スーパーロボット大戦VB   作:元ゴリラ

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第2話「鬼哭石」

—ミケーネ帝国—

 

 地底深い闇の底に、ミケーネ帝国は存在する。ミケーネの玉座に、その巨体は鎮座していた。暗黒大将軍。ミケーネ帝国を統べる闇の帝王より、地上侵攻部隊の総司令を任されている武人。暗黒大将軍は、地上侵攻の先発隊からの報告を聞き、沈痛な面持ちをしていた。

 

暗黒大将軍「グラトニオスが死んだか……」

 

ゴーゴン大公「はっ、憎きマジンガーZとそして……不完全な目覚めながら、旧神の存在が確認されました」

 

 上半身が男であり、下半身が虎の怪人ゴーゴン大公。彼は、暗黒大将軍の名により地上へ渡り、機械獣を復活させたドクターヘルへ力を貸しながら強襲のタイミングを測っていた。

 そして、今が好機と暗黒大将軍に進言したのである。

 

暗黒大将軍「旧神か……。あれが目覚めれば、厄介なことになる。それに、マジンガーZと言ったか。ゴーゴンよ、マジンガーは必ずこの世から抹殺するのだ」

 

 しかし、暗黒大将軍はゴーゴンが思っている以上にマジンガーという存在を危険視しているようだった。

 

ゴーゴン大公「お言葉ですが暗黒大将軍様……マジンガーなどに固執する理由があるのでしょうか?」

 

 たしかに、マジンガーZは強敵だった。ドクターヘルに貸した妖機械獣は、奴の手で敗れたのだから。しかし、ミケーネの戦闘獣軍団を持ってすれば容易い敵。そうゴーゴンは考えていた。そして暗黒大将軍はゴーゴンのその浅さを、嫌ってもいた。

 

暗黒大将軍「ゴーゴン、マジンガーの名を持つものが現代にいる。その意味がわからぬか!」

 

 暗黒大将軍は、地球侵攻の狼煙を上げるその時までゴーゴンからマジンガーの話を聞いていなかった。聞いていれば、対策も立てられたものを。或いはそのドクターヘルに協力して、一切の余力も残さず全力でマジンガーを潰してくれれば。

 

ゴーゴン大公「は……?」

 

暗黒大将軍「我がミケーネ帝国は一万年前、地上を我が物とし栄華を極めていた。だが、その栄華を終わらせたものがあった。それこそがマジンガー!」

 

 暗黒大将軍は思い出す。かつて自身と渡り合い、深傷を与えた強敵の名を。それと同じ名前を受け継ぐ巨神が今尚存在しているとしたら、それは間違いなくミケーネ帝国最大の脅威となるのだ。

 名前とは、受け継がれるものなのだ。とすれば現代のマジンガーもまた、あの荒ぶる神と同様の脅威になりうる。日本には、警戒すべき人類の拠点がいくつか存在する。だから機械獣だけでなく戦闘獣を送り込んだ。にも関わらず、グラトニオスはマジンガーZに敗北した。

 

暗黒大将軍「ゴーゴンよ。儂とて100戦して100勝とはいかなかった。その結果が今なのだからな。だが、決して負けてはいけない1戦というものも存在する。ゴーゴン、お前は誰よりも早く地上に赴きながらその1戦を尽く逃してきたのだ!」

 

 叶うならばゴーゴンには、マジンガーZを倒してもらいたかった。だが、それにはゴーゴンでは不足だったらしい。暗黒大将軍は、自らの人選を恥じていた。

 

安倍晴明「フフフ、暗黒大将軍様。ここは私めにお任せください」

 

 芒、と闇の中に炎が灯った。すると同時に、人間が現れる。安倍晴明。平安時代に名を残した陰陽師と同じ名を持つ男は、両脇に十二単衣を纏った美女を侍らせながら、慇懃無礼な笑みを浮かべていた。

 

暗黒大将軍「晴明……と言ったか。何か考えがあるのか?」

 

 安倍晴明は、ある日突然ミケーネ帝国に現れた。そして、「暗黒大将軍様のためにお仕えさせていただきたい」と懇願し、客分とでもいうべき地位を手に入れた。

 戦闘獣と同等の力を有する鬼獣を自在に生み出すその力は、暗黒大将軍としても不要と斬り捨てるには惜しいものだったからだ。

 

安倍晴明「はっ。つきましては私にダンテをお貸しいただきたい」

 

暗黒大将軍「ほう、ダンテをか……。よかろう、晴明。好きにやってみせるがいい!」

 

 大将軍の決定は下った。晴明はそれに恭しく頭を垂れると、再び芒、と消える。まるで、はじめからそこにいなかったかのように。

 

ゴーゴン大公「……よろしいのですか、大将軍様」

 

 人間如きに。そういう侮蔑が、ゴーゴンの視線からは見てとれた。

 

暗黒大将軍「よいのだゴーゴン。晴明がマジンガーZを倒すのならばそれもよし。万一倒せずとも……」

 

 疲弊したマジンガーを倒すことができるのならば、それもよし。所詮は安倍晴明など、使い捨ての傭兵にすぎない。それでこちらの戦力を最低限温存できるのならば、人間の陰陽師に好き勝手させるのも悪くはない。

 それが、暗黒大将軍の考えだった。

 

ゴーゴン大公「それはそうでありましょうが……」

 

 しかし、安倍晴明といえど所詮は人間。どう裏切るかわかったものではない。そうゴーゴンの顔には書いてあるのを、暗黒大将軍は見てとった。

 ゴーゴン大公も、優秀な武人であることは間違いない。故に暗黒大将軍は側近として、彼を重用している。

 

暗黒大将軍「よいかゴーゴン。仮に彼奴が裏切ったところで、我がミケーネ闇の軍団からすれば蚊の一刺しのようなもの。それに……いざとなった時のためにお前がいるのだ。ゆめゆめ忘れるな」

 

ゴーゴン大公「はっ…………」

 

 

 暗闇の中、暗黒の軍勢の侵略は始まったばかりだった。その闇に立ち向かう、勇者は……。

 

…………

…………

…………

 

 

 

—岩国米軍基地ー

 

 岩国基地に運び込まれた鬼獣の残骸を前に、岩国基地の司令代理を務める士官は、1人の日本人と対面していた。黒い髪をオールバックにまとめ、爬虫類のような感情の伺えぬ瞳の日本人。彼の名は豪和一清。日本国において莫大な権力を持つ豪族・豪和一族の長男であり、豪和インスツルメンツの代表としてやってきた男。

 

一清「では……このサンプルは豪和技研の預かりということで」

 

 一清の目的は、鬼獣の残骸だった。

 

司令代理「ええ。それは構いませんが……」

 

 これは、政府としての決定だった。ミケーネ帝国と共に現れた「鬼」のサンプル。それを豪和は、莫大な金額で買い取ると言ってきた。

 ネオアメリカ首都であるネオアメリカコロニーは2年前のデビルガンダム事件の際、自由の女神砲と共に首都を破壊される憂き目に遭っており、軍備の増強と国民への社会福祉の二重の重圧を課されている。

 それを賄えるだけの額を、豪和は提示している。断る理由はない。というのが政府の見解だった。

 しかし、司令代理はこの男……豪和一清に只ならぬものを感じている。

 

司令代理「…………その鬼、豪和はどうするつもりですか?」

 

 まるでこの鬼を渡すことが将来的に、アメリカ全体に災いをもたらすのではないかという不安だった。

 

一清「お話しする義務がありますか?」

 

司令代理「…………」

 

 無論、義務はない。豪和には豪和のハラがある。それは当然のことだ。しかし、一清のハラと豪和のハラは、果たして同じものだろうか。

 鬼獣の残骸を眺める一清を見やる。その視線はむしろ、鬼獣よりも鬼のように見えた。

 

一清「では、私はこれで」

 

 鬼よりも鬼らしい青年は一礼すると、その場を後にする。司令代理は、こんな時に本来の岩国司令アレックス・ゴレムは何をしているのかと天を仰いだ。

 

…………

…………

…………

 

 

—医務室—

 

マーガレット「ここは……」

 

 マーガレット・エクスが目を覚ました時最初に見えたのは、白い天井だった。

 次に感じるのは、消毒液の匂い。鼻腔をツンとする匂いに刺激されて、マーガレットはベッドから上体を起こした。

 

