ソウル・オブ・ゼファー   作:部屋ノ 隅

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外伝 とある灰被りの少女の祈り 1/15

 

 

──灰被り──

 

それは、世界中で知られているある物語の主人公を指す言葉だ。

 

 

──シンデレラ(灰被り)──

 

その名の通り‘灰被りの少女,という意味の言葉をそのまま宛がわれた(間違いだとする説の方が有力らしいが)少女の話。真面目で根気強く、健気で優しく、継母や義姉妹達の執拗な虐めにも負けない強い心を持っている、物語の主人公。世界で最も有名なお姫様(プリンセス)の一人。魔法使いのお婆さんにその健気な生き方、在り方を称えられて綺麗なドレスとカボチャの馬車、それから三頭の馬(元ネズミ)を賜り、いざいざ身分と正体を隠してお城で開かれる舞踏会へ。憧れの王子様の元へ──

 

……とまぁ詳しく説明していくと意外と長くなるので割愛するが、誰もが知っている通り最後には王子様にプロポーズされて彼と結婚し、幸せな終わり(ハッピーエンド)を迎えるわけだ。

 

 

──シンデレラストーリー──

 

……現代においては‘女の子の憧れ,というより‘つごうの良い物語,としての意味合いの方が強いだろうか。

 

なにせ身分も地位も、才能も能力も、他人に自慢出来るような物なんて何も持っていなかった女の子が、ある日突然魔法使いの……それも無償での協力を得て本来行ける筈の無い場所へと行き、出会える筈のない王子様と出会ってまさかの一目惚れをされ、最後には王子様と結婚してその国のお姫様となるのだから。

 

……確かに‘つごうが良い,と称されても仕方がないのかもしれない。現実にそんな事は起こりえず、魔法使いや王子様なんてただの幻想で(いなくて)、むしろ意地悪な継母や義姉妹だけがいるような辛い環境だけがある方が大半だと思う。

 

 

──でも、だけど。

 

それでも私は彼女が好きだ。彼女の話が好きだ。どんなに‘つごうが良い,と言われようが‘古くさい,と罵られようが、彼女の‘夢見る健気で頑張りやな少女,という在り方が好きだ。

 

だって彼女は負けなかった。嫌なことを全部押しつけられ、好きなことは滅多に出来なくても‘それでもいつか,と希望を持って前を向き続けた。

 

 

 

 

──応援したくなるじゃないか。それを美しいと思い彼女に手を貸した、魔法使いのお婆さんのように。

 

 

 

 

「ふぅ……ありがとうございます、ルーブルさん。すみません、休日なのにトレーニングに付き合って貰っちゃって……」

 

「い、いえ! このぐらいなんでもないです! それに私から提案したことですから!!」

 

タッタッタ──と、ゼファーとルーブルは河川敷のスグ傍にあるサイクリングロードを駆ける。ルーブルが前、ゼファーが稍後方。逃げを得意とするウマ娘であるルーブルに、本質的には先行ウマ娘であるゼファーが良い位置をキープし続ける事を意識する為のトレーニングだ。本来であればシンコウラブリィがゼファーの前ではなく後ろに位置どって、差しウマ娘ならではのプレッシャーを醸し出しながらゼファーを追いかける予定だったのだが、どうしても外せない用事が入ってしまったと休日トレーニングに参加する事が出来なくなり、教室でその話しを聞いていたルーブルが急遽参加を申し出たという訳である。

 

法定速度まで速さを落としたただのランニングではあるが、だからこそ‘位置取り,という奴を意識するのにはピッタリだ。レース本番では枠組みや出走ウマ娘達の作戦に偏りが出たりするため、練習通り上手く行くとは限らないが、大体の感覚を掴むことは出来る。前方の相手がプレッシャーを感じやすい位置を探ったり、逆に後方に迫る相手を牽制する練習をしたりと、全力で走らないからこそ様々な事を試せるのだ。

 

 

「はぁ……。はぁ……」

 

(……凄い)

 

まだ七㎞と走らない内に息も絶え絶えになってしまっているゼファーを見て、ルーブルは心配するどころか感心した。生まれつきの体質異常でスタミナがあまり成長せず、つい二ヶ月ぐらい前まで休養寮で治療をしていた筈なのに、これだけの距離を一定のスピードを保ったまま走れる。それどころかルーブルの事を追い抜こうと時々‘仕掛け,て来ている。反応から察するにもう身体に相当疲れが溜まってきている筈なのに顔つきはシッカリしているし、眼に力を感じる。

 

端的に言って、凄まじい根性だ。それとも意思の力という奴なんだろうか。実際に走ってみて分かった事だが、この娘は先頭に立たせては(追い抜かせたら)いけないタイプのウマ娘に感じる。

 

 

「──あ、あの! ルーブルさん、コースずれちゃってます!!」

 

「へ……?」

 

慌てて考えるのを止め、周囲を見渡すルーブル。ボーッとしながら走っていたせいだろうか、いつの間にか河川敷の方に降りる道へと入ってしまっていたようだ。慌てて坂を駆け上がり、ゼファーの元へ戻る。

 

 

「ご、ごめんなさい! その……ちょっとボーッとしちゃって……」

 

「いえいえ、全然。……ですがすみません。私、そろそろ体力に限界が来そうなんです。もうちょっと先に行った所に運動広場があった筈ですから、そこで一度休憩させて頂けませんか?」

 

「あ、はい! 分かりました。でも、その前に限界が来たら言ってくださいね?」

 

「はい、ありがとうございます。ではあと少し、行きましょうか」

 

再びルーブルを先頭に、二人のウマ娘はサイクリングロードをひた走っていく。疲れ切った身体に檄を飛ばし、その肌でルーブルから漂ってくるモヤモヤした風を感じながら、ゼファーもまた、ルーブルと同様色々と考えを巡らせていた。

 

 




すみません。この後の文章もある程度書いてはいたのですが、どうも個人的に「失敗した」と感じる部分がが多く、文章の殆どを削除しました。
要は書き直します。今週は文章の構成や統合などを中心に更新させていただきますので、本編の投稿は恐らくありません。

お待ちしていただいている皆様には大変申し訳ありませんが、ご了承ください。
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