恐怖の象徴   作:ヴェルザ・ダ・ノヴァ

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メチャクチャ高評価だったんで続けます!応援ありがとうございますm(__)m

今回の話は、出久が雄英を退学して三週間ぐらいです。雄英で期末テストが終わって一週間後あたりです。


共同戦線

 熱い七月の太陽が地面を照らす昼頃、あるミニサーキット場で、大砲のついていない戦車のような黒い車両が猛スピードで走っていた。ドリフトをしたり、ロケットブースターでスピードをあげたり等、試運転のような事をしている。

 

 サーキットを二、三周すると、ピットのところにドリフトしながら停車した。すると、フロントガラスの部分とボンネットとバンパーが融合してる部分が前にズレ、運転席が現れる。そこには、緑がかった癖毛とそばかすのある青年、出久がいた。

 

 出久は、車から降りるとピットに向かって歩いていき、車の走行データを取っていたルーシャスが話し掛けてきた。

 

「バットモービルの運転はどうでした?」

「結構楽しかったですよ。けど、16の僕が車を運転って大丈夫なんですか?」

「バットマンの時は顔が見えませんし、身長が180もあれば成人男性と見間違えられるから大丈夫でしょう」

 

 ルーシャスはそう言いながら、ノートパソコンで作業をしていた。そこには、出久が乗っていたバットモービルのデータが映っており、車体の中心から後方にかけて赤く点滅している。

 

「違法運転の問題よりも、バットモービルの機能の方が問題ですよ。再燃焼装置は吹っ飛びかけてて、いつ爆発するか分からない状態で、武器システムはイカれてて、使える武器はイモビライザーだけ。こりゃ、直すのに結構かかるな」

「やっぱり、五年も眠らせてたからですか?」

「でしょうな。帰ったら改修作業を始めますか……」

 

 ルーシャスはそう言ってパソコンを閉じるとバッグに入れ、出久はバットスーツのガントレットでバットモービルを遠隔操作して、運んできたトラックのトレーラーに積んだ。

 

 その後、出久は助手席に座り、ルーシャスは運転席に座って家に戻った。

 

 

 

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 その日の夕方、スポーツウェアを着た出久は何時もの様にトレーニングルームで筋トレをしていた。体を鍛え始めたあの日から、ただ単に楽しいからという理由で日課になってしまったのである。

 

 そこに、ルーシャスがタブレット端末を持ちながら入ってきた。

 

「出久君、ちょっとこれ見てください」

「え? 何ですか?」

 

 出久がタブレットを覗き込むと、そこには数人の男がトラックやバンに武器を大量に積み込んでいる所だった。

 

「これは!?」

「一昨日の夜の港の監視カメラの映像です。昼頃に、バットコンピュータが警察のデータベースから見つけてました。どうやら、他のヴィラン組織に銃を売って儲かりたいみたいですね」

 

 出久は顎に手を当て、睨むように画面を見ていると、一つ気になるモノがあった。

 

「この右肩にあるエンブレムは?」

 

 そこには、アサルトライフルを二丁重ねた上にナイフを置いたようなエンブレムがあった。

 

「それも確認済みですよ。このヴィランのマークみたいですね」

 

 ルーシャスは、タブレットの画面を横にスライドする。そこには、銃火器と融合したような左腕を持つ、赤と青のアーマースーツに包まれた男が映し出される。タブレットの上部には『ARMS』と綴られていた。

 

「アームズ……」

「ええ、彼の本名は知りませんが、この様子を見る限り前科者でしょうな」

 

 ルーシャスは画面を先ほどの映像に戻して再生した。アームズは的確な指示を出し、部下に銃をトラックに積み込ませている。その手際の良さは、初犯とは思えない。

 

「アームズのことを調べた後、ヤツ等の潜伏場所を探したら、ある街の繫華街の監視カメラにこれが映ってました」

 

 ルーシャスがタブレットを操作して、別の映像を画面上に映す。そこには、下っ端であろう男が映っていた。肩にはエンブレムが書かれている。

 

「どうやら、この男は最近ここを周回しているみたいです。で、どうします?」

 