マーガレット「ッ……」

 

 身体が痛む。肋骨が何本か、折れているのがわかった。それに、頭も少し痛い。

 

ハリソン「気付いたか」

 

マーガレット「あなたは……ハリソン・マディン大尉?」

 

ハリソン「知っていたか……」

 

マーガレット「『青い閃光』は有名ですから。それに、木星軍との戦いには私も、最前線に配属されていました」

 

ハリソン「そうか……。あの戦いを生き残ったのか。だが思い出話は後だ。今は、君がどうしてここにいるのか。そしてあのマシンが何なのかを知りたい」

 

マーガレット「私は……ゼノ・アストラの起動実験の際、機体を暴走させ……」

 

ハリソン「ゼノ・アストラ……。それが、あの機体の名前か」

 

マーガレット「はい。申し遅れました。私はマーガレット・エクス少尉。海兵隊の出身です」

 

 痛む身体で敬礼をしようとして、骨が痛む。ハリソンは「無理をするな」とマーガレットを制して、質問に戻った。

 

ハリソン「では……あの機体は我が軍で開発されたものなのか?」

 

マーガレット「そう、上からは聞いています。ですが……」

 

 マーガレットは説明する。意味不明の象形文字がモニタに映り、そしてワープしたら岩国にいたこと。その後、コントロールを離れて機械獣と戦闘したと。

 

ハリソン「ふむ……櫻庭さんの話と合致する点も多いな」

 

マーガレット「サクラバ?」

 

ハリソン「ああ、そうだ。来てくれ」

 

 ハリソンが合図すると、医務室のドアが開かれる。やってきたのは、銀色に近い薄い色素の髪を持つ、眼鏡をかけた少女だった。

 髪こそ北欧系に見えるが、顔立ちはアジア系に見える。サクラバというのが日本系の姓であることから、日本人系のクォーターかもしれない。とマーガレットは推測する。

 

槇菜「よかった……目が覚めたんですね」

 

 そう言って、少女は胸を撫で下ろす。

 

ハリソン「彼女は櫻庭槇菜くん。意識を失っていた君に変わり、ゼノ・アストラを操縦した民間人だ」

 

マーガレット「…………民間人が、ゼノ・アストラの操縦を!?」

 

 それは、マーガレットにとっては衝撃の事実だった。訓練を受けたパイロットである自分の操縦できなかったものを、民間人の……まだ子供の少女が?

 

槇菜「はい、私……櫻庭槇菜と言います。あのロボットに乗った時、なぜか動かし方とか、頭の中に流れ込んできたんです。それで、何かしなきゃ……って」

 

 辿々しく、槇菜も顛末を語る。曰く、槇菜にはゼノ・アストラを通して情報が流れ込んできたという。たしかに、マーガレットが感じた違和感とそれは似ていた。

 しかしその話を聞いていると、暴走させてしまったマーガレットよりも、たどたどしくても自分の意思で機体を動かした槇菜の方が深く、ゼノ・アストラと繋がっているように思える。

 

槇菜「あの、私これから……どうなるんでしょうか?」

 

 槇菜の言葉は、不安げだった。

 

マーガレット「……あれは、軍の最高機密よ。こちらに落ち度があるとはいえ、知って、触れてしまったあなたを自由にするわけにはいかないわね」

 

槇菜「そんな……!」

 

ハリソン「落ち着いてください櫻庭さん。なんとかしますから!」

 

 愕然とする槇菜を、ハリソンが宥める。マーガレットとしても、何の罪もない民間人を拘束することそのものは気が引けるのだ。だが……

 

マーガレット「ゼノ・アストラには、何か陰謀めいたものを感じます」

 

槇菜「……陰謀って?」

 

マーガレット「本機は、新しいエネルギーの実用化のために開発されたテストヘッド。私はそう聞かされていました。ですが、起動実験中の不可解な暴走や、戦闘獣に示した反応……」

 

 意図的に、ヴリルエネルギーについてマーガレットは言葉を濁した。いつかは知られるかもしれないが、教える義務はない。今はそう判断したからだ。

 

ハリソン「たしかに、暴走はともかく戦闘獣への反応。これは何かキナ臭いものを感じるな……」

 

 当然、ハリソンもその濁しには気付かない。知らないものは、気付きようはない。ただ、「新しいエネルギー」と口にしたことは確かにノートへメモに書き記していた。

 

槇菜「……あの子、本当にアメリカ軍が作ったのかな?」

 

 槇菜の呟きの通り、ゼノ・アストラはネオアメリカ製と呼ぶには不可解な部分が多すぎるのだ。

 

マーガレット「……あの子?」

 

 しかしマーガレットにはそれ以上に、「あの子」という呼び方に注意が向く。

 

槇菜「あ、はい。あの子……ゼノ・アストラっていうロボット、私に語りかけてくれるんです。だから、もしかして……」

 

マーガレット「意志があるかもしれない、って?」

 

槇菜「はい…………」

 

 その感性を、マーガレットは若いなと思う。しかし、ゼノ・アストラは確かに識っているようだった。ミケーネについて。

 それをマーガレットや、槇菜に伝えようとしていたのではないだろうか。そう考えると、納得のいくものもある。

 

槇菜「それに……あの赤いロボット。ゲッターっていうのを見た時にもあの子、反応したんです」

 

ハリソン「何だって?」

 

 安倍晴明との戦いに現れた赤いロボット・ゲッターロボというらしいそれもまた、出自不明のマシン。そのマシンに反応をしたということは、ゲッターはゼノ・アストラと関係があるということだろうか。

 

槇菜「ガサラキ……あのロボットのこと、あの子はたしかにそう言ったんです」

 

ハリソン「ガサラキ、か……」

 

 意味不明な言葉の響きだった。少なくとも、ハリソンの知識の中にはない単語。

 

マーガレット「それで、私と櫻庭さんはこれからどうなるのでしょうか大尉」

 

ハリソン「そうだな君の所属艦隊に連絡を取って、引き渡すことにはなるだろうが問題は……」

 

 機密に触れてしまった、槇菜である。そのことで、槇菜は不安そうにマーガレットとハリソンの顔を見合わせる。

 

マーガレット「……私と大尉が口裏を合わせれば、櫻庭さんのことは報告しなくてもいいんじゃないかと思うのですが、どうでしょう?」

 

 そんな槇菜を眺めて、ふっと笑いながらマーガレットが言った。

 

槇菜「え……?」

 

ハリソン「なるほど、少尉。バレたら禁固刑だぞ?」

 

 そう言って立ち上がり、ウィンクして見せるハリソン。「その怪我だ。しばらくは安静にしていてくれ」と言い去っていく後姿。それをマーガレットは、共犯になることを受諾してくれたと受け取りフッと笑みを見せる。

 

マーガレット「バレたら禁固じゃ済まないのは、大尉もですよ?」

 

 そう言って、ハリソンの背中を見送るマーガレット。槇菜は、マーガレットの顔をぼんやりと見つめていた。

 

マーガレット「……どうしたの?」

 

槇菜「あっ、いえ……。その、軍人さんって少し、怖い人なのかなって思ってたんですけど。ハリソンさんも、マーガレットさんも優しい人で……」

 

 安心した。安堵と同時にマーガレットを改めて見ると、綺麗な人だと思った。ヘルメットをしている時にはまとめていたからか気付かなかったが、焦茶色とでもいうような、黒と亜麻色の間を光の反射で行き来する長く伸びた髪は、弓さやかがもう少し大人になったらこうなるのだろうか。とも思う。それに、赤い虹彩を宿したルビー色の瞳も槇菜には神秘的に見える。

 

マーガレット「……軍人だって人間よ。それに、大人は子供の分まで責任を持つものなの」

 

 呆れたように笑うマーガレットは、どことなく槇菜の大好きなお姉ちゃんに似ていると思った。

 

 

…………

…………

…………

 

 

—岩国基地/大広間— 

 

隼人「…………状況から察するに、俺達はこことは別の世界。つまりは隣接次元とか、並行世界とか言われる場所から来た。という説明になる」

 

甲児「……並行世界か。理論はわかるが、まさかそんなSFみたいなことが現実に起きるとはな」

 

 マーガレットとの話が終わり、ハリソンは司令代理に呼び出されていた。一方槇菜は甲児、さやかと共に鬼との戦いに突如現れた異邦人……ゲッターロボのパイロット達3人の話を聞いていた。

