スーパーロボット大戦VB   作:元ゴリラ

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第26話「桜花嵐(後編)—MY FATE—」

—???—

 

 

 エイサップ鈴木がリーンの翼の導きの中で見たのは、激しいの雨が降る景色だった。どこか懐かしく、しかし見慣れたそれが岩国飛行場前のターミナルであることに気付くと同時、聞こえてきたのは男の声だ。男は金髪と青い瞳を持つ美丈夫で、その対面には女がいる。

 

アレックス

「必ず離婚して帰ってくる」

 

 対面の女はしかし、そんな男を責めるような瞳で睨んでいる。

 

敏子

「誰がそんなこと信じますか。お腹の子は降ろします!」

アレックス

「それだけはやめてください!」

敏子

「あなたが本国の奥さんと離婚してくれなかったら、お腹の子は父なし子になってしまうのよ! 3ヶ月経ったら、お腹の子は6ヶ月よ!」

アレックス

「必ず離婚して戻ってくる! 約束する!」

 

 降りしきる雨の中で口論する男女は、周囲の注目の的になっている。その光景を、ナナジンの中でエイサップ鈴木は呆然と見つめていた。

 

エイサップ

「親父……お袋……?」

 

 と、ナナジンから舞い落ちた一枚の羽根が風に乗り、アレックスの目の前へと降りていった。ひらひら、ふわふわと舞い落ちる羽根をアレックスが掴む。

 

アレックス

「この羽根に誓って!」

 

 だが、敏子はリアリストだった。

 

敏子

「そんな子供騙し!」

アレックス

「偶然にしても羽根は本物だ。信じてくれ!」

 

 それからも口論は続くがしかし、互いに納得できないまま時間がきてしまう。アレックスの乗る航空便の時間が来てしまう。金髪の青年は踵を返し空港へ向かっていくが、しかし最後に女性へ振り返り言うのだ。

 

アレックス

「いいですね敏子さん、私はすぐに戻ります!」

 

 そう言って、本国……つまりはアメリカへと戻るアレックス。彼はアメリカ軍人であり、国に尽くす義務がある。それを敏子も本心では理解しているのか、言い返す言葉が出なかった。

 

敏子

「うぅ、うぅぅぅ…………!」

 

 その代わりに敏子の口から漏れるの音は、、ただただ啜り泣く、嗚咽の音。それからおよそ一年弱の後に誕生することになる一人息子のエイサップは、その光景をただ見ているしかできないでいた。

 

エイサップ

「母さん……」

 

 そんなエイサップのナナジンを掴むのは、オウカオー。

 

サコミズ

「オーラロードで迷えば生き死ににもならんぞ!」

 

 わかっていた。これはリーンの翼が見せる過去の光景。やがて光が立ち込めればまたそこは、別の景色へと変わる。

 

エイサップ

「はい……!」

 

 エイサップは覚悟を決め、前を向く。もう地獄のような戦場も、自分が生まれる前の光景まで見せられたのだ。ならば、次は……。

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

 

 サコミズ王の眼前に広がった景色は、燃える島だった。島を包囲するように巡洋艦が海を埋め尽くし、陸地を制圧せんと歩兵が大挙する。

 

サコミズ

「こ、これは……」

エイサップ

「アメリカ軍に……沖縄?」

 

 その島から舞い上がる無数の羽根。そのひとつに触れた瞬間、イメージがエイサップの中に広がりはじめた。

 列を組み、非難する女性達。次の瞬間、女性達が爆発の中に飲み込まれる光景。

 

 「皇軍である! 皇軍である!」

 そう叫び、狂乱の中で死に絶える兵士。

 

 防空壕の中で啜り泣く子供達。

 

 「おっかぁぁぁぁっ!」

 特攻兵が、アメリカ軍のB-29へ突っ込んでいった。爆炎の中に消える命。

 

 そんな、幾つもの悲劇が。惨劇が実感を伴って浮かんでは消えていく。

 この羽根は、命の羽根。生を全うすることすら許されなかった命達の、断末魔の悲鳴。

 

エイサップ

「こんな……こんなことが、現実に日本で?」

 

 事実としては知っていた。だが、現実としてではない。本や映画、そういった形で切り取られた歴史としてではない過去の現実。それがこの燃える沖縄。

 エイサップは、そしてサコミズはその光景を呆然と眺め、そして。

 

サコミズ

「そんなことで……そんなことで日本を狂わせたかぁっ!?」

 

 その現実を生きた者にとって、この現実は決して許すわけにはいかないものだった。

 

エイサップ

「サコミズ王だって、特攻する気だったのでしょう!」

サコミズ

「沖縄で決戦をやっていると知らされていたからだ! しかしこれは軍隊の決戦ではない!」

 

 サコミズ王の目に映るのは、戦火に晒された若者達だった。まだ20にも満たないであろう少年兵。学徒動員。戦いに出る必要のない人間までもが駆り出され、死んでいく光景。

 そんなものは、

 

サコミズ

「戦争ではない!」

 

 サコミズ王にとって何よりも惨いのは、この状況を作り出したものは鬼畜米英と教えられていた敵だけではなく、明らかに日本軍のやり方がそうさせていることだ。

 「沖縄県民には深い慈悲を持っていただきたいとの伝聞、送信完了」そう言う兵士のすぐ隣には、上着を脱いだ士官が正座している。すぐ手元には、切腹用の小刀。

 それが何を意味しているのかわからないサコミズ王ではなかった。

 

サコミズ

「無惨なり、女・子供まで火薬の中に放り込むとはァッ……お、ぉぉぉぉぉ!!」

 

 徹底抗戦。その命令だけ出して軍は機能を停止し、状況は混乱している。それが、戦う必要のない命さえも奪う事態に陥らせている。

 それは、許せない。我慢ならない。

 そんなことのために自分は、死を覚悟して桜花に乗ったわけではない。

 これは、裏切りだ。愛する祖国からの。

 リーンの翼に導かれるように、沖縄の島から舞い上がる羽根。その羽根のひとつが、サコミズ王の手に触れた。瞬間、サコミズ王は理解する。この羽根は、戦火に晒されて生まれることすらできなかった水子なのだと。

 

サコミズ

「おお……死にゆくことさえできなかった命の色……苦しい、それは苦しかろう……!」

 

 生まれて、生きて、死ぬ。全ての生命がそうであることができないまま死んだ命はどこへ行けばいい。そんな生命を次々と生み出してしまう戦争というものを、どうすればいい。

 そのために命を燃やした無念に、どう報いればいい。

 

サコミズ

「グウウ……この身を引き裂かれるような思い。これが戦争の実感なのか。これはあってはならぬ! あってはならぬことだ!」

 

 だから叫ぶ。サコミズ王は。

 

エイサップ

「サコミズ王!」

 

 しかしエイサップには、そのサコミズ王の叫びは、慟哭は危険なものに見えた。サコミズ王が言うように、これはあってはならない。しかし、その怒りのままに剣を振るうことは、さらなる悲劇を呼んでしまう。そういう直感が働いた。

 

サコミズ

「この苦しみ、東京にいる俗物達にも思い知らせる!」

エイサップ

「!?」

 

 そして、今。

 2人は現代……未来世紀62年8月の東京に戻ってきていた。

 

 

…………

…………

…………

 

 

 

—東京湾—

 

 

 

エイサップ

「ここは……東京。東京湾です!」

 

 

 東京湾上に突如出現したナナジンとオウカオー。エイサップの言葉にサコミズ王は驚愕の声を上げる。

 

サコミズ

「何ィ!? あれが関東平野だとォッ!」

 

 オウカオー越しに見える東京湾の向こうに広がるのは、一面に聳え立つビル街。しかしその多くは傷付き寂れ、見渡す限りに広がる廃墟の山。

 新宿で起きたデビルガンダム事件を筆頭に、東京はここ1年でかなりのダメージを受けている。ホウジョウ国が今まさに起こしている動乱もその例外ではない。しかしそうでありながら、サコミズ王の驚愕は別のところにあった。

 

サコミズ

「緑が全く見えない! これがあれだけの死者を出した結果だと言うのか!?」

 

 サコミズの知る昭和日本と未来世紀の日本では、その様相がまるで違うのだ。

 サコミズ王は一度、アマルガン・ルドルによって誅殺されかけた際、一瞬だけだがこの地上の景色を見ることができた。その時は戦争の爪痕こそひどかったが、サコミズの知る日本の名残を残していたし、だからこそ迫水真次郎は、帰りたくなったのだ。

 しかし、今はどうだ。

 

サコミズ

「こ……これは許せん。許せんぞ!!」

 

 オウカオーは両手に握る、二振りのオーラソードを掲げて飛ぶ。ビル街へ向かって。

 

エイサップ

「何をする気なのです!?」

 

 今のサコミズ王に武器を持たせてはいけない。エイサップはそれを直感的に理解し、オウカオーと対峙する。

 

サコミズ

「許せるかぁっ!」

エイサップ

「ダメです!」

サコミズ

「何がぁっ!!」

 

 だが、地上に出たオウカオーのパワーは尋常なものではなかった。鍔迫り合いながらもナナジンは次第に押されていく。そのパワーは地上に出たオウカオーの出力上昇なのか。或いはサコミズ王のオーラ力所以のものなのか。尤もエイサップは、そんなことを考えている余裕はなかった。

 

サコミズ

「リーンの翼は宇宙世紀だけでなく、沖縄の命、大陸・半島の命も吸った。その力を以って、武力を使うものを成敗する!」

エイサップ

「グッ……!」

 

 二振りのオーラソードはナナジンを突き飛ばし、しかしナナジンは負けじとそれを追う。

 

エイサップ

「そ、それでは昭和の日本軍と同じでしょう!」

サコミズ

「リーンの翼はオウカオーの力と共に、私を地上界へ導いてくれた。ならばこの力は、使うことができる!」

 

 リーンの翼。エイサップの沓とサコミズのサンダル。二つのそれが共鳴して起きた摩訶不思議がサコミズ王をこの場所へ導いた。それはサコミズ王の願いであり、過去の戦いで死んでいった命達へ報いるためでもあると王は言う。だが、それはエイサップにとっては詭弁でしかない。

 

エイサップ

「それは違います。思い込まないでください! 死んで行った者は過去なんです。過去の力は、振るっちゃいけない!」

 

 ナナジンの青い機体が、仄かに赤く変色していた。それは、ナナジンもまたリーンの翼の導きで過去を吸収したからだろうか。あるいは、エイサップ自身のオーラ力がそうさせているのだろうか。

 サコミズは視界を真っ赤に染めながらも、そのナナジンの変化に気づいていた。だが、それを認めるわけにはいかない。ナナジンのオーラ剣が、オウカオーに迫る。

 

エイサップ

「力とは未来を築くために、振るうものだ!」

 

 だが渾身の一打を剣で受け止めたオウカオーの蹴りが、ナナジンに炸裂する。それでも、ナナジンは怯まない。オーラソードを赤く燃やし、オウカオーへ振りかぶる。全ては、ここでサコミズ王を止めるために。

 だが、その一撃は、オウカオーの剣に受け止められてしまった。

 

サコミズ

「ならば滅せよ。貴様もリーンの翼の一片となれ!」

 

 オウカオーの剣もまた、炎を纏い燃え上がる。その勢いのまま振るわれる剣ナナジンを突き飛ばし、そして大きく引き離した。

 

サコミズ

「うわぁっ!?」

エレボス

「エイサップ!?」

 

 衝撃でキャノピーが揺れ、エレボスが叫ぶ。

 

サコミズ

「私はリーンの翼の意志を以て、地上人へ鉄槌を振るう! よって、私を止められるものではない!」

 

 突き飛ばされたナナジンを一瞥し、王は叫ぶ。そして、今まさに地獄の戦場と化している市街へ向かいオウカオーは飛び去っていった。

 

エイサップ

「クッ……。サコミズ王!」

 

 体制を立て直し、ナナジンも飛ぶ。その時だった。深緑のオーラバトラーが空を舞い、ナナジンへ接近する。

 

ショウ

「エイサップ、無事か!」

エイサップ

「ショウさん!」

 

 ヴェルビンのショウ・ザマだ。ナナジンはヴェルビンと合流し、エイサップは深く息を吐く。

 

エイサップ

「ショウさん、サコミズ王が市街へ行きました。このままだと……!」

ショウ

「ああ、今みんなも、ホウジョウ軍と戦ってる」

エイサップ

「ホウジョウと!?」

 

 エイサップ鈴木が地上へ辿り着くよりも前に、既に東京は戦場になっていたのだ。

 

ショウ

「急いでみんなに合流しよう。このままだと、何が起こるかわからない!」

エイサップ

「はいっ!」

 

 

………………………………

第26話

「桜花嵐(後編)

………………………………

 

 

—東京湾/フガク艦内—

 

 

 

 コドール女王は焦っていた。サコミズ王の帰還。王がオーラロードの中で迷ったと考えて行動を起こしたコドール女王にとって、この事態は非常事態であるといっていい。

 

コドール

「お、王は地上に出て聖戦士に……」

 

 聖戦士伝説は、ヘリコンの地に根深く語られている。故に、聖戦士という存在への畏怖をコドールは……いやコドールだけではない。バイストン・ウェルに住むコモン人はもれなく、その感情を持っている。

 だが、サコミズ王から実権を奪う。コドール・サコミズを唆した地上人のアメリカ人が唱えたその計画はもう始まってしまっている。今更、やめるわけにはいかない。

 パブッシュのエメリス・マキャベルが自分達の艦に戻り、レンザンのガルン司令がホウジョウ軍へ帰還し同盟は結ばれた。今、動かなくて何が女王かという意地も、コドールにはあった。

 

コットウ

「何、それは本当なのか!?」

 

 遠くで、コットウ・ヒンの怒鳴る声がする。コドールは「何事か」と声を荒げながら促すと、コットウは鎮痛な面持ちでコドールに耳打ちする。

 

コットウ

「キントキが……ショット殿が墜ちました」

コドール

「何ッ!?」

コットウ

「落としたのは、地上人の聖戦士……ショウ・ザマとその仲間達とのことです」

 

 ショウ・ザマ。西の大陸で聖戦士と呼ばれた地上人。反乱軍に加担し幾度となく我が方を苦しめた敵とその一派までこの戦いに介入している。そえは、コドールにはやはり面白くない報告ではあった。

 

コドール

「だが……そうか。ショウ・ザマがいるならば、いっそのこと……」

 

 王とショウ・ザマ。その同士討ちを誘うのも面白い。どの道、ここまで来てサコミズ王の言いなりになるのは面白くない。

 

コドール

「よし……カスミとムラッサ。それにレンザンのガルン司令にも通達しろ。動く時が来たと」

 

 既に賽は投げられている。コドールにはここで立ち止まるという選択肢は、存在しなかった。

 

 

 

…………

…………

…………

 

—東京—

 

 

 東京の街に突如現れたオーラバトラー部隊。その存在は東京を、ひいて日本を大混乱に陥れていた。科学要塞研究所から日本防衛のために出撃した特務自衛隊のTA部隊やビューナスA、ボスボロットも応戦に出ていたが高速で空を飛び回るオーラバトラーは、彼らには手に余る相手だった。

 

村井

「9時の方向よりオーラバトラー3機!」

北沢

「TAは歩兵だぞ。空の敵相手にどうしろってんだよ!」

 

 管制室から聞こえる村井中尉の声に、北沢大尉が下を打つ。

 

高山

「フォワードはビューナスAに任せるしかない。我々は民間人の救助を最優先に動く!」

 

 特務自衛隊のTAは高性能だが、その本質は歩兵である。今必要とされる戦力はオーラバトラーを相手に空中戦ができる機体だ。自衛隊も戦闘機やベース・ジャバー付きのジェガンを展開しているが、問題はオーラバトラーという機体の恐るべき高機動だ。

 

ジュン

「光子力ビーム! フィンガーミサイル!」

 

 唯一の空戦能力を有するビューナスAと炎ジュン。しかし、ホウジョウ軍のオーラバトラー・ドラムロはビューナスの攻撃をバリアで防ぎ、オーラバルカンで距離を取りながらビューナスをジワジワと追い詰めていく。訓練では、ベース・ジャバーに乗ったジェガンとも戦ったことのあるジュンだが、オーラバトラーの機動性はそれとは訳が違う。

 

ボス

「このぉ〜よくもジュンちゃんを!」

 

 そんなドラムロ目掛けて、ボスボロットは投石で応戦していた。ゴツゴツした石はしかしドラムロの剣に弾き返され、逆にボスボロット目掛けて飛んでくるのだった。

 

