TS転生したら怪しげな教団に拾われた   作:糖分が足りないぞ

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第5話

「さっき見ていた記事の内容、面白かったですか?」

 

ピザを口に運びながら僕はそう問いかけた。彼の持っている情報を確認しておきたかったのである。もしかしたら、僕が知らないことまで知っているかもしれない。

 

「あー、どうしても気になっちゃってさ」

 

バツが悪そうに目線をそらした星野君。責められているとでも思ったのだろうか?

 

「別に責めているわけではありません。自分から危険に突っ込んでほしくはないですが、情報収集は自分を守る過程で必要になることですから」

 

興味を持つなと言う方が無理な話だし。

 

「それで、興味深い内容は書いてありました?」

 

「…あんまり役に立つ情報はなかったな。ニュースでやってるのに少し追加情報があったくらいだ」

 

「…状況を整理しましょう。ニュースで報道されている情報を並べますね。9人殺しの連続殺人事件、ここ数週間で行われた犯行だと言われていますが、その手口は一切判明していない。目撃者はおらず、動機も犯人像も不明。犯行にはナイフのような鋭い刃物が使われていること。このくらいでしょうかね、報道されている内容は」

 

「あー、あの記事を書いたジャーナリスト曰く、被害者に共通しているのはのどを切り裂かれて出血死していること。そして、打撲痕が残っていること。それと、殺害されている人の数は必ず一人であること、らしい」

 

僕は昨日のことを思い出していた。確かに、僕が助けに入る直前星野君は殺人鬼に蹴り飛ばされていた。そう、あそこでナイフを振るえば殺せていた可能性があったのにもかかわらずだ。何かしらのこだわりがあると見るべきだな。

 

もしくは………。暗い表情の彼を見ながら、仮説を検証する手段を考える。それにしても、さっきから星野君に落ち着きがない。何か焦っているような、不安に殺されているような感じなのだが。

 

「まあ、犯人はわかっているわけですし思いつめる必要はないですよ」

 

………ああ、見落としてた。彼が暗い理由は、別のことか。

 

「なあ、ずっと気になってたんだけどさ、喫茶店で犯人に狙われるとしたら俺と桜さんで、妹や家族には危険が及ばないって言ってたよな?あの時は深く聞かなかったけど、本当に大丈夫なんだよな?家族は狙われないんだよな」

 

星野君が心配していたのは、自分よりも家族の安全だった。

 

「星野君の心配はもっともですが、そんなに気にしているなら何故あの時僕を疑わなかったのですか?家族に危害が及ぶ可能性は低いという僕の言葉には、説得力があまりなかったはずですけど」

 

あの時は自分に迫る危機と異常で過剰で不可思議な情報に困惑しているから深く突っ込まないのかと思っていた。だが、違うらしい。

 

「俺があの時疑問を挟まなかった理由は、君を信頼しているからだ」

 

彼はまっすぐと僕を見て、そう言葉の暴力を叩きつけてきた。

 

「僕とあなたの付き合いは信頼を獲得するに足るものではないはずですけど」

 

なにせ、数十時間の付き合いだ。

 

「………水原さんからするとそうなのかもな。でも、俺からすれば命の恩人を信用しない理由の方が思い浮かばない。それに昔言われたんだ。人から信頼される条件は、人を信頼することだって」

 

「………それは、なんとも」

 

「ま、結局心配になって水原に疑問を挟んでるんだから、カッコ付かないけどさ………」

 

それは違う。無条件の信頼は、ただの愚行だ。星野君は正しい。正しすぎる。彼は、ある程度の疑問を残しながらも、冷静な状況判断と器量を持って人を信頼しているのだ。

 

それがわかってしまうからこそ、僕は自分が憎かった。

 

