スーパーロボット大戦VB   作:元ゴリラ

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第21話「そして今宵、エウロペはゼウスの下より降る」

—宇宙空間—

 

 

 

クダル

「クソッ! クソッ!?」

 

 どうして、自分がこんな目に遭わなければならないのか。クダル・カデルはガンダム・グシオンのコクピットの中で運命を呪い続けていた。

 

クダル

「なんなのよあの猿は! もう嫌! 嫌になるったら嫌!?」

 

 自分は今まで、まじめに働いてきた。宇宙海賊の一員として、略奪強奪殺戮誘拐密売なんでもやってきた。なのに、どうしてこう理不尽な目に遭わなければならないのか。

 じきに、グシオンのエネルギーも尽きる。そうなれば、クダル・カデルは暗黒の世界で独り、死を待つ存在に成り果てるだろう。酸素が尽きた時が、クダルの最期だ。

 なぜ、こんなことになってしまったのか。あの猿どものせいか。カリストの口車に乗ったせいか。こんな世界に来てしまったからか。いや……。

 

クダル

「それもこれも、全ては鉄華団のガキどものせいよ!?」

 

 そうだ。あの鉄華団のガキ。人殺しを楽しんでやがるあのガキどもが、何もかも悪いんだ。今度会ったら絶対に殺してやる。殺して潰して捻って捌いて犯してそれからまた殺して、あの世でこのクダル・カデル様に詫びさせてやる。呪いの言葉を呟きながら、クダル・カデルは狭いコクピットの中で怨念を充満させていた。そして、クダル・カデルは悪運の強い男だった。

 

クダル

「ン……?」

 

 ガンダム・グシオンの眼前に現れたのは、異様な艦艇だった。赤い塗装を施された艦首部分を覆うように、黄色い装甲をまるで、マントのように纏っている。そして、何よりも異様なのはその、艦の先端だった。まるで古代エジプトのファラオのような化粧を施した冠の男。それを模した造形。それは、まるでファラオを讃えるために作られた艦だった。こんなものを、クダルは知らない。クダルの常識にはない。

 

クダル

「な、何よあれは……」

 

 ファラオ艦から、数機の小型ロボットが飛んでくる。蜂のような姿をしたマシン。モビルワーカーだろうかとクダルは一瞬思った。だが、違う。無人機。蜂メカからは、人間の息吹のようなものを感じない。蜂メカ達はグシオンを包囲する。本来なら、ガンダム・グシオンの敵ではない。だがエネルギー残量も残り僅か。何より、今のクダルにはこれに歯向かう心の余裕など、残されていなかった。

 蜂メカ達は捕獲用のネットを繰り出し、ガンダム・グシオンを捕らえる。

 そして…………。

 

 

…………

…………

…………

 

 

—アルカディア号/艦長室—

 

 

 

ハーロック

「……それで、マーガレット少尉はその子を引き取ると?」

 

 キャプテンハーロックがその報告を受けたのは、結城沙羅の口を通してだった。現在、アルカディア号は調査の為衛星Eに停泊している。最前線で戦うパイロット達にとって、この時間は束の間の休息でもあった。ハーロックはパイロット各員に自由時間を言い渡し、衛星の調査にトチローとラ・ミーメ。ブルック・カバヤンへの尋問をオルガに任せて状況の整理に努めている。

 問題のひとつであったサル達は一頭残らずシェリンドン・ロナに服従の姿勢を見せ、シェリンドンは鹵獲したブルワーズの海賊船にサル達を乗せ先に出発した。サル達はコスモ・クルス教団の管理施設で保護されることになり、そこで暮らすことになるだろう。シェリンドンのカリスマならば、サル達を任せることもできる。そう、トビア達も賛成していた。ハーロックも、そこに異論はない。

 もうひとつの問題が、ヒューマンデブリの少年少女達だ。輸送船の襲撃に使われた子供達はハーロックと同じ世界から転移してきたヒューマンデブリだ。行く当てもない彼らを引き取る責任が自分にはある、とハーロックは思っている。ヒューマンデブリに関しては、オルガ・イツカと話し合ってそう決めた。自分達で引き取るべきだと。だが、問題はこの衛星に残されていた……この世界の子供達だ。

 その多くが戦争や貧困をきっかけに身寄りを失った子供達。彼らに関しては、自分達の一存で決めることはできない。シェリンドンも、自分の教団傘下の慈善団体に掛け合うことを約束してくれたが、全てをそれにに押し付けるわけにもいかないだろう。そんな子供達が、2つの世界の子供を合計して15人近くいる。そのうちの1人……カンナ・ヘリオトロープと名乗ったという推定10代前半の少女をマーガレット・エクスは保護し、自分が後見人になると言ってきたのだ。

 

沙羅

「ああ。後でちゃんと話すって言ってたけど、一応ね」

 

 沙羅も呆れたように肩を竦める。しかし、そこにマイナスの感情がないことは、ハーロックにも見てとれた。無論、ハーロックとしても認められない理由があるわけではない。

 

ハーロック

「沙羅。俺はこの世界の面々とは、まだあまり話していない。だから、マーガレット少尉のこともよくは知らない。よければ、マーガレットのことを教えてくれないだろうか?」

 

 それでも、マーガレットがそんなことを言い出した理由は頭に留めておくべきだろう。そう判断し、ハーロックは沙羅に聞いた。沙羅は少し目を細めると、静かに口を開く。

 

沙羅

「あいつはさ……。なんだか昔の私を見てるみたいで、危なっかしいんだ」

ハーロック

「……と、言うと?」

 

 沙羅は、また少しの間口を噤む。慎重に、言葉を選んでいる。ハーロックはその口が開かれるのを、静かに待っていた。やがて沙羅は言葉を続けていく。

 

沙羅

「あいつは、昔の恋人を戦場で失った。そして……その恋人の死体を、敵に利用されてるんだ。だから、マーガレットは差し違えてでも恋人をもう一度……自分の手で殺すつもりでいる」

ハーロック

「…………」

 

 沙羅は、そんなマーガレットに自分を重ねて見ている。そして沙羅は、自らの手でかつての恋人に引導を渡した。そんな沙羅だからわかる。

 

沙羅

「マーガレットは……あいつは、苦しいんだと思う。だから、何かに縋りたいんだ。だけどあいつ、捻くれてるからそれを正義のためとか、平和のためとか。そういう風に言えないんだよ。だから、あいつなりに縋れるものがほしいんだと思う」

ハーロック

「なるほどな……」

 

 縋る。それは過酷な戦場を生き抜く人間が、多かれ少なかれしていることだ。生き死にの世界に身を置くのに、理由を必要としない人間は多くない。「戦いたいから戦い、潰したいから潰す」と言い切れる人間もハーロックは知っていたが、あれは例外だ。

 

ハーロック

(縋れるものか。もし、俺がトチローと出会わなければ……)

 

 イルミダスに敗北し、占領下となった地球のどこかで野垂れ死にしていただろう。だがトチローと、女海賊エメラルダスと出会いハーロックの運命は変わった。

 思えば、あの時からハーロックはこのアルカディア号に……トチローとの友誼と、自由の旗に縋るようにして生きてきたのかもしれないと自嘲的に笑う。そしてそれは、苦楽を共にしたもう1人の友……オルガ・イツカにしてもそうだった。彼もまた、鉄華団という存在に縋り、そして縋られる自分で在ろうと生きてきた。それは過酷な環境下で生き抜き、勝ち抜くためにオルガにできた唯一の生き方だったと言っていい。その果てに鉄華団は、オルガと三日月はあの世界に居られなくなったが少なくとも、その時まで鉄華団に集った若者達の明日を繋ぐ礎であり続けたのだと、ハーロックはオルガの戦いを誰よりも高く評価していた。

 マーガレットに縋るものが必要なのだと言うのならば、それを咎める筋合いはハーロックにはない。いや、それを咎めることができるのは唯一、縋られることになるカンナという少女だけだろう。しかし身寄りのないカンナもまた、マーガレットに懐いているらしい。つまり、これはマーガレットとカンナの2人の感情の問題でしかない。そう、ハーロックは結論づける。

 

ハーロック

「マーガレット少尉のことは、俺も許可しよう。だが、ひとつだけ条件をつけなければならんな」

沙羅

「条件?」

 

 沙羅が聞き返す。ハーロックは頷くと、静かに言葉を続けた。

 

ハーロック

「その子と家族になるというのならば、彼女の人生に責任を持て。そして、よく話をしろ。それだけが、俺からの条件だ」

 

 そう言って、ハーロックはブランデーを呷る。アルコールの焼けるような感覚が、口の中に広がっていく。それは、船員にできた新たな家族への祝杯だった。

 

沙羅

「ああ、それなら大丈夫じゃないかね。あいつら今頃……」

 

 

…………

…………

…………

 

 

—アルカディア号/シャワールーム—

 

 

 

 熱いお湯が滝のように、素肌に降り注ぐのをカンナは感じていた。気持ちいい。シャワーなんてどのくらいぶりだろう。思い出そうとしても、わからない。少なくともブルワーズに買われてからは、こんな風に身体にこびりついたものを洗い落とす機会などなかった。それ以前の場所でも、まるで鉄の塊を洗う時のように、ホースで無理矢理水を叩きつけられた記憶しかない。だからカンナは今、痣と傷だらけの裸身を晒してされるがままになっていた。

 

マーガレット

「お湯、熱くない?」

カンナ

「……大丈夫」

 

 すぐ後ろには姉が……マーガレットがいて、ガビガビになった髪をシャンプーで洗い流してくれている。指の感触が、心地いい。優しく、痛くしないように、そんな手つきでマーガレットは、カンナの髪を洗う。

 

マーガレット

「……うん、こんなものかしら。目、閉じててね」

 

 乱れ、汗で固まっていた髪が、シャワーの熱に溶かされ解けていく。水分を吸収し重くなった髪をシャンプーが解きほぐし、カンナの髪が滑らかになっていくのをマーガレットは確認する。それから優しく、シャワーの湯でシャンプーを洗い流すとマーガレットは蛇口を捻り湯を堰き止めた。

 

マーガレット

「身体は、自分で洗える?」

 

 マーガレットの目にも見える、痛々しい痣と傷。カンナがこれまで受けてきた虐待を象徴するようなそれから目を逸らさずに、しかしカンナの意志を尊重するように訊く。古いものから新しいものまで、多種多様な痣の残るその素肌は、マーガレットが触れば力加減を間違えてしまうかもしれない。そうすれば、痛いのは火を見るより明らかだ。

 

カンナ

「うん……。ありがとう」

 

 そう答え、カンナは自分の手でボディタオルを取る。それからボディソープを数滴垂らすと、シャワーで濡れた素肌にそれを当て擦っていく。

 

マーガレット

「……じゃあ、私はタオル用意しておくから」

カンナ

「ん」

 

 小さく頷いたのを聞き、マーガレットはシャワールームを後にしようと立ち上がった。その時、

 

カンナ

「マーガレット」

 

 妹に、呼び止められる。

 

マーガレット

「何、どうかしたの?」

 

 振り返るとカンナは、柔かな笑みを浮かべてマーガレットを見上げている。思わずドキリとしてしまうほどに、可愛らしい。そう、マーガレットは思う。

 

カンナ

「今度は……私がシャンプー、してあげるね。お姉ちゃん」

マーガレット

「ッ…………!?」

 

 そう言って悪戯っぽく笑うカンナ。それに対してマーガレットは、「ええ、そうね」と早口で言い切り慌ててシャワールームを後にするのだった。

 

 

 

マーガレット

「…………まったく」

 

 そんなことがあって、現在。マーガレットはシャワールーム脇のベンチに腰掛け、カンナが出てくるのを待っている。膝の上には、バスタオル。そんなマーガレットに、不思議そうに声をかける者がいた。

