恐怖の象徴   作:ヴェルザ・ダ・ノヴァ

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今回は前後編に分けようと思います。

というのも、途中で想像力と語彙力が死にました。
おのれリドラー!(濡れ衣)


再会

 ある日の朝。雄英高校1年A組では、お通夜でもやっているのか? と思うような空気が流れていた。

 

 事の経緯は一ヶ月前。ある事件にまで遡る。

 

 一ヶ月前の夕方頃。ある事件が起きた。ヒーロー科の緑谷出久が性的暴行を普通科の女子生徒に行ったというものだ。それが発覚したとき、A組女子たちは普通科の女子を助け、男子は出久を袋叩きにした。

 

 その後、出久は除籍処分が下り、雄英を退学した。

 

 しかし、その三日後に事態は一変した。その事件を詳しく調べた結果、女子生徒の個性が感情増幅系の個性だというのが発覚した。さらに、その女子生徒本人が自慢するかのように口を滑らして真相を普通科の教室で語ったことから全てが発覚した。

 

 当然、女子生徒は除籍。雄英は出久に復学してもらおうと考え、相澤とオールマイトが彼の自宅を訪れた。

 

 しかし、そこはもぬけの殻だった。

 

 唯一あるのは、一室の壁にかけられた『IZUKU』と書かれた色褪せたオールマイトのネームプレート。その部屋の中には、雄英の制服、教科書類や〝将来の為のヒーロー分析 №13〟と書かれたノートに筆記用具がぎっしり詰め込まれた黄色のリュックサック。大量のオールマイトグッズ等が散乱していた。

 

 大家さんが言うには、緑谷一家の息子の方は帰ってきて一時間足らずで外出し、戻っていないという。母親は、荷物を纏めて夫の元へ高飛びしたそうだ。大家さんは、出久を気に入っており、母親に「捨ててしまって構わない」と言われた部屋の所持品をそのままにして、そのルームには新しい入居者は入れないようにしているとのことだ。

 

 詰まる所、探し人である緑谷出久は絶賛、行方不明中だった。

 

 これを、プレゼント・マイクが1Aにうっかり口を滑らし、放課後は出久大捜査である。ちなみに、マイクは相澤に絞められた。

 

 そんな訳で出久を探しているのだが、これがなかなか見つからず、難航していた。そこに、期末テストをぶち込まれ、出久を探すのに大部分の時間を使った彼らのテスト結果は、中間テスト一位の八百万でさえ危ういものとなった。後半九人は終わったと見ていいだろう。

 

 そんな訳で現在、教室はお通夜状態なのだ。

 

 そんな中、教室の扉が開き相澤が入ってきた。

 

 そして、試験結果について発表される。

 

 やはりというか、赤点は出たらしい。それを聞いて、暗くなる教室。お通夜を超えて墓地である。

 

「したがって……、全員林間合宿に行きます」

 

 見事などんでん返し。しかし、クラスの雰囲気はお通夜に戻るだけだった。

 

「そんなことより緑谷は……?」

 

 そう呟いたのは切島だった。他の生徒も、合否より出久の行方が知りたいらしい。

 

「緑谷はまだ見つかっていない。今も全力で探してる」

 

 相澤の言う通り、警察、ヒーローが総出で探している。あのグラントリノでさえも事務所に何日も帰っていないのだ。

 

「取り敢えず、君たちは林間合宿の準備をしておいてくれ」

 

 そうして、その日の放課後。切島たちは教室で話をしていた。

 

「もう一ヶ月近いってのに、なんで見つからねぇのかな?」

「隠れてるからでしょ? 世間には公表されてないけど、ネット世界じゃ緑谷のことが噂されてるよ。ヴィランだの被害者だの」

 

 上鳴と耳郎の会話に俯く一同。

 

「もう二度と、デク君と会えんのかな……」

「う、麗日くん、そんなことは!」

 

 飯田が励ますもお茶子の顔は晴れず、今にも泣きだしそうである。

 

 そこに、蛙吹が口を開く。

 

「このまま、私たちだけで調べていくのも限界だと思うの。一回、何かでリフレッシュできればいいんだけど」

「それじゃあ、明日林間合宿の用意するためにショッピングモールに行く? あんな大きいところだから、もしかしたら知ってる人がいるかもしれないよ?」

 

 葉隠の提案に一理あると考えた彼らは、翌日ショッピングモールで買い物をすることに決めた。その効果か、場の雰囲気が少しだけ和らいだ気がした。

 

 しかし、この時は誰も想像しなかった。明日、その探している男に会えることを……

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 翌日、お茶子は現在ナンパに遭っていた。

 

 経緯を話すと、今日は約束通り1年A組でショッピングモールへ買い物に来ていた。ちなみに、轟は母のお見舞い。爆豪はネットで出久の目撃情報を漁るようだ。

 

 そうして来たものの、それぞれ買うものが別の人がいるため、三時まで自由行動となったのだ。お茶子は蛙吹と葉隠と共に行動していたが、途中でトイレに行きたくなり、その帰り道にナンパに出くわしたという訳だ。

 

(早く梅雨ちゃんと透ちゃんのとこに行かなアカンのにぃ~!)