 ルーシャスは、答えが分かりきった質問を出久に投げかける。

 

「もちろん、出動だ」

 

 そう言う出久の目は、ヒーローの目をしていた。

 

 

 

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 暗闇を月明りが照らす夜。街の中である男が物陰に隠れながら歩いていた。

 

 男の名は、塚内 直正(つかうち なおまさ)。警察官である。

 

 現在、塚内はある男を尾行していた。その男──名を猪名 進太郎(いな しんたろう)という──は、ある組織の一員のようなのだ。この組織以外にもヴィラン連合も追っている塚内は休む暇もない。

 

(コイツを押さえれば、情報が少しは掴めるか……?)

 

 すると、猪名が路地裏に入っていくのが見え、見失わないように小走りでその後を追って物陰に隠れた。

 

 そこには、先ほどまで追っていた猪名がマントを背負うヒ-ロ―の姿をした男に首を掴まれて尋問されていた。

 

「アームズの本拠地と運んだ武器は何処だ?!」

「お前に言う事は何もねぇよ! コスプレ野郎!」

 

 猪名はそう言って殴ろうとするが、その拳を掴まれて地面に叩きつけられた。拳から腕に掴むところが変え、捻り上げている。

 

「言え! 言わなければ、全身の骨を折ってやろうか?!」

「わ、分かった! アームズさんは武器の売買のために、中華街の倉庫に人を集めてる!」

「他には!?」

「日時は明後日で、そ、そこには集めた武器が一纏めにしてあるんだ! 大量の銃火器が備蓄されてる!」

「礼を言う」

 

 マントの男は、膝で猪名の顎を蹴って気絶させた。

 

 塚内は疑問に思った。〝アームズ〟とは、本名は連砲 流火(れんほう りゅうび)のヴィラン名で、塚内が追っているヴィラン組織のボスである。それを、なぜ彼が追っているのか。知る方法は一つしかないだろう。

 

 塚内は、物陰から出て男に近づいた。

 

「おい君!」

 

 声を掛けられたと認識した男は、塚内の方に振り向いた。

 

「なんだ?」

「なぜ、君がアームズを追っている?」

「ヤツは、敵組織に銃を売り捌こうとしている。この武器が、日本で出回っては危険だ。だから追っている」

「ヴィジランテはご法度だ」

 

 塚内がそう言った時、後ろから一台のバンが突っ込んできた。

 

「な!?」

 

 塚内は突然の出来事に対応できず、轢かれる光景が脳裏に映った。だが、そこにバットマンが飛び込んで塚内の腕を掴んで回避した。

 

 バットマンは塚内の体を一瞥して、怪我がないことを確認するとバンの方に目を向けた。

 

 バンは、壁に突っ込んでいて壁に赤い液体とタイヤ付近に千切れた腕があることから、目的は裏切り行為の粛清と敵の排除だろう。バンからは、6人ほどの男たちが出てきており、その中でも一人だけ二メートルはありそうな身長の筋骨隆々の大男が出てきた。

 

「お前が噂のコウモリ野郎か」

「ヒーロー気取りが! 身の程ってものを教えてやんよぉ!」

 

 そう言って、一人の男が殴りかかってきた。それを右腕で受けとめ、カウンターの左フックを決めてぶっ飛ばし、そこから跳躍して移動し、一人の男の後ろに回ると、スライディングのように足払いを掛けて男を転ばせ、バットマンは逆に立ち上がって少しジャンプしてから転んだ敵の鳩尾に拳を叩き込んで気絶させる。

 

 そこに、突進してきた男を横に飛んで回避した。だが、そこに敵が後ろから抱きつくように抑えつけてきた。バットマンは、それを後ろから両肘を敵の両頬に何十発と打ち込んだ。この攻撃で頭が揺さぶられないわけがなく、目眩を起こした敵は手を緩めてしまう。それを見逃すバットマンではなかった。手が緩んだ隙に後ろに手をやり、胸ぐらを掴んで一本背負いのように投げ、一人巻き込みながら前に吹き飛ばす。