バカラス

「アホー! ボスのアホー!?」

ヌケ

「ボシュ〜〜。俺たちじゃ無理でしゅよぉ〜!」

ボス

「馬鹿野郎! 鉄也も兜もいねえ今、俺達がやらなきゃならねえんだよ!」

 

 自分の投げた石から必死に逃げ惑いながら、ボスが叫ぶ。と、踵を返したボロットは咄嗟に手に持った金属バットで、石を打ち返した。

 

ムチャ

「やったぜホームラン!」

ボス

「へへっ、ざまあみろってんでぃ!」

 

 しかし、咄嗟に打ち返したボスは、石の飛ぶ方向を意識していなかった。石はオーラバトラーを華麗にスルーしビューナスAにゴツん。

 

ジュン

「キャァッ!? もう、ボス邪魔しないで!」

ボス

「あわわわわ、ゴメンジュンちゃーん!?」

 

 戦局は、彼らの到着するその時までホウジョウ軍の優勢だった。

 そう、その時である。

 

ホウジョウ兵

「な、何だ!?」

ホウジョウ兵

「あれがニッポン軍の新兵器なのか? ヤマトとかいう!」

 

 ホウジョウの兵士たちの眼前に飛び込むのは、巨大な髑髏の旗。髑髏。即ち死を連想させる模様を船体に大きく描いた海賊艦アルカディア号。その巨大な艦の登場に、彼らが一様に目を見張ったのは。

 

ラ・ミーメ

「照準、よし!」

ハーロック

「主砲、一斉発射!」

 

 ハーロックの合図と共に放たれる砲撃が次々と、ドラムロを撃ち落としていく。オーラバリアを発現したオーラバトラーは、パイロットのオーラ力によってバリアの出力も上昇する。そして、彼らもこれまで反乱軍と戦ってきた戦士だ。生半可な攻撃はバリアが通すはずがない。

 しかし、アルカディア号のその威容は戦士達を萎縮させた。それは、たった一瞬の出来事だったがしかし、キャプテンハーロックとアルカディア号にとって、その弱まったオーラバリアをごと敵オーラバトラーを撃破するのは造作もないことだった。

 

トチロー

「へへ、なんたって俺たちの艦だからな」

ハーロック

「ああ。各機、敵はオーラバトラーだ。空戦能力の高いスーパーロボットを機動部隊の中心に、モビルスーツ、モビルファイターはSFSの準備が出来次第出撃だ!」

竜馬

「おう!」

 

 

 ハーロックの号令に、流竜馬が応える。それと同時にアルカディア号から出撃した第一陣。ゲッター1、グレートマジンガー、ダンクーガ、ダンバイン、ライネック。続いて風雲再起に騎乗するゴッドガンダム、さらにウェイブ・ライダー形態のZガンダムとGフォートレス形態のダブルゼータ。そしてエクス・マキナだ。

 

鉄也

「ジュン、ボス、無事か!」

 

 グレートマジンガー。空を守る偉大な勇者の君臨は、過酷な戦いを強いられていたジュン達にとっては救いそのものであると言っても過言ではない。

 

ジュン

「鉄也、無事だったのね!」

ボス

「やいやいやい! おいしいところ持っていきやがって!」

鉄也

「フッ、憎まれ口を叩く元気があるなら問題ないか!」

 

 突如現れたオーラバトラーでも、モビルスーツでもない地上のスーパーロボット。その存在は、ホウジョウ兵達の動揺を誘った。

 

ホウジョウ兵

「あ、あれは地上人のスーパーロボットやらか!」

 

 スーパーロボット軍団の力は未知数。一方で此方はドラムロとライデンを中心とした混成部隊。何より、その中に聖戦士のオーラバトラー・ダンバインがいることが彼らを恐れさせる。ライデンのカスミ・スガイはその存在を脅威と感じ、そして次の瞬間には野心が働いた。ライデンはそのスピードでダンバインに迫ると、オーラソードを振り上げる。

 

カスミ

「ダンバインと地上人は手を組んだか!」

マーベル

「バイストン・ウェルの戦いを、地上に持ち込むなんて!」

 

 オーラソードで受け止め、昆虫の腕のように鋭いワイヤークローを射出するダンバイン。しかし、カスミも武者である。オーラソードを使いワイヤークローを絡ませると、今度はダンバインを蹴り上げる。

 

マーベル

「クッ!」

カスミ

「ダンバインの首があれば、出世も夢じゃない!」

 

 事実、ダンバインという存在はバイストン・ウェルでは伝説となっていた。西の大陸で起きたドレイク・ルフトの挙兵。その話は東のヘリコンにも伝わるほどであり、その戦いの中心となってドレイク軍と戦った聖戦士ダンバインの名は、バイストン・ウェルにおいても知らないものなどいないほどである。

 だが、今ダンバインに乗っているのはショウ・ザマではない。マーベルも一流のオーラバトラー乗りであり聖戦士と呼ばれる存在だが、彼女の実力はショウに劣っているのも事実。

 

マーベル

「ここで落ちるわけには……!」

 

 オーラショットを放ち敵を引き離そうとするダンバインだが、さらに数機のドラムロが四方から押し寄せる。フレイ・ボムを放ちながらダンバインを重点的に狙うその光景は戦いというよりもむしろ、狩りとよぶべきものだろう。

 

槇菜

「マーベルさん! このっ!」

 

 エクス・マキナがアシンメトリーの羽根を広げ、ダンバインの援護へと駆けつける。

 

マーガレット

「照準内に入った!」

槇菜

「お願いします!」

 

 右腕に召喚されたハンドガンから、撃ち込まれる銀の弾丸。それはドラムロの右肩を撃ち抜き、オーラソードごと吹き飛ばす。その間に左手に構えたシールドを持って、エクス・マキナはダンバインとライデンの間に割り込んでいく。

 

マーベル

「槇菜!」

カスミ

「邪魔をするかっ!」

 

 カスミの乗るライデンのオーラソードが燃え上がり、エクス・マキナへと振り上げられた。その剣圧は以前にバイストン・ウェルで見た時よりも遥かに強力になっているのを槇菜はその熱で実感する。

 

槇菜

「だけど、まだっ!」

 

 それでも、ナナジンやヴェルビンに比べればマシ。そう槇菜は敵の強さを判断すると、シールドを握る手に力と、祈りを込めた。

 

カスミ

「こ、これはっ!?」

 

 エクス・マキナのシールドが輝きを放つ。それは瞬間的な光。しかし、ライデンに乗るカスミの視界を一瞬でも奪えれば、それで十分。

 

槇菜

「はぁぁっ!」

 

 ライデンがダンバインにしたように、エクス・マキナの蹴りがライデンを襲った。その足だけでも、ライデンを踏み潰せるほどの巨体。質量の攻撃は武者の乗るオーラバトラーを突き飛ばしていく。

 

カスミ

「こ、これが地上人のマシンの力なのか……だが、ダンバインだけは!?」

 

 カスミ・スガイの叫びと同時、ライデンの翼に光が灯る。カスミのオーラ力を吸いライデンもまた、その力を高めているのだ。そして、出力を上げたライデンはダンバインに食らい付く。

 

マーベル

「あぁっ!?」

マーガレット

「しまった!」

槇菜

「まだっ!」

 

 エクス・マキナはしかし、ドラムロに取り囲まれる。まるでバスケットボールの試合のようにエクス・マキナの動きに食らいつくドラムロを、槇菜は引き離すことができないでいた。その間にもカスミはダンバインを捕え、その頭に深くオーラソードを突き立てる。

 

マーベル

「クゥッ!?」

 

 頭部の破損と同時、コクピット内の視界が狭まる。カメラ部分がやられたのだと、マーベルは理解する。そして、敵は死角に入り込んでいるらしい。

 

カスミ

「ダンバイン、獲ったぞ!」

マーベル

「やられる……!?」

 

 マーベルは死を覚悟し、カスミは叫ぶ。だが

そんなカスミの声と同時、さらに戦場へ迫るものがあった。

 

アマルガン

「ダンバイン、聖戦士殿かっ!」

 

 オーラ・シップ・アプロゲネ。反乱軍の旗艦。そこから聞こえるのは反乱軍のリーダー・アマルガン・ルドルの声。

 

マーベル

「アマルガン・ルドル!? あなたまで地上に?」

アマルガン

「マーベル殿か!」

 

 アプロゲネは推力を増し、戦場へと接近する。だが、それを通さんとばかりにホウジョウ国のオーラバトラー部隊は敵をアプロゲネに定めると、オーラバルカンを撃ちまくりアプロゲネへと迫っていた。

 

ミガル

「アマルガン!?」

 

 ドラムロの火力は、旧式オーラシップのアプロゲネの装甲を容易く撃ち破る。しかし、アマルガン・ルドルは退かない。ここでマーベルを、サコミズ王を倒せるかもしれない聖戦士を失うわけにはいかないのだ。

 

アマルガン

「地上へ禍根を残さぬためにも、聖戦士殿を守る。そのためならば、体当たりもよしとする!」

 

 叫び、出力を上げていくアプロゲネ。だが、それを止めたのは、

 

エイサップ

「そんなのは、ダメだ!」

 

 もう一対の、リーンの翼を持つ聖戦士だった。赤く染まった機体色をしたナナジンが、アプロゲネを追い越して敵陣へと斬り込んでいく。

 

槇菜

「エイサップ兄ぃ!」

リュクス

「エイサップ!?」

 

 エイサップ鈴木。彼はオーラロードを突き抜けて、この時間に戻ってきたのだ。そして、ナナジンの青かった機体色は赤く染まっている。まるで、エイサップのオーラ力に呼応するように……或いはリーンの翼が見せた命の灯火を受けて、ナナジンに魂が宿ったかのように。まるで桜花のような赤を宿したナナジン。その存在うを、戦場にありて誰もが注視した。まるで、伝説に語られる聖戦士のように。

 

エレボス

「エイサップ、やっちゃって!」

エイサップ

「地上で戦いを広げるなら、斬るぞ!」

 

 それぞれの声と同時。赤く燃え上がるオーラソードを振り上げたナナジンの斬撃と共に、炎が飛ぶ。渦巻く炎はドラムロを取り囲むように燃え上がりそして、

 

エイサップ

「ハァッ!」

 

 ナナジンの一閃が、炸裂した。

 その一閃が、ドラムロを次々と薙ぎ払う。それはまるで、伝説に記された聖戦士。それそのものであるかのようにアマルガンには見えた。

 

エイサップ

「今です、ショウさん!」

 

 ナナジンのさらに後方から飛び込むものはヴェルビン。ショウ・ザマの、聖戦士の力を体現するマシンは目にも止まらぬ速さでカスミのライデンへと向かっていく。

 

ショウ

「マーベル!」

マーベル

「ショウ!?」

カスミ

「聖戦士だとぉっ!?」

 

 ヴェルビンの深緑の体躯から発露するオーラ力の輝きを、カスミ・スガイは見た。鮮やかで美しく、そして生きた人間のオーラ。コモンでは決して引き出すことのできない命の色をしたオーラ力が、カスミに迫る。

 ショウ・ザマのオーラ力を顕現させたヴェルビンのオーラソードが暁色を纏い、ライデンに迫った。ショウのオーラを間近で見たカスミの脳裏に過ぎるものは、恐怖。或いは畏怖。その感情は剣を鈍らせ、受け止めようと出したオーラソードはものの見事に弾かれ、砕かれる。

 

カスミ

「おぉぉっ!?」

ショウ

「はぁぁっ!」

 

 ライデンを斬り捨て、ダンバインを抱き止めるヴェルビン。かつてショウが愛機とし、マーベルが命を預けた聖戦士の乗機はもはや、死に体と言っても過言ではないほどに傷付き、ボロボロだった。

 

ショウ

「マーベル、無事か?」

マーベル

「ええ、ショウ……ありがとう」

 

 だが、それはマーベルを、ショウの愛する人を守るために負った傷だった。それをショウは、誇らしいとさえ思う。

 

ショウ

(ありがとうダンバイン。マーベルを守ってくれて……)

 

 一方、ヴェルビンとナナジンの登場はホウジョウ軍を怯ませていた。ダンバインのみならず、聖戦士がさらに2人。それはバイストン・ウェルの……こと聖戦士伝説が強く息づくヘリコンの地に生きた者たちにとっては恐怖以外の何者でもない。

 

カスミ

「か、勝てるわけがない……」

 

 機体を損傷し、オーラエンジンの出力にも異常が出ている。無理だ。そう、カスミが呻いた次の瞬間、暗号伝聞がライデンのコクピットにもたらされる。それを開き、カスミは一瞬思考を巡らせた。そして、

 

カスミ

「撤退だ、一時撤退する!」

 

 カスミの号令に合わせて、オーラバトラー部隊が退いていく。それは、今まで無軌道に都市部を破壊していた者達としては鮮やかすぎる退き際だった。

 

エイサップ

「退いた……。そうだ、サコミズ王は!?」

リュクス

「父上も、地上に?」

エイサップ

「ああ。今のサコミズ王は、何をするかわからない……!」

 

 エイサップと共に見た景色。あの光景はサコミズ王に負の力を与えてしまっている。それを剣で実感しているエイサップの言葉を聞き、アルカディア号のラ・ミーメはすぐに索敵を開始した。

 

ラ・ミーメ

「オウカオーの信号を確認。オウカオーは現在、東京駅にいるようです!」

ハーロック

「よし、我々は東京駅に向かい、サコミズ王を止める!」

 

 アルカディア号、それにアプロゲネはキャプテンハーロックの号令に合わせ、東京駅へと進んでいく。その間、アプロゲネのアマルガンはショウとマーベルに着艦を要請した。

 

アマルガン

「聖戦士殿。以前に渡しそびれたオーラバトラーがあります。使ってください!」

マーベル

「そう……。前は補給物資の受け取り前に地上へ戻ってしまったから」

 

 その時に受領できなかった機体。確かに、ダンバインは既に満身創痍。ここ最近の連戦も災いし、これからの戦いについて行けそうもない。

 

マーベル

「……了解したわ」

 

 そう言うと、マーベルはダンバインのコクピットを名残惜しそうにさするのだった。

 

 

…………

…………

…………

 

 

—東京—

 

 

 サコミズ王の駆るオウカオーは、紫紺の四枚翅を広げ空を舞う。その眼下に映るものは、見るも無惨な姿に成り果てた故郷。

 

サコミズ

「な、なんだァ……この有様は」

 

 サコミズ王が特攻に出てから、どれほどの時が経てばこのようになるというのか。コンクリートが敷き詰められた関東平野だったそれはもはや、サコミズ王の知る東京ではない。これは、もはや。

 

サコミズ

「ニューヨークではあるまいがぁぁっ!?」

 

 怒りのままに、オウカオーは二振りのオーラソードを振った。サコミズ王の強大なオーラ力に反応して炎を纏った剣先から放たれる炎の渦。それが次々とビル街を薙ぎ倒していく。その苛烈ぶりは、他のオーラバトラーやこれまで幾度と東京を襲った機械獣、戦闘獣などとは一線を画している。一瞬で次々と崩れ落ちていくビルの数々。怒りのままに剣を振るうサコミズ王の視線にふと留まったのは、そんな中にありながらも昔ながらの……いや、王の生きた時代そのものを色濃く残す建造物だった。

 

サコミズ

「しまった! ここは東京駅!?」

 

 東京駅。空襲で被災しながらも戦後、復興され今日に至るまで不可侵の場所とされてきた日本の聖地。宇宙世紀の戦争やデビルガンダム事件、先のドレイク軍の動乱の際にも奇跡的に被害を免れたそこの屋根を、オウカオーは壊してしまっていた。

 

サコミズ

「ここが東京駅ということは……!?」

 

 近くに、ある。今日に至る日本の惨状を良しとした者が。サコミズ王が最も尊き者と敬う方の居城が。サコミズが視界をぐるりと回すと、たしかにそれはあった。

 やはりそこだけは緑に囲まれ、かつての景観の面影を残している。ならば、話を聞く必要がある。オウカオーは一目散にそこを……皇居を目指し飛び立つが、皇居を目指す途中、背後から迫る熱源を受けて振り返る。

 そこにいたのは、ベース・ジャバーに搭乗したジェガンが3機。ショット・ウェポンやロウリ、金本からモビルスーツというマシンの話は聞いていたので、すぐにサコミズはそれだと思い至った。

 だが、問題はマシンの機種などではない。ジェガン部隊は肩に星条旗のマークをつけていること。そして、サコミズ王のすぐ側には皇居が立ち構えているということだ。

 

サコミズ

「べ、米軍めぇ……! ここは、皇居なのだぞぉぉぉっ!?」

 

 オウカオーの羽根が広がり、ジェガン隊の放つビーム・ライフルを受け止める。帝国軍人の端くれとして、死んでも皇居を傷つけさせるわけにはいかないという意地がサコミズ王にはあった。そして、振り向き様にオーラソードを飾り、爆炎でジェガンを一度に3機、まとめて焼き尽くす。だが、今度は航空戦闘機が2機、オウカオー目掛けてバルカン砲を放ってきた。そんなもので傷がつくオウカオーではない。だが、サコミズ王を驚愕させたのは戦闘機は星条旗ではなく、日の丸を掲げていたことだ。

 

サコミズ

「ひ、日の丸が……皇居を守った特攻兵を攻撃するのかァァッ!?」

 

 オーラフレイムソードの二振りは、航空戦力などものともしない。圧倒的な戦力差にあえなく撃墜されていく日の丸を掲げた戦闘機。その姿はまるで、零戦のようにもサコミズ王には映った。

 

サコミズ

「米国の植民地となった、東京天国など……!」

 

 植民地という言い方は適切なものではない。日米間の同盟条約は現在も続いているが、それは決して支配という構造のものではなかった。だが、それでも。

 皇居を構わず攻撃する米軍を援護し、あまつさえこの国のために命をかけた特攻兵を撃つのが今の日本だと言うのか?

