に似ている。読めない言葉だ。しかし、その意味はなぜか理解できた。

 

槇菜「ミケーネ……闇の帝王……目覚めの時……っ、ゥァッ!」

 

 その言葉と同時に、槇菜の脳に情報が流れ込む。圧倒的な情報量は、槇菜の脳を押し潰すほどに重く、膨大だった。

 

槇菜「なっ…………、これ…………!」

 

 頭が痛い。目眩がする。だけど、叩き込まれた情報が脳に吸収されていくことで、その眩暈も次第に収まっていく。やがて槇菜は、その情報を反芻し、理解することができた。

 即ち、このマシンの操縦方法である。

 

槇菜(わかる……なんでだろう、私このロボットを知ってるの?)

 

 このコクピットは、めちゃくちゃだ。外付けの部品が多すぎる。槇菜は、アメリカ軍が後付けしたいくつかの機器のスイッチをオフにすると、改めて操縦桿を握る。

 メインカメラを見れば、マジンガーZと青いガンダムが、機械獣を率いる巨大な鬼と戦っていた。

 

槇菜「…………甲児さん」

 

 想像するだけで、怖い。うまくいかないかもしれない。だけど。

 

槇菜「…………何もしないで死ぬほうが、ずっと怖い!」

 

 操縦桿を握る手に、力を込める。それで、十分だった。このマシンは、強く念じることで応えてくれる。そう、槇菜は識っていた。

 黒い巨体が立ち上がり、歩き出す。槇菜に与えられた知識の通りに。

 念じるままに動くゼノ・アストラ。その右手を突き出すと、5本の指がワイヤーのようなものを介して飛び、鋭利な爪がマジンガーを取り囲む機械獣に突き刺さった。

 

 

…………

…………

…………

 

 

甲児「あれは……!?」

 

 戦闘獣との戦いに乱入した黒いアンノウンが、再び立ち上がった。そして、マジンガーZを援護するように機械獣を攻撃している。

 

槇菜「甲児さん!」

 

甲児「槇菜、お前……槇菜か!?」

 

槇菜「なんでかわからないけど……私、この子を使えるの。だから!」

 

 ワイヤーが機械獣の身体を引き裂き、ゼノ・アストラが動く。しかし、その動きはどこか辿々しい。

 

槇菜「このっ、ちゃんと動いてよ!」

 

甲児「無理もねえ……動かし方がわかってても、戦い方はわからねえもんな。槇菜、無理はするなよ!」

 

 満身創痍のマジンガーZが、空を駆ける。

 

ハリソン「援護するぞ、甲児くん!」

 

 マジンガーへ飛びかかる空戦機械獣を、ヴェスバーが撃ち落とす。その隙を襲うように、機械獣ガラダK7が鋭い鎌でF91の小さな身体を襲った。しかし、その一撃はビーム・シールドに弾かれる。

 

ハリソン「悪いな機械獣、こいつは10年前の旧式だがな、性能は最新鋭の機体にも負けてないんだ!」

 

 頭部のバルカン砲が、間近に迫る機械獣の頭部を潰し、ビーム・サーベルを抜いて振り抜く。F91の真後ろで、機械の獣が爆ぜる。その後方でゼノ・アストラの右手のワイヤードが、機械獣トロスD7の足を引き裂いていた。

 

槇菜「少し、コツわかってきたかも……!」

 

 ワイヤーを収納して、バランスを整えるゼノ・アストラ。足取りは決して軽やかではないが、それでも機械獣を撃破する。これで、マジンガーZを阻むものはない。

 

甲児「槇菜、ハリソンさん……かたじけねえ。やい安倍晴明とか言ったな! ミケーネだか陰陽師だか知らねえが、マジンガーZがいる限り好きにはさせねえぜ!」

 

 鬼獣の肩に乗る怪しげな男に、マジンガーZは光子力ビームを放つ。しかし、男の周囲に展開された人形が、身代わりのように男を守る。そして、鬼獣は巨大な刃と一体化した右腕を振るい、マジンガーZを叩き落とす。