 

三日月

「……何してんの?」

 

 三日月・オーガス。そして、彼の乗る車椅子を押しているアトラ・ミクスタ。アトラはマーガレットの前で車椅子の足を止めると、奥のシャワールームから音がするのを聞いた。

 

アトラ

「三日月、いつもはバルバトスと繋がってるんですけど、整備の邪魔だからってウモンさんとルー博士に追い出されちゃって。あ、もしかして今さっきの子が……」

マーガレット

「そう、カンナっていうの。私が引き取った子。今、シャワー浴びてる」

三日月

「ふーん……」

 

 特に興味もなさげに、三日月は上着のポケットを弄る。しかし、火星ヤシが切れていることを思い出して「あ、」と間抜けな声を上げた。マーガレットはそれに苦笑すると、自分のポーチを弄りはじめる。その中からチョコレート・バーの包みを取り出すと、カンナにしたのと同じように三日月にも差し出すのだった。

 

マーガレット

「三日月には、助けられたわ。これはそのお礼」

三日月

「……あんたも、チョコをいつも持ち歩いてるの?」

 

 怪訝そうな目で、マーガレットを眺める三日月。

 

マーガレット

「も?」

三日月

「うん。前にもね、お詫びにってチョコをくれたやつがいる」

マーガレット

「へえ……」

 

 マーガレットがチョコレート・バーを携帯するのは、非常食糧としての意味合いが強い。すぐに食べることができて、腹持ちのいいチョコレート・バーはマーガレットにとって欠かせないものだ。何より、軍用のレーションよりも甘くて、おいしい。

 三日月はチョコレート・バーを受け取ると、左の前歯で強引に包み紙を噛みちぎる。

 

アトラ

「あっ、もう三日月行儀悪いよ!」

三日月

「いいひゃん、ほうへひぎへふはへないひ」

 

 いいじゃん。どうせ右手使えないし。そうチョコバーを頬張りながら言っていることだけは、マーガレットにも理解できた。

 

マーガレット

「三日月とアトラって、仲いいよね」

アトラ

「えっ、そ……そうですかっ!?」

 

 マーガレットが率直な感想を口にすると、アトラは顔を真っ赤にしてマーガレットを見やる。三日月は齧ったチョコレート・バーを飲み込むと、「そうだけど、何?」と不思議そうに聞いた。

 

アトラ

「えっ……み、三日月!?」

 

 さらに慌てるアトラ。

 

三日月

「仲良いのは、いいことだろ。どうしたの?」

 

 アトラが何を慌てているのか、三日月にはまるで理解できていない。それが2人が……少なくともアトラにとって三日月がどういう存在なのかを、雄弁に物語っていた。

 

マーガレット

「ふふ、ごめんなさい。ただ……2人はいつも一緒にいるから」

 

 実際、三日月は要介護者だ。アトラが身の回りの世話のほとんどをしているが、そのアトラは嫌な顔ひとつせずにやっている。マーガレットもカンナを引き取った以上、面倒を見てあげる機会は増えるだろう。マーガレットがこれから見習わなければならないたくさんのものを、アトラは持っているように見えた。

 

三日月

「そうかな?」

 

 チョコレート・バーをもぐもぐしながら、三日月。

 

アトラ

「だって……三日月と一緒にだと、楽しいですから」

 

 アトラは少し照れくさそうに、はにかんでいた。

 

マーガレット

「……そろそろ、カンナもシャワー終わる頃かしら」

 

 タオルを届けてあげないと。と、マーガレットが立ち上がる。

 

三日月

「ねえ、マーガレット。そのカンナって子……」

マーガレット

「ん?」

 

 車椅子の三日月を、見下ろす形でマーガレットが振り返った。三日月は、光の宿らない右目と、射抜くような左目でマーガレットを見つめている。

 

三日月

「家族になるなら、たくさん話しなよ」

 

 三日月の視線は鋭かった。しかし、決してマーガレットを非難する類のものではない。むしろ、そこには三日月なりの、優しさが感じられる。

 

マーガレット

「話……?」

三日月

「うん。前にも言ったっけ……。俺達鉄華団は、オルガの下に集まったひとつの家族だった。その中にさ、昭弘ってガチムチな奴がいたんだ。そいつもヒューマンデブリの出自で、保護したヒューマンデブリの子たちに、自分の苗字をあげてたんだ」

 

 昭弘・アルトランド。三日月と並ぶ鉄華団のエースであり、寡黙でストイックな性格の裏には誰よりも熱い血の流れていた男。昭弘は、戦場で実の弟を失った。そして、弟と仲良くしてくれていたヒューマンデブリ達に、アルトランドの姓を与えた。

 アルトランド。それは宇宙のゴミとして蔑まれてきた子供達に与えられた、誇るべき兄弟の証となっていた。

 

三日月

「でもさ、そうして苗字を上げた奴が死んでいく度に、昭弘は辛そうに溢してた。“もっと、話をしておくべきだった”って」

マーガレット

「…………」

 

 死んでしまえば、話などできない。だから生きているうちに、もっと話をするべきだった。昭弘という男の後悔を、マーガレットは三日月の言葉から感じ取る。それは、同じ経験をマーガレットも繰り返しているからだった。

 

マーガレット

(紫蘭……)

 

 恋人との最後の会話は、大した話もできなかった。紫蘭の戦死を聞かされた時、もっと話したかった。そんな思いが溢れて……パニックになったのを憶えている。

 

マーガレット

「ありがとう、三日月」

 

 だからマーガレットは、三日月の言葉を素直に聞き入れていた。そして、シャワールームの音が鳴り止み、扉を開ける音がしたのを聞くと再び歩き出す。

 

マーガレット

「ちゃんとたくさん、話をするつもりよ」

 

 たとえ、もし次の戦いでマーガレットが死ぬことになっても。カンナには、自分のことを憶えていてほしいから。

 それがきっと、姉妹というものなのだから。そう、マーガレットは自分に言い聞かせるように小さく呟き、頷く。三日月はそんなマーガレットとの話をもう忘れたかのように、「あ、」と間の抜けた声を上げた。

 

三日月

「早くしてね。次は俺が使うから」

マーガレット

「え? ええ……。え?」

 

 シャワールームの前まで来ているのだから、それは考えてみれば当然のことだ。だが三日月・オーガスは半身不随である。自力でシャワーなど浴びれるわけもない。

 だが、シャワーを浴びる権利は誰にでもある。それは三日月だって平等だ。

 そして、そんな三日月の車椅子を押すアトラの外ハネが、ピョコンと揺れる。

 

マーガレット

「え……、あ……ああ、そうね。急ぐわ」

 

 これ以上考えるのはよそう。そう思い、顔を真っ赤にしてマーガレットは逃げるようにシャワールームへと入っていった。

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

—月面/ムゲ・ゾルバドス基地跡地—

 

 

 月。地球に夜に輝くこの星は、宇宙世紀時代からずっと、地球とスペース・コロニーを支える貿易の星として繁盛していた。アナハイム・エレクトロニクス社を筆頭に多くの企業が月に本社を持ち、経済を支えている。未来世紀に年号を改め、社会体制が大きく変化した現在も国家コロニー間の貿易の中心としてこの月は、今なお数多くの人々が行き交っていた。

 しかし、そんな月には一部だけ、ひっそりと静まり返った箇所がある。不可侵宙域……。そう、遠い昔に決められた場所。かつて旧世紀に、人類がはじめて月の大地を踏んだ記念すべき土地として、そこは聖域と呼ばれていた。聖域。誰も侵すべからずとされる領域。そこにアポロ11号以後はじめて土足で足を踏み込んだのが、ムゲ・ゾルバトス帝国だった。帝国は秘密裏に、地球侵略の本拠地を建造。この月面から強かに地球を狙いそして……ダンクーガに敗れた。

 今、このゾルバドス帝国跡地は完全な廃墟と化している。ムゲ戦争、木星帝国の巨兵、デビルガンダム、ガンダムファイト……それだけに留まらず、日夜起きるあらゆる問題への対処を優先するあまり、戦後処理が疎かになっているというのが、この世界の現実だった。そして、木星軍の残党はこの廃墟を隠れ蓑にしている。カマーロ・ケトルは新総統直々の指令により、地球からこの月へと戻ってきたばかりだった。

 

カマーロ

「これは……」

 

 カマーロを出迎えたのは、巨大なマスドライバー。即ち、ここから地球やコロニーにまで物を投げ飛ばすことのできる巨大なカタパルト機構。こんなものは、カマーロがここにいた時にはなかった。つまり、帝国が密にこの設備を用意したということになる。

 

影のカリスト

「遅かったな、カマーロ・ケトル」

カマーロ

「申し訳ありません」

 

 地球から月へ戻るのに、どれだけの金が必要になると思っているのか。そう内心カマーロは、新総統たる影のカリストを罵った。実際、宇宙行きの切符を買うために彼は、残されたバタラを何機か売り払うハメになったのだから。

 

影のカリスト

「ああ、気にするな。お前はこれより、このダインスレイヴキャノンの防衛任務に当たってもらう」

カマーロ

「ダインスレイヴキャノン……?」

影のカリスト

「ああ。こいつを打ち出すための装置さ」

 

 カリストが脇目に見やるものを、カマーロも目で追う。そこには、全長200mほどの巨大な杭のようなものが見えた。

 

カマーロ

「これを? まさか?」

影のカリスト

「そう。地球に……さしずめガンダムファイト優勝国の日本にでも向けて撃つとするか。今の国連で一番強い発言力を持つ国の国土にこんなものが落ちれば、ネオジャパンはその対応に追われなきゃいけなくなる。そして……本当はガンダムファイトなんてプロレスごっこをせず、戦争で権力を勝ち取りたいと思ってる各国家コロニーの連中はこれみよがしに日本を、ネオジャパンを喰おうとする……フフ、素晴らしいと思わないか。一撃、たった一撃で地球国家は滅びの道を辿ることになる」

 

 かつて、木星帝国総統クラックス・ドゥガチは地球環境を完全に破壊すべくいくつもの核弾頭を搭載したモビルアーマーを地球へ向けて放ったことがある。しかもそれらはDG細胞に感染し、あの恐るべきデビルドゥガチを生み出した。それに比べれば、一時的な被害は微々たるものだろう。しかし、この作戦が成功した場合の地球圏の経済的な損失は計り知れないものになる。それは、カマーロにも理解できた。

 

カマーロ

(フ、フフ……影のカリスト。流石はドゥガチ総統の後継者というだけはあるわね)

 

 現在、木星は混乱の只中にある。帝国総統クラックス・ドゥガチ崩御の後、ガリレオ・コネクションが急速にその勢力を増した。帝国は今、カリスト派とコネクション派。そして和平派の三派閥に分かれている。そんな中にあって、地球へ向けて攻撃作戦を立てていたとは……。カマーロは舌を巻いた。

 

影のカリスト

「おいおい、この作戦は別に地球だけに被害を与える作戦じゃねえぜ」

 

 そんなカマーロの考えを見透かしたかのように、カリストは呟く。

 

影のカリスト

「この作戦には、大事なスポンサー様がいるのさ。同じ敵を持つ、な」

 

 カリストがそう言うと同時、巨大な宇宙艦艇が一隻、この不可侵宙域へと着陸する。巨大なキングコブラの冠を持つ、奇妙な艦。その中から、1人の男が降りてくる。宇宙用のヘルメットをしていて顔は判別できないが、成人男性用のものであることはわかった。故に、カマーロは男と判断した。男は、数人の側近を従えこのゾルバドス基地の跡地……木星帝国の修復作業により宇宙線遮断と、人工酸素供給機能を復元させた状態のそこに足を運び、カマーロとカリストの前でヘルメットを脱いだ。

 

カーメン・カーメン

「ホッホッホッ。首尾は上々のようだな」

カマーロ

「こ、この男は……!?」

 

 カマーロ・ケトルも知っている。いや、裏社会に耳を持つものならば誰もが聞いたことくらいはあるだろう。カーメン・カーメン。地球のアフリカ地区を生業とする巨大なマフィア組織ヌビア・コネクションの若き総帥。先日、新総帥として就任するや否やそのカリスマを見せつけヌビアを地球最強の犯罪組織へと乗り上げた謎多き男。そのカーメン・カーメンが、木星帝国のスポンサー?

