スーパーロボット大戦VB   作:元ゴリラ

19 / 42
第17話「決して散らない鉄の華」

—アルカディア号内部—

 

 海賊船アルカディア号。そこは、新天地を目指し旅をする男達の艦。「B世界」と呼ばれる平行世界において、彼らは異星人イルミダスに支配された地球を取り戻す為に戦った歴戦の戦士達。自由を掲げて戦った者達の炊事を担当していた少女アトラ・ミクスタは忙しなく艦内を走り回っていた。

 

アトラ

「どうしよう。どうしようどうしよう!」

 

 竜馬達がやってくるのは別にいい。しかし、この世界の仲間達も一緒に来るという。火星の田舎で暮らしていた時と同じ格好では、田舎者と思われるかもしれない。そう思うと、何かおめかしできないものかと。そんなアトラをぼんやりと眺める、松葉杖の少年。三日月・オーガス。ガンダム・バルバトスルプスレクスを操縦し、コクピットの中では鬼神の如き強さを誇る少年は、そんなアトラがあっちを行ったりこっちを行ったりするのを眺めながら、ポケットから火星ヤシをひとつまみすると、ポリポリと食べ始めていた。

 

アトラ

「ああ三日月! ねえこの格好おかしくないかな!?」

三日月

「いいんじゃないの、いつも通りで」

 

 正直、三日月にはアトラが何をそんなに慌てているのか理解できていない。年頃の女の子の気持ちを解するような機微を、この少年は心得てはいなかった。

 

アトラ

「もうっ! 三日月ってば……」

 

 三日月がそういうことに疎いのは、アトラも知っている。それでも、アトラがあえて三日月に訊くのはアトラにとって、誰に一番可愛く見えていたいかという、極個人的な問題だった。

 

三日月

「竜馬達、もうすぐ来るの?」

 

 そんな三日月は、見えていない右目でアトラを覗き込む。アトラはそれに頷いて答える。

 

アトラ

「うん、だからそろそろ出迎えの準備しなくちゃほら!」

 

 三日月の右手に手を伸ばし、アトラはその動かない右手を掴む。それから、右半身が動かない三日月の歩調に合わせてゆっくりと歩き始めるのだった。

 

アトラ

「竜馬さん達と会うのも、久しぶりだよね」

三日月

「そうだね。結局俺達、あいつらにはちゃんと挨拶できなかったし」

 

 三日月は、思い出す。

 それは決して散らない鉄の華の、散華の時。

 異星人イルミダスは、周到に地球圏を支配し、それまでの地球秩序を管理していた組織ギャラルホルンを完全に手中へ収めた。そして、イルミダスによる支配は当然、地球の管理下にある圏外圏……つまり、三日月の生まれた火星にも手が伸びることとなる。

 三日月と彼の半身でもあるオルガ・イツカ。そして彼らと同じような境遇の子供達で組織された組織・鉄華団。鉄華団は、火星の不当な支配に異を唱える少女・クーデリアの護衛という依頼を受け、それを達成するために地球圏へ向かい……そこで想像を絶するイルミダスの支配。そしてギャラルホルンを革命しようとする勢力との争いの渦中に巻き込まれることとなった。

 そんな中、鉄華団と共にイルミダスやギャラルホルンと戦った仲間達がいた。竜馬達ゲッターチームや、この海賊船アルカディア号のキャプテンハーロックも、その一人である。

 他にも、多くの仲間がいた。“地獄”を体現する二人の男が駆る魔神。青き流星とともに火星に舞い降りた少年。地球にも火星にも名を轟かせる、日輪を背負った噂の快男児。鉄華団と同じように強い絆で結ばれた、月の光のように儚く強い家族。炎のさだめを駆け抜け地獄の中を生き続ける男。思春期を殺した少年と、その翼。そんな仲間達と共に三日月達鉄華団はイルミダスを倒し、そして来る銀河決戦にてイルミダスら異星人の連合艦隊を退けた。

 

三日月

(けど……そこはまだ、俺達のたどり着くべき場所じゃなかった)

 

 三日月はまだ、止まれなかった。

 

 

…………

…………

…………

 

 

 アルカディア号の艦長室に呼ばれたオルガ・イツカは、背筋を伸ばし目の前の男……キャプテンハーロックと対峙していた。長髪に眼帯を持ち、顔に大きな傷を持つハーロックは、そこにいるだけで空気が変わる男だ。カリスマという言葉がふさわしい男を、オルガはまだ片手の指で数えられるほどしか知らない。だが、彼らはいずれもオルガにとっては偉大な背中だ。

 オルガのよき兄貴、名瀬・タービンもその一人だし、ギャラルホルンの若き総帥を務めたエレガントな男性や、あの快男児もそれに当たるだろう。

 だが、キャプテンハーロックのカリスマ性は彼らに勝るとも劣らない。そう、オルガは確信していた。

 

オルガ

「キャプテン、話ってなんすか?」

ハーロック

「ああ、オルガ。傷は傷まないか?」

 

 オルガの身体には、銃痕が残っている。そのどれもが、致命傷の傷痕だ。しかし、そんなオルガが生きているのはあの場に居合わせたガンダムパイロットの少年と、そしてアルカディア号の船医として当時在籍していたドクター蛮のおかげでもある。

 オルガは撃たれた胸に手を当てるとしばらくして、静かに口を開く。

 

オルガ

「…………今でも、時々痛むんです。だけどそれは、俺の痛みじゃあない」

ハーロック

「…………」

 

 ハーロックは、無言でオルガの次に来る言葉を待っていた。

 

オルガ

「ビスケットや、シノ……。それだけじゃねえ。今まで流れた俺達の家族の血が溶け合い、一つになっていく。俺の血は、俺の傷は、あいつら全員の血で傷なんだ。だから、俺は止まれねえ」

 

 あの戦いの結果として、地球圏は守られた。しかし彼ら鉄華団はギャラルホルンと敵対する立場となり、そして新たな秩序を構築した世界での居場所を失った。

 鉄華団。決して散らない鉄の華と名付けられた彼らはしかし、咲く場所を持てなかった。

 新たな世界において、秩序を乱す存在である鉄華団。彼ら鉄華団はある意味、見せしめとなった。新たなる秩序。正しい秩序のための犠牲。それが、鉄華団だった。

 

オルガ

「俺と三日月は表向き死を偽装し、鉄華団は解散した。いつか、再び咲く場所を手に入れるために」

 

 その旅路に誘ってくれたのが、他ならぬキャプテンハーロックだった。

 

ハーロック

「……本当なら、君達全員を乗せてやりたかった」

オルガ

「いや、いいんだ。結果として“鉄華団の壊滅”という結果を手に入れた以上、ギャラルホルンも残党がりめいた真似はしねえだろう」

 

 何より、今のギャラルホルンは組織改革、民主化が進んでいる。その結果、地球圏統一国家との政治的協力体制が確立している。統一国家には、銀河決戦において鉄華団や仲間達を支援してくれたクーデリアや、あのお転婆な外務次官もいる。

 

オルガ

「……宇宙のどこかにあるアルカディア。そこでなら、きっと鉄華団が鉄華団として再び咲ける。そう、あんたが言ってくれた」

ハーロック

「オルガ、お前達は常に今日を生きるために、明日を夢見続けていた。お前達鉄華団は、俺にとっても希望だったのだ」

 

 身寄りもなく、戦うことでしか生きる術を知らない。そんな子供達。大義も思想もないが、どこまでも遠い夢を追い走り続ける。その向こう見ずさは、若者の特権だとハーロックは思う。だからこそ、そんな若者を見ると助けたくなってしまうのが、キャプテンハーロックという男の性分だった。

 性分は変えられない。結果として自分達も地球に居場所を失ってしまったが、それでもこの選択に、後悔はなかった。

 

オルガ

「……俺達は、まだ止まれねえ。辿り着くべき場所に着くまで。その道を共に歩むのが、あんたでよかった。心からそう思うぜ」

ハーロック

「フッ……」

 

 ハーロックは戸棚にしまっているスコッチの瓶に手を伸ばした。そしてグラスを二つ取り出すと、それぞれに注ぐ。

 

オルガ

「盃、か……」

ハーロック

「契るのは、俺にじゃない。それぞれの旗にだ」

 

 ハーロックの言葉に、オルガは静かに笑う。それから2人の男は頷き合い、静かにスコッチを飲み込んだ。

 

 

…………

…………

…………

 

 

—ゲッターエンペラー内部—

 

 

トビア

「それにしても、外の世界の宇宙海賊か……」

 

 アルカディア号との合流地点を目指すエンペラーの艦内で、トビアは遠い世界の宇宙海賊・キャプテンハーロックに思いを馳せていた。

 

シャア

「気になるのか?」

トビア

「ええ、まあ。違う世界で、同じようにドクロの旗を掲げた海賊がどんな人たちなのか……やっぱり、興味あります」

 

 トビア・アロナクスが宇宙海賊になったのは、成り行きというところが実のところ大きい。今でこそ愛する少女と共に生きる場所がここクロスボーン・バンガードだが、違う世界の彼らは、どんな思いでドクロの旗を掲げているのだろう。

 

弁慶

「ハーロックか……」

 