 サコミズの怒りと悲しみはさらなる負の感情を呼び寄せ、思考を連鎖させる。その時だった。

 

エイサップ

「サコミズ王!」

 

 ナナジンが、オウカオーに追いついたのは。

 

サコミズ

「エイサップ鈴木君か。そしてその髑髏の艦はぁっ!」

 

 アルカディア号。エンペラー亡き後、唯一残るVanityBustersの旗艦が、東京の中心地に姿を現す。そして、次々と出撃するスーパーロボット達。その中には、バイストン・ウェルで幾度と死戦を演じたマスターガンダムの姿もあった。

 

東方不敗

「サコミズゥッ! 貴様、何をするつもりだ!」

サコミズ

「東方不敗。リーンの翼は私を導いてくれた。これは天命なのだ! 過去の戦争で歪んだ日本を正すために、リーンの翼は命の嘆きを糧としてくれたのだぁっ!」

 

 そう宣言するサコミズ王。言葉こそ強いがしかし、そこには深い悲しみの心が存在することをジュドーは感じた。

 

ジュドー

「あのおっさん、泣いてる……」

カミーユ

「ああ。無念の心が、あの人を逸らせているんだ……!」

アムロ

「だが、それはエゴだ!」

 

 アムロが叫ぶ。かつて、同じようにエゴで世界を壊そうとした男をアムロは知っている。

 

シャア

「サコミズ王。貴方の心は理解できるつもりだ。だが、その行いはさらなる悲しみを生むだけになる!」

サコミズ

「理解などできようものか! この無念を晴らせぬまま私の魂は、未だ特攻死できぬまま燃えている。そんな私だからこそ、リーンの翼は導いてくれたのだ! 過去の戦争で犠牲になった、全ての命に報いよと!」

 

 オウカオーのオーラは肥大化し、強烈なプレッシャーを放っていた。それはかつて、ジュドー・アーシタがハマーン・カーンに、トビア・アロナクスがクラックス・ドゥガチに感じたものと同質の……そうでありながら、より一層力強く、深い念。

 

リュクス

「父上……!」

 

 そんなサコミズ王の姿を、悲しげに見つめながらリュクスの心はしかし、決まっていた。エイサップの赤いナナジンに寄り添うようにして飛ぶオーラバトラー。反乱軍の主力機ギム・ゲネンのコクピットの中で、リュクスは父を見据える。

 

リュクス

「父上、どうか剣を納めください!」

サコミズ

「そのギム・ゲネン、リュクスか……!」

 

 ナナジンに守られるように翔ぶギム・ゲネン。その動きは悪くないが、それでも素人に毛が生えたようなものだった。それをしっかりと支えているエイサップ鈴木には、やはり好感を持てる。そう思うサコミズだがしかし、それとこれとはもはや別問題だった。

 

エイサップ

「剣をお収めください、サコミズ王!」

 

 ギム・ゲネンの前に出て、エイサップは万が一にもリュクスをオウカオーの間合いに入れないように剣を構えている。サコミズ王もその意を汲みながら飛び回り、決戦の場を制御していた。

 

サコミズ

「見事だよ鈴木君。リュクスに付き添いながらも隙を見せない。いざとなればリュクスの盾になろうと前に出る。やはり君は婿に相応しい」

エイサップ

「な、何をこんな時に!?」

 

 エイサップが叫んだ瞬間、サコミズが前に躍り出た。両手に持ったオーラソードに炎を灯し、ナナジンへと斬りかかる。

 

サコミズ

「全てが終わればリーンの翼の沓もホウジョウも譲ろうと思っていたというのに!」

 

 だが、赤く染まったナナジンに宿るオーラ力は、今のオウカオーにすら拮抗していた。エイサップはリュクスを後ろに下がらせるとナナジンのオーラソードで鍔迫り合い、そして膝蹴りでオウカオーを押し返す。

 

サコミズ

「なんとぉっ!?」

エイサップ

「この赤ナナジンも、パワーが上がっているのか……!」

サコミズ

「アッカナナジンと名付けたか。桜花の!」

 

 赤華七神。奇しくも桜花王と同じ由来を持つオーラバトラーが激しくぶつかり合う。かつてまだ青かったナナジンの時と今のエイサップ鈴木とでは、まるで別人のような圧力をサコミズ王は感じた。それは、リーンの翼が命の羽根を吸い上げ力を増していることも関係しているだろう。だが、それだけではない。

 

エイサップ

「戦いの連鎖で、報いることなんてできませんよサコミズ王!」

サコミズ

「ほざくな青二才!」

 

 口ではそう言うが、エイサップ自身の力も以前とは比べ物にならない程に上がっているのだ。地上で経験した数々の実戦が、そしてショウやマーベルをはじめとした多くの人々との出会いが、エイサップのオーラ力を高めている。

 オーラ力とは生体エネルギーだ。ならばそれを高めるものとは、エイサップ鈴木の心持ちに他ならない。

 

エイサップ

「考え直してください、サコミズ王!」

サコミズ

「私を止められるものではないぞ、未来世紀の日本人!」

 

 オウカオーの背中から展開される薄紫の四枚羽根が大きく広がっていく。バイストン・ウェルでの戦いでは、ここまで巨大な羽根を見せつけることはなかった。

 

ショウ

「サコミズ王のオーラ力も、尋常じゃないぞ!」

トッド

「おいおい、エイサップだけじゃ歯が立たねえんじゃねえか?」

 

 そう言って、トッド・ギネスのライネックを皮切りに次々とオウカオーへ向かっていくスーパーロボット達。その先陣を切るのは、ショウのヴェルビンとマーベルの乗る、赤いウィングキャリバーだった。

 

マーベル

「ビルバイン……使いこなしてみせる」

 

 ビルバイン。アマルガンがショウの為に用意していたオーラバトラー。正確にはこれは、その2号機にあたる。かつて西の大陸で起きた動乱。その際、ナの国で開発されショウに届けられた1号機は太平洋上での戦いで失われた。

 これは、ナの国に残っていた設計図を基に反乱軍で組み上げた機体。オウカオーに拮抗しうる切り札として、再びショウに託されるはずだったもの。

 だが、ショウにはシーラ女王の形見と言うべきヴェルビンがある。限界を超えたダンバインに代わり、今ビルバインを操縦しているのはマーベル・フローズンだった。

 

ショウ

「マーベルなら大丈夫だ。ビルバインの力に振り回されるな!」

マーベル

「ええ、言われなくとも!」

 

 ビルバインは、支援航空ユニット・ウィングキャリバーへの変形機構を備えている。ただでさえ速いオーラバトラーのそれを遥かに凌駕するスピード。ウィングキャリバードの背にヴェルビンを乗せ、ビルバインがオウカオーへと向かう。

 

サコミズ

「そのロケットエンジン、桜花のものか!」

マーベル

「サコミズ王……ここで落としてみせる!」

 

 地上界とバイストン・ウェル。その双方に争いを生む源。ショット・ウェポンを倒した今残る敵はサコミズ王のみ。ヴェルビンが飛び上がると、ビルバインはオーラバトラーの姿に戻り即座にオーラビームソードを展開。背後に回ったヴェルビンと交互にオウカオーへと詰めていく。

 

ショウ

「こんな戦いに意味はないと、あなたはわからない人じゃないはずだ!」

サコミズ

「歴史に意味のない戦いを繰り返させた現代人が、それを言うか!」

 

 しかし、ヴェルビンとビルバイン。両者の同時斬りを二刀流で受け流すオウカオー。サコミズ王の技量もまた、卓越した聖戦士のもの。

 

マーベル

「ショウ!?」

ショウ

「サコミズ王のオーラ力が、どんどん膨れ上がっている!?」

チャム

「それはダメよ! ハイパーしちゃう!?」

 

 ハイパー化。あのサイコガンダムのようにそれを起こす危険をショウとマーベル。それにチャムは理解する。今のオウカオーがハイパー化を起こせば、何が起こるかわからない。

 

トッド

「だったら、その前にやればいいんだよ!」

 

 割り込むように迫るのはライネックだ。緑のオーラバトラーはオーラバルカンを撃ちまくりながらオウカオーへと迫っていくが、しかし四枚羽根を殻のように閉じて防御するオウカオー。地上に出て出力を増したオーラバトラーの攻撃すら、今のオウカオーにはまるで効いていない。

 

トッド

「洒落くせえ!」

サコミズ

「アメリカ人の傭兵風情がァッ!?」

 

 羽根を広げ、その風圧だけでライネックを押し返すオウカオー。トッドだけではない。ショウやマーベル。それにエイサップ、リュクスをも風圧で威圧し、王の貫禄を見せつけるようにオウカオーは舞い上がる。

 

サコミズ

「滅せよ。貴様達もリーンの翼の、一片となれッ!」

 

 オーラ力により発生する炎を剣に纏わせ、それを放つオウカオー。まともに受ければただでは済まない極熱の一撃。

 

槇菜

「ダメです、そんなの!」

 

 だが、炎は届かない。エクス・マキナが前に出て、その盾を構える。槇菜の思いに呼応するかのようにシールドのイメージが広がっていく。セラフィムで構築された羽根の盾が、オウカオーの炎から味方を、街を守っていた。

 

槇菜

「クッ、ウッ……!?」

桔梗

「槇菜ッ!?」

 

 アシュクロフトで援護に回ろうと、ベース・ジャバーを急がせる桔梗。しかし、圧倒的な熱量とオーラ力を以て君臨するオウカオーの重圧が、桔梗の照準を鈍らせていた。

 

桔梗

「これが、特攻兵の圧力なの……?」

 

 それは、命を燃やす熱量だ。サコミズ王がどういう人物なのかは、ここに至るまでに簡単にだが聞いている。昭和日本軍人の生き残りであり、広島、長崎の次に小倉へ落とされる予定だった原爆を防いだ特攻兵。

 歴史に記されることのない英雄。その命は今も真っ赤に燃え続けている。

 命の燃える熱。それこそがサコミズ王のオーラ力である。それを桔梗は、本能的に理解していた。

 

サコミズ

「そこを退け、翼の乙女よ! こんなコンクリートを敷き詰めれば、日本人は窒息してしまうだろうがぁっ!」

 

 サコミズ王は憎々しげにビル街へと舗装された東京の街を見やる。オーラ力で放つ炎はさらに熱を増し、エクス・マキナを襲う。

 

槇菜

「認めてください。これが歴史なんです!」

 

 しかし槇菜は怯むことなく、サコミズ王へ啖呵を切った。

 

槇菜

「このコンクリートで作った、たくさんの集合住宅があったから、全盛期の東京には1300万もの人が住んでたんです!」

サコミズ

「何ィ? 全盛期の!?」

 

 エクス・マキナは炎を受けながらも一歩も退かない。槇菜はこの炎を受けながらしかし、そこからサコミズ王の悲しみと、無念を感じていた。故に、退けない。

 今ここで退いてしまえば、それはサコミズ王の心を認めてしまうことになる。

 

槇菜

「サコミズ王、歴史は続いていくんです。サコミズ王の知ってる日本はもうないのかもしれない。だけど、サコミズ王の守った日本があったから今があって、私もエイサップ兄ぃも、生まれることができた!」

サコミズ

「間違った歴史を、認めろと言うかぁっ!」

 

 だがそれでも、サコミズ王は頑なだった。そんなサコミズ王のオウカオー目掛けて飛ぶ、一振りのマサカリ。まるで昔話の赤鬼のような出立をしたゲッターロボのゲッタートマホーク。オウカオーはそれをオーラソードで切り払うと、改めてトマホークの飛んできた方角を見やる。

 

竜馬

「ウダウダと女々しいこと言ってんじゃねえ! 起きちまったもんはしょうがねえだろうが!」

 

 流竜馬。彼はサコミズの怒りや悲しみを一蹴しオウカオーへ向かっていく。女々しい。面と向かってそう言われたのは、サコミズ王も初めてのことだった。

 

サコミズ

「何がァッ!?」

 

 体格差は歴然。しかしオウカオーは素早く飛び回りゲッター1を寄せ付けない。新型炉心でパワー、スピード共に大幅に向上したゲッターの動きに対し、それ以上の速度を発揮し竜馬のステゴロを翻弄する。

 

隼人

「闇雲に戦うんじゃねえ、竜馬!」

竜馬

「うるっせぇっ! いいかサコミズ! 俺はなぁ、てめえみてえに恨みったらしい野郎が大っ嫌いなんだよ!」

 

 トマホークを振り回すゲッター。その一振りがオウカオーへ届く。だがオウカオーは四枚羽根でトマホークを受け止めると、そこからのぞくカメラアイをギンと光らせそして、ゲッターを蹴り飛ばす。

 

サコミズ

「この恨みに、この無念にリーンの翼は応えたのだ! この力は!」

竜馬

「わけのわからねえもんに頼ってんじゃねえ!」

 

 空中でオーラソードとゲッタートマホークが激しく火花を散らし、ぶつかり合う。体積差は明らかにトマホークが有利。それでも剣圧は、オウカオーが上。サコミズ王のオーラ力により圧を増すオーラの一打に、次第にゲッターは押し込まれていく。

 

サコミズ

「戯れるな野蛮人め、リーンの翼をぉっ!」

竜馬

「それよ。ゲッター線だの嵬だのと五月蝿えやつらと、今のてめえは同じなんだよ! 男なら男らしく、自分の力だけを信じやがれ!」

 

 そう叫んだ瞬間、ゲッターロボが3つのマシンの分離する。急に質量がなくなり、オウカオーは一瞬、虚を突かれたように止まった。だが、その隙を補うように四枚羽根がオウカオーを包む。

 

隼人

「へっ、言うじゃねえか竜馬!」

 

 瞬間、再び合体し今度はゲッター2へ変化したゲッター。ゲッター2の右腕から放たれたドリルハリケーンが、オウカオーへと炸裂した。

 

サコミズ

「何とッ、神風を吹かせるか!?」

隼人

「お前みたいな素早い奴と喧嘩するならまずは、足を止めるのが定石だからな!」

 

 そう言いながら落下するゲッターロボ。それと入れ替わるように、オウカオーへと突撃するのは悪魔の形相を持つガンダム。

 

三日月

「……………………」

 

 ガンダムバルバトス・ルプスレクス。支援ユニットのクタン参型を装備し、急激な速度でオウカオーへと迫る。そしてクタンをパージすると飛び上がり、テイルブレードで風を切りながらロングメイスを構え、ドリルハリケーンの中にいるオウカオーへと突っ込んでいく。

 

サコミズ

「特攻兵か!?」

三日月

「生きて帰るよ。だけど、死ぬ気でやらなきゃあんたには勝てないだろ」

 

 そう言って、ロングメイスを突き立てようとバルバトスが振りかぶる。だがオウカオーはその直前、四枚羽根をさらに広げドリルハリケーンを打ち破り、オーラソードから灼熱を放ってバルバトスを振り払った。

 

三日月

「あいつ……やばいな」

 

 炎。原始的な恐怖を生き物に与えるそれに、三日月は本能的に危機感を覚えて身を退く。しかしその間にも攻撃をやめないのが三日月だ。テイルブレードを振り回しオウカオーを迎撃するが、オウカオーは超高速機動を以て三日月の攻撃射線から離れる。

 攻撃力、防御力、機動力。どこを取ってもオウカオーに隙はない。

 

エイサップ

「サコミズ王……!」

 