 

影のカリスト

「カーメン・カーメン。お前とヌビアのお陰でこのダインスレイヴキャノンの準備は整った。後は、実行に移すのみさ」

カーメン・カーメン

「ホホホ。全ては大アトゥーム計画のため……。約束通り、木星のゴミどもを掃除する手伝いは、させてもらおう」

 

 大アトゥーム計画。カマーロも聞きなれない言葉だったが、あえて聞かなかったことにした。そして彼はカリストへ敬礼すると、そそくさとその場を後にする。

 影のカリストと、カーメン・カーメン。2人の間にどのような密約が交わされたのかはわからない。だが、知らぬが仏という言葉もある。

 

カマーロ

(薮から出てきたコブラに噛み殺されるなんて、アタシはゴメンよ!)

 

 カリストとカーメン・カーメンが何を企んでいようと、カマーロには関係ないことなのだから。内心でそう吐き捨て、逃げるように司令部へと急いだ。

 

 

…………

…………

…………

 

 

—衛星E/アルカディア号—

 

 

オルガ

「何だと、そいつは本当か!?」

 

 尋問のために、ブルック・カバヤンへ宛てがった独房。そこでオルガ・イツカは怒声を上げた。そのあまりの大声は独房を越えて船内に響き、数名の乗組員がオルガの下へ集まっていく。藤原忍も、その中にいた。

 

ブルック

「ああ。本当だ。俺たちはゾーンの奴に雇われて、木星軍と協力してたんだ。そこで木星軍の連中と一緒に、月面から巨大なダインスレイヴを地球へ撃ち落とす計画に参加する手筈だった」

 

オルガ

「…………!?」

「ダインスレイヴ?」

「北欧神話に登場する魔剣の名だな。一度抜けば最後、誰かを切り殺すまで鞘に収めることのできないダーインの遺産……。恐らく、兵器か何かのコードネームなんだろう」

 

 亮が解説する。阿頼耶識の件といい、やけに詳しいなと忍は思ったが、特に口にはしなかった。重要なのは名前の由来より、それが何をするためのものかだ。

 

オルガ

「ダインスレイヴは、俺達の世界では使用が禁止されている兵器のひとつだ。超硬度の弾頭をレールガンで撃ち出す質量兵器。モビルスーツどころか、戦艦のナノラミネートだって貫いちまうほどの威力を持ってやがる」

 

 鉄華団のメンバーの中には、直接的、間接的問わずこのダインスレイヴで命を失ったものもいる。そういう意味でもオルガ達にとって、ダインスレイヴは呪わしい言葉だった。

 

雅人

「それの、どデカいサイズを作ったってことかよ。そんなものまともに受けたら、ダンクーガだってお陀仏だぞ!?」

オルガ

「テメェ……それがどう言う代物かわかってんのか?」

 

 オルガが凄み、ブルックは怯む。しかもそれを地球へ向けて発射などしたら。

 

シャア

「……着弾した周囲一帯への被害は尋常ではないものになるな。コロニー落としと同じ過ちを、人はこうも繰り返すか」

 

 シャアもまた、俗物を睨みつける。ブルックの瞳の中に映るシャア・アズナブルの姿に気付き、シャアはさらにその視線に殺意を込めた。

 

「仮にその弾頭が崩壊せずに地球へ着弾したなら、都市一つを消滅させるのに十分な破壊力を有するはずだ。だが、より問題なのはその衝撃で発生する熱波と、クレーターが発生する際に生まれる無数の灰だ。何千、何万という人間が死ぬことになる」

「ッ!? この外道! そこまでして何が目的だってんだ!」

 

 完全に頭に血が上り、忍はブルックの胸倉を掴んだ。ブルックはその獰猛な野犬のような瞳に睨まれ、身を竦ませる。

 

「答えやがれ!」

ブルック

「か……金以外に何があるってんだ!?」

「このッ……!?」

 

 話にならない。こんな下衆相手にするだけ無駄だ。そう判断し、忍はブルックをそのまま叩きつけた。

 

「こうしちゃいられねえ。俺達も月へ急ぐぜ!」

オルガ

「ああ、キャプテン。それでいいか?」

 

 アルカディア号の端末を操作し、オルガは艦長室へ繋いだ。数秒後、モニタにハーロックの顔が映し出される。彼はオルガに渡していた通信機で予め、オルガの尋問を聞いていたのだ。

 

ハーロック

「ああ。トチローとラ・ミーメも、衛星の中で作戦資料と思われるものを発見した。どうやら、その男の話は本当らしい」

 

 そう言って頷くと、ハーロックはアルカディア号の全域放送をオンにする。そして義憤と信念に満ちた声で、高らかに叫ぶのだった。

 

ハーロック

「アルカディア号、発進! 目的地は月面。木星軍のダインスレイヴキャノンを叩き、奴らの作戦を阻止せよ!」

 

 

 

 

……………………

第21話

「そして今宵、エウロペはゼウスの下より降る」

……………………

 

 

 

—月面/ムゲ・ゾルバドス帝国基地跡地—

 

 

 

エウロペ

「カリスト!」

 

 一人の女性が、影のカリストに食ってかかっていた。木星帝国で、影のカリストにこのような口の利き方ができる人間は今二人しかいない。一人は光のカリスト。影のカリストの半身にして、半神。そしてもう一人……カリストの姉でもあるエウロペ・ドゥガチは眉間に皺を寄せ、物凄い剣幕で弟を睨む。

 

影のカリスト

「姉上……。新総統であるこの私に意見するつもりですか?」

エウロペ

「当然です。こんなことをしても、意味がない!」

 

 エウロペはその美しい、銀色の髪を振り乱しながら叫ぶ。それは、懇願にも似た色を帯びた叫びだった。

 

エウロペ

「仮にこの作戦が成功したとして、今の木星では混乱する地球圏を制圧する手立てがない。我々はガリコネという内部の敵を抑え込めていないというのが現状なのに、外の敵までもを刺激する必要はないでしょう!」

 

 エウロペは吼える。それは、木星という小さな国家の現状だった。現在、木星圏は大きく二つに分かれている。クラックス・ドゥガチの地位を継承した新総統カリストの派閥と、クラックス・ドゥガチ没後に巨大化した巨大マフィアのガリレオ・コネクションの二大派閥。内なる敵であるガリレオ・コネクションを牽制しながら地球と全面戦争を行うメリットなど、事実としてどこにも木星にはなかった。

 クラックス・ドゥガチの死後、仮初とはいえ結ばれた停戦。それを破ってまで事を起こすには、あらゆる準備が足りていない。

 

エウロペ

「あなたの計画は……地球の人々を大勢死に至らしめる。ですが、それで我々に与えられるものは地球人からの憎しみの炎。それがわからないのですか?」

影のカリスト

「ククク……わかっていないのは姉上の方ですよ」

 

 だが、影のカリストにそんなエウロペの……姉の懇願が届くことはなかった。

 

影のカリスト

「ダインスレイヴキャノン計画はあくまで前哨戦でしかない。我々の真の計画……“神の雷”のね」

エウロペ

「そんな、まさか……?」

 

 神の雷。それが何を意味する言葉なのか、エウロペは知っている。しかし、それは口にするのも憚られるほど恐ろしいものだった。あれを本気で、弟はやろうとしている?

 

カリスト

「それに……ククク、姉上。どうやらパーティのゲストがやってきたようですよ」

エウロペ

「……!?」

 

 エウロペが宇宙の海を見上げると、月に迫るものがあった。巨大な髑髏の海賊船……アルカディア号。そして、アルカディア号に先行するようにX字型のバックパックを背負うモビルスーツ。

 

エウロペ

「クロスボーン・ガンダム……!」

影のカリスト

「なるほど。海賊軍とやらは確かに、国連のマヌケ共とは違うらしい。姉上、あれが仇ですよ」

エウロペ

「……わかっている!」

 

 踵を返し、エウロペは走り出す。自らの、モビルスーツの下へ。

 

エウロペ

「カリスト、とにかくこのような馬鹿な真似はやめなさい!」

影のカリスト

「そうですね、姉上が海賊のガンダムに勝てたら、考えてあげてもいいでしょう」

 

 せせら笑うように、影のカリストは言った。明らかに、エウロペを見下している。それを感じながらもエウロペは、弟の言うことを信じる他に道はなかった。エウロペが自らのモビルスーツに乗り込むと、彼女を護衛する木星兵たちも自分のモビルスーツへ搭乗。物々しい駆動音と共に、バイザーアイの中の瞳がギラついた。

 

木星兵

「奥様、ここは我々にお任せください!」

エウロペ

「いや……クロスボーン・ガンダムは、カーティスの仇は、私が撃つ。エウロペ・ドゥガチ、アマクサ出るぞ!」

 

 エウロペ・ドゥガチの胸中にあったのはしかし、迷いだった。このままで、結局弟の言いなりになるしかできないままでいいのだろうか。カーティスの仇であるクロスボーン・ガンダムへの憎しみは確かに、エウロペの中にわだかまっている。だが、憎しみでこんな戦いをしていいのだろうか。そんな迷いを振り払うように、エウロペは操縦桿を強く握った。

 

 

 

 

影のカリスト

「全く、愚かな姉だ……」

 

 出撃する姉とその護衛達を、影のカリストは嘲笑っていた。正直、この作戦が成功しようが失敗しようがどうでもいい。ただ、“木星はまだ地球を敵視している”というメッセージさえ地球に送れれば、それが彼の計画の第一段階だ。そして、「地球を敵視する」敵の存在というものがこの計画を裏で支援しているエメリス・マキャベルには必要なものらしい。そう、影のカリストはMr.ゾーンという男から聞いている。

 

カーメン・カーメン

「ホッホッホッ。まるで女騎士の在り用だな」

影のカリスト

「姉上はあれで人望がある。まだ使い道があるから、今は好きにさせているだけだよ」

カーメン・カーメン

「成程。では、カリスト殿。我々の艦にお乗りください」

 

 これから影のカリストは、このヌビア・コネクション旗艦に乗艦し木星へ帰る手筈になっている。ヌビア・コネクションにとっても、木星で幅を利かせるガリレオ・コネクションは目障りな存在らしい。そしてカーメン・カーメンの語る大アトゥーム計画。それはカリストにとっても魅力的なものだった。だからこそ、カリストとカーメン・カーメンは手を組んでいる。そして、このヌビア・コネクション旗艦ならば地球から木星までの距離も遠いものではない。

 

影のカリスト

「さて、姉上の部隊は海賊軍を相手にどう立ち回るかな?」

 

 影のカリストには、姉の……エウロペの全てがわかる。伝わる。だから、エウロペがいる限り離れていても問題はなかった。エウロペが、生きてさえいれば腕の一本、足の二、三本くらいなくなっても問題ないとさえ考えている。

 

カーメン・カーメン

「戦力的に不安が残るなら、我々の戦力も少しばかりお貸ししよう」

 

 そう言って、カーメン・カーメンが指を鳴らす。すると、筋骨隆々にモヒカンの大男が現れ、カーメン・カーメンの前に傅いた。

 

クダル

「……お呼びでしょうか、カーメン・カーメン」

影のカリスト

「…………!」

 

