ソウル・オブ・ゼファー   作:部屋ノ 隅

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チーム‘ステラ, 6/9

「──で、あとどれぐらい掛かりそうだ?」

 

ゼファーとのファーストコンタクトが終わったカレンチャンに柴中が問う。アキツテイオーに続き彼女もこの場へやってきたという事は、もうさほど時間は掛からなそうではあるのだが──

 

 

「もう陛下の準備は終わってるよ? 今はむしろアケボノちゃんの仕度が出来るのを待ってる状態かなぁ。結構ギリギリまで盛り付けに時間掛けてたから」

 

「ラブリィとフラワーは?」

 

「ラブリィさんはいつも通り陛下の護衛。……フラワーちゃんの事なら、私よりお兄ちゃんの方が詳しいんじゃない? カレンの次に秘密の連絡先を交換して、毎週花壇の手入れを手伝ってるくらいだし」

 

「つーん」という効果音が聞こえてきそうな、若干拗ねた表情でプイッとそっぽを向くカレンだが、そんな可愛らしい動作もトレーナーである柴中にはまるで効果がなかった。「あのなぁ」という言葉を皮切りに、まるで本当の兄妹がするような言葉の応酬(じゃれあい)が始まる。

 

 

「ただUMAINEで個人LINEを形成してるってだけだろうが! あと花壇の手入れは俺の代わりにお前らが手伝っても全然良いんだが? つーか頼むから俺の代わりに手伝ってやってくれ。お前達のほうがフラワーも気兼ねしないし、効率良く作業できるしで助かるだろう」

 

「だーめーでーすー! っていうか今かーなーり女の子的にNGな事を言っちゃったからね? ホントそういうとこだよお兄ちゃん」

 

「意味が分からねぇ……。俺が手伝えないような時は揃って手伝おうとする癖に……」

 

「何を言う、幾ら手慣れているとはいえあいつ一人に庭作業を任せる訳にはいくまい」

 

「そうそう! それにお兄ちゃんがいないんだもん、当然でしょ?」

 

「だったら普段から手伝ってくれよ……作業する人数が多いに越したことはないだろ……」

 

「だからそういう問題じゃないのー!」

 

「……ふふっ」

 

今さっきまでの小悪魔めいた圧倒的魅惑は完全に鳴りを潜め、年相応の少女のような雰囲気になったカレンチャンと柴中のそれを見て思わず笑みがこぼれるゼファー。形式も度合いも全く違うが、このじゃれあいめいたやり取りには覚えがあった。

「仲が良いんだなぁ」と素直に思う。互いに深い信頼と絆で結ばれていなければ、そもそもこんなやり取りは出来ない。気兼ねなく思った事を言える、話せる。そんな素晴らしい間柄なんだろう。

 

 

「あっ、ほらー! お兄ちゃんが的外れなことばっかり言うからゼファーさんも笑っちゃってるよ!」

 

「す、すみません。とても仲が良いんだなって、つい微笑ましくなってしまって--」

 

「ぷんすか!」という表現が似合うむくれた表情でカレンチャンが柴中に文句を言い、笑っている事を指摘されたゼファーは慌てて双方に対するフォローを入れる。

 

 

「えー? 本当にそう見えたんですか?」

 

「はい、まるで本物の兄妹みたいでした」

 

「……ふーん」

 

ゼファーの感想に「えぇ……?」と困惑顔を浮かべる柴中と、あまり感情が読めない一種のポーカーフェイスに近い表情になるカレンチャン。アキツテイオーは「何時もの事だ」と言わんばかりに、呆れたようなため息を吐いている。

続けて「何故そう思ったか」という理由までゼファーが話そうとした時だった。

 

 

 

──コツン

 

 

 

靴の裏にはめられた蹄鉄が、床の大理石を踏みならす甲高い音が聞こえた。──それと同時に、空気が変わった。

 

 

 

──ふわっ

 

 

 

ゼファーの丁度真後ろ。カレンチャンが入って来ただろうドアを覆い隠していた巨大なカーテンが、音すら立てずにゆっくりと八の字へと開いていく。──裏側からカーテンを開いたのは、勇ましい風貌をした戦士のようなウマ娘と、ツインテールのとても大きなウマ娘。戦士のようなウマ娘には覚えがあった。急に転入してきた自分を快く受け入れてくれた恩人にして、歓迎会のことを教えてくれた美浦寮の同室ウマ娘──シンコウラブリイである。

 

 

 

 

「──全員揃ったようだな」

 

 

 

 

その場全体を、ひいては空間そのものを手中に納め、支配するかのような声が響く。──開かれたカーテンの真ん中から、悠然とした足取りで勝負服を身に纏った‘ニホンピロウイナー(皇帝),が部屋の中へと入ってきた。それに付き従うかのように皇帝の左右、斜め後ろに控えていたウマ娘二人が後に続く。

 

一人は、ショートカットのまだ幼い容姿をした小さなウマ娘。一人は、この場の誰よりも美しいと感じさせる、超一級の宝石のような雰囲気を纏ったウマ娘。三人が完全に部屋の中に入ったのを確認すると、ラブリィと大きなウマ娘もカーテンを閉じて後に続いた。

 

 

「…………!」

 

……声が、出なかった。何も言えなかった。つい数日前まで自分を鍛えてくれた時のウイナーとは、空気も、雰囲気も、なにもかもが違いすぎる。初めて彼女と会遇した時もウイナーは後輩達にむけて圧を放っていたが、その時とはまるで比べものにならない重圧だった。

……手を抜いていた? 自分の姉二人に匹敵しかねないような圧で?

 

 

 

「ならば早速始めるとしよう。新しき臣下にして、我が円卓の一つを埋める事になるウマ娘の──叙任式だ」

 

 

 

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