 そんなトビアの話を聞きながら、弁慶は旧友に思いを馳せる。ハーロック、トチロー。それに。

 

弁慶

「ラ・ミーメちゃんは美人だったなぁ……」

 

 そんな弁慶に溜息を付いて、竜馬が続ける。

 

竜馬

「キャプテンハーロック、あいつはな……男の中の男だ」

トビア

「男の中の男……」

隼人

「ああ。あいつは自由の旗を掲げ、支配に立ち向かった。あいつの活躍に、人々は沸き立った。キャプテンハーロックとアルカディア号は、自由の象徴だった」

トビア

「へえ……」

 

 自由の象徴。圧政に苦しむ人々の希望となった男。どんな男なのだろう。とトビアはより、期待に胸を膨らませた。

 

トゥインク

「キャプテンハーロック……まるで、御伽噺のヒーローのようですね」

竜馬

「ヘッ、言い得て妙だな。キザな男だが、情に脆い奴だった。俺の知る限り、ヒーローって言葉が最も相応しい男の一人なのは間違いねえ」

 

 竜馬が他人をそこまで誉めるのも珍しい、とトビアは思った。

 

トビア

「宇宙海賊キャプテンハーロック……」

 

 いったい、どんな人物なのだろう。そんなことを考えながらトビアは窓の外を見た。

 

トビア

「ン……?」

 

 ランデブー・ポイントにはまだ遠い。しかし、遠くに見えるものは空飛ぶ船……エンペラーやアルカディア号のような、飛行戦艦だ。昭和の日本軍が使っていたような、どこかふるめかしい風貌の戦艦と、白い円盤状のものが並んでいる。明らかに異質な存在感。それに随伴するようにして、虫のような羽根を持つマシンが飛んでいる。

 

トビア

「な、んだ?」

 

 羽根マシンがオーラバトラーであることは、トビアにも理解できた。しかし、理解できないことが二つ。何故オーラバトラーの軍団がここにいるのか。それに。

 

トビア

「UFO? 円盤? 一体、あれは?」

 

 疑問を口走るトビアに答えるように、白い円盤はエンペラーを狙うように砲門を向ける。そして、発射。

 

隼人

「撃ってきたのか……!?」

トビア

「あいつらは、一体?」

 

 円盤の砲撃はエンペラーのわずか右端を掠め飛んでいく。明かな威嚇射撃。それは、次はないぞという合図。

 

シャア

「円盤の隣にいるのは、オーラバトラーとオーラ・バトル・シップか……!」

 

 話には聞いたことがある。リュクス姫が地上に出た後、バイストン・ウェルに帰還せず地上に取り残された艦が一隻いたと。恐らくは、それなのだろう。つまり、あれはホウジョウ軍。そう理解すると同時、シャアは駆け出した。それに続くように竜馬達とトビアも。

 

 格納庫にやってくると、エンペラーの中に格納されているリトルグレイの中からF91が発進していくのが見えた。既に、キンケドゥは出撃したらしい。

 

トビア

「よし、俺も……!」

 

 愛機クロスボーン・ガンダムへ駆けようとするトビアだが、その首根っこをウモン・サモンにつかまれてしまう。

 

ウモン

「こりゃトビア。今回はお前は留守番じゃ」

トビア

「えぇっ!?」

 

 どういうことだよと詰め寄るトビアに、ウモンは禿頭を掻きながら彼のガンダムの方を指差す。

 

ウモン

「前の戦いで派手にガンダム壊したのはどこのどいつじゃ!?」

トビア

「ウ…………」

 

 そう。暗黒大将軍との戦いで派手にやられたクロスボーン・ガンダムは今、大幅なオーバーホール中だった。正式名称F97と言われるこの機体は、整備用のパーツに一点ものがかなり多い。それを今までどうにか騙し騙し修理してきたが、月のサナリィ本社に行かなければこの完全な修復は無理だろう。とウモン曰く。

 

オンモ

「ガンダムの修理は、当分先……ってことになりそうだねぇ」

トビア

「そんな……」

 

 

 こんな時に、指を咥えて見ているだけになるなんて。そう嘆きながら、トビアは途方に暮れていた。

 

 

 

……………………

第17話

「決して散らない鉄の華」

……………………

 

 

 

ミチル

「何が起こってるの!?」

 

 ゲッターエンペラーの艦橋で、ミチルの怒号が響く。早乙女博士は無言で、目の前に迫る円盤型の戦艦を睨め付けていた。無言の圧力。しばらくして、戦艦から通信が入る。映像に映し出されたのは、スーツ姿に薄い色のサングラス。それに唾の大きな帽子を被った男。

 

Mr.ゾーン

「フフ、久しぶりですね早乙女博士」

早乙女博士

「……フェーダー・ゾーンか」

Mr.ゾーン

「フッ……」

 

 フェーダー・ゾーンと呼ばれた男は不敵に笑う。それを無言で睨み続ける早乙女博士。

 

竜馬

「ゾーンだと……!?」

弁慶

「あいつ……」

 

 Mr.ゾーンの登場に竜馬達は驚愕の表情を浮かべていた。それは、即ち。

 

キンケドゥ

「彼は、君達と同じ世界の人間ということか……!」

 

 元の世界でゲッターチームとMr.ゾーンにどのような因縁があるのかは定かではないが、私闘ということもあり得るだろう。そうF91のキンケドゥは思った。だが、だとしたら随伴するオーラ・バトル・シップは何だ?

 

Mr.ゾーン

「早乙女博士。あなた方をテロ等準備罪で拘束させてもらいます」

早乙女

「……我々は、科学要塞研究所の所属として国際的な立場を担保されているはずだが?」

Mr.ゾーン

「海賊と手を組むような組織に国際的な立場、ですと?」

 

 鼻で笑うゾーン。そこには明らかに、侮蔑の色が見えた。しかし、テロへの加担を疑われているというのは血気盛んなゲッターチームとしても心外だった。

 

竜馬

「舐めたこと言ってんじゃねえ! 俺達はミケーネの奴らやデビルガンダムと戦ってたんだ。テロだなんだ言われる筋合いはねえ!」

Mr.ゾーン

「フン……。それを決めるのはあなたではないのだよ流竜馬」

 

 完全に、竜馬を見下している。知性も教養もない蛮族と。その態度が癇に障る。だが、それだけではない。

 

アムロ

「何だ、この男は……?」

シャア

「憎しみか。だが、何に対して……?」

 

 憎しみ。それも相当根深く、黒いものをアムロとシャアは感じていた。それほどまでに、ゲッターを憎んでいるのだろうか。しかし、ゾーンの奥底にある憎しみはゲッターに対してではないように感じられる。

 例えばジオンという国を恨む人々は、戦後からどれだけ時が経とうと決して消えることはないだろう。時間が全てを忘れさせるというには、ジオンという名前が残した傷痕は大きく根深い。何しろジオンの名を背負ったシャア本人もまた、その名に深い絶望を感じていたのだから。

 Mr.ゾーンの憎しみも、ジオンを憎む人々のように深く、積み上げられたもののように感じられる。

 

竜馬

「あの野郎、さっきから勝手なことばかり言いやがって。まるでこっちが悪人みてえじゃねえか!」

 

 竜馬達からすれば、別に正義の味方を気取っているわけではない。しかし、こうして一方的に決めつけられるのは我慢ならない。

 

Mr.ゾーン

「此方には、貴艦を撃墜する用意がある。大人しく此方の指示に従うことを薦めるが?」

 

 砲門をゲッターエンペラーに向ける円盤型の戦艦。そして、それが随伴する空母の周囲に展開されるオーラバトラー隊も剣を抜き、エンペラーを包囲するように飛び回った。それは即ち、戦の合図。

 

早乙女博士

「やむを得ん。各機、出撃! 降りかかる火の粉を払え!」

 

 早乙女博士の合図に。「よっしゃぁっ!」という声とともに3台のゲットマシンが出撃する。オーラバトラー隊を掻い潜り、ゲットマシンは空中でゲッター1に合体。トマホークでオーラバトラー・ライデンを出会い頭に斬り裂いた。

 

ホウジョウ兵

「なっ、なんだあれは!?」

竜馬

「へっ、ショウやエイサップを見ててずっと思ってたのよ。いつかオーラバトラーとも、ガチでやり合いたいってな!」

 

 ゲッター1は、あの暗黒大将軍との激戦の中でも比較的損傷が軽かった。専用のドッグでもあるエンペラーで直接で修理できるのも大きく、既にゲッターは万全に近い状態となっている。

 しかし、それでも完全ではない。それを竜馬は、トマホークを振るう動きで感じていた。

 

竜馬

「チッ、右腕の動きが鈍い。半端な整備しやがって!」

 

 口ではそう毒吐きつつも、ゲッターの動きそのものはライデン達を十分に凌駕している。

 

隼人

「無理はするなよ竜馬。ゲッターの整備も完全じゃないんだからな!」

竜馬

「わかってらぁっ!」

 

 トマホークを振り回し一機、また一機とライデンを落としていくゲッター1。その獰猛な動きに、バイストン・ウェルの武者達は戦慄を余儀なくされていた。

 

ホウジョウ兵

「が、ガロウ・ランめっ!?」

竜馬

「あぁ? ガロードラン?」

 