 クダル・カデル。宇宙海賊ブルワーズの一員であり、ガンダム・グシオンのパイロット。弱いものいじめが大好きでヒステリックなあの男が、まるで操られたかのようにカーメン・カーメンに屈服している。その様子に、さしもの影のカリストも目を見開いた。

 

カーメン・カーメン

「よいか、お前は月基地を防衛するのだ。お前の最も得意な、戦いでな」

クダル

「はっ……はっ!」

 

 恭しくお辞儀をし、クダル・カデルは退出する。あれだけ敵視していたカリストなど、眼中にないように。

 

影のカリスト

「……これは、少し驚いたな」

カーメン・カーメン

「ホッホッホッ、月へ向かう途中で回収したモビルスーツに乗っていてな。使えそうなので洗脳措置を施してみたのよ」

 

 こういう時のための、捨て駒に。そう、カーメン・カーメンは妖しげな笑いを浮かべ、ほくそ笑んでいた。

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

 

ハーロック

「あれが、ダインスレイヴキャノンか」

 

 アルカディア号から見える、巨大なカタパルト。その射出口を睨む。ダインスレイヴ。あの忌まわしい兵器を。既にアルカディア号の存在を察知した木星軍のモビルスーツ達が、アルカディア号へと迫っていた。多くはバタラ・タイプだが、中にはバタラとは違うものもいる。その中にはあのアマクサや、ガンダム・グシオンの姿もある。

 

三日月

「あいつ、まだ生きてたんだ」

 

 三日月もそれに気付くが、グシオンは既に眼中になかった。あれは昭弘に危害を加えて奪ったものではない。その言質を取った以上、あれに興味はなかった。

 

オルガ

「ミカ、雑魚には構うな。あのダインスレイヴキャノン。あれだけはなんとしても破壊しなきゃならねえ」

三日月

「わかってる。あれには俺も、随分酷い目に遭わされたからね」

 

 三日月の肩が、静かに震える。元の世界での、三日月が生死の境を彷徨うほどの傷を受けたギャラルホルンとの戦いで、三日月はダインスレイヴの斉射攻撃を浴びた。その結果、一騎当千を誇るガンダム・バルバトスルプスレクスすらその威力を前に沈黙した。それだけではない。敵のダインスレイヴは、三日月の家族を……鉄華団の命を次々と奪っていった。

 

三日月

「……もう、あんな思いはごめんだもんな」

 

 それはオルガも、それにハーロックも同じ気持ちだった。

 

ハーロック

「各員、雑魚に構うな。目的はあくまでダインスレイヴキャノン。その破壊だ。アルカディア号、全速前進。あの悪魔の剣を、今ここで叩き砕け!」

「おう! やってやるぜ!」

 

 アルカディア号から出撃するモビルスーツ達。そして、超獣機神ダンクーガ。エンペラー班と比べて、アルカディア号班には超推力、超馬力のスーパー・ロボットが著しく不足している。今、ダインスレイヴキャノンを一撃で破壊できるような兵器はおそらくダンクーガの断空砲のみだろう。

 

シャア

「ダンクーガを中心にフォーメーションを組む。敵をダンクーガに近寄らせるな!」

マーガレット

「了解……!」

 

 今回、シグルドリーヴァはベース・ジャバーを下駄履きしての出撃だ。理由は明白、ダンクーガと足並みを揃えるため。普段は後方からの火力支援を主眼に置いた機体だが、今回シグルドリーヴァはそのありったけの火力で、敵をダンクーガに近寄らせないという仕事があった。そして、シグルドリーヴァと同じく重武装。そして高機動を両立するサザビーと、ダブルゼータがダンクーガの側面につく。

 

アムロ

「俺と三日月、トビア、ハリソン大尉は敵の撹乱だ。行くぞ!」

トビア

「了解!」

 

 そして、もう一面。迎撃に現れた木星軍のモビルスーツ部隊の撹乱のために編成された遊撃部隊。こちらは遠近両用の装備を持つνガンダムとF91。そして近接戦においては無類の強さを発揮するバルバトスとクロスボーン。ハーロックを司令塔に、アムロとシャアに二小隊を任せる布陣。まさしく、アルカディア号にとっても最大戦力でこの戦いに臨んでいた。

 

 

カマーロ

「あれは……忌々しい海賊どもめ!」

 

 月面基地の司令室。ダインスレイヴキャノンを任されたカマーロ・ケトルはその髑髏のマークを忌々しげに見つめて舌打ちをした。ドゥガチ総統存命の時から今まで、奴らにはロクな思い出がない。だが、今カマーロには切り札がある。ダインスレイヴキャノンという、強力な切り札が。

 

カマーロ

「ダインスレイヴキャノン、発射準備を急がせなさい!」

 

 地球へ落とす前に、試し打ちをさせてもらおう。目標はあの海賊船。旗艦に風穴が開いた時、あの海賊どもどう思うだろうか。カマーロは醜い笑みを浮かべ、クツクツと嗤っていた。

 

 

…………

…………

…………

 

 

トビア

「あのアマクサ、クロスボーンを狙ってくる?」

 

 多くのバタラがダンクーガの強襲を阻止せんと特攻している中、執拗にトビアの乗るX1パッチワーク目掛けて真っ先に突撃をかけるアマクサの小隊がいた。そこからアムロ・レイのようなプレッシャーは感じない。つまり、バイオ脳が乗るものではなく量産型だろう。だがトビアは、クロスボーン・ガンダムへの敵意を鋭敏に感じ取る。ザンバスターを構え、迫り来るアマクサを迎撃。しかし、先頭に立つアマクサは巨大なシールドを構えザンバスターによる攻撃を防ぎ、クロスボーン・ガンダムへと迫った。

 

トビア

「こ・い・つ!?」

エウロペ

「海賊軍……カーティスと、テテニスの仇!」

 

 ビームサーベルを抜き斬りかかるアマクサ。それをクロスボーン・ガンダムは、同じようにビーム・サーベルで鍔迫り合う。

 

トビア

「離してくれ! 今は戦ってる場合じゃないんだ!」

エウロペ

「私には、戦う理由がある!」

 

 ビームの刃が激しい火花を散らせ、クロスボーンのABCマントを焼いた。このままでは埒が開かない。とトビアは脚部に隠すヒートダガーを展開し、アマクサを蹴り上げる。

 

エウロペ

「っ!? 武器が? そんなところに?」

 

 怯み、エウロペは一瞬身を引いた。しかし、そんなエウロペを守るように周囲のアマクサが前に出て、ビーム・ライフルを斉射していく。

 

木星兵

「あのガンダムは、木星から全てを奪ったガンダムだ。ここで落とせ!」

トビア

「な……!?」

 

 マントの間を狙われる。Iフィールドハンドでも間に合わない。しまった。そう思った直後、クロスボーン・ガンダムを包み込むようにビーム・バリアが展開される。

 

アムロ

「トビア、油断するな!」

 

 νガンダム。アムロ・レイのために作られた白いモビルスーツ。そのフィン・ファンネルが、クロスボーン・ガンダムを守るようにサイコミュ・シールドを展開していたのだ。

 

トビア

「すいません、でも……!」

 

 やりづらい。木星の相手にここまでやりづらさを感じたのは初めてかもしれない。周りの連中は、明らかに指揮官を守るように動いている。それは、「ドゥガチ総統のために命を捨てよ」というこれまでの木星軍の動き方とは違うものだ。

 

トビア

(もしかしたら、話せばわかる人かも……)

 

 それが、トビアの少年の心が感じる甘えなのは、自分でもわかっていた。だが、その直感に……感情に従ってこれまで生き抜いてきたのがトビア・アロナクスという少年だ。

 

トビア

「俺達の目的は、ダインスレイヴキャノンの破壊だ。あんた達だって、本当はこんなことしたくないんじゃないのか?」

 

 だからトビアは、目の前にいる木星人の善性に賭けてみることにする。

 

アムロ

「トビア……!?」

ハリソン

「トビア君?」

 

 アムロは驚き、ハリソンは目を剥く。トビアは自らのコア・ファイターを分離させ、ガンダムを宇宙空間に放り出してアマクサ隊の方へと向かっていくのだ。

 

木星兵

「な、なんだこいつは……!?」

エウロペ

「な・に?」

 

 その行動に驚いたのは、アムロ達だけではない。エウロペ以下アマクサ部隊も、その行動に虚を突かれる。

 

トビア

「たしかに、俺達は木星軍にとっては仇敵かもしれない。だけど、あんた達だってこんなやり方は正しくないって……わかってるんじゃないのか!」

 

 コア・ファイターで迫るのは、敵に自分の声を届けるためだ。コア・ファイターから伸びるワイヤーが、エウロペのアマクサを捉える。それは、トビアの声を真空の宇宙でよりクリアにエウロペに届けるための……お肌の触れ合い回線と呼ばれるアナログな手法だ。ガンダムのままでも、行うことはできる。だが、ガンダムで行けば回線を触れ合わせる前にドンパチしてしまうだろう。そう考えて、トビアはあえてガンダムを捨てたのだ。

 しばらくの間、静寂。しかし、数秒の時がエウロペの口を、静かに開かせる。

 

エウロペ

「……そうだ。私は、この作戦をやめさせるためにこの地へ来た」

トビア

「だったら!」

エウロペ

「だが! 私の愛する人と、テテニス様を殺した宇宙海賊を許すこともできんのだ!?」

 

 悲痛な叫びが、トビアの耳に伝わり裂く。女の声だ。しかし、

 

トビア

「え……と? テテニス? 様?」

 

 トビアの方は、目を丸くすることしかできなかった。

 

エウロペ

「そうだ。忘れたとは言わせまい! ドゥガチ総統の一人娘である、テテニス姫。彼女が生きていれば、今頃……!」

トビア

「あの、えーと……。大変申し上げにくいんですが……」

 

 トビアはアルカディア号に、正確に言えばその中に格納されている海賊輸送船リトルグレイに通信を送る。その通信をキャッチし、トゥインクの声がコア・ファイターの中に響いた。

 

トゥインク

「こちらリトルグレイ。トビア?」

トビア

「あー、悪いんだけどベルナデットを出してくれないかな」

ベルナデット

「え、私?」

 

 不思議そうに、きょとんとしたベルナデットがモニタに映る。トビアはコンソール・パネルを開くと、目の前にいるアマクサに回線の周波数を教える。

 

エウロペ

「何だ、なんのつもりだ?」

トビア

「いいから、その回線を開いてください」

 

 怪訝そうな顔でエウロペが言われた回線を開くと、モニタに映し出されたのは、金髪碧眼に、童顔の可愛らしい少女……ベルナデットだった。いや、正確にはベルナデットではない。少なくとも、エウロペにとっては。

 

エウロペ

「な……あなたは……」

ベルナデット

「エウロペ……エウロペなの!?」

 

 テテニス・ドゥガチ。木星帝国前総統クラックス・ドゥガチの一人娘であり、以前の戦役で海賊軍の手にかかり殺された……そう、エウロペが信じていたはずの少女。そのテテニスが、海賊軍の船に乗りそして、ブリッジにいる。その事実と今まで信じてきた真実の矛盾に、エウロペは愕然とした。

 

エウロペ

「テテニス……様。生きて、いたの……」

ベルナデット

「ええ。ええ! あなたも、よく無事で!」

 

 無事などではない。少なくとも木星は、以前よりもひどくなっている。ドゥガチの死後、新総統カリストと新たに台頭したマフィアのガリレオ・コネクションの内紛で、木星の未来は今にも閉ざされようとしているのだ。しかし、そのことを皇女たるテテニスはきっと知らない。そして知らずに海賊軍の船に……。

 

エウロペ

「生きていたのなら、どうして木星へ戻ってきてくれなかったの! お前が、テテニスがいてくれれば、木星は……」

ベルナデット

「え……、エウロペ?」

 

