スーパーロボット大戦VB   作:元ゴリラ

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第15話「死闘! 暗黒大将軍(後編)」

—???—

 

闇の帝王

「フム…………」

 

 暗黒大将軍の号令により、ミケーネ七大将軍による地上主要都市同時攻撃は敢行された。既に多くの国、都市が戦闘獣の手に落ちたがしかし、人類の反撃は続いている。

 それは、闇の帝王の予測よりも遥かに苛烈なものだった。

 

闇の帝王

「まさか、人間どもがここまでやるとはな……」

 

 闇の帝王は、決して人間を侮っていたわけではない。現に2万年前も、人間との戦いに敗れたのだ。だからこそ、今度こそ勝利する。その日のためにミケーネ帝国は地底奥深くに潜伏し、時を待ち、力を蓄えたのだから。しかし、そうであっても人間達のこの苛烈な抵抗は、闇の帝王の予想を遥かに上回るものだったのだ。

 

闇の帝王

「……フン、リビングデッドを使役するのもわかる話よ」

 

 闇の帝王の形を作る、邪悪な炎がゆらりと揺れる。その炎に照らされるように、少女がいた。炎のような赤い髪に、死人のように白い肌の少女。ライラ。そう名乗っていた少女は、一才の感情を宿さぬ瞳で、闇の炎を見つめている。

 

闇の帝王

「……怖いか? この炎が」

 

 闇の帝王にとって、ライラは……正確には、その背後にいるものは、盟友と呼んでも差し支えない。遥か昔に袂を分かったジャコバ・アオンとは違う、闇の帝王と呼ばれ恐れられる、神が如き存在にとって数少ない友。この少女は、その使いだった。

 

ライラ

「怖くはないわ。もう、慣れたもの」

 

 無感動な瞳で、呟く少女。それも闇の帝王にとっては慣れたものだ。

 もう何百年も、少女は客人として闇の帝王の隣にいるのだから。

 

闇の帝王

「夜の娘よ。お前は屍人を蘇らせ、世界中に混乱を招いている。シャピロ・キーツ、ショット・ウェポン、ミケロ・チャリオット、それにザビーネ・シャル……」

 

 彼らはいずれも、近い過去にこの世界で起きた動乱で命を落とし、そして未練、怨念を地球の重力圏に残して逝った。ライラという少女の操る死霊術は、ワーラーカーレンへ還ることもできない魂を隷属させる術。

 闇の帝王と呼ばれる存在にとっては、児戯にもに等しい玩具だ。だが、それを使いライラはこの数百年、幾度となくこの世界に混乱を起こしそして……その度に阻止されてきた。

 歴史の裏で世を守る武侠・シャッフル同盟の活躍によって。

 だが、ものは使い用である。死者の魂を使い世界に混乱を齎すという少女の悪戯は、闇の帝王にヒントを与えてくれたのだから。

 

闇の帝王

「それだけの屍人を操って、お前は……いや、邪神は何を望んでいる?」

 

 邪神。その名前に一瞬、ライラは眉を顰めるように動かしたのを闇の帝王は見逃さなかった。無理もない、と思う。己の身体も心も支配している存在の名前を出されて、少しでも恐怖を抱かぬものなどいないだろう。

 

ライラ

「私は、別に地上がどうなろうと関係ない。ただ、忘れてほしくないだけ」

 

 しかしそう呟く夜の娘は、相変わらず無感動な瞳だった。だが、かわいいものだと闇の帝王は思う。

 屍人を操り、世界に混乱を齎す少女の動機として、“忘れてほしくないだけ”とはあまりにも人間的がすぎる。

 もはや血の巡りも止まり、人間をやめた少女でありながら、怨念だけでここまでやっているのだから、健気なものだ。

 

闇の帝王

「フン……まあいい。しかし、バーダラーとハーディアス。ユリシーザーまで失った。暗黒大将軍は、敵討のためマジンガーとの戦いに赴いた。お前はどう見る?」

ライラ

「暗黒大将軍は負けるわ。彼は人間を下等に見下し過ぎているもの」

 

 見下し。傲慢。それが戦場において圧倒的な力の差を覆される隙となることを、暗黒大将軍も知らないはずはない。だが、それでも暗黒大将軍も、ミケーネ七大将軍の者達も……人間の、命を持つ者の底意地を侮り過ぎている。そう、夜の娘は言う。それは、闇の帝王の見解とも一致していた。

 

闇の帝王

「そうか……。ならば、せめて暗黒大将軍の犠牲を無駄にせぬ必要があるか」

ライラ

「そうね。あなたが私の術を真似して作ったリビングデッド……。あれが役に立つかもしれないわね」

 

 そう言うと、夜の娘は踵を返す。その向こうには、髑髏のような顔を持つ赤いマシン……邪霊機が待っている。

 邪霊機。邪神の依代。生贄の少女を取り込むように触手の蔦が伸び、夜の娘を呑み込んでいく。邪霊機の中へ還っていく少女。邪霊機の窪んだ眼窩に、紅い目が宿る。巫女として、夜の娘が邪霊機の心臓へ還ったのだ。

 

ライラ

「デビルガンダムを回収しなきゃいけないから、いくわ。余裕があれば、殺したい相手もいるし」

闇の帝王

「デビルガンダム……。人間が自ら生み出した環境兵器か。全く、人間とは愚かなものだ」

ライラ

「そうね。だけど、デビルガンダムの三大理論は人間が科学だけで私達の側へ近づいた証明。少しくらいは褒めてあげましょ?」

 

 悪戯っぽく、夜の娘は笑った。それを魔神越しに闇の帝王は感じた。邪霊機アゲェィシャ・ヴルの傍らには、もう一体の邪霊機が傅いている。ニアグルースと呼ばれるもう一つの邪霊機。そこに囚われている死人形は、夜の娘の隣を騎士のように続く。その様子に、闇の帝王は憐れむような視線を夜の娘へ投げかけていた。

 

闇の帝王

「幾百年の孤独を癒す、人形遊びか……」

 

 それは、人間性を捨て去り邪神の巫女として命を差し出した少女に残された人間性の発露なのだろう。死んだ人間を使った人形遊びで、理想の王子様を演じてもらっているのかもしれない。しかし、所詮は死体。それも、自我を完全に破壊された魂の成れの果て。

 人間をやめて彼岸の側へ足を踏み入れた存在でも所詮、人間なのだろう。そう、闇の帝王は感慨に耽る。しかし、それも束の間だ。

 

闇の帝王

「暗黒大将軍が勝つのならそれもよし。しかし……」

 

 次の準備を、整えなければならない。

 クツクツと、闇の帝王は嗤う。闇の中、茫と炎は揺らめいていた……。

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

—科学要塞研究所付近/激戦区—

 

 

 暗黒大将軍。その黒き巨体の登場により、戦いは次のラウンドへと突入していた。近くにいるだけで、わかる。その闘気、その闘志、そして尋常ではないその強さ。

 

エイサップ

「これが、暗黒大将軍……!?」

ショウ

「すごい負のオーラ力だ……」

 

 戦闘獣軍団の攻撃を躱し、オーラの刃で斬り裂きながらもナナジン、ヴェルビンの両機に乗る聖戦士2人は、その気迫を感じていた。剣が怯えている。そんな、漫画か武侠小説の中くらいでしか見たことのないものを2人はこの時、確かにその実在を知ったのだ。

 

暗黒大将軍

「バーダラー、ハーディアス、そしてユリシーザー。勇敢なる七大将軍を三人も倒した。そのことは褒めてやろう。しかし、この暗黒大将軍がいる限り貴様ら人間に勝利はないのだ!」

 

 暗黒大将軍の背後に、巨大な顔を持つ要塞が現れる。万能要塞ミケロス。べギルスタンで、ドモン達の前に現れたミケーネの機動要塞。ミケロスの格納庫から2機のガンダムが現れる。一体は黒い体躯に、赤い目をした機体。もう一機は、腕と一体化した翼と猛禽のような脚部を持つ異形のガンダム。

 

ドモン

「貴様達もいるのか、ミケロ・チャリオット!?」

キンケドゥ

「ザビーネか!?」

 

 クロスボーン・ガンダムX2とガンダムヘブンズソード。ドモンやキンケドゥにとって、宿敵とも言える相手だった。

 

ザビーネ

「ククク、暗黒大将軍様……。助太刀に参りました」

暗黒大将軍

「……ザビーネ、おめおめと生きておったか」

 

 暗黒大将軍は、忌々しげにザビーネを睨む。元はと言えば、ザビーネが囮役を十分に全うすればバーダラーも、ハーディアスも、ユリシーザーも死ぬことはなかったのだ。即ち、このミケーネの窮地はザビーネに責任があると言っても過言ではない。そうでありながら、恥ずかしげもなく加勢に現れる。その性根が腹立たしい。

 

ザビーネ

「申し訳ありません。大将軍と闇の帝王が死ねと言うのならば、私はこの場で死にましょう。ですが、ですが……!」

 

 ザビーネの言葉と同時、ミケロスからさらに一機、マシンが投下された。巨大なガンダム顔の下半身を持つ、禍々しいガンダム。緑色のコードを触手のように伸ばし、悪魔のような形相で眼前のものを睨め付ける。

 デビルガンダム。ドモンの人生を変えた悪魔。デビルガンダムは今、横浜やべギルスタンに現れた時よりもさらに巨大に進化しているのが、誰にでも見てとれた。

 

ザビーネ

「更なる進化を遂げたこのデビルガンダムが、地球をミケーネ帝国のものへ変えるでしょう! 自己進化、自己増殖、自己再生の三大理論を備えるDG細胞と、そしてこの……ケドラの力によって!」

 

ヤマト

「ケドラッ!?」

 

 ゴッドマジンガーのヤマトは、その名前に驚愕の声を上げた。

 

甲児

「知ってるのか、ヤマト?」

ヤマト

「ケドラは、機械に取り付きそのコントロールを奪う寄生虫みたいな奴だ。厄介な奴が出てきたぜ……」

ドモン

「寄生虫……。デビルガンダムのコアに、それを選んだというわけか!」

 

 火野ヤマトは、2万年前の古代ムー王国に呼び寄せられ、ミケーネ帝国と戦った勇者だ。ヤマトとゴッドマジンガーの戦いの記憶の中に、ケドラの存在は強く刻まれている。

 ドラゴニア王国の恐竜兵器に寄生し、悪虐の限りを尽くしたケドラ。その存在を、許すわけにはいかない。

 

暗黒大将軍

「ケドラだとっ!? 貴様、ケドラに手を出したのか!」

 

 一方、ケドラという名前が出た瞬間、暗黒大将軍は血相を変えてザビーネを睨んでいた。しかしザビーネはそんな暗黒大将軍の表情に気づいているのかいないか、陶酔的に語り続ける。

 

ザビーネ

「は、は、は。ケドラ……。素晴らしい力だ。ミケーネの科学力。メカを喰らい成長し、ミケーネ以外の全ての文明を破壊する、ミケーネへの隷属意識のみを持つ奴隷!」

 

 ミケーネの奴隷。全てを破壊する戦闘頭脳。生体コアの代わりにそれを乗せられたデビルガンダムの両肩から、粒子砲が放たれる。ケドラに侵蝕されたデビルガンダムの火力は、横浜やべギルスタンに出現した時とはわけが違う。周囲の機械獣すら巻き込む火力で、研究所の周辺を瞬く間に焦土に変えていく。

 

マーベル

「っ!?」

 

 砲撃が、ダンバインを掠めた。オーラバリアの守りがなければ即死だったかもしれない。オーラバトラーのバリアすらも凌駕する出力の火砲を、デビルガンダムは無尽蔵に打ち続ける。

 

槇菜

「こ、こんなの耐えられない……!?」

 

 巨大な盾で仲間を守るゼノ・アストラ。その盾でデビルガンダムの火砲を防いでいるがそれでも、際限なく撃ち続けられれば限度というものがある。

 

マーガレット

「デビルガンダム……暴走しているように見えるけれど」

 

 ゼノ・アストラの後方、シグルドリーヴァのマーガレットはそう呟きながらデビルガンダムを見据え、ミサイルの照準を合わせていた。しかし、撃ち続けられる粒子砲はそのまま弾幕になっており、長距離からの攻撃をデビルガンダムへ寄せ付けない。シグルドリーヴァにとって、今のデビルガンダムは天敵だった。

 

ケドラ

「……破壊スル。破壊スル」

ザビーネ

「何……?」

 

 しかし、デビルガンダムのその挙動を最も不思議そうに見ていたのは、他ならないザビーネだった。デビルガンダムの攻撃は、間違いなく機械獣や何より……クロスボーンX2を狙っていた。ザビーネは咄嗟にそれを回避していたが、随伴していたバタラはデビルガンダムの攻撃で全滅。意味がわからない。

 

ミケロ

「ッおい! 今の攻撃、こっちを狙ってたぞ!?」

 

 上空のガンダムヘブンズソードも、その砲撃に晒されていた。

 

ザビーネ

「何故だ、何故私を狙うデビルガンダム!?」

暗黒大将軍

「馬鹿者が! ケドラはミケーネ以外の文明全てを滅ぼす殲滅兵器。ドクターヘルの手が加えられている機械獣や、外様のお前達にまで牙を剥く無差別兵器なのだぞ!?」

 

 ケドラ。それはミケーネ以外の文明全てを滅ぼすために投入される殲滅兵器なのだ。ミケーネ帝国が規模を拡大すればするほど、純粋なミケーネ製のものとミケーネに隷属した……傘下のものとが深く混じり合った今となっては使われることのない戦略兵器。その禁断の扉を、ザビーネは開けてしまったのだ。

 だが、丁度いい。暗黒大将軍は気持ちを切り替え、口角を吊り上げる。

 

暗黒大将軍

「ザビーネ、貴様達はケドラの攻撃から身を守りながら敵と戦うがいい!」

 

 万が一、ケドラの攻撃でザビーネが死ぬのならばそれはそれで都合がいい。その上でデビルガンダムの強さだけをミケーネのものにできる。

 

ザビーネ

「ハ、ハハッ!?」

 

 仰々しく傅いて見せるザビーネを蹴り飛ばし、暗黒大将軍は進む。敵は宿敵・マジンガー!

 

暗黒大将軍

「行くぞマジンガー! 今日こそお前たちの神話を終わらせてくれる!?」

 

 走り出す暗黒大将軍。立ちはだかるのは、偉大な勇者・グレートマジンガー。

 

鉄也

「来い、暗黒大将軍! 今日こそお前を、地獄に叩き返してやるぜ!?」

 

 グレートマジンガーは、マジンガーブレードを構え突撃する。宿敵・暗黒大将軍に向かって。

 

甲児

「鉄也君!?」

鉄也

「暗黒大将軍は、俺が引き受ける。みんなは先に、デビルガンダムをどうにかしてくれ!」

 

 ケドラに操られ、見境なく全てを破壊するデビルガンダム。今、暗黒大将軍以上の脅威としてその場に君臨していた。鉄也の判断は正しい、そう判断しドモン達はデビルガンダムへと向かっていく。

 

ドモン

「デビルガンダム……ここで、終わりにする!」

 

 風雲再起を駆り、デビルガンダムの弾幕を掻い潜り進むドモン。それに続いてスカルハート、ゲーマルク、それにゲッターロボとダンクーガらもデビルガンダムめかげて駆けていく。

 そして、グレートはついに暗黒大将軍と会敵していた。

 

暗黒大将軍

「行くぞ!」

鉄也

「おう!」

 

 互いの剣が火花を散らし、ぶつかり合う。暗黒大将軍との、最後の戦いが始まったのだ。

 

 

……………………

第15話

「死闘! 暗黒大将軍!(後編)」

……………………

 

 

ザビーネ

「ハハハハハ! 見るがいい、見るがいいキンケドゥ! このケドラと、デビルガンダムの力を!?」

 

 ぶつかり合う白と黒。キンケドゥの乗る流星のような出立ちのガンダムF91と、ザビーネの禍々しいクロスボーン・ガンダムX2。2体のガンダムはビーム・サーベルの火花を散らし合い、互いの隙を突くように斬り結んでいた。

 ケドラの支配下にあるデビルガンダムが、無差別に拡散粒子砲を撃ちまくる。そのビームの乱舞を避けながら、2体のガンダムはその隙間を縫いながらぶつかり合っている。それは、気力のぶつかり合いだ。

 だが、キンケドゥにもザビーネにも隙などない。真に一流のパイロット同士の決闘に、隙という言葉は生まれない。

 

キンケドゥ

「ザビーネ…………」

 

 今、キンケドゥの中に宿っていたのは憐れみだった。ミケーネの武将に傅くザビーネ。そこには、コスモ・バビロニア建国戦争において時に刃を交え、時に背を預け合った好敵手の面影はもはや無い。

 

ザビーネ

「ハハハハハ! ケドラが、この醜い地球を滅ぼしそして、ミケーネのための世界へ作り変える! なんと、なんと素晴らしい力じゃあないか!」

 

 その世界に、自分はいないということを忘れているかのように興奮しながら捲し立て、ザビーネはザンバスターを構えた。それを見てからでは、ビーム・シールドは間に合わない。キンケドゥはF91を加速させ、ビームを避ける。

 光の速さで飛ぶビームを避ける。それは通常のパイロットにはできない荒技だ。だからこそ、モビルスーツ戦の主役はビーム兵器であり、モビルスーツもビームの熱量に耐えるために重装甲化していったのだから。

 しかし、F91のバイオ・コンピュータはそんな動きを事前に察知し、キンケドゥのサイコミュ的な脳波に教えてくれる。それが、極限状態でハイになっている脳と合わさりキンケドゥに人間を超えた動きを可能とさせていた。

 

キンケドゥ

「ザビーネ!?」

 

 ザビーネには、聞き出さなければならないことがある。セシリーを何処へやったのか。おそらく、ミケロスにはいないだろう。もし連れてきているのならば、今のザビーネなら想像できないほど卑劣な手段に用いるだろう。そう、キンケドゥは確信している。

 だから、セシリーはここにはいない。ならば、ザビーネはセシリーを何処へやった?

