恐怖の象徴   作:ヴェルザ・ダ・ノヴァ

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幕門:世界の反応

 翌日、昨晩の出来事は話題を呼んだ。

 

 日本では、アメリカで活動していたヴィジランテが、日本で活動を始めたというもの。

 

 日本でもコアなヒーローファンにしか、バットマンは知られなかった。しかし、別の場所は違かった。

 

 

 

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 小さな争いはあれど、平和になった街。ゴッサム・シティ。

 

 その街に聳える時計塔〝クロック・タワー〟の中では、椅子に座った眼鏡の女性が、時計塔に仕込んだバットコンピュータで街の平和をチェックしていた。もし何かあれば、仲間に知らせて向かわせるのだ。

 

「よし! 今日も問題はなさそうね」

 

 これが、バットマンが亡くなった後の彼女〝バーバラ・ゴードン〟の仕事だった。彼女は、バットマンが死亡した後の五年間で下半身不随を治していた。

 

 そんな彼女は、一通りチェックし終えたため少し休憩をしようと、冷蔵庫からドリンクを出そうと立ち上がった。

 

 そこに、この部屋の出入り口であるエレベーターが動き出し、何者かが昇ってきた。それは、ゴッサムを守る人間のうちの一人、ロビンというヴィジランテだ。本名を、〝ティム・ドレイク〟という。彼は、普段着の恰好で、走ってきたのか額に汗を流していた。

 

「バーバラ! ビッグニュースだ!」

「どうしたの? ティム。そんなに慌てて」

「取り敢えず、これを見てくれ!」

 

 ティムは、バットコンピュータに今朝のニュースを映し出した。そこには、ゴッサムの人気キャスターであるヴィッキー・ベールがニュースを報道していた。

 

『今日の朝6時、日本時間にして午後7時頃、日本でヴィランとヴィジランテによるカーチェイスが発生しました。その際の映像がコチラです』

 

 ニュースは、ヴィッキーの顔からカーチェイスの映像が映し出される。その映像にバーバラは目を見開いた。ヴィランの個性にではなく、ヴィランを追いかけるヴィジランテの乗り物に。重厚なフォルムの砲台のない四輪の戦車のような姿をしている。それに、バーバラは見覚えがあった。

 

「なんで……バットモービルが……!?」

「驚くのはまだ早いぞ」

 

 ティムはそう言って、映像を早送りして警察署の映像を見せる。

 

 そこには、突如現れたバットモービル。その入り口が開かれ、中から人が出てきた。尖った耳に漆黒のマント。胸には羽を広げたコウモリをイメージしたシンボルがある。

 

 そこに映ったのは、紛れもなくバットマンその人だった。

 

『すみません! 一言コメントを!』

 

 映像の記者の一人がそう言うが、バットマンは気にも留めずにバットモービルに乗って去っていった。

 

「この寡黙な感じ、完全にブルースだろ?」

「え、ええ…でも、何で日本に?」

「さぁ? 日本でバットマン抜きの生活してたけど、バットマンが必要になったとか? ルーシャスが日本で暮らしてるし」

 

 二人が、何故バットマンが日本にいるのか? と考えていると、屋根の方の入り口が開き、腰に二丁拳銃を携えている赤いフードを被った男が現れた。

 

「おい! なぜ、バットマンが日本で活動してる!? アイツは引退したはずだろ!?」

「よう、レッド。俺達も何でか考えてんだ」

 

 ティムに〝レッド〟と呼ばれた人物は、かつて〝アーカム・ナイト〟と呼ばれた敵だ。今は、考えを改めてヴィジランテ〝レッドフード〟として活動している。彼等、バットファミリーで唯一殺人を行うヴィジランテで、ゴッサムのヒーロー協会の悩みの種である。ちなみに、本名は名乗りたがらないので割愛とする。

 

「ん? おい、バットマンの顔が映ってるところがあるだろ。映してくれ」

 

 レッドフードは、何かに気付いたのかそう指示する。バーバラが、バットマンの顔が映っている所を出すと、レッドフードは解析を始めた。

 

 やがて、一つ不可解な部分が浮かんだ。

 

「バットマンの眼、金色だぞ? たしか、アイツの眼は碧だったはずだ」

「なに!? ……本当だ。だとすれば、コイツは偽物……?」

 

 段々と推測が浮かび上がってくる。このままでは、何もわからない。バーバラは腹を括った。

 

「確かめる方法は一つね。日本に飛ぶわ」

「バーバラ!? マジで言ってんのか…!?」

「ええ。なにか不満?」

「お前の親父さんはどうすんだ?」

 

 レッドフードの疑問は尤もである。娘を溺愛しているバーバラの父親が、バーバラを一人で日本に行かせるわけがない。

 