 テテニス・ドゥガチが生きている。その事実はエウロペだけでなく、エウロペを護衛していたアマクサの動きをも動揺で鈍らせていた。

 

木星兵

「テテニス様が? 生きて?」

木星兵

「だが、海賊軍にいるのはなぜだ?」

 

ベルナデット

「……エウロペ、よく聞いて」

 

 そんな中、ベルナデット・ブリエットは……いやテテニス・ドゥガチは気丈な眼差しでエウロペを見つめ、言葉を探していた。

 

ベルナデット

「ダインスレイヴキャノンが発射されれば、きっと地球の人達は木星を恨みます。その憎しみはきっと、第二のクラックス・ドゥガチを地球で生んでしまう。だから、手伝ってほしいの」

エウロペ

「私だって、理解している。だが、私に帝国を裏切れというのか?」

 

 ベルナデットは「ううん」と首を振り、それから改めてエウロペに向き直る。

 

ベルナデット

(リュクスさんは、お父さんを止めようと必死になってる。あの時、私にできなかったことをしようとして。アトラたちのいた火星だって、大変だったみたいだけど、少しずつよくなってる。それは、みんなが頑張って戦った結果として、勝ち取ったもの。だから……)

 

 木星だけが、木星帝国の姫君だけが、何もしないわけにはいかなかった。もし木星が大変なことになっているのだとしたらそれはベルナデットにとっても、いやテテニスにとっても見過ごせない問題なのだから。

 

テテニス

「テテニス・ドゥガチに力を貸して。木星を、憎しみから解放するために」

エウロペ

「っ……!?」

 

 それは。エウロペが。エウロペ・ドゥガチがずっと、待ち続けていた言葉だった。

 

エウロペ

「テテニス……。木星のために、立ち上がってくれるというの?」

ベルナデット

「うん。だけどそのためにはエウロペ、あなたに教えてもらいたいの。今、木星がどうなっているのか」

 

 リュクスは今も世界を見て、父を止めるためにどうすればいいのか考えている。ベルナデットも、クロスボーン・バンガードの……そして、ここに集った仲間達と多くのものを見てきた。それに、自分は一人じゃない。

 

ベルナデット

「今の私には、たくさんの仲間がいるわ。きっと、力を貸してくれるはずよ」

 

 虚無を撃ち貫くために集った、仲間がいるのだから。

 

エウロペ

「テテニス……」

 

 アマクサ達はその言葉に武器を降ろし、踵を返す。

 

エウロペ

「聞いたな。私達は、テテニス様の命令でダインスレイヴキャノン破壊任務に当たる!」

木星兵

「了解!」

木星兵

「へっ、あのいけ好かない新総統様より、可愛いテテニス様の為に死にてえもんな!」

 

 ジーク・ジュピター。ジーク・ドゥガチ。そう唱え、4機のアマクサはダインスレイヴキャノンへと飛んでいった。そして残るのは、トビアのコア・ファイター。

 

トビア

「話はついた……のか?」

 

 もう少し、ややこしい話になるのを想像していたトビアだが、どうもスムーズに丸く収まってくれたことを悟りコア・ファイターを再びガンダムにドッキングさせるトビア。パッチワークは、ハリソンがうまく守りながら戦ってくれていた。

 

ハリソン

「全く、木星軍を説得するだなんて。無茶なことをする!」

トビア

「すいません!」

 

 激戦の中に晒しながら、ガンダムには傷ひとつついていない。さすがはハリソン大尉だ。とトビアは心の中で感謝しつつ、ベルナデットに通信を送った。

 

トビア

「あの人……木星で知り合いだったの?」

ベルナデット

「うん……トビア。エウロペを、母さまを援護して!」

トビア

「おう! …………ん?」

 

 エウロペ。それがあの女性の名前であることは、二人の話からも推測できた。だが、しかし。

 

トビア

「かあ……さま?」

 

 一瞬、トビアの思考は真っ白になってしまっていた。

 

 

…………

…………

…………

 

 

オルガ

「ミカ……。バルバトスの調子はどうだ?」

三日月

「うん。問題ない。むしろ、前より調子いいかも」

 

 モビルスーツ部隊の先頭を行くのは、ガンダム・バルバトスルプスレクスだ。阿頼耶識システムによってまさに三日月と一体化しているバルバトスには、「操縦」という行為で発生するラグが非常に少ない。その敏捷性を生かし、アムロと共に敵を撹乱していた。

 

アムロ

「三日月、前の敵は任せる!」

三日月

「わかった」

 

 迫るペズ・バタラに、バルバトスの鋭利な尻尾が襲い掛かる。無軌道に戦場を駆け回り、全てを切り裂くブレードテイル。それは、ある意味では物理的な刃を伴うファンネルのようなものにアムロには見えていた。

 

アムロ

「阿頼耶識は、パイロットの神経をより研ぎ澄ませる力でもあるというのか?」

 

 無論、こんな真似ができるのは三日月とバルバトスだからである。だが、人機一体を体現する阿頼耶識ならば余計に、「尻尾を振る」という動作はイメージしづらく、難しいはずだ。三日月はそれを、まるで生身の身体にも尻尾があるかのようにやってのけている。それは、イメージによって縦横無尽に動かすサイコミュ兵器のそれと近いようにアムロには見えていた。

 

アムロ

「だとしたら、阿頼耶識のリミッターを外すというのは強制的にニュータイプ能力を発現させることに近いのかもしれないな……」

 

 そう言葉にしながら、νガンダムは次々とバタラを撃墜していく。獣のように狂い舞う三日月と、人間離れした超常的反応速度で敵を撃ち落としていくアムロ。νガンダムのシールド裏に隠されているミサイルがまた、バタラを撃ち落としていく。

 

アムロ

「ム……? 来るのか!?」

 

 フィン・ファンネルを展開し、νガンダムは前方の敵へ射出する。多くの有象無象はファンネルを避けることもできずに爆散していく中、一機だけアムロの攻撃を突っ切り突撃してくるものがある。

 

クダル

「カーメン……! カーメン……!」

 

 ガンダム・グシオン。そのナノラミネートの重装甲とそれに機動力を与える推進力が、アムロ達の前に迫っていた。

 

アムロ

「何だ、敵意は感じない。いや、だがこれは……?」

 

 純粋な殺意。しかしそこに意志を感じられない。それがアムロに、違和感を抱かせる。しかし、殺意を感じるのならば、その殺意に合わせて引鉄を引く。だが、ビーム・ライフルの光はナノラミネートアーマーが直撃を弾いていく。チィッ、アムロは舌打ちし機体を上昇させハイパー・バズーカの背面撃ちでグシオンを迎撃する。至近距離での白兵戦でなら、ナノラミネートを貫く算段もある。しかしあの重装甲と巨大なハンマーを持つグシオンに迂闊に近づくのは危険と判断し、アムロはバズーカで対応していた。

 

アムロ

「奴の相手を頼む、三日月!」

三日月

「あいつか……」

 

 面倒臭そうな生返事をしつつ、三日月はルプスレクスの尻尾を振り回しグシオンへと伸ばす。それをクダルは避けもせず、装甲を貫かれながらバルバトス目掛けて突撃していた。

 

三日月

「何……?」

 

 おかしい。その動きに三日月は違和感を覚える。あいつは別に、特別強敵だったわけでもない。ただちょっと硬くて、面倒なだけだ。だが、その硬さに任せて雑な操縦をするような奴ではないことを、三日月は知っている。

 

クダル

「カーメン……カーメン……!」

三日月

「え、カメ?」

 

 よくわからないことを喚いているのは、変わらない。だが、わからないの質が違う。三日月の知るあれは、見当違いなことを喚いて煩いことこそ多かったが、意味不明のことを叫ぶようなやつではなかった。だが、今は違う。

 

三日月

「あんた……誰?」

 

 それが、三日月が今のクダル・カデルに抱いた印象だった。そんなことはお構いなしに、グシオンはルプスレクスへ突っ込んでいく。そして、その巨大なハンマーを大きく振り上げ、バルバトスへと叩きつけた。

 

クダル

「カーメン!」

三日月

「危ないな……!」

 

 咄嗟の判断で、ロングメイスを掲げ防御する三日月。その動きには寸分の狂いはない。戸惑いながらも、三日月の心は殺し合いの中にあった。だから、相手の強襲にも対応できる。巨大な金槌と大剣が激しく鍔迫り合い、火花を散らす。

 

三日月

「まあ、いいか!」

 

 クダル・カデルに感じた違和感を無視し、三日月はバルバトスの尻尾をグシオンから引き抜く。天使の名を持つ災厄から奪い取った尻尾。それを縦横無尽に振り回し敵を寄せ付けない孤高の狼。バルバトスは今、まさしく敵に災厄を降り注ぐ悪魔と化していた。そう、死を告げる悪魔に。

 

クダル

「カーメン……カーメン……あ、あああああ!!!!!?」

 

 尻尾を引き抜かれ、ガンダム・グシオンの重装甲が大きく裂ける。亀の甲羅にも見まごう装甲が砕け、内部のフレームが露出する。機体が上げる悲鳴に呼応するかのように、クダル・カデルも大きく叫びを上げた。そして、阿鼻叫喚のまま大槌を振り回す。機体は既に、限界を迎えている。恐らく、まともにメンテもされていないままこの戦いに赴き、そしてバルバトスのテールブレードの直撃を受けながら暴れ回ったのだ。無理もない。しかし、そんなこと三日月は知る由もない。

 

三日月

「まだやるのか。あんたもしつこいよ」

 

 三日月は舌打ちすると、ロングメイスを思い切りグシオンに突き刺す。コクピットが潰れようが構うものか。

 

三日月

「こいつは、死んでもいい奴だから」

 

 三日月・オーガスという少年は、人を殺すことに一切の躊躇がない。はじめて人を殺したその日から。オルガの命令を聞いたのその日に、彼の自我は芽生えたのだから。

 オルガにもらった命。オルガのために使うと決めた命。だけど今は、オルガのためだけじゃない。これは、自分の意志だ。明確な自分の意志で、三日月はクダル・カデルを殺す。そこに迷いや憐れみや、増してや良心の呵責など存在しない。

 

クダル

「あ、ああああああ!!!?」

 

 目の前に迫るバルバトスの赤いツインアイ。それを間近で見たクダルは、発狂したかのように叫びを上げる。だが、関係ない。殺すと決めた奴は殺す。それが、三日月・オーガスなのだ。

 

三日月

「……………………」

 

 無言の抜刀。無言のままロングメイスを水平に構え、グシオンへ頭から突き刺す。圧倒的な質量のメイスはグシオンのナノラミネートを貫き、コクピットの中で叫ぶクダル・カデルをも真っ二つに引き裂いた。

 

クダル

「カァァァァァァァッメェェェェェェン!?!?!?!?!?」

 

 バルバトスの、悪魔のような赤い瞳に見入られながら、クダル・カデルは最期の叫びを上げる。脳裏を過ったのは、あの蛇のような……無機質な瞳だ。カーメン・カーメン。たしかに奴はそう名乗り……クダル・カデルの精神を支配してしまったのだ。

 嫌だ。死にたくない。そんなことを思う余裕がどういうわけか、その時クダルにはあった。まだ、自分は暴れたりない、殺し足りない。まだまだガキを殴りたい、嬲りたい。ゴミどもは人間に支配されるために生まれてきたと教え込みたい。そうだ、あのカンナとかいう生意気なガキ。あの反抗的な瞳が、何もかもを諦めるようになる瞬間をまだ見ていないじゃないか。それなのに、どうして今自分があんな蛇男に支配されて、ゴミのような捨て石にされなければならないのか。この世は理不尽だ。