 

甲児「うわぁっ!?」

 

 グラトニオスとの戦いで受けたダメージが蓄積しているマジンガーZは、既に限界を迎えている。それでも、甲児の闘争心は全く衰えていなかった。落とされながらも、ロケットパンチを発射し、ドリルミサイルを連発する。その攻撃は、鬼獣の装甲を確実に抉っていた。

 

安倍晴明「ええい小賢しい! 雑魚の分際で!」

 

甲児「雑魚、だと!?」

 

安倍晴明「その通りよ! この世界の人間など、所詮は塵芥に過ぎぬ!」

 

 鬼獣の、巨大な鉄球のような下半身が回転し、マジンガーZを踏み潰さんとする。しかし次の瞬間、鬼獣の鉄球を黒いマシン……ゼノ・アストラが受け止めていた。

 

槇菜「っ、くっ…………!」

 

 10本の指からワイヤーのようなものが射出され、鬼獣の身体に突き刺さる。

 

甲児「槇菜、お前……!」

 

 たどたどしい動きで機械獣を相手したはずのゼノ・アストラが、マジンガーZの危機を前に咄嗟に駆けていたのだ。

 

槇菜「甲児さんは……雑魚なんかじゃないもん。マジンガーZは、2年前にも私を助けてくれた。私のヒーローだもん。絶対、こんなところで負けちゃダメなの。だから!」

 

甲児「ああ……そうだな!」

 

 マジンガーZは、最後の力で飛び上がり、鬼獣の顔に拳骨を喰らわせる。大きくよろめいた。そして、次の瞬間に胸の放熱板に光が灯る。

 

甲児「ブレストファイヤー!」

 

 マジンガーZ必殺の一撃が、鬼獣へ放たれた。

 超高熱が、鬼獣を焼き尽くしていく。

 それは、魔神の咆哮だった。

 

安倍晴明「おのれぇぇぇぇっ!? 雑魚の分際でぇぇぇぇっ!?」

 

 鬼獣から飛び降り、ブレストファイヤーの直撃を避けた安倍晴明が怨嗟の声を叫ぶ。その直後、飛んできた斧が陰陽師の身体を真っ二つに引き裂いた。

 

槇菜「えっ!?」

 

 それは、衝撃的な映像だった。しかし、槇菜が驚いたのはその、グロテスクな想像が現実にならなかったからである。

 甲児や槇菜の前で真っ二つになった人間が、ただの紙切れと化したことに、驚いていた。

 

甲児「今の斧は……どこから!?」

 

 甲児がマジンガーZのセンサーに注目すると、ゼノ・アストラが出てきた時と似た時空の捩れが感知された。その捩れから、赤鬼を連想させる、二本のツノを持つロボットが現れる。

 

竜馬「見つけたぜ晴明! 今度こそてめえに引導を渡してやる!」

 

安倍晴明「ンンンンン流竜馬ァッ!? 今はお前と遊んでいる暇はないのだよぉ!」

 

 紙切れから再生した安倍晴明はしかし、その赤いロボットを意に返さず両手で印のようなものを結ぶ。芒、と晴明の身体がゆらめいてその場から消えた。また、紙切れだけが宙を待っていた。

 

竜馬「逃げたか、追うぞ隼人、弁慶!」

 

隼人「待て竜馬。周りを見ろ!」

 

 流竜馬と呼ばれた男は、仲間に言われて周囲を見回す。そして、あることに気づいた。

 

竜馬「ここは……日本か?」

 

隼人「ああ。どういうわけかな」

 

弁慶「俺たちは確か、黒平安京で晴明と戦って、あいつを追って行ったはず……」

 

隼人(…………それに、ここが日本だとしても、様子がおかしい。俺達の知る日本には、鬼と戦えるロボットはゲッターしか存在しないはず……)

 

 赤いロボットはマジンガーとゼノ・アストラの前に着陸し、周囲の様子を見回していた。

 

槇菜「何、この赤いロボット……ウッ!?」

 