「理由は三つあります。一つ目は、喫茶店でもお話しした通り顔を見られたのは、星野君と桜さんだけだからです。殺人鬼が凄まじい情報網を持っていない限り星野君の家族までたどり着かないでしょう。二つ目は、殺人鬼は昨日の時点で僕という能力者の存在に警戒しているからです。おそらく、反撃されたのは初めてでしょうから彼も状況を整理する時間がいるのでしょう」

 

「三つ目は?」

 

「三つ目は、彼が優秀な能力者だからです。星野君を殺すために家族を人質にするなんてことをしなくても、彼はあなたを殺すことができるんです。最優先事項は、顔を知っている人間の排除。それに必要なのは、僕の排除とあなたを探し当てること。もちろん、警察は能力のことを信じないから星野君をスルーして殺人を続けるという可能性は無きにしも非ずですが、それはそれで星野君の家族を狙う理由が消えますから」

 

まあ、僕という自分の能力の影響から逃れた人間を知った時点で、警察に相談に行かれるのは避けたいと思うだろう。仮に、僕と同じような人間が警察内にいると仮定すれば、顔バレは自分の首を絞めることになる。

 

「なるほどな」

 

「もう一つ聞いてもいいか?」

 

「いいですよ」

 

「能力者についてなんだけど、水原もそうなんだよな?」

 

厳密に言えば違うが、大雑把なくくりでいえばそうだろう。

 

「そうですね」

 

「結構、いるものなのか?能力者ってのは」

 

「………一つの街に5人いれば、多い方です。基本的に能力者は、世界中にいます。今回の殺人鬼のように派手に動く能力者は稀ですが」

 

教団のメンバーは9割が、僕が能力者にした人間。天然の神戯使いは30人くらいだ。神父の話だと、天然の神戯使いは日本とイギリス、そしてアメリカに多く存在しているようだ。

 

20年前の件で、神戯使いは急激に数を増やしたがそれでも天然と養殖合わせ、1000人にも満たないと言われている。

 

教団のような神戯使いを集めた組織は、海外にも存在しており、神戯使いはそういった組織のある国に偏っている。

 

「一応、僕視点の能力者………僕や知人は神戯使いと名付けていますが、神戯使いの立ち位置について説明します」

 

「ああ、頼む」

 

「神戯使いという存在は、一部の国の上層部で認知されています。アメリカや日本、イギリスでは、神戯使いを管理下に置くための組織が存在しています。管理下に置くと言っても、対応は各国によって様々ですがね。よく、SF映画で超能力者が人体実験の道具にされていますが、アメリカの現状は正しくそれです」

 

「………!」

 

星野君は情報量の多さに目を回していたがその話を聞いて、少し顔を歪めて下を向いた。凄まじい理解力だなあと思う。

 

「イギリスと日本は最低限の接触を行った後は基本干渉してきません。ただし、例外が存在します。それは神戯を使用した大規模なテロや事件を起こした場合です。まあ、まとめると神戯使いの立場はかなり不安定で、目立つことは特になり得ないということです」

 

「………正直、思ってたよりもはるかにスケールの大きい話でビビってる。っていうか、現実感が湧かない………」

 

「正常な反応ですよ。普通は都市伝説として語られていることですから。無理に理解する必要はありません。どうせ、この件が片付けば非日常とはおさらばできますからね」

 

僕はそう言って強制的に話を打ち切った。どうせ、記憶を消すのだからこれ以上話す必要性もないし、そんな気もない。

 

「星野君、気分転換しましょう?」

 

その後、海外のドラマのブルーレイを再生して、僕と星野君はだらだらと時間を過ごした。流石に、連れて来た星野君をほっぽって部屋でゲームをしているのは忍びない。しかし、明日も平日だし色々あって気が立っているだろうから、早めに休むことを提案した。

 

結果、ちょうど深夜の1時半を回って目がしばしばしてきたところでお互い寝ることにした。

 

「使ってない部屋があるので、そこを使ってください」

 

眠いと言っても目まぐるしい状況のさなかで、寝れるかどうかは不明だけどね。

 

 

 