 自分が真っ二つにされていることにも気づかぬまま、クダル・カデルはグシオンと共に大きく爆炎を上げ、そこで爆ぜた。

 

 クダル・カデルは最期の瞬間まで、自分をゴミのように扱ったカーメンとそして……三日月を呪い続けていた。

 

 

 

三日月

「ふぅ……」

 

 グシオンの撃破を確認し、バルバトスは再び宇宙を駆ける。敵のモビルスーツの攻撃が散漫になりつつあるのを、三日月はその肌で感じていた。迎撃部隊の規模が、衰えている。

 

三日月

「オルガ、次は何をすればいい?」

 

 引っ掻き回しの囮役は、充分に果たしただろう。そう判断し、オルガへ通信を入れる。

 

オルガ

「上出来だミカ。敵を撃破しつつ、ダインスレイヴキャノン攻撃部隊に合流しろ!」

 

 アルカディア号の中でオルガは、三日月の戦いぶりを見届けている。見届けた上で、オルガは三日月には見えない部分まで見てくれている

。アルカディア号は、ダンクーガの後方からカノン砲でダインスレイヴキャノンへの攻撃に転じていた。ダンクーガやダブルゼータといった主砲を一点に集めての突撃部隊。戦局の中心は既に、あちらに移行している。オルガはそこに三日月を向かわせ、さらに火力を集中させることを提案していた。

 

三日月

「わかった」

 

 今まで、自分とオルガはオルガが頭で、自分が手だと三日月は考えていた。その根本は今でも変わらない。だが、今は三日月も自分の意志を認めた上で……オルガの言葉に従っている。

 

三日月

(俺も見たいんだ。オルガが連れて行ってくれる場所を)

 

 その時まで、オルガは絶対に止まらない。だから、三日月もその時まで止まらない。それが、三日月の意志だった。

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

 

木星兵

「敵スーパーロボットの進撃、止まりません!」

カマーロ

「クッ……猪口才な。こうなったら、もう構うことはないわ。 奴らにダインスレイヴキャノンをお見舞いしてやりなさい!」

 

 司令部の喧騒の中、カマーロ・ケトルは忌々しげに迫り来る敵を睨め付けていた。敵の旗艦が巨大な海賊旗。木星帝国を、カマーロを幾度となく失墜させた憎き敵。奴らに一矢報いることができるならば、新総統の命令などどうでもいい。沸々と湧き立つ怒りと憎しみが、カマーロ・ケトルを突き動かしていた。

 

 

 

ハーロック

「ム……?」

 

 キャプテンハーロックは、鷹のように鋭い眼光でその違和感を射抜いていた。月面基地を防衛する敵戦力の動きが、おかしい。今まではこちらを近づけまいと必死になっていた防衛網。それに、緩みが生じている。

 

シャア

「この感じ、来るぞ!?」

 

 シャア・アズナブルは、この動きを知っていた。かつて、シャア自身が防衛戦に参加したコロニー・レーザーを巡る三つ巴の戦い。防衛網が薄くなるこの瞬間はつまり、敵の主砲射線が剥き出しになるということ。

 

ハーロック

「面舵いっぱい! 艦を敵主砲から退避させるんだ!?」

 

 敵の意図に気付くと同時、ハーロックは回避行動を命令する。ダインスレイヴの威力は、ハーロックも良く知っている。その巨大版となれば、受ければこのアルカディア号は宇宙の藻屑となるだろう。自分一人の命ならば、それでもいい。地球を守る盾として死ぬのなら、それは男の死に様だ。だが、

 

ハーロック

(この船に乗せてきてしまった子供達……。彼らの未来まで奪うことはできん!)

 

 ヒューマンデブリとして、大人達の道具として酷使されてきた少年少女達が今、このアルカディア号には同乗している。彼らの命を巻き添えにする選択を、彼はできなかった。

 だが、そんな中にあってダインスレイヴキャノン目掛けて直進するものがある。超獣機神ダンクーガ。人を越え、獣を越えた神の戦士。

 

マーガレット

「ダンクーガが突っ込む? 沙羅!?」

 

 その蛮勇とでも言うべき行為に、マーガレットが叫ぶ。

 

沙羅

「悪いけど、あたし達は今完全にトサカに来てるんだ。逃げも隠れも、できないね!」

「こんな作戦、許すわけにはいかねえ!」

 

 藤原忍の怒りが、内なる野生を解放する。忍だけではない。沙羅、雅人、亮。誰もが怒りに満ちていた。怒り。人間にとって最も純粋な、ストレートな感情は、人間という霊長類の最も獣じみた部分を刺激する。4人は今、野生の獣へと還りそして……怒りが神をも超越した戦士へと4人を変えていく。

 

沙羅

「忍、しっかりやんなよ!」

「あたぼうよ! みんな行くぜ、断空砲フォーメーションだ!」

 

 「OK忍!」3人の返事と共に、胸部から伸びる砲身パルスレーザー。背面から展開される断空砲。ダンクーガの全ての火器が、ダインスレイヴキャノンへと照準を合わせる。

 

木星兵

「敵スーパーロボット、尚も接近!?」

カマーロ

「構わないわ! 奴ごと撃ち込んでしまいなさい!」

 

 カマーロの叫びと共に、ダインスレイヴキャノンを守るバタラはその砲身をダンクーガに合わせた。

 

カマーロ

「ひ、ひ、ひ。よくも、よくもこの私をここまで追い詰めてくれたわね……」

 

 こっちがどれだけ惨めな思いをしながら、残党活動をしていたか奴らは知っているのだろうか。泥水を啜り、溝鼠で飢えを凌ぐような屈辱の日々を、カマーロは思い出す。それからようやく見つけた儲け話も、シャッフル同盟と海賊軍に潰された。それだけではない。ミケーネ帝国とかいう奴らの挙兵で、自分達はまるで小物のように相手にもされていない。

 それを、どうして今更阻止しにきたというのだ。都合の悪い時にだけ現れる。そんなのは都合が良すぎる。訳のわからない感情のままにカマーロは叫んだ。

 

カマーロ

「誰のせいで、こんな思いしとると思ってるんじゃぁっ!?」

 

 その叫びと同時、バタラがダインスレイヴキャノンの引鉄を引く。ダンクーガはもう、至近距離にいた。ダンクーガから放たれる断空砲フォーメーションが、ダインスレイヴキャノンごと月面基地を呑み込んでいく。灼熱の光の中で尚、その弾丸は突き進む。

 

沙羅

「忍! ムゲ野郎の残した基地ごと、あんなものはこの世から消しちまいな!」

「わかってらぁっ! みんな、俺たちの野生で、あの鉛玉を溶かしてやろうぜ!」

雅人

「うん! 地球にはローラもいるし、みんなの故郷なんだ。あんなものを落とさせてたまるかよ!」

「この勝負、一蓮托生だな。行くぞ!」

 

 忍、沙羅、雅人、亮。4人の野生が熱量を増加させる。全てを融かす灼熱の怒りが、ダインスレイヴ弾頭を溶かしていく。融けながらしかし、ダンクーガ目掛けて突き進む。杭のように尖った先端がそのまま突き刺されば、ダンクーガはひとたまりもない。

 

「うぉォォォォォッ!?」

 

 ダインスレイヴが激突するその直前、ダンクーガは断空剣を引き抜いた。断空剣を垂直に構え、ダインスレイヴを迎え撃つ。

 

「忍、何をするつもりだ!?」

「こうなりゃ一か八かだ。やってやるぜ!」

 

 垂直に構えた断空剣が、迫り来るダインスレイヴ弾頭に激突する。しかし、それまで灼熱の怒りに溶かされていた弾頭は元来の硬質を維持できなくなっており、断空剣の刃を受け真っ二つに裂かれていく。まるでバターのように裂けていくダインスレイヴ。その光景を、アルカディア号の中でオルガ・イツカは信じられないものを見たかのように見つめていた。

 

オルガ

「あれを、斬り裂いてるっていうのかよ……!」

 

 ダインスレイヴ。あれは一度放たれれば悲劇を齎す魔弾だ。敵味方問わず、多くの者があれを受けて死んでいった。それを今、ダンクーガは受け止めているのだ。驚かない筈がない。

 

トゥインク

「ダンクーガの出力、尚も上昇!」

トチロー

「まずいぞハーロック、このままだとダンクーガがオーバーロードしちまう!」

 

 今、超獣機神はその全身全霊を欠けて魔弾を受け止めている。ジリジリと裂けながらも勢いを止めないダインスレイヴ。野生の高まりとともに神の領域へと至るダンクーガ。しかし、機械の器は限界が近づいている。

 

雅人

「忍、ダンクーガのエネルギーも残り少ないよ!?」

「足りねえ分は、俺達の野生で補う! ダンクーガ……俺達に力を貸してくれ!」

 

 ダンクーガの瞳が、真紅に煌めいた。まるで、忍の声に応えるように。断空剣と断空砲。その両方を受けながらダインスレイヴは溶け裂けていく。発射の勢いを殺さぬまま、そしてついに、忽ちダインスレイヴの弾頭は真っ二つに割れた。二つに割れた弾丸は、回転力を失い残骸へと姿をかえていく。

 

ジュドー

「す、すげえ……」

 

 ジュドー・アーシタは今、はじめて目の当たりにし戦慄した。人の魂が、命が多くの力を秘めていることを彼もその身で体験している。だが、これほどとは。

 

トビア

「単独で? 敵のマスドライバーごと?」

マーガレット

「ダンクーガ……。これが、ムゲ帝国を倒したスーパーロボットの全力」

 

 周辺の敵を撃退していたトビアやマーガレット。それにサザビーのシャア・アズナブルすら、その姿に畏敬の念を感じざるを得ない。

 

シャア

「これが若さか……」

 

 新しい時代を作る原動力。それこそが若さ。シャアはそう、常々感じていた。自分やアムロが失い、トビアに感じる若さ。それを、獣戦機隊も持っている。そしてダンクーガは、その若く、エネルギーに溢れる精神力……即ち野生の力を体現するマシン。それは、シャアやアムロが乗っているサイコフレーム搭載モビルスーツの、真なる後継機であることを意味していた。

 

シャア

(あの時、サイコフレームが起こした共振現象。私にもアムロにも、あれが結局何だったのかはわかっていない。だがこのダンクーガは、それを科学的に解明したマシンなのかもしれないな)

 

 確証はない。しかし、ダンクーガはかつて、バイストン・ウェルの戦いでもショウのヴェルビンと共に奇跡のような輝きでムゲ・ゾルバドスを滅ぼした。二度も奇跡を起こしたその勇姿に、シャアは確信していた。

 

シャア

(人を超え、獣を超えた力。それを引き出す彼らの野生。彼らはニュータイプではない。だが、より原始的な……人の生きる意志そのものなのかもしれん)

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

 

カマーロ

「なんて……なんてことなの……」

 

 ダインスレイヴを打ち出すマスドライバーも、渾身の一発も破壊された。今、カマーロ・ケトルの目の前に浮かぶのは絶望の二文字。怒り任せに命令を出したのがよくなかったのだろうか。それとも、敵の力がこちらを遥かに超えていたのだろうか。その答えはない。ただ、絶望の中でカマーロ・ケトルは打ち震えいた。絶望に心を支配されそして、今自分が何をしたのかを客観的に、カマーロは思い出す。

 

カマーロ

「私は、新総統の命令を守れなかった……!」

 

 木星帝国において、失敗は即ち死。それはクラックス・ドゥガチの時代から変わらない木星の常識だ。

 

カマーロ

「こ、こうしちゃいられないわ。とっととずらかるわよ!?」

木星兵

「は……?」

 