 なんだそりゃ。と吐き捨てて、ライデン達の火矢を避け潜る。そしてまた、トマホークで一閃。その戦いぶりはまるで鬼神の如く。そんなゲッターロボに、照準を向ける光子戦闘艦。

 

Mr.ゾーン

「ゲッターロボ、この光子砲を喰らうがいい!」

 

 光子戦闘艦から放たれる光が、ゲッターに突き刺さる。それを浴び、ゲッター1は大きくのけ反った。

 

竜馬

「ぅぉっ!?」

隼人

「何やってやがる竜馬!?」

竜馬

「るせぇ! こんなもん屁でもねえぜ!」

 

 悪態を吐きつつ、光子エネルギー砲から抜け出す竜馬。

しかし、ライデン部隊がゲッターを包囲し火矢を放つ。火矢の火力そのものは本来、大したものではない。しかし、地上に出たオーラバトラーは地上のオーラを吸うようにしてより強力になっていく。それは搭乗者が聖戦士たり得ない雑兵のライデンとて同じ。

 

竜馬

「ッ!?  オープンゲット!」

 

 包囲、波状攻撃を掻い潜るため、瞬時にゲットマシンへ分離するゲッター。それからさらに上空でゲッター1に再合体。ゲッターの腹部が、雑兵を捉えていた。

 

竜馬

「散々やってくれたお返しだ。ゲッタァァァァッッビィィィィッム!」

 

 ゲッター線の光が、オーラバトラー達を焼き尽くしていく。次々と羽根を失い、落下してライデン部隊。竜馬は、オーラバトラー隊の奥で照準を向けるMr.ゾーンの光子戦闘艦を睨んでいた。

 

竜馬

「おいゾーン! てめえ、いつからこの世界に来やがった。オーラバトラー共と手を組んで、何しやがるつもりだ!」

Mr.ゾーン

「フ……。相変わらず品性の欠片もない声だ。耳障りな蝿は撃ち落とすに限る。光子エネルギー砲、用意!」

 

 竜馬などはなから相手にしていない。そんな態度にカチンときた竜馬は、「なろぉっ!」と吐き捨て、ゲッタービームを光子戦闘艦へ照射した。しかし、ゲッタービームは光子戦闘艦の甲板に命中した瞬間に霧散してしまう。

 

隼人

「何だと……!?」

弁慶

「ゲッタービームが……!」

竜馬

「消された、だと……!?」

 

 驚愕するゲッターチーム。そして再び、光子戦闘艦はその砲門を開いた。

 

隼人

「竜馬!」

竜馬

「わかってらぁっ!?」

 

 同じ轍を踏みはしない。瞬時にオープンゲットし、今度はゲッター2へ変形合体したゲッターはドリルを翳して竜巻を巻き起こし、落下しながら上空の光子戦闘艦へ叩き込む。

 

隼人

「これなら、どうだっ!?」

Mr.ゾーン

「ふ、この光子戦闘艦にはどのような攻撃も届きはしない!」

 

 光子戦闘艦の全身を覆うように展開されるバリアが、ゲッターの強力な攻撃すらも弾き飛ばす。Mr.ゾーンの開発した光子戦闘艦は、圧倒的な防御力を誇っていた。

 

Mr.ゾーン

「フフフフ。まずは貴様達を血祭りに上げ、お前達の亡骸をハーロックの前に晒してやろう」

竜馬

「なめんじゃねえ……! ゾーン、ここでてめえの息の根を止めてやるぜ!」

 

 しかし、ゲッタービームも、ドリル・ハリケーンも通用しない光子戦闘艦を相手にどうするか。落下していくゲッター2から再びゲッター1へ合体しなおし、低空飛行しながら竜馬は闘争本能のみで思考を巡らせていた。そこへ、上空から再びオーラバトラー部隊が火矢を放つ。

 

竜馬

「なっ!?」

弁慶

「あ、あいつら!?」

 

 上空から、ゲッターへ向かい火矢を放つ。それは即ち、避ければゲッターよりさらに下方……地上の街や木々、人々の暮らす場所を燃やすことになる。

 

竜馬

「……きったねえぞ!?」

 

 罵倒するように叫ぶがしかし、それを意識した瞬間避けることができなくなってしまう竜馬。燃え上がる火矢を浴びるように受け続け、ゲッターは燃え上がっていく。

 

隼人

「クッ、竜馬!」

竜馬

「わかってらぁ!? だが……」

 

 このままではどうすることもできない。無関係な、戦う力を持たない人を巻き込むような戦いは好きじゃない。そんな竜馬の義侠心が今、ゲッターを窮地に陥らせていた。

 

ホウジョウ兵

「今だ、やれ!」

ホウジョウ兵

「あのガロウ・ランを撃て!」

 

 そんな掛け声と共に、さらに矢を放つオーラバトラー。しかし、追撃の矢は届かない。側面から放たれたメガ粒子の塊が、火矢を次々と撃ち落としていた。

 

アムロ

「ゲッター、無事か!?」

キンケドゥ

「ここは任せて、一度エンペラーに帰投しろ!」

 

 Zガンダム。その巡航形態ウェイブライダーのノズルに取り付けられたハイパー・メガランチャー。そして、F91のヴェスパーだ。突然の乱入者を前に、ホウジョウ軍のオーラバトラー部隊は一瞬、迷った。乱入者を倒すべきか。それとも、そのままゲッターを仕留めるべきか。

 

シャア

「そこだ!」

 

 そんな兵士たちの迷いを察したかのように、シャアのゲーマルクのバックパックから放たれたマザー・ファンネル。そこから射出されるチルド・ファンネルが、オーラバトラー部隊を取り囲み一斉砲火。一つ一つがビーム・ライフルに相当するチルドによる波状攻撃。バイストン・ウェルで育った武者達は、まるで蜂の巣をつついたかのようなファンネルの波状攻撃に翻弄されていく。

 

シャア

「私達が退路を守る。ゲッター戻れ!」

竜馬

「チッ……!」

 

 舌打ちし、踵を返す竜馬。本心では、まだまだ暴れ足りない。だが、今のまま光子戦闘艦を相手に闇雲な戦いを続けても、いたずらにエネルギーを消耗するだけになることは竜馬にもわかっていた。

 

隼人

「ヘッ、ゾーンの奴随分と大層なモンを作ったじゃないか!」

弁慶

「だが、どうする? 俺達のゲッターでも打ち破れないバリア、モビルスーツじゃ手に余るぞ」

竜馬

「ああ……。おいジジイ! エンペラービームは使えねえのか!?」

 

 怒鳴り散らす竜馬。今この部隊で最も高い出力を誇っているのは間違いなくゲッターエンペラーのエンペラービームだ。あれならば、光子戦闘艦をバリアごと消し飛ばしてしまえるかもしれない。だが……。

 

早乙女

「まだ、暗黒大将軍との戦いで受けたダメージが回復しておらん。撃てるものならとうに撃ってるわ!」

 

 早乙女の怒号が竜馬の鼓膜に炸裂する。キーンと鳴り響くマイクのハウリングが、竜馬の聴覚を刺激した。

 

竜馬

「怒鳴るこたぁねえだろうが!?」

 

 口答えしながらも、ゲッターロボは3機のゲットマシンに分離しエンペラーへと帰投していく。最低限の補給と整備を済ませ、すぐに再出撃することになるだろう。キャノピーを開き、竜馬はコクピットの中で深く息をする。それと同時、整備スタッフがゲッターの点検に取り掛かり竜馬にもスポーツドリンクが渡される。

 

竜馬

「ゾーンの野郎……。この世界にまでやってくるたぁ、しつこいにも程があるぜ」

 

 スポーツドリンクで喉を潤し、竜馬は静かに呟いた。

 

 

…………

…………

…………

 

 

—光子戦闘艦・艦内—

 

 

 

Mr.ゾーン

「フフフ、どうですかな? これが私の作り出した光子戦闘艦の力です」

 

 Mr.ゾーンは、隣に立つ黒髪の男に目配せする。男は、その防御力を堪能すると深く頷いた。男の名は豪和一清。豪和一族の長兄にして、野望の男。

 

一清

「なるほど、確かに凄まじい防御力だ……」

 

 東京を襲う安倍晴明とゲッターの戦いを見届け、エンペラーをべギルスタンへ派遣するよう根回しした後も一清の暗躍は続いていた。「F」……即ち“シンボル”の首領たるファントムとの会見や、日本国内で対コロニー国家の大規模クーデター計画“ゴッドマザー・ハンド計画”に参加する西田啓との協力関係を築いていく中、一清はゲッターやエンペラーについての調査を続けていた。そんな一清の下にやってきたのがMr.ゾーンだ。

 この怪しげな青年は「ゲッターと同じ世界より遣わされた」と語り、そして仮称「B世界」と呼ばれる並行世界について一清に教えてくれた。

 曰く。ゲッターロボとは破壊の力。その力は全てを滅ぼす。Mr.ゾーンは、「黄金の女神」と呼ばれる存在によりそう教えられ、ゲッターロボを滅ぼすために戦っていたという。