 

 そこに、さっき突進してきた男がヤクザキックを繰り出そうと、足を上げ前に突き出した。その足を、バットマンは掴んでハンマー投げの要領で放り投げ、頭が壁に当たり気絶した。

 

 すると、横から大男が殴りかかってきた。だが、バットマンは臆する事無くマントを大男の目の前に広げて目くらましと同時に平衡感覚を失わせ、よろめいている所にパンチラッシュを叩き込む。

 

 最後に、アッパーカットを打ち込んで気絶させた。

 

「圧倒的だな」

 

 塚内が男にそう言うと、男は背を向けて去ろうとした。

 

「あっ、待ってくれ!」

「……どうした?」

「そこまで強くて、どうしてヒ-ローにならなかった?」

 

 辺りの音も聞こえず、塚内と男の間に静寂が訪れる。僅かな沈黙の後、男は口を開いた。

 

「ヒーローになろうとヒーロー学校に通った結果、全てに裏切られてしまった。だが、その程度で諦められるほど、この夢は消えはしなかった。それだけだ」

 

 そう言って、マントの男は今度こそ去ろうとした。が、またも呼び止められた。

 

「おい、ちょっと待ってくれ!」

「……今度は何だ?」

「メルアドを交換してもいいか? 君に興味が湧いた」

「犯罪者と連絡を取ってもいいのか?」

「そこは、内緒にしておくよ」

 

 そう言って片目を瞑って口に人差し指を立てる塚内に、男は少し微笑んで「分かった」と言って連絡先を交換した。その途中で、塚内はある疑問を投げかけた。

 

「そういえば、君の名前は?」

「コードネームか?」

「ああ」

 

 連絡先の交換を終えると、男は少し下がっって、腰に付いた銃のようなものを上に向ける。

 

「バットマンだ」

 

 そう名乗ったバットマンは、引き金を引く。すると、銃口からワイヤーフックが飛び出して建物に固定されると、ワイヤーがまかれてバットマンの体が宙に浮く。そのまま、建物から急速に飛んで去っていった。

 

 塚内は、バットマンが去るところを見届けると、一言ポツリとと呟いた。

 

「バットマンか……」

 

 その後、塚内は署に連絡して迎えと護送車を呼び、程無くしてきた迎えで署に戻っていった。

 

 

 

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 あれから三日が経ち、アームズの組織が銃の売買を行う日となった。

 

 出久は、夕方頃に準備をして、バットスーツを装着してバットマンとなって屋上から飛び立ち、手に入れた情報を元に例の中華街に向かった。

 

 中華街にたどり着いたバットマンは、屋上から通風孔を使って入り込み、天井裏の金網から中の様子を探った。そこには、大量の銃が倉庫のような場所に保管されており、大勢の手下たちによって守られていた。

 

「ふむ、意外と厄介だな」

 

 バットマンは、マスクのレンズを降ろして捜査モードに切り替えた。これにより、どこに敵がいるかやその人間の骨格、どこに何が隠されているかなどが判明する。

 

 どうやら、敵は十一人。しかし、アームズは居ないようだった。

 

「アームズがいないのが気になるな。私や警察に情報がバレたことを知って逃げたか?」

 

 バットマンは、アームズがいないことを気にしながら、横にある通風孔を潜って隣の部屋に向かった。

 

 そこには一本の鉄骨があり、下に扉と通風孔があるのだが、一台のセントリーガンによって守られていた。セントリーガンの後ろにある扉に向かうには飛距離が足りず、通風孔はセントリーガンの餌食になってしまう。

 

 そこでバットマンは、ベルトからガジェットの一つである〝遠隔ハッキング装置〟を取り出し、セントリーガンの視覚センサーを無効化した。しかし、これは三十秒で解けてしまう。

 

 そこからは迅速だった。バットマンは床に飛び降りるとセントリーガンの元へ走って、セントリーガンの後ろ部分の蓋を引っぺがして、バットラングを刺して破壊した。

 

 そして、通風孔の柵をこじ開けて中に入り込み、手下たちの下にきたが出られる場所がなく、そのまま飾られていた絵画の裏側に向かった。

 

