ソウル・オブ・ゼファー   作:部屋ノ 隅

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ヘリオスのキャラが難しすぎてどうしましょうかこれ……。


重賞 5/26

「え、ええっと……」

 

「ヘリオス。あなたこう仰いましたわよね? ‘最近のJkがするカラオケはコスプレをして歌うのが基本,と。確かにコスプレ用の衣装がお店で貸し出されていましたし、後で裏も取りましたが少数派なれど間違った意見ではないようでわすね。ああ、当然その事について言ってるのでもありませんよ? 最終的に折れて了承したのは私ですし。普段の勝負服やステージ衣装なんかとは毛色が違いましたけれど、ああいった衣装を着るのは新鮮さがありましたわ」

 

「で、でしょ!? あの時のルビっちは映像を脳内ネット回線に乗せて世界中に拡散したいぐらいキュートで──」

 

「それは光栄ですわね。具体的にはこんな感じでしょうか」

 

そこまでヘリオスが言葉を紡いだタイミングで、その顔面に突きつけるかのようにルビーが取り出したスマホをヘリオスの方へと押しやる。そこに映し出されていたのは──

 

 

「うおおおっ! え、、エモさと尊みで目が眩むぅうう!! 一体どこの誰なんだこの超絶的美少女JKはっっ!!」

 

「私に決まっているでしょうが!」

 

そう、それは間違いなくダイイチルビーだったのだが、着ている服がおかしかった。……この言い方では語弊がありそうなので訂正する。普段のそれと違った。

 

まず基調となっているのは黒。漆黒と言えるほど濃くはないが、特段と薄い訳でも明るい訳でもない普通の黒色。肝心の服の種類は……なんと言えば良いんだろうか、薄いワンピースの生地を更に薄手にしてそれを何枚も重ねて着ることでふわっとした感じとフリフリした感じを両立しているようなそれだ。当然、ワンピースなのだからノースリーブでもあるのだが、腋の部分は見えないようにシッカリと布が当てられている。アクセントとしてなのか身体のライン、手首や肩の部分に沿うように紅い線が曳かれている──何というか、変わった服だ。

 

他にも靴は黒いロングブーツで、首から紅い宝石が埋め込まれたペンダントのような物を掛けていて、一番特徴的な物として、紅くてメカメカしいとても大きな機械鎌を手に持っていた。

 

普段はまず着ない、GⅠに出走する時の勝負服としてならなんとかギリギリ成立しそうな衣装に、もし本物ならウマ娘であっても取り回すのに苦労しそうな大鎌。……なるほど、詳しくは分からないが一見して何かのキャラクターのコスプレだと見て取れる。

 

 

「えっと……。これは?」

 

「お、なになにゼっちゃんも興味ある系?  『紅玉の薔薇』──ニチアサにやってるアニメ『ウマキュア』に出てくる、敵か味方か未だ不明の神出鬼没なお気楽系キャラなんだけど……この娘が見てて気持ち良いぐらいのパリピでね? 同じ道を歩むギャルウマ娘としてはマジリスペクト不可避っていうかー」

 

「おい待て、ナチュラルにゼファーを巻き込むな。っていうか話しが逸れてないか? 結局ルビーは何にキレて──」

 

なるたけ関わりたくなかったのか今の今まで無言を貫いてきた柴中が、ゼファーまで話しに巻き込まれそうな気配を感じてセーフティーに入る。もう毎度のことなので今更感があるが、彼女は今回何故──

 

 

「あ、あはは……。それはそのー……」

 

「……拡散されたんです」

 

「は?」

 

「ですから! 文字通り拡散されたんです!! このバカに! この私のコスプレ写真とカメラ映像を!!」

 

ルビーはスマホを手早く操作してトレセン学園の生徒専用のSNSアプリを開くと、あるウマ娘が使用しているグループラインでのやり取りを柴中へと見せた。内容は大体こんな感じである。

 

 

 