 それが真実か否かは定かではないが、少なくともゲッターはMr.ゾーンにそこまで敵視されるほどの存在であるということだけは一清にも理解できた。

 「ゲッターを倒すため並行世界より遣わされた」そう自ら語るだけあり、Mr.ゾーンの技術力は凄まじい。この光子戦闘艦のような戦闘母艦を開発することができる能力に一清は目をつけた。

 

一清

(西田さんやマキャベルの計画には、どの道強大な軍事力が必要になる……)

 

 エメリス・マキャベル。無国籍艦隊の総司令官にとっては、彼らゲッターエンペラーの部隊はある意味で目障りな存在だった。パブッシュ国がクーデターを起こす時、脅威になりうる存在。そう、マキャベルは認識している。今はミケーネ帝国という共通の敵がいる以上表だった対立は避けたがっていたが、おそらくマキャベルの艦隊とエンペラー部隊の衝突はいずれ避けられぬものになる。そう、一清は読んでいた。そして、その読みは正しかった。

 Mr.ゾーンをパブッシュ国に招き入れ、マキャベルは彼の光子戦闘艦と編入したというホウジョウ国のオーラ・バトル・シップ、レンザンにパブッシュ国の“暗部”としての活動を命じたのだ。

 即ち……“エンペラー部隊の拘束”。その理由など権力者たるマキャベルはいくらでもでっちあげることができる。ゾーンは大義名分を傘に着て、ゲッターとその仲間を追うことができる。完全な、利害の一致。それこそが、一清の狙いだった。

 

一清

(ガサラキへ至る道……。俺には“嵬“の血は宿らなかった。だが……)

 

 ガサラキへ至る手段は他にもある。そう、あの男は語った。そのうちの一つが、ゲッター線。エンペラー部隊にはユウシロウら特務自衛隊を置き、そしてパブッシュ艦隊にはMr.ゾーン。自分の駒を両方に置くことで、“嵬”の力をいずれ我がものにする。この協力関係は、そのための布石だ。

 

Mr.ゾーン

「フフフ、ゲッターを手に入れることができれば……」

一清

「フ……」

 

 ゲッターを滅ぼす。そう口では言いつつもMr.ゾーンの瞳にはギラついた野心の炎が燃えている。Mr.ゾーンのそういう所も、一清は気に入っている。

 ゲッターを追い詰めたという高揚が、Mr.ゾーンを昂らせていた。そんな中、随伴するレンザンのガルン司令から通信が入る。

 

ガルン

「ゾーンとやら、あのガロウ・ランが逃げたようだが?」

Mr.ゾーン

「ガロウ・ラン……? フッ、ゲッターロボのことなら、奴の強力な武器の全てがこの光子戦闘艦の前に無力化されました。もはやゲッターなど敵ではない。このまま押し切ればいい!」

 

 ガルンは苛立たしげに舌打ちをしたが、Mr.ゾーンには聞こえていないようだった。無理もない。と一清は思う。話を聞くに、地上へ出たオーラバトラーはその性能を飛躍的に上昇させる。しかし、ホウジョウ国の兵隊達はそのオーラバトラーの性能に振り回されているように一清には見えたからだ。

 

一清

(どのような高性能マシンも、パイロットが力を引き出せないなら意味はない。か……)

 

 それに対して、今オーラバトラー隊を足止めしているエンペラー部隊のモビルスーツの活躍は見事なものだ。その殆どが旧式だが、機体の特性を生かし不利な空中戦でオーラバトラーを相手に互角以上の戦いを繰り広げている。

 

一清

(清継達からの連絡で聞いていたが、エンペラー部隊のモビルスーツ・パイロット達は伝説のエースであるという話は本当のようだな……)

 

 そんなことを考えながら、一清は目の前の巨大なゲッター戦闘母艦を見据えていた。上に圧力をかけ、ユウシロウ含む特務自衛隊は今の所は化学要塞研究所に留めさせている。ゲッターとユウシロウが接触した時のデータを取りたかったが、それは後回しにするべきだという一清の判断でだ。しかし、彼らのようなエースパイロット達とユウシロウが肩を並べて激戦をくぐり抜けているという事実に、一清は興奮を隠せない。それは即ち、“嵬”としてのユウシロウに覚醒の時が近づいているということに他ならないからだ。

 

Mr.ゾーン

「一清さん?」

一清

「いえ……。作戦に口出しはしません。好きなようにやってください」

 

 それが、Mr.ゾーンと一清の間で取り決められた約束の一つだ。互いに協力はするが、専門外の面に口出しはしない。という。戦艦での戦いや技術に関してはMr.ゾーンが、政治や権謀に関しては一清が。互いの目的のために、それが最善にして最短であると2人ともに考えているからだ。

 それは、己の領域に関するプロ意識故のものかもしれない。しかし、その不干渉をお互いに心地よくかんじているのも事実だった。

 

Mr.ゾーン

「ええ。このまま押し切ります。光子砲、再発射急げ!」

 

 Mr.ゾーンの作り出した光子戦闘艦は、言わば光子力エネルギーを彼なりの理論で転用した要塞兵器だ。一清が提供したのは光子力研究所の光子力バリアの技術書。それを見たMr.ゾーンは、ものの見事に光子力マシンを作り上げた。

 言わば、この戦闘艦はマジンガーと同等以上の出力を誇る艦だ。少なくとも未来世紀62年現在、これほどの戦闘艦はどこの群も所有していない。

 

一清

(例外があるとすればあのゲッターエンペラーと、あの眠れる竜だが……)

 

 今ゲッターエンペラーは暗黒大将軍との戦いで万全ではない。そして、眠れる竜はまだ目覚めの時を待っている。光子戦闘艦の圧倒的な防御力を破れるものなど、この世界にはありはしない。そう、Mr.ゾーンは断言していた。そして彼が断言するのなら、戦いに関しては彼に任せる。それが、Mr.ゾーンと一清の関係だった。

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

—レンザン艦内—

 

ガルン

「ええい、あの若造は戦を何もわかっておらん!」

 

 ガルン・デンは、あの青年……Mr.ゾーンの戦のやり方に腹を立てていた。あの男からは過信が伺える。自らの作った戦闘艦に対する過剰なプライドだ。

 それは武器でありあの男の美点かもしれないが、自惚れも甚だしい。と思う。

 艦と部下の命を預かる身であれば、あの男の造った艦には乗りたくない。口にはしなかったがガルンは、そう思っていた。

 

ガラミティ

「艦長、我が方が攻めあぐねているようだな」

 

 ガラミティ。かつて西の大陸での戦乱でオーラバトラーを駆っていたというコモンの男が言う。それに付き従うダーとニェットを含めた3人組。彼らは、サコミズ王に雇われた傭兵だった。

 

ガルン

「ホ! お前達か。丁度いい」

 

 さすがに歴戦の勇者なだけあって、彼らは地上で性能が向上したオーラバトラーでもものともせずに乗りこなしている。特に、彼らが乗るのはショット・ウェポンが手ずから設計したタイプであり、ヘリコンの地で生まれたライデンやシンデンとは多少特徴が違う。

 

ダー

「あのエンペラー艦隊にはショウ・ザマもいる

ときいている」

ニェット

「聖戦士の仲間を討てば、手柄などいくらでも取れるというものだ!」

 

ガルン

「ああ、行ってきてもらおう。赤い三騎士!」

 

 赤い三騎士……。そう呼ばれた厳しい顔をした男達は、「おう!」と答えると走り出し、格納庫へ向かう。そして、赤い3機のオーラバトラーが、レンザンより飛び出した。

 

 

…………

…………

…………

 

 

アムロ

「なんだ、赤いオーラバトラー?」

 

 突如レンザンから飛び出した3機の赤いオーラバトラー。ビアレスと名付けれたその機体は、戦場の中見事な連携でアムロのウェイブ・ライダーへ迫っていた。

 

ガラミティ

「いいかダー、ニェット。モビルスーツ隊の相手を俺達が受け持つ。その間にライデン隊は敵艦を包囲し、波状攻撃をかけろ!」

 

 「了解!」という掛け声と共に、ライデン隊はアムロ達から離れゲッターエンペラーへと向かっていく。

 

キンケドゥ

「逃すか!」

 

 それを追いビーム・ライフルを撃つF91だが、ニェットのビアレスが割り込むように飛び込みオーラバリアでそれを弾いてしまう。

 

キンケドゥ

「なっ……!」

ニェット

「俺達“赤い三騎士“を、他の兵と同じと思うなよ!」

 

 すれ違い様にF91を蹴り上げ、ベース・ジャバーから落とすビアレス。F91は姿勢制御バーニアを最大に噴かして姿勢制御を試み、ベース・ジャバーへと戻っていく。しかし、もうF91の周囲にビアレスはいない。

 3機のビアレスは、狙いをウェイブ・ライダーへ定めていた。

 

ガラミティ

「あのウィングキャリバーに変形する奴、厄介そうだな!」

 

 赤い三騎士の3人には、骨身に染み付いている脅威がある。ビルバイン。かつて、ショウ・ザマが愛機とした聖戦士の剣。その機体もアムロの乗るZガンダム同様に高速巡航形態への可変能力を有し、多機能を使いこなすことで通常のオーラバトラーを凌駕する力を発揮していた。知っているからこそ、ガラミティはアムロのZガンダムに注視し、警戒の色を顕にしていた。だからこそ、仲間の2人を引き連れた赤いビアレスはベース・ジャバーに搭乗するF91やゲーマルクよりも先にZガンダムを倒すべき。そう判断する。