 鈍い部下に舌打ちする。カマーロだけではない。この場を守る命令を出されていた者は皆、死を以て償う以外に許されないのだ。そんなのは御免被る。それが、カマーロ・ケトルの処世術。まるで兎のように飛び跳ねながら、カマーロは走った。どこか、逃げ場を探して。司令部は無事だったが、敵のエネルギー砲を受けた基地内部の被害は甚大だった。元々ゾルバドス基地の跡地を改装したもの。綺麗なものではなかったが、今はもはや廃墟としか言い表すことができない。そんな外観に目もくれず、カマーロは走る。

 

カマーロ

「こうなったら、私だけでも助かるしかないじゃない!」

 

 どの道、海賊軍に捕まればどうなるかわかったものではない。海賊軍の捕虜など論外だし、見せしめの処刑だってありうる。だから白旗を上げるという選択肢はカマーロにはなかった。あるのは、逃亡。月のフォン・ブラウンかグラナダにでも流れ込めば、どうにかなる。贅沢な暮らしはできないだろうが、ジャンク屋あたりを細々と始めよう。それで戦場とは無縁の生活をする。そうすれば、帝国からも海賊からも逃げられる。だから今は、逃げなければ。

 そんなことを考えながら格納庫まで走ったカマーロ。ダインスレイヴキャノンは見事に溶け、無惨な有様だ。弾頭の装填を行なっていたバタラも、見事に塵も残っていない。そんな中、自分用のアラナ・バタラを見つけたカマーロは、一目散に愛機へ走る。帝国ドゥガチ時代から、ずっと乗り続けていた相棒だ。そのコクピットハッチを開き、乗り込もうとするカマーロ。しかし、そのシートにはあり得ないものが乗っていた。

 

カマーロ

「え?」

 

 蛇。体調1mほどの長さでとぐろを巻くキングコブラ。なぜコブラがこんなところに? などという思考をする暇もない。コブラはカマーロの身体に巻き付くと、その首筋に牙を立てた。

 

カマーロ

「あ? え?」

 

 カマーロ・ケトルの意識が最期に感じたのは、場違いな存在への違和感。それから身体を締め付けられる束縛感。そして牙を差し込まれる痛みだった。

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

「ふぅ……。死ぬかと思ったぜ」

沙羅

「思ったぜ、じゃないよ。あと少しで本当に死ぬところだったんだよあたし達」

 

 

 ダインスレイヴキャノンを破壊し、全ての気力を振り絞った獣戦機隊。ダンクーガは月面に着陸し、アルカディア号の到着を待っていた。木星軍の敵戦力も、その多くが撤退を選択していた。それを追う余裕は、彼らにはない。それでも尚向かってくる蛮勇を振りかざした者達も、アマクサに乗る女戦士が諌めている。

 

 

エウロペ

「みんな、聞け! テテニス様が、テテニス・ドゥガチ様がご存命だった!」

木星兵

「テテニス様が!?」

 

 テテニス・ドゥガチ。木星帝国前総統クラックス・ドゥガチの一人娘。彼女の存命を、新総統カリストの姉であるエウロペ・ドゥガチの口から聞かされる。その現実は少なからず、木星帝国の兵士たちにとっても衝撃的だったようであり、多くの敵は武器を下ろしエウロペの話に耳を傾けてくれている。

 

エウロペ

「テテニス様は、新総統のやり方に……この作戦に反対している。これはテテニス様の意思でもあるのだ!」

 

 だから、戦う必要はない。これから木星は、テテニス様が治めるべきだ。エウロペはそう、捲し立てて木星兵達を聞き入らせていた。

 

トチロー

「なあ……そろそろ説明してくれ。こいつは一体どういうことなんだ?」

 

 不思議そうな声を上げ、説明を促すトチロー。トチローだけではない。ハーロックやラ・ミーメ。三日月、オルガ、アトラ。それにマーガレットや、アムロ、シャア。誰もがあのアマクサと戦っていたトビア・アロナクスに視線を向けている。

 

トビア

「…………まあドモンさん達は知ってることだし、隠してるつもりもないんですけどね」

 

 観念したように、トビアが呟く。その口を遮ったのは、他ならぬベルナデットだった。

 

ベルナデット

「その話は、私の口からさせてください」

 

 ベルナデットの幼い瞳はしかし、気丈な強沙を秘めている。それを認めると、ハーロックが「続けてくれ」と彼女を促した。

 

ベルナデット

「私の本名はテテニス・ドゥガチ……。木星帝国前総統、クラックス・ドゥガチの娘です」

 

 クラックス・ドゥガチ。木星戦役を巻き起こした大戦犯であり、デビルコロニーでの戦いでは自らをデビルドゥガチと化しガンダム連合を追い詰めた狂気の独裁者。しかし、この場にいる多くの人間はその名を知らない。それでも、その名を知る……木星軍との戦いを潜り抜けた者にとっては、それは少なからず衝撃的な事実だった。

 

マーガレット

「嘘……」

ハリソン

「娘? あのドゥガチの?」

 

 公式的には、ドゥガチの娘は戦死したと伝えられている。少なくともハリソンもマーガレットもそう教えられ、信じていた。それが、今になって。

 

ベルナデット

「私は、父が地球を侵攻する計画を立てている際、実母の故郷である地球を一目見たいと思い……ひとり、密航したんです。ですがそこで父の恐ろしい計画を知り、海賊軍の方々に助けられ、トビアと出会いました……」

マーガレット

「……あなたのお父さんが仕掛けた戦いで、私は初陣を経験した。あそこで少しの偶然が味方してくれなかったら私は死んでいたかもしれない。ううん、私の戦友や上官だった人達の多くはあの戦いで死んだのよ」

 

 淡々と語るベルナデットに、マーガレットは吐き捨てる。マーガレットを含め、彼女が本心からトビアを想い、海賊軍と行動を共にしていることを疑う者はいない。しかし、それでもその事実を受け止めるには、あの戦いを知る者には少々重いのも事実だった。

 

ベルナデット

「はい。父の仕掛けた戦いです。父は本気で、地球を滅ぼそうという妄執に取り憑かれていました。それを止められなかったことには、私にも責任があります……」

マーガレット

「やめて、そんなことを言いたいんじゃないの。ただ、私は……」

 

 クラックス・ドゥガチは、ネオジャパンのウルベ大佐と密約を交わしていたと記録されている。その記録が真実であるならば、ドゥガチはデビルガンダム事件の黒幕の一人でもあるわけだ。デビルガンダム。マーガレットの恋人・紫蘭の命を奪った存在。それとここにいるベルナデットは、テテニス・ドゥガチは関係ないことはマーガレットにもわかっている。それでも、感情の整理がつかない。

 

沙羅

「マーガレット……」

トビア

「やっぱ、こうなるよな……」

 

 観念したように、トビアが溜息を吐く。吐くが、それと同時。

 

トビア

「な……え……!?」

ジュドー

「この感じ……!?」

 

 トビア達がが呻いたのは、この世のものとも思えない怨念が渦巻いているのを感じたからだ。それは、研ぎ澄まされた第六感が働いたと言ってもいい。そして、この怨念を、憎悪をトビアは知っているし、ジュドーは今はじめて体感している。

 

ジュドー

「ハマーン……? いや、違う。だけど近い。この感じは……!?」

 

 ダブルゼータは、咄嗟に虚空へダブル・ビームライフルを掲げた。憎悪の感じる方角へ向かい構える。ヘルメット越しに映るジュドーの額に、じわりと嫌な汗が滲んだ。

 

シャア

「このプレッシャーは……!」

アムロ

「来るか……!」

 

 知っているのは、トビアだけではない。アムロとシャア。それに獣戦機隊も。一度経験したことのある憎悪の渦。

 

三日月

「…………」

 

 三日月・オーガスは、無言でその虚空を睨みつけていた。彼の狼のような全身の神経が言っているのだ。警戒せよと。

 

ハーロック

「…………ベルナデット。どうやら、話の続きは後で聞くことになりそうだ」

 

 キャプテンハーロックも同様に、宇宙に渦巻く怨念の災禍を感じ、その鷹のような眼光を鋭くさせている。宇宙の海は、彼の海だ。それは、どの宇宙でも変わらない。そして、宇宙に災いと呪いを撒き散らす存在は……彼の敵だ。

 

 皆が皆、一様に虚空を睨め付けている。ある者は敵意、ある者は恐怖。ある者は懐旧。それにある者は殺意。皆が皆、それぞれの視線で彼女を迎えている。そして、

 

 真空の宇宙空間に、その怨念は渦巻いた。まるで時空を、次元を裂くように畝りを上げ、存在感を増していく。やがて、黒い翼が宇宙空間に現出した。

 

ライラ

「……よりによって、この場所でなんてことを」

 

 鴉のような漆黒の翼。血染めの髑髏。邪霊機アゲィシャ・ヴル。それに傅くように、もう一機。

 

紫蘭

「…………」

 

 ニアグルーズ。青き邪霊機もまた、ライラを守るように立ちはだかっている。

 

マーガレット

「…………」

 

 シグルドリーヴァは、無言でその銃口を虚空に構えていた。重力、密度、時空の歪み。計器が示すその“狂い”に狙いを定める。そして、彼女らの現出と同時、寸分の狂いもなくミサイルの雨を叩き込んだ。

 

紫蘭

「…………!」

 

 アゲェィシャ・ヴルを守るように、ニアグルーズがその弾頭全てを受け止める。火薬の弾ける爆炎の中、血涙のように眼光を光らせ青き邪霊は、シグルドリーヴァを見据えている。

 

マーガレット

「紫蘭…………!」

紫蘭

「……………………」

 

 無言のまま、ニアグルーズが舞った。飛び上がり、シグルドリーヴァの眼前まで一気に距離を積める。それは火力支援機であるシグルドリーヴァのレンジではない。だが、シグルドリーヴァには“右腕”がある。

 

マーガレット

「今日こそ、貴方を!」

 

 ここでもう一度、殺してあげる。それが、自分にできる唯一の愛の示し方だ。こんな、醜いゾンビみたいな姿にされてしまった恋人を、ここで介錯する。そのためにマーガレットは、“右腕“を振り上げる。ニアグルーズの拳と。シグルドリーヴァの拳。2つの拳が激突したその時、

 

 

——今宵ぞ、今宵ぞ——

 

 どこからか、詩が聴こえた気がした。

 

 

アムロ

「なんだ、この詩は……?」

 

 アムロの脳に、それは響いていた。重くのしかかるような重圧感。それは、およそ人間のものではない。アムロがこれまで経験したもので言うならば、最も近いのはかつて、木星でジュドーやシャアと共に戦った巨神。

 

シャア

「恐怖……? 呼び戻す?」

 

 その歌が何を意味しているのか、彼らには理解できない。しかし、たしかに何者かが歌っているのだ。

 

ラ・ミーメ

「これは……!?」

ハーロック

「ラ・ミーメ?」

 

 アルカディア号の艦内にも、その詩は響き渡っていた。まるで呪い歌。その不気味な独唱に思わずラ・ミーメは肩を震わせ、膝を抱えてしまう。

 

ラ・ミーメ

「……私の故郷、アロサウルス星には言い伝えがあります。黄金の女神の伝説。全てを焼き尽くすワルキューレの火。その歌に、これは……」

オルガ

「似てるっていうのか。違う世界の、違う星の歌だぞ?」

 

 あまりにも不可思議な、あり得ないと言いたくなる現象。しかし、ラ・ミーメのこの震えようは冗談ではない。

 

エウロペ

「何だ? 何が、起きている?」

 

 エウロペの周辺に集まっていた木星軍の兵士達も、その異変に気付き狼狽えている。だが、彼らも木星戦役を潜り抜けた強者だ。その唄が聞こえる方面にビーム・ライフルを構え、周辺への警戒を強めながら木星軍のモビルスーツ隊はおそるおそる、歩みを進めた。

 

エウロペ

「宇宙に唄が聞こえるなど、あり得ない……何だというのだ」

 