 ゼノ・アストラのモニターに、また意味のわからない象形文字が浮かび上がり、槇菜の脳に言葉が流れ込む。

 

槇菜「……ガサラキ……何、それ?」

 

 意味のわからない単語。しかし、それが脳にこびりつく。この感覚は、不快だった。

 

甲児「君たちは……」

 

隼人「……状況を確認したい。どこか基地に収容させちゃもらえないか?」

 

竜馬「おい、隼人!」

 

 勝手に決めるな。とでも言いたげな竜馬だが、隼人は間髪言わせない。

 

隼人「ともかく、ここがどこでいつなのか。確認しなきゃいけねえ。何しろ今まで俺達は、ゲッターの導きで存在しない歴史の中を冒険してたんだからな」

 

ハリソン「…………そういうことなら、基地に案内しよう。ついてきてくれ」

 

 機械獣を片付けたハリソンが、通信に加わった。

 

隼人「ありがたい。それと、できれば早乙女研究所に連絡を繋いで貰いたい」

 

ハリソン「早乙女研究所……? わかった、手配してみよう」

 

 赤いロボットの乗組員が言う早乙女研究所という場所を、ハリソンは知らなかった。だが、調べればでてくるだろうと了解する。

 ガンダムF91の誘導に従うように、マジンガーZとゼノ・アストラ。それに、赤いロボットは在日米軍の岩国基地へと帰投した。

 

甲児「ミケーネ帝国の暗黒大将軍……」

 

 傷だらけのマジンガーの中で、甲児は呟いていた。戦闘獣グラトニオスの言葉を反芻し、戦慄する。

 グラトニオスは、強敵だった。しかし、そのグラトニオス以上の敵の影が見え隠れしている。

 

甲児「何が起きているんだ…………」

 

 

…………

…………

…………

 

 

さやか「甲児くん!」

 

ボス「マジンガーが、こんなに苦戦するなんて……」

 

 米軍と協力し住民の避難活動に勤しんでいたさやかとボスが、帰投した甲児を出迎える。

 

甲児「ああ、どうやら敵はドクターヘルとも違うみたいだった。それに……」

 

 マジンガーZに並ぶようにして帰投し、米軍基地の格納庫に収まったゼノ・アストラから出てきたのは、さやかも見知った少女だった。

 

さやか「槇菜!」

 

 しかし槇菜はそんなさやかへ挨拶するより先に、一緒にコクピットの中に収まっていた女性を抱き抱えて叫ぶ。

 

槇菜「この人、このロボットに乗ってたんです。私が来た時にはもう気絶してて、それで……お願いします、誰か!」

 

 槇菜の言葉に、在日米軍の士官達がやってきて女性を担架に載せると、迅速に医務室まで運んで行った。

 

槇菜「大丈夫かな、あの人……」

 

 それを見送り、去っていった方を心配そうに見つめる槇菜。さやかはそんな槇菜の下へ駆け寄り、肩を強く抱いた。

 

槇菜「さ、さやかさん……?」

 

さやか「ダメじゃない! 危ないことしたら!」

 

 さやかの目に、大粒の涙が滲んでいるのが見える。槇菜はその瞳の中に、さっきまで自分が何をしていたのかを見た。

 

槇菜「あ…………」

 

 見たこともないロボットに乗って、怖い機械獣と戦った。思い返すだけでも、頭が真っ白になってしまう。

 怖かった。今更のように涙がとめどなく溢れ出て、止まらない。眼鏡が濡れて、さやかの顔がよく見えない。

 

さやか「もう……無鉄砲なんだから。でも、甲児くんを助けてくれて、ありがとうね」

 

 さやかが優しく、髪を撫でる。

 

槇菜「う……うん…………」

 

 しばらくそうしていると、パイロットスーツを着た長身の男性が、甲児達の前にやってきた。

 

ハリソン「すまないな、甲児くん。本来は俺達だけで倒すべき敵だったんだが……」

 

 ハリソン・マディン大尉である。

 

甲児「いいんですハリソンさん。それで、あの赤いロボットの方は?」

 