 だが、それに追随する力を発揮するのが今のナナジン……アッカナナジンだった。アッカナナジンはオウカオーの超高速機動に並走しながら、剣を交え鍔迫り合う。ほとんど人間の目では追えないレベルの機動をくりかえしながらしかしエイサップもサコミズもその判断は冷静だった。

 

サコミズ

「いい仲間を持ったな鈴木君! 確かにこの戦士達と共にならば、未来を信じることもできよう。だがなぁっ!」

 

 それでは、持たざる者はどうすればいい。

 たった1人で異郷の地へと降り立ち、信仰も思想も胃にする世界で聖戦士などと囃され、その果てに友と信じた者と袂を分ち、そして終生、王としての責務に身を粉にした日々。

 気づけばサコミズ王の周囲には誰もいなかった。バイストン・ウェルに流れ着いたその頃から共にあったコモン人も、何の因果か共に過ごした者達も。王である、聖戦士である以前に男として愛した女も。

 孤独な王が最後に欲したものこそが、帰郷だったのかもしれない。だが、王が信じた祖国は既になく、そしてここにある日本の惨状。

 その憤りをどこへぶつければいい。

 サコミズ王は王でありながら、聖戦士として生きながらずっと、孤独だった。

 そしてその孤独を理解できる者は、もうどこにもいない。

 

リュクス

「父上……」

 

 迫水真次郎の血を分けた唯一の娘は、リュクスはそんな父の吐露に言葉を失っている。

 

ショウ

「サコミズ王……」

 

 そんなサコミズ王の激昂を受け止めながらしかし、エイサップ鈴木は諦めていなかった。

 

エイサップ

「だとしても、これはダメです!」

サコミズ

「何がァッ!」

 

 激しくぶつかり合うアッカナナジンとオウカオー。オウカオーの羽根がより一層激しく広がり、鱗粉のようにオーラを撒き散らす。その鱗粉に導かれるように、戦場に新たな影が迫っていた。

 

カミーユ

「!? ……なんだ、この感じは」

 

 カミーユが感じ取ったものは、どす黒い欲望と野心。あのショット・ウェポンのそれにも決して負けていない黒い感情の渦。

 

ラ・ミーメ

「キャプテン、後方から更に熱源反応。オーラバトラー多数とオーラシップと思われます!」

ハーロック

「ホウジョウ軍とやらか!」

 

 沿岸部より迫る軍勢。それはまさしくホウジョウ軍の旗艦フガク。そして彼らの誇るオーラバトラーの軍勢が、アルカディア号の背後より姿を現したのだ。

 

 

…………

…………

…………

 

 

サコミズ

「コドール、来てくれていたか!」

リュクス

「後妻様!?」

 

 フガクだけではない。フガクはジンザン、レンザンを随伴しさらにオーラバトラーの軍勢が、一団となって東京を埋め尽くしている。その中でも異彩を放つのは、重々しい外観を持つ黒いオーラバトラーだ。

 

カスミ

「このズワァース、なかなかいいぞ!」

ムラッサ

「ショット殿が隠していた切り札。使わせてもらう!」

 

 ズワァース。かつてドレイク軍で使用されたマシンに乗り換えたカスミ・スガイと、同僚の女武者ムラッサだ。

 

沙羅

「あのオーラバトラー……シャピロが乗っていた奴だ!」

「落ち着け、沙羅。シャピロじゃねえ。シャピロはお前がトドメを刺しただろ」

 

 ダンクーガのコクピットで逸る沙羅を、忍が抑える。だが、ズワァースは高性能機である以上に、そういう意味で沙羅とも因縁のある機体。ダンクーガに流れ込む野生の力が、さらに過激に増していく。だが、敵はズワァースだけではない。

 

ガラミティ

「フン、新しい玩具にはしゃいでいるようだが……ダー、ニェット。ホウジョウの奴らに遅れを取るなよ!」

ダー

「おう!」

ニェット

「赤い三騎士の名にかけて!」

 

 レンザンから出撃する赤い三騎士。チームワークでかつてショウを追い込み、以前の戦いでアムロ、シャアと拮抗したオーラバトラー乗りもこの戦場へと繰り出していた。

 

隼人

「どうやら、挟み撃ちにされたらしいな」

竜馬

「ヘッ、上等じゃねえか!」

 

 だが、彼らも疲弊していた。“厄祭戦”の墓場からずっと、ほぼ無補給で戦い続けている。マシンだけの問題ではなく、パイロットの精神力もここが正念場であると言えた。

 

トビア

「やれるのか? 相手はオーラバトラー。機動性はあっちが上だぞ?」

 

 ヘルメットのバイザーを開カフェイン剤を飲み込み、トビアが言う。今までも戦ってきた相手ではある。だが、ホウジョウ軍とのここまでの全面対決ははじめてのことだ。

 

鉄也

「甲児だって、ドレイク軍との戦いでは最前線にいた。甲児がコロニーにいる今、俺達がやるしかないだろう!」

 

 グレートマジンガーでホウジョウ軍の方を向き、鉄也。甲児が戻るまで、日本の……世界の平和を守る使命を託された偉大な勇者。その背中は真っ赤に、燃えている。

 

ドモン

「フッ……。そうだな!」

「ここで負けてちゃ、甲児の奴に笑われちまうぜ!」

 

 鉄也の言葉を合図に、気合を入れ直す戦士達。だが、フガクの様子がおかしいことに三日月・オーガスは気付いていた。

 

三日月

「オルガ、なんかおかしい」

オルガ

「何?」

 

シャア

「この感じは何だ? ホウジョウ軍から感じる気配……これは!」

 

 シャアが何かを悟ったと同時、フガクの主砲が火を吹いた。続いてジンザン、レンザン。さらにオーラバトラー・ライデン達の火球の矢。次々と放たれる攻撃はしかし、スーパーロボット達を越えた先……オウカオーを狙ってのもの。

 

サコミズ

「グゥッ!?」

エイサップ

「サコミズ王!?」

 

 味方である筈のホウジョウ軍から、次々と放たれる攻撃。絶対の防御力を誇る4枚羽根での守りはサコミズ王の中にあるコドール達への信用が一瞬、遅れさせた。その一瞬は次々に、火球弾を受ける隙となってしまう。

 

リュクス

「後妻様、何を!?」

 

 フガクの甲板上。そこにコドール女王の姿がはっきりとリュクスには見える。コドールはマイクを口下へゆっくりと近づけると、その口を開き、厳かに言い放つのだった。

 

コドール

「全軍、聞けぇ! 王はオウカオーに取り込まれ、ガロウ・ランへと堕ちた! これより全艦隊の指揮は、女王である妾のものとする!」

 

 コドールの宣言は、高らかに響いた。その内容は紛れもない。

 

シャア

「クーデターか!」

槇菜

「えっ!?」

桔梗

「…………!」

 

 コドール女王はオウカオーごとサコミズ王を亡き者にし、新たな体制を樹立せんとしている。

 

リュクス

「後妻様!?」

 

 コドールに野心があることは、わかりきっていたことだ。その野心のために、サコミズ王の望郷の念を利用していたことも。だが、それでも信じられない。

 

槇菜

「だって、コドールさんはサコミズ王の奥さんなんですよね? なのに……」

マーガレット

「……そこに、夫婦の愛なんてものはなかったということよ」

 

 少なくとも、コドールの方には。マーガレットは吐き捨てるようにそう断じる。

 

カミーユ

「この不快感は、あの女か!」

 

 流血の輪廻を回す元凶。それが今目と鼻の先にいる。あの女は生きていてはいけない。カミーユの直感がそう断じ、ウェイブ・ライダーが動いた。

 

コドール

「街もオウカオーも潰せ! そしてリーンの翼を我らの手に取り戻し、地上界とバイストン・ウェルを浄化するのだ!」

 

 コドールの号令と同時、ホウジョウのオーラバトラー達が動き出した。だが、それよりも速く。

 

コドール

「なっ……!」

 

 火球弾の嵐を受けながら尚無傷のオウカオーが、フガクの艦上でコドールと、さらにその上で指揮を取るコットウ・ヒンを睥睨していた。

 

 

…………

…………

…………

 

 

 

サコミズ

「懇ろになって私を欺くか」

コットウ

「い、いや……これは、その……」

 

 間近で見れば、震えが止まらない。今のオウカオーは……サコミズ王は祖国に裏切られた怒りを二乗にして、コットウを睨んでいる。

 

コットウ

「ち、地上人の国を興す方法に驚嘆致すからこそ……」

 

 もはや、コットウ自身も何を言っているのかわからない。ただ、この場を切り抜けなければという思いだけで必死に舌を回している。頭など回ろうはずもない。

 

サコミズ

「ホウジョウが落ち着けば、貴様らの部族が乗っ取るのだろうが」

 

 だが、舌先三寸で今の王を納得させることなどできはしない。

 

コットウ

「せ、聖戦士を相手にするなど……」

 

 それでもコットウは、必死に口を回転させていた。もはや言葉の中身などどうでもいい。ただ、この場を切り抜けなければ命はない。そのためならば、先ほどのコドール女王の言すらも白紙にしなければ。いや、今のコットウにそんな思考など存在しなかった。

 あるのはただ、恐怖。それ故に、矛盾にも気づかない。

 

サコミズ

「コドールの褥は温かいよなぁ」

 

 無論、そのような詭弁を聞く耳をサコミズ王は持たなかった。

 

コットウ

「ぬ、ぬははははは…………」

 

 腰を抜かし、尻餅をつくコットウ。じわりと股下を濡らしながら、理性のタガが外れた目でオウカオーを見上げるのみ。

 

サコミズ

「…………」

 

 ギロリ。サコミズ王の射抜くような視線を感じ、コドールは一瞬悲鳴を上げた。だが、コドールはコットウに比べれば幾分か冷静でもあった。

 

コドール

「う……撃てェェェェッ! あの地上人の王を!」

 

 コドールの号令と同時、フガクの主砲が、ドラムロ部隊のオーラバルカンがオウカオーへと叩き込まれる。東京を瞬く間に焦土でできるだろうほどの火薬量。まるで東京大空襲のそれをオウカオーは今、一身で受けている。

 

リュクス

「父上!?」

エイサップ

「不意打ち騙し討ちなんて……卑怯者のやることだろ!」

 

 オウカオーを助けようと、ナナジンとギム・ゲネンが動いた。だが、次の瞬間……。

 

サコミズ

「コドールと腹を合わせて……ヘリコンの地の者はぁぁぁぁっ!!」

 

 オウカオーの四枚羽根が、さらに急激に広がっていく。それと同時、白くしなやかに伸びる翼が、オウカオーのコクピットから伸びる。

 

コドール

「り、リーンの翼!?」

 

 リーンの翼。バイストン・ウェルに古く伝わる伝説の翼を顕現させるオウカオー。リーンの翼はどこまでも、どこまでも広がりそして、巨大な腕がフガクへと伸びた。

 

コドール

「ひっ!?」

 

 巨腕が振り下ろされると同時、フガクの主砲がその質量差に押し潰される。衝撃で飛び散った破片が、コドール女王の右目に深々と突き刺さった。絶叫を上げ、のたうち回るコドールを近衛の武者達が抱き止め、奥へと引っ込んでいく。

 

コットウ

「ま、待って!」

サコミズ

「死ねやァァァッ!!」

 

 逃げ遅れたコットウは、突如現れた巨腕の動きに巻き込まれフガクの艦上から大きく跳ね飛ばされた。

 

槇菜

「な、何が起こって……」

 

 エクス・マキナが、恐怖しているのを槇菜は感じ取る。エクス・マキナだけではない。

 

チャム

「ショウ、怖いよ!」

エレボス

「白が黒に……黒が白になる力……!」

 

 フェラリオ達も、その存在に本能的な恐怖を感じ取っていた。

 

 ホウジョウ軍のオーラバトラー隊が、火力をオウカオーへと集中させる。砲撃は止むことなく、孤独な王へ滝雨のように打ちつけられていた。だが、フガクに打撃を与えた巨大な腕の出現と同時にオウカオーから展開されるリーンの翼と、紫紺の四枚羽根の羽ばたきが次々とドラムロを、ライデンをその風圧だけで撃破していく。地上に出て、出力を上昇させたオーラバトラーがまるでカトンボのように撃墜されていくその光景は、異常としか言いようがない。

 

ジュドー

「これって、まさか……!?」

 

 まるで東京全体を覆うように伸びる羽根。フガクを一撃で轟沈させる剛腕。天にまで届くその怒髪。ゲッターロボが見上げる形を取らなけらばならないほどに、オウカオーは巨大化していたのだ。

 

 

…………

…………

…………

 

 

 

リュクス

「父上……」

 

 ギム・ゲネン越しにリュクスは、その光景に絶句していた。尊敬する聖戦士であり、大きく強く、優しい父の背中。それと今のオウカオーの姿は、あまりにも乖離している。

 

ショウ

「ハイパー化だ……恐れていたことが起きてしまった!」

 

 サコミズ王のオーラ力が、怒りと失望に膨れ上がった。ショウは幾度となく、ハイパー化を目の当たりにしてきた。そしてその度に、ハイパー化で力を膨張させたものは悲惨な末路を迎えているのを見てきた。

 

カスミ

「う、うわぁァァァァッッ!? 化け物ォォォォォォッ!!」

 

 オウカオーの巨大化。その異常事態にホウジョウ軍の面々も恐慌状態に陥っていた。恐怖のままに、ズワァースの剣にオーラが宿る。だが、恐怖と狂乱に彩られたオーラ力では、今のオウカオーにまるで届かない。

 

サコミズ

「……………………」

 

 無言でオウカオーは、巨大化した腕でズワァースを鷲掴みにする。オウカオーが力を込めると、ズワァースの身体全体が万力に挟まれたように圧力を受けた。

 

カスミ

「ぁぁ、ぁぁぁぁっ!?」

 

 絶叫と共に、ズワァースがバラバラになっていく。まるで虫でも潰すかのように、あのビルバインすら苦戦させたオーラバトラーは砕け散った。

 

ムラッサ

「カスミィィィィッ!!」

 

 オウカオーの掌から落ちるズワァースの残骸。その中に、赤く染まった塊があったのをムラッサは見逃さなかった。

 

ホウジョウ兵

「う、うわぁぁぁっ!?」

 

 カスミの死。それが堰を切ったようにホウジョウ軍の兵士達を狂乱へ導いていく。剣を抜き、火矢を構え、次々とオウカオーを攻撃する兵士達。彼らは皆、サコミズ王を聖戦士と呼び畏れていた武者達だ。サコミズが信を置いた武者達が、一様にオウカオーを攻撃する。

 今のオウカオーは、サコミズ王は。

 彼らから見ればガロウ・ランよりも悍ましいものに成り果てていた。

 

サコミズ

「…………黙れぇやっ!」

 

 だが、オーラバトラーたちの狂騒に彩られた無秩序な攻撃は、今のオウカオーに傷ひとつつけることはない。ハイパー化し、サコミズのオーラ力が怒髪天をついたオウカオー。言わばドハツ・オウカオーはオーラソードを振り上げると、灼熱の業火がホウジョウ軍を襲う。

 

ムラッサ

「あぁっ!?」

 

 オーラコンバーターを破壊され、ムラッサのズワァースが地へと堕ちる。名もなき武者達の乗るライデンやドラムロ達は直撃し、次々と爆炎の中に消えていく。

 

ガラミティ

「何だぁっ!?」

ニェット

「こいつは、やばいぜ!」

 

 赤い三騎士だけが、サコミズ王の攻撃を躱していた。だが、その力の差は歴然。

 

チボデー

「なんてこった……!」

ジョルジュ

「この力……まさに悪魔」

アマルガン

「サコミズ……悪鬼に堕ちたか!」

 

リュクス

「父上……」

 

 戦慄が支配する空間。その渦中にあってリュクスは呆然と、その光景を見つめていた。

 

リュクス

「父上は荒まれてしまった……。もう、私の声では……」

 

 この時まで、どれだけ反目しあいながらも心の奥底で、リュクスは父を信じていた。高潔なる聖戦士であり、強く優しい父を。

 信じていたからこそ、リュクスは父がいつかは思い直してくれると……その為にリーンの翼の沓を盗み出し、そしてエイサップ鈴木と出会った。

 

エイサップ

「リュクス……」

リュクス

「もう、父上には私の声は届かない。う、うぅ……」

 

 変わり果てたサコミズ王の姿は、そんなリュクスにはあまりにも壮絶で、認め難いものだった。力なく肩を落とし、泣きじゃくるリュクス。

 

槇菜

「諦めちゃ、ダメ!」

 