「ねぇ、いいでしょ? 俺達とお茶するだけだからさ~」

「いえ、結構です」

「チッ、いいから行くぞ!」

 

 痺れを切らしたのか、いよいよ強硬手段に出た茶髪の男は声を荒げてお茶子の腕を掴もうとする。いきなりの事に恐怖心が勝ってしまい、目を瞑るお茶子。

 

 しかし、衝撃は来ず代わりに男の呻き声が聞こえてきた。

 

 お茶子は恐る恐る目を開けると、そこには帽子の上にフードを被った高身長の青年がお茶子の腕を掴もうとしていた男の腕を握りしめて捻り上げている。

 

「この手は何ですか?」

「あぁ? なんだお前は?」

「質問に答えろ! この手は何だ!」

 

 青年の()()()()()が、ナンパ男たちを睨む。その眼光は、正に怒れる獅子だ。

 

「チッ! ウゼェんだ……よ!!」

 

 男は、掴まれていない方の手で顔を下から叩こうとする。しかし、それを顎を引くだけで回避した。いきなりの騒ぎに、周りの買い物客が野次馬の如く集まってくる。そこには一年A組の面々もいた。

 

 しかし、それが問題だった。

 

 顎を引いて回避したということは、その先に出ている帽子の鍔は当たるという事。上に被っていたフードごと帽子が外れ、その素顔が露わになる。

 

 その顔は、精悍さが増して大人びてはいるものの、絶対に忘れはしない顔……

 

「デク君……?」

『緑谷!?』

 

 緑谷出久本人だった。

 

 

 

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 時は少し遡り……

 

 太陽が真っ直ぐより、やや東に傾く昼頃。出久は、ショッピングモールで暇潰しをしていた。

 

 というのも、現在、フォックス邸は改築の真っ最中なのだ。主に、地下室作りで。そんな訳で家を一時的に追い出された出久は、バイトもないため、ショッピングモールで暇潰ししていた、という訳である。

 

 お小遣い代にしては結構な額をルーシャスに渡されていた出久は、何か自分の趣味になるモノを探そうか、と考えたわけである。ヒーロー観察は、家にノートを置いて来てしまった時から書く気が無くなってしまった。グッズ集めも同様だ。

 

 そんな訳で出久はいろんなものを試しているのだが、趣味を見つけるのは中々に大変だった。

 

 釣りは違う、射的も違う、プラモ作りも違うetc…

 

 結局のところ、出久がお金を使ったのは新しい靴や服、この前吹っ飛ばされたスマホの買い替え等だった。

 

 出久は、この後どうしようかと新しく買った最新機種のスマホでいろいろと調べていると、声が聞こえてきた。

 

 明らかな拒絶が含まれる女の声。それと、男の声が複数。

 

 出久が声が聞こえてきた方角に顔を向けると、頭を茶髪や金髪に染めてる俗に言うチャラ男がいた。おそらく、ナンパをして女性がそれを嫌がっても強引に事を進めて丸め込もうとしているのだろう。

 

 困った人は放っておけないのが出久クオリティー。出久は即座にその場所に向かった。

 

 案の定、男たちが女子を囲むように立っており、一人の男が女子の腕を掴もうとする。それを横から入り込み、腕を思い切り握りながら捻り上げる。

 

「この手は何ですか?」

「あぁ? なんだお前は?」

「質問に答えろ! この手は何だ!」

 

 出久は、嫌がっている女子に何をしている、という牽制でその言葉を放った。しかし、それは相手を逆上させるだけだったようだ。

 

「チッ! ウゼェんだ……よ!!」

 

 男は、掴まれていない方の手で弾くように手を下から振り上げてきた。

 

 しかし、バットマンとして活動する出久にとって、この攻撃は遅すぎる。顎を引いて避けるには十分だった。だが、ここで誤算が生じる。避けた腕は帽子を弾き、必然的に帽子にかかっていたフードも剥がれ落ちたのだ。

 

 民衆の前に己の顔が晒される。後ろの女子と周りが何か言っているようだが、出久は気にせず戦闘態勢に入った。

 

 腕をダランと下げ、されど脇を広げてどんな動きにも対応できる姿勢を取る。

 

 しかし、それが舐められてるように見えたのか、相手はさらに怒り出した。

 

「テメェ、舐めんじゃねぇぞゴラァ!」

「ならせめて、その三下発言をやめたらどうだい?」

 

 男が殴りかかってくるが、それを右に一回転して避け、その時に折っていた肘を伸ばし、裏拳を後ろから男の左頬に繰り出す。

 

 その後、出久は上着の前にあるジッパーを外してヒラヒラとマントのようにする。それを、一人の男にバットマンのマントを敵の目の前に広げて目くらましと平衡感覚を無くすあの技を長さの短い上着で実践した。

 

 結果は成功。男の一人は、目眩を起こしてフラフラする。そこに、パンチラッシュを叩き込んで沈めた。

 

 最後の一人は玉砕覚悟で突進してきたが、出久はそれを横に避けて首元にラリアットを叩き込んで気絶させた。

 

「「「「おおおおぉぉぉぉぉ!!」」」」

 

 周りの野次馬はすごい試合を見た。と言わんばかりの歓声を上げ、終わったと認識した野次馬はどんどん減っていった。

 

 出久は帰ろうと思い帽子を探すと、背中を突かれた気がした。後ろを振り向くとそこには、出久が被っていた帽子を持つお茶子がいた。

 

 今思えば、ナンパ男との会話の時の女子の声は麗日さんと同じだった、と思った出久。しかし、今はそこよりもこの問題である。

 

「デク君……だよね」

「あぁ~、Noって答えはあり?」

「無しだ!」

 

 出久の質問の答えは後ろから聞こえてきた。後ろを見れば、切島が先頭に立って爆豪と轟を除いた一年A組が勢ぞろいしている。

 

「緑谷! あの時は、お前のことを信じなくて悪かった! すまねぇ!」

 

 切島の謝罪を皮切りに次々と謝罪の言葉が送られてくる出久。しかし、反対に出久は突然の謝罪に混乱していた。それもそのはず、人目のあるところで謝罪の大合唱。混乱するな言われる方が無理がある。

 

「と、取り敢えず、人目のつかないところに行こう、か?」

 

 そんな混乱状態でやっと発せた言葉はそれだった。

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