原作を筋にするか、嫌われを筋にするか悩んだんですが、嫌われにすることにしました。
この話と、設定集を書いて、様子見て続けるか考えます。
夜の守護者
暗闇に支配された夜。それを照らす筈の月明りは分厚い雨雲によって遮られている。
その雨の中、ある港である取引が行われていた。取引している物は麻薬で、そこにはコスプレかと思うような派手な格好をしている者もいた。そう、ヒーローである。
彼らは、仕事もなく、退屈な日常に嫌気がしていた。そこで、麻薬を街にばら撒き、それを自分が解決して活躍するという自作自演をやろうとしているのだ。
「しかし、よくこんなにヤクが手に入ったな」
「ああ。変な男が融通してくれたんだ」
「おい! そこの二人!」
下っ端の二人がそんな雑談を繰り広げていると、彼等よりも格が上と思われる男が二人に声を掛けた。
「コンテナの中にある荷物運べ!」
「「う~っす」」
下っ端二人は気の抜けた返事をしてコンテナの元に向かった。
「ったく、やってらえねぇよな」
「全くだ。俺なんか、今日は用事あったんだ」
「どんな用事だよ?」
二人は雑談を続けながら、開いているコンテナから荷物を運び出していく。そこに、カンッという金属同士がぶつかるような音がした。
「ん? なんだぁ?」
「俺が見てくる」
一人の男が見に行くと、そこには
「こ、これって……!」
男は急いで仲間がいた場所に戻るが、そこには誰もいなかった。
「お、おい! どこ行ったんだよ!?」
「後ろだ」
「うわぁあああ!!」
男は、背後の何かに襲われ、倒されてしまった。
そこに、叫び声を聞きつけて
「おい、こりゃ何だ!? 誰がやったんだ!?」
「抵抗した跡すらねぇぞ?」
「たぶん、個性を使う間もなかったんだ。第一、コイツの個性は少し遠くが見えるって言う没個性だ」
「おい、もう一人は!?」
一人の頭に角が生えている男が、もう一人の男が何処に行ったか尋ねる。確かに、ここにはいない。
周りを見渡すと、一人の男が見つけ出した。
「コンテナの中でグッスリだ」
「中に引きずり込まれて気絶したのか……」
「そういや、コイツって暗いとこ苦手だったよな」
「個性〝怪力〟なのに、発揮することもできず暗闇に引きずり込まれたか」
そうやって、敵たちが推測の仮説を立てていると、一人の男が上を向いて呻き声を上げていた。
「何だ?」
全員が次々と顔を上げる。そこには、黒いマントを背に纏う男が蝙蝠のように頭を下にしてぶら下がっていた。
「て、敵襲!」
男は、マントを広げ空中を滑空して敵たちに襲い掛かった。降りてきた瞬間に、近くにいた敵の顎に掌底打ちを決めて一発で気絶させる。そこから、後ろにいた二人の頭を肩と腕を使い、ヘッドロックの要領で掴み、背負い投げの要領で腰を曲げて投げ飛ばし、前にいた集団をボウリングのピンのように倒した。
そこから、配電盤の近くにいた男に蹴りを入れ、よろめい隙に頭を掴み、配電盤に頭を突っ込ませて感電させて倒す。そこに、男が横から突進してきたが、さっき囮に使ったブーメラン〝バットラング〟を喉元に投げ、呼吸困難に陥らせて気絶させる。
敵を倒し終えたことを確認した男は耳のあるところに手を当て、ある場所に電話した
『はい、塚内です』
「汚職を働いたヒーロー二人含めたヴィラン十二人。鎖で縛ってある。ヤクも抑えた」
『さすがだ。仕事が早いな』
「回収は任せた」
『ああ、分かった』
男は、電話を終えてスーツの中にしまうと、ベルトに付いた空気圧式のフックガン〝グラップネル・ローンチャー〟を上に向けて発射し、マントを広げて空を飛ぶ。高いビルの屋上に着地すると、男は街を見下ろした。
彼の名は、バットマン。本名を、緑谷出久という。
彼がこうなったのは、一ヶ月半前のことだった……
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一ヶ月半前、緑谷出久は雄英高校を除籍となった。理由は、普通科の女子生徒を性的暴行を加えた容疑でだ。
しかし、これはただのデマである。
だが、一年A組は、雄英は、それを信じてしまった。
そこからは、虐めと暴言、虐待の嵐だった。オールマイトからはワンフォーオールも取り上げられ、出久は無個性に逆戻りした。残り火も残らぬよう執拗に拷問して。
そうして、雄英を去った先に待っていたのは、母からの拒絶だった。