 そんなリュクスへ真っ先に声を投げかけるのは、槇菜だった。エクス・マキナがギム・ゲネンに並ぶと、肩を優しく掴む。

 

槇菜

「リュクスさんは、サコミズ王と……お父さんと仲直りしたいんでしょ。まだ、諦めちゃダメだよ。私だって、お姉ちゃんともう仲直りできないんじゃないかって……ずっと、不安だった。だけど!」

 

 今、槇菜の側には桔梗がいてくれている。それは槇菜が、諦めなかったからだ。だから、諦めないでと槇菜は叫ぶ。

 

桔梗

「そうね……。私はそれを諦めて、放棄しようとした。ううん、見てみぬふりをしていた」

マーガレット

「二度と声が届かなくなってからじゃ遅い。やれるだけのことはやるべきよ」

 

 アシュクロフトの桔梗が頷き、槇菜の後ろでマーガレットが言う。後悔を残して離別するよりは、ここではっきりと伝えるべきだと。

 

アムロ

「そうだな……。一生のしこりになるくらいなら、最後まで足掻く方がいい」

鉄也

「俺は物心ついた頃から両親と死別し、所長の厳しい訓練の下で生きてきた。だけどわかるぜ、リュクス。あんたの心はまだ、サコミズ王を諦めたくないんだろ?」

 

 νガンダムが、グレートマジンガーが立ち上がり、オウカオーへと向かっていく。

 

ショウ

「……そうだ。リュクス姫が呼びかければ、サコミズ王も心を取り戻してくれるかもしれない」

トッド

「なら、やることは決まりだな」

 

 ヴェルビンが、ビルバインが、ライネックが再びオウカオーへと向かい飛び立った。強大なオーラ力の本流がショウ達を襲い、苦しめる。それでも、止まるわけにはいかない。

 

リュクス

「みなさん……!」

エイサップ

「……そうだ。サコミズ王はリュクスを忘れてなんかいない。信じるんだ、サコミズ王を」

 

 アッカナナジンがギム・ゲネンの手を強く握り、エイサップが言う。エイサップの青い瞳が、強く抱きしめるようにリュクスに降り注ぐのを感じた。

 だが、ドハツ・オウカオーはその四枚羽根を広げ続けている。既に羽根の全長が数百kmに及ぶほどの不気味な巨大化・膨張を繰り返しており、東京中に広がっている。

 そんなドハツ・オウカオーに対し一番槍を挙げたのは、漆黒の闘士。

 

東方不敗

「…………サコミズゥッ!」

 

 マスターガンダムだ。マスターガンダムがウイングを広げ、オウカオーへと突っ込んでいく。オウカオーはオーラソードから炎を発し、マスターガンダムへと放った。

 

東方不敗

「ぬぉぉっ!?」

 

 マスターガンダムはフレイムショットを受け止め、しかし怯むことなく突き進む。黒い体躯が黄金に輝き、獄炎を弾き返す。

 

東方不敗

「サコミズ! 貴様は聖戦士なのだろうが! このザマは何だ!」

 

 マスターガンダムの鋭利な手刀が、ドハツ・オウカオーの右腕に突き刺さる。血飛沫のようにオイルを吹き出すオウカオー。ハイパー化を果たしたオウカオーに、はじめてまともなダメージが入った。だが、それだけでは終わらない。

 

東方不敗

「ただの悪党に成り下がって、何が世直しか! 貴様が滅ぼそうとしているものもまた、貴様が愛した国と、民なのだぞぉっ!?」

 

 追撃の拳をしかし、オウカオーは巨大化した羽根を盾にし防ぎ切る。そして反撃とばかりに振り下ろされたオーラソードから放たれた炎が、マスターガンダムに炸裂した。

 

サコミズ

「ならば今すぐ、この愚民どもの目を覚まさせて見せろよぉっ!」

東方不敗

「それがお前の本音か、サコミズゥゥゥゥッ!」

 

 繰り出される火炎の威力も、ハイパー化の影響か上がっている。頑強な装甲と屈強な精神力を持つマスターガンダムと東方不敗でなければ、一瞬で消炭になるだろう威力。東方不敗は心頭を滅却し、武闘家の心でそれを受け止めていた。だが、それも時間の問題。段々と、マスターガンダムの放つ金色の輝きが弱まっていく。サコミズ王の怒髪天を突いたオーラ力を前に、東方不敗の精神力すら飲み込まれようとしていたのだ。

 

ドモン

「師匠!?」

 

 マスターガンダムを助けようと、風雲再起に跨り空を駆けるゴッドガンダム。ゴッドガンダムから放たれる爆熱の衝撃波が、オウカオーの放つ火炎を呑み込んでいく。その瞬間を逃さず、マスターガンダムは空を蹴って飛び上がり、オウカオーの炎を抜け出した。

 

東方不敗

「礼を言うぞドモン……あのままならワシは今頃」

ドモン

「師匠は風雲再起に! ここからは、俺たちがやる!」

 

 風雲再起から飛び上がり、ゴッドガンダムが跳ねた。それに続くようにガンダムマックスター、ドラゴンガンダム、ガンダムローズ、ボルトガンダムが並ぶ。

 

チボデー

「おいドモン! あの化け物をどうする気だ?」

ドモン

「サコミズ王の心を取り戻す。俺達の拳だけでは足りんかもしれん。だが!」

 

 ドモンがチラリと一瞥したのは、ギム・ゲネン。

 

ジョルジュ

「父と子の絆に賭ける。そういうことですか……」

アルゴ

「…………だが、それを置いて他にあるまい」

サイ・サイシー

「ああ、その為にはまず、オイラたちの拳でサコミズ王の目を覚まさせる!」

 

 ドモンを援護するように、ガンダムローズから薔薇の花弁が放たれオウカオーを取り囲む。ローゼスハリケーン。ローゼスビット同士のコンビネーションで発生する渦巻きがオウカオーを取り囲み、足を封じる。そこに放たれるのは、ドラゴンガンダムの火炎だ。そしてゴッドガンダム、ボルトガンダム、ガンダムマックスターの3機がドハツ・オウカオーの懐へと飛び込んでいく。

 

チボデー

「まずは俺だ。豪熱ゥゥ、マシンガンパンチ!」

 

 マックスターから放たれるガトリングガンのような怒涛の連続パンチ。サコミズ王の意識がそこへ向かった瞬間、ボルトガンダムの鉄球……グラビトンハンマーが頭上へ炸裂する。

 

アルゴ

「フン!」

サコミズ

「シャッフル同盟……。歴史の影から世界を守り続けた武闘家が、何故私の邪魔をするぅ!」

 

 グラビトンハンマーを振り払いながら叫ぶサコミズ王。それに応えるのは、金色の輝きを放ちながら迫るゴッドガンダムのドモン・カッシュ!

 

ドモン

「サコミズ王! あんたは間違っている! 何故なら、あんたが焼こうとする今の日本も、連綿と続く歴史の中で生まれたもの。言わば、歴史の一部!」

サコミズ

「それを認めろというか!?」

ドモン

「人が犯した過ちは、人の営みの中でしかやり直すことはできん。それを忘れて、何が世直しかぁッ!」

 

 ゴッドガンダムの右腕から放たれる超級の気迫弾。石破天驚拳がドハツ・オウカオーを呑み込み爆熱する。だが、それでも尚サコミズ王の激情は癒えるものではない。

 

サコミズ

「忘れているのは、未来世紀の日本人だろうがぁっ!?」

 

 叫び、ドハツ・オウカオーの羽根が羽撃く。その風圧にゴッドガンダムらは押し飛ばされ、だがそこに隙ができた。

 

ドモン

「今だ!」

「ああ。やってやるぜ!」

 

 超獣機神ダンクーガ。人を超え、獣を超えた戦士がその剛腕を以てドハツ・オウカオーへと突撃する。鉄拳が、オウカオーの怒髪に炸裂した。

 

サコミズ

「ぬぅぉっ!?」

「やいてめえ! さっきから黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって! あんたの言い分聞いていると、この時代を生きてる俺達が悪いみたいじゃねえか!」

 

 即座に振り抜いた断空剣と、オーラソードが激しくぶつかり合う。ハイパー化したサコミズ王の激しいオーラ力を叩きつけるように剣に込めた一打が、ダンクーガを押し返していく。

 

サコミズ

「戦争で失われた命を忘れ、のうのうと惰眠を貪る連中を悪と言わず、何が悪かぁっ!」

「それでも、みんな今を必死に生きてるんだよ!」

 

 忍の叫びに反応するように、断空剣の力も増す。沙羅が、雅人が、亮が。4人の心が一つになり、サコミズ王の放つオーラに拮抗していた。

 

沙羅

「あんたに同情しないわけじゃないけどね。私達だって、あんたの癇癪で故郷を焼かれるわけにはいかないんだ!」

 

 断空剣を握る腕に力がこもり、ジリジリと押されながらもダンクーガは踏みとどまる。その気迫に只ならぬものを感じながら、サコミズ王もしかし譲らない。剣に更なる力を込め、横なぎに斬り払いダンクーガを振り払う。

 

「うぉっ!?」

 

 だがその瞬間、パルスレーザーを放ちダンクーガは反撃した。レーザーは羽根が本体を庇うように受け止めるが、そこに隙ができる。

 

サコミズ

「リーンの翼が見せてくれた戦争の現実! それを顧みないで作られた歴史などぉっ!」

ヤマト

「それはあんたが、一方的にしかものを見てないからそんなことを言えるんだよ!」

 

 ダンクーガを振り払った直後、入れ替わるように飛び込んできたのはゴッドマジンガーだ。太古の神像。古代ムーの守り神。古くから歴史を、人を見守り続けてきたゴッドマジンガーは咆哮し、輝きを放ちながら魔神の剣を振るう。自分よりも遥かに巨大なドハツ・オウカオーを前にしかし、火野ヤマトは怯まない。

 

サコミズ

「ヌゥ、その輝きはリーンの翼と同じ起源を持つものか!」

 

 ドハツ・オウカオーから放たれた火炎。それを振り切り跳躍するゴッドマジンガー。魔神の剣を振りかぶり、オウカオーへとぶつかっていく。

 

ヤマト

「なあサコミズ王! リーンの翼ってのは、八つ当たりのために使うもんじゃないだろ! だからもうやめてくれ!」

 

 ヤマトが叫ぶ。サコミズ王はしかし、それでも攻撃をやめない。四枚羽根を大きくはためかせ、より一層にオーラ力を纏った一打がゴッドマジンガーへと振り下ろされた。体積差は歴然。神秘の力で怪力を発揮するゴッドマジンガーのそれすらも、ドハツ・オウカオーには届かない。だがダンクーガが、ゴッドマジンガーがサコミズ王の注意を引く中で、巨大化したオウカオーの機体を駆け上がるものがいた。

 

ユウシロウ

「……」

 

 骨嵬。連綿と続く歴史の記憶を継承する嵬の血を持つもののみが操ることのできる古代兵器。そしてそれを操る豪和ユウシロウ。骨嵬を操る時、ユウシロウは常に舞を踊る時の高揚感に包まれている。ドクン、ドクンと脈打つ心臓を意識すれば、今自分は命を削ってこの骸の鬼になっているのだろうと実感する。その感覚は、自分の意識を骨嵬の中へ埋没させているようにも感じられた。だが、

 

ユウシロウ

「あんたは、リーンの翼に負けている」

サコミズ

「何ィッ!?」

 

 骨嵬を操る甘美に呑まれてしまえば、たちまちユウシロウは自分を失ってしまうだろうことを、ここ数回の搭乗で確信していた。それ故に、ユウシロウにはわかる。

 

ユウシロウ

「リーンの翼が命の記憶を体現するものだとしても、それに引っ張られるな。恐怖に……支配されるな!」

 

 骨嵬の剣が、ドハツ・オウカオーの膝に突き立てられる。仄かに緑色の輝きを帯びる剣。バチバチバチと火花を散らし、暴れ狂うオウカオー。

 

サコミズ

「リーンの翼は、今日まで私を導いてくれたのだ! それをなぁっ!」

ユウシロウ

「サコミズ王……!」

 

 荒れ狂うオウカオーに、骨嵬もまた振り落とされる。だがそれを空中でキャッチするものがある。グレートマジンガーだ。

 

鉄也

「どいてな。俺は少々荒っぽいぜ!」

ユウシロウ

「ああ」

 

 グレートから飛び降りる骨嵬。それを見届けると鉄也はフッと笑みを作り、ドハツ・オウカオーへと向き直る。

 

鉄也

「どうやらあんたは、相当な石頭らしいな!」

サコミズ

「我が身は特攻死できぬまま、今日まで燃え続けているのだ!」

 

 グレートが放つネーブルミサイルをオウカオーの羽根が防ぎ、オーラソードから放たれる炎がグレートを襲う。だが、グレートマジンガーは炎の射線を掻い潜り、オウカオーへと急ぐ。

 

鉄也

「聖戦士だの王だの特攻兵だのと、今のお前は肩書きでしか言葉を喋れないのか!」

サコミズ

「何ィッ!?」

 

 必殺パワーのサンダーブレークが、ドハツ・オウカオー目掛けてひた走る。超高電圧の神鳴はしかし、オーラ力を吸い続けて巨大化する四枚羽根に吸収され本体へは届かない。

 

鉄也

「そんな肩書きの御宅はもういいんだ! 今のアンタを求めてる人がいるのを、忘れるな!」

 

 ドハツ・オウカオーの剣圧は、あの暗黒大将軍と拮抗したグレートマジンガーすら容易く弾き飛ばしてしまう。それでも尚、鉄也は呼びかけ続けた。

 それは鉄也自身に言い聞かせるような、或いは鉄也自身がそうであってほしいと願うような叫び。そして、アッカナナジンに支えられながらギム・ゲネンがドハツ・オウカオーの前まで飛び込んだ。

 

リュクス

「父上! 私です、リュクスです。お願い、私の声を聞いて!」

サコミズ

「リュクス…………」

 

 一瞬、オウカオーの手がピクリと止まった。

 

槇菜

「やっぱり、サコミズ王は……!」

ショウ

「ああ、リュクス様を忘れてはいない!」

 

 ならば、希望はある。そう誰もが思った次の瞬間、戦場に迫るものがあった。2機のオーラバトラー。ホウジョウのエース機のひとつでもあるシンデン。

 

エイサップ

「ロウリ、金本……?」

 

 ロウリの乗るシンデンの右腕には、何か箱状のものを持たされている。そしてその箱の中には、ペンシル型のものが括り付けられているのをエイサップは見た。そして、そこには放射性物質を表すハザードマーク。

 

金本

「ヒュー、ずいぶん派手にやってるね」

ロウリ

「エイサップ、苦戦してるみてえだな!」

 

 まるで冷やかすようにそんなことを言う2人。ショウや東方不敗に圧倒されて逃げた2人にしては、その態度は妙なほどに強気だった。その強気を支えているものがあるとすれば、

 

マーガレット

「……あれ、パブッシュに貯蔵されていた核弾頭よ!」

 

 ハザードマークの正体に他ならない。

 少し遅れて、シンデンを追うようにやってきたのはブライガーだ。ブライソードを握り、交戦の後がある。

 

アイザック

「キャプテン!」

 

 アルカディア号へ通信をかけるアイザックの表情には、いつにない焦りの色が見てとれた。

 

アイザック

「奴らはパブッシュの核兵器を強奪し、東京への投下を画策している。絶対に阻止するんだ!」

 

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

—原子力空母パブッシュ—

 

 

 サコミズ王のハイパー化まで、時は遡る。東京湾上に停泊するパブッシュのカメラは、その一部始終を捉えていた。ホウジョウ軍が突如、オウカオーを攻撃し始める場面も、そして人智を超えた巨大化を果たすオウカオーも。

 

マキャベル

「俄には信じ難いな……」

 

 だが現にオウカオーは巨大化し、まるで神話に伝わる荒ぶる神の如くホウジョウのオーラバトラー達を蹂躙している。

 

アレックス

「あれが必殺兵器の性能だと言うのか……?」

 

 だとしたら、度を超えている。このままあのオウカオーが暴れれば、日本の被害は計り知れないものになる。

 

アレックス

「我々もオウカオーを撃退するべく、軍を派遣するべきではありませんか?」

 

 言ってみるが、マキャベルはあまりノリ気ではないように見える。マキャベルからすれば、日本がどうなろうと関係ないのかもしれない。だがそれでも、アレックスにとってあの島国は、愛する女性とその間にできた子供の暮らす国だった。

 

アレックス

「司令!」

 

