「みんな行くよ! せーっの!!「「「「頑張れ! ダイせんぱーい!!」」」」
中山レース場の最前列席に、快活な応援が響く。言わずもがな、ダイユウサクの応援に駆けつけた休養寮のウマ娘達だ。みんな一重にダイユウサクの事を必死に応援している。
「去年の天皇賞秋も、今年のマイルチャンピオンシップの時もそうだったけど、本当にGⅠレースに出れるなんてやっぱスゲーぜ先輩は!!」
「なに言ってるのよ、あったりまえでしょ!? 先輩は今年のスポニチ賞金杯(GⅢ)を勝った重賞ウマ娘なのよ! 今回だってきっと良いところまで食い込んでくれるわ!!」
「そ、そうだよね! きっと良いところまで……マイルチャンピオンシップと同じで、入着するぐらいならきっと……!」
ワイワイがやがやと騒がしい応援がこだまする。「あんたはどう思う?」とつい先ほど柴中と共に合流したゼファーに話が振られた。
「ダイ先輩が勝ちます」
少しも疑っていない声色で宣言する、「おー……」というなんとも言えない声がウマ娘達の口から漏れた。無論、ダイユウサクに負けて欲しくなど無いが、逆に言えば華々しい勝利を飾る場面を想像出来なかったのも事実だ。
「す、凄い自信ね。何か根拠があるの?」
「ええ。今日この時、このレースなら、先輩が勝ちます。なんていうかこう……今の先輩は、私達の理想です」
「いや、あのさゼファー。悪いんだけどもうチョイ具体的に言ってくんない? アンタ前から──「始まりますよ」ちょっと!?」
シーッ! と人差し指を口にして押し黙らせる。これ以上何かを語る必要は無い。後は結果が全てを語るだろう。
『さぁ、どうやらゲートイン完了しました! グランプリレース、有馬記念!!』
──ガシャコン!
『スタートしました!!』
『十五人綺麗なスタートを切っています。さぁ、逃げ宣言のツインターボが行くのか!」
「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃ! ターボダーッシュ!!」
『やはりツインターボが行きました。そして4番のダイタクヘリオスにあとはプレクラスワン、前がかなり早くなりそうであります』
「アッハハハ! 良いじゃん良いじゃん!! これが噂のタボちんの逃げか! 思わずつられてペースを上げそうになっちゃう!!」
『そして注目のメジロマックイーンは現在七番手、マックイーンは七番手であります』
(──ッ! トレーナーさんの忠告を思い出しなさい)
‘ツインターボの逃げには容易く乗るな’
(……どうぞ、好きなだけ先頭の景色を見ていてくださいな)
最後の最後。ゴールする時にはその席を譲っていただきますがと、メジロマックイーンは冷静に後方へと控える。
『さぁ正面スタンド前に十五人がやってきました。逃げ宣言の12番ツインターボがペースを作ります。その後ろには天皇賞ウマ娘・プレクラスワンが控えています。その後ろからダイタクヘリオス現在三番手。その後ろにソンチョウジョウジが四番手、その後方カリブパイレーツが五番手、さらにフジサンケンザン、その内にはトキノミュージック、更にその後ろに注目のメジロマックイーンとメジロライアンがいる。メジロが二人、中段で競り合っております』
「ッ──好きにはさせないよマックイーン!」
マークするべき相手は端から決まっていると、メジロライアンはマックイーンをピッタリマーク。それに便乗するようにマックイーン包囲網に加わるのがカリブパイレーツ、フジサンケンザン、トキノミュージック、ヤマニンワールド、ナイスネイチャだ。全員が全員、いつどのGⅠレースで勝利してもおかしくない名ウマ娘ばかり。
『3番のヤマニンワールドが内々を付いています。ナイスネイチャはマックイーンをマークするようにピッタリと付いています。更にその後方にプリンセスシンとメインマジシャン。ポツンと最後方から行っているのがゼンノウオースミであります』』
……そんなマックイーン包囲網を前にして、それでも大きく崩れないのがメジロマックイーンというウマ娘である。彼女はこの包囲網を前にしてたった一息溜息を付いただけだった。冷や汗一つ掻いてはいない。
その事実に驚愕しながら、メジロライアンは変わらずナイスネイチャ共々マックイーンをマークし続ける。
『さぁ1コーナーから2コーナーに回っていきます。先頭は、逃げ宣言12番ツインターボ、三バ身から四バ身にリード! そして天皇賞ウマ娘、プレクラスワンが二番手であります。さらに、ダイタクヘリオスが三番手、ソンチョウジョウジ四番手、2番のトキノミュージック五番手であります。その後方フジサンケンザンがいます、アウトコースを通ってカリブパイレーツ』
ここまでの実況を聞いて、ダイユウサクの作戦が上手く言っていることを確信したゼファーは思わず口元を緩める。実際にどうなっているかは分らないが、少なくとも実況解説の二人はダイユウサクを少しも気に掛けていない。それは、ダイユウサクの作戦がピッタリとハマっている根拠になり得た。
「ダイ先輩もいるのに……」
と初等部のウマ娘が不満げに漏らすが、だからこその好機。メジロマックイーンという強大な存在がいるからこそ、その影に隠れてジャイアントキリングを狙えるという物だ。
『そして依然としてメジロが二人! メジロマックイーンとメジロライアンが並んで行っている!! 更に三番のヤマニンワールド、ナイスネイチャは引き続きメジロの二人をマークする形、ダイユウサクもいます!』
(あ、やっと呼ばれた)
まるでついでのような一言で片付けられたが、ようやっと実況に‘ダイユウサク’という名称が入った。……これならばやはり問題ない。書いて字の如く伏する兵となったダイユウサクは、ジックリとその刃を突きつける時を待ち、脚を為続ける。
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