※初投稿、全てにおいてド素人です。改行と……多め、読みにくくてすみません。
目が覚めた。
さて……今からいびきをかくマイワイフを起こし、息子を叩き起こしながら朝食と保育園の準備……。
できない。
目が覚めたら俺の家じゃない。
頭金400万、固定金利で毎月安定した返済を30年続けてローン返済する4200万円の自宅……じゃない!!
足元は水。
深さ3cmくらいの水が張った湖が、延々と広がっている。
上空はチラホラ雲もあるが快晴。
どこぞの塩湖のようなイメージだとわかりやすいかもしれない。
水は冷たくもなく、熱くもない。
というよりも、自分の感覚があまりない感じがする。
自分が自分ではないような、そんな漠然とした不安に駆られてしまう。
そんな時だった。
急に頭の中に声が聞こえてきたのだ。
『……あー、聞こえますか?双治さん?』
「のわあ!」
驚いてしまった。恥ずかしい。
今年で33歳なのに。
妻子抱える身なのに。
『双治さん、落ち着いてくださいね?』
「は、はい。いや、落ち着いてられないと申しますか、どうにもこうにも。」
俺しかいない非現実的空間で、なぜか頭の中から声がするのだ。
平静を保てない。
上司にどやされ続け、鍛えられたと思っていた俺のハート……どうやらとんだ思い違いだったようだ。
その声は続けて、とんでもないことを教えてくれた。
『いきなりなことを言いますが、私は神です。』
「……。」
『信じられないと思いますが、まずは話を聞いてくださるとうれしいです。続けても?』
「は、はいぃ……。」
もう信じるしかない。
やたら現実味のない自分の体。
ただ、夢ではないとははっきりわかる。
これはリアルだ。
ありえない状況にある。
そして頭に響く、母性溢れる女性の美しい声。
これは、神と信じるしかないと思う。
とりあえず落ち着くため、その女神様に一つ質問をしてみることにした。
「私、死にましたか……?」
『少し説明が難しいのですが、おおむねそのような感じです。』
予想が当たった。それじゃあついでに、もう一つ質問。
「そしてここはあの世…でしょうか…?」
『その点も、おおむねそのような感じです。』
この予想も当たり。ラスト、これが大事な質問だ。
「俺の……私の家族は生きていますか?」
『はい、双治さんのご家族はみな無事です。ご心配なく。』
「それはよかった……。ちなみに、私の考えていることって、分かりますか?」
『ええ、分かります。ですが、言葉にしてくれると助かります。きちんと言葉として気持ちを整理していただかないと、人の複雑な心の中を読むことは難しいです。でも、双治さんの気持ちはとても読みやすいです。私の声が美しいと聞いて、うれしかったです。ありがとうございます。』
なんと、思いを読むことができるのはすごい。
さすが女神様。
邪なことを考えなかった自分をほめたい。
しかし、声だけでも、女神さまが美人さんであることは想像がつく。恥ずかしがっているのか、少し照れたような声だった。
かわいい。
……今はそんなこと考えている場合ではないな。
「……ええと、とりあえず家族が無事なら、よかったです。あの、他にも色々と、質問してもよろしいですか?」
『ええ、私が答えられることは、何でもどうぞ。』
言葉こそ単調ではあるが、いい人?神様?なのだと思う。
そこからは、俺と女神様の一問一答が始まった。
端的に言うと、俺は偶然にも時空の穴、時断崖と呼ばれるものに挟まれた。
そして元の世界からはいないことになってしまった、らしい。
そんなこと天文学的な確率らしく、女神様曰く、人間で巻き込まれたことがあるのは、歴史上で数えられるほどしかいないのだとか。
時を司る神のミスで、こういうことはごくまれに起こるらしい。
ただし時の神は、神としての次元というか格が高すぎて、俺のようなちっぽけな存在がどうなろうと知ったこっちゃないスタイルとのこと。
そこで、地球を司る女神さまのお出まし、というわけだ。
心配していた家族は、元々俺がいなかった前提として、世界まるごと書き換えられたため、無事?とのこと。
いや俺にとっては悲劇でしかないわけだが。