「……〝日本に旅行に行きたい〟じゃ、ダメかしら?」

「ダメだ。一人じゃ、行かせないぞ」

 

 そんな声が響き、三人が後ろを振り向けば、噂をすればで、バーバラの父親である〝ジェームズ・ゴードン〟がいた。

 

「行くなら、俺含めて三人までだ」

「「……レッド(フードは)留守番な(ね)」」

「なんでだ!?」

「だって、日本じゃ銃を乱射できないでしょ?」

 

 バーバラの尤もな正論に、レッドフードは「この銃が仇になるとは……クソッ」と怒りで震えている。

 

「分かった。今回は仕事してるさ。行くのは、バーバラとロビンとジムか」

「だな。いつ行くんだ?」

「明後日には行こう」

「なら、明後日に集合ね。荷物纏めなくちゃ」

 

 バーバラは家に帰るのか、エレベーターに乗り、それに続くようにジムとティムが入っていく。

 

 そこに残されたレッドフードは、「今度、ゴム弾を開発しよう」とボソリと呟いて、屋根から出ていった。

 

 

 

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 一方でアリゾナ海では、一隻の大型客船が航行していた。そのうちの一室で、ある男が本を読んでいた。男の名は、ブルース・ウェイン。かつて、バットマンと呼ばれていた男だ。

 

 現在、彼は昔に自分の家の執事だった男と二人旅をしているのだ。

 

 そんな中、部屋のドアが開き、その元執事〝アルフレッド・ペニーワース〟が入ってきた。

 

「ブルース様、お話ししたい事が」

「え? ああ」

 

 ブルースは、本にしおりを挟み、アルフレッドの話に耳を傾けた。

 

「それで、話ってなんだ?」

「前に、ルーシャスから「体の鍛え方と戦闘のやり方を全て教えてくれ」と言われたのを覚えていますか?」

「ああ。ルーシャスも身体を鍛え始めたかとは思ったが、それがどうかしたのか?」

「なぜ、彼がそんな事を言ってきたのか、その理由が分かりました」

 

 アルフレッドは、そう言ってスマホをブルースに手渡した。そこには、何かの映像が再生一時停止の状態で止まっている。

 

 ブルースが再生を押すと、映像が流れ始めた。

 

 そこには、炎をばら撒く羽が生えた敵と、それを追うバットモービルが映っていた。

 

「バットモービル!? あれは、破壊したはずだろ!?」

「ええ。ですが、フォックス氏は残していたみたいですね。そして、それを新たなバットマンに与えたようです」

 

 アルフレッドは、スマホの画面をダブルタップして時間を進める。そこには、金の瞳を持つバットマンがいた。自分も見たことない金属製バットスーツを着ている。

 

「いろいろ言いたい事があるけど、まず一つ。私はあんなバットスーツ知らないぞ!? 完全に防弾防刃仕様じゃないか!」

 

「私がたくさん怪我したのは、何だったんだ?」と憤慨するブルース。実は、バットマンが死んだことにならなければ、ルーシャスからクリスマスプレゼントでバットスーツV8.03を貰えたことなど、知る由もないことである。

 

(※つまり、ブルース・ウェインはバットスーツV7.43*1でアーカムナイト事件を解決し、ライジングでベインと戦った……)

 

 閑話休題。

 

 この動画の下には関連動画があり、日本のバットマンが公に知られる前に偶然取られた映像が上がっている。それを、ブルースは食い入るように見た。

 

 格闘戦術、尋問のやり方、扱うガジェット。まさに、ブルースの動きをトレースしたような動きだった。本物かどうかの区別の仕方など、眼の色だけである。

 

 恐らく、ゴッサムで活動していた時のバットマンの動画を見て覚えたのだろう。

 

 そこで、ブルースは疑問に思った。なぜ、この男はバットマンをやっているのだろうと。ヴィジランテをやるにしても、なぜバットマンを選んだのか。元々、悪を憎み、倒すための手段としてブルースはバットマンとして戦ってきた。

 

 彼はなぜバットマンになったのだろうか? その理由を聞かなければならない、とブルースは思った。実は、ルーシャスが唆したなどとは全く知らないブルースである。

 

そうと決まれば、行動あるのみ。ブルースはアルフレッドに話し掛けた。

 

「アルフレッド、この船が次に港に止まるのは何時だ?」

「明日の昼10時ですが、どうかしましたか?」

「日本に飛ぶ。この男に会いに行くぞ」

 

 ブルースはそう言って、アルフレッドに金瞳のバットマンが映るスマホの画面を見せ、不敵に微笑んだ。

*1
強化する前のスーツ

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