 

ザビーネ

「フ、フ、フ、フ、フ……。キンケドゥ! ベラ様の事が気になっているのだろう?」

 

 そんな思いを見透かしたかのように、ザビーネはペラペラと捲し立てる。そうしながらも、ビーム・ザンバーの高出力をF91はビームシールドで受け止め、マシンキャノンでX2の装甲を削っていく。だが、削られた側からX2の装甲が再生していくのを、キンケドゥは確認した。

 

キンケドゥ

「DG細胞か……!」

 

 DG細胞。悪魔の力に自らを売り渡し、今ザビーネは超人となっている。通常のモビルスーツでは、まず太刀打ちできない。

 

ザビーネ

「ハハハハハ! キンケドゥ、今日こそお前の息の根を止め、ベラ様の心を取り戻す! さすれば、貴族主義社会は闇の帝王様とベラ様の下で……完全な形で統治されるのだ!」

キンケドゥ

「こ、の、っ!?」

 

 X2のバルカン砲とF91のバルカン砲が、眼前で火花を散らし合う。F91は、X2を蹴り飛ばし距離を離して、ビーム・バズーカを構えた。ザビーネが耐性を立て直す前に、それを発射。ヘルメットの遮光効果がなければ失明してしまいかねないほどの光が、キンケドゥの眼前で瞬いた。

 ビーム・バズーカは、従来のモビルスーツには存在しなかったF91の持つ強力な兵器のひとつだ。ビーム・ライフル以上の密度のビームを収束し、放つバズーカ砲。ヴェスバーと合わせ、F91の全身は強力なビーム兵器で固められている。これも、そのひとつだ。

 

キンケドゥ

(今のX2相手には、普通の武器じゃ相手にならない。とにかく、火力をぶつけてDG細胞の再生能力を上回るしかない!)

 

 ビーム・バズーカを撃ちまくるF91。その悉くが、X2へ命中していた。しかし、クロスボーン・ガンダムX2はそれに構わずF91へ迫っていく。DG細胞の再生能力をフル回転させながら、怪物的に口元を歪めながら迫るX2。そんな顔面にビーム・バズーカが直撃し、吹き飛んでいく。しかし、それでも止まらずにF91を追い詰めていく。その姿はもはや海賊でも、騎士でもない。

 ウィル・オー・ウィプス。そんな怪物の名前をキンケドゥは思い出していた。

 

ザビーネ

「ヒ、ヒ、ヒヒ、キンケドゥ……! 貴様は、貴様だけはぁっ!?」

 

 DG細胞が、吹き飛んだ頭部を再生させていく。咄嗟にビーム・バズーカを捨て、F91はビームサーベルを抜いた。

 

キンケドゥ

「うぉぁっ!?」

 

 デビルガンダム細胞の悍ましい力を目の当たりにしながらも、キンケドゥは恐怖を断ち切るように叫んだ。叫ばなければ、身が竦む。身が竦めば、死ぬ。死ねば、セシリーを助けられない。そんな連想ゲーム的な思考。だが、その極限状態はキンケドゥの感性をシャープにし、F91のバイオ・コンピュータはリミッターを解除する。F91の口元が、ガクンと開かれた。そして肩部の放熱フィンガ展開される。リミッターを解除したF91は、その異常な熱量を常時排熱し続ける必要がある。そのための、排熱モード。排熱はF91の装甲塗装を剥がれさせていき、質量を伴った残像として敵のモニタを誤解させる。

 現実には今、F91はX2の背後を取るように動き回っている。だが、ザビーネが見ているX2のメインカメラには、目の前にF91がいるように認識してしまっていた。その結果、クロスボーン・ガンダムX2のビーム・ザンバーは空を斬る。手応えがないことではじめて、ザビーネは“質量を持った残像”が展開されているという事実に気づいた。

 

ザビーネ

「化け物めぇっ!?」

 

 眼帯の裏で、DG細胞が蠢く。DG細胞は、ザビーネの闘争本能を刺激しデビルガンダムの走狗とする。その結果、そして、DG細胞により進化しているザビーネは、そんなF91の動きに追随していた。

 

キンケドゥ

「き、さ、ま……っ?」

ザビーネ

「ハハ、ヒャハハハハ!? キンケドゥ、今度こそ死ぬがいいキンケドゥ!?」

 

 ザンバスターを連射しながら、クロスボーン・ガンダムX2はリミッターを解除したF91に食らいついていた。前腰のフロントスカートから、シザー・アンカーが射出される。アンカーは、“質量を持った残像”を無視し実像のF91に突き刺さる。

 

キンケドゥ

「な、に……!?」

ザビーネ

「これでぇぇぇ、終わりだァァァァッッ!?」

 

 ザンバスターをビーム・シールドで防ぎ、ビーム・ライフルで応戦するF91。しかし、DG細胞で強化されたX2には、そんなもの効きもしない。シザー・アンカーを引っ張り、F91を引き寄せるザビーネ。そのままコクピットを串刺しにする。それがザビーネの勝利へのイメージだった。しかし、それが現実になることはない。F91が握るビームの短剣が、シザー・アンカーを切断したのだ。

 

ザビーネ

「な、に……?」

 

 それは、クロスボーン・ガンダムの装備。少数精鋭で作戦を遂行する関係上、暗器として装備していたヒート・ダガーだ。F91の装備ではない。ザビーネは混乱する。今、キンケドゥが乗っているのはF91なのだから。しかし、F91のすぐ後ろに「X」状のバーニアが見え、謎が氷解する。

 

キンケドゥ

「トビアか! ……ありがたい!」

トビア

「キンケドゥさん! その人を……楽にしてあげてください!」

 

 暴れ狂うデビルガンダムを相手に応戦しながら、スカルハートがヒート・ダガーを投げたのだ。F91はそれを受け取り、シザー・アンカーを切った。ただ、それだけのこと。

 しかし、それだけのことがキンケドゥと、ザビーネを別つ決定的な差だった。

 トビアから受け取ったヒート・ダガー。フル稼働するF91の排熱は、十分に短剣に熱を与えている。X2の視界ギリギリまで迫っているキンケドゥは、それをX2のコクピットへ突き刺す。普通の人間ならば、即死だろう。しかし、DG細胞による再生能力を得ているザビーネは、それでもまだ生きている。

 

ザビーネ

「キ、ン、ケ、ド、ゥ! キンケドゥ!?」

 

 潰れた喉で、怨念を吐き出すザビーネ。それを振り切って、F91はX2を蹴り飛ばす。そして、腰部と肩から4門の砲塔を展開。

 

キンケドゥ

「これで、ゲームオーバーだッ!?」

 

 ツイン・ヴェスバー。F91のエネルギー全てを消耗させる必殺ビームの多重奏攻撃が、X2を呑み込んだ。一つ一つが、超高出力のヴェスバー。それを4連斉射。至近距離からのヴェスバーは、クロスボーン・ガンダムX2を再生する次から焼き尽くしていく。

 

ザビーネ

「ハ、ハハハハハ!! キンケドゥ、これで……勝ったと思うなよキンケドゥ!?」

 

 ザビーネの、断末魔の叫びがキンケドゥの耳に障った。ビームの熱に焼かれながらしかし、ザビーネは叫び続ける。

 

ザビーネ

「ベラ様は! 闇の帝王の妃となる! 貴様は永遠に、ベラ様を取り戻すことはできないのだ! ハハハハハ! ハハハハハ!?」

キンケドゥ

「だ、ま、れ、ぇ、っ!?」

 

 キンケドゥの叫びに呼応するように、F91のツインアイが輝いた。それと同時に、ヴェスバーの出力が上がっていく。今度こそ、ザビーネに引導を渡すために。

 

ザビーネ

「ハハハハハ! ヒャハハハハハ!?」

 

 そして、爆発。クロスボーン・ガンダムの心臓とも言うべき核融合炉が、ヴェスバーの光で誘爆したのだ。DG細胞ごと焼き尽くす爆炎の中、尚もザビーネは笑い続けていた。

 爆発で生まれた火柱から退避し、やがてF91は最大稼働モードを解除する。リミッターを外し、そしてツイン・ヴェスバーの4連斉射を行なってF91は、静かに機能を休止状態へ移行しはじめていた。

 

キンケドゥ

「ザビーネ……!」

 

 ザビーネは倒した。だが、生死まではまだ確認できていない。DG細胞を得ているとはいえ、無事とは思えないがしかし、キンケドゥはまだ感じていた。ドス黒い、狂気のプレッシャーを。

 しかし、今はまずエネルギー切れを起こしているF91をどうにかしなくてはならない。キンケドゥは残り少ないエネルギーを節約するためF91を歩かせながら、ゴルビー2へと向かう。

 

キンケドゥ

「こちらキンケドゥ・ナウ。ガンダムの補給を頼む」

 

 ゴルビー2のドッグに収容されるF91。キンケドゥもコクピットから降り、スタッフから渡された栄養ドリンクのプルタブを開いて一気に飲み干す。炭酸の刺激と、カフェインの成分が疲労を誤魔化している。そんな感覚があった。

 

キンケドゥ

「ザビーネ……。お前は、何を求めていたんだ……?」

 

 ミケーネの支配する貴族主義社会。それは、本当にロナ家の提唱する正しい統治の形だと、ザビーネは胸を張って言えるのか? だとしたら、お前はどこで、間違えたんだ?

 そんなことを思いながら、補給を受けるF91に視線を移す。宿敵との決闘を終えたその姿は、どこか哀しみを背負っているようにキンケドゥには見えた。

 

 

…………

…………

…………

 

 

ドモン

「今日こそ、決着をつけるぞ。デビルガンダム!」

 

 嘶く愛馬の手綱を握り、ゴッドガンダムは空を駆ける。粒子砲の雨を掻い潜り、デビルガンダムへ迫っていく。それを阻もうと、巨大な翼がゴッドガンダムに立ち塞がった。

 

ミケロ

「今日こそてめえの息の根を止めてやるぜぇ、ドモン・カッシュァッ!?」

 

 ガンダムヘブンズソード。デビルガンダム四天王の一角。ヘブンズソードの猛禽のような脚が、ゴッドガンダムを襲う。

 

ドモン

「ミケロ・チャリオット! 貴様と遊んでいる暇はないッ!?」

 

 ゴッドガンダムへ迫る銀色の脚。ゴッドガンダムは風雲再起から飛び降り、ヘブンズソードを迎え撃つ。バックパックの日輪が輝き、ゴッドガンダムの右手に爆熱が宿っていく。

 

ドモン

「俺のこの手が真っ赤に燃える! お前を倒せと轟き叫ぶっ!?」

 

 爆熱ゴッドフィンガー。ゴッドガンダム必殺技。そのエネルギーを掌に集約し、ドモンは氣を込めていく。流派・東方不敗。その拳宿る者には、常に王者の風が吹き荒ぶ。

 全身の経絡を集中させ、天を破る侠の一撃。ドモンの気迫を込めた氣弾が、ガンダムヘブンズソード目掛けて飛んでいく。その氣弾は巨大な掌となり、ヘブンズソードを掴んだ。

 

ミケロ

「な、何ぃッ!?」

ドモン

「ミケロ・チャリオット! 悪党に明日を生きる資格はないッ!」

 

 巨大な掌に掴まれたヘブンズソードを巻き込んで、掌は爆発。ドモンの氣を込めた一撃。石破天驚ゴッドフィンガー。黄金に輝くゴッドガンダムは爆発するガンダムヘブンズソードを顧みもせず、風雲再起と共にデビルガンダムへ向かっていく。

 

ミケロ

「バ……バカな……。この、俺が……。また、コケにされたのか?」

 

 ドモン必殺の一撃を受け、落下していくヘブンズソード。そこに、低圧砲が撃ち込まれていく。

 

ユウシロウ

「…………ファイア」

 

 ユウシロウのTAだ。研究所の防衛ラインから機械獣や戦闘獣を狙撃するTA部隊。その射程に、ヘブンズソードは入り込んでいたのだ。

 

ミケロ

「アレは、鬼寄せの……? ク、クク……」

 

 ミケロは、それが何を意味しているのかはしらない。しかし、今ミケロの心臓を握っている女はユウシロウを脅威と認識していた。それ故に、べギルスタンで始末するはずだったのを、シャッフル同盟とゲッターに邪魔されたのを思い出す。

 思えば、何もかもアイツが悪いのだ。八つ当たりのようにミケロは、ありったけの敵意をユウシロウに向けた。幸い、まだヘブンズソードは生きている。あんなチャチな人形ひとつ倒すくらいわけはない。

 

ミケロ

「ヒ、ヒヒ……。ドモンは後回しだ! まずはてめえから八つ裂きにしてやらぁっ!?」

 

 目標をTAに定め、ガンダムヘブンズソードが飛んだ。飛び散る羽根が刃となり、TA部隊目掛けて迫っていく。

 

高山

「各機、散開!」

 

 高山中佐の合図とともに、4機のTAは散り散りになってそれを躱した。ヘブンズソードは、他の雑魚に構うまでもなく最初に自分へ低圧砲を当てたTA……ユウシロウを狙う。

 

安宅

「ユウシロウ!?」

高山

「豪和大尉!?」

 

 人工筋肉で走るTAよりも、DG細胞で強化されているヘブンズソードの飛翔は速い。その疾風が如きスピードは、瞬く間にユウシロウの眼前へ迫っていた。

 

ユウシロウ

「…………!?」

 

 咄嗟に脚部のアルムブラストを吹かし、ユウシロウのTAは飛んだ。本来ならば隔壁の破壊に使う機能であるアルムブラストの爆発。それが目眩しになりヘブンズソードは一瞬怯む。しかし、喰らい付いた獲物を離すほど、ミケロも甘くない。

 

ミケロ

「ッ!? てめぇ……!」

 

 逆にそれが、ミケロの逆鱗に触れたのだ。ハイパー銀色の脚が、TAへ伸びそして、掴む。

 

ユウシロウ

「…………!?」

ミケロ

「ヒャハハハハハ! てめえは、ここで死に晒せゃぁっ!?」

 

 

 

 死ぬ。そんな直感的、本能的恐怖が、ユウシロウの心臓をドクンと跳ね上がらせた。

 

ユウシロウ

(俺は、ここで死ぬ……? 怖いのか、死ぬのが?)