 

竜馬「お前、わかるのか?」

 

 その中のリーダー格と思われる男、流竜馬。彼は隼人と甲児が何の話をしているのかあまり理解できていないらしく、首を傾げている。それともう1人……武蔵坊弁慶という巨漢は、既に難しい話に眠りこけている。「いつものことだから気にすんな」とは竜馬の言。

 

甲児「全部を理解したわけじゃないですけど、この世界には以前にも異世界や外宇宙からの来訪者が来たことがありますから。並行世界っていうのも、ありえない話じゃないですよ」

 

 と、甲児。しかし、それでも理解できない部分はある。

 

甲児「でもその……黒平安京っていうのはよくわかんねえなぁ」

 

 隼人達の話をまとめると、こうだ。彼ら……ゲッターチームの世界は、鬼の侵略を受けていた。そしてゲッターロボに乗り鬼と戦っていた彼らは、鬼を追い本拠地へ飛び込むとそこは、平安時代。しかし木造飛行船が空を飛び、ピストルやバズーカ砲のような数時代先の技術が存在し、何より平安京を乱す鬼の棲家……黒平安京に住む安倍晴明と、平安を守る源頼光が戦争していた世界だという。

 

竜馬「ああ、京都ってのは寺がいっぱいある場所だもんな。それが木造飛行船で鬼と戦うサムライの世界でよぉ。俺は、頼光と協力して晴明の野郎を追い詰めたんだ」

 

槇菜「ライコウって……源頼光のことですか?」

 

 源頼光。甲児や槇菜達の世界の歴史でも、日本の平安時代に名前と伝説を残す人物である。四天王と共に世を乱す鬼と戦った武人。しかし槇菜の記憶にある通りならば、平安の世を守って来たのは安倍晴明も同様である。

 その源頼光と安倍晴明が戦う黒平安京。それは槇菜には、悪質な歴史のパロディのようにも聞こえた。

 

竜馬「ああ、頼光は頼光だぜ。女だてらに剣を使う、気持ちのいい武者だった。だが、晴明の野郎!」

 

 竜馬の目には、ギラつく闘志が見える。侠気と呼ぶべきものだろうか。と甲児は思った。

 

さやか「それで……街に現れた鬼は、安倍晴明の手下なんですか?」

 

槇菜「…………」

 

 鬼。戦闘獣と同じくして岩国を襲った異形の化け物。槇菜の日常を地獄へ変えた悪鬼。

 

隼人「ああ。俺の仲間も、鬼にやられたことがある。話を聞くに、間違いない」

 

弁慶「俺の和尚や、寺の仲間達もだ……」

 

 鬼。その名前が出てきたと同時に、弁慶も目を覚ます。

 

弁慶「鬼どもは人間に噛み付いて、噛まれた人間まで鬼にしちまう。まるでゾンビ映画みたいだったぜ」

 

竜馬「奴らを始末するなら、首を落とさなきゃならねえ。そういうのは、俺達に任せな。血生臭いのは慣れてるからよ」

 

槇菜「…………はい」

 

 あの時、鬼へ変質していった先生のことを思い出す。先生は、どうなったのだろうか。ゼノ・アストラが落下したときに鬼の殆どが下敷きになり、跡地では人間に良く似た、しかし人とは思えぬ死体がゴロゴロ転がっていたらしい。先生や、クラスメイトもその中にいるだろう。そのことを思うと、気持ち悪くなってしまう。

 

隼人「そして、俺達は安倍晴明を追ってこの世界に辿り着いた。見たところ俺たちのいた世界とは歴史も、文明の発達も大きく違うようだが……」

 

甲児「もしかしたら。あんた達の世界の安倍晴明と、俺達の世界のミケーネとやらの繋がりが関係あるのかもしれないな」

 

 ミケーネの戦闘獣。恐ろしい敵だった。マジンガーZだけでは、太刀打ちできなかっただろう。しかし、ミケーネは岩国、ニューヨーク、重慶といった地球の主要都市を攻撃した後には沈黙を守っている。

 壊滅した都市もあるが、岩国のように襲撃を退けた国、都市も数多い。武者修行に来ていたガンダムファイターや、国連直轄の機動部隊・獣戦機隊の活躍によるものと報されている。

 また、東京に現れた機械獣は特務自衛隊により撃破されたとの報告が入っている。

 

竜馬「ミケーネだか何だか知らねえが、晴明が関わっている以上放っておくわけにもいかねえか」

 

 そう言って、竜馬はギラついた瞳を滾らせる。

 

甲児「それじゃあ、一緒に戦ってくれるんですか?」

 

隼人「フッ……どうやら、そういうことになったらしいな」

 

竜馬「それに……ここはメシも悪くねえ。黒平安京とは大違いだぜ。一宿一飯の恩っていうしな」

 

 竜馬が右手を差し出し、甲児はそれに応えるようにその手を交わす。槇菜はそんな様子を眩しげに、しかし不安げに見つめていた。

 

槇菜(あの赤いロボット……ゲッターにも、ゼノ・アストラは反応してた……。あの子は、ゲッターのことを、ガサラキって呼んだけど、ガサラキってどういうことだろう……?)

 

 槇菜がそう思案していた時、基地のサイレンがけたたましく鳴り響く。それは、敵襲を意味する合図だった。

 

 

…………

…………

…………

 

 

—鬼哭石の石舞台ー—

 

 鬼哭石(きなし)の石舞台……。そこに、1人の若者が立っていた。豪和ユウシロウ。豪和一族の四男であり、この舞台に立つ資格を持つ只1人の人間。ユウシロウは、特務自衛隊に編入されTA(タクティカル・アーマー)と呼ばれる新兵器で機械獣を撃破したばかりだった。しかし、その疲れを取る間も無く兄達にここへ呼び出されたユウシロウは、鬼の面を被り、舞のための衣装に着替えている。

 石舞台の周囲には、数多くのカメラや車両。それに電子機器が並んでいた。

 

乃三郎「石舞台か……あの事故以来だな」

 

 豪和乃三郎(だいざぶろう)、壮年の豪和総帥が、石舞台を見つめていた。

 

一清「感傷ですかな……総代らしくもない」

 

 長男である一清が、そんな父の隣で呟く。乃三郎は、そんな一清の中に黒いものを感じていた。しかし、それを咎めることはできない。

 既に、乃三郎はそのような覇気を失っていた。

 

乃三郎「言うな一清。お前とて8年前のあの悲劇……思いださぬはずがあるまい」

 

一清「さあ、どうでしょう……。清継、ユウシロウの結果はどうだった?」

 

 コンピュータを眺めている弟……ロン毛の清継に一清は話を振る。呼ばれて清継は振り返り、兄にUSBを渡す。

 

清継「特務自衛隊でのシミュレーションの結果が出ましたよ。ユウシロウはよくやってくれている。TAの操縦に関しては、他の追随を寄せ付けませんよ」

 

一清「TAはユウシロウのために作られたような兵器だからな。当然だ。他の愚民とは血筋が違う」

 

 豪和一族……。平安の世において、頼光四天王の1人と語られている渡辺綱を起源に持つ渡辺党の血筋を引く豪族。それが日本を裏から操る巨大コングロマリット・豪和の正体だった。

 

清継「兄さんこそ、岩国に現れたという鬼のサンプルを買い取ったらしいですが……どうでした?」

 

一清「骨嵬(クガイ)を復元するためのサンプルになるかと思ってな。現在解析作業をやらせている」

 

 骨嵬。そう口にした時一清は蛇の様な笑みを見せていた。その笑みを清継は気味悪く思いつつも、彼にとっても興味のある話ではあった。

 

乃三郎「それで、スケジュールの方はどうなっている?」

 

清継「問題ありません。あとは、被験者だけです」

 

 清継の答えを聞くと乃三郎はひとつ頷き、視線を石舞台に映す。そこに立つ末の息子を、見つめていた。

 

乃三郎「あとはユウシロウ次第、ということか……」

 

 その視線には諦念と、後悔の色が混じっていた。

 

 

 

……………………

 

第2話「鬼哭石」

 

……………………

 

 

 

 石舞台で、ユウシロウは舞っていた。扇を振り、足を踏み出す。一連の所作には、一切の無駄がない。演目を、「ガサラの舞」と呼ばれている。

 