朝、目を覚ましリビングに行くと、制服に着替え終わった星野くんがソファーに腰掛けてウトウトと舟を漕いでいた。

 

案の定、眠ることはできなかったらしい。

 

「おはよう」

 

そう声をかけて、時計を見る。家を出るまでにかなり余裕がある…。

 

「眠そうだな?」

 

「星野君の方が眠そうですよ?」

 

僕はキッチンへ行き、食パンを2枚焼いて皿に乗せて、星野君の元まで運ぶ。

 

「こんなものしかないけど」

 

皿を受け取った星野君は、一瞬考えるような素振りを見せたがすぐに笑顔になった。

 

「いや悪いな十分だよ、ありがとう」

 

高校生の男の子からすればかなり物足りないはずだが彼はそう言った。ちゃんと料理すれば色々出せるのだが、残念ながら僕にそんな料理スキルはない。いや料理自体はできる、自炊もする。

 

だけど、味は保証できないしそもそも朝からそんなに動きたくない。僕は眠いのだ。

 

「今日の予定ですけど、普通に学校に行った後、喫茶店に集合して泉さんのお宅に再度訪問しましょう。いいですか?」

 

「ああ、俺はそれで構わないよ」

 

何か聞きたそうだった星野君を無視して、僕は話を続けた。それは学校での僕らの振る舞いや距離感についてだ。面倒くさいので、知り合い以上の距離感で接するのはやめてもらう。

 

「あと、星野君は先に学校に行ってくれませんか」

 

一緒にいるのを極力見られたくないので。そう言ったら、ちょっと星野君が悲しそうにしていて興奮した。何でだろう。そういう趣味はないはずなんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「13番目の悪魔という都市伝説を知っていますカ?」

 

3年前、とある事故をきっかけに人々に捨てられた廃都市。そこに残ったビルの屋上に立っている少女に神父は話しかけた。

 

朽ちた建物の鉄骨の隙間を吹き抜ける風の音が、二人を誘い込むように響いている。

 

「肯定。13人の生贄を捧げることで願いを一つ叶える悪魔の都市伝説だと記憶している」

 

無表情の少女から吐き出されるその声色は、あまりにも平坦で熱がなかった。常人が話していれば機械と話していると錯覚しただろう。

 

「ええ、その通り。一時期流行った都市伝説ですが、それは表の認識ですヨ」

 

「事実であることは予測している」

 

「ええ、そうでしょう。ですが、そうではないのですヨ。これはそんなに単純な話ではないのです。なにせ悪魔の正体は神戯使いではないのですから」

 

「………疑念。この時代では力ある怪異は存在できぬ」

 

「そうですネ、その認識は間違ってはいません。ですから、前提が違うのですヨ」

 

「人間にあらず、怪異にあらず。であれば………」

 

神父は凄絶に嗤う。少女が答えを出し、そしてその解に不快感を抱くであろうことを予想して。

 

「ああ、貴方と同類でもないですヨ?人の執念が原料であるのは同一ですがネ?」

 

「………神戯か?」

 

少女の口から正解がこぼれた。

 

「正解です!かの悪魔は、とある人間が神戯に自我を与えた末に生み出された負の遺産ですヨ」

 

「理解。そして不可解。汝の意図が見えぬ」

 

「…私の予想では鏡花クンはあの悪魔の存在を看過できなイ。彼女は、悪魔を消し去ってしまうでしょウ。彼女にはそれができる。ですが、それはあまりにも惜しい」

 

神父の言葉に色が付き始める。演説するように腕を広げ、誰もいない廃ビル群に叫ぶように告げる。

 

「叶えられる規模に限界はありますが、それを解決できる存在が私の手元にはある!故に!」

 

「我にその悪魔を救えと?」

 

「できれば、捕縛してください。私のために、そして貴方のために」

 

「………理解、承諾」

 

承諾の言葉を吐くのに要した時間の刹那、少女は僅かに顔を曇らせた。

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