 

 否。怖いのは死ぬことではない。

 自分が何者なのか、その答えを見つけられぬまま終わること。

 このままでは、死ぬ。終わる。恐怖につかまれた心臓がひしゃげ、潰れてユウシロウは死ぬ。

 

ユウシロウ

「俺は……」

 

 TAのワイヤーアンカーが、ガンダムヘブンズソードを掴んだ。このままでは、終われない。

 

ミケロ

「な、何ぃッ!?」

ユウシロウ

「俺は…………!」

 

 恐怖とは何か。自分はどこからきて、どこへ行くのか。

 

——いざや。

——いざ往かん。

 

 遠くで、歌声が聞こえた気がする。その詩を口ずさむ少女を、ユウシロウは知っている。

 ミハル。彼女とユウシロウの間にある縁、絆、契り。それが己の内に潜む恐怖とどのように繋がっているのか。

 そして、この豪和ユウシロウという人間が何者なのか。

 その謎に、少しずつだが近づきつつある。だからこそ、いざ往かん。

 

 ユウシロウのTAはもう一度、アルムブラストを使用する。地震の脚部を巻き込みかねない至近距離での爆発。それを受けて、ガンダムヘブンズソードの鋼鉄とも思える装甲にヒビが入ったのを、ユウシロウは見逃さなかった。

 

ユウシロウ

「俺は……自分の意志で戦っている!」

 

 人形などではない。それが、ユウシロウがこの戦いの中で明確に得た自分自身の意志。

 TAのグレネード弾が、ヒビの入った装甲に何度も、何度も投げ込まれる。DG細胞の再生能力はしかし、それを上回る。だが、やめない。ユウシロウは、この強敵を前に戦い続けている。

 

ミケロ

「そんな攻撃ィッ! 無駄なんだよぉッ!?」

 

 ヘブンズソードは、TAを上空で離す。アンカーが刺さっているので、まだ落下はしない。だが上空で宙ぶらりんの状態になり、TAの重量を支え続けるアンカーはヘブンズソードの超スピードを受け続けている。

 

ユウシロウ

「ッ!?」

 

 命綱が切れれば、一貫の終わり。

 

ミケロ

「死ねよやぁッ!? ハイパー銀色の脚スペシャルゥッ!?」

 

 放たれる銀色の脚が、ユウシロウを襲う。絶体絶命の窮地、歩兵であるTAにこの攻撃を防ぐ手立てはない。

 

竜馬

「トマホゥゥゥゥク・ブゥゥゥゥメランッ!?」

 

 しかし次の瞬間、ブーメランのように飛んできた戦斧がヘブンズソードの脚を斬り落とす!

 

ミケロ

「な、何ぃッ!?」

 

 ゲッターロボ。チャップマンを正気に戻した天敵が、再びミケロの前に立ち塞がった。それと同時、アンカーが切れてユウシロウのTAは落下する。しかし、ゲッター1がそれを追い急降下。オープンゲットで先回りすると、巨大な腕がユウシロウを掴み、守っていた。

 

弁慶

「チェンジ! ゲッター3!?」

 

 ゲッター3の肩部から、ミサイル弾が放たれヘブンズソードに命中。ゲッター線のミサイルが爆発を起こす。

 

弁慶

「天魔、伏滅!」

 

 半端な鬼獣や、戦闘獣ならその一発で御陀仏だろうゲッターミサイルの連続斉射。それを浴びながら、ガンダムヘブンズソードは狂ったように飛び回る。さながら、狂気を孕んだ大鷲のように。

 

竜馬

「ヘッ、ユウシロウ……。てめえなかなか男じゃねえか」

ユウシロウ

「流、竜馬さん……?」

 

 そんなヘブンズソードを見据えながら竜馬が呟く。

 

隼人

「フッ、竜馬はお前さんが気に入ったらしい」

弁慶

「そういうことだ。残念だったな!」

竜馬

「おい弁慶、そりゃどういう意味だ! ……だが、ユウシロウ。お前が何かと戦っているのは、十分伝わった」

 

 そう言って、歯を立てて笑みを浮かべる竜馬。ユウシロウを降ろすと、ゲッターは再びゲッター1にチェンジしガンダムヘブンズソードへ飛びかかっていく。

 

竜馬

「いい根性してやがるぜ。お前が運命と闘うっていうなら、俺も力を貸してやる!」

 

 ゲッタートマホークを振りかぶり、ヘブンズソードを追い詰めていく。避けども避けども、竜馬の怒涛の攻勢は終わらない。

 

ミケロ

「ふざ、ふざけるなぁっ!? デビルガンダムの力を得たこの俺が、二度も負けるなんてあるわけがねえッ!?」

隼人

「フッ、そいつは二流の悪党の台詞だな」

竜馬

「ああ! デビルガンダムを受け入れて運命の奴隷になった時点で、てめえは所詮そこまでなんだよ!?」

 

 トマホークが、ガンダムヘブンズソードの頭をカチ割り潰した! そして!

 

竜馬

「ゲッタァァァァァッビィィィィィッムッ!」

 

 ゲッターロボの腹部から放出されるゲッター線の超高熱。それに飲み込まれヘブンズソードは爆ぜる。

 

ミケロ

「み……認めねえ! 俺は認めねえぞ!?」

竜馬

「見苦しい! とっとと地獄に落ちやがれ!?」

 

 断末魔を遮り、竜馬が行く。ゲッタービームの爆発に飲み込まれ、ガンダムヘブンズソードが堕ちていく。それを無視して竜馬の目指す先にいるのは……。

 

竜馬

「久しぶりに骨のありそうな相手だぜ。覚悟しろ、デビルガンダム!」

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

ドモン

「超級! 覇王! 電影弾!?」

 

 自らを巨大な竜巻としたゴッドガンダム。戦闘獣の軍団を蹴散らして荒れ狂う悪魔目掛け、一目散に爆進していた。それに続くようにして、他のガンダム達も続く。

 

ケドラ

「破壊スル。破壊スル! コノ地ニミケーネ帝国ヲ築クノダ!」

 

 デビルガンダムの胸部。かつてキョウジ・カッシュが囚われていたそこに、巨大な脳のようなものが鎮座しているのをドモンは見た。

 

トビア

「あれは? 脳? まさか?」

 

 バイオ脳。かつて木星帝国のクラックス・ドゥガチ総統が、自らの影武者を用意するために作り出した人工培養の頭脳。それとケドラは酷似している。スカルハートはピーコック・スマッシャーを乱射しながら、デビルガンダムの周囲を飛び回っていた。

 粒子砲やガンダムヘッドを無尽蔵に飛ばしまくる今のデビルガンダムに接近するのは至難の業だ。今、スカルハートはガンダムヘッドの処理で手一杯。Zガンダムのアムロやゲーマルクのシャアも、その奇怪なガンダム顔の怪物の処理に追われている。

 

シャア

「私達がいない間に、ガンダムも随分と自由になったものだな!」

 

 ゲーマルクは、全身のビーム兵器を撃ちまくり敵を迎撃していた。

 

アムロ

「全く恐れ入る!」

 

 ファースト・ガンダムのパイロットだった青年アムロも、その禍々しい顔をしたガンダムヘッドには面食らう。Zガンダムのハイパー・メガランチャーでガンダムヘッドを撃ち落とすが、すぐに次のガンダムヘッドが地面から生えてきてデビルガンダムへ近寄らせない。だが、それでいい。

 

アムロ

「どの道、あの体積だ。俺達のモビルスーツじゃ決定打にはならないだろう」

シャア

「ああ。私達の仕事は、本命をデビルガンダムにぶつけるための引き付け役だ。行けッ、ファンネル!」

 

 ゲーマルクのバックパックから、マザー・ファンネルが展開される。地球上では、サイコミュの有効射程は宇宙空間に比べて制限される。だが、それでも振りかかる火の粉を振り払うくらいの仕事はしてくれる。

 特にゲーマルクのマザー・ファンネルは、その母体からさらに細かい子供……チルド・ファンネルを展開してより細かい波状攻撃をかけることができる。ガンダムヘッドを包囲し、各個に撃破するくらいのことはシャアならばわけはない。

 

アムロ

「シャア! そこォッ!?」

 

 ゲーマルクの背後に突如現れたガンダムヘッドを、Zガンダムはロング・ビームサーベルで斬り裂く。さらに、反撃の手を与えないグレネードランチャーの斉射で、新たなガンダムヘッドは瞬く間に撃破されていく。

 アムロとシャア。かつて剣を交えた2人が背中を預け合って戦う限り、そこに隙という言葉は存在しない。

 

チボデー

「流石は伝説のニュータイプって奴か……。俺達シャッフル同盟も、負けてらんねえぜ!」

ジョルジュ

「ええ、行きますよ!」

 

 ガンダムローズとドラゴンガンダムが、金色に輝く。胸にシャッフルの紋章が灯り、まず動いたのはガンダムローズだ。巨大な盾から展開されるローゼスビットが竜巻を作り、周囲の戦闘獣やガンダムヘッドを巻き込みながらデビルガンダム目掛けて迫っていく。

 

ジョルジュ

「ローゼス・ハリケーンッ!?」

 

 ローゼスハリケーン。ガンダムローズ最大奥義が、デビルガンダムを捉えた。デビルガンダムは粒子砲でそれを迎撃するが、デビルガンダムを相手にジョルジュも一切の出し惜しみをしない。落とされれば同じだけ、ローゼスビットを再展開し続ける。

 

ジョルジュ

「今です!」

チボデー

「おう!」

 

 デビルガンダムがローゼスハリケーンを迎撃しているその間、サーフボードに乗って懐に入り込むガンダムマックスター。輝きと共に放たれる拳は、一度に10発のストレート!

 

チボデー

「豪熱ゥッ! マシンガンパンチ!」

 

 豪熱マシンガンパンチ。チボデー・クロケットの豪速ストレートを一瞬の間に幾度も繰り出すガンダムマックスターの必殺技が炸裂したのです! デビルガンダムの巨体をものともしない豪速。チボデーのプライドを賭けた拳が、炸裂しました。そして、その果敢な一番槍は、暴れ狂うデビルガンダムに一瞬の隙を作ったのです!

 一度隙ができれば、どれほどの巨体であれそれは意味を持ちません。なぜなら、そうなぜならば!

 彼らは、シャッフル同盟なのだから!

 

サイ・サイシー

「次はオイラだ!」

 

 瞬足のドラゴンガンダムが、デビルガンダムの頭上へ飛び込みました! 黄金に輝くドラゴンガンダムの背中から、蝶を思わせる羽根が浮かび上がります。それは、サイ・サイシーの会得した少林寺拳法の究極奥義!

 

サイ・サイシー

「天に竹林! 地に少林寺! 目にもの見せるは最終秘伝!」

 

 サイ・サイシー全身の経絡から発される氣が、サイ・サイシーの肉体を包み込んでいく。ドラゴンガンダムは氣の塊となったサイ・サイシーをモビルトレースし、全てを打ち砕く氣の塊と化して特攻する。

 

サイ・サイシー

「真・流星胡蝶拳!?」

 

 真・流星胡蝶拳。自らをエネルギーに変えて放たれる流星のような一撃が、デビルガンダムに降り注いだ。デビルガンダムはそれを迎撃するために核酸粒子砲を放つも、氣の塊となった胡蝶に、そんなものは通じない。降り注ぐ流星を浴びて、デビルガンダムのコクピットを侵略するケドラが叫び声を上げる。

 

アルゴ

「ヌンッ!」

 

 しかし、攻撃は終わらない。ジョルジュが、チボデーが、サイ・サイシーが作ったチャンスに、アルゴ・ガルスキーのボルトガンダムも最大の一撃をデビルガンダムへ叩き込みます。

 その剛腕を大地に叩きつけ、アルゴの気迫に大地のエナジーが活性化していきます。大地が隆起し、地面を砕きながら迫る衝撃!

 

アルゴ

「ガイアクラッシャーァッ!?」

 

 圧倒的な生命エネルギーが、デビルガンダムを襲う。ガイアクラッシャーにより隆起した大地がデビルガンダムを取り囲み、足場を奪う。そして、そこに突撃するボルトガンダム! ボルトガンダム全力の突進から繰り出されるタックルは、デビルガンダムを大きく揺らがせます。そして!

 

ドモン

「これで……終わりだぁっ!?」

 

 みなさんお待ちかね!

 我らがドモン・カッシュの番がついに、やってきたのです!

 

ケドラ

「破壊スル。ミケーネ以外ノ文明ハ全テ……!」

 

 ゴッドガンダム目掛け、粒子砲を放つデビルガンダム。しかし、もはやそんなものゴッドガンダムには通用しないのです。粒子砲の弾幕を掻い潜り、ゴッドガンダムはデビルガンダムの懐に入り込みました。そして、黄金に輝く両手を掲げ、そこにドモンは全ての力を込めます。

 

ドモン

「流派! 東方不敗が最終奥義!」

 

 キング・オブ・ハートの紋章が輝き、ゴッドガンダムに力を与えます。その力こそ、最強の証!

 ドモンの右手が真っ赤に燃え、勝利を掴めと轟き叫ぶ。その轟砲は、デビルガンダムをも慄かせる、勝利の雄叫び!

 

ドモン

「石破ァッ! 天驚ケェぇぇェッん!?」

 

 金色のゴッドガンダム。その両手から放たれた覇気。それはゴッドガンダムの感情エネルギーシステムを介し、爆発的なエネルギーの渦となってデビルガンダムを呑み込んでいきます!

 石破天驚拳。この奥義にはドモンの師・マスターアジアの愛と哀しみ、そして怒りと憎しみを越えた先にあるものをドモンに宿らせる魂の一撃。この奥義を撃つたびに、ドモンは想うのです。師匠のことを。

 バイストン・ウェルという世界でまだ、師匠は戦い続けている。魂の安息の地を取り戻すための戦い。それは、地球の豊かな天然自然を取り戻そうとしたかつての戦いに似ています。

 ですが、今の東方不敗はかつての、デビルガンダムを使い人類を滅ぼそうとした彼とは違う。あの過ちを繰り返さぬために、師匠は今も戦っている。その事実を受け止めたからこそ、ドモンもまたやるべきことがあるのです。

 

ドモン

「デビルガンダム! お前など最早、俺の相手ではないっ!」

 

 師匠が魂の安息を守るために戦うのならば、己がすべきことは現世に生きる人々を守るための戦い。この石破天驚拳は、未来を掴めと輝き叫んでいるのです!

 

ケドラ

「我ハ、ミケーネノ……!」

ドモン

「黙れッ! ミケーネ帝国。お前達もまたこの星が生み出した生命ならば、共存共栄もあり得たはず。だが、貴様達ミケーネは異文明を支配し、滅ぼし、隷属させる道を選んだ!」

 

 それは、ともすれば霊長のカルマなのかもしれない。なぜならマスターアジアは、かつてのミケーネと同じ道を歩もうとする人類をこそ見限ったのだから。

 だが、だがしかし。

 

ドモン

「俺は、シャッフルの紋章をあの人から受け継いだ者として……その驕りを討つ! それこそが、この地上に戻ってきた、キング・オブ・ハートの使命だぁっ!?」

 

 ドモンの叫びが、空を割った。そして掴む。デビルガンダムのコア……ケドラ。その心臓を!