ユウシロウ「…………!」

 

 ガサラの舞は、ユウシロウの精神を興奮させる。高揚感が心地いい。荒ぶる心を鎮めるように、ユウシロウは舞に熱中する。

 

清継「ユウシロウの心拍数、急激に上昇!」

 

乃三郎「始まったか……」

 

一清「生体データの監視を続けろ。どんな兆候も見逃すな!」

 

 ガサラの舞。豪和の伝承に残る伝説の舞。それは演舞の形ではなく、演者の血の中に流れるもの。豪和の一族の中に伝えられながら、今やその血を持つものはユウシロウしか残っていない。

 

空知「8年か……」

 

 ユウシロウの舞を見守る僧官、空知。その視線の中には弟子とも言うべきユウシロウへの慈愛と、それを超える複雑な何かを讃えながらガサラの舞を見守っていた。

 

一清「空知検校。ユウシロウは、伝承の舞を舞うことができるのだろうな?」

 

空知「……ガサラの舞は、永き年月を過ぎ去ろうとも、血の記憶の中に刻まれるものです」

 

一清「だが今はその舞も、歴史の中に忘れ去られようとしている」

 

空知「…………」

 

 それこそ、世代を重ねる中で豪和という一族が堕落した証拠のように空知には思える。しかし、自分も決して彼らを責めることはできない。そう胸の中でひとりごち、ユウシロウを見守っていた。

 

ユウシロウ「……………………」

 

 舞を続けていくと、心が舞の中に没入していく。心が昂り、自分だけの世界になる。

 

ユウシロウ「…………?」

 

 ユウシロウの世界に、鬼がいた。

 正確には、般若の面を被った何者か。

 ガサラの舞。その高揚の中に現れた何者か。般若の面は、懐から刃を取り出してユウシロウへと迫る。

 ドクン、ユウシロウの心臓の鼓動が、跳ねた。

 

清継「心拍数、300を突破! 重力場歪み、発生しました!」

 

乃三郎「8年前と同じ、ということか……!」

 

一清「…………!」

 

 現実の世界では、父と兄が何かを騒いでいる。しかし、ユウシロウには聞こえない。ユウシロウの世界にあるのは、般若との対決。

 ユウシロウは舞う。扇を振るう。まるで短刀のように。すると、般若の面が割れる。面から出てきたのは、少女の顔だった。

 水色の髪をした、妹の美鈴と同じくらいの少女。どことなく、雰囲気も美鈴に似ている気がする。しかし、そんなことは今ユウシロウの頭には入らない。

 少女は、泣きながらユウシロウに訴えているのだ。

 

少女「——やめて」

 

ユウシロウ「…………」

 

 何を、やめろというのだろうか。

 

少女「——恐怖を、呼び戻さないで!」

 

ユウシロウ「…………恐怖?」

 

 何を、言っているのだろうか。恐怖とは、何を指しているのだろうか。

 

少女「呼び戻さないで……恐怖をっ!」

 

 その叫びとともに、ユウシロウの世界から少女の姿が霧散する。

 残されたのは、ユウシロウひとり。

 

清継「心拍数500を突破……。重力場に、特異点反応」

 

 ユウシロウの立つ世界に、何かが生まれようとしていた。呼びかけるものがある。その声を、ユウシロウは聞いている。

 ユウシロウの立つ石舞台が、緑色に輝きはじめていた。体温の上昇を感じる。しかし、倦怠感はない。むしろ気分が高揚し、体調がいい。

 まるで自分の身体であって自分の身体ではない。そんな感覚を、ユウシロウは感じていた。

 

一清「上手くいく! 今度こそ、無限の力が……!」

 

 一清の顔が、醜く歪んだ。乃三郎は、ただただユウシロウを見つめている。

 このまま舞を続ければ、何かが起こる。それを無意識にユウシロウは理解していた。しかし、

 

ユウシロウ「恐怖を、呼び戻さないで?」

 

 少女の言葉がユウシロウの中にこびりついて離れない。少女の顔が焼き付いている。それが、幽世の向こうから招く声から引き止めるように、現世にユウシロウを止まらせる。

 ぴた、とユウシロウは舞を止め、空を見た。

 

一清「どうした!?」

 

清継「被験者の心拍数、急速に低下していきます!」

 

乃三郎「ユウシロウに……ユウシロウに何かあったのか?」

 

 三者三様に、ユウシロウの行動に声をあげる。無論、それはユウシロウの耳には入っていない。ユウシロウは、自らが被る鬼面を外し、空にいる何かを真っ直ぐ見据える。

 

一清「何をしているユウシロウ。舞え! 舞うんだ!」

 

 普段冷徹な一清が怒声をあげる。しかし、その声は届かない。

 緑色の輝きは、ユウシロウの周りで……石舞台輝き続けている。ユウシロウは空を……月を見据えながら思っていた。この輝きは一体何なのか。ユウシロウとどういう関係があるのか。兄達は何を望んでいるのか。恐怖とは何なのか、と。そして最後に、少女の顔がフラッシュバックする。

 

ユウシロウ「還れ!」

 

 そうユウシロウが命じると、緑色の輝きは球へと変化する。それは鬼火のように幽、とゆらめきそして、空へと消えていった。

 

一清「…………」

 

清継「…………」

 

乃三郎「…………」

 

 ただ、月だけが煌々と輝いていた。石舞台を照らす月。月はこの行いを見て、何を思っているのだろうか。

 ぼんやりと、ユウシロウはそんなことを思っていた。しかし、そんな思案からユウシロウを現実に引き戻したのは……遠くで起きた爆発の音と、光。

 

ユウシロウ「!?」

 

一清「何が起こっている!?」

 

 ユウシロウをモニタリングしていた清継はすぐにカメラを回し、爆発の起こった位置を拡大する。

 

清継「データを照合。これは、岩国に訪れた鬼獣です!?」

 

 清継の報告と同時、巨大な鬼獣は肉眼で確認できるほどまで近くへ迫っていた。

 

安倍晴明「先程の光……。気になって来てみたがなかなか面白いことをしているなぁ人間が」

 

 そしてやはり、鬼獣の肩には陰陽師が乗っている。

 

一清「ユウシロウ」

 

 拡声器を用い、一清は弟に指示を出す。

 

一清「お前があれの相手をしろ」

 

清継「兄さん!?」

 

 清継から非難の声があがる。しかし、ユウシロウはコクリと頷くと、石舞台の裏へ周り、奥に待機していたトレーラーへ足を運ぶ。そこにあったのは、全長5mにも満たない小型の人型兵器だった。

 タクティカル・アーマー(TA)。豪和インスツルメンツが特務自衛隊と共同開発した新型機。正式名称は壱七式戦術甲冑・雷電。あらかじめ用意されていたパイロット用の特殊スーツに着替えたユウシロウは、壱七式雷電に乗り込むと、パイロットスーツ越しにアンプル薬剤を投与されていく。

 それは、TAと人間を親和させる儀式だった。

 

ユウシロウ「ッ!?」

 

 石舞台での舞と似たような高揚感を感じる。次第に、心を抑えようとする無意識から呼吸が荒くなっていく。しかし、今は能舞の場ではない。戦場へと赴くのだ。

 トレーラーから、ユウシロウの乗る壱七式が、夜の街を駆けていく。

 

安倍晴明「ム……。なんだあの小蝿は?」

 

 実際、20m以上の巨体を持つ鬼獣からすればTAは小蝿にも等しいだろう。鬼の持つ巨大なスパイク付きのボールから、トゲが射出される。もし命中すればTAの小さな身体などひとたまりもない。そして、その中にいるユウシロウもまた。

 

ユウシロウ「…………!」

 

 しかし、当たることはない。TAは、そういう機体なのだ。

 機体の運動性を上げて、敵の攻撃を回避する。そのための小型機。

 

安倍晴明「何と!?」

 

清継「マイル1……。しなやかな人工筋肉がTAの機動性を実現している。そして、複雑な操縦を必要せず、各部を制御するコンピューターを制御する脳に当たるコンピューターだけを思考制御するこの機体は、完成すれば歩兵の歴史を変える」 

 

一清「そして今、マイル1の性能を最大に発揮できるのはユウシロウだけだ」

 

 意味深に、一清が呟いた。

 

ユウシロウ「ターゲット、ロック……!」

 

