動物さんとお話出来ます 作:知能が少し弱い
今日は出張です。出張先は刑務所です。こわ~い。
もちろんわたしが逮捕されたわけではありません。
尋問しても口を割らない犯罪者相手に、わたしの個性を試したいとわたしの雇用主は言っていました。
清廉潔白で純真無垢なわたしの聖人ぱわ~で更生させたいんですね。分かります。
ほかの人は犯罪者の反応を観察するようですけど、わたしのすることは普段と変わりません。お話しするだけです。わたし、お話しだ~いすき。
何を話しても良いと言われているので、今日はためになるお話しをしようと思います。
まずは、相手の話を聞いてみますが、お話ししてくれませんね。仕方ありません。こういうときは諦めず話しかけているといつか心を開いてくれます。
一度心を開いてくれれば、あとはひたすら肯定するのです。
そうです。あなたは何も悪くありません。多数決で決められた意見は必ずしも正しい訳ではありません。間違っているのは社会です。あなたには幸福になる権利があります。
しかし、社会の方が間違っていてもあなた個人で社会を変えることは困難でしょう。
だから、あなたには2つの選択肢があります。
ひとつは逃げることです。逃げることは決して悪いことではありません。例えば、生き甲斐を見つけることもこれにふくまれるのですから。不満な状況を生き甲斐で誤魔化すというのは、いわばアルコールに溺れているのとなんら違いはありませんが、それも賢い生き方です。わたしはそれを肯定的に捉えています。
とはいえ、そうそう簡単に生き甲斐が見つかるものではありません。だから候補を紹介してあげましょう。
例えば映画鑑賞です。復讐ものの映画とかいいですよ。爽快な気分になります。やっぱり嫌な目にあったら反撃したくなるのは本能的なものですよね。
あとは、料理とかもいいです。料理は心を豊かにしてくれます。まずは魚を捌くのです。そこから、鶏や豚と難易度を上げていくとさらに良しです。そうやって解体できる動物の種類を増やして行けば、おのずと料理の幅も広がるでしょう。自分で作った料理を自分で食べて、うまい。これはあなたのすきな動物肉のステーキだ!ということが出来るのです。この料理を作ったのは誰だと言われたとき、名乗り出ることが出来るのです。良いと思いませんか。
もうひとつの選択肢は仲間を募ることです。個人では出来ないことでも大勢なら実現できます。未来はみんなの力で作り上げるものなのです。社会体制だろうと憲法だろうとみんなが力を合わせれば思いのままです。
さあ、仲間を集めましょう。
刑務所にいて自由がないから出来ない。囚人で信頼が得られないから出来ない。お金がないから出来ない。そんなことはありません。
出来ない理由を探しているだけではありませんか。
まずはわたしと、そしてわたしの後ろであなたに興味を抱いているヒーローさんたちと会話をしてみましょう。
お話をしようとした時、最も大切なものは、関心です。無関心な相手とお話しするのは難しいですが、この一番の難所を彼らはクリアしています。
しかも、あなたにとって幸運なことに、彼らはヒーローです。あなたの悩みに親身になって答えてくれるでしょう。むしろ、答えてくれなければ訴えてやる、ねがてぃぶ・きゃんぺーんをしてやるというくらいの意気込みで話しかけた方がヒーローたちも喜ぶに違いありません。
もちろん、わたしに話してくれても結構です。
はい、これはわたしの名刺です。何か困ったことがあれば、この連絡先にお願いします。就職先を探したいとか住居を探したいとか生きていく上では様々な悩み事があると思います。
また元気な姿でお会いできる日を楽しみにしています。
お話が終わった後、時計を見ると6時間近く経過していました。びっくりです。
ヒーローたちは、これからお話をするようですが、わたしの仕事は終わりです。帰宅する頃には定時を越えているのでもう帰っちゃいましょう。直行直帰です。
帰宅途中で気付きました。すごくのどが渇いています。ちょうど自販機もあるので買っちゃいましょう。
珍しい飲み物が売っていたので買って手に取った時、近くの茂みがガサガサしたと思ったら変態さんが出てきました。きれいだきれいだと繰り返しているのでわたしの美しさを理解しているのでしょう。格好は奇妙ですが、感性は一般的みたいです。見所がありますね。
嬉しくなったわたしは、初めて自販機で売っているのを見た珍しい飲み物を上げることにしました。辛さ10って書いているカレーです。思わず買ってしまいましたが、辛いのは苦手なのでどう処理しようか迷っていたのです。自分用に麦茶を買って飲みます。やっぱりこの味落ち着きます。
見所のある変態さんが肉見せてなんて可愛らしいことを言っていますが、残念ながらそのカレーに固形の肉は入っていないでしょう。内容物に豚や牛のエキスしか書かれていないので。文句はメーカーにどうぞ。
少し世間話をした後、さよならと別れを告げたのですが、仕事しなきゃって言いながらも変態さんはわたしに付いてきます。わたしの魅力にやられちゃって仕事を放棄しているのかなと思いましたが、今日話していた内容を思い出しました。
変態さんは実は変態ニートさんで就職先が欲しいのではないかと。奇抜な格好も面接に行くための服がほかに無かったのでしょう。確かに普通のところではその前衛的なファッションは受け入れられないと思います。お肉見せてって言ったのも金欠で最近お肉を食べられなかったので久しぶりに食べられると思ったら、エキスしか入ってなくて思わず口にでたのでしょう。なんて悲しいことですか。わたしが拾ってあげましょう。
でも、仕事しなきゃという思考は良くないです。周りから就職しろ仕事しろと言われてそうなってしまったのだと思いますが、仕事は楽しくするのが二番です。一番は仕事しないで生活出来ることなので二番です。
変態ニートさんのような被害者が増えないためにどうすれば良いか。あと、わたしが不自由なくお話をして生きていくためにどうすればいいか。もちろんわたしはお天道さまの元で堂々と生きていく予定なので合法的な手段で。
考えた結果、わたしはわたしなりの結論を出しました。この社会を変えるのです。どのような手段でどの部分をどう変えれば最適か分かりませんが、そこは試行錯誤と人海戦術です。数打てば当たります。まずは仲間集めです。SNSを使うのです。世界中のみんなとお話しするのです。
なんだかやる気がわいてきました。明日の活力を蓄えるためよく食べよく眠りましょう。今夜は魚料理です。