 アレックスが叫んだ次の瞬間、パブッシュが大きく揺れた。衝撃のあまり艦内の電気が一部破損し、一瞬視界が黒く染まる。すぐに非常電源に切り替わりほのかな灯りがつくが、次にアレックスが見たものは信じ難い光景だった。

 

アレックス

「な……。オーラバトラーだと!?」

 

 オーラバトラー。先ほど正式に同盟を結んだはずのホウジョウ国のマシンが、パブッシュに剣を突き立てているのだ。

 

アレックス

「どういうつもりだ!?」

 

 しかしオーラバトラー・シンデンは突き立てた剣をぐるぐると回しながら恫喝するように声を荒げる。

 

ロウリ

「どこにあるんだよ?」

アレックス

「な、何が……?」

ロウリ

「水爆の、弾頭だろうがよ」

アレックス

「なっ……!?」

 

 絶句するアレックス。パブッシュには、旧世紀から蓄えられた多数の核弾頭が保管されている。それは世界への抑止力であり、簡単に使っていいものではない。だが、オーラバトラーに乗る青年はそれをよこせと言う。

 

アレックス

「そんなこと、できるわけないだろ!」

ロウリ

「いいんだぜ、今すぐこの艦を沈めるくらいしても」

金本

「おじさん、言うこと聞いた方がいいですよ」

 

 そう言って、剣をアレックスへ向ける金本。少しでも余計な真似をすれば、命はないと脅している。

 

アレックス

「クッ……!」

 

 言う通りにする以外、選択肢はない。パブッシュの戦力で反撃を試みようにも、2機のシンデンは既に喉元に剣を突き立てているのだから。

 

ロウリ

「そっちの起爆装置も解除しとけよ」

 

 シンデンの手に水爆を乗せながら、ロウリが言う。

 

アレックス

「お前達、それはおもちゃじゃないんだぞ!」

 

 それでも尚アレックスは、必死に説得せんと呼びかけていた。核兵器はその威力だけでなく、毒性も群を抜いている。一度放たれれば全てを焦土と化してしまうだけではない。放射能の影響は生態系に影響を与え、残留放射線は人の住めない場所を作り出してしまう。いや、そもそも。

 

アレックス

「一千万以上の人を殺すことになる!」

 

 たった一発の爆弾で失われる命。それを考えればとてもじゃないが渡せるものではなかった。

 だが、そんなことは今時小学生でも知っている。

 

ロウリ

「リモコンボタン押した3秒後だろ? 心配すんなって。それでも1億人は残るんだからな!」

 

 水爆を手に乗せたロウリは、ご満悦と言った風に口笛を吹く。この青年に、倫理を説いても仕方がない。それをアレックスは今更悟ったがしかし、時既に遅し。

 

ロウリ

「サンキュー、アメリカ!」

 

 そう言って羽根を広げるシンデン。今まさに飛び立とうとするその時だった。

 

ボウィー

「そうはさせるかっての!」

 

 猛スピードで突っ込む航空機・ブライスター。ブライスターから放たれたビームが、シンデンを襲う。

 

金本

「ロウリッ!?」

ロウリ

「ッ! つけられてやがったか!?」

 

 脱兎の如く飛び立つシンデンを、ブライスターは追う。機動性に関しては、互角。そうなれば勝負を決めるのは。

 

ボウィー

「俺ちゃんのテク、久々に見せてやるぜ!」

 

 スティーブン・ボウィー。彼の卓越したドライビング・テクニックだ。ボウィーはハンドルを回しながらオーラバトラーの超高速機動に追随する。しかし、ブライスターの武装ではオーラバトラーの鱗粉から放たれるバリアを突き破るには至らない。

 

キッド

「あいつら、華奢な見た目しててなかなか硬いぜアイザック」

アイザック

「ああ。ブライシンクロン・マキシムで一気にカタをつける!」

 

 アイザックの号令と共に、「イェイ!」という明るい声が響いた。

 

キッド

「ブライシンクロン・マキシム!」

 

 合図と共に、ブライスターの質量が増加していく。シンクロン原理。多元宇宙から膨大なエネルギーを流入することによって可能となるこの複雑怪奇なシステムある限り、奴らは悪の笑いを見逃さない。

 仁義を通さぬワルどもを、斬って捨てては銀河の果て。

 その名も銀河旋風ブライガー。

 お呼びとあらば即、参上!

 

アイザック

「キッド、奴らは核兵器を持っている」

キッド

「ああ、間違っても誘爆はさせない!」

 

 ブライガーは二丁拳銃を抜くと、ブラスター・キッドの早撃ちで続け様にシンデンの背中を狙う。その狙撃は百発百中。だが、ロウリと金本のオーラ力はそれでも尚、オーラマシンの性能を引き出しより強大なオーラを生み出し続けていた。

 

ロウリ

「気に入らねえぜ、スカした格好しやがって! そのダセエ犬のマーク、今時流行らねえんだよ!」

お町

「あら、ウルフマークをワンちゃんだなんて」

ボウィー

「あの子なかなかセンスあるんじゃないの?」

 

 怒鳴り散らすロウリを、茶化して余裕を崩さないお町、ボウィー。しかし、彼らが核兵器を所持しているという事実を忘れたわけではない。

 

キッド

「ブライソード!」

 

 故に、ブライガーは近接白兵戦を選択した。ブライカノンで消滅させるのが一番楽だが、今ブライキャリアはアルカディア号にある。ポンチョの到着を待っていては、核兵器を取り逃してしまう可能性があったからだ。

 ブライガーの巨体から繰り出される斬撃が、シンデンに迫る。だが、シンデンのロウリは舞い上がっていた。

 

ロウリ

「邪魔するんじゃねぇよ!」

キッド

「だったら、ふざけたことはすぐにやめな!」

 

 ロウリを庇うように、金本のシンデンが躍り出る。二振りのオーラソードをクロスさせ、ブライソードと鍔迫り合う金本。

 

金本

「ここはロウリの好きにさせてやってくださいよ!」

キッド

「聞き分けのない子供だな全く!」

 

 だが、その一瞬の激突でロウリのシンデンは距離を伸ばしていく。金本を振り払うようにブライソードチャンバラするも、金本も強力なオーラ力を持つオーラバトラー乗り。剣の圧は予想以上に強い。

 

アイザック

「まずいな。キッド、なんとか振り払って奴を追うんだ!」

キッド

「了解だ!」

 

 キッドが叫び、ブライソードから光を放つ。ブライソードビーム。シンクロン原理により発生するエネルギーの余熱をビームに変換し、敵へ直接ぶつける必殺武器だ。

 

金本

「うわぁっ!?」

 

 金本はビビり、瞬間に発揮した生存本能で回避する。だが、それで十分。ブライガーは金本を押し退け、ロウリを追わんとした。だが、次の瞬間……

 

お町

「3時の方向から何か来るわ!?」

キッド

「何ッ!?」

 

 現れたのは、赤いマシンだった。ジェット機の翼のようなフォルムの大きな両腕。そして指がプロペラ戦闘機のように回転している。その姿にアイザックは、いやコズモレンジャーJ9は見覚えがあった。

 

ボウィー

「おいおい、あれって!?」

アイザック

「ああ。“厄祭戦”の光景で見た、荒れ狂う機械の神……」

 

 地球を目指し進軍する機械の軍勢。その中に、このマシンがあったのをアイザックは忘れてはいなかった。

 

???

「この姿に驚かぬとは……どうやら、真実の片鱗を垣間見ているようだな」

 

 赤いマシンから、声がする。だが、今はそれを相手にしている場合ではない。ブライガーは赤いマシンを無視しシンデンを追おうとするが、赤いマシンはシンデンを援護するようにブライガーへと回り込む。

 

金本

「手伝ってくれるの!?」

???

「君達の手にあるそれは、世界に真実を伝える火だ。愚かな豚どもを焼却する業火を私に見せてくれ!」

 

 言っていることの意味はわからない。だが味方であることは確か。そう判断したロウリは「サンキュ!」と挨拶し飛び立っていく。金本も、それに続いた。

 

キッド

「クソッ、核を取り逃した!」

アイザック

「みんなを信じるしかない。キッド!」

 

 赤いマシンと向き直り、ブライソードを構えるブライガー。赤いマシンに乗る男の声が、クツクツとコクピットに響く。

 

???

「腐った世界の腐った犬よ! 崩壊の時は近い!」

 

 芝居がかった、支離滅裂な言葉。そんなものに耳を貸すJ9ではない。キッドは無言で、ブライソードで斬りかかる。だが赤いマシンの目から放たれた光の線が、ブライガーへと炸裂する。

 

キッド

「うわぁっ!?」

???

「ハハハハハ! お前の力はこんなものかブライガー!」

 

 勝ち誇るように笑う男の声。だが、その言葉をアイザックは聞き逃さなかった。

 

アイザック

「ブライガーを知っている? お前は何者だ!?」

 

 コズモレンジャーJ9が巨大ロボットを操っているというのは、圏外圏では有名な話だ。だが、ここは地球。しかも、巨大ロボットの名前をブライガーと知っているのは極一部のみ。

 

???

「私は世界の全てを知り、知らせるために生きたもの……。秘密を暴き、真実を知らせるためにこの姿へ生まれ変わったのだ」

 

 ブライガーのカメラモニタに、男の姿が映る。映し出された男は、上質なスーツに身を包んだ紳士だった。だが、ギラギラとした目を向けて口元が大きく歪んでいる。不気味な表情の全てはしかし、はっきりと見ることはできない。表情のほぼ全てが全身を包む包帯に隠された怪人だった。

 

アイザック

「…………!!」

お町

「っ!?」

 

 生理的な嫌悪感を催す風貌。その感情を一言で表すならば、恐怖。アイザックの脳裏によぎったのは幼い頃、ドイツの黒い森に1人で入り込んでしまった日のことだった。

 黒い森。恐怖を刺激する存在。まさに、

 

アイザック

「シュバルツバルト……」

 

 シュバルツバルト。そう呼ばれた男がクツクツと笑い、値踏みするような視線を向ける。

 

シュバルツバルト

「腐った世界の腐った犬共に真実を見せる! これはその最初の炎となるとだ!」

キッド

「冗談じゃないぜ怪物野郎。あんたの妄想に付き合ってる場合じゃないんだ!」

 

 ブライソードからビームを放ち、包帯男の赤いマシンを牽制するブライガー。しかし、赤いマシンはまるで霧のように霧散していく。

 

シュバルツバルト

「フフフ、そこで見ているがいい。世界に真実の炎が灯るのを!」

 

 まるで呪いの言葉のように、包帯男の声が響いた。赤いマシン諸共、まるで幻のように世界から消えていくシュバルツバルト。

 

ボウィー

「な、なんだったんだ今の……?」

 

 冷たい汗が、ボウィーの額に滲んでいた。だが、一瞬で我に帰ると飛んでいったシンデンを確認し、冷や汗の質が変わる。

 

お町

「まずいんじゃないの!?」

キッド

「どうするアイザック。このままじゃあいつら、間違いなく核を使うぜ」

アイザック

「ああ。それだけは何としても阻止せねばならん。全速力で追うぞ!」

 

 「イェイ!」の掛け声と共に、ブライガーも飛び立つ。窮地にあっても、J9は自然体を崩さない。それは、彼らのプロとしての矜持だった。

 

アイザック

(しかし、シュバルツバルト……それにあのロボット。奴は一体何者なんだ?)

 

 アイザックは、すぐにその懸念を振り払う。今重要なのは、未知の敵ではない。今すぐそこに迫る危機。そう思い直して前を向く。

 

アイザック

「外道にかける情けはない。急ぐぞ!」

 

 

 夏の日差しを背に受けて

 空を急ぐはブライガー

 核の火が日本に再来する

 秒読み始めるカウントダウン

 さあ、コズモレンジャーJ9

 この始末、どうつける?

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

アレックス

「今のは……」

 

 一部始終を見届けたアレックス・ゴレムは、呆然と呟いた。突如現れた赤いマシンは、幻のように消えてしまった。そんなことが、現実に起こりうるのか。

 いや、それどころではない。奪われた核兵器をすぐにでも取り返さなければ。

 しかし、その隣で事態を見守っていたエメリス・マキャベルはニヤリと口元を歪めている。

 

マキャベル

「ホウジョウ軍をダシにするより楽かもしれんな……」

アレックス

「……何ですって?」

 

 言っている意味がわからない。ホウジョウ軍とは同盟を組んだ。今のオーラバトラーの行動は明らかな、利敵行為。それを追及する必要はあったとしても、ダシにするという言葉の意味にはならない。

 

マキャベル

「焼け野原になった後、我々が日本の復興に手を貸せばこの島国は好きにできる。加害者は全てオーラバトラーだものな?」

 

 そう言ってみせるマキャベルの瞳には、ドス黒い欲望のオーラが滲み出ていた。その言葉に、その欲望に、アレックスは言葉を失う。

 

アレックス

「な……何だと?」

 

 瞬間。アレックスの脳裏に過ぎったのは敏子の顔だった。アレックスはアメリカ軍人としての責務がある。それ故に敏子と正式に籍を入れるわけにはいかないでいた。その敏子の間に生まれたエイサップの、視線を合わせようともしない横顔も。

 

アレックス

「ふ……ふざけるな!」

 

 自分は何のために、敏子とエイサップに辛い思いをさせてきたのか。この作戦が終われば3人で暮らせる。そう願い、今までやってきたというのに。

 沸々と湧き上がる怒り。それは裏切られたという思いと同時に、アレックスのアメリカ軍人としてのこれまでを踏み躙られた思いだった。

 

アレックス

「私はコロニーを諌めるためのクーデターに賛同しただけです。敏子さんの……いや、私の家族の国を破壊するためではない!」

 

 立ち上がり、アレックスは毅然とした態度でマキャベルを指差し叫ぶ。

 

アレックス

「諸君、司令を拘束する。核兵器を利用しようとした罪でだっ!」

 

 アレックスの宣言と共に、兵士達がざわつき始める。パブッシュの最高責任者であるエメリス・マキャベルへの糾弾。それは、パブッシュ艦隊の存在意義を揺るがすものだった。

 

マキャベル

「裏切るのか、アレックス!?」

アレックス

「核兵器をバーゲニングの手段にするほど、アメリカは堕ちていない!」

 

 きっぱりと言い切るアレックス。それに勇気づけられるように、アメリカ兵達も勇気を振り絞るように声を上げた。

 

アメリカ兵

「我々も証人になります」

アメリカ兵

「司令は言いなりです!」

 

 次々と声を上げ、マキャベルを取り押さえんと兵士たちは動き出す。

 

マキャベル

「き、キサマら……!」

 

 欲望や野心に囚われ、マキャベルは道を踏み外した。マキャベルの理想を信じた者として、その歪んだ理想を正す。マキャベルの当初の思想に共感を示した兵士たちは、アレックスの声に応えてくれた。

 

アレックス

「悲しい人だ……あなたは」

 

 取り押さえられたマキャベルを、アレックスは憐れむように一瞥する。

 

アレックス

「敏子さん……エイサップ」

 

 静かに、アレックスは守るべき家族の名を呟いた。その瞳には静かな、しかし力強いものが宿っていた。

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

ロウリ

「サコミズ王、こいつを使えば雑魚など無視できるぞ!」

 

 そして今、ロウリと金本の2人は核弾頭をこの戦場に持ち込んでしまった。だが、2人も予想だにしなかった異変が一つ。

 

サコミズ

「核弾頭を捕獲したか!」

金本

「うわぁ!?」

ロウリ

「で、でかくなってやがる!?」

 

 サコミズ王のハイパー化。常識を越えた異変を前に、2人は驚いて動きを止める。その瞬間、シンデンとオウカオーに割り込むようにアッカナナジンが飛び込んだ。

 

エイサップ

「ロウリ、頭を冷やせよ!」

ロウリ

「あぁ!? エイサップてめえ、俺たちとやる気かよ!」

 

 剣と剣がぶつかり合い、激しいオーラが衝突する。核兵器を手に入れたことでの優越感か、或いは戦場の毒に充てられたのか、ロウリのオーラ力も以前とは比べ物にならないものになっているのをエイサップは剣圧から感じていた。だが、それでもこれを認められるものではない。アッカナナジンが剣を横凪に払うと、シンデンは距離を取る。そして、ロウリを庇うように金本のシンデンがエイサップの前に躍り出た。

 

金本

「ここはロウリの好きにさせろよ!」

エイサップ

「金本か、核兵器で遊ぶな!」

 

 シンデンの火矢を避け、アッカナナジンもオーラソードに炎を纏い、それを放つ。だが、シンデンの羽撃きに呼応するように金本のオーラ力が鱗粉を作りだし、エイサップの攻撃を受け止めた。

 

金本

「エイサップだって、差別されてきたんだろ!」

 

 金本のオーラ力も負の感情を吸い込むようにして膨れ上がっているのをエイサップは感じる。アッカナナジンのコクピットで、エレボスはその黒いオーラを直に見て震えていた。

 

エレボス

「ダメだよ……こんなの。流血の連鎖じゃ誰も救われない!」

エイサップ

「ああ、そうだエレボス。だから!」

 

チャム

「ショウ、ここはダメよ! 怖いのが漂ってる」

ショウ

「サコミズ王の怒りと悲しみだけじゃない……あいつらの憎しみや憤り。そして戦場全体に渦巻く恐怖。オーラ力が良くない方向に導かれている」

 

 ヴェルビンの中で、ショウも呻く。

 

槇菜

「もう……ダメなの?」

 

 槇菜が呟いた、その時だった。

 

???