 ユウシロウの、壱七式の右腕が上がる。携行していた低圧砲が放たれ、鬼獣の巨大な鉄球に命中した。

 

安倍晴明「小蝿ごとぎが、猪口才なァッ!」

 

 しかし、体積差は如何ともし難い。再び放たれたトゲを躱しながら、ユウシロウは無心で携行武器を撃ちながら敵の弱点を探す。

 

ユウシロウ「…………そこか」

 

 鬼獣から射出されるトゲを掻い潜り、見えた。鬼の弱点。鬼は、頭部への直撃に対してだけは庇うように右腕の巨大な刃で守っている。

 多くの生き物と同じように、弱点は頭部なのだろう。そう判断してユウシロウは、壱七式を加速させた。

 

安倍晴明「ほう!」

 

 失敗すれば、命はない。しかし、そんなことはまるで頭にないかのようにユウシロウは鬼へ近づいていく。脳を覚醒させるD液のアンプルが注入され、ユウシロウの呼吸がさらに荒くなる。

 『恐怖を、呼び戻さないで!』

 そんな、少女の声が脳に響く。

 

ユウシロウ「恐怖など、駆逐するもの……!」

 

 刃を掻い潜って、ユウシロウは鬼獣の懐に入り込む。そして、敵の頭部目掛けて低圧砲を撃ち込んだ。

 絶叫を上げる鬼獣。間違いなく、効いている。このまま押し込めば、倒せる。そう思った次の瞬間しかし、ユウシロウは右から放たれた光に阻まれていた。

 

ユウシロウ「新手か……!」

 

 咄嗟の判断でTAを後方に下げる。強烈な吐き気がユウシロウを襲い、緩和のために薬剤が注入される。その痛みに耐えながら、ユウシロウは光の放たれた方を見やった。

 空に、幽霊が浮いている。紫色の、悪霊。そうとしか思えないものが浮いている。それは醜く顔を歪めていた。

 

一清「あれは……戦闘獣というやつか」

 

 一清が呟き、ニヤリと口元を歪める。

 

清継「これ以上はユウシロウが危険です。兄さん、どうしますか?」

 

 撤退の判断。それを決めることができるのはユウシロウではなかった。もし一清が、或いは乃三郎がここで「死ね」と言うのならば、死ななければならない。それが、ユウシロウという存在。

 

一清「いや、問題ない。援軍が来たようだ」

 

 一清がそう言った直後。空飛ぶ黒鉄の城と、3機の飛行機が夜空を駆ける。3機の飛行機は、マジンガーと並走し、やがて追い越していく。赤、白、黄の順番に垂直に並んだ飛行機……ゲットマシンが、空中で一つになる。

 

竜馬「チェェェェンジ、ゲッタァァァァァァッワンッ!」

 

 その合図とともに、3つのマシンが一つになる。そして、命を燃やすように赤々としたロボット……ゲッター1へ合体していた。

 

 

…………

…………

…………

 

 

 

安倍晴明「来たかぁ、流竜馬ァッ!?」

 

 ドス黒い歓声を上げる晴明。鬼獣のトゲがミサイルのように飛び回り、竜馬を歓迎する。それを掻い潜りながら、ゲッターロボは鬼獣目掛けて飛んでいく。

 飛びながら、隼人は異常を感じていた。

 

隼人「ゲッターの出力が上がっている……?」

 

 何かが、ゲッター線。即ちゲッターロボの動力となるエネルギーを強くしているのだ。しかし、そんなことを気にすることもなく、竜馬は突っ込んでいく。ゲッタートマホークを構えて鬼の首目掛けて突っ込むゲッター。その勇壮は伝説に聞く坂田金時が如し。

 

ユウシロウ「これは……?」

 

 一方、ユウシロウの乗る壱七式も出力が上昇していた。

 

ユウシロウ「どういうことだ?」

 

 あの石舞台と同じ。それほどの高揚感が、ゲッターロボの登場によりユウシロウに齎されていたのだ。伝承の舞を踊る時のように、一切姿勢を乱さずに低圧砲を構え、放つ。すると、激しい弾速が風を切りそして、鬼獣の頭部を潰した。

 

安倍晴明「何と!?」

 

竜馬「余所見してんじゃねえ!」

 

 同時、眼前まで迫ったゲッターがトマホークを振り下ろす。寸での所で逃げた晴明だが、その眼光は忌々しげにゲッターと、ユウシロウを睨んでいた。

 

安倍晴明「おのれぇ、こうなれば!」

 

 晴明が右手で印のようなものを結ぶと、巨大な五芒星が空に浮かび上がる。その星から、巨大な鎖鎌と鉄球を持つ鬼獣が出現した。

 

隼人「あいつは……!」

 

 隼人は以前、黒平安京で同じタイプの鬼獣と戦ったことがあるのを覚えている。

 

ユウシロウ「新手か……!」

 

 ユウシロウは再び低圧砲を構え、その鬼獣に放つ。TAの出力、機動性。その全てが、ゲッターロボが出現すると同時に活性化しているのを感じていた。それが何を意味するのかユウシロウにはわからない。ただ、今はあの鬼と戦闘獣を撃滅しなければならない。しかし、鬼獣は鎖鎌を振り回し低圧砲の直撃を逸らす。

 

ユウシロウ「……ッ!」

 

 ユウシロウの舌打ちと同時、ゲッターの到着から少し遅れてマジンガーZも鬼哭石の地に降り立った。

 

甲児「てめえら、このマジンガーZが来たからにはもう終わりだぜ!」

 

 そう啖呵を切る甲児。しかし、マジンガーZは前回の戦いでのダメージが完全には回復していない。応急修理で間に合わせたような状態だが、どこまで戦えるか。と内心焦っていた。その焦りを悟ったかのように、鎮座していた戦闘獣が嗤う。

 

ダンテ「我が名は悪霊戦闘獣ダンテ。暗黒大将軍の名によりマジンガーZ、貴様にトドメを刺しに来た!」

 

 ダンテ。そう名乗る戦闘獣にマジンガーZは光子力ビームを放つ。しかし、ダンテはまるで幽霊のように実体を消し、透明になってビームを避けるのだった。

 

甲児「光子力ビームが効かねえ!」

 

ダンテ「バカめ!」

 

 ダンテの両腕に飾られたチャクラムが、念力によりマジンガー目掛けて飛んでいく。チャクラムの刃が、マジンガーを襲った。

 

甲児「うわぁっ!?」

 

 マジンガーの放熱板。その左側が破壊される。ブレストファイヤーを発射する、大事な部分だ。続けてダンテは、執拗に光線攻撃を繰り出してマジンガーを集中攻撃する。

 

竜馬「甲児!?」

 

ユウシロウ「…………!?」

 

安倍晴明「バカめがぁっ!?」

 

 甲児が押し込まれたその一瞬、晴明は再び印を結び、巨大な五芒星をゲッター目掛けて押し付けた。

 

弁慶「なっ、何だこれは!?」

 

竜馬「コントロールが、効かねえ!?」

 

 まるで磔にされたかのように、ゲッターのコントロールが重くなる。それが晴明の呪いだと気づいた時にはもう遅い。竜馬達は、晴明の術中に嵌っていたのだ。

 

安倍晴明「さあ、行け我が鬼よ! ゲッターに神の国への引導を渡してくれるのだぁっ!」

 

 鬼獣が手に持つ鉄球を振り回してゲッターへ叩き付ける。その衝撃が、竜馬達を襲った。

 

竜馬「クソッ!?」

 

 トマホークを落としてしまうゲッター。ゲッタービームで反撃しようにも、五芒星の呪縛が竜馬の身体を締め付けて離さない。

 

甲児「クソッ……! アイアンカッター!」

 

 マジンガーZは、必死の反撃を試みていた。しかし、ドリルミサイルも、アイアンカッターもダンテのチャクラムが破壊してしまう。ブレストファイヤーは放熱板の片方を破壊され、威力半減だ。

 

ダンテ「ハハハハハ! マジンガー、こんなものか!」

 

 ダンテのチャクラムリングが再び、マジンガーを襲った。

 

甲児「うわぁぁっ!?」

 

 その衝撃で、パイルダーの甲児を守る強化ガラスが割れてしまう。もし、中の甲児が攻撃を受ければ……。

 

 

…………

…………

…………

 

—輸送機—

 

 