 

キンケドゥ

「抜かれた!?」」

シャア

「アムロ!?」

 

 ゲーマルクのメガ粒子砲が、ビアレスの足先を掠める。しかし機体に触れる直前、メガ粒子はオーラバリアの発生により霧散してしまう。

 ベース・ジャバーでは、オーラバトラーのスピードに追いつけない。雑兵のライデンならそれでも狙撃できるが、赤い三騎士の乗るビアレスはそう簡単に撃ち落とすことはできなかった。

 

シャア

「奴等のオーラ力か。ええい!」

 

 オーラバリアを発生させるほどの強いオーラ力を持つパイロットが3人、アムロに迫る。手足のないウェイブ・ライダー形態では振り切れない。

 

アムロ

「チィッ!?」

 

 落下するのを覚悟の上で、アムロは空中でウェイブ・ライダーをZガンダムへと変形させる。巡航能力を失ったZガンダムに、地球の重力が襲いかかった。ノーマルスーツなしでは身体が潰れてしまうだろうほどのGがアムロを襲う。しかし、その中にあってもアムロの勘は冴え渡っていた。

 

ガラミティ

「ダー、ニェット。奴にトリプラーをかけるぞ!」

ダー

「おう!」

ニェット

「おう!」

 

 急降下でZガンダムを追う3機のビアレス。戦闘を走るガラミティの機体が、フレイ・ボムを発射する。

 

アムロ

「やられる……!?」

 

 シールドでは間に合わない。そう判断しアムロは咄嗟にビームサーベルを抜いた。Zガンダムのバイオセンサーが鋭敏に、アムロのオーラ力をエネルギーへと変換していく。アムロのサイコミュ的な波動が、Zガンダムの周囲にミノフスキー粒子の壁を作り出し、フレイ・ボムを霧散させる。

 

ガラミティ

「オーラバリアか!」

 

 地上とバイストン・ウェル.世界が違えど人が作り出したものにはある種の共通点がある。特にオーラバトラーの開発には、地上の技術者ショット・ウェポンの技術が使用されている。

 ショット・ウェポンは生体工学の権威でもあった。彼は元々、バイオセンサーの流れを汲む技術バイオ・コンピュータの研究に携わっていた過去を持ち、そして葉月孝太郎博士の元で感情エネルギーの研究に参加していた。

 そんなショット・ウェポンの地上における研究の成果がバイストン・ウェルで身を結んだのがオーラバトラーだ。その意味ではオーラバトラーとは、サイコミュ・モビルスーツの子孫であると言えた。

 そして、いやだからこそ。その祖先たるZガンダムにも、オーラバトラーと近い技術が搭載されている。

 宇宙世紀当時はブラックボックスだったサイコミュ・システムの共振が起こす超常現象。それをガラミティは機能の一部として理解していた。

 

アムロ

「今のは……? そうか、カミーユ……!」

 

 一方で、本質的には地上人であるアムロはそれを機能としては理解していない。しかし、カミーユ・ビダンの魂がこの機体・Zガンダムには宿っている。そう、信じられた。

 

 “カミーユ・ビダンが守ってくれた”

 

 そう理解することで、アムロは落下しながらもビーム・サーベルを引き抜き、左腕のグレネードランチャーを撃つ。しかしグレネードの弾丸はビアレスのオーラバリアに防がれ、オーラソードを抜いたガラミティ機がジリジリとスピードを上げ迫る。

 

ガラミティ

「もらった!」

アムロ

「やらせるか!」

 

 直後、ブースターを吹かせZガンダムは機体を僅かに逸らした。そのズレは微々たるものだったが、落下しながらの格闘戦においてその差は命を分ける差でもある。ガラミティの剣を寸でで躱したアムロだが、ダー、ニェットのビアレスがすぐに迫っている。

 

ダー

「そこだ!」

 

 ダーのビアレスが、フレイ・ボムを放った。奇跡は二度も起きやしない。そう直感したアムロはしかし、咄嗟の判断でガラミティのビアレスを踏みつけてZガンダムをジャンプさせる。

 

ガラミティ

「俺を踏み台にしたっ!?」

アムロ

「このぉっ!?」

 

 フレイ・ボムの軌道から機体を逸らし、回避するアムロ。今だ。アムロは直感に従い、再びZガンダムをウェイブ・ライダーへ変形させる。そして、急上昇。

 

ニェット

「俺達のトリプラーを、振り切っただと!?」

アムロ

「同じような手に、何度も食わされてたまるか!」

 

 アムロは苛立っていた。「三機の連携攻撃を行う」「赤いマシン」そんな、今まで戦ってきた強敵を合わせた紛い物のような奴に負けるつもりは毛頭ない。それも、シャアが見ているところで。

 

シャア

「無事かアムロ!」

アムロ

「振り切っただけだ、すぐに来るぞ!」

 

 今のアムロは、1人で戦っているわけではないのだ。強敵が相手でも背中を預けられる相棒が隣にいる。

 

ガラミティ

「俺を踏み台にするとは……その屈辱、必ず晴らす!」

 

 ウェイブ・ライダーを追うように上昇する3機のビアレス。それを待ち構えるように、赤いモビルスーツがZガンダムとの間を割り込んでビアレスに立ち塞がった。

 

シャア

「アムロはやらせんよ!」

 

 シャアの乗るゲーマルクだ。ゲーマルクの搭載するありったけの火力が、赤い三騎士のビアレスへ撃ち込まれていく。腹部のメガ粒子砲や、ファンネルの波状攻撃。オーラバリアはそれを弾いていくがしかし、目障りであることに変わりはない。

 

ガラミティ

「あの赤い奴!」

 

 鬱陶しい攻撃と、踏み付けにされたという屈辱がガラミティの思考力を奪っていた。

 赤という色は、自分達のトレードマークだ。それを他の人間が使っているという状況そのものに、ガラミティ・マンガンというコモン人はある種の腹立たしさを感じている。

 それだけではない。

 

ガラミティ

(なんだ、あの赤い奴の動きは……?)

 

 まるで遠い昔から知っている奴のような気がしてしまう。そんな、気持ちのザラつきがガラミティを苛立たせていた。

 

シャア

「こちらの攻撃を突破してくるか。さすがだな……!」

 

 ゲーマルクの攻撃を跳ね除けながら突撃するビアレスを前に、シャアは敵ながら称賛に値すると感じていた。それがかつて、共に戦ったことのある兵なら尚更のこと。

 

シャア

「いや、あれは彼らではない。ええい、何を言っているのだ私は!」

 

 シャアとしても、ガラミティ達赤い三騎士によく似た戦友を知っていた。その操縦のクセも三人の連携もよく似ている。機体越しで判別はつかないが、もしかしたら顔まで似ているのかもしれない。とシャアは漫然と思っていた。しかし、そんな郷愁を感じている場合ではない。

 

ダー

「もらった!」

 

 ダーのビアレスが突出して、側面からゲーマルクへ斬り込んだ。重武装、高火力モビルスーツのゲーマルクだが、指に仕込まれたビーム・サーベルがある。それを用い応戦するシャアだが、オーラバトラーの機動力、そしてオーラバリアに守られた重装甲を前に武装の火力とサイコミュのみが取り柄とも言えるゲーマルクは、ベース・ジャバーに乗りながらでの剣戟では次第に旗色を悪くする。

 

シャア

「ええい!」

 

 モビルスーツの性能差は、戦力の決定的差とはならない。しかし、今この状況においてはゲーマルクという機体の特性は間違いなく、シャアの足を引っ張っている。

 サザビーとまでは言わないが、せめてディジェでもあれば。シャアは舌打ちし、ベース・ジャバーを下がらせる。本来、シャアは4本の手足を用いた格闘戦や、機動力を生かした奇襲を得意とするパイロットだ。ゲーマルクの機体特性は、シャアの全力を発揮するには少々分が悪い。

 それでも、機体の性能を100%発揮し状況を切り抜けてしまうのがシャアという男だ。シャアはニェットのビアレスが背後から迫っていることに勘づき、咄嗟にベース・ジャバーから飛び降りる。

 

ニェット

「何だと!?」

シャア

「もらった!?」

 

 下駄履きでなければ満足な飛行もできないオーラマシンの出来損ない。相手はモビルスーツをそう評価し侮っているとシャアはこれまでの撃ち合いから断じていた。そして、そこに隙がある。

 ゲーマルクのメガ粒子砲が、ニェットのビアレス目掛けて線を描いた。

 

ニェット

「まさか!?」

 

 やられる。そうニェットが思い死への恐怖が全身を襲うと同時、ビアレスはそんなニェットのオーラ力を感じ取りバリアを展開する。オーラバリアは、メガ粒子砲を霧散させてしまう。だが、その一瞬の間に落下していたはずのゲーマルクはベース・ジャバーへ再び乗り移り、ゲッターエンペラーへ向かい旋回していた。

 

ガラミティ

「彗星め、逃すか!」

シャア

「私を知っている……?」

 

 赤い彗星。シャアの異名が咄嗟に口をついて出たガラミティ。しかし、当然ガラミティはそんなことは知らない。第一、バイストン・ウェルのコモン界には“宇宙の星々”という概念がないのだ。しかし、そんなことを不思議に思う暇もなくガラミティはシャアを追う。

 

アムロ

「シャア!?」

シャア

「ゲーマルクではな……!?」

 

 雑兵はともかく、オーラバリアを発現させるほどのオーラ力の持ち主が相手となればゲーマルクでは決め手がない。それさえあれば、シャアは歯噛みする。そんな時だ。

 

???