 

ドモン

「ヒィィィィィィト・エンドッ!?」

 

 感情エネルギーの熱が、ケドラを捉え起こすビッグバン。デビルガンダムの中心部で巻き起こったそれは、ケドラを、デビルガンダムを巻き込み大爆発を起こしていく。

 燃え上がるデビルガンダム。焼け付き、斃れる悪魔。それを、神の名を冠するガンダムは見つめ……見据えていた。

 

ケドラ

「破壊……。ミケーネ……。全テノ文明……」

 

 ケドラの頭脳も、その意識を完全に沈黙させる。だがそれも、今のドモンにとっては通過点に過ぎない。

 

サイ・サイシー

「やったぜ、アニキ!」

ドモン

「いや……まだだ」

 

 ドラゴンガンダムを制し、ゴッドガンダムは天を見据える。たとえ姿をうまく隠していたも、その黒く、怨念に満ちたオーラは隠せない。

 

チャム

「ショウ、怖いよ……!」

ショウ

「この感じは……!?」

トビア

「ああ、間違いない……!」

 

 鋭敏な感覚を持つミ・フェラリオのチャムは、より正確に感じているらしかった。だが、フェラリオでなくともショウも、トビアも、天空に渦巻くその怨念を感じ取っていた。それに、

 

マーガレット

「シグルドリーヴァ……!?」

 

 シグルドリーヴァの右手が、震えている。それが意味するものを、マーガレットは悟った。そして、ゼノ・アストラのコクピットでも、その異変を槇菜は察知している。

 

槇菜

「来る……あの子が!」

 

 あの子。血のように赤い邪霊機に乗った少女。邪霊機アゲェィシャ・ヴルは、その髑髏のように窪んだ眼窩で、彼女達を見据えている。それがわかる。

 そして、雲を突き抜けるようにしてそれは現れた。

 

ライラ

「デビルガンダムを倒すだなんて……やってくれるよね、全く!」

紫蘭

「……………………」

 

 邪霊機アゲェィシャ・ヴル。それの傍らに立つもう一つの邪霊機ニアグルース。槇菜達がバイストン・ウェルで、べギルスタンで交戦した謎の勢力。ライラの、この世の全てのものを憎むような視線が、槇菜を貫いていた。

 

 

…………

…………

…………

 

 

暗黒大将軍

「貴様……邪神の巫女か。なんのつもりだ?」

 

 グレートマジンガーと鍔迫り合う暗黒大将軍は、ダークサーベルの重い一撃でマジンガーブレードを薙ぎ払いライラを一瞥する。ライラはその視線を感じ、わざとらしく笑って見せた。

 

ライラ

「一応、お仕事をしにきたのよ。暗黒大将軍。あなたと人類のどちらが勝とうと私はどうでもいい。だけど、その敗北に私のリビングデッドを巻き込まれたら困るから」

キンケドゥ

「!?」

 

 リビングデッド、直訳して屍人。その言葉に、ゴルビー2からの補給を終えたF91に搭乗し、戦闘獣と戦っていたキンケドゥは眉根を寄せる。

 

キンケドゥ

「まさか……ザビーネを生き返らせたのは!?」

ライラ

「うん」

 

 挑発的に笑みを作り、少女は妖艶に笑う。と、同時……彼女の邪霊機の握る剣が黒く輝き、残骸となっていたデビルガンダム、それにクロスボーン・ガンダムX2とガンダムヘブンズソードに光を放つ。それを浴びたガンダム達の残骸は、何処かへと消えてしまう。

 

ユウシロウ

「……これは!?」

マーベル

「どういうこと!?」

 

ライラ

「ミケロとザビーネには、もう一度奈落に戻ってもらうの。魂の浄化もできず、輪廻からも外れ、永遠に苦しみ続ける魂の坩堝……。そんなところにいたら可哀想だもの。だから、私がもう一度、作り直してあげる」

ショウ

「……まさか!?」

 

 死者を蘇らせる術。それをこの少女が行使できるというのならば、いくつかの辻褄が合う。例えばショット・ウェポン。今バイストン・ウェルでサコミズ王を唆す悪魔は、一度ショウ達の手で倒されたはずの存在。

 

沙羅

「そういうことか……シャピロを生き返らせたのも!」

 

 シャピロ・キーツ。かつて獣戦機隊が戦った強敵もまた、同様に。

 

ライラ

「そうだよ。シャピロはまさか、ムゲ帝王の残留思念まで蘇らせることになるなんて思わなかったけど」

「てめぇ……何考えてやがる!?」

 

 忍が吠えた。ライラはそれにクスリと笑い、答えない。

 

「答えねえっていうなら!」

 

 ダンクーガが背中の断空砲を展開するのと、邪霊機の下にミサイルが降り注ぐのはほぼ同時だった。忍達よりも一瞬早く、無言でマーガレットが、シグルドリーヴァの引鉄を引いていた。

 

紫蘭

「…………!」

マーガレット

「…………」

 

 アゲェィシャ・ヴルを庇うように、ニアグルースが前に出てその砲撃を浴びる。邪霊機ニアグルース。そのコクピットで虚な瞳でマーガレットを見ている男もまた、ライラによって蘇らされた。その確信と共に、マーガレットは無言で引鉄を引く。ニアグルースの装甲が割れ、中身が露出した。まるで生物のようにどくどくと脈打つ筋肉と、血管。しかし、少しずつ装甲が修復されやがてみえなくなっていく。

 

隼人

「なんだ、あいつは……?」

竜馬

「有機体なのか、メカなのか……?」

 

 まるで鬼獣のような内部構造を晒した邪霊機に、隼人、竜馬は目を鋭くした。しかし、マーガレットはすでに見ている。あの中にいる最愛の人は、尊厳を奪われたかのような姿で邪霊機に命を吹き込む装置と化していることを。

 

マーガレット

「どうだっていい。私はお前を倒す」

 

 だからこそ、マーガレットは背を向けるわけにはいかない。

 

沙羅

「あんた……。やるよ、忍!」

「沙羅。おう!」

 

 コクピット越しでもマーガレットの怒りを、憎しみを沙羅は感じていた。それはかつて、そして今も。自分自身を苛んでいる感情と同じだと、言葉の端々から伝わったのだ。そんな沙羅にシンクロするように、ダンクーガも邪霊機へ断空砲を放つ。

 断空砲の強烈な光はしかし、漆黒の剣の纏うオーラに打ち消された。邪霊機アゲェィシャ・ヴルだ。鴉のような翼を翻し、邪霊機はシグルドリーヴァと、ダンクーガを睨む。

 

ライラ

「へえ……私達と戦うつもりなんだ。そんな紛い物で」

「紛い物だと……?」

雅人

「どういう意味さ!」

 

 その疑問には答えず、邪霊機は鴉の翼を羽撃かせ跳ぶ。邪悪な魂を媒介した衝撃波を剣先から放ち、ダンクーガへ迫り来る。

 

「んなろぉ!?」

 

 衝撃波を躱し、ダンクーガも突っ込んだ。断空剣を持ち、果敢に挑む。邪霊機よりも、ダンクーガの方が体格的には巨大だ。しかし大きい分、動きも大振りになる。その振りの大きさは隙になり、赫い邪霊機は悉くを避けていく。

 

ライラ

「アハハ! そんなので、私に勝てるはずないじゃない!?」

「クソッ!?」

 

 パルスレーザーを放つも、やはりそれは当たらない。まるで、ダンクーガの攻撃を先読みしているかのような動きで邪霊機は飛び回る。

 

ライラ

「じゃあ…………死んでよっ!?」

 

 剣の一振りと共に生まれた暗雲が、ダンクーガを襲う。しかし、その攻撃はダンクーガに届く前に巨大な盾によって弾き出された。

 

槇菜

「これ以上は……やらせない!」

 

 ゼノ・アストラだ。ゼノ・アストラが光の翼をはためかせダンクーガの前に躍り出ると、その盾でダンクーガを庇う。そして、黒い暗雲がゼノ・アストラを襲う直前、盾が輝き暗雲を打ち消したのだ。

 

ライラ

「旧神の護り……少しだけだけど、力が上がってる?」

槇菜

「そんなの、知らない。だけど、ゼノ・アストラは私の相棒なんだ。私が、私達が護りたいものを守るためにこの力があるのなら!」

 

 叫び、ゼノ・アストラは飛んだ。右手に持つ盾を前に突き出し、邪霊機目掛けて迫っていく。羽撃きに舞い散る羽が、意志を持つかのように邪霊機に迫っていった。それを漆黒の剣で払い除けたその直後、本体が眼前に迫る……!

 

槇菜

「あなたがみんなを傷つけるなら……私はそれを止めてみせる!」

 

 ゼノ・アストラの左手に、焔が灯った。その焔はやがてハルバードの形へ変質し、槇菜の武器になる。

 

ライラ

「っ!?」

槇菜

「人の命を弄び、貶める……。そんなこと、絶対に許されないことだよ!」

 

 ハルバードを振るうゼノ・アストラ。それを剣で受け止めるアゲェィシャ・ヴル。斧槍の重圧をしかし、邪霊機の剣先は受け止め、弾く。

 鴉のような羽根が羽撃き、その羽根が今度はゼノ・アストラを取り囲んだ。

 

ライラ

「旧神の巫女……いい加減目障り。そんなこと、私だってわかってるのに!」

 

 叫び、漆黒の剣を振るうアゲェィシャ・ヴル。盾を構えるゼノ・アストラ。剣を受け止め、今度は斧槍による反撃。

 

槇菜

「だったら、どうしてそんな非道いことをするの!」

ライラ

「非道い? 非道いのはあなた達人間の方だ!」

 

 ぶつかり合う戦槍と剣が火花を散らす。ライラの顔が、憎しみにギラついていた。その憎しみを直視ししかし、槇菜は怖じけない。

 

ライラ

「怖くて、熱くて……暗くて。あんな酷い仕打ちを生きているものに対してできるのが人間だ。だから!」

 

 しかし、アゲェィシャ・ヴルの方が一枚上手だ。今まで槇菜は、盾で直接ぶつかるような戦い方ばかりをしていたのだから、不得手な戦斧でぶつかっても剣に慣れているライラには勝てない。それは自明だった。アゲェィシャ・ヴルの一閃が斧槍を払い除け、ゼノ・アストラの左手が無防備になる。

 

槇菜

「っ!? それでも……!」

 

 だが、槇菜もそれは理解している。まともにやり合って勝てる相手ではないと。相手はダンクーガや、オウカオーとも渡り合っていたほどの強敵なのだ。だから、槇菜は最初からこの状況になることを予想していた。そして予想通りに左手の指かわワイヤーを展開し、邪霊機の装甲に突き刺す。

 

ライラ

「小癪な真似を!?」

 

 ワイヤーに絡め取られた邪霊機。そこに、炎を纏う斬撃が飛ぶ。

 

エイサップ

「槇菜、そのまま押さえろ!」

 

 エイサップのナナジンだ。羽撃きと共に駆けるナナジンが、両手に持ったオーラソードに炎を纏う。

 

ライラ

「聖戦士……!?」

 

 ナナジンの性能は、地上に出たことでバイストン・ウェルにいた時よりも飛躍的に向上している。それに、エイサップのオーラ力もまた戦いの中で研ぎ澄まされていた。

 既に、以前の戦いで弄んだエイサップではない。それをライラは、エイサップのオーラ力で感じ取る。このままでは、まずい。

 

エレボス

「今のエイサップなら、やれるよ!」

エイサップ

「俺は自分の力を過信したりはしない!」

 

 だからこそ、エイサップは強い。逸らない。驕らない。その曇りなき眼が捉える邪悪を、決して一人で討とうとはしない。邪霊機が旧神の拘束から逃れようとしている時既に、背後にはもう一つの闘志が燃え上がっていた。

 

ドモン

「お前の邪念、無念、怨念……。確かに伝わった。だが!」

 

 そう、ゴッドガンダム。キング・オブ・ハートの称号を持つシャッフル同盟が一人、ドモン・カッシュだ。槇菜が動きを封じ、エイサップとドモンが挟撃する。全て無言のうちに作られたコンビネーション。その術中に、既にライラは嵌まっていたのだ。

 

ドモン

「ゴッドスラッシュ! タイフゥゥゥゥゥゥン!?」

エイサップ

「斬るぞぉぉぉぉぉっ!?」

 

 交差するゴッドガンダムとナナジン。邪霊機を両断しようとするその一閃はしかし、もうひとつの赫い邪霊機に阻まれる。

 

紫蘭

「…………!」

 

 邪霊機ニアグルース。アゲェィシャ・ヴルに付き従う騎士のようなその死人形は、無言でアゲェィシャ・ヴルを突き飛ばし、迫り来るナナジンのオーラフレイムソードをその両腕で直に白羽取る。

 

エイサップ

「何ッ!?」

エレボス

「エイサップ!?」

 

 そして、柔道の要領でナナジンを背負い投げ、ゴッドガンダムの方へ放り投げた。

 

ドモン

「しまった!?」

 

 急に飛び出るナナジンに、ドモンは咄嗟にゴッドスラッシュタイフーンを解除し受身を取る。必殺のコンビネーションは、乱入者に妨害され失敗に終わってしまった。

 

マーガレット

「紫蘭!?」

 

 そんなニアグルースへマトリクスミサイルを放つシグルドリーヴァ。ニアグルースはしかし、腕に仕込まれているブレードでそれを斬り払う。

 

紫蘭

「…………」

 

 虚な目でシグルドリーヴァを見やる紫蘭。

 

ライラ

「フフ、ありがとう。私の可愛いお人形さん」

 

 ゼノ・アストラの拘束を振り切り、アゲェィシャ・ヴルはニアグルースの後ろへ回り込み手を回す。まるで、恋人同士がするような所作。それを紫蘭の死体にやっている少女は、挑発的にマーガレットを眺めていた。

 

マーガレット

「紫蘭に、触れるな!」

 

 感情のままにミサイルを撃ちまくるマーガレット。しかし、その攻撃は呆気なく迎撃され届かない。

 

ライラ

「お姉さん……まだそんなところに拘ってる。だから巫女にも選ばれず、戦士としても中途半端」

マーガレット

「黙りなさい。私は貴方を殺す。そして、紫蘭を解放する」

 

 問答する気など、最初からマーガレットにはない。シグルドリーヴァの右腕は、今にも邪霊機へ殴りかかろうと荒ぶっているが、マーガレットにその気はない。シグルドリーヴァは脚部のキャタピラで移動しながら、淡々とミサイルを撃ち続ける。それが、マーガレットの戦い方。戦士になる気も、英雄になる気もない。ましてや巫女などもっての外だ。マーガレットは、兵士だ。兵士として、淡々と敵を処理する。それが、彼女の戦い方だ。

 

マーガレット

「兵士の義務は、国家を、国民を、そして世界を守ることにある。私の紫蘭も、それに殉じて戦った。それを、お前は……!」

ライラ

「…………」

 

 マーガレットに宿る憎しみの炎。ライラはそれを一瞥し、口角を歪ませる。

 

ライラ

「……うん、まあいいかな。デビルガンダムの回収は済んだし、今のままお姉さんを殺してあげてもいいけど、ちょっと分が悪いもんね」

 

 剣を納めたアゲェィシャ・ヴルは、漆黒の翼を広げ羽ばたかせる。

 

マーガレット

「逃げるのかッ!」

 

 逃がさない、とばかりにシグルドリーヴァはマトリクスミサイルを発射した。しかし、紫蘭のニアグルースがそれを身体で受け、アゲェィシャ・ヴルには届かない。

 

紫蘭

「…………」

マーガレット

「紫蘭……!』

 

 ならば、ここで紫蘭だけでも楽にする。そう判断し引鉄を引くマーガレット。紫蘭のニアグルースは受け続け、また装甲が剥がれていく。

 装甲が剥がれ露出したコクピットには、全身を触手のようなものに繋がれ、正気を失った瞳でこちらを睥睨する紫蘭。

 

マーガレット

「今度、こそ……!」

 

 終わらせる。そのためにもう一度引鉄をひこうとした時、マーガレットの神経につながっているスコープ・ゴーグルはそれを捉えた。

 紫蘭の口が、動いている。

 

紫蘭

「……、……、……、、……」

マーガレット

「……!?」

 

 マーガレット。紫蘭は確かに、そう言った。そう、マーガレットには見えた。

 

槇菜

「マーガレットさん……?」

マーガレット

「紫蘭……。私を、覚えて……?」

 

 しかし、紫蘭はそれには答えない。ライラが戦域から離脱したのを認めると、紫蘭もまたそれを追い去っていく。

 

マーガレット

「待って、紫蘭!? 待ってよ!?」

 

 マーガレットの叫びに、答えることはない。血塗れの邪霊機は、再びマーガレット達の前から姿をけしてしまった。

 

マーガレット

「待ってよ、ひとりにしないでよ……!」

 

 狭く息苦しい鉄の棺桶。シグルドリーヴァの中でマーガレットはただ、そう呻くしかできなかった。

 

沙羅

「……いつまでも、みっともなく泣いてるんじゃないよ」

 

 そんなマーガレットに、沙羅が言う。

 