ハリソン「それがな……パイロットの言ってた早乙女研究所なんて施設、日本には存在しないらしいんだ。それを説明したら、中にいた3人組のうち1人……隼人と言ったかな。そいつが詳しく教えろって聞かなくてな。今聴取してるところだ」

 

 困ったな、とでも言いたげにハリソンは頭を掻く。それから、もう一つのアンノウン……。ゼノ・アストラの方へ顔を向けた。

 

ハリソン「こいつが、アンノウン・ワン……。パイロットはアメリカ海軍の徽章をつけていたと聞いたが?」

 

甲児「アメリカ軍の人が、中で倒れてたらしいんです。それで、あいつが操縦したって……」

 

 甲児が指差す先には、さやかの肩にもたれかかりながら歩く槇菜の姿があった。

 

ハリソン「!?」

 

 ハリソン・マディン大尉は、在日米軍だけでなく現存する国連加盟軍の中でも随一のスーパーパイロットである。彼に匹敵する腕の持ち主は、そうそういない。デビルガンダム事件の際に彼が海賊軍のクロスボーン・ガンダムと演じた一騎討ちはガンダムファイターをも唸らせる名勝負であった。

 彼ほどの名パイロットならば、とっくに佐官になっていていいはずである。旧世紀の宇宙大戦では、パイロットの身でありながら大佐まで昇進したパイロットも数多くいるのだから。

 だが、そんな彼が在日米軍駐留部隊のモビルスーツ指揮官に留まっているのには、上層部からの目が決してよいものばかりでないという理由があった。

 軍人として国民の安全を守る。それをモットーにするハリソンは、軍人の鑑である。同時に、その強い正義感は時として政府官僚にはやっかまれることにもなる。

 しかし、何よりも。

 上層部がハリソンを冷遇する……いや、ハリソンに権力を与えすぎることに心配になる理由は、

 

ハリソン「だ、大丈夫ですかお嬢さん!?」

 

槇菜「え……? は、はい……」

 

 女の子の好みが、自身の年齢に対して低く……幼すぎるのだった。

 学校指定のセーラー服を着て、眼鏡の奥にある瞳を潤ませた女の子の手をとる二十歳をとうに過ぎた三十路手前の青年。その姿は政治とは無関係な甲児やさやかでさえも、要らぬ不安を抱いてしまう。

 もし彼がアメリカ軍の上層部に行って何か、そういうスキャンダルを浴びようものならそれは軍や政府全体の信用問題にもなる。そんな風に上層部から見られているハリソンだった。

 

ハリソン「お怪我がなくてよかった。それで、どうしてこんなものに……?」

 

 それでも、ハリソンは良識ある軍人である。

 

槇菜「はい。実は……」

 

 槇菜は、その詳細を細かく話した。

 エイサップ達と逃げていて、鬼のような化け物に追われたこと。

 このマシンが中学校を下敷きにし、鬼から助けてくれたこと。

 乗り込むと、動かし方が理解できたこと。

 そして、何もかもが怖かったこと。

 

ハリソン「そうか……」

 

甲児「……よく、頑張ったな。偉いぞ槇菜」

 

 話を聞き、神妙な面持ちで槇菜に声をかけてあげる2人。

 

ハリソン「だがそれではこの機体の詳細に関しては、先ほど回収された女性の意識が回復するのを待つしかないか」

 

 そう、ハリソンは呟く。正規のパイロットと思われる女性は、アメリカ海軍の徽章をつけていたという。だとしたら、このマシンは米軍のものである可能性が高い。なのに、ハリソンはその件について何も知らず、基地司令のアレックス・ゴレムはここ数週間緊急で基地を留守にしている。

 

ハリソン(俺の知らないところで、何かが始まっているのか……?)

 

 何か、嫌な予感がしていた。しかし、それがどのような形を持って実現するのか予想もつかない。

 

ハリソン(あいつらは……宇宙海賊なら、こういう時どうするのだろうな?)

 

 胸の奥で、ハリソンは好敵手に問いかけていた。

 

 

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