ハリソン「マジンガーが……!?」

 

 岩国基地から出発した輸送機の中で、ハリソンは事態の推移を見守っていた。まだ、輸送機は戦場に遠い。

 

さやか「うそ……」

 

 ダイアナンAと共に輸送機で待機するさやかも、その光景に愕然としていた。

 

槇菜「…………」

 

 槇菜の目にも、その絶望的な光景が映っている。

 

ハリソン「ベース・ジャバーの用意を急げ! 私もF91で応援に向かう!」

 

 奥の整備兵に怒号を浴びせるハリソン。しかし、それでも間に合うかどうか。

 

槇菜(甲児さん達がピンチなのに、私は……)

 

 積み込まれたゼノ・アストラを一瞥する。物言わぬ機械の塊は、何も答えてくれない。

 しかし、槇菜は知っている。ゼノ・アストラが、戦闘獣や鬼獣と戦うための力を備えていることを。

 自分のような素人が行って、何ができるかという気持ちもある。それに、初陣で感じた怖さはまだ、槇菜の芯に残って心を震わせる。

 それでも。

 それでもマジンガーZがやられるのを見ているだけなのは、嫌だった。

 

槇菜「私……。私が行きます!」

 

ハリソン「しかし……!」

 

 しかしゼノ・アストラは米軍の所有物だ。日本人の民間人である槇菜に、簡単には預けられない。いや、1度預けてしまった以上何をどう言っても言い訳になるが、1度ならず2度まで、しかも自らの意思で乗ってしまえば、ハリソンでも庇いきれなくなる。

 

槇菜「見てるだけなんて、嫌なんです。それに……」

 

 グッ、と震えるのを堪えながら槇菜は言葉を続ける。

 

槇菜「ハリソン大尉だって、もしもの時に備えて私とゼノ・アストラを連れてくれたんでしょう?」

 

 そう言って、気丈にウィンクしてみせた。

 

ハリソン「……全く、強情なお嬢さんだ」

 

 そう言って頭を掻く。槇菜の指摘は、図星ではあるのだ。

 マジンガーZは、先の戦闘獣との戦いのダメージを完全には修復できていない。ゲッターロボの戦闘力は、未知数だった。そんな中で戦力になるものは、少しでも連れていきたい。そういう判断でもあった。

 しかし、それは本当に最悪の事態に備えてのこと。自分や甲児がいる以上、そのような状況にはなり得ないとも思っていた。

 だが、今この状況はまさに「最悪の事態」であると言っていい。

 

ハリソン「いいか、目的はあくまで甲児くんとゲッターチームの救助だ。くれぐれも無理をするなよ」

 

槇菜「はい……!」

 

さやか「槇菜!」

 

 頷いて、ゼノ・アストラのコクピットへ駆ける槇菜を、さやかが呼び止める。

 

槇菜「さやかさん……」

 

さやか「槇菜……。甲児くんをお願い」

 

 そう言って槇菜の手を握るさやかの手が、震えているのが伝わる。

 絶対に、甲児は助けなきゃならない。そう改めて感じた槇菜はさやかにひとつ頷くと、さやかは手を離す。そして槇菜は、再びゼノ・アストラのコクピットへ入っていく。

 狭いコクピットの中で、槇菜は強く念じる。

 

槇菜「お願い……力を貸して」

 

 ゼノ・アストラの中が、暖かくなるのを感じた。まるで槇菜の祈りに応えるかのように、ゼノ・アストラの炉に火が灯る。

 モニターに、いくつもの象形文字が表示された。槇菜は学習したことのないその文字を頭の中に叩き込む。そして、

 

槇菜「行きます……!」

 

 そう宣言すると同時、輸送機からゼノ・アストラが歩を進め、飛び降りる。そして黒い機神を中心にして重力場が展開されると次の瞬間、オーラの光に似た輝きを放ち、その場から消えていた。

 

ハリソン「…………あれが、ゼノ・アストラ。あれを我が軍が開発していたとは、俄には信じ難いな」

 

 空間跳躍。そんなものは現行の科学でもまだ先の概念だ。それを可能にしている新エネルギーとなるとそれは、光子力と同等の大発見になる。しかし、今更そんな新エネルギーを都合よく発見できるものなのか。ハリソンは医務室でのマーガレットの言葉を訝しんでいた。

 

ハリソン「私のF91も出す。ベース・ジャバーの用意はいいか?」

 

 整備兵に怒号を鳴らしたその時、輸送機の隣をものすごい速度で飛ぶものがあった。巻き起こる突風が、衝撃になって輸送機を襲う。

 

さやか「きゃぁっ!?」

 

ハリソン「何だ!?」

 

 輸送機の望遠レンズを拡大する。そこには、超速で空を駆ける、魔神の姿があった。

 

 

…………

…………

…………

 

 

ダンテ「終わりだ、マジンガーZ!」

 

 戦闘獣ダンテのチャクラムが、マジンガーの頭脳……即ちパイルダーの兜甲児を狙い放たれる。しかしその一撃は、甲児に届くことなく黒い、巨大な体躯に阻まれていた。

 

槇菜「っ…………!?」

 

甲児「お前……槇菜か?」

 

 ゼノ・アストラ。突如として時空を歪曲させ現れた漆黒の巨人が、その全身でダンテの攻撃からマジンガーを守ったのだ。

 

槇菜「甲児さん……よかった……!」

 

 ゼノ・アストラの左の指がワイヤーのように射出され、戦闘獣ダンテを掴む。しかし、機械獣のように引き裂くには至らない。

 

ダンテ「旧神の憑代か。貴様も今のうちに始末してやる!」

 

 ダンテがそう叫ぶと、浮遊するダンテの下半身から、竜巻が巻き起こりゼノ・アストラとマジンガーZ目掛けて迫り来る。

 

槇菜「ゼノ・アストラ! 何か、何かないの! 甲児さんを……みんなを守るための武器が!」

 

 槇菜が叫ぶ。そして願う。その願いに応えるように、ゼノ・アストラは右腕を大きく掲げた。そして、岩国でハルバードを召喚したのと同じように、武器を呼び出した。

 それは、20mの前身をすっぽりと覆うような楕円形の、巨大な盾。右手でその柄を握り、ゼノ・アストラはマジンガーZを守るように立ち塞がって、その盾を構えて竜巻を受け止める。

 シールドに触れた瞬間、竜巻は霧散していく。

 

ダンテ「何と!?」

 

槇菜「この盾……すごい。なら!」

 

 左指のワイヤーを、ダンテに食いつかせたまま収納させる。指が食い込んだダンテに、ゼノ・アストラの全重量をかけた突撃。そして、巨大なシールドで思い切りぶん殴る。

 

ダンテ「ぬぉっ!? この盾は!」

 

 巨大な質量の鈍器に殴られた衝撃だけでなかった。悪霊戦闘獣であるダンテを驚愕させたのは、その盾に神聖な脅威を感じたからだ。

 

槇菜「やっぱり……この子、ミケーネを知ってるんだ」

 

 ゼノ・アストラのコクピットの中で、槇菜は悟る。このマシンに意思があるかまではわからない。しかし、何か使命を帯びていることだけは間違いない。そして、それはミケーネや戦闘獣と関係している。それだけは確信できるのだ。ならば。

 

槇菜「この! この、この!?」

 

 神聖な加護を得ている盾で、殴りつける。何度も、何度も。その打撃は、加護は、間違いなくダンテに効いていた。しかし、

 

ダンテ「調子に乗るな、素人が!」

 

 戦闘獣ダンテからすれば、槇菜はまだ素人である。素人が乱暴に振り回しても、巨大な面積の盾は当たる。そういう意味では、槇菜にとっても都合の良い武器だった。それでも、経験の差は埋め難い。

 ダンテの目から放たれた光線が、ゼノ・アストラがシールドを持ち上げたその瞬間に飛び込んだのだ。

 

槇菜「きゃぁっ!?」

 

 その威力に大きく機体がよろめき、暗い光が槇菜の目を瞑らせる。しかし、戦場で目を瞑る一瞬とは即ち、隙。

 

ダンテ「貰った!」

 

 ダンテのチャクラムが、ゼノ・アストラ目掛けて飛んだ。

 

槇菜「!?」

 

 この距離では、盾で防げない。なのに怯んで機体を動かせなかった。その瞬間、怒号のような雷が落ちて、チャクラムを焼き尽くす。

 