『コスプレしたウチの(重用)お嬢様がエモすぎて精神がデジたんになった件』

 

 

‘マジしゅき……,

 

‘証拠はよ,

 

‘またかよ,

 

‘一体何イチルビーお嬢様なんだ……,

 

‘はいはいノロばなノロばな,

 

‘証拠はよ,

 

‘本人の知らないところで今日も弄られるお嬢様マジ可哀想(飯ウマ),

 

‘つーかアンタホント好きだねぇ。題に名前出す時は必ず『ウチの(重要)』付けるし,

 

‘嫁なんだから当然っしょ?(真顔),

 

‘ヤベー奴じゃん,

 

‘お前そんな事ばっか言ってるといつか華麗なる一族に消されるぞ……,

 

‘証拠はよ!(バンバン!),

 

‘うっせーぞデジたん(偽)本物と同じようにとっとと尊死してろ,

 

‘辛辣すぎてウケるww,

 

‘ってかそもそも何のコスよ。どーせいつも通りアンタの方からゴリ押したんだろうし、そもそもあのお嬢様が攻めた服なんて着るわけないから精々ナスかチアかってとこじゃね?,

 

‘ほいほい(証拠),

 

‘紅薔薇じゃんwwwwww,

 

‘ネーミング繋がりwwww,

 

‘ウマキュアかよ! え、マジで? クッソ丁寧なコラとかじゃなくて?,

 

‘こいつにそんなテクあるわけねーだろ(無慈悲),

 

‘うそでしょ……うそでしょwwwwww,

 

‘顔真っ赤じゃん…………良いな,

 

‘それなのにポーズはシッカリ原作通り決めてるのプロ意識高い……高くない?,

 

‘あっ(尊死),

 

‘死ぬのがおせーぞ。本物なら写真見てからコンマ1秒と経たずに死んでるわ,

 

 

 

 

「うわぁ……」

 

何というか色々と酷い物を見たような気がして、柴中は頭を抱えた。何が困るかつ大問題って、この頭の痛くなるようなやりとりがルビー本人の承認を得て行なわれているという事だ。

 

当時も当然のように巻き込まれた柴中はよく覚えている。そもそもの始まりはヘリオスが「ルビっちの事をギャルメンと話したい! 語りたい!」と言い出した事だった。当初「好きにすれば良いでしょう」と特に気にもせず承諾したルビーだが……。それから数日経って、彼女はある異変に気付いた。周囲の自分を見る眼と態度がおかしいのだ。功労者を労るような言葉を掛けられたり、苦労している者を見る同情の眼を向けられたりとそれだけでも違和感があるが、今まで話したことも無かった(ヘリオスを除く)ギャル系のグループからやたらと声を掛けられたりトレーニングに誘われたりしだしたのである。

 

……ルビー自身になにかした覚えが無い以上、思い当たる可能性は一つ。即ヘリオスを問い詰めた結果、あっさりと理由が判明した。ルビーに了承を得てからというもの、彼女はルビーの事を頻繁に会う事が出来る友人は勿論、様々な理由で同じ学園に所属しているのに中々会えない友達にまでこのSNSを通じて文字通り語り通していたのである。内容も「ここがしゅき」だの「ルビーしか勝たん」だのとかいう、なんか色んな意味で頭の痛くなる物ばかりだった。思わず苦虫を噛みつぶしたような表情になったルビーだが、ヘリオスが友人として認めている(実は)良識あるウマ娘ばかりのグループだったのもあって話しが広まった所で特段として実害が無かったのと、ヘリオス自身が猛烈に頼み込んできたのもあって‘話しを大袈裟にしない事,‘あまり頻繁に語らないこと,‘最低限の空気を読むこと,を条件にSNSで自分の話をする事を認めたのである。

 

 

……まぁその結果がこれなのだが。

 

 

