ソウル・オブ・ゼファー   作:部屋ノ 隅

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至高の紅玉 6

 

 

──華麗さとは、一昼夜で身にくような物では無い。

 

──華麗さとは、そうかくあるべしと言われて成せるような物では無い。

 

──華麗さとは、ただ言動が美しく在れば良いという物では無い。

 

 

華麗さとは──私自身である。

 

 

『さぁ! 全ウマ娘がゲートに収まって……。どうやら体勢が完了したようです!!』

 

 

ガシャコン──!

 

 

『スタートしました!!』

 

ゲートが開き、私は予定通り先行集団の一歩後ろを内に入って付いていく。順位としては丁度9番手辺り。下手に埋もれることなく、また、レース序盤のウマ娘達の出方を伺いやすい絶好の位置だ。……まぁ、一人伺うまでもないようなダイタクヘリオス(バカ)もいるには──

 

 

「ヤッホー、ルビっち! 今日のテンションはどう? 調子良い?」

 

「……!?」

 

『おおっと、今日のダイタクヘリオスは逃げではなく先行さ──い、いえ、違います! これは……!!』

 

いつもとなんら変わらない暢気な言葉と鬱陶しいノリで、ヘリオスは私に話し掛けてきました。──そう、差しウマ娘である(・・・・・・・・)私に話し掛けられる位置にいた(・・・・・・・・・・・・・・)。前から8番手……丁度、私の斜め外前辺りです。

 

 

 

『さ‘差し,です! ダイタクヘリオス、まさかまさかの後方待機策を選択しました!!』 

 

 

 

「は、はぁ!?」

 

「マジで言ってんの!? 予想外過ぎてウケるんですけどwwww」

 

「よく見てなかったけど、スタートに失敗でもしたってのか、あのバカ!?」

 

予想だにもしていなかったのか、会場に大きなどよめきが走る。

 

 

「……なぁ、スタートに失敗したように見えたか?」

 

「いや、そこまで悪くなかったと思う。6枠の13番だったけど、周りにスタートが滅茶苦茶良かった娘が何人もいたって訳でも無かったと思うんだが……?」

 

前に行こうと思えば普通に行けた筈だと、ウマ娘レースを深く知るファンは首を捻らせる。

 

 

「これは……」

 

「ちょ、ちょっと! ヘリオスさんって確かバ……逃げか先行でここまで結果を残してきたウマ娘じゃなかったっけ!?」

 

南坂は興味深そうに顎に手を当てて考えるようなポーズを取り、ナイスネイチャは感想を書く為に用意したメモ帳の紙を思わず握りつぶしてしまう。ツインターボは「えー!? ヘリオス大逃げやらないのぉ!?」と不満そうな顔でぶーぶー文句を言っていた。

 

 

「…………」

 

「へぇ……。そう来るか」

 

そんななか、理屈抜きで‘なんとなくだけどそうなってもおかしくないかも,と予想していたゼファーはさほど驚きもせずにレースに集中し続け、ヘリオスの意図と作戦を即座に看破した柴中は、面白そうに笑みを強めた。

 

 

「…………なるほど」

 

スタートに失敗した訳ではない。かといってやる気がなかったり、真面目に走る気がない訳でもない。そも、ヘリオス(このバカ)の性格と信条からいってそれはあり得ない。──とくれば、残る可能性は一つ。

 

 

『その後に続きますのはダイイチルビー! そしてそのダイイチルビーをマークするようにバンブーメモリーが中段のやや後ろ! その外を回りましてシャインダンサー、内を付きましてプリティキャットが迫ります!』

 

「貴方にしては考えましたね、ヘリオス」

 

当然、緻密に計算された作戦である。自分の斜め外後ろにピッタリとマークするように張り付いたバンブーメモリーさんがなによりの証拠だ。「へっへーん!」と得意げな表情をしているが、こいつがやろうとしている事は実際かなりエゲつない。

 

 

「この大一番でこういう事をやってくるとはねぇ。……あいつ、他の奴らと結託してルビー達を沈め殺す気だ」

 

 

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