『地上界は命の遊び場かい?』

 

 遠く、遠くから声がする。その声は耳を通してではなく……魂を通して彼らに響いていた。それを聞くことができたのは、より純粋なる魂を持つ存在。チャムやエレボスといったフェラリオ達。

 

チャム

「この声!」

エレボス

「ジャコバおばあさま!」

 

 そして、魂の気配を感じる才能を持つもの達。

 

アムロ

「この声が……」

シャア

「ジャコバ・アオン……。まさかな」

カミーユ

「だけど、聞こえる……。命が生まれ、還る場所の音が」

 

 或いは、神の器に身を委ねる者達。

 

ヤマト

「俺も聞こえるぞ。ジャコバ・アオンの声……。ゴッドマジンガーが、中継してくれてるのか?」

槇菜

「エクス・マキナが……ジャコバさんの声を拾ってる?」

 

 ジャコバ・アオンは重く、厳かな響きを持って彼ら彼女らの魂に響いていた。ジャコバ・アオン。ワーラーカーレンの主であり地上とバイストン・ウェル……生の世界と死の世界を視る目を持つもの。ジャコバはワーラーカーレンから、この一連の戦いをずっと見続けていた。

 

ジャコバ

『エレボスよ、祈れ』

エレボス

「は、はい!」

 

 ジャコバの声に言われるがままに、エレボスは両手を握り締め祈りのポーズを取る。人智を越えた力。人智を越えた存在の力を信じられないものは、ここにはいない。これまで何度も、人智を越えた魂の力に救われてきたのだから。

 

槇菜

「エクス・マキナ……!」

 

 エクス・マキナが、その代表だ。“旧神”そう呼ばれる宇宙の輪廻を司る機神は光と炎の翼……セラフィムを展開し、舞い散る羽根が金本のシンデンを取り囲む。

 

金本

「な、何ッ!」

 

 炎の羽根が熱を上げ、じりじりとシンデンを鱗粉諸共焼いていく。破邪の炎。死と再生の光。エクス・マキナの中に内包される輪廻そのものの熱量が、シンデンを襲う。

 

槇菜

「どうして、核を落とすなんてことを思いつくんですか!」

金本

「だって、そうでもしなきゃ変わらないよ! あんたもいじめられてたんだろ!?」

 

 日本人の意識は変わらない。それが、金本の実感だった。実際、ロシア系ハーフの槇菜は幼い頃、奇異の視線で見られていたこともある。青い瞳と銀色の髪を揺らしながら、槇菜は金本の言葉を受け止める。

 

槇菜

「でも私は、エイサップ兄ぃと出会えた。甲児さんやさやかさん、それにマーガレットさんとも。だから!」

マーガレット

「勝手な理屈で人の未来を奪うなら、私達が撃ち抜く!」

 

 銀の弾丸が、エクス・マキナから放たれる。邪なるモノを打ち破る破邪の弾は負の感情に支配されたオーラ力を貫きそして、シンデンの頭部を撃ち抜いた。

 

金本

「あぁっ!?」

ロウリ

「金本ォッ!?」

 

 金本が悲鳴を上げて落下する。その隙をつくように、ドハツ・オウカオーの右腕がロウリのシンデンを掴んだ。

 

ロウリ

「うわぁっ、なんだよ。離せよ!」

サコミズ

「その力、私に……!」

 

 ギリギリギリとシンデンを掴む腕に力がこもる。このままでは死ぬ。恐慌状態に陥り、叫ぶロウリ。その時、ドハツ・オウカオー目掛けて飛ぶものがあった。フィン・ファンネル。アムロのνガンダムだ。ベース・ジャバーに搭乗したνガンダムはドハツ・オウカオーの周辺を飛び回り、ハイパー・バズーカでオウカオーの頭部を狙い撃つ。それに続くように、ウェイブ・ライダーとGフォートレスがオウカオーへビームの雨を浴びせる。

 

ジュドー

「どうしてそう、極端な方に走るんだよ!」

カミーユ

「たくさんの人が死ぬんだぞ! そんなことをしちゃいけないんですよ!」

 

 しかし、モビルスーツ達の攻撃の殆どはオウカオーの羽根を突き破ることはできない。今のオウカオーを相手にするには、モビルスーツでは火力が足りない。

 

サコミズ王

「そんなもので、私を止められると思うな!」

アムロ

「チィッ!?」

 

 νガンダムと並ぶように、サザビーが来る。ファンネルを展開し、ビームショット・ライフルでロウリを握る腕を撃ちながら進撃するサザビー。だがやはり、それは決定打とはなり得ない。しかし、サザビーの赤い機体色にサコミズ王の視線が止まる。

 

サコミズ

「知っているぞ、その機体は!」

 

 リーンの翼が見せた光景。アクシズ落としと呼ばれる人類史最大の暴挙。それを牽引していた赤いマシン。それが今、サコミズ王の目の前にいる。憎々しげな視線を浴びせながら、ドハツ・オウカオーは左手のオーラソードを振り上げた。

 

シャア

「覚えているなら話は早いな。サコミズ王、今あなたがしているのは、かつての私と同じことだ!」

サコミズ

「貴様のようなガロウ・ランが、それを言うか!」

 

 モビルスーツの装甲など一瞬で消し炭にしてしまうオウカオーの灼熱。それを掻い潜るサザビー。サザビーの進軍を援護するようにウェイブ・ライダーとGフォートレス、それにνガンダムは攻撃を続ける。小さな攻撃でも、累積すればストレスになる。サコミズ王は忌々しげにモビルスーツ部隊を睨み、オーラソードを振り上げる。

 

サコミズ

「散れ! 散れ! 散れ!」

 

 闇雲にオーラソードを振り回すそれだけで、熱を伴う突風がガンダム達を襲った。だがそんな中で、ガンダム達を庇うように前に出て熱風を受けるものがある。

 

ガラミティ

「ダー、ニェット。俺達のオーラ力を信じろ!」

 

 赤い三騎士の乗るビアレスだ。前の戦いでショウ・ザマと、以前の戦いでアムロやシャアと激戦を繰り広げたオーラバトラー乗りが、アムロを庇い熱風をオーラバリアで中和している。

 

アムロ

「お前達、どうして!」

ダー

「地上とバイストン・ウェル。ふたつの世界がダメになるかどうかなんだ」

ニェット

「やってみる価値は、あると思うぜ!」

 

 ビアレスのオーラバリアが風除けになるも、しかしそれは長くは続かない。サコミズ王の、ハイパー化した聖戦士のオーラ力はコモンのそれを遥かに凌駕する。次第にビアレスのオーラバリアを熱風は突き破り、ビアレスの本体を巻き込み燃やしていく。

 

ニェット

「ここまで、か……!」

ガラミティ

「今度こそ、この世界を……シャア・アズナブル!」

 

 シャア・アズナブル。名乗ったことのないその名を叫び爆散するビアレス。その魂の鼓動をシャアは自らの魂で感じ、叫んだ。

 

シャア

「ガイア大尉!?」

 

 決して親しい間柄だったわけではない。むしろ、互いに牽制し合うライバルだったと言ってもいい。だが確かに、その魂の鼓動をシャアはガラミティ達の命が散る瞬間、感じたのだ。

 

カミーユ

「ああ……ああぁっ!?」

 

 命の散る音を間近で聞いたカミーユは、慟哭の声を上げる。カミーユにとって、命に敵も味方もなかった。ただ、人が死ぬという戦いの現実。それを今また目の当たりにし、カミーユは叫ぶ。

 

カミーユ

「どうして命を粗末にするんだよ! それじゃあ……それじゃあ……同じことを繰り返すだけじゃないか!」

サコミズ

「!?」

 

 カミーユの叫びに呼応するように、ウェイブ・ライダーに命のオーラが吸い寄せられていくのを、サコミズ王は見た。それは、リーンの翼が見せる奇跡によく似ており……だからこそ、サコミズ王はそれを認めるわけにはいかない。

 

サコミズ

「黙れぇっ! お前達に何がわかる! 力を持つことの意味が!」

カミーユ

「わかりませんよ! こんな力なくったって、人は生きていけるじゃないか。なのに!」

 

 どうして戦いになると、人は命を粗末にしてしまうのか。どうしてそれを認めながら、戦いをやめようとはしないのか。ウェイブ・ライダーのフロントノズルに投資されるハイパー・メガランチャーが火を吹く。オウカオーの羽根すらも貫く命の光。

 

アムロ

「これは……!?」

 

 カミーユの叫びに反応するように、νガンダムのコクピット・フレームに搭載されているサイコフレームが、共振現象を起こしはじめていた。かつて、落下するアクシズの中で起きた機体のオーバーロードに伴う現象。それをカミーユが引き出したというのか。

 

シャア

「サコミズ王、信じるんだ。人は、命はこの温かさを持つことができると!」

 

 νガンダムだけではない。サイコフレームの共振現象はサザビーにも発生している。サザビーはカミーユの開けた風穴を突き抜け、オウカオーへと肉薄し、サコミズ王へ語りかける。

 かつての自分と同じ孤独を抱えた、孤独な王に。

 

サコミズ

「それを持ちながら、今日まで惰眠を貪っていたのだろうがぁっ!」

 

 それでもサコミズ王は、頑固だった。オーラソードを振り上げ、サザビーを振り払う。だが、その隙を突くように巨大化したオウカオーへと肉薄する機影がある。

 

エイサップ

「サコミズ王! あなたは広島、長崎の次小倉に落とされるはずの原爆を止めたのでしょう! だったら、そんなものに頼らないでくださいよ!」

 

 アッカナナジン。エイサップはそれでもまだ、サコミズ王へ呼びかけることを諦めてはいなかった。

 

サコミズ

「黙れ! 聖戦士でありながら、力の使い方もわからぬ愚か者がぁっ!」

 

 オウカオーの巨腕が、アッカナナジンを阻む。だが、さらに背後から迫るものがあった。

 

ショウ

「マーベル、俺達でサコミズ王の動きを止める!」

マーベル

「わかったわ、ショウ!」

 

 ヴェルビンとビルバイン。ウィングキャリバーのオーラキャノンがオウカオーの背中に炸裂し、キャリバーから飛び降りたヴェルビンはオーラソードを抜く。ショウのオーラ力に呼応するように光り輝くオーラソードを掲げると、急速でドハツ・オウカオーの右腕へ切り込んでいく。

 

ショウ

「今だ、マーベル!」

マーベル

「ええ!」

 

 ショウの合図に合わせ、ビルバインも動く。マーベルのオーラ力を吸い強力になったオーラソードが輝き、ヴェルビンのつけた傷へさらに深く突き刺していく。

 

サコミズ

「貴様ら……!」

ショウ

「サコミズ王、バイストン・ウェルの意志に耳を傾けるんだ。あなたならできる!」

サコミズ

「黙れ! 黙れ、黙れ!」

 

 ショウのオーラ力がサコミズ王と拮抗し、その声が響く。サイコフレームの共振現象が、より剥き出しの命を響かせている。だからこそ、サコミズ王の悲しみが、怒りが、絶望が、慟哭が胸を突きしかし、それでもと叫ぶ声がサコミズ王の魂へと響く。

 それが、寸分の隙も見せなかったオウカオーに一瞬の隙を与えた。エイサップは、それを見逃さない。今はとにかく、サコミズ王の手から核を奪わなければ。

 

エイサップ

「サコミズ王、あなた達の想いの果てにあるものが、娘の声も聞こえないものになってはいけないんです!」

 

 ヴェルビンとビルバインのオーラ斬りでダメージを受けた右肩の動きが鈍くなっている。アッカナナジンはエイサップのオーラ力を吸い、オーラソードに炎を灯す。炎を纏った斬撃。それがドハツ・オウカオーの右腕をギリギリと斬り進む。

 

サコミズ

「エイサップ鈴木ッ!」

エイサップ

「たとえ戦争の行く末の袋小路が、人間性を失ってしまうものだとしても!」

 

 エイサップの叫びと同時、ドハツ・オウカオーから飛沫が上がる。そして、ロウリのシンデンを握っていた右腕が、オウカオーから切り離された。

 

 

…………

…………

…………

 

 

鉄也

「やったのか!?」

 

 ハイパー化したサコミズ王に、はじめてまともなダメージが入ったのを見て、鉄也は叫ぶ。

 

サコミズ

「グゥッ!?」

 

 ショウの、マーベルの、そしてエイサップのオーラ力による一打はたしかに、オウカオーに致命的な一撃を与えたらしい。エイサップの切り離した右腕から上がる飛沫は凄まじく、オウカオーのパワーダウンも無視のできないものだった。だが、切り離された右腕から自由になったシンデンが飛び立ち、空高くへ飛ぶ。

 

ロウリ

「ハッハァッ!」

エイサップ

「ロウリ!?」

 

 核弾頭を持っているのは、ロウリ。エイサップはロウリを追い空を駆ける。

 

エイサップ

「やめろォッ!」

ロウリ

「うるせぇ! 俺に上からものを言うんじゃねえ!」

 

 ロウリの心は既に決まっている。ジリジリと距離を詰めるがしかし、シンデンも速い。焦りながら、エイサップは歯噛みし、怒鳴る。

 

エイサップ

「ロウリ、斬るぞ!」

ロウリ

「やってみろよ! その前に起爆スイッチは入れてやる!」

 

 その一部始終を視界に入れ、ドハツ・オウカオーも飛ぶ。サコミズは今だ憎しみの炎を燃やし続けていた。

 

サコミズ

「やれ……。天皇のいない東京天国など消せばいい!」

リュクス

「父上!」

 

 オウカオーを追って、ギム・ゲネンも上昇する。シンデンとアッカナナジン、ドハツ・オウカオー。ギム・ゲネン。4機のオーラバトラーが空高く舞い上がる。オウカオーのコクピットから生えるリーンの翼は命を吸い上げ、さらに大きく羽ばたいた。

 

エイサップ

「オウカオーに、追いつかれる!」

リュクス

「父上、もうやめて! 優しい父上に、戻って!」

 

 なりふり構わず叫ぶリュクス。その時だった。

 

エレボス

「!?」

 

 ジャコバ・アオンの言葉に従い祈りを捧げ続けていたエレボスの掌が仄かに光だす。エレボスの手の中に、温かな感触を伴うものが生まれていた。

 

ジャコバ

『フェラリオの祈りだけではない……。この地に戦う地上人の命の発露が、間に合わせてくれた……』

エレボス

「ジャコバ様?」

ジャコバ

『今こそサコミズ王へ……命の手紙を!』

 

 ジャコバ・アオンの声が響く。それと同時、エレボスの手の中からたくさんの紙人形が生み出され、アッカナナジンのコクピットから、まるで紙吹雪のように溢れ出していく。

 

エイサップ

「こ、これは……!」

 

 エレボスの手の中から溢れ出した紙人形は次々とドハツ・オウカオーへ向かって吹雪く。紙の一枚一枚がオウカオーに張り付き、いつしかオウカオーはたくさんの紙に包まれていた。紙人形。その一枚がオウカオーのコクピットへ入り込み、サコミズ王の手の上に落ちる。

 

サコミズ

「お、おお……。これは、これは、」

 

 その紙人形は、和装の少女をかたどったものだった。髪を結った少女の人形。それをサコミズ王は知っている。

 

サコミズ

「こ、これは……私の桜花に遺した。文金高島田の特攻人形!」

 

 瞬間、サコミズ王の視界に溢れ出したのは遥か昔の……忘れていた記憶だ。特攻兵として戦地に赴くことが決まった自分達を送り出すために、女学生達が用意してくれた特攻人形。女性経験などないまま死地へ赴くことが決まった迫水真次郎は、その少女の顔を見据えることができなかった。それは迫水真次郎特攻兵の、数少ない心残りだった。