「ヘリオス、あなた肖像権とかネットリテラシーという言葉をご存じですか? ご存じですわよね? カレンさんやデジタルさん程ではありませんが、あなたも各種SNSに相当詳しい方ですもの。知らないとは言わせません。──それで、私はあの時写真を撮られているということすら知らなかったのですが、何 か 言 い 残 す こ と は ?」

 

「うっそだろ、お前これ隠し撮りかよ!?」

 

「マジすみませんっしたっっっ!! あたしってルビっちの事になるとなんかこう、エモさが頭のなかでパニクってINTとEDUにちょーヤバいデバフが掛かって魂がバーサーカーになっちゃうんです許してつかぁさい!!」

 

「ダメですよ? 親しき仲にも礼儀ありです。隠し撮りも勿論ですが、信頼に値すると思った方々にだけ見せるにしても、ちゃんと事前に本人の了承を取りましょう」

 

下手をすれば反省文や学内の清掃を通り越して謹慎処分になりかねないような事態を引き起こしていたヘリオス(土下座中)に柴中は呆れ、ゼファーは真摯に叱り、ルビーは怒りの様な呆れのような、どうしようもないダメウマ娘を見るような眼で彼女を見る。

 

 

「まったく……。私の優雅さと美しさに我を忘れてしまう方がいらっしゃるのは仕方のない事ですから良いとして、写真をネット上にアップするのであれば本人ないし権利者の許諾を得るのがマナーです。あなたは確かにバカでパリピですが、決してマヌケでも非常識でもないのですからその辺は理解しているでしょう」

 

「あい……。すみません……」

 

(あ、勝手にプライベートな写真を撮られたのは怒ってないんだ)

 

ならばやはりこの二人の関係は一方的なそれではなく、互いに気心の知れた仲なのだろう。どんな出会いとやりとりがあって、その結果どんな因縁が出来たのかは知らないが、きっと浅はかならぬそれの筈だ。

 

 

「どうする? お前がそんなに気になるなら──」

 

「どうにもしなくて結構ですよ。このバカのパリピノリに苦言と忠言と正論を言ってやりたかっただけですので」

 

そう言ってルビーは絶賛土下座中のヘリオスの首根っこをムンズ、と右手で掴んだ。

 

 

「ご計略中の所、大変失礼いたしました。ゼファーさんとトレーナーさんには後ほど改めて謝罪をさせていただきます」

 

「あ、はい」

 

「あ、あの。ルビっち締まってる。首が絶賛ツラたんなんですけど」

 

そのままズルズルと、まるで大きな猫でも引きずるかのように入り口ドアの方へと引っ張っていく。ヘリオスが苦しそうな表情で何か言っているが、無視である。

 

 

「取りあえず数日の間SNS系アプリやサイトの使用停止。それからあなたの様なバカパリピでも常識的かつ高貴な振る舞いが出来るよう各種マナー講座に強制参加。それから当初の目的だったトレーニングの内容暴露とそれを踏まえた合同トレーニング。これで手を打ちましょう。過ぎたことをいつまでもネチネチと引きずるのは美しくありませんから」

 

「私は絶賛引きずられてる最中なんですけどね!? あとSNSとトレの事は兎に角として、マナー講座とか多分正座をする時並に眠気がキャパい予想なんで勘弁「初心者向けの物で、講師は私とパーマーさんですが」良識王に私はなる!!」

 

嫁(一方的な自称)のルビーと、大親友を越えた大親友(ズッ友をこえたズッ友)と公言するメジロパーマーの名前が出て来た事でやる気がアガったのか、引きずられたまま大きく宣言するヘリオス。調子の良い彼女を見て「はぁ……」と大きく溜息をついたルビーと共に、彼女達はトレーナールームを後にし──

 

 

「──ちょっと待った」

 

 

──後にしようとしたところで、柴中から声を掛けられて止まった。……割と真剣な表情だ。「なんでしょう?」とルビーが返す。

 

 

「ああいや、別に大した事でも無いんだが──

 

 

 

 

 

──その合同トレーニング。ゼファーも参加させてやってくれないか?」

 

 

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