「じゃあさ、こういうのならどう?」

 

 そんな言葉と共に、通信回線に割り込む声。それと同時、巨大なメイスがニェットのビアレスを叩きつける。

 

ニェット

「な、何だとッ!?」

 

 今まで戦闘空域に、そんなものはいなかった。ゲッタートマホークにも負けない物理的な攻撃。オーラバリアごと叩き潰さんとするその獰猛な一打に、たちまちビアレスは叩き落とされてしまう。

 

ダー

「ニェット!?」

ニェット

「バカな……!」

 

 赤い三騎士の前に突如躍り出たのは、巨大なバックパックを取り付けた白いモビルスーツだった。ガンダム。その白い姿は見るものにその名を連想させる。しかし、アムロ達の知るガンダムとは決定的に何かが違う。

 

アムロ

「ガンダム……いや……?」

キンケドゥ

「あれは、まるで……!」

 

 大きく突出したツノ。身体の輪郭そのものも、一般的なガンダムよりもどこか獣じみた風体をしている。

 

シャア

「白い悪魔、か……」

 

 白い悪魔。その呼び名をほしいままとする異形のガンダムはその獰猛な目でビアレスを睨みつける。そのコクピットの中で、少年は無言で敵を見据え、再び飛び出した。

 

三日月

「…………!」

ガラミティ

「な、何だ……!?」

 

 長距離輸送ブースター・クタン参型を装備した悪魔……三日月のガンダム・バルバトスルプスレクスはその右手に持つロングメイスを力任せに振り回し、ビアレスに突撃。圧倒的な質量のロングメイスがコクピットスレスレを掠めるだけで、ガラミティの肝が冷える。

 

三日月

「やっぱり、こいつをつけたままじゃ戦いにくい」

 

 一方、三日月にとってもこの長距離ブースターは扱い慣れない。外付けのブースターは、自分の身体同然のバルバトスとは勝手が違う。三日月は、クタン参型をバルバトスから切り離すと、そのままブースターを蹴る。そしてそのまま跳躍力でビアレスへと飛んでいく。

 

ガラミティ

「ば、化け物か!」

三日月

「よく言われる」

 

 ジャンプ力だけでビアレスに追随するガンダム・バルバトスルプスレクス。ブースターに隠れて見えなかった尻尾のようなものを空中で振り回し、振り切ろうとするビアレスを尻尾が先回りする。まるで、猛獣が小動物を無ぶるかのようなその動きに翻弄されているうちに、ビアレスの頭を叩き潰すようにメイスが叩きつけられた。

 

ガラミティ

「うぉぉっ!?」

ダー

「隊長!?」

 

 頭の潰れたビアレスを、ダーの機体が咄嗟に引き寄せる。あと一瞬その判断が遅ければ、ガラミティはたちまちコクピットごと潰されていただろう。半壊したキャノピー越しにその悪魔の貌を見て、ガラミティは戦慄していた。

 

ガラミティ

「ニェットは無事か……?」

ダー

「あ、ああ……。だが、これ以上は無理だ。退こう」

 

 ダーの言うことに頷くしかない。今はただ、生きているだけでも儲け物。そう思うガラミティだった。

 

ガラミティ

「仕方ない……、一次帰投する!」

 

 厄介なモビルスーツ部隊の相手を受け持つこと。その仕事自体は果たした。あとは、あのMr.ゾーンとかいう優男の仕事だ。そう自分を納得させて、赤い三騎士はレンザンへと戻っていく。

 

三日月

「あ……」

 

 ジャンプ力で飛んでいたバルバトスは、空中を長く飛ぶことはできない。そのまま落下するバルバトスをクタン参型が回収し、再びドッキングする。

 

三日月

「助かったよ、オルガ」

オルガ

「無茶しやがって……」

 

 クタン参型を操縦していたオルガ・イツカは、本来想定されていない戦い方をやってのける三日月に感嘆としつつ、その無茶を支えてホッと息を吐いた。

 

キンケドゥ

「逃げるのか!」

アムロ

「よせキンケドゥ、今はエンペラーを守るのが先だ!」

 

 敵を追う余裕は、アムロ達にもなかった。赤い三騎士の相手に注力するあまり、他のオーラバトラー部隊は既にゲッターエンペラーに取り付いている。今、エンペラーはそれを対空砲火で応対しているがエンペラービームの使えない今いつまで保つか。

 

ミチル

「ッ! 左舷の弾幕薄いわ。何やってるの!」

 

 エンペラーの管制室でミチルが怒鳴る。早乙女博士は無言で敵を……Mr.ゾーンの光子戦闘艦を睨みつけていた。

 

 

…………

…………

…………

 

 

Mr.ゾーン

「バルバトス……! あの鉄華団の悪魔か!」

 

 鉄華団の悪魔。かつて、イルミダス、ギャラルホルン軍の指揮官として何度も戦場で相見えた強敵。その存在を前にMr.ゾーンは驚愕の叫びを上げる。

 

一清

「…………!」

 

 一清の目にも、その悪魔の姿は印象強く写っていた。悪魔。鬼。一清の野心を刺激する姿とギラついた瞳が、彼の胸を高鳴らせる。だが、隣で高揚を抑える一清に気付かぬほど、Mr.ゾーンは動揺していた。

 

Mr.ゾーン

「鉄華団が来たということは……!」

 

 光子戦闘艦の背後に、巨大な影。背面を映すカメラなど見なくてもわかる。Mr.ゾーンの網膜に焼き付いて離れない、巨大な髑髏の模様。

 

ハーロック

「アルカディア号、全速全身! 我らが友の危機を救うための戦いだ!」

トチロー

「おう、任せろハーロック!」

 

 アルカディア号。Mr.ゾーンに屈辱の記憶を与え続ける緑色の巨体が、すぐそこに迫っていた。

 

Mr.ゾーン

「ハーロック……!」

 

 わかっていた。アルカディア号と合流しようとするエンペラーを攻撃すれば、すぐにでも奴らはやってくると。だが、計算以上の迅速。

 アルカディア号の機関砲が、光子戦闘艦へと撒き散らされる。しかし、光子バリアはそれを受け付けない。

 

ハーロック

「あの艦は……!?」

トチロー

「あんなものを作れるのは、まさかゾーンか!?」

 

 ハーロックとその親友トチローも光子戦闘艦のバリアを一目見て、敵の正体を察知した。

 

 

Mr.ゾーン

「フフ、久しぶりだなハーロック」

ハーロック

「Mr.ゾーン……。俺を追ってきたのか」

Mr.ゾーン

「そうだ。ハーロック……貴様に与えられた屈辱。その命で晴らさせてもらう!」

 

 Mr.ゾーンの瞳に、憎しみに満ちたものがギラついている。ハーロックはそれを哀れに思いつつも、男として挑まれた戦いには全力で応じる所存だった。

 

ハーロック

「いいだろう……。その執念に敬意を表し、相手になってやる!」

 

 アルカディア号と光子戦闘艦。2つの巨大な艦が至近距離でぶつかり合う。しかし、光子バリアに守られるMr.ゾーンの艦は堅牢で、アルカディア号の攻撃を寄せ付けない。

 

Mr.ゾーン

「ハハハハハ! ハーロック、これが私の光子戦闘艦だ。お前が侮辱した、私の艦だ!」

ハーロック

「その執念を、正義のために燃やせば友になれたものを……!」

Mr.ゾーン

「戯れるなッ!」」

 

一清

「…………」

 

 Mr.ゾーンは明らかに、異常な執着をハーロックに向けている。一清はその見苦しい執念を「使える」と感じていた。この戦いの結果はともかく、将来的に……ゾーンの尊大なる自尊心は味方につければ大きな武器になると。

 

 

 

トチロー

「どうするハーロック! ゾーンの艦、以前より遥かに強化されてるぞ?」

ハーロック

「ああ。あの戦闘艦はあらゆる点でアルカディア号以上。だが……」

 

 艦と艦の戦いならば、負けるわけにはいかない。そこにはハーロックの誇りがある。たとえ自信よりも強大な相手であったとしても、無敵の艦など存在しない。だからこそ、ハーロックは今まで生き残ってこれたのだから。

 

ハーロック

(だが、どうする……? 奴のバリアを突破する方法を考えねば)

 

 カノン砲も霧散する超鉄壁の光子バリア。それを突破しなければ活路はない。ハーロックは一瞬たりとも目を離さず、敵のバリアを見据えていた。全身を覆うほどの強力なバリア。それを打ち破る方法は……。

 

ハーロック

「そうか!」

 