マーガレット

「何……?」

沙羅

「あたし達が倒すべき敵は、まだそこにいる。今は、その怒りを敵にぶつけることだけを考えな」

 

 沙羅が見据える先……そこには、グレートマジンガーと死闘を演じる暗黒大将軍。そして、ミケーネの万能要塞ミケロス。そうだ、とマーガレットは頷き、再び敵を見やる。

 

マーガレット

「了解。…………ありがとう」

沙羅

「いいんだよ。…………私だって、あの小娘は一髪殴らなきゃ気が済まないんだ」

 

 交わした言葉は少ない。しかし、マーガレットと沙羅の思いは通じ合っていた。

 

 

…………

…………

…………

 

 

 ミケーネの万能要塞ミケロス。その艦内でゴーゴン大公は画面越しに、宿敵を睨め付けていた。

 

ゴーゴン大公

「おのれ、マジンガーZ!」

 

 マジンガーZ。かつてゴーゴンはミケーネの先発隊として、ドクターヘルに協力しマジンガーと戦った。しかし、その結果は悉く失敗。マジンガーZさえいなければ、今頃ミケーネはドクターヘルを傀儡に地上征服を達成していただろう。そして、力の弱いゴーゴンはその功績で将軍の地位に着くのも夢ではなかった。しかしマジンガーZの存在によってその念願は潰え、ゴーゴンは窮地に立たされていた。

 

甲児

「ゴーゴン大公、やっぱりてめえもいやがったか!」

 

 アイアンカッターが、ミケロスの装甲を抉る。抉られた装甲から艦首が露出し、ゴーゴン大公が顕になると、そこにドリルミサイルを放つマジンガー。ゴーゴンは自らの剣でそれを払い除けるが、ミケロスのコントロールを担当するミケーネスが2、3人ほどそれで死んだ。

 

ゴーゴン大公

「兜甲児、貴様さえいなければ俺は今頃、ミケーネ帝国の将軍となれたのだ。それを貴様が!」

 

 万能要塞の目から放たれるビームをマジンガーは回避し、要塞の上空へ飛ぶ。

 

甲児

「光子力ビーム!」

 

 マジンガーZの光子力ビームが、ミケロスを襲った。しかし、それだけではない。これまでの激戦で、彼らの中で最大級の破壊力を持つ魔神のチャージが完了している。

 

ミチル

「お父様、エンペラービーム。チャージ完了したわ!」

早乙女博士

「ウム。エンペラービーム、照準合わせ! 目標は、ミケーネの万能要塞ミケロス!」

 

 ゲッターエンペラー。その口部にゲッター線の光が灯る。不味い。そう思った時ゴーゴンは動けなかった。

 

暗黒大将軍

「ゴーゴン! ええい馬鹿者め!?」

 

 その瞬間、暗黒大将軍の目から放たれた破壊光線がエンペラーを襲う。エンペラーの口部……エンペラービームの射出口に直撃した破壊光線と収束するゲッターエネルギーが誘爆し、エンペラーの口部が爆ぜた。

 

ミチル

「キャッ!?」

早乙女

「状況を報告しろ!」

村井

「エンペラー、エンペラービーム射出口を損傷。エンペラービーム使用不能!」

 

 ギリッ、と早乙女博士は歯噛みする。エンペラーには自己修復能力が備わっている。しかし、進化の途上にあるエンペラーの自己修復はまだ完全ではない。大きな損傷を受ければ、その部分が再稼働するまでにはかなりの時間を要するのだ。

 それに、エンペラービームがなければエンペラーには自動防衛システムと拡散ゲッタービームくらいしかまともな装備はない。ミケロスを仕留めるには、パワーが足りない。

 

 

早乙女

「この好機を逃すとは……!」

 

 しかし、九死に一生を得たゴーゴンはすっかり肝が冷えていた。

 

ゴーゴン大公

「も、申し訳ありません暗黒大将軍様……」

暗黒大将軍

「謝罪はよい! ゴーゴン、今ミケロスを失うわけにはいかぬのだ。わかっておるな?」

 

 万能要塞ミケロスは、ミケーネ帝国の兵力の殆どを賄えるほどの強力な要塞。これを失うのは、即ちミケーネの敗北を意味する。だからこそ、暗黒大将軍は命に替えてでもミケロスは守らねばならなかった。

 ミケロスの補給が十分に済めば、ここで敗れてもまだミケーネは戦える。しかし、ミケロスを失えばミケーネは戦うこともままならなくなる。

 

鉄也

「隙ありだっ! グレートブーメラン!」

 

 暗黒大将軍目掛け飛ぶグレートブーメラン。しかし、暗黒大将軍はダークサーベルでそれを叩き落とし、グレートマジンガーへと突進する。

 

暗黒大将軍

「これで終わりだ、剣鉄也!」

ヤマト

「いや、まだ終わらねえっ!?」

 

 グレートとの間に割り込むように、ゴッドマジンガーが暗黒大将軍の前に飛び出した。咆哮を上げるゴッドマジンガー。しかし、暗黒大将軍はそんなゴッドマジンガーをも蹴散らしていく。

 

暗黒大将軍

「火野ヤマト、そしてゴッドマジンガー! 今日こそ貴様らの息の根を止めてくれる。だが、まずは剣鉄也だ!」

 

 ゴッドマジンガーの怪力でもびくともしない暗黒大将軍。その武勇は、かつて古代ムー王国でヤマトが戦った時よりも遥かにキレを増している。

 

ヤマト

「クソッ、暗黒大将軍……昔より強い!」

鉄也

「ヤマト、こうなったら一気に決めるぞ! ダブルマジンガー・ブレード!」

 

 両手にマジンガーブレードを構えるグレート。魔神の剣を握るゴッドマジンガー。2対1での猛攻。しかしそれに暗黒大将軍は怯みもせず、破壊光線でグレートを迎撃し距離をとり、すれ違い様にゴッドマジンガーへ肘鉄を喰らわせる。

 

鉄也

「クッ!?」

ヤマト

「オワァッ!?」

 

 

 倒れ伏す魔神。しかし、暗黒大将軍は健在。

 

アイラ

「ヤマト……!」

ジュン

「鉄也!?」

 

 その戦いを見守る彼女達も、叫んでしまう。それほどに、暗黒大将軍は強かった。

 

暗黒大将軍

「どうした、もう終わりかマジンガー!?」

鉄也

「クソッ……。こんなところで、負けるわけにはいかないって言うのに」

 

 しかし現実として既に鉄也もヤマトも、いや全員がボロボロだった。

 べギルスタンでの戦いからロクな休息も取れぬまま、応急処置を繰り返してここまできた。マシンも、パイロットも、これまでの激戦の疲労が蓄積している。そこにデビルガンダムや邪霊機。そしてこの暗黒大将軍という強敵。緊張の糸が切れたかのように、ドッと疲労が押し寄せているのだ。

 

甲児

「ヤマト、鉄也君!? ……うわぁっ!?」

 

 ヤマト達の加勢に駆けつけようとした甲児。しかしマジンガーZも、ミケロスのミサイルを喰らいスクランダーを破壊され大地へ堕ちていく。

 

さやか

「甲児君!?」

甲児

「くっ……こうなったら!」

 

 ダイアナンAが胸からミサイルを放つとマジンガーZはそれを掴む。そして空中で体勢を整えジャンプ。どうにか着地するが、地面に転がるボスボロットに足を滑らせてしまう。

 

甲児

「うわぁっ!? ボスちゃんしろ!?」

ボス

「ス、スマン兜! でもボロットは手足を失って動けないのよ〜〜!」

 

 なんとか着地したマジンガーZ。しかし、マジンガーZはこの中で最も酷い激戦を潜り抜け、修理も間に合っていない。既に黒鉄の城は、鉄屑寸前になろうとしていた。

 

甲児

「けど、まだだ! ミサイルパンチ!」

 

 腹部から発射される大型ミサイルを放つマジンガーZ。しかし、暗黒大将軍はそれをダークサーベルで両断してしまう。

 

甲児

「あれが、最後の一発だってのに……!」

 

 毒付く甲児。暗黒大将軍はそんな甲児を嘲笑うかのように、ダークサーベルを振る。剣から放たれた衝撃波がマジンガーZを襲った。

 

槇菜

「甲児さん、危ない!?」

 

 ゼノ・アストラが飛び込み、巨大な盾で庇う。しかし剣圧は強く、ゼノ・アストラごと弾き飛ばしてしまう。

 

さやか

「槇菜!?」

甲児

「クソッ……!」

 

 圧倒的な強さを見せつける暗黒大将軍を前に、満身創痍のスーパーロボット軍団。

 

槇菜

「……このままじゃ」

 

 勝てない。そんな諦めにも似た思いが槇菜の口をつく。

 

エイサップ

「諦めるな!」

 

 だが、そんな槇菜にエイサップが叫ぶ。まるで、自分に言い聞かせるように。

 

槇菜

「エイサップ兄ぃ……」

エイサップ

「俺達が、諦めちゃダメなんだ。諦めたら……これまで俺達のために死んでいった命に顔向けできない」

槇菜

「…………!」

 

 あの日、鬼に喰われた先生を。ゼノ・アストラの下敷きになった学友達を。槇菜の日常を取り巻いていた人々の犠牲。

 

ショウ

「そうだ。今俺達が諦めて膝を付いたら、俺達の、これまでの全てが無駄になる」

トビア

「そんなの……許せるわけがない!」

 

 ショウも、トビアも立ち上がり暗黒大将軍を見据えた。そして、そんな時だ。

 航空戦闘機の小隊が、戦域に向かい空を駆けていく。

 

アラン

「あれば、バンディッツの!?」

 

 研究所の防衛に加わっていたアランのブラックウィングと、ハリソンのF91が空を見る。

 

ハリソン

「それに、随伴しているのは岩国基地のだ!」

 

 ハリソンの叫びに応えたのは、米軍岩国基地のマーキングが施された戦闘機だ。

 

海楽

「そういうことです、ハリソン大尉!」

 

 海上自衛隊所属の海楽少尉。岩国でハリソンの部下をしていたパイロットだ。

 

フランシス

「こちらバンディッツ所属、フランシス! アラン、聞こえるか!」

アラン

「フランシス!?」

 

 フランシス。かつての黒騎士隊……現バンディッツの機動部隊のエースであり、アランの副官を務めていたファイターだ。

 

フランシス

「みんな、今戦っているのはお前達だけじゃない! チャンネルをオープンにして、回線を開いてくれ!」

 

 フランシスがチャンネルの周波数を伝えると、科学要塞研究所の兜博士はそのチャンネルを開き、味方の全てに転送する。そこに、映し出されていたのは……。

 

 

トビア

「これは……!?」

 

 まず、最初に気づいたのはトビア・アロナクスだった。

 

ドモン

「ああ……!」

アルゴ

「…………!」

 

 ドモン達も、その映像に目を見開く。

 

隼人

「おい、竜馬!?」

 

 驚いたように声を上げたのは、隼人。

 

竜馬

「ああ……間違いねえ!?」

弁慶

「あいつら……!」

 

 その意味するものを、竜馬と弁慶も認識する。

 

暗黒大将軍

「何だ、何だと言うのだ!?」

 

 先ほどまで衰えていた敵の士気が上がっている。それを感じ、暗黒大将軍は初めて狼狽えていた。

 

ゴーゴン大公

「あ、暗黒大将軍様!?」

 

 そんな暗黒大将軍に、ゴーゴンが叫ぶ。ゴーゴンもまた、フランシスの言った周波数をミケロスで確認していたのだ。そして、そこに映されている光景を見た。見てしまった。

 

ゴーゴン大公

「魔魚将軍アンゴラス、大昆虫将軍スカラべス、猛獣将軍ライガーン、妖爬虫将軍ドレイドウ……七大将軍が全て、地球人の手で倒されました!?」

 

 

…………

…………

…………

 

—フランス/パリ—

 

 

 パリの街を襲う戦闘獣は既に息絶え、残すは魔魚将軍アンゴラスを残すのみとなっていた。対するは、3機のモビルスーツ。

 

アンゴラス

「バカな、人間のモビルスーツ如きに、我が戦闘獣軍団が!?」

ギリ

「ハハハハハ! ざまあないぜ。お前達は所詮、地球人しか知らない井の中の蛙……。いや、地球の中のウジ虫だ!」

 

 赤い塗装が施され、長い腕を持つ異形のモビルスーツ……クァバーゼが先行する。その両腕のカッターを伸ばし、アンゴラスを攻撃する。

 

アンゴラス

「ええいそんなものは効かん!」

 

 振り払い、ミサイルでクァバーゼを狙うアンゴラス。しかし、その攻撃は黒く、巨体なモビルスーツ……トトゥガに阻まれる。

 

バーンズ

「効かないのはお愛顧よ。だがなぁ!」

ローズマリー

「あたしを忘れちゃいないかい!」

 

 飛び込んだのは、小型に軽装のモビルスーツ・アビジョだ。アビジョが投げたナイフが、アンゴラスの目に突き刺さる。

 

アンゴラス

「グアァァァァッッ!?」

ギリ

「今だッ!?」

 

 アビジョが撹乱し、トトゥガが守り、クァバーゼが攻撃する。それは、かつて海賊軍のクロスボーン・ガンダムを苦しめた“死の旋風隊”その戦い方だ。

 

ギリ

「ミケーネ……オレは別に地球のことなんてどうでもいいが、今の暮らしは割と気に入ってるんだ。それをぶち壊そうとした罪、貴様の命で」

アンゴラス

「な、何……?」

ギリ

「あ・が・な・う・が・い・い・ぃっ!?」

 

 トドメの一撃。クァバーゼのチェーンソーがアンゴラスを両断する。

 

アンゴラス

「バ、バカな……」

 

 倒れ、爆炎を上げるアンドラス。クァバーゼに乗る少年・ギリは、空を見上げて呟いた。

 

ギリ

「俺達も戦ってるんだ。負けたら承知しないからな、宇宙海賊!」

 

 

…………

…………

…………

 

—ロシア/モスクワ—

 

 ロシアを攻撃していた妖爬虫将軍ドレイドウの前に立ち塞がるのは、ガンダムだった。しかし、ガンダムと呼ぶには少し異様な外見をしている。ガンダム……いや、ガンダム達はドレイドウの戦闘獣を叩き伏せ、そのリーダー格と思われるセーラー服を纏ったような出立ちのガンダムがドレイドウと対峙している。

 

アレンビー

「さあ、雑魚は片付けた。あとはアンタだけだよ!」

ドレイドウ

「むぅ……なんということだ。だが、貴様ら如きにこのドレイドウを倒せると思うな!」

 

 竜を連想させるドレイドウの口から放たれる火炎が、セーラー服のガンダム……ノーベルガンダムを襲う。しかし、ノーベルガンダムはまるで新体操のような動きでそれを躱すと、ビームでできたリボンを伸ばし、ドレイドウを攻撃する。ビームリボン。言わば伸縮自在のビームサーベルとも言えるそれは、見切るのが難しい変則的な動きでドレイドウを翻弄していた。

 

ドレイドウ

「小賢しい真似を!」

アレンビー

「軍団を率いて侵略するなんて卑怯な真似をするやつに言われたくないよ! 戦士なら戦士らしく、一対一のファイトで決めればいいのにさ!」

ドレイドウ

「そんな馬鹿な理屈に乗るか!」

 

 怒りに任せて、火炎を吐くドレイドウ。しかし、そんなアレンビーの挑発に乗ってしまったことが彼の命取りだった。突如として、ドレイドウの横腹に鐘が叩きつけられたのだ。

 

キラル

「心を乱したお前の負けよっ!?」

 

 鐘からガンダムタイプの上半身が生え、手荷物錫杖を振り下ろす。中に仕込まれたビームサーベルが、妖爬虫将軍ドレイドウの首を斬り落とした。

 

ドレイドウ

「み、見事……」

 

 その言葉と同時、息絶えるドレイドウ。ノーベルガンダムのアレンビーを中心に、ガンダムたちが集まってくる。マンダラガンダム、マーメイドガンダム、ランバーガンダム……。かつて、ドモン達がガンダムファイトで拳と拳をぶつけ合ったライバル達。

 

アレンビー

「ドモン! 次のガンダムファイトではあたしが勝つんだから、負けたりしたら承知しないよ!」

 

 朗らかな笑みで、アレンビーは遠い島国で闘う想い人へエールを送った。

 

 

…………

…………

…………

 

—イギリス/ロンドン—

 

 時計塔の鐘が鳴り響く中、大昆虫将軍スカラべスは一台の車を追っていた。車に乗っていた人間どもが、内部から要塞を破壊しスカラベスは手下の殆どを失ってしまったのだ。仲間の仇。一台の小さな車など放っておくべきと言われても、これだけは成さねばならない。

 

スカラべス

「待てッ!?」

 

 しかし、スカラベスの攻撃をその派手なスーパーカーは華麗に躱し、ハイウェイを爆走している。まるで、スカラベスなど眼中にないように。そんな調子が、よりスカラべスの逆鱗に触れていた。

 

ボウィー

「ヒュ〜。奴さん、怒ってますねえ」

キッド

「頭に血が上ると、ロクなことがないってのに」

 

 スーパーカー・ブライサンダーを運転するスティーブン・ボウィー。“飛ばし屋ボウィー“と呼ばれる伝説の走り屋は上機嫌に口笛を吹く。

 

お町

「無理もないわね。自慢の要塞を中から爆破されたとあったら、さしものミケーネの大将軍様もご立腹でしょう」

アイザック

「だが、逃げ回ってばかりでは無用な被害が出る。敵の頭に血が上っている今が好機だ」

 

 長髪の美女……コードネーム・エンジェルお町と、黒髪の美丈夫……コードネーム・かみそりアイザック。アイザックの言葉にボウィーが頷くと、アイザックは戦いの号令を上げる。

 

アイザック

「ブライ・シンクロン・マキシム!」

キッド

「ブライ・シンクロン・マキシム!」

 

 

 その号令とともに、ブライスターは質量保存の法則を無視したかのように巨大化する。そして、車の姿をしていたそれはみるみるうちに巨大ロボットへと姿を変えていく!