 この紙人形は、その時にもらったものとよく似ている。手で触れ、撫でれば当時の記憶が蘇る。

 

リュクス

「その人形は、父上達を特攻に出すしかなかった少女達の、悲しみと感謝の印だったのではないのですか!」

 

 リュクスの叫びが、サコミズ王の……真次郎の魂に波紋を起こした。紙人形と共に思い出される数々の思い出。決して幸せな記憶だけではなかった。アマルガンと共に戦った日々も。王として初めて妻を喪った日も。最初の息子を流行り病で失った日も。祖国の為に、命を賭けて桜花でB-29へ突撃した瞬間も。

 それでも、幸せな瞬間もあった。リュクスの成長を見守る日々。リーンの翼のサンダルを託してくれた、リンレイ・メラディと肌を重ねた日。この特攻人形をくれた少女の言葉。

 

“生き神様でした……”

 

サコミズ

「そう言って……そう言って哀れんでくれた……!」

 

 長い孤独の中で忘れていたものが、胸の中に溢れ出す。その思い出に包まれながらサコミズ王は……迫水真次郎は、まるで魔法が解けたかのように急激に老けていった。

 黒髪は白く染まり、筋骨隆々とした体躯が小さく、縮んていく。まるで止まっていた時間が動き出したかのように、迫水の姿は老人のものへ変わり果てていく。

 

 だが、そんなオウカオーの、サコミズ王の変化とは裏腹に事態は深刻に進む。アッカナナジンを振り切ろうと駆けるシンデン。それを追うエイサップ。

 

エイサップ

「ロウリィィィッ!」

ロウリ

「ハハハハハ! 遅え、遅えんだよエイサップ! おめえはいつも肝心な時に間に合わねえんだよ!」

 

 勝ち誇り、核を高々と掲げるロウリ。だがシンデンの翼は、突如伸びてきた光の銃線に撃ち抜かれ、バランスを崩す。

 

キッド

「そう簡単に、やらせるかよ!」

 

 ブラスター・キッドだ。キッドはブライガーのブライショットで、遠くのシンデンの羽根を撃ち抜いたのだ。高速で移動するオーラバトラー同士の戦闘に割り込むのは、至難の業。コクピットを貫くのはキッドの腕でも一発とはいかなかった。それでも、両翼を撃ち落とし羽根を毟るくらいのことはできる。

 

ロウリ

「チィッ、だがなぁっ!」

 

 ロウリの判断は迅速だった。このままでは自分は助からない。だが、それでいい。シンデンは咄嗟に水爆を投げ捨てる。

 

ロウリ

「東京都民! 未来世紀最初の、核の火だぁっ!?」

 

 この国を変えたいというロウリの理念そのものは、ずっと一貫していた。故に、その行動に一切の迷いはない。

 

エイサップ

「ロウリィィィッ!!」

 

 バランスを崩したシンデンに、一瞬で詰め寄るアッカナナジン。オーラの刃は鋭利に、シンデンを真っ二つに斬り裂く。だが、

 

ロウリ

「エイサップ……俺の、勝ちだ!」

 

 機体がバラバラになるその瞬間、ロウリは核の起爆スイッチを押していた。ロウリの言葉からそれを察し、エイサップは投げ落とされた核兵器をキャッチする。数分の後、これは爆発し東京を死の街へ変える。それだけは、阻止しなければと。

 

槇菜

「エイサップ兄ィ!?」

 

 核兵器を持ったまま、ナナジンが上昇する。何をやるつもりなのか、槇菜は察し青ざめた。

 

マーガレット

「まさか、あなた!」

エイサップ

「核爆弾を持ったまま、成層圏まで上昇します!」

チボデー

「何だと!?」

 

 それは、つまり。

 

桔梗

「鈴木君、死ぬ気なの!?」

三日月

「…………!」

 

 自分自身を犠牲にする方法に他ならない。

 

竜馬

「ふざけんじゃねえ! 核なんざゲッタビームで……」

隼人

「ダメだ。もう火が入った核にゲッタービームやブライカノンを当てれば、最悪誘爆して全てを吹き飛ばす!」

ボウィー

「オイオイ、なんとかならねえのかよ!?」

アイザック

「残念だが……最も確実な手段はエイサップくんの言う手段しかない」

 

 確かに、超兵器で核弾頭ごと消滅させる方法はある。しかし、既に起爆スイッチの入った核弾頭だ。何が起こるかわからない。何よりも、時間が足りない。隼人とアイザックは、そう結論づけてしまっていた。

 

槇菜

「そんな……」

リュクス

「エイサップ!?」

 

 リュクスのギム・ゲネンが、アッカナナジンを追う。やがて追いついたギム・ゲネンはアッカナナジンの左手を握った。

 

エイサップ

「リュクス、ダメだ! こんなことに付き合う必要はない!?」

リュクス

「いいえ、エイサップ……共に行きましょう。どこまでも、私はあなたとなら」

 

 地上へ出て、初めて出会った青年。リーンの翼の沓に選ばれ、共に父に立ち向かってくれた男の子。エイサップをひとりで逝かせるわけにはいかない。リュクスのために、命をかけてくれたエイサップのために今こそ、リュクスも命を賭す番だと。

 

エイサップ

「……わかった。リュクス、エレボス。ワーラーカーレンへ還るぞ!」

エレボス

「おばあさまのとこ?」

 

 無言で飛び続けるアッカナナジンとギム・ゲネン。それをただ、見守ることしかできない槇菜達。そんな中、アッカナナジンの背後を取るものがあった。

 

サコミズ

「ナナジンにリーンの翼はないぞ」

 

 ドハツ・オウカオー。その巨体がアッカナナジンを突き飛ばすと、核兵器はナナジンの手を離れてしまう。

 

エイサップ

「しまった!?」

 

 ここからでは間に合わない。エイサップすらも諦めかけたその瞬間、核爆弾をオウカオーの左手が掴んだ。そしてアッカナナジンとギム・ゲネンをその羽根で振り落とすと、オウカオーは天高く舞い上がっていく。

 

リュクス

「まさか……父上!?」

 

 オウカオーの羽根が広がっていく。東京を、日本を覆わんばかりに広がっていく紫紺の羽根。まるでステンドグラスのように、或いは万華鏡のように色鮮やかな模様をした羽根が、日本の夕焼けを覆い被した。そして、

 

サコミズ

「リーンの翼が聖戦士のものなら……我が思いを守れ」

 

 瞬間、天に閃光が輝いた。眩い光はしかし、オウカオーの羽根に遮られ地へは届かない。その光景を誰よりも近くで見守っていたリュクスとエイサップの下に、無数の羽根がバラバラバラと舞い落ちていく。その中に、一枚の紙人形があった。ギム・ゲネンのコクピットを開き、リュクスはそれを拾う。

 

リュクス

「……………………!?」

 

 ボロボロの紙人形。それは、父の桜花に飾られていたものを真似て、幼い頃に自分が作ったものだった。父の誕生日に。聖戦士であり王である父に、小さな娘がしてやれるささやかな誕生日プレゼント。それを父は、心から喜んでくれた。

 

リュクス

「父上…………!」

エイサップ

「……………………」

 

 泣き崩れるリュクスを、エイサップは優しく抱き寄せ天を見上げる。オウカオーの羽根はいつしか消滅し、そして沢山の命の羽根が、空から舞い散っていた。

 これは、聖戦士の命の羽根だろうか。

 はたまた、一国の王のものだろうか。

 それとも、ようやく燃え尽きることのできた特攻兵の命だろうか。

 或いは、一人の父親の。

 

 

 

 ともかく、未来世紀62年8月15日。

 空は赤く、不思議なほどに羽根が舞い散る東京で。

 ひとつの戦争が、終わりを告げた。

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

 

—東京/新宿区—

 

 

 

 新宿郊外。デビルガンダム事件の爪痕も深い

そこにアッカナナジンは不時着している。核爆発が起きたにも関わらず、海上での放射線量は正常との連絡があり、エイサップは胸を撫で下ろした。少なくとも、サコミズ王の特攻は意味のあるものだったと信じることができたから。

 あの後、全てのマシンが機能不全に陥った。東京駅方面では、アルカディア号が不時着し他の機体を回収して回っている。だが、高く飛びすぎたナナジンとギム・ゲネンは新宿区に不時着し、回収を最後に回すのを余儀なくされていた。

 

自衛隊員

「お前は動かせないのか!」

エイサップ

「できませんよ!」

 

 今は自衛隊や民間組織が一丸となって、事後処理に回っている。フガクを筆頭としたホウジョウ軍も、オーラマシンのほとんどとオウカオーを失い戦争を続ける体力はなかった。今、停戦の条約が日本国と結ばれているらしい。

 

自衛隊員

「疲れてるのね、どうぞ」

リュクス

「ありがとう」

 

 リュクスは女性隊員から、温かい飲み物をもらっていた。ゆっくりと、口に含むリュクス。緑茶の芳香が、彼女の鼻腔を優しく刺激する。

 

エイサップ

「リュクス……よかった」

 

 目の前で父を失ったリュクスだが、それでも気丈に振る舞っている。その様子にエイサップは安堵し、彼女の側に寄り添うようにして肩を抱いた。

 

リュクス

「エイサップ……」

 

 エレボスは説明するのが面倒なので、ナナジンの奥に引きこもってもらっている。今は、二人の時間を邪魔するものはいない。それはリュクスにとってもエイサップにとっても、ささやかな幸福でもあった。そんな時、

 

敏子

「エイサップかい?」

 

 ふと、懐かしい声に呼ばれ振り返る。そこには母・敏子と、アレックスの姿があった。敏子は戦に出るための鎧のようなパイロットスーツを着ている息子に駆け寄ると、「こんな格好して、ああ……!」と涙ながらに訴える。

 

敏子

「無事でよかった……本当に……」

エイサップ

「心配かけてごめん、母さん……」

 

 そんな敏子から数歩遅れて、アレックスがやってくる。アレックスは軍帽を脱ぐと、穏やかな笑顔でリュクスに挨拶した。

 

アレックス

「エイサップの父の、アレックス鈴木と言います」

リュクス

「リュクス・サコミズと言います。以後お見知り置きを」

 

 アレックスの穏やかな顔と青い瞳は、どこかエイサップを思わせる。それは、確かな血の繋がりをリュクスへ実感させた。

 エイサップはそんなアレックスへ向き直る。色々なわだかまりを抱えた父。パブッシュ艦隊に席を置いていたはずの父。だが、今アレックスは名乗った。鈴木と、日本の姓を。

 

エイサップ

「……母さんと、暮らしてくれるの?」

アレックス

「ああ。事後処理が終わったら、私は日本に帰化する。敏子さんと一緒だ」

 

 そう言い切るアレックス。思えば、アレックスは昔から嘘だけはつかない人だった。だから今回も、そうなのだろうと思う。

 

エイサップ

「ありがとう……後で一発くらい、殴らせろよ」

アレックス

「いいよ」

 

 そう言って見つめ合う父子。面と向かってアレックスの顔を、こんなに正直な気持ちで見つめることができたのはいつ以来だろう。そんなことをエイサップは、考えていた。

 

 

 

…………

…………

…………

 

—???—

 

 

 ここはパラダイム・シティ。記憶喪失の街。この街は40年以上前のメモリーを失っている。そんな街の一角に居を構え、ブランデーを嗜む紳士がいた。男は一冊の本を開き、ページをパラパラと捲りながら思案する。

 題名は“メトロポリス”。作者の名はゴードン・ローズウォーター。

 その本には、巨大な機械のロボット達が世界を滅ぼす、終末戦争の様子が描かれていた。

 

ロジャー

「……どうやら、動き出したようだな」

 

 “厄祭戦”と呼ばれる、幾度となく繰り返される宇宙の終末戦争。どうやら、またその時が来たらしい。ロジャーは傍に控える執事のノーマン・バーグを呼びつける。

 

ノーマン

「ロジャー様、いかがいたしました」

ロジャー

「ノーマン、私とドロシーはしばらくこの街を後にすることになる。それまでの間は、食事の用意はなくていい」

 

 ロジャーがそう言うと、ノーマンは和かな笑顔で応えるのだった。

 

ノーマン

「承知しました。お帰りはいつ頃で?」

 

 そう言われるとロジャーは、暫くの間考える風に上顎に手を添える。そして、

 

ロジャー

「この街に、私が必要になる頃には戻るとするさ」

 

 そう言って、フッと笑って見せるのだった。

 

 

 

 私の名はロジャー・スミス。

 この街ではなくてはならない仕事をしている。

 だが、私の仕事を必要とする声はこの街に留まることはない。

 もし、私の力が必要になったならば、私は可能な限りその依頼に応えよう。そう、ネゴシエーターとして。

 だが、時には交渉の余地の存在しないものがいる。人の、命の自由を奪うもの。歴史、記憶を利用するもの。

 そう言った輩には、全力で立ち向かうまでだ。

 そう。

 

ロジャー

「ビッグオー、ショータイム!」

 

 

 

…………

…………

…………

 

 

 

—“厄祭戦”の墓場—

 

 

 ゲッターエンペラーが臨界を迎えることで、アルカディア号を、ゲッターロボを地上へと送り返した次元の、宇宙の狭間。そこに一機のロボットが降り立っていた。

 そのマシンは赤く、鬼のような姿形をしている。ゲッターロボ。その姿と名前を知る者は誰もがそうとわかる風貌をしていた。だが、竜馬達の乗っていたゲッターではない。

 

拓馬

「ここは……?」

 

 ゲッターのパイロット・流拓馬は周囲を観察する。辺り一面、ロボットの残骸。その中に、一際目立つものがあった。

 

「気をつけろ拓馬。あのどデカい繭から過剰なゲッター線反応がある。俺や拓馬はともかく、カムイは近づくだけでまずいレベルだぞ」

カムイ

「…………」

 

 

 同じくゲッター乗組員の山岸漠が拓馬に忠告し、そして緑色の肌を持つ少年・カムイはその繭と呼ばれたものを見据える。

 

カムイ

「エンペラー……」

拓馬

「何っ!?」

 

 ゲッターエンペラー。彼らが倒すべき存在の成れの果てだとカムイはそう、直感していた。

 

拓馬

「エンペラーがこんな姿に……それじゃあ、辻褄が合わなくないか?」

カムイ

「わからん。だが、この次元はゲッターの特異点から逃れた宇宙なのかもしれん」

「それじゃあ……!」

 

 拓馬の脳裏によぎるのは、“厄祭戦”の最終局面。宇宙のリセットを行おうとする巨神と、果てなき進化を望むエンペラーが激戦を繰り広げた。その結果巨神とエンペラーは共に倒れ、世界は救われた。

 

拓馬

「ってことは、この世界はエンペラーなしで“厄祭戦”を迎える……巨神の暴走を止めなきゃならねえのか!?」

カムイ

「そういうことになる」

 

 暴走する意志と意志の対決。そこに運命を委ねるわけにはいかない。しかし次の“厄祭戦”は、進化の意志を司るものが不在のまま迎えることになる。

 

???

『竜馬……』

拓馬

「何ッ!?」

 

 繭から、声がする。それはどこか懐かしい、しかし聞き覚えのない声。

 

???

『いや、拓馬か」

拓馬

「俺を知ってるのか!?」

???

「知っているとも。ワシはエンペラーと共に宇宙に接続し、全てを知った。故に……」

 

 重い声が、3人の脳に直接響く。その感覚は決して初めてではないがしかし、気分の良いものではない。

 

???

「拓馬、カムイ、漠。お前達に告げる。“厄祭戦”は、もうすぐそこまで迫っていると!」

「な!?」

カムイ

「やはり……!」

 

 その声を受けて、拓馬たちの乗るゲッターは繭から踵を返す。この宇宙が今、虚無に包まれようとしている。それを打ち砕くために彼らは、宇宙を越えて旅を続けているのだから。

 

拓馬

「カムイ、漠。一気に通常空間に出るぞ。しっかり捕まってろ!」

カムイ

「フン、拓馬。焦ってハジをかくなよ!」

 

 飛び立ち、光と同化していくゲッター。3つの心を1つにし、今新たなゲッターが舞い上がる。

 

???

『行け! ゲッターロボアーク! 宇宙の果てで命を燃やせ!』

 

 マシンの墓場で、早乙女博士の声だけが強く、強く響き渡る。最後のゲッターロボ・ゲッターロボアークはその声を背にしただ、次の戦場を求めて旅立つのだった。




第三部追加参戦作品

機動戦士Zガンダム
機動戦士VS伝説巨人 逆襲のギガンティス
THEビッグオー
ゲッターロボアーク
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