 立ち上がり、ハーロックは敵の猛攻に晒されるゲッターエンペラーへ通信を入れる。数秒のラグの後、眉間に皺を寄せた早乙女博士の顔がアルカディア号に映し出された。

 

ハーロック

「お久しぶりです、早乙女博士」

早乙女博士

「挨拶はいい。……奴を破る方法を思いついたか?」

ハーロック

「はい。ゲッターの出撃は可能ですか?」

 

 ハーロックが訊くと同時、ゲットマシンのコクピット内部の映像をカメラが映し出す。丁度補給と応急修理が終わった段階らしく、ゲットマシンは既にカタパルトへ移動していた。

 

早乙女博士

「この世界のモビルスーツ・パイロットはなかなか優秀でな。十分、時間を稼いでくれた」

 

 つまり、出撃は可能。

 

ミチル

「でも、どうするの。敵のバリアはゲッタービームも無力化してしまうほど強大よ」

ハーロック

「奴のバリアだが、一度全力で展開すると再展開にコンマ2秒の隙ができます。その隙を叩く」

 

オルガ

「なら、それは俺達がやる」

 

 会話に割り込んできたのはオルガだ。オルガの操縦するクタン参型に格納されているバルバトスのカメラアイが赤くギラつき、光子戦闘艦を睨め付ける。

 

ハーロック

「決まったようだな。アルカディア号は敵の隙を作る。その隙にゲッタービームを最大出力で叩き込んでくれ!」

 

 ハーロックの号令と同時、アルカディア号が動いた。緑色の巨大な艦体を光子戦闘艦から引き離しながら、機関砲を撃ちまくるアルカディア号。そのひとつひとつを光子バリアで防ぎつつ、光子戦闘艦は光子砲の照準をアルカディア号へ合わせていく。

 

ラ・ミーメ

「キャプテン、敵の攻撃が来ます!」

ハーロック

「今だ!」

早乙女博士

「ゲットマシン、出撃!」

 

 

 

竜馬

「よっしゃぁっ!?」

 

 竜馬の掛け声と共に、3台のゲットマシンが発進する。激しい攻防の続く戦場を駆け抜けゲットマシンはゲッター1に合体。それと同時に、ゲッター1の腹部に膨大なゲッターエネルギーが集中する。

 

Mr.ゾーン

「何、ゲッターロボ!?」

 

 このまま光子砲を撃てば、バリアが発生できない。咄嗟に攻撃命令を取り消しバリアの展開を指示するゾーン。竜馬はその僅かなもたつきに、鮫のように凶悪な笑顔を見せる。

 

隼人

「最大出力だ。ぶちかませ竜馬!」

竜馬

「わかってらぁっ! ゲッタァァァァァッビィィィィィッム!?」

 

 瞬間、ゲッター線の光が最大出力で放たれる。やられる。そう直感しつつもMr.ゾーンは、ビームが命中するその直前に光子バリアの展開を終え備えることに成功した。

 

Mr.ゾーン

「フハハハハ! 無駄だ、たとえゲッタービームとて、この光子バリアの前には無力だと思い知ったばかりだろうに!」

竜馬

「グダグダ言ってんじゃねえぇっ!?」

 

 吠え猛る竜馬。竜馬の雄叫びに呼応するように、ゲッタービームの出力も増していく。

 

隼人

(まただ……!)

 

 ゲッターロボは。ゲッター線は。明らかに竜馬に応えている。竜馬の闘争本能に。精神力に呼応し強くなっている。隼人はその事実に気付いていた。まるで、竜馬1人さえいれば隼人も、弁慶も不要とでも言うかのようにゲッターは、竜馬の声にのみ応えている。

 

隼人

(竜馬、なぜお前なんだ……!)

 

 自分ではなく。なぜ竜馬だけがゲッターに選ばれている? そんな疑問を口にすることもなく、隼人は無言でゲッターの操縦桿に力を込める。たとえ僅かでも、自分の力もゲッターが受け入れてくれているのならば。今はゲッターという運命に従う。それが、神隼人という探求者の姿だった。

 

 

 

Mr.ゾーン

「げ、ゲッター……流竜馬!」

一清

「これが、ゲッター線の無限の力……!」

 

 Mr.ゾーンは、その猛獣の如きゲッターの存在に恐れをなしている。一清は逆に、その鬼神の如き力に恍惚の表情を浮かべていた。

 

一清

(この力が手に入れば……!)

 

 無限力。ガサラキへ至る手段。“嵬”の血を引かない自分が、無限の力を手に入れるための力。その一端に触れた一清は、興奮を隠せないでいる。

 

Mr.ゾーン

「こ、光子バリア最大出力で展開! 絶対にバリアを超えさせるな!?」

 

 ゾーンの怒声と共に、バリアはさらに強力になっていく。竜馬の魂を込めた一撃すらも阻むほどに。

 

トチロー

「ゾーンの奴……。とんでもないものを作りやがって」

ハーロック

「あれが、あの男の執念の結晶か……」

 

 敵ながら見事と言わざるを得ない。だが、それでも立ち塞がる者は何人でも越えていくのみ。

 

 ゲッタービームを出し切り、ショートするゲッターロボ。光子バリアを限界まで使わせ、バリアの消費エネルギーを出し尽くさせる。

 

Mr.ゾーン

「お、終わったのか……」

 

 安堵の息を吐くMr.ゾーン。しかし、その直後。急速で接近する悪魔をゾーンは見た。

 

三日月

「オルガ、あれをやればいいんだね」

オルガ

「ああ……。ぶちかませ、ミカ!」

 

 先ほどと同じようにクタン参型をパージすると、ブースターを蹴り上げジャンプ力で滑空するバルバトス。その重たいロングメイスを掲げた悪魔は、一目散に飛び込んでいく。

 

Mr.ゾーン

「ば、バカめ。こちらの光子バリアに飛び込むなど自殺行為だ!」

 

 ゾーンが叫ぶ。しかし、光子バリアの発生にかかる時間よりも、バルバトスの飛び込むスピードの方が僅かに早い。

 

三日月

「フー…………」

 

 猛獣が狩りをする時のような吐息が、光子戦闘艦越しに伝わる。狼王ルプスレクス。その牙が、光子戦闘艦の装甲をぶち抜いた。

 

Mr.ゾーン

「な、うわぁっ!?」

 

 動力炉や艦橋は無事だ。だが、次はないとばかりに三日月は再びロングメイスを持ち上げる。今度こそ、息の根を止めるために。

 

一清

「これは…………!?」

 

 バルバトスの動きはまるで、生きている人間のように滑らかだ。パイロットが操縦していることで発生する動作のロスがまるでない。それは、マイル1……即ちTAに使用される人工筋肉の目指すものと同じであるといえる。

 Mr.ゾーンはバルバトスを悪魔と呼んだ。これが悪魔ならば……。

 

一清

「鬼とは……どれほどのものか……!」

 

 己の目指す存在。それへ至る道において避けることのできない存在。鬼。理論は違うが、目の前にいるバルバトスはおそらく一清の……豪和の目指すものの完成形に一番近い存在なのだ。それを悟り、ゴクリと固唾を飲む一清。

 死が目前に迫っているのを感じつつも、一清の心は興奮に満ちていた。

 

 

 

三日月

「アンタは、生かしておけば必ず俺の仲間を殺しにくる」

 

 ガンダム・バルバトスルプスレクスのコクピットに繋がれた三日月・オーガスは、艦橋にいるMr.ゾーンの姿を認めると、静かに呟いた。

 あいつがどうしてハーロックを追っているのかなど、三日月には興味がない。ただ、ハーロックは三日月の、鉄華団にとって得難い仲間なのだ。

 ハーロックが死ねば、オルガが悲しむ。アトラも悲しむ。それは、自分も悲しい。

 だから三日月は容赦しない。一才の容赦なく、呵責なく三日月はメイスを艦橋に突き立てようとする。

 

三日月

「……いや、そうでなくても」

 

 この男を生かしてはいけない。三日月の鋭敏な嗅覚がそれを告げているのだ。

 メイスを高々と掲げるバルバトス。そして……。

 

ハーロック

「よせ!」

 

 キャプテンハーロックの声が、三日月の動きをピタリと止めた。

 

三日月

「いいの?」

ハーロック

「奴は敵だが、同じ世界から来た地球人だ。これ以上、同じ故郷を心に持つ者を殺めたくはない……」

 

 その言葉に三日月が納得したのかは、定かではない。しかしバルバトスはメイスを振り上げるのをやめると、光子バリアを発生させている電磁装置の前でそれを振り下ろす。ドス、という鈍い音と共に、光子バリア発生器を破壊したバルバトスは再び跳躍し、クタン参型とドッキングした。

 

Mr.ゾーン

「ハーロック……。私に情けをかけるとは、後悔するぞ」

 

 腰を抜かしたMr.ゾーンは、やっとの思いでそれだけを吐き捨てる。それを聞き届けたハーロックは静かに頷いて、それから口を開いた。

 

ハーロック

「ゾーン……。お前が俺の命を狙うというのならば、それもいいだろう。私は何度でも、お前の挑戦に受けて立つ!」

Mr.ゾーン

「…………ッ! 全軍、撤退。これ以上の交戦は不要である!」

 

 あまりにも大きすぎる。器が違う。それを面と向かって再認識させられてしまう。今のままでは、勝てない。ハーロックを倒すためには、今以上の力を手に入れなければ。

 この千載一遇を逃し、苦虫を噛み潰したような表情で強敵を睨むMr.ゾーン。キャプテンハーロックは、その隻眼で彼の視線を見据え返していた。

 

 

 

アムロ

「終わった、のか……?」

シャア

「どうやら、そのようだが……」

 

 撤退する見送りながら、アムロとシャアは深い息を吐く。彼らほどの歴戦の勇姿でも、戦いの後はいつもこうだ。

 

竜馬

「しかし三日月……ハーロック。お前らまでこの世界に来るとはな」

 

 ゲッターロボの竜馬も、どっと汗をかきながら旧友へ言葉を投げかける。ぶっきらぼうだが、そこには彼なりの親愛の情が感じられる。そんな声だ。

 

三日月

「まあ、色々あってね」

ハーロック

「お互い、積もる話もあるだろう。一度帰投し、君達の本拠地でゆっくりと話したい」

隼人

「そうだな……」

 

 頷きつつも、隼人の視線は鋭い。

 

隼人

(ゾーンの光子戦闘艦。あれは間違いなく光子力エネルギーを使っている……。誰かが奴に、情報を渡したのか?)