 

 

 夜空の星が輝く影で、悪の笑いがこだまする

 星から星に泣く人の涙背負って宇宙の始末

 銀河旋風ブライガー

 お呼びとあらば即、参上!

 

スカラべス

「な、何だとっ!?」

キッド

「ブライソード!」

 

 驚愕するスカラベス。しかし巨大ロボット・ブライガーは間髪入れずに剣を抜き、両断。

 

スカラベス

「ば……バカな……」

 

 断末魔の言葉と共に、爆炎に塗れるスカラベス。その最期を看取り、アイザックは呟いた。

 

アイザック

「悪党にかける情けはない……!」

 

 宇宙の片隅にひときわ光る

 青い星が泣いている

 戦いばかりの人生だけど

 コズモレンジャーJ9

 お呼びとあらば、即参上!

 

 

…………

…………

…………

 

 

—アメリカ合衆国/ニューヨーク—

 

 荒廃した自由の女神。かつて、アメリカンドリームを象徴していたこの像は今にも倒壊しそうになっていた。猛獣将軍ライガーン率いる戦闘獣軍団は、アメリカ軍のモビルスーツ部隊を寄せ付けない。

 だが、そんな中に飛び込んでいく緑色のオーラバトラーがあった。

 

トッド

「てめえら、アメリカに侵略するとは……覚悟はできてるんだろうな?」

 

 トッド・ギネスのライネック。パブッシュに帰投した後、ミケーネ襲撃の報を受けたトッドは我先に飛び出していった。

 万が一にでもボストンに被害が出れば、母の安否に関わる。その事態だけは、どうしても避けたい。そんな故郷への、母への思いがオーラ力になり、今ライネックは獅子奮迅の戦いで戦闘獣を薙ぎ倒している。

 

ライガーン

「おのれ、小蝿如きが猪口才な!」

 

 猛獣将軍ライガーン自ら、ライネックへと飛び掛かる。猛虎のような四つ足の下半身と、鋭い爪や牙。全身が凶器とも言うべきライガーンの攻撃をライネックは紙一重で躱し続ける。しかし、いつまでもそんな攻防は続きはしない。剣戟を受け止めるライネックのオーラソードが、その爪に弾かれる。

 

トッド

「クソッ!」

 

 オーラキャノンを放ち、迎撃するライネック。しかし、それをひらりと避けたライガーンの猛攻は続く。

 

ライガーン

「これでトドメだ!」

トッド

「やられる……!?」

 

 防御が間に合わない。トッドがそう直感した直後、突如として伸びてきた光がライガーンを貫いた。

 

桔梗

「一人で先行しないで!」

 

 桔梗の乗るアシュクロフト。その最大の威力を誇る収束荷電粒子砲だ。その威力をモロに受け、ライガーンの皮膚・装甲が焼け爛れる。

 

ライガーン

「まだ雑魚がいたか!」

桔梗

「……確かに、あなたからすれば私達は雑魚かもしれない。でもね、それでも退けない戦いというものがあるの」

 

 妹と刃を交えてまで、選んだ道なのだ。その道を、こんな怪物に潰されてたまるものか。荷電粒子砲のチャージが終わるまで、アシュクロフトはライフルに持ち替え超人将軍と対峙する。しかし、敵はライガーンだけではない。バルバリ、バイソニア……数多の猛獣型戦闘獣。対して、トッドの桔梗の2人。

 

桔梗

「……トッド・ギネス。差し違えてでもなんて発想はやめなさいね」

 

 忠告する桔梗。トッドの聖戦士としての才覚は、今後のためにも必要なのだ。だから、ここでトッドを死なせるわけにはいかない。

 

トッド

「ハッ。カミカゼはお前らジャップの発想だろうが。だがよ、ここで俺たちが負けたらマキャベルは容赦なく核をアメリカに使うぜ。それだけは何としても避けなきゃならねえんだ」

 

 エメリス・マキャベル。パブッシュ無国籍艦隊最高司令は既に、保有している核弾頭をミケーネ侵略地域に対して発射する準備に入っていた。そうなれば、ニューヨークの被害ではすまない。

 母とボストンを守るためには、ここで退くわけにはいかないのはトッドも同じだった。

 

ライガーン

「フン、人間どもはやはり度し難いな……」

 

 そんな情報を事前に察知しているのか、ライガーンはニヤリと笑う。ライガーンは理解していた。ここで核を使いミケーネを倒しても、闇の帝王の玉体には傷ひとつつかない。そして、闇の帝王が生きている限りミケーネ帝国は不滅。何より、人間や自然の動植物は核の毒が致命的だが、自らを鋼鉄の肉体に作り替えた戦闘獣にとって核の毒は無害同然。核兵器などミケーネにとってはただの広範囲高熱攻撃でしかない。核攻撃は、その場で人類に勝利を導いても長い目で見れば人類だけを苦しめることになるのだ。

 

桔梗

「……核だけは、使わせるわけにはいかない」

 

 そうして睨み合う、そんな時だった。

 突如として空に、巨大な髑髏が浮かび上がる。緑色の船体の、その中心に大きく描かれた髑髏模様。海賊船。誰もがそう理解するが、こんな船を桔梗は知らない。

 

桔梗

「宇宙海賊、だとでもいうの……?」

 

 海賊船から、一機のモビルスーツが降り立った。白と青。それに黄色で彩られたトリコロールカラー。その色は、ガンダム・タイプを意味する象徴的な色。しかし、やはりそんなガンダムを桔梗は知らない。

 そのガンダムは、獣のような尻尾を持っていた。さらに猛獣のような爪と、獰猛さを感じさせるツインアイ。そして、本来のガンダムが持たない巨大なメイス。ガンダムファイト用のモビルファイターという可能性もあるが、少なくとも桔梗の知る限り、このようなガンダムは登録されていない。

 何より、異様なのは。

 

トッド

「ありゃ、悪魔か……?」

 

 悪魔。聖書に記される獣のような雰囲気をそのガンダムは纏っているのだ。

 

三日月

「……オルガ、あのメカの化け物を倒せばいいんだよね?」

オルガ

「ああ。頼むぜミカ!」

 

 海賊船……アルカディアの船員。オルガ・イツカは相棒のガンダムパイロット、三日月・オーガスに指示を飛ばす。敵は戦闘獣。それを認識し、三日月の乗る獣のようなガンダム……ガンダムバルバトスルプスレクスは駆ける。

 

ライガーン

「モビルスーツなど何するものぞ。やれ、戦闘獣!」

 

 ライガーンの号令で、戦闘獣達は一斉にバルバトスへ向かう。しかし、戦闘獣達のビーム攻撃をバルバトスはものともせずに突き進む。ナノラミネートアーマー。バルバトスの装甲は光学兵器に対し高い耐性を持っている。

 

三日月

「邪魔だよ」

 

 そして、人が操っているものとは思えぬ人機一体の動き。まるで三日月自身がバルバトスであるかのような反応速度で戦闘獣の攻撃を掻い潜り、手に持つメイスを思い切り叩き付ける。

 

三日月

「…………」

 

 敵を潰すことに、何の感慨もありはしない。ただ、潰したという事実は次の敵を倒さねければという使命感に変わる。まるで獣のように、いやまさに獣のごとく、狼王(ルプスレクス)は荒れ狂う。

 

ライガーン

「何だ、何だというのだあのメカは……!」

 

 驚愕するライガーン。その隙を桔梗は見逃さない。荷電粒子砲が放たれた光を認識する間も無く、ライガーンは光の中に呑まれていく。

 

桔梗

「この隙を逃すほど、私は甘くない!」

 

 桔梗からすれば、謎の海賊船とガンダムよりも今目の前のミケーネの方が大事なのだ。粒子砲の光から逃げ出したライガーンに、回り込んだライネックが斬りかかる。

 

トッド

「落ちろよっ!?」

ライガーン

「ヌゥゥゥゥッ!?」

 

 トッドのオーラ力が集まったオーラ斬り。それを受けたライガーンは前脚を両断され、痛みに呻いた。だが、ライガーンもまた将軍。このまま死ぬ気は毛頭ない。

 

ライガーン

「貴様だけでも、道連れにしてやる!?」

 

 オーラバリアすら貫く鋭い爪。それがライネックに迫る。だが、その直後、ライネックが離れていくのに割り込むようにして、巨大な海賊船がライガーンの攻撃を受け、トッドを庇っていた。

 

ハーロック

「状況は?」

トチロー

「なぁに、俺達の船がこんなものでくだばるかよ。まだまだいけるぜ!」

 

 海賊船……アルカディア号の船長、キャプテンハーロックは、親友トチローの報告に満足げに頷くと、船員達に号令を出す。

 

ハーロック

「諸君。我々はアルカディアを目指す旅の途中、この並行宇宙へと迷い込んでしまった」

ラ・ミーメ

「…………」

トチロー

「ああ。まさかこんなことになるとはな」

 

 船員達は皆、ハーロックに命を預けている。彼らは無言で頷き、ハーロックの言葉を待っていた。

 

ハーロック

「だが、並行宇宙といえ地球は俺達の生まれた星だ。地球が悪の手に落ちる危機と言うのならば、俺達は喜んで助太刀しよう!」

 

 一切の曇りも、迷いもない瞳でそう告げるキャプテンハーロック。船員達は彼のその姿に惚れ込み。彼を信じてついてきたのだ。だから今回も、今更迷うことなどありはしない。

 

オルガ

「キャプテン。俺達鉄華団は、あんたに返しきれないほどの借りがある……」

 

 特徴的な前髪の青年オルガ・イツカが言う。彼と三日月、そして彼らの“家族”達は元の世界での戦いで、ハーロックに何度も助けられた。

 ハーロックがいなければ、彼らの命は繋がれることはなかっただろう。語り尽くせぬ程の恩を、絆を、オルガはハーロックから貰っている。

 

ハーロック

「オルガ。君達と共にアルカディアを探すという約束はどうも、後回しになりそうだ」

オルガ

「いいんだ。生きてさえいれば、何度でも旅は続けられる。そうだろう?」

 

 そう言って親指を立てて見せるオルガ。その表情には迷いはない。オルガもまた、信じているのだ。キャプテンハーロックという男を。

 それを認め、ハーロックはひとつ頷くと、全艦へ号令をかける。海賊流の、荒っぽい号令だ。

 

ハーロック

「全艦、攻撃開始。カノン砲、左舷の戦闘獣へ集中砲火をかけろ!」

 

 ハーロックの号令と共に放たれるアルカディア号の砲門が一斉に火を吹き、至近距離のライガーンを襲う。さしものライガーンの強靭な皮膚を持ってしても、巨大な海賊戦艦の全火力を集中砲火されればそのダメージは相当のものだ。

 

ライガーン

「ギャァァァァッッ!?」

 

 ライガーンの叫びと同時、戦闘獣の群れを飛び越えバルバトスが往く。悪魔のようにその目をギラつかせながらその鋭利な爪を猛獣将軍へ叩きつけた。

 

三日月

「フー…………」

ライガーン

「……!?」

 

 まるで獣の唸り声のような三日月の息遣い。数多の獣を束ねる猛獣将軍は、その吐息に恐怖する。猛獣の将すらも戦かせる、獣の王。ルプスレクスの瞳は無慈悲に、ライガーンを睨む。それと同時、アルカディア号のアームが伸びライガーンの眼前へと躍り出た。アームが展開されると、そこには生身の人間。眼帯をした、茶髪に長身の男。しかし、その佇まい、その存在はただの人間でありながら猛獣将軍ライガーンをも畏怖させる。

 

三日月

「つか、まえ、たっ!」

ハーロック

「これが、海賊の戦い方だ!」

 

 バルバトスの爪が戦闘獣部分の頭部を引き裂き、ハーロックの剣が胴体の顔を貫く。その動きは、同時だった。

 

ライガーン

「も、申し訳ありません。暗黒大将軍様ァッ!?」

 

 断末魔の声を上げ、倒れるライガーン。そして、爆発。

 

三日月

「……次はどうすればいい? オルガ」

オルガ

「よくやったミカ。どうやらこの世界には竜馬達がいるらしい。俺達も合流したいところだな……」

ハーロック

「ああ。アルカディア号、バルバトスを回収次第発進! この世界に迷い込んだ友と、合流する!」

 

 狼王を回収した海賊船は、そのまま上昇し発進する。その勇姿を、トッドと桔梗は目に焼き付けていた。

 

トッド

「キャプテンハーロックとか言ったか……。シビれるぜ」

桔梗

「…………あんな強力な力を、海賊が所有しているなんて」

 

 それぞれの思いと共に。しかし今は、事後処理をが先決だ。ライネックとアシュクロフトが生き残る僅かな戦闘獣の相手を引き受けているうちに、海賊船アルカディア号は、ニューヨークを離脱していった……。

 

 

…………

…………

…………

 

—科学要塞研究所付近/激戦区—

 

 

 その一部始終をフランシスらによって伝えられ、戦士達は勇気を奮い立たせていた。

 

チャップマン

「世界中のみんなが、戦っている……」

シャア

「人々が一つになろうとしている。そういうことか……?」

 

 それは、かつてシャア・アズナブルが望んだ未来そのものと言っても過言ではない世界だった。かつての自分自身が犯した過ちの果てにある世界で、それが叶いつつある。その感覚はシャアに、不思議な幸福感を抱かせる。

 人類全体がニュータイプになれば、その世界が来る。かつてのシャアは、そう信じていた。だが、

 

シャア

(思えば私は、随分と遠回りをしていたのかもしれんな……)

 

 だが、その未来に辿り着くまでには数々の戦いがあった。それを知る者達も、ここにいる。

 

トビア

「バーンズ大尉、ギリ……。みんなも、戦ってる!」

ドモン

「アレンビー……キラル・メキレル。お前達も!」

アルゴ

「アンドリュー・グラハム……」

 

 かつては敵として、ある時は味方とし剣を、拳を合わせた好敵手達。彼らもまた、この世界のために戦っている。その事実は、トビア達の胸に勇気の炎を再び灯していた。

 それに、

 

アラン

「コズモレンジャーJ9……。フランシス、彼らとコンタクトが取れたのか」

フランシス

「ああ。依頼金は高くついたがな。心強い味方だ」

 

 正義の為だけではない。ある者は仕事としてミケーネと戦っていた。だが、彼らにも小さな仁義とプロフェッショナルとしての誇りがあることを疑う者はいない。

 

ショウ

「トッド、お前も……」

槇菜

「お姉ちゃん……!」

 

 べギルスタンで、決定的に違えてしまった。そう思っていた姉。しかし姉もまた、人類の危機に立ち上がっていた。もしかしたら、まだ分かり合えるのかもしれない。そんな安心感が槇菜の胸を安堵させる。

 

槇菜

「そうだ……お姉ちゃんも戦ってる。お姉ちゃんの本心だって、知らなきゃいけない。だから、こんなところで終われない!」

 

 ゼノ・アストラは光の翼を広げ、立ち上がった。

 

弁慶

「アルカディア号。それにバルバトスってことは!」

竜馬

「ああ。ハーロックと三日月だ。あいつら、こんなとこまで来やがって!」

 

 巨大な宇宙海賊船アルカディア号と、悪魔めいたガンダムバルバトスルプスレクス。他の者達が見慣れないそれに、ゲッターチームは懐かしむような反応を見せていた。竜馬も口は悪いが、彼らの到来を喜んでいる。それは皆に理解できる。

 

アムロ

「知り合いなのか?」

隼人

「ああ。俺達の世界……。B世界の、仲間さ」

 

 仲間。普段滅多にそんな言葉を使わない隼人も、そう口にして彼らを歓待していた。

 

エイサップ

「並行世界からの来訪者……。竜馬さん達の仲間も、ミケーネと戦ってるのか!」

アムロ

(あのガンダムタイプ。デビルガンダムとは別の禍々しさを感じたが。いや……)

 

 Zガンダムのアムロもメガランチャーを構え、暗黒大将軍へ向いた。今、大事なのは目の前の邪悪を討つことなのだ。それに、

 

アムロ

(力そのものに、正も邪もあるものか!)