ダンテ「何奴!?」

 

 戦闘獣ダンテが、ゼノ・アストラが、マジンガーZが、同じ場所を見た。そこには……

 

鉄也「教えてやる。偉大な勇者、グレートマジンガー! お前達ミケーネを地獄に叩き込むために舞い降りた、大空の使者だ!」

 

 マジンガーZとよく似た、しかし全体的に尖鋭的なデザインの魔神が月夜に立っていたのだ。

 

甲児「あれは……」

 

 甲児の知らないマジンガー。

 

槇菜「マジンガーZ以外にも、マジンガーがいただなんて……」

 

ユウシロウ「…………」

 

 その存在に注目が集まる中で、最初に動き出したのは戦闘獣ダンテだった。

 

ダンテ「おのれ……マジンガーZに飽き足らず、人間はもう一機のマジンガーを開発していたのか。ならば!」

 

 ダンテが叫ぶと、その姿が3つに分身する。

 

槇菜「ふ、増えた!?」」

 

 3つのダンテはそれぞれにマジンガーZ、ゼノ・アストラ、そしてグレートマジンガー目掛けて飛びかかった。

 

甲児「やべえ!』

 

 大破寸前で、もうほとんど武器の残されていないマジンガーZ。その前に、一振りの剣が飛び込んだ。

 

鉄也「マジンガーZ、これを使え!」

 

 グレートマジンガーから投げられたマジンガーブレード。それを受け取り、マジンガーZは、兜甲児が剣を構えダンテを見据える。

 

ダンテ「死ねえ、マジンガー!」

 

甲児「マジンガーは……マジンガーZは、決して負けねえ!」

 

 そして、一閃。魔神の剣が、悪霊を斬った。

 

ダンテ「み、見事……」

 

 砂のように消えていく戦闘獣。甲児はそれを背に、半分折れたスクランダーでゼノ・アストラの前へ飛び立った。ゼノ・アストラはやはり、巨大な盾で攻撃を防ぎながらも、ダンテへの決定打を持ち合わせていないようだった。

 

槇菜「っぅ……!?」

 

 ダンテの破壊光線を盾で弾く。しかし、苛烈な攻撃に攻めるタイミングがわからない槇菜。

 

甲児「恐るな、槇菜!」

 

槇菜「甲児さん……?」

 

甲児「怖いって気持ちはわかる、でも、目を閉じたらもっと怖いんだ。目を開いて、相手を見ろ! そうすれば、勝てる!」

 

槇菜「…………!?」

 

 甲児に言われた通り、目を見開く。 敵は、眼前に迫っていた。槇菜は、ゼノ・アストラはその顔面に思いっきり、シールドを叩き込む。

 

ダンテ「ぬぅ……!」

 

甲児「今だっ!」

 

 マジンガーZが、さらに加速する。シールドに押し飛ばされたダンテ目掛けて。

 

甲児「スクランダー・カッター!」

 

 その加速力のままジェットスクランダーの左翼で、ダンテの胴体を真っ二つに切り裂いた。

 

ダンテ「お、おのれぇ……!」

 

 2人目のダンテも、砂となり消える。残るは、グレートマジンガーと対決するダンテ。2体のダンテを倒しても健在ということは、あれが本命であろう。そして身動きの取れないゲッターロボを襲う鬼獣。

 

甲児「槇菜、お前はゲッターを助けろ!」

 

 マジンガーZは、グレートの援護のために飛んでいく。

 

槇菜「は、はい……!」

 

 ゼノ・アストラが、ゲッター目掛けて飛ぶ。その下には、ユウシロウのTA・壱七式雷電が待機していた。

 

 

…………

…………

…………

 

 

ユウシロウ「…………お前、頼みがある」

 

 壱七式の棺桶のようなコクピットでユウシロウが、槇菜のゼノ・アストラにサインを送る。敵の注意を引きつけろ、と。

 

槇菜「あんな小さいロボットもあるんだ……っ!」

 

 そのサインを受領しつつも、ゼノ・アストラは壱七式を視認すると、また意味不明の象形文字をモニタに映す。

 

槇菜「ガサラキ……骨嵬。一体、何を意味してるの?」

 

 それは、ゲッターを初めて確認した時と同じ情報を槇菜の脳に伝えていた。ゼノ・アストラは明らかにゲッターと、TAに警戒のサインを出している。しかし、ゼノ・アストラを宥めるように操縦桿を撫でるとゼノ・アストラは落ち着いたように軽快の反応を解いていく。

 

槇菜「じゃあ、行くよ。ゼノ・アストラ!」

 

 その叫びと共に加速し、ゼノ・アストラが鬼獣へ体当たりした。

 

安倍晴明「ほう、破邪の加護を受けた盾か……だがなぁっ!」

 

 鬼獣が、その標的をゼノ・アストラへ変えた。巨大な鉄球が、ゼノ・アストラの盾を襲う。その衝撃が伝わり、槇菜は舌を噛まないように必死に口をつぐんだ。

 鬼獣をどかしても、五芒星の呪縛を受けたゲッターの縛めの中にいる。しかし、鬼獣がゲッターから注意を逸らした。それが、隙となる。

 

安倍晴明「旧神など、所詮は偽りの神よ!」

 

 晴明が命じ、鬼獣がゼノ・アストラを襲う。その瞬間、晴明の眼前に弾丸が飛んだ。

 

ユウシロウ「…………!?」

 

 ユウシロウの心拍数が、血圧が、人間の限界を超えて鼓動する。その荒ぶる心のままに、壱七式が低圧砲を放った。その弾頭が、安倍晴明の眼前目掛けて飛び、炸裂する。

 

安倍晴明「何ィッ!?」

 

 晴明という怪人は、慢心していたわけではない。たとえモビルスーツのビームライフルであっても、弾き飛ばすほどの結界を常に貼っている。それでも、TAの低圧砲が結界を破り、晴明の身体を弾き飛ばしたのだ。

 しかし、晴明は不死身である。また形代の紙吹雪とともに再生していく。しかし、その一瞬に晴明の呪いが弱くなったのを、彼らは逃さなかった。

 

隼人「今だ竜馬!」

 

竜馬「おう! オープン・ゲット!」

 

 晴明が再生するその間に、呪縛を抜け出したゲッターが再び3つのマシンに分離する。そして、再び一つになると、今度は片腕にドリルを持つ、尖鋭的な白いマシンになっていた。

 

隼人「チェンジ! ゲッター2!」

 

 ゲッター2。ゲッターロボの中では陸上高速戦闘を担当する形態。ゲッターロボは、3つのメカが組み合わさることで3形態へ変形・合体するスーパーロボット!

 

隼人「ドリル・アタック!」

 

 鬼獣の後ろ姿に、ドリルを射出する。放たれたドリルが、鬼獣の背中を襲い、大きく抉った。

 

隼人「ヒッ、ヒヒッ!」

 

 ゲッター1が落としたトマホークをアームで掴み、ゲッター2が加速する。鬼獣が振り返り、ゲッターを睨んだ次の瞬間にはゲッター2は鬼獣の目の前に躍り出て、ゲッタートマホークで鬼獣の目を叩き潰す。

 大きな叫びをあげて、鬼獣は怯んだ。その次の瞬間、

 

隼人「耳だァァァァァァッ!?」

 

 再び合体したゲッタードリルで、鬼獣の耳を擦り潰す。そして最後に、トマホークで一閃。鬼獣は真っ二つになり、血と臓物を撒き散らして四散した。

 

槇菜「うっ…………」

 

 その獰猛な戦いぶりに、身じろぎする槇菜。

 

安倍晴明「ンンンンンおのれェェェ…………勝負は預けるぞ流竜馬ァッ!」

 

 怨嗟の言葉を吐き捨てて、晴明の身体は再び五芒星の中に消えていった。

 

 

…………

…………

…………

 

 同じ頃、グレートマジンガーは最後に残ったダンテを追い詰めていた。

 

鉄也「アトミック・パンチ!」

 

 その拳がダンテの腹を抉り、強靭なキックがダンテを襲う。

 

ダンテ「バカな……人間の作るマジンガーに、このような力が……!」

 

 最後の力を振り絞り、ダンテは竜巻を巻き起こす。しかし、その竜巻を斬り裂く一振りの閃光。

 