「いい加減にしてっ! アンタに振り回されるのはもうたくさん! 出てって。もう、二度と戻って来ないで!!」
そのあと、出久は大雨の中、かつてゴミに埋もれていた浜辺で体育座りをしていた。今では、ゴミは無くなり綺麗な水平線が続いており、デートスポットとしても有名だ。しかし、今は大雨の影響で大しけである。
(僕が何をしたって言うんだよ)
彼は、もう限界だった。信じていた
(………この広い海に飲み込まれても、誰も気にはしないよね)
そう思い、出久は立ち上がって海に向けて歩き始めた。
その時、
「────出久君?」
「え?」
声を掛けられたと認識した出久は、後ろを振り返った。そこには、傘を差した老人の男が経っていた。出久は彼を知っていた。よく、ヒーローの話をしたりしていた友人だ。今の出久にとっては唯一の友かもしれない。
名は…
「ルーシャス…さん?」
「おお、覚えていてくれましたか。会えて嬉しいよ。でも、何故ここに? 学校はどうしたんです?」
ルーシャスは人の良さそうな笑顔で出久に挨拶をしてから、疑問をぶつけた。
出久は、彼になら話してもいいだろう、と思い今迄にあった事を話した。濡れ衣を着せられたこと。それが理由でいじめられたこと。学校を退学になったこと。母に見捨てられたこと。すべてに絶望し、海に入って死のうとしたこと。
途中から話している場所は、海からルーシャスの家に変わっていた。なんでも、アメリカで社長をしており、日本での暮らしに憧れて今は日本で暮らしているのだとか。
話を聞いていたルーシャスは、ただ一言「そうか」と言って、出久の頭を撫でていた。それで、ずっと張っていた気が緩んだのだろう。出久の涙腺は崩壊した。
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「すみません、見苦しいものを見せて……」
「なに、あれぐらい気にはしませんよ。人間、誰だって辛い事はあるんですから」
そう言って、ルーシャスはココアを二杯持ってきた。一杯は出久に、もう一つは自分に。
ココアの入ったマグカップを出久に渡して、椅子に座ったルーシャスは、ココアを一口飲んで口を開いた。
「出久君、前に私にも一番好きなヒーローがいるって話、覚えてます?」
「は、はい」
「実はね、その人ヒーローじゃなくてヴィジランテだったんです」
出久はその事実に驚愕した。そのあと、「まぁ、そのヴィジランテの装備を私が作ってたんですけどね」と言ったルーシャスの言葉にさらに驚愕した。
なんでも、前にルーシャスがいた街〝ゴッサム・シティ〟は犯罪が絶えず、表裏の両方の社会から〝犯罪都市〟と呼ばれていたそうだ。何せ、普通のギャングやマフィアだけではなく、警察にヒーロー、地方検事まで犯罪をしていた。
中には、街を破滅に追い込んだテロリストやピエロ姿の愉快犯もいたらしい。
真に正義の心を持つ警察、ヒーローは動けなかった。そこに現れたのが、ルーシャスのいうヴィジランテ〝バットマン〟だった。空を飛んで、ロケットエンジンを積んだスーパーカー並みの速度が出る戦車で街を走り、犯罪者集団を叩きのめしたヴィジランテ。
バットマンの活躍に心打たれた警察やヒーローも動き出し、ゴッサムは小さい犯罪は絶えないが、それなりの平和を手に入れたのだという。
「今、そのバットマンって人はどうしてるんですか?」
「さぁ? 何せ、「自分が死ななければ、街は真に平和にならない」なんて言って、死んだ芝居までした男ですからねぇ。今頃、南の島で相棒の執事とバカンスしてるんじゃないですか?」
ちなみに、ルーシャスは冗談で言っているのだが、実際、本当に南の島でバカンスしていたりする。それも、美女に囲まれて。
「けど、そんな凄い事を成し遂げるなんて、きっと、すごい個性を持ってるんだろうなぁ」
「言い忘れてましたけど、バットマンは出久君と同じ無個性ですよ」
「ブフッ!?」
出久は、ココアを噴き出した。幸い、マグカップを口に着けているときに言われたため、床にはこぼれていない。
「無個性!? けど、さっき空を飛んでって……!」
「フックガンで空中に飛んで、マントをハンググライダーにして滑空してるだけですよ」
「それに、敵たちを叩きのめしたって……!」
「体を鍛えてれば、個性を持った相手でも戦えますよ」
出久はすごいと思った。憧れたからではなく、平和にしたいから戦う道を選んだ。今時、そんな理由で正義のために戦う人は少ないだろう。どこぞのブドウ頭など〝女子にモテるため〟なんて理由で、ヒーローを志すほどである。