 

 生まれの由来、意味。そんなものに人は縛られはしない。縛られてはいけない。仮に悪魔の力を持って生まれたものであっても、それを善き事のために使うことができるように。

 だからこそ、力を邪悪に行使する者を討つ。それがバイストン・ウェルに恵まれたこの命の使命。アムロは今、正義の怒りに燃えていた。

 

 

暗黒大将軍

「馬鹿な……。ミケーネ七大将軍が全滅?」

 

 一方、現実を直視できないでいる者がいた。暗黒大将軍。七大将軍は皆、彼の信任で選ばれた猛者達。それが、このような形で全滅の憂き目に遭うなどあってはならない。しかし、現実としてバーダラー、ハーディアス、ユリシーザー、ライガーン、スカラベス、アンゴラス、ドレイドウ全てが人間達の手によって倒されてしまった。

 

ゴーゴン大公

「暗黒大将軍様……!?」

 

 狼狽するゴーゴン。無理もない。ミケーネ最強の勇士が敗れたのだ。力の弱いゴーゴン大公のショックは暗黒大将軍以上だろう。

 

暗黒大将軍

「ゴーゴンよ。お前は火山島へ帰還し、ミケーネ帝国の立て直しを図れ」

 

 だからこそ、暗黒大将軍は力強く支持を飛ばす。たとえこれが負け戦だとしても、背中を見せて逃げ出すような真似はできない。

 味方を逃し、ミケーネ帝国の戦力を少しでも蓄える。そして暗黒大将軍に続く司令官が生まれるのを待つ。それが、彼の最善だった。

 

ゴーゴン大公

「し、しかし……!?」

暗黒大将軍

「よいか。例え俺が死んでも、ミケーネは死なん。お前は諜報部の一員として、勤めを果たせ!」

 

 何より、今ここでミケロスを失うわけにはいかないのだ。

 

ゴーゴン大公

「暗黒大将軍……。貴方は立派な戦士だった。そう、闇の帝王にお伝えします!」

暗黒大将軍

「うむ。……アルゴス長官によろしくな」

 

 振り返らず、仁王立ちし暗黒大将軍はミケロスの退路を守った。逃走するミケロス。しかし、マジンガー達も逃げる要塞を追う余裕はない。

 

甲児

「暗黒大将軍……!」

 

 追おうものなら、暗黒大将軍の反撃に晒される。そういう状態を暗黒大将軍は作り出していた。

 

マーガレット

「敵要塞、シグルドリーヴァの射程圏内を突破」

チャップマン

「俺もだめだ。ここからでは狙えん」

 

 シグルドリーヴァとジョンブルガンダム。狙撃を得意とする2機は懸念材料だったが、どうやら幸運は暗黒大将軍の方を向いたらしい。クツクツと暗黒大将軍は嗤う。

 

鉄也

「何がおかしい……!?」

 

 グレートマジンガーは、既に満身創痍だった。対して、暗黒大将軍にはまだ余力があるように見える。そんな笑い。いや、暗黒大将軍にも余力などないことは鉄也もわかっている。それでもなお、こうして笑っているその姿。それは、戦士としての年季の違いを鉄也に刻みつけていた。

 

暗黒大将軍

「剣鉄也、そして人類の戦士達よ! 褒めてやろう。お前達はこの暗黒大将軍率いる七大将軍の総攻撃に対し、その悉くを打ち破ってみせた。だが、ここが貴様らの墓場と知るがいい! この暗黒大将軍、貴様らを1人でも多く地獄への道連れにしてくれるわ!」

 

 ダークサーベルを高々と掲げる暗黒大将軍。暗雲が渦巻きそして、サーベルに暗黒の雷が降りた。

 

鉄也

「あれは!?」

 

 サンダーブレーク。グレートマジンガー最大の必殺技。暗黒大将軍はこの僅かの戦いの中でサンダーブレークを学習し、模倣してみせている。凄まじい怪物。攻撃の一つ一つを受けるのに精一杯だった鉄也では到底その域には届かない。そう、認めざるを得ない。

 

暗黒大将軍

「まずはグレートマジンガー、貴様から死ぬがいい!」

 

 暗黒大将軍の剣先から放たれた擬似サンダーブレークが、グレートを襲う。雷の強烈なエネルギーを受けたグレートマジンガー。ブレーンコンドルの中で鉄也は、その衝撃に叫びを上げた。

 

鉄也

「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」

ヤマト

「鉄也!? クソッ……!」

 

 暗黒大将軍の下へ走るゴッドマジンガー。ゴッドマジンガーはヤマトの闘志に呼応し黄金の輝きを放っていた。その輝きが、闇の雷を打ち消していく。

 

暗黒大将軍

「“光宿りしもの”か!」

 

 破壊光線を放ち、ゴッドマジンガーの足を止める暗黒大将軍。ゴッドマジンガーとて受ければひとたまりもない攻撃。ヤマトはそれを寸前で回避し、魔神の剣を暗黒大将軍へ投擲する。だが、投げつけられた剣はダークサーベルで容易く切り払われてしまう。

 

ヤマト

「クッ……!」

暗黒大将軍

「どうした、もう終わりか火野ヤマト! ならば、まずは貴様から死ぬがいい!」

 

 暗黒大将軍にとっても火野ヤマトは、ゴッドマジンガーは生かしてはおけぬ怨敵。2万年前、ゴッドマジンガーが現れなければミケーネの世界支配はうまくいっていたのだ。その恩讐を、今こそ果たす。暗黒大将軍はダークサーベルを振りかぶり、ゴッドマジンガーへと迫った。そして、

 

ヤマト

「こなくそぉっ!?」

 

 振り下ろされたその瞬間、ゴッドマジンガーはダークサーベルを白刃取る。両の手で受け止め、暗黒大将軍の全体重をその身に受けるゴッドマジンガー。じり、じりとその身体は暗黒大将軍に押されていく。

 

暗黒大将軍

「フハハハハ! まずはお前だ。もらった!」

 

 暗黒大将軍の狂気じみた叫び。しかし次の瞬間、黒鉄の拳が暗黒大将軍の横腹を殴りつけた。

 

甲児

「俺達も、まだ戦えるぜ!」

 

 マジンガーZのロケットパンチだ。それを受け、苦しそうに呻く暗黒大将軍。その一瞬力が弱まった隙にゴッドマジンガーは剣の軌道を抜け脱出する。

 

暗黒大将軍

「貴様ら……」

 

 マジンガーだけではない。ゲッターロボ、ダンクーガ、ダンバイン、ヴェルビン、ナナジン、Zガンダム、ゲーマルク、スカルハート、F91、ゴッドガンダム、それにシグルドリーヴァとゼノ・アストラ。スーパーロボット軍団の総力が、暗黒大将軍の前に立ちはだかっている。

 

竜馬

「悪いな。どうやら昔のダチがこっちに来てるみてえでよ。一度挨拶しねえとならねえんだ!」

 

 トマホークを構えるゲッター1が、最初に動いた。空中を疾走し、トマホークを投擲する。それを先ほどと同じ要領で弾き返した暗黒大将軍。しかし、そのために剣を振り上げた一瞬でゲッター1はゲッター2へとチェンジ。巨大なドリルが暗黒大将軍へ迫る!

 

隼人

「ドリル・ストォォォォォォォーム!」

 

 ドリルの回転が竜巻を巻き起こし、暗黒大将軍を渦の中に捉える。そして逃げ道のない竜巻を突き進むドリルの突進。

 

暗黒大将軍

「ぬぅぉぉぉっ!?」

 

 ドリルに腹を貫かれながら、暗黒大将軍はダークサーベルを振るいゲッターを払い除ける。それを瞬時にオープンゲットし、躱すゲッター。竜巻の真上に真紅のボディ……ゲッター1が君臨する。

 

竜馬

「行くぜ、スパイラル・ゲッタァァァァァッビィィィッム!」

 

 ゲッター1の腹部から放たれるゲッター線の光。ゲッタービームが竜巻に乗り、竜巻の中をゲッター線の渦潮へと変えていく。言うなれば、ゲッター・ストーム。熱き怒りの嵐。

 

暗黒大将軍

「ゲッター……ゲッターロボ!」

 

 晴明の宿敵。それは今や、ミケーネの怨敵へと変わろうとしていた。ゲッタービームの嵐を受けながらも抜け出した暗黒大将軍。次に迫るものは、小型のマシンだった。オーラの力を吸い上げ、強くなる聖戦士の器。ダンバインとヴェルビンの2機が暗黒大将軍の眼前を駆け抜けていく。

 

暗黒大将軍

「ええいうるさいハエどもめ!」

 

 暗黒大将軍の目から放たれる破壊交戦。それを掻い潜り飛ぶダンバイン。オーラ力の高まりを感じながら、ダンバインは剣を握る。

 

マーベル

「ショウ!」

ショウ

「わかってる、合わせろ!」

 

 マーベルのオーラ力を介し、オーラソードに光が宿る。ヴェルビンも同様に。怨念、怨恨。憎しみを世界に広げるものを討つために、聖戦士の翼が翔ぶ。

 最初に動いたのはダンバインだ。ダンバインがオーラソードを大きく振りかぶり、暗黒大将軍を斬る。ダンバインの小さな身体からは、想像できないほどのパワー。それに合わせるように、ヴェルビンがオーラ力を放出する。雷鳴に撃たれたかのような衝撃が、暗黒大将軍を襲った。だが、ヴェルビンの攻撃はここからだ。

 

チャム

「やっちゃえ、ショウ!」

ショウ

「チャムのオーラ力も貸してくれ!」

 

 暗雲を突き抜けるように、ショウのオーラ力の全てを込めたハイパーオーラ斬り。ヴェルビンの全身から放たれるオーラ力を体内に直接注ぎ込まれる暗黒大将軍。ショウ・ザマだからこそ、できる荒技。それを身体中で受け、暗黒大将軍は叫ぶ。

 

暗黒大将軍

「ぐぅぅ、おのれぇ!?」

 

 怒りのままに放つ破壊光線にダンバインとヴェルビンは急速で離脱する。いかにオーラバトラーが地上で強力になっているとしても、このパワーの直撃を受ければどうなるかわからない。しかし、それと同時に入れ替わるように突撃するダンクーガ。断空剣の一閃を咄嗟にダークサーベルで受け止める暗黒大将軍

 

「へっ、大将軍っていうだけのことはあるじゃねえか!」

暗黒大将軍

「そんな剣にやられる俺ではないわ!?」

 

 しかし、次の瞬間にダンクーガは断空剣を離す。そして、徒手空拳を暗黒大将軍の胴体へ叩き込んだ!

 

「ハァッ!?」

 

 亮の鉄拳。続け様に繰り出される掌底。胴体にある暗黒大将軍の本来の顔を、ダンクーガの掌底が押し潰す。

 

沙羅

「今だよ!?」

マーガレット

「了解!」

 

 ダンクーガの格闘戦で視界を覆ったその間に、シグルドリーヴァが、F91が、TAがその銃口を構えていた。ダンクーガが4機の獣戦機に分離して離脱したその直後、無数のミサイルが、グレネードが、そしてヴェスバーが暗黒大将軍目掛けて放たれる。

 

ユウシロウ

「…………ファイア!」

 

 ユウシロウのTAも、残弾は残り少ない。その全てを込めた一斉射撃。

 

シャア

「これだけの火力だ。沈めぇ!」

 

 ゲーマルクも全身に搭載される多数のメガ粒子砲を放ち、暗黒大将軍へ叩き込んでいた。この戦い方は本来、シャアの好みではない。だが、モビルスーツという兵器で暗黒大将軍を相手にするならば、最大出力を一斉に叩き込む以外の選択肢はない。

 

ハリソン

「こ、れ、で、」

キンケドゥ

「ゲームオーバーだ。ド外道!」

 

 ハリソンとキンケドゥ。2機計6門のヴェスバーが同時に放たれる。モビルスーツとしては最大級の威力を誇る強力ビーム・ライフルの一斉射。普通の戦闘獣ならば、その一撃で吹き飛んでしまうだろう。しかし、それらを浴びながら暗黒大将軍は未だ、踏みとどまっていた。

 

マーガレット

「化け物め……!」

トビア

「いや……まだだ!?」

 

 暗黒大将軍の前に飛び込んだのは、スカルハートだ。マントをはためかせ、ドクロマークを胸から覗かせる海賊のガンダム。スカルハートはギリギリまで暗黒大将軍へ近づいていく。

 

暗黒大将軍

「貴様のような雑魚、踏み潰してくれる!」

 

 足を高く上げ、踏みつけようとする暗黒大将軍。その踏みつけた足下……トビアが脱ぎ捨てたABCマントだけがぺちゃんこになり、マントを脱いだスカルハート……クロスボーン・ガンダムX1改・改が、暗黒大将軍の眼前に躍り出た。

 

トビア

「こ、れ、も、も、ら、っ、て、い、け、ぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 トビアからしても、暗黒大将軍の眼前に飛び込むなど自殺行為に等しい暴挙だった。だが、ABCマントを囮にして飛び込みそして、多面への同時攻撃を可能とする改造ビームライフル・ピーコックスマッシャーを撃ちまくる。

 

トビア

「加減なんて、効かねえぞぉぉぉぉぉっ!?」

 

 スカルハートは高性能MSだが、武装のパワーだけならばF91や、ゲーマルクの方が凄まじいものを持っている。だが、スカルハートはトビアのために調整が施された専用機。トビアに必ず、答えてくれる。

 無差別、無軌道に放たれる連装ビームライフルを至近距離で撃ちまくるスカルハート。暗黒大将軍はそれで目を火傷し、大きく後退する。

 

トビア

「ま、だ、だ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁっ!?」

 

 スカルハートの腰からシザーアンカーが射出され、暗黒大将軍の顔面を抉る。そして、ダメ押しとばかりに蹴り飛ばす。巨大な暗黒大将軍を蹴り上げた反動で飛び去っていくスカルハート。暗黒大将軍はそれを逃すものかと破壊光線を放つ。光線はスカルハートに命中し、機体が大きく炎上。しかし、すんでのところでコア・ファイターを脱出させ、逃げるトビア。

 

トビア

「……こりゃ、またウモンじいさんに大目玉食うぞ」

 

 だが、やれることはやった。あとは仲間に全てを託す。それが、トビアにできる最大限。そして、トビアが作ったチャンスを、仲間達は逃さない。

 

ヤマト

「これで終わりだ、暗黒大将軍!?」

 