 

 隼人達の世界にも、光子力に限りなく近い動力で動く魔神が存在した。だが、あれほどの防御性能を生み出すには至っていない。

 

隼人

(最も、あの“魔神はバルバトス同様に厄祭戦時代のマシン。あの時代にどんなオーパーツがあるかなんて知れたもんじゃねえがな)

 

 考えても仕方ない。今はとにかく、懐かしい顔ぶれとの対面が楽しみな隼人だった。

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

—科学要塞研究所—

 

 

 

エイサップ

「そんなことが起きてたのか……」

 

 一連の事件が終わった後、研究所に戻ってきたエイサップは申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。彼は、リュクスの申し出である場所へ彼女を案内していたのだ。

 

槇菜

「そうなの。エイサップ兄ぃがリュクスさんとデートしてる間、こっちも大変だったんだから」

 

 むくれたように言う槇菜に、エイサップは「そんなんじゃない!」と否定する。だが、2人きりで外出したという事実は事実なのでそれ以上強くは言えなかった。

 

リュクス

「そのオーラシップは、レンザンですね……。私がオーラロードを開いた際、はぐれてしまった艦です」

 

 それが無事でいたことは嬉しい。しかし、Mr.ゾーンなどというならず者と行動を共にしているというのは、リュクスにも不可解だった。レンザンの艦隊司令ガルン・デンは、無能な人物ではない。彼なりの考えがあってのことだとは思うが……。

 

リュクス

(ガルンは、父上の下に……バイストン・ウェルに帰る気がないのか?)

 

アムロ

「ともかく、これで俺達の協力者は全員揃ったことになるのか?」

 

 今、科学要塞研究所にはゲッターエンペラーとアルカディア号が着陸している。巨大なゲッターの顔と、巨大な髑髏模様が並んでいる様は圧巻そのものだった。そして、今ここには暗黒大将軍との死闘を共に戦い抜いた仲間達に加えてコズモレンジャーJ9の4人。それに、キャプテンハーロックとその友大山トチローと、宇宙人の美女ラ・ミーメ。さらに鉄華団のオルガ・イツカ、アトラ・ミクスタ、そして三日月・オーガスが顔を並べている。

 

マーガレット

「…………?」

 

 マーガレットが、車椅子に乗る少年……三日月に怪訝そうに視線を寄せた。

 

三日月

「何?」

 

 その視線を感じたのか、三日月の方から口を開く。

 

マーガレット

「気を悪くしたらごめんなさい。ただ、あなた……」

 

 三日月の右半身は、完全に動きを止めている。

 瞳には何も映さず、腕もピクリとも動かない。

 右半身不随。そうとしか言いようのない少年が、この場にいるのだ。マーガレットだけでなく、それが気になっている者は決して少なくはなかった。

 

三日月

「ああ、これ。気にしないで。バルバトスに乗ってる時は見えるし動くんだ」

レイン

「え…………?」

 

 バルバトス。それが三日月の乗機の名前であることはわかる。だが、その理屈はわからない。そこで口を開いたのが、ラ・ミーメだった。

 

ラ・ミーメ

「三日月さんの機体……ガンダム・バルバトスルプスレクスは、三日月さんと阿頼耶識システムという機能で繋がっています」

アムロ

「阿頼耶識……?」

「仏教の言葉だな。サンスクリット語のアーラヤと、識。つまり場所と心の概念だ」

 

 亮が言う。しかし、それを聞いて「そうか」と思う者は決して多くはなかった。

 

シャア

「……なるほどな。つまり阿頼耶識システムとは、アーラヤ即ち機体と、識即ちパイロットの一体化を促す装置ということか」

 

 その数少ない1人……シャアはそう納得するが、それは決して気持ちのいいものではない。

 

ユウシロウ

「機体と……ひとつになる……」

三日月

「うん。バルバトスに乗ってる時は、自分の身体がバルバトスになってる。そんな感じ」

 

 呆気なく頷く三日月。しかし、それだけでは三日月の不随の説明になっていない。

 

オルガ

「……阿頼耶識は、子供の身体に外科手術で定着させるんだ」

 

 そんな中で口を開いたのが、オルガだった。

 

オルガ

「俺達の世界には大昔、厄祭戦っていうでけえ戦いがあってな。その時に作られたガンダム・フレームを操縦するために造られたシステムらしい。ミカはあのバルバトスに乗って、何度も阿頼耶識のリミッターを外してるんだ。その度に、ミカの身体はバルバトスに引き寄せられちまう」

 

 バルバトスの性能を引き出す代償として、三日月は身体機能をバルバトスへ引き渡していく。要約すればそういうことだ、と。

 

槇菜

「そんな……」

 

 戦えば戦うほど、バルバトスになっていく。それは、槇菜にはあまりにも残酷なことのように見えた。

 

三日月

「でも、バルバトスがあれば戦える」

 

 しかしそんな視線を、三日月は意にも返さない。その思考回路そのものが、痛々しいものに映ってしまう。

 

マーガレット

「……わかったわ」

 

 だがその質問を最初に投げかけたマーガレットは、そんな三日月を受け入れて静かに笑う。それから栗色の髪を靡かせると膝を屈ませ、三日月に視線を合わせた。

 

マーガレット

「あてにしてるわ。三日月」

 

 そう言って左手を伸ばすマーガレット。

 

三日月

「……今、手汚れてるけど?」

マーガレット

「構わないわ。汚れているのはお互い様だもの」

 

 そう言い切るマーガレットの手を、三日月の左手は握り返す。握手。それは三日月にとってある意味、思い出の行為だった。

 

三日月

(クーデリア……どうしてるかな?)

 

 元の世界に残して来てしまった、大切な家族。クーデリアだけじゃない。鉄華団という旗の下に集った、身寄りのない子供達。彼らの下に、一刻も早く帰りたい。そんな思いが、三日月の胸に去来する。

 死んだ奴には、死んだ後で会える。だから死ぬのを怖いと思ったことはない。だが、死んでしまえば生きている奴とは会えなくなる。それは、寂しい。

 元の世界には、三日月と共に生き抜いた鉄の華々が息づいている。優等生のタカキ。いじっぱりのユージン。ガチムチの昭弘。それに、あの戦いを共に乗り越えた多くの仲間達。

 鉄華団。決して散らない鉄の華とオルガに名付けられたその仇花は、鉄故に実を宿すこともなく散る運命にあった。

 だが、鉄は打たれれば打たれるほど硬く、強くなる。

 

三日月

(強くならなきゃな……)

 

 今よりも、ずっと。オルガが背負うものを、共に背負えるように。そして。

 

三日月

(いつか、また……)

 

 見果てぬ先へ。ここではないどこかへ。みんなで歩を進める日のために。

 

アトラ

「……三日月?」

 

 気付けば、三日月の左の瞳から小さな雫が伝っていた。

 

三日月

「あれ?」

マーガレット

「え、え……?」

 

 予想外の展開に、戸惑うマーガレット。しかし、戸惑っているのは三日月も一緒だった。

 

アトラ

「大丈夫三日月!? どうしたの!?」

 

 三日月の車椅子に寄って、甲斐甲斐しく聞く小動物系の少女アトラ。三日月はそんなアトラを見つめて静かに笑う。そして、

 

三日月

「……大丈夫。必ず、またみんなと会おうな」

 

 そう優しく囁いて、解いた左手でアトラの髪を撫でる。その手首には、アトラとお揃いのミサンガが小さく輝いていた。

 




次回予告

三日月
「あのマーガレットって人、結局何も聞かなかったな……。でも、なんとなくあの人が言いたいことはわかった。たぶん、あの人は俺達の境遇を察してるんだと思う。だから、何も言わなかった。それだけなんじゃないかなって。まあ、いいか。世界が変わっても、きっと俺達みたいな宇宙ネズミ同然の育ちをしてる人はどこにでもいる。命の糧が、戦場にしかない人が。次回、スーパーロボット大戦VB第17話、『Vanity Busters』」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。