「出久君。なんで私がこんな話をしたか知りたいかな?」
「……はい」
「ついてきて」
歩いていくルーシャスとその後をついて行く出久。ちなみにだが、ルーシャスに家はかなりデカい。豪邸と言っても過言ではないだろう。出久がそう思っていると、目的の場所に付いたのかルーシャスが立ち止まった。
「ここです」
そう言って、扉を開けると、そこには様々な物が置かれていた。何個もある黒光りしたスーツケース。剣や蝙蝠の形をしたブーメランなどのガジェット。そして、一番目を引くのは部屋の奥、真ん中に飾られている鈍い黒が光る金属で出来たヒーロースーツ。床の商品名のように置かれている三角柱を倒したようなプレートには、『BAT SUIT:V8.03』と書かれている。
「凄いでしょ?」
「す、凄いです! 凄すぎる!」
出久は、興奮したように目を輝かせて部屋の物を観察している。それを、ルーシャスは嬉しそうに眺めていた。
「やっと笑てくれましたね」
「あ………」
出久は、そういえば確かに、と思った。実際、出久が最後に笑ったのは、冤罪に嵌められる1時間前なのだ。
「私が君にこれを見せたのはね、出久君、君にお願いがあるんです」
「お願い……ですか?」
「ええ。ここにあるスーツやガジェットはバットマンが使う筈だった物だ。まぁ、バットマンが死んだ事になって使い所が無くなったんですがね」
実際、スーツに使用してるチタン合金を手に入れるのに100万ドルかかったそうだ。日本円にして、約一億六千万円以上。
「これを見せたのは、出久君にバットマンになってほしいからなんだ」
「ええ!? 僕が、バットマンに!?」
「ええ。実際問題、使わないまま飾っておくのは忍びないんでね。それに、貴方もたかがヒーロー学校を退学されたぐらいで
出久は迷った。ルーシャスの言う通り、ヒーロー学校を辞めたぐらいで出久の夢は諦められるモノではない。しかし、いざ、ヒーローになっても、
「分かりました。やってみます!」
だが、出久は戦うことを決めた。
「僕の力で、どこまで出来るか分からないけど…僕は、困ってる人を救いたい。だから、やります!」
「そう言ってくれると思いましたよ」
ルーシャスは微笑みながらそう言った。
「けど、一つ気になることが……」
「ん? なんです?」
「バットマンやってて顔バレとかしませんよね?」
「ああ、それなら心配は無用だよ。バットマンの仮面なら、眼の虹彩を鑑定するぐらいでしか顔は特定されませんからね。それも、虹彩を鑑定するとなると静止することが大事だ。激しい動きをするバットマンなら顔バレなんてしないでしょう」
こうして、出久はバットマンになる決意を固めた。
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「ところで、僕はなんで筋トレを?」
バットマンになる覚悟を決めた翌日。出久は、ルーシャスの家のトレーニングルーム*1で筋トレをしていた。
「身長が足りないんです」
「身長?」
「ええ。バットスーツの身長は182㎝。けど、出久君の身長は166㎝と小さいんですよ。そこで、さっき飲ませた薬品の出番というわけです」
実は、出久は筋トレを始める前にルーシャスにある薬品を飲まされていた。効果は後で説明すると言われたので、その時は聞かなかった。
「あの薬品は、前にウチの会社が作った身体増強薬でしてね。さっき飲ませたのは、それを効果を薄めて身長を伸ばすだけに留めた物なんです」
「ちなみに、効果をそのままにしたらどうなったんですか?」
「速い話、量産型のオールマイトですな」
「なにそれ、こわっ」
実際、敵にこの薬品を盗まれて、使われたときは前代のバットマンは結構苦労したらしい。
こうして、半月の間筋トレをして身長を伸ばした出久は、見事身長182㎝の体を手に入れた。某盾が武器のヒーローもビックリの身体改造である。
その後、出久はバットマンとして活動を始めた。
この小説を続けるかどうか
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このまま続けてほしい
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原作に沿って続けてほしい