 エウロペのアマクサが、モビルスーツ隊の先頭に立ち踏み込んだ。唄声は、宇宙空間には本来響かない。音のない真空空間の中で唄が聞こえるということは即ち、そこには振動する何かがあるということ。エウロペはモビルスーツの足で月面を踏み進めながら、それを確かめていた。だが、

 

トビア

「待て、ダメだ!?」

 

 踏み入れてはならない領域。人智を超えた何か。そういうものが介在していることをトビアは、本能的に悟った。だからトビアは叫ぶ。だが、その声がエウロペらに届くより早く……。

 

 斬。

 

 垂直に振り下ろされた刃が、随伴するバタラの一機を斬り捨てる。瞬間、バタラは真っ二つにバラけそして、砕け散ると共に爆炎を上げた。

 

エウロペ

「なっ!?」

 

 見えなかった。敵の存在が。それは、18m級のアマクサのコクピットからは知覚できない攻撃。何が起きているのか、エウロペにも、周辺の兵士達にもわからない。ただ、メインカメラの死角……全天周モニターで360°をクリアに見せて尚、どこから来るのか知覚するより速く繰り出される斬撃が、木星軍のモビルスーツを次々と斬り捨てているのだ。

 

木星兵

「お、奥様っ……ヒィッ!?」

 

 知覚できない攻撃の数々に悲鳴を上げるアマクサのパイロット。そしてその時、彼の視界にそれは、はっきりと映った。

 

骨嵬

「……………………」

 

 それは、骨だ。甲冑を着た骸骨。5mほどの……ユウシロウ達が乗るTAほどの大きさしかない何か。

 

「…………!?」

シャア

「なっ…………!?」

 

 ゾクリ。その姿を視認した誰もが、感情を泡立たせた。モビルスーツやスーパーロボットに比べれば、それは遥かに小さい。だが、その小さな全身には、幾百、幾千年分の恐怖と呪いが詰まっている。

 

アムロ

「悪魔か、鬼だとでも……言うのか?」

三日月

「……やばいな、あれ」

 

 誰よりも鋭い感覚を持つアムロや、野生の狼のような感性を有する三日月にも伝わる。いや、彼らのように純粋な感性を持つものほど、それの異様さはダイレクトに伝わるだろう。

 恐怖とは、生命の根源にある衝動なのだから。

 

ライラ

「骨嵬……。ムゲがこの地に施していた、ガサラキの封印が解けてしまった」

 

 赫い邪霊機に乗る少女は、その骸の武士を忌々しげに見つめていた。その視線に気付いたかのように、鬼は邪霊機へと首を向ける。

 

紫蘭

「…………!」

 

 シグルドリーヴァと殴り合っていたニアグルーズが飛び跳ね、アゲェィシャ・ヴルの前に出た。まるで、姫を守る守護騎士のように。

 

マーガレット

「紫蘭!?」

 

 無視された。紫蘭に。たとえ骸で作られた操り人形だとわかっていても、よりによって自分が紫蘭に無視された。その事実はマーガレットの胸中にドス黒いものを生み出しそして、マーガレットはミサイルの銃口を赤き邪霊機に向ける。

 

マーガレット

「お前……! お前が!?」

 

 お前が、紫蘭を。許せない。殺してやる。その血のような赤い体躯と鴉のような黒い翼を持つ邪霊機目掛け、マーガレットはありったけのミサイルを撃ち込んだ。だが、それは届かない。鴉の翼が大きく翻り、マーガレットの弾丸を悉く弾き落としたらだ。

 

ライラ

「今は、お姉さんと遊んでる時間はないの。よりによってこの場所を踏み荒らすなんて……やっぱり人間ってどうかしてる」

 

 そうライラが呟き、挑発的な笑みをマーガレットに送った。だが、ライラはすぐに自身へ降りかかる別の殺気に身構え翼を閉じる。見れば2機の邪霊機の周囲を赤と白の砲台が飛び回り、包囲していた。

 

シャア

「君はどうやら、何かを知っているようだな!」

アムロ

「クガイ……ガサラキ。たしかにそう言った。あれは何だ!?」

 

 サザビーとνガンダム。2機のファンネルによる波状攻撃。小型端末が縦横無尽に飛び回り、ライラと紫蘭の行手を遮る。逃げ道を塞ぐように繰り出される無数のファンネルに、ライラは舌打ちする。

 

ライラ

「あなた達が知る必要はないわよ。だけど、そうね……せっかくだから行ってみれば?」

 

 クス。小さく少女が笑ったのを、マーガレットは聞き逃さなかった。それと同時、アゲェィシャ・ヴルは手にした剣を真上で翳す。それからライラは、小さな声で何か、呪文のような言葉を紡いでいた。

 

ライラ

「カ・ラナキラ,エア,エコル,エウア,エアヒ,ナウヒ,クマカイア……ペペナ・ペレ!」

マーガレット

「え……?」

 

 瞬間、マーガレットは気の抜けたような声を上げる。そして次の刹那……この漆黒の宇宙には決してあり得ない色の輝きが、この月に広がっていく。極光の光。オーロラの光。オーロラの中には何重にも別の色が重なり、複雑な模様を呈している。それはどこか、月光色の羽根を持つ蝶のようにマーガレットの目には映った。

 

ハーロック

「これは……!?」

トチロー

「空間位相……次元振動。やばいぞハーロック! この空間ごと、あの光の中に呑み込まれる!?」

 

 呑み込まれる。その先に何があるのかなどわからない。

 

ハーロック

「やむを得ん。各機を回収し、全速離脱!」

トチロー

「無理だ! あの光、重力を伴ってやがる!?」

 

 全てを吸い込むブラックホール。それに近い性質を、あの光は有している。この距離では逃げられない。トチローの叫びに、オルガは苦々しく舌打ちした。

 

オルガ

「まだだ……まだ止まれねえ!?」

 

 

 

 

 その光は、アルカディア号のブリッジ以外からも視認できるほどに強い光だった。ともすれば、目をやられかねないほどの極光。それをカンナ・ヘリオトロープは、マーガレットに充てがわれた部屋の中で感じていた。

 

カンナ

「マーガレット……?」

 

 全身を貫く悪寒はなんだろう。わからない。ただ、今この瞬間にとても良くないことが起ころうとしている。それだけは、理解できる。うずくまるカンナ。その小さな手を、また小さな手が握る。

 

アトラ

「大丈夫。怖くないよ」

 

 アトラ・ミクスタもこの異様な光を感じていた。だが、それでもアトラは信じている。

 

アトラ

「マーガレットさんは、きっと無事。だから、大丈夫」

カンナ

「…………」

 

 マーガレットだけでなく、こうして自分に手を差し伸べてくれる人がここにはいる。そのことがカンナを戸惑わせる。それは、この非常事態に感じるのが少し不思議なくらい温かい感情だった。

 

カンナ

「マーガレット……」

 

 帰ってくる。そう、信じる。口にはしないが、カンナはそう決意し、アトラの手を握り返した。その様子に、アトラはどこか鉄華団の年少組を思い出して笑みを溢す。

 

アトラ

(信じてるからね、三日月……)

 

 アトラもまた、信じていた。最愛の人ときっと、無事にまた会えると。

 

 

 

 その光に呑み込まれる感覚。それは、トビアや獣戦機隊にとってははじめてのものではなかった。

 

雅人

「忍、これ……!?」

「ああ、でもどういうことだ!?」

 

 何故あいつが、この翅を広げる力を持っているのだろうか。いや、これは本当に忍達の知るそれと同じなのか。疑問は尽きない。だが、自分が何に呑み込まれているのかは、理解できる。

 

トビア

「これ……オーラロード!?」

 

 オーラロード。かつて、岩国に現れたリュクスが開き、そしてエイサップ鈴木により再び開かれたバイストン・ウェルへの道。その感覚と、今感じているこの光はとてもよく似ている。

 

ジュドー

「どうなっちまうんだよ、これ!?」

トビア

「とにかく、みんなアルカディア号から離れないで! あの中で迷ったらたぶん、二度と戻れない!?」

エウロペ

「クッ……!?」

 

 部下の仇をせめて。アマクサがビーム・ライフルを構えた瞬間にはもう、あの骸骨武士はいなかった。それを追おうとするアマクサ。だが次の瞬間、極光はさらに勢いを増して周囲のものを吸い込んでいく。その重力に一瞬、アマクサは足を取られてしまった。だがフックシールドを伸ばし、トビアのクロスボーン・ガンダムがアマクサに食い込ませる。

 

エウロペ

「海賊、なぜ助ける!?」

トビア

「あんたが、ベルナデットの大事な人だからだろ!?」

エウロペ

「ベルナデット……?」

 

 ベルナデット。それはエウロペにとっては亡き夫クラックス・ドゥガチの、前妻。つまりテテニス・ドゥガチの母の名だ。それが出てきて一瞬困惑するが、すぐに悟る。

 

エウロペ

「そうか、テテニス…………」

 

 あの子らしい偽名だと思う。テテニスをベルナデットと呼ぶこの海賊に、少しだけ好感を覚えた。だからエウロペは、トビアに従うことにする。

 

トビア

「エウロペさん、あんたを死なせたりなんかするもんか。そう、ベルナデットと約束したんだ!?」

 

 右腕でアマクサを掴み直すと、クロスボーン・ガンダムはシザー・アンカーを射出した。アンカーをアルカディア号に絡ませ、オーラロードの中を泳ぐ。見ればアルカディア号側も、各機をどうにか回収しようとアンカーを出し、バルバトスやF91、νガンダム、サザビー、ダブルゼータ、シグルドリーヴァはそれに捕まっていた。唯一、ダンクーガだけはアルカディアと並走する形でいる。

 

マーガレット

「紫蘭……」

 

 気付けばライラと紫蘭は、もうどこにもいなかった。また、殺せなかった。それは自分の甘えだ。未練だ。マーガレットは自責に唇を噛み締めていた。

 

マーガレット

「あの子……」

 

 この光を生み出す直前、どこか懐かしい言葉を紡いでいた気がした。細かな訛りやイントネーションこそ違うが、あれはハワイ語に似ている。生前の母が、よくハワイの民謡を歌っていたのを憶えている。だから、似ていると感じたのかもしれない。だが、

 

マーガレット

「あの子は……何者なの?」

 

 一度過ぎった疑念は、マーガレットの殺意に小さなしこりを残していた。

 

 

ラ・ミーメ

「あ、ああ……!?」

 

 光の航路を、アルカディア号は往く。この艦は、自由の旗を掲げる艦だ。こんなものでくたばるものか。キャプテンハーロックは光を見据え、仲間達に号令を出す。

 

ハーロック

「全艦、全機、対ショック姿勢を急げ! この先に何があるかわからんぞ!?」

トチロー

「ハーロック、お前……」

 

 しかし、ハーロックの瞳にどこか、少年のような冒険心がぎらついているのを、その隣で大山トチローは見た。彼以外の人間ならば見逃してしまうだろう、小さな心の昂り。それは、トチローも感じているものだ。

 未知なる航海。その新たな航路。それに冒険心を激らせない船乗りがどこにいるというのだろうか。

 

トチロー

「……ともかく、今は自分と仲間の命を守るのが先決だ。みんな、気を引き締めろ!」

 

 

 かくして、その光の先に待つものは……。




次回予告

みなさんお待ちかね!
宇宙へ行ったマーガレット達が大変なことになっているその頃、地上でも大変なことが起きています。
なんと! シンボルの命令で豪和総研を襲撃したミハルは、ユウシロウの真実を知ってしまうのです!
果たして、ユウシロウとは何者なのか。
そして待ち受けていたのは恐怖を呼び起こす存在だったのです!

次回
「豪和憂四郎」にレディ・ゴー!
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