ソウル・オブ・ゼファー   作:部屋ノ 隅

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毎度毎度の事ですが、当作品の閲覧ならびに誤字報告等、誠にありがとうございます。
一周年を迎えました「ソウル・オブ・ゼファー」を、これからもどうぞよろしくお願いします。


強化合宿編 4

 

 

 

「えっと、これは燃えるゴミだからこっち……。これは、不燃かな? こっちだよね」

 

ポイポイと、ヤマニンゼファーはポリ袋にパンパンに詰まったゴミを手早く分別していく。山頂まであともう少しといった所に建てられている山小屋の外だ。

 

チームステラの面々は、何もただ登山を楽しんでいたという訳では無い。ルートの各所にあった目立つゴミや落とし物とおぼしき物などを拾い集めたり、登山者にとって危ない伸び方をしている樹木の枝を折ったり、人間では重機を使わないと困難な落石を比較的安全な場所へ退けながら進んでいたのだ。

 

ゼファーと同じくゴミの分別作業をしているのは、アキツテイオーとシンコウラブリイの二人。トレーナーの柴中とチームリーダーであるウイナーは山小屋の主人へ挨拶をすませた後、今後の予定について再度話し合い。ニシノフラワーとヒシアケボノは台所を借りて昼食の準備に取りかかっている。そしてカレンチャンとダイイチルビーは──

 

 

「──それで、差し出がましいんですが、ご感想はどうでしょうか……?」

 

「……そうですね、太陽光発電に清潔感のある水洗トイレ。少しでも疲れが取れるようこだわり抜いた寝具に各種登山グッズの予備と、確かに登山者のことを第一に考えた設計をされていると思います。内装も決して悪くはありませんが、部屋のレイアウトと置物の位置が多少気になりますわ。私はコパノリッキーさんほど風水に詳しい訳ではありませんが、多少は心得がありますのでご協力出来れば幸いです」

 

「んー。カレンはやっぱりもうちょっと可愛らしさを出した方が良いと思うなー。もちろん折角の山小屋の雰囲気を壊すような物はダメですけど、優雅さや清潔感だけじゃなくて、ちょっとした可愛さもここを使う人にとっての癒やしになると思うんです。例えば──」

 

二人の大ファンだという山小屋の主人たっての頼みで、最近改装したばかりらしい山小屋について感想を述べている。二人から聞いた感想と意見を元に、更なる改良を加えたいという話しだった。小屋の中から聞こえてくる三人会話を意図せず盗み聞きするような形になったが、なんとも本格的なアドバイスになっているじゃないか。「ルビーさんって風水についても詳しかったんですね」と思わず口から感想が漏れる。

 

 

「ん? ああ、それか。奴曰く『それがどんなジャンルでも‘成功者で居続ける者’は大抵、神仏や風水を大切にしているものですわ』という事らしい」

 

割かし大きな戦車のラジコンを「誰が持ち込んだんだこんな物……」と首を傾げながら分解していたアキツが答えてくれた。ああなるほど。と、即座に納得がいってゼファーは頷く。

 

 

「要は努力と一緒ですよね。全力でやっても勝者になれるとは限らないけど、勝った人は大抵が死に物狂いで努力してらっしゃいますから」

 

「当然の理屈ではあるナ。大地、海、空……この星や、果ては宇宙。そしてそれを司る神を崇め奉らず尊びもしない者は、余程の才や宿痾の持ち主でもなければ勝ち上がることは出来ないだろウ。日本やアイルランドだけではなく、ほぼ全ての国で共通している認識だと思うガ」

 

同意するようにラブリイが続く。古より続く伝統や言い伝えを重視している傾向があるラブリイにとって、大自然や神々の話しはかなり食いつきが良い物らしい。

 

 

「そういえば私、アイルランド神話ってあまりよく知らないんですけど……。具体的にどんな神様がいらっしゃるんですか? もしよければ特に風神様の話しを──」

 

「やはり大英雄として朱槍を持つ‘クランの猛犬’と、その師である‘影の国の女王’。我が先祖が仕えていた‘愛多き女王’に、‘神バ「エポナ」’の知名度が群を抜いているが、無論それだけではなイ。猛犬の父である太陽神ルーや、叔父である‘豪快で快活なる戦士’。サイクルは違うが、ケルト最強の騎士団とされるフィオナ騎士団の偉大なる騎士達と、数え切れないほど沢山の英霊がいル。それと、もちろんアイルランド神話にも最高神のダグザを筆頭に約三百柱もの神々が出てくるが、どちらかといえば‘妖精’や‘精霊’の方がメインの話しだナ。有名な風神だと‘アオス・シ’という女神ガ──」

 

ゼファーが質問を言い終えるより早く、滝のような勢いで喋り出したラブリイ。清廉な顔立ちはそのままに、彼女は誰が見ても分かる程に眼をキラキラ輝かせている。普段の戦士然とした態度とその見た目からして、クラスメイト達とあまり話さないし、何かを聞かれるような事も少ないのだろう。ちょっと内に入ってみれば意外と気さくで、感情豊かなウマ娘だと理解出来るのに勿体ないなぁ……。と、ゼファーは思った。

 

 

「別に話すのは構わんが、作業する手を止めるなよ? 昼食の時間までに最低でも半分は片付けておかなくてはな」

 

「了解しましタ。それでだな────」

 

忠告への頷きも一瞬で終わらせ、なにやらスイッチが入ってしまったらしいラブリイは再び勢いよく喋り始める。──少しは元気になったみたいでよかった──ワザとそうなりそうな話題を振ったゼファーの心持ちは、彼女と風にしか分からなかった。

 

 

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