甲児「グレートマジンガー、加勢するぜ!」

 

 マジンガーブレードを構えたマジンガーZが、その竜巻に冷凍ビームを纏わせ振るい、竜巻を凍らせたのだ。

 

鉄也「さすがだな、マジンガーZ! よし、同時に行くぞ!」

 

 グレートマジンガーがもう一振りのマジンガーブレードを構え、先に動く。続いて、マジンガーZが。ダンテを取り囲むように左右に分かれたマジンガーとグレートを前に、ダンテは対応できない。

 

甲児、鉄也「ダブルマジンガー・ブレード!」

 

 同時に振り上げられたマジンガー・ブレード。ダンテは忽ち3つに分かれ、爆散した。

 

 そして、夜明けの空を背に並び立つ2体の魔神。

 

甲児「凄いね、君のロボット。一体、何者なんだい?」

 

 マジンガーブレードを返し、甲児が戦友に問う。

 

鉄也「グレートマジンガー。こいつはマジンガーZの兄弟さ」

 

 グレートマジンガーに乗る男は、気障ったくそう告げる。

 

甲児「兄弟?」

 

 甲児は、その答えに疑問を覚えた。マジンガーZを製造した祖父・兜十蔵は今はいない。マジンガーを遺し、逝ってしまったのだから。

 だとしたら、グレートマジンガーを作ったのは……。

 

鉄也「俺は剣鉄也だ。共に戦おうぜ、マジンガーZ」

 

 そう言って、右腕を差し出すグレートマジンガー。

 

甲児「ああ、俺は兜甲児。よろしく、鉄也!」

 

 疑問を胸に抱えながらも、マジンガーZは右腕をとり……2体の魔神は熱くその手を交わしていた。

 

 

…………

…………

…………

 

 

—鬼哭石の石舞台—

 

 

 

一清「清継、データは取ったか?」

 

 ユウシロウの回収を確認した後、戦闘の一部始終を見ていた一清は、弟に聞く。

 

清継「ああ。あの変形合体するロボットが現れた瞬間、ユウシロウのTAに機能相転移の兆候が見られた。これは、興味深い事象だ」

 

 昨日相転移。TAのマイル1が活性状態になることで、その性能が飛躍的に向上し、他の機体にもその現象を引き起こす現象。先日の機械獣の襲撃では、ユウシロウのTAがトリガーとなり、隊のTA全体にこの現象が見られていた。しかし、それがTAではなく豪和の預かり知らぬところでつくられたスーパーロボットから引き起こされたとなると、その事実は豪和一族の悲願にとって無視のできない事象だ。

 

一清「まさか、あのスーパーロボット……骨嵬(クガイ)と関係があるのか?」

 

 骨嵬。豪和一族がその腕を所有している、平安の鬼。TAのマイル1は、その鬼のDNAをベースに製造されている。つまり、TAとは鬼のクローンであると言えた。

 その鬼のクローンを人型機動兵器という器で形作り、人の頭脳を与えた兵器。それが、タクティカル・アーマー。

 だが、あの変形合体する赤いロボット……ゲッターロボはTAではない。骨嵬のDNAを持たないものが、機能相転移を起こせるはずがない。

 

清継「そこまではわからない。でも……あれが岩国基地から出撃したマシンなのは確認済みだよ」

 

乃三郎「米軍基地か……」

 

一清「…………」

 

 一清は、考えていた。どうにかしてあのロボットを手に入れられないか、と。

 

 

…………

…………

…………

 

—輸送機—

 

ハリソン「それでは、君は共にミケーネと戦うためにやってきた。という解釈でいいのかい?」

 

 マジンガーZとゼノ・アストラ、ゲッターロボ、そしてグレートマジンガーを回収した輸送機の機内で、甲児達は改めてグレートマジンガーのパイロット……剣鉄也と顔を合わせていた。

 

鉄也「ああ。俺は兼ねてからミケーネ帝国襲来を予見していた科学要塞研究所で、グレートマジンガーのパイロットとして訓練を積んでいた。そして、ついにその時が来たんだ」

 

槇菜(この人が、私や甲児さんを助けてくれたグレートマジンガーの……)

 

 鉄也は、堅そうな青年だった。甲児やエイサップよりも、竜馬や隼人に近い年齢に槇菜には見える。ふと、あの小型マシンのパイロットはどんな人なんだろうと槇菜は思った。敵を退けた後、あの小型マシン……TAは何も告げずに去ってしまったから、あの時一言会話したのみになってしまった。

 だが、また会うような気がする。そんな予感があるのもたしかだった。

 

甲児「それで、ミケーネ出現を予見してたっていうのはどういうことなんだ?」

 

 甲児にとっての疑問は、その点だった。ミケーネ帝国は、突如現れて世界中に攻撃をしてきた。しかし、それを予見していた人物というのは俄には信じ難い。

 

鉄也「君のお爺さん……兜十蔵博士だよ、甲児くん」

 

甲児「えっ!?」

 

 その回答は、甲児には衝撃的なものだった。

 兜十蔵。マジンガーZを甲児に託した天才科学者であり、かつてドクターヘルと研究仲間でもあったという彼が、ミケーネを予見していた?

 

鉄也「全ては、ミケーネ文明の古代遺産の中に眠っていた伝承に始まるんだ。かつて、エーゲ海を征服していたミケーネは、ムー大陸より出る光宿りしものに討ち滅ぼされ、闇の帝王は地下深く眠りについたという……」

 

槇菜「闇の帝王……」

 

 ゼノ・アストラも、同じ名前を言っていた。それを槇菜は覚えている。これは、偶然の一致ではない。槇菜は既に、確信していた。

 

鉄也「そして、闇の帝王を倒した光宿りしもの。その名前こそが、マジンガー。君のお爺さんは、伝承の巨人である光宿りしものからマジンガーという名前を頂いたんだ」

 

甲児「それを、君は科学要塞研究所で知ったというのかい?」

 

鉄也「ああ。案内しよう、科学要塞研究所は神奈川にある。輸送機をこのまま神奈川へ向かわせてはくれないか?」

 

 そう、ハリソンに聞く鉄也。ハリソンは少し逡巡した後、「明朝にしたい」と、そう答えた。

 

ハリソン「明朝、横浜の自衛隊駐屯地で落ち合いたい。櫻庭さんも、甲児くんも疲れている」

 

 実際甲児はかなりの怪我を負っており、実戦どころか喧嘩ひとつしたことのない槇菜に関しては、精神的にも限界だった。

 

鉄也「そうだな……その方がいいだろう。では甲児くん、明日また会おう」

 

 そう言って、鉄也はグレートマジンガーへ戻り、発進させた。

 

甲児「剣鉄也か……」

 

竜馬「あいつ、なかなかできるな」

 

 話を聞いているときはずっと黙っていた竜馬が、口を開く。

 

槇菜「どういうことですか?」

 

隼人「俺と竜馬は、ずっと後ろからあいつを見張ってたのさ。もしあいつが敵のスパイで、油断してるところを……ってハラなら後ろからでも倒せるようにな」

 

 とんでもないことを言ってのける隼人に槇菜は引き気味に笑い、弁慶は「そ、そうなのか!?」と驚く。

 

竜馬「だが……ずっとあいつは後ろからでも俺と隼人の動きに対応できるよう構えてやがった。とんでもねえ野郎だぜ」

 

弁慶「そ、それであいつはスパイなのか!?」

 

 弁慶が捲し立てる。

 

竜馬「いや、そういう真似ができるタイプじゃねえな。あれは戦うことしか脳がない、俺や隼人ど同類だ。敵だったら手強いが、味方なら心強いぜ」

 

 それは、口下手な竜馬なりの鉄也への歓迎のようだった。その言葉に、槇菜は胸を撫で下ろす。

 一方で、隼人は岩国へ向かう空をマジマジと睨んでいた。

 

隼人(ゲッターはあの時、なぜ出力が上がった? あの時いた誰かか、或いはあの場所にあった何かが、ゲッターを喜ばせていた……?)

 

 考えても答えの出ない問い。あまりにも情報が少なすぎる。しかし、隼人はニヤリと嗤っていた。

 もし、この世界にもゲッター線が関係する何かがあるのあらば。隼人の求める「答え」に近づけるかもしれないという確かな手応えがあったからだ。

 

隼人(この世界も、楽しませてくれそうじゃねえか……)

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