 そこには出口があり、通風孔を出たバットマンは脆い木の板と絵画をぶち破って、手下二人の頭を掴んで地面に沈め、その周りにいた敵たちの足を払い転ばさる。

 

 そこから立ち上がったバットマンは、突進してくる敵にバットラングを投げて気絶させ、瞬間移動のような速さで次の敵に攻撃を繰り広げていく。中には、全く鍛えていないのか、一撃で沈んでいく敵もいた。

 

 敵を倒し終えたバットマンは、塚内に敵の拠点を制圧したことを報告しようとスマホを取り出した。すると、後ろからのドパンッ! という発砲音と共に、スマホが吹き飛んでいった。

 

 バットマンが後ろを振り向くと、そこには左腕がリボルバー拳銃のようになっているアーマースーツを着た男が立っていた。

 

「アームズ……!」

「ほう? 俺を知っているのか? なら、話は早い。よくも、俺のアジトをメチャクチャにしてくれたな!? 死で償わせてやる!!!」

 

 アームズはそう言って、左腕をリボルバーから普通の手に変え、背中の剣を引き抜いた。そのまま、アームズは剣をバットマンに振り下ろすが、なかなか当たらない。

 

「チッ! 男なら避けずに立ち向かえ!!」

「そう言うなら、お前は素手で立ち向かうんだな」

 

 アームズの支離滅裂な言動を論破するバットマン。その態度が気に食わないのか、攻撃に一瞬の隙が出来た。それを見逃すはずもなく、剣が外側に向けて振り回された瞬間に横腹に蹴りを放ち、よろめいたアームズ。しかし、それはただの前座だった。よろめいたアームズに避け切れる筈もなく、バットマンの回し蹴りは顔面に叩き込まれた。

 

「グハッ!」

 

 アームズは見事に床に沈んで伸びきっている。バットマンは、ガントレットのテレビ電話を起動した。すると、隣の中を見ていない部屋から音が鳴りだした。

 

 扉を開けて中を見てみると、そこには塚内が椅子に縛られて、口に布を噛ませられていた。バットマンは、急いで塚内の元に向かうと椅子の縄を斬って塚内を解放した。

 

「大丈夫か?」

「ああ、なんとかね。捕まって半日くらいしかたってないしな」

「そうか」

 

 バットマンはそう一言呟くとその部屋を出て、塚内がそれについて行く。すると、塚内は周りの光景に驚いた。自分を拘束した敵が全員のされているのである。

 

「また、ド派手にやったなぁ」

 

 感想のように呟く塚内の言葉を耳に入れながら、バットマンは敵たちを拘束していった。

 

 塚内は、バットマンの背中を見て礼を言った。

 

「ありがとう、助けてくれて」

「偶然、貴方がそこにいただけだ」

「だとしてもだよ。ありがとう」

 

 敵を拘束し終えたバットマンは、塚内の方に振り返ると、少し頭を下げた。きっと、礼は受け取った、と言う事だろう。

 

「では、私はこれで失礼するよ」

「ああ、それじゃあな」

 

 塚内と別れて建物から出たバットマンは、帰っていった。

 

 

 

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 翌日の夜。

 

 警察署の屋上で、雲にライトアップされたコウモリのシンボルがあった。それを付けたのは塚内である。

 

 あの後、バットマンについて調べたら、どうやらバットマンのいたゴッサムでは、警察署の屋上にバットシンボルを付けてバットマンを呼んでいたらしい。

 

 そこで、塚内は同じことが出来るかと思い、真似てみたのである。

 

 効果は、塚内の後ろでバットシンボルのライトをコンコンと叩く音から推して知るべしである。

 

「来てくれたか」

「こんなもので呼び出そうとするとは、上司に絞られただろう?」

「そりゃ、思いっきりやられたさ。けど、メリットの方が大きいからな」

 

 バットマンは一言「そうか」と呟いて、警察署の屋上から飛び立った。

 

 こうして、塚内とバットマンこと出久の信頼関係は築かれたのだった。

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