ここまで質問して思った。
……運が無さすぎる。
天文学的確率って、人類史上数人しかないところに当たってしまったということか。いや、笑えない。どうしようか、これ。
元の世界的に俺は完全にいなくなったものとして扱われているわけだ。
というか、ハナからいなかったものとして。
それは悲しい。
時の神とやらがいたら、小一時間説教をしてやりたいぐらいには不満だ。
だがここで、女神さまから意外な提案が来た。
『そこで、私から一つ、双治さんに提案があります。』
「なんでしょう。」
『双治さん、全く違う世界線……異世界といえばよいでしょうか。そこで第2の人生を歩んでみませんか?』
「……可能なんですか?」
『例外中の例外ですので、他の神々にSNSを使って情報を拡散すれば、4、5人ぐらい手が挙がるかと。』
「その神様SNS、すっごく気になりますが。」
『少しお待ちくださいね……はい、つぶやきました。』
神様の世界もSNSとかあるんですね。
シュールすぎる。
そしてしばらくして、女神様に返信が来た。
『お一人、返信が来ました。この神の世界はいかがでしょう。おそらく双治さんが好きな、「けんとまほうのふぁんたじい」の世界に……近いと思いますよ?』
「……確認になりますが、私が元の世界に戻ることは難しいんですよね?」
『ええ、そればかりは。何せ存在が全く無い状態からですので。人間でなくてもよいというのであれば、可能かもしれませんが。』
「それは例えばどんな生き物になりますか?」
『今すぐに転生できそうな生命体というと……バンドウイルカ、ホンヤドカリ、オオスズメバチ、ジャ〇ロ・クワイ、腸炎ビブリオなどになりますが。どうしますか?』
「ぜひ新しい世界でお願いします!」
何が悲しくて人の腹の中で胃腸炎を起こさなければならないのか。
というか4つ目はなんだ?あのアーティストのことを言っているのか?ラーメンのCMかっこよかったくらいしか知らないのだが……。
……新しい世界でいい。
何を隠そう、俺はそういったファンタジーな世界観は大好きなのだ。
返事はすぐに。
どうせなら、楽しそうな世界で第二の人生を送りたい。
『わかりました、それでは今から転送いたします。ささやかながら、私の方から、その世界で最低限生きていくのに必要なものはお渡ししておきます。』
「何から何まで、ありがとうございます。」
『いえ、これも私の義務ですので。私からのギフトは、目覚めたら確認できるかと。』
ギフト、か。これは期待しておこう。
次の世界で少しだけ楽しく過ごせそうな気がする。
しばらくすると、俺の周りに巨大な魔方陣のようなものが現れた。小学生の頃の体育館ぐらいあるのではないだろうか。大きい。
その魔方陣はぐるぐる回っていて、一瞬光ったかと思うと少しずつその半径を減らしていく。そして俺の体も少しずつ薄くなってきた。どうやら次の世界にこれから向かうらしい。
『それでは双治さん、ここで私は失礼いたします。声だけで姿も見せずに、申し訳ありませんでした。』
そんなことないです、次の人生を与えてくださってありがとうございます。
『すでに双治さんの体は、転送先の方に送られ始めています。少し時間がかかりますが、目が覚めたら見知らぬ天井……ということになりますね。』
そうか~、この年にして第二の人生か……。老後にゴルフ三昧を予定していた俺としては、この第2の人生は全くの想定外だが、まあいいだろう。
せっかくもらったおまけ人生、全力で楽しんでやろうではないか。
『……双治さん、前向きなところ悪いですが、この世界相当サバイバルです。どうぞお体には気を付けてください。』
…えっ、何ですかその言い方。
結構大変なんですか、生きていくのが。
マジですか?平和な現代日本に生きてきた身としては、確かにサバイバルなんてマジで経験ないわけですが、なにかしら神様からの贈り物で生きていくことは可能なのかなと、少しは期待したりもしちゃったりなんかしてしまうわけでしてーーー
『完了しました。それでは、私はここで失礼いたします。よい人生を。』
「ちょっとま……。」
そこで声が途切れ、俺の意識は完全に無くなった。