 ゴッドマジンガーが、剣を拾い再び暗黒大将軍へ迫っていた。暗黒大将軍が振り向いた時、既にゴッドマジンガーの剣は振り切れないところまで迫っていた。そして、暗黒の将軍と神の魔神が交差する。

 

暗黒大将軍

「グッ、ぬぉぉ…………!」

 

 ゴッドマジンガーの剣は、暗黒大将軍の戦闘獣としての頭部……つまり、破壊光線を放っていた目のある機械の頭を切り捨てていた。

 

ヤマト

「ッ!? ……やっぱり、暗黒大将軍は強ぇ……」

 

 しかし、暗黒大将軍のダークサーベルはゴッドマジンガーの胴体を突き刺していた。幸い、ヤマトのいる心臓部は外れていたが、数ミリズレていればヤマトは今頃ひしゃげていただろう。それを認識し、ヤマトは冷や汗を書く。そして、ゴッドマジンガーは膝をつき倒れ伏してしまう。

 

甲児

「ヤマトッ!?」

 

 助けに入ろうとするマジンガーZ。だが、激戦に次ぐ激戦をくぐり抜けたマジンガーは僅かだが、反応が遅かった。このままでは間に合わない。

 

暗黒大将軍

「フフフ、”光宿りしもの”。貴様の首を闇の帝王への供物としてくれる!」

 

 ダークサーベルを引き抜き、今度こそトドメを刺そうとする暗黒大将軍。しかし、その動きを止めたのは聖なる護りを受けた、5本のワイヤーだった。

 

槇菜

「やらせ、ないっ……!?」

 

 ゼノ・アストラのワイヤーが突き刺さり、暗黒大将軍の右手を引き止める。右手の力が奪われているのを、暗黒大将軍は感じた。破邪の特性を持つ戒め。それを自身の身に受け、暗黒大将軍はスカルハートにズタズタにされた顔でゼノ・アストラを睨めつける。

 

暗黒大将軍

「旧神の巫女か、貴様さえいなければ、もう少し楽に地上制圧ができたろうに!」

槇菜

「ゼノ・アストラは、あなた達の目覚めと共に目を覚ました。この子は、あなた達を止めるためにあるんだ!」

 

 暗黒大将軍に、槇菜は全く怯まない。少し前の槇菜なら、きっと恐怖で身が竦み、動くことなどできなかっただろう。だが、今は違う。

 

槇菜

「私は、私の大切な人達を守るために戦ってるんだ! もう二度と、あなた達に私の……ううん、誰かの大事なものを壊させたりするもんか!」

暗黒大将軍

「ほう……! 面白い!」

 

 巫女とは、信託を授かるもの。だが、当世の旧神の巫女はそれまでの巫女とは違う。暗黒大将軍は槇菜との僅かなやり取りの中で、それを確信する。

 

暗黒大将軍

「これまで旧神の意志を授かる巫女は数多見たが、自らの意志で旧神を従える巫女は初めてだ!」

槇菜

「関係、ないっ! ゼノ・アストラは、そのために一緒に戦う相棒なんだ。神様でも、悪魔でもない。ただの、ゼノ・アストラ!」

 

 旧神の、ゼノ・アストラの瞳に光が宿った。そう、暗黒大将軍には見えた。その直後、ゼノ・アストラは光の翼を展開し、羽撃く。ワイヤーで暗黒大将軍を掴んだまま大空へと駆けていくゼノ・アストラ。舞い散る羽根が熱を持ち、暗黒大将軍を灼いていく。

 

暗黒大将軍

「グッ、ぬぉぉぉぉっ!?」

 

 邪悪を祓い清める煉獄の炎。命の翼。暗黒大将軍は、その炎に灼かれ悶え苦しんでいた。しかし、

 

暗黒大将軍

「ならば……っ!」

 

 左手で右腕を掴んだ暗黒大将軍は、そのまま自身の右腕を引き千切り旧神の戒めから脱出する。血のような緑色の液体が飛び散り、暗黒大将軍は激痛に絶叫しながら、大地へ落下していく。

 

槇菜

「嘘っ!?」

 

 急に軽くなった感覚と、起こった事実に一瞬、槇菜の脳はエラーを吐いた。信じられない手段で脱出した暗黒大将軍に、呆然とする。

 

エイサップ

「だが、これで奴は剣も、破壊光線も失った!」

アムロ

「ああ、このまま押し込め!」

 

 ウェイブライダーが加速し、ビームライフルを撃ちまくる。それを左手で払い除けながら、ナナジンのオーラフレイムソードをマントで防ぐ暗黒大将軍。

 

暗黒大将軍

「まだだ、まだ終わりはせんぞ!」

アムロ

「こいつっ……!?」

 

 アムロの脳裏に去来したのは一年戦争終盤、まだ少年だった頃に戦った男だ。

 男は乗機を失いながらも、丸腰の状態で抵抗を続けていた。その執念、その気迫に若いアムロはただ、気圧されるしかなかった。

 

——やらせはせん、やらせはせんぞ!

 

 あの男と同じ、いやそれ以上の気迫、闘気。それを暗黒大将軍は放っている。

 

アムロ

「俺だって、あの頃とは違う……!」

 

 アムロはマシンを変形させ、Zガンダムはハイパー・メガランチャーの照準を暗黒大将軍に合わせる。そして、発射。放たれた光はマントを焼き、エイサップの炎斬と共に暗黒大将軍のマントを無惨に焼き尽くしていく。

 

暗黒大将軍

「まだ、まだだっ! 剣がなければこの拳で、両手をもがれればこの歯で、命ある限り俺は戦うぞ! 俺は、ミケーネの暗黒大将軍だ!」

 

 最期の力を振り絞り、暗黒大将軍は尚も立っていた。そして、よろめきながらもその足を踏み締めて進む。

 

槇菜

「何なの、あの人……?」

 

 その凄まじい執念を槇菜は知らない。根源的な恐怖。暗黒大将軍という強敵の命は、今まさに尽きようとしている。そうでありながら、暗黒大将軍の覇気は衰えることを知らない。

 

鉄也

「なんて奴だ。暗黒大将軍……!」

 

 そんな暗黒大将軍を前に、満身創痍のグレートマジンガーが立ち塞がる。助力しようとする仲間達を制止し、偉大な勇者はマジンガーブレードを抜いた。

 

甲児

「鉄也君……?」

 

 その動きに怪訝な顔をする甲児。鉄也は首を振り、暗黒大将軍を見据えている。

 

鉄也

「甲児君。暗黒大将軍は、もう肉体的には死んでいる。死にながら、気力だけで生きているんだ……!」

 

 その闘志に。その執念に。

 例え倒すべき敵であったとしても、正々堂々と応えたい。激闘の中で鉄也は、暗黒大将軍に共感を抱いていたのだ。

 

鉄也

「暗黒大将軍。お前も俺も、戦うために生きてきた。勝利を導く勇者として。だからこそ、今日この瞬間、俺はお前を倒す!」

暗黒大将軍

「来い、剣鉄也! だが俺はただでは死なぬ! 貴様も、グレートマジンガーも道連れだ!」

 

 それは、友情と呼んでもいいのかもしれない。最大の強敵だからこそ、強く、強大であってほしい。そんな相手と闘うことでのみ果たされる充足感。

 

鉄也

「アトミック・パンチ!」

 

 グレートの鉄拳が飛ぶ。しかし暗黒大将軍は左手でパンチを払い除け、グレート目掛けて突き進む。

 

暗黒大将軍

「こんなものか剣鉄也! ならば今日が貴様の最後だっ!?」

 

 左手の拳を突き出す拳骨が、グレートを襲う。暗黒大将軍の拳は、超合金ニューZのボディを貫いて唸りを上げる。

 

鉄也

「クッ、まだだ。保ってくれグレート! ブレストバーン!?」

 

 グレートの放熱板から放たれる熱線を受け、暗黒大将軍は悲鳴を上げた。だが、それでも暗黒大将軍はブレストバーンの放熱板を掴み、そして砕く。

 

鉄也

「何っ!?」

 

 ブレストバーンとグレートブーメラン。一度に2つの武器を失ったグレートを、暗黒大将軍はさらに強靭な脚で蹴り飛ばす。衝撃で、グレートは倒れ伏し、マジンガーブレードを落としてしまう。暗黒大将軍は、マジンガーブレードを踏み潰しさらにグレートを踏みつけにする。

 

鉄也

「クッ……!?」

 

 やはり、暗黒大将軍は強い。今まで鉄也が戦ってきた誰よりも。

 

槇菜

「鉄也さん!?」

 

 助けなきゃ。咄嗟にゼノ・アストラが向かおうとするが、「よせっ!」というドモンの言葉に槇菜の行動は遮られる。

 

槇菜

「どうしてっ!?」

ドモン

「これは、鉄也自身の闘いだ。まだ勝負はついちゃいない!?」

 

 鉄也は今、戦っているのだ。甲児やドモンへの嫉妬心に苛まれた己自身の弱い心と。

 暗黒大将軍は、鉄也の鏡だ。最強の武将としてミケーネを率いる恐怖の勇者。技も、力も、ミケーネ最強に等しいミケーネの勇者。

 偉大な勇者グレートマジンガーは、剣鉄也は、その在り方を決して否定できない。悪の道に走ったものだが、暗黒大将軍は紛れもなく、グレートマジンガーのパイロットとして人類の未来を背負った剣鉄也の、鏡写しなのだ。

 だからこそ。

 だからこそ。

 

ユウシロウ

「打ち勝たなければならない、己自身の影……」

エイサップ

「鉄也さんが、剣鉄也である為の闘い……」

竜馬

「ああ。だから、今鉄也に加勢するなんて味な真似をする奴は、俺がブン殴ってやるぜ!」

 

槇菜

「…………鉄也さん」

 

 槇菜だけではない。甲児だって、いやドモンも、エイサップも、竜馬だって今にも助けに行きたい気持ちは変わらない。

 

甲児

「俺は……俺は信じてるぜ! 鉄也君は、グレートマジンガーは必ず勝つ!」

 

 マジンガーZの中で、甲児が叫んだ。

 

 

 

暗黒大将軍

「これで終わりだ、剣鉄也!?」

 

 倒れたグレートマジンガーに覆いかぶさるように、暗黒大将軍が馬乗りになる。そして生きている左手が、ブレーンコンドルへ迫った。

 

鉄也

「やられる……!?」

 

 このままブレーンコンドルを潰されれば、鉄也は死ぬ。死の恐怖が、鉄也に鎌首を擡げる。しかし、死の恐怖と隣合わせの時にこそ、勇者の真価は問われるのだ。

 そしてグレートマジンガーは、剣鉄也は偉大な勇者である。死の恐怖が、却って鉄也の思考をクリアにする。

 

鉄也

「今だっ、ネーブルミサイル!?」

 

 腹部に残っている最後の武器、ネーブルミサイルが暗黒大将軍の胴体……即ち顔面に直撃し、破裂する。ぶちっ、という音と共に暗黒大将軍の顔は今度こそ完全に潰れ、血のような、オイルのような液体が噴出する。

 

暗黒大将軍

「ウギャァァァァァァァァァァッ!?」

 

 かつてないほどの絶叫を上げ、悶え苦しむ暗黒大将軍。その瞬間、グレートマジンガーは暗黒大将軍から離れて残るエネルギー全てを頭部の避雷針へ注いでいく。

 

鉄也

「サンダー・ブレーク!?」

 

 渾身の力を込めたサンダーブレーク。しかしそれを受けながらも暗黒大将軍は突き進む。そして、左手の拳をグレートマジンガーの胴体に突き刺した。

 ドッ、とグレートの全身からオイルが抜けていく。まるで心臓を潰されたかのように噴き出す多量の液体。忽ちグレートマジンガーは息絶え、膝をついた。

 

槇菜

「鉄也さん!』

 

 今度こそダメだ。もうグレートに逃げる力も残っていない。槇菜は直感する。しかし、

 

ショウ

「大丈夫、鉄也は無事だ。それに……」

 

 暗黒大将軍にも、剣鉄也へトドメを刺す力はもう残されてはいなかった。

 

暗黒大将軍

「フ、フフフ。やったぞ、俺は……グレートマジンガーを倒したぞ」

 

 もはや目も見えていない。口を動かすので精一杯。そんな状態で暗黒大将軍は、よろめきながら勝利を確信していた。

 あとは、剣鉄也にトドメを刺す。それだけでいい。それだけで。だが、もうグレートマジンガーがどこにいるかもわからない。

 そんな暗黒大将軍に声をかけたのは、流竜馬だった。

 

竜馬

「……介錯は、いるか?」

 

 もはや、暗黒大将軍も最期。それは誰の目にも明らかだった。そんな状態で、強敵である暗黒大将軍にそう呟いたのは、竜馬なりの敬意だったのかもしれない。だが、暗黒大将軍はそれに笑って答えるのみ。

 

暗黒大将軍

「フ、フフフ……その必要はない。今の俺の必要なのは、地獄の責め苦にも耐える勇者の詩だ! フフフフハハハハハハハ!!」

 

 その言葉とともに、暗黒大将軍の身体が割れる。戦闘獣として改造された身体の内部が、爆発を起こしているのだ。爆発は爆発を呼び、誘爆しながらやがて暗黒大将軍の全身を包み込んでいく。

 

暗黒大将軍

「グフッ、グハァァァァァッッ!?」

 

 それが、暗黒大将軍の最期だった。爆炎に呑まれ、やがて全身が炎の中に包まれ消えていく。

 その爆発を、目の前で見ていた剣鉄也。グレートマジンガーは動かない。だが、鉄也は生きている。

 

鉄也

「暗黒大将軍……。道を誤りこそしたが、お前は勇敢な将軍だった」

 

 ヘルメットから血を流しながら、鉄也は燃え上がる暗黒大将軍の遺体を前に敬礼のポーズを取っていた。それが、せめてもの弔いになると信じて。

 

甲児

「鉄也君……」

ヤマト

「鉄也……」

 

 甲児と、ヤマトもそれに続くように暗黒大将軍の亡骸へ敬礼のポーズを送る。

 

ジョルジュ

「…………」

弁慶

「…………南無」

 

 やがて、皆がそれぞれに弔いのポーズを取っていた。暗黒大将軍。彼はそれほどの強敵だった。

 

 

…………

…………

…………

 

 

 

マーガレット

「…………」

 

 敬礼のポーズを取りながら、マーガレットは燃え上がる暗黒大将軍の遺骸を見つめていた。

 

槇菜

「……マーガレット、さん?」

 

 その瞳にどこか、暗い影があるのに気付き槇菜は不審そうに声をかける。

 

マーガレット

「…………私の大事な人は、その魂を弔うことすらできていない」

槇菜

「あ…………」

 

 紫蘭。邪霊機に囚われ、少女の死人形となっていた男。彼に対しマーガレットが向けていた視線と重なり、槇菜は思わず口を噤んだ。

 

マーガレット

「いいのよ、槇菜。私は……私の闘う理由を見つけたんだから」

 

 マーガレットの瞳に映る焔は、戦士への哀悼炎だろうか。それとも、愛する者の死すらも奪った者への、憎しみの炎だろうか。

 

槇菜

「そうだ。暗黒大将軍を倒してもまだ、終わりじゃないんだ」

 

 ミケロスは結局逃してしまった。それに邪霊機の少女ライラ。彼女の目的は未だにはっきりとしない。そして……。

 

エイサップ

「サコミズ王……。あなたは、この地上に戻ってどうするつもりです?」

 

 海と大地の狭間の世界には、まだ大きな火種が残っている。エイサップは感じていた。ホウジョウ軍と、サコミズ王との戦いの時はもう、すぐそこまで迫ってきていることを……。

 

 

第一部「暗黒大将軍編」完

第二部「桜花嵐編」へ続く……。




次回予告

暗黒大将軍を失って 怒る闇の帝王の
真の手が迫る槇菜達
地獄の底より蘇る 大元帥の歪んだ笑い
ピンチを救うはブラスター・キッド
やってきましたJ9

次回、「情け無用のJ9」
に、即、参上!



…………
スーパーロボット大戦VB
第二部『桜花嵐編』

追加参戦作品
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
銀河旋風ブライガー
わが青春のアルカディア